JP3545322B2 - 地盤固結工法 - Google Patents

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  • Consolidation Of Soil By Introduction Of Solidifying Substances Into Soil (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、環境保全性に優れた懸濁型地盤固結材および地盤固結工法に関し、特に弱アルカリ性である懸濁型地盤固結材と、溶液型シリカ地盤固結材とを併用して軟弱地盤等の対象地盤を固結する、耐久性と環境保全性に優れた懸濁型地盤固結材および地盤固結工法に関する。
【0002】
即ち、懸濁型地盤固結材としてカルシウムアルミネートを主成分とする懸濁型地盤固結材を使用することにより、併用する溶液型シリカ固結材の硬化性、耐久性に与える影響が極めて少ない地盤固結工法に関する。さらに、本発明の懸濁型地盤固結材を使用することにより、地盤のアルカリ公害が少なく、六価クロム等の重金属による汚染がないこと、さらに軽量であるため浸透、混合性が優れていることを特徴とする。
【0003】
【従来の技術】
軟弱地盤等の対象地盤の固結のための注入材の主成分としてセメントを使用する場合には、このセメント中に微量の六価クロムが含有されており、固化するまでにこれらの重金属が溶出して環境を汚染する危険性が指摘されている。しかしながら、カルシウムアルミネートはセメントの急結材として使用されるため、カルシウムアルミネートと同量あるいはそれ以上のセメントを使用するのが通例である。
【0004】
また、セメントを主成分とする懸濁型注入材と、水ガラス系溶液型注入材とを併用する、いわゆる複合注入工法も従来より知られているが、かかる水ガラス系溶液型注入材の固結体がセメントのアルカリによって劣化する等の問題があった。これは、注入目的が仮設である場合には、それほどの問題もなかったが、注入材にも次第に耐久性が要求されるようになってきたことから、今日では、溶液型注入材ではシリカゾル系(水ガラスと酸の中和反応によりアルカリを除去した酸性〜弱アルカリ性シリカ水溶液グラウト)、コロイダルシリカ系、活性シリカ系(水ガラスをイオン交換樹脂またはイオン交換膜で脱アルカリした酸性〜弱アルカリ性シリカ水溶液グラウト)注入材等、水ガラスグラウトの劣化の要因であるアルカリを除去した注入材が使用されるようになった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような弱アルカリ性〜非アルカリ性シリカゾルグラウトであっても、アルカリ性の高い懸濁型注入材と併用すると、弱アルカリ性〜非アルカリ性シリカグラウトのpHが変化するため、ゲル化時間が大きく変動し、また、懸濁型注入材からのアルカリがゲル化物を溶解する等、固結体の耐久性にも影響を受けた。
【0006】
具体的には、従来の複合注入工法では、一次注入材であるスラグやセメントを主成分とする懸濁型注入材と、二次注入材である水ガラス系注入材とが接触すると、水ガラス系注入材にゲル化の遅延が起こり、場合によっては、ゲル化しなかったり、一旦ゲル化したものが再溶解するということもあり、他方、懸濁型注入材においても強度低下が起こることがあった。このように、懸濁型注入材と水ガラス系溶液型注入材とを併用する地盤注入工法においては、懸濁型注入材がセメントを主成分としアルカリ性が高い場合には、水ガラス系溶液型地盤注入材のゲル化物を劣化させて耐久性に問題を生じていた。また、水ガラスを使用し、アルカリ側でゲル化させた場合には、アルカリが溶出するため、アルカリ公害が懸念された。
【0007】
そこで本発明の目的は、セメントを一切使用せず、よって六価クロムによる公害も発生せず、複合注入工法で使用される溶液型注入材への影響も極めて少ない、耐久性と環境保全性に優れた懸濁型地盤固結材および地盤固結工法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、懸濁型注入材の主成分としてカルシウムアルミネートを使用することにより、地盤を確実にかつ強固に固結し、かつ、耐久性と環境保全性にも良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の懸濁型地盤固結材は、カルシウムアルミネートとスラグとを主成分とし、セメント類を実質的に含まないことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の地盤固結工法は、懸濁型地盤固結材と溶液型シリカ固結材とを併用する地盤固結工法において、懸濁型地盤固結材として、カルシウムアルミネート、またはカルシウムアルミネートとスラグとを主成分とする懸濁型地盤固結材を用いることを特徴とするものである。
【0011】
本発明においては、使用する懸濁型地盤固結材の固結体からアルカリの溶脱が殆どなく、また、セメントを使用せずにカルシウムアルミネートを主成分とする懸濁型地盤固結材を使用するため、六価クロム等の重金属の溶脱による公害も発生せず、さらには複合注入工法で使用される溶液型固結材への影響も極力少なくすることができる。
【0012】
なお、本発明における固結材とは、注入工法で使用される注入材、高圧噴射注入、裏込注入、土との混合による地盤改良、廃土の固化、掘削土の固化、気泡や気泡ビーズを混ぜた軽量盛土材等に用いる固結材をいうものとする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の懸濁型地盤固結材は、カルシウムアルミネートとスラグとを主成分とし、セメント類を実質的に含まない。従来は、一次注入材として一般的にはセメント−ベントナイト懸濁液が使用されており、この調製液のpHは直ちに約12.5となる。これに対し、本発明者は、pHがほぼ10.8以下の弱アルカリ性懸濁液を用いると、溶液型注入材への影響が極力抑制されることを見出した。また、カルシウムアルミネートはセメントの急結材として使用されており、それ単独では耐久性の優れた固結体を得ることはできなかったが、カルシウムアルミネートにスラグを併用することにより、高強度で耐久性に優れた固結体を得ることができることも見出した。
【0014】
ここに、カルシウムアルミネートを主成分とする懸濁型地盤固結材とは、水和反応によって固結する能力を有するもので、セメントの急結材として通常使用されるカルシウムアルミネート(12CaO・7Al、CaO・2Al、3CaO・Al等、あるいはさらにこれらとハロゲン元素が固溶したカルシウムハロアルミネート、例えば、11CaO・7Al・CaF等)を主成分とする懸濁型地盤固結材を意味し、さらに、このようなカルシウムアルミネートに石膏、硫酸ナトリウムなどの無機硫酸塩を混合あるいは溶融して得られたものも含むものとする。
【0015】
なお、かかるカルシウムアルミネートをセメントの急結材として用いた場合には、そのような固結体からはアルカリが溶脱し、また重金属類も溶脱し、固結体の耐久性や公害の問題が生ずることになる。
【0016】
カルシウムアルミネートの製法としては、例えば、カルシウムアルミネート水和物を600〜900℃で焼成し急冷して無定形とするか、比較的純度の高いアルミナと生石灰を1000℃以上、好ましくは1500〜1600℃の高温で、例えば、電気炉にて焼成し、粉砕する方法が挙げられる。
【0017】
カルシウムアルミネートの比表面積は、2000cm/g以上が好ましく、3000〜5000cm/gがより好ましい。ただし、浸透性をそれ程要求されない一次注入材として注入する場合には、2000〜4000cm/g程度でもよい。
【0018】
また、本発明においては、上記のようにして得られたカルシウムアルミネートにスラグを併用するが、さらに石膏、消石灰等を添加して、固結体の強度を大きくしたり、凝結時間を調整することが好ましく、さらにはベントナイト等を添加することもできる。
【0019】
凝結時間を遅延するものとしては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸等の有機ヒドロキシカルボン酸や蔗糖、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムのような無機炭酸塩等が挙げられる。
【0020】
本発明において使用するスラグとしては、平均粒径10ミクロン以下、あるいは比表面積6000cm/g以上の微粒子状のものが好ましい。このような微粒子はカルシウムアルミネートとの反応性が良好となり、固結性の点から好ましい。
【0021】
カルシウムアルミネートに対するスラグ、石膏の添加量は、100:5〜1000(重量部)が好ましい。また、カルシウムアルミネートに対する遅延剤の添加量は、100:0〜10(重量部)が好ましい。
【0022】
また、本発明の懸濁型地盤固結材を注入材(二重管ダブルパッカ工法等注入管まわりの削孔孔壁の空隙に填充する注入材を含む)として使用する場合には、配合液1m当たりカルシウムアルミネートおよびスラグの合計量が100〜300kg、高圧噴射等の高強度を要する配合液では、配合液1m当たり150〜600kgが好ましい。なお、固結体の強度でみると、一般注入工法の場合には、0.1〜5.0MN/m、高圧噴射工法の場合には1.0〜10.0MN/mとなるように配合を決定するのが好ましい。
【0023】
また、懸濁型地盤固結材の可使時間(液調製から増粘してほぼ送液不能となるまでの時間をここでは可使時間とする)は、添加する遅延剤の種類と添加量により異なる。その他、必要に応じて流動化剤等を添加することもできるし、気泡剤を混入することもできる。
【0024】
本発明の地盤固結工法において、上述の懸濁型地盤固結材とともに溶液型シリカ固結材とを併用する場合、溶液型シリカ固結材として水ガラス系注入材を使用することができる。水ガラスをゲル化材として使用すれば、ゲル化時間を短縮することができ、また、非アルカリ性水ガラスや水ガラスと酸を混合、中和してアルカリを除去したシリカゾルを使用すれば、弱アルカリ性〜弱酸性でゲル化時間を短縮することができる。
【0025】
一次注入材(この場合、本発明における懸濁型地盤固結材)の強度は、地盤への注入率によっても異なるが、強度が大き過ぎると二次注入材を十分に注入することができなくなることがあるため、1日強度で0.2〜1.5MN/m程度が好ましい。
【0026】
溶液型シリカ固結材は、水ガラス系注入材でもよいが、当然、耐久性の優れた固結材が好ましく、水ガラスからイオン交換樹脂またはイオン交換膜により脱アルカリ処理、または酸による中和処理によって得られた水溶性シリカ化合物を主成分とする注入材が好ましい。このような水溶性シリカ化合物を主成分とする注入材としては、コロイダルシリカ系注入材(コロイダルシリカに無機塩等の硬化剤を添加してゲル化させる注入材)、活性シリカ系注入材(活性シリカまたは弱アルカリ性シリカにpH調整材および必要に応じて無機塩類を添加してゲル化させる注入材)、およびシリカゾル系注入材(弱アルカリ性〜中性、酸性)が好ましい。なお、コロイダルシリカ系注入材の場合には、少量の酸類を添加して固結体のpHを下げた方がより耐久性が良好となる。他方、酸性シリカゾルの場合、あるいはコロイダルシリカ、活性シリカ系でも同様であるが、弱アルカリ性懸濁型注入材のpHの影響によりゲル化時間が大幅に短縮することがあるので、酸性シリカゾルに燐酸化合物および/または金属封鎖剤を含有させたものを用いるのが望ましい。このような化合物としては、燐酸、燐酸1ソーダ、燐酸2ソーダ、燐酸3ソーダ、ピロ燐酸ソーダ、酸性ピロ燐酸ソーダ、トリポリ燐酸ソーダ、テトラポリ燐酸ソーダ、ヘキサメタ燐酸ソーダ、酸性メタ燐酸ソーダ等が挙げられる。
【0027】
溶液型シリカ固結材のゲル化時間は、対象地盤が極めて粗であり、しかも一次注入材の注入量が少ない場合には、瞬結でも構わないが、通常1〜60分が好ましく、大量注入する場合には、ゲル化時間が1日以上のものも使用可能である。なお、このゲル化時間は土中ゲル化時間に相当するものであり、溶液型シリカ固結材の型により大きく異なる。例えば、活性シリカ系注入材は、配合液単位でのゲル化時間が数日程度と長くても、地盤に注入するとゲル化時間が土との接触により1日以内ともなり得る。
【0028】
本発明の懸濁型地盤固結材は、通常、一次注入材として使用し、粗な部分を充填し、地盤の強度を確保し、次いで、本発明の地盤固結工法に従い、溶液型シリカ固結材を二次注入材として使用し、地盤の止水性を向上させるが、地盤状況により懸濁型地盤固結材と溶液型シリカ固結材とを交互に注入することもできる。
【0029】
溶液型シリカ固結材が懸濁型地盤固結材の影響をより受けにくくするためには、懸濁型地盤固結材を注入してから固結後に溶液型シリカ固結材を注入するのが好ましく、例えば、懸濁型地盤固結材を注入して1日以上経過後に溶液型シリカ固結材を注入することもできる。
【0030】
本発明の固結材を使用する場合、その注入比率は、注入する地盤の状況により異なるが、懸濁型地盤固結材1に対し、溶液型シリカ固結材1〜5(体積比)の比率とするのが好ましい。
【0031】
本発明の注入工法の具体的な例として、二重管ダブルパッカ工法の一次注入材として、あるいは二重管複合注入工法の一次注入材として本発明の懸濁型地盤固結材を使用したり、複数個の袋体を装着した注入管を使用し、該袋体に本発明の懸濁型地盤固結材を充填、膨張させ、これらをパッカとし、溶液型シリカ固結材を二次注入材として地盤に注入し、注入管周囲から上部への漏洩を防止すると同時に地盤に浸透させることができる。
【0032】
かかる注入工法を図面を用いて具体的に詳述する。
図1は、二重管ダブルパッカ注入装置Aを削孔に建て込んだ状態の一例であり、軸方向に複数の外管吐出口3を有する外管1と、この外管1の管路1a内に挿入され、先端部に内管吐出口5を有し、かつ、この内管吐出口5の上下位置に間隔をあけて一対のパッカ6、6を保持した内管2とを備えて構成される。内管2は一対のパッカ6、6が外管1の内壁面7を慴動しながら上下に移動自在である。
【0033】
図1の注入管を用いて地盤8中に固結材を注入するに当たり、まず、軸方向に複数の外管吐出口3を有する外管1を注入すべき地盤8の削孔11に挿入し、スリーブグラウト10で固定する。次いで、先端部に内管吐出口5を有し、かつ、この内管吐出口5の上下位置に間隔をあけてパッカ6、6を保持した内管2を外管管路1a内に挿入するとともに、一対のパッカ6、6を外管1の内壁面7に慴動させながら、外管吐出口3が一対のパッカ6、6間に位置するように上下する。この状態で溶液型シリカ固結材を内管管路2a、内管吐出口5、外管吐出口3および空間10を通して地盤8中に注入する。
【0034】
図2は、二重管ダブルパッカ注入装置を削孔に建て込んだ他の例であり、外管には袋パッカ9が装着されている。軸方向に複数の外管吐出口3および3aを有する外管1と、この外管1の管路1a内に挿入され、先端部に内管吐出口5を有し、かつこの内管吐出口5の上下位置に間隔をあけて一対のパッカ6、6を保持した内管2とを備えて構成される。内管2は一対のパッカ6、6が外管1の内壁面7を慴動しながら上下に移動自在である。
【0035】
図2の注入管を用いて地盤8中に固結材を注入するに当たり、まず軸方向に複数の外管吐出口3および3aを有する外管1を注入すべき地盤8の削孔11に挿入する。次いで、先端部に内管吐出口5を有し、かつ、この内管吐出口5の上下位置に間隔をあけてパッカ6、6を保持した内管2を外管管路1a内に挿入するとともに、一対のパッカ6、6を外管1の内壁面7に慴動させながら、袋パッカ9の箇所の外管吐出口3aが一対のパッカ6、6間に位置するように上下する。この状態で懸濁型地盤固結材を内管管路2a、内管吐出口5および外管吐出口3aを通して袋パッカ9に送液して袋パッカ9を膨張させ、隣接する袋パッカ9、9に空間12を形成する。
【0036】
さらに、一対のパッカ6、6を外管1の内壁面7に慴動させながら空間12の箇所の外管吐出口3が一対のパッカ6、6間に位置するように上下に移動し、この状態で溶液型シリカ固結材を内管管路2a、内管吐出口5、外管吐出口3および空間12を通して地盤8中に注入する。
【0037】
また、本発明の懸濁型地盤固結材は、注入工法に限定されることなく、地盤改良工での粉体噴射撹拌、高圧噴射撹拌、スラリー撹拌等の深層混合処理工法、表層混合処理工、路床安定処理工、下層・上層路盤等の舗装工、地中連続壁工、圧入による周辺地盤の圧密強化等にも使用可能である。
【0038】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例において使用した材料は下記の通りである。
(1)普通セメント
ブレーン比表面積3300cm/gの普通ポルトランドセメント(比重:3.17)
(2)スラグ
ブレーン比表面積10000cm/gの超微粒子スラグ(比重:2.90)
その主な成分(%)は下記の表1に示す通りである。
【0039】
【表1】
Figure 0003545322
(3)石膏
工業用 半水石膏
(4)水ガラス
JIS3号水ガラス
(5)コロイダルシリカ
シリカ濃度30%、比重1.20、粒径10〜20ミリミクロンのコロイダルシリカ水溶液
(6)弱アルカリ性シリカ
水ガラスをイオン交換樹脂で脱アルカリし、少量の水ガラスでpH調整した、pH9.5、シリカ濃度4.5%、比重1.025の弱アルカリ性シリカ
【0040】
(7)硬化剤あるいはpH調整剤
(イ)燐酸
工業用 比重(20℃)1.58
(ロ)水酸化マグネシウム 工業用
(ハ)塩化ナトリウム 工業用
(8)金属イオン封鎖剤
ヘキサメタ燐酸ソーダ 工業用
(9)カルシウムアルミネート1(以下、「CA1」と表記する)
比重2.80 ブレーン値5800cm/g
懸濁液のpHは約10.3である。
その主な成分(%)は以下の表2に示す通りである。
【0041】
【表2】
Figure 0003545322
(10)カルシウムアルミネート2(以下、「CA2」と表記する)
非晶質の12CaO・7AlとII型無水石膏との等重量混合物
比重2.90 ブレーン値5500〜6000cm/g
懸濁液のpHは約11.8である。
(11)遅延剤
クエン酸 工業用
【0042】
(12)溶液型注入材
(イ)酸性シリカゾル(1)
水ガラスと粗硫酸を急速に混合してpH1.9、シリカ濃度8.1%の酸性液を調製した。
(ロ)酸性シリカゾル(2)
酸性シリカゾル(1)にヘキサメタ燐酸ソーダを2重量%添加した。
(ハ)酸性シリカゾル(3)
酸性シリカゾル(1)に燐酸を1重量%添加した。
(ニ)上記コロイダルシリカ(コロイダルシリカ(1))にヘキサメタ燐酸ソーダを2重量%添加し、コロイダルシリカ(2)とした。
(ホ)上記弱アルカリ性シリカ(弱アルカリ性シリカ(1))に燐酸を1重量%添加し、弱アルカリ性シリカ(2)とした。
【0043】
上記主成分を使用した溶液型シリカ注入材の配合について、A液(表3)およびB液(表4)の合計が400mlとなるように夫々調製した(配合例1〜8)。得られた溶液型シリカ注入材のpH、ゲル化時間および強度を表4に併記する。なお、pHは液の調製後直ちに測定した。
【0044】
【表3】
Figure 0003545322
【0045】
【表4】
Figure 0003545322
【0046】
次に、本実施例の性能試験は以下の方法で行った。
(接触試験)
懸濁型注入材と溶液型注入材が直接接触した時、どのような現象がみられるかを試験するため、懸濁型注入材による固結体(直径5cm×高さ10cm)を1000mlの容器に入れ、そこへ固結体全体が浸漬されるように溶液型注入材を500ml注ぎこんで、ゲル化時間およびゲルの状態を観察した。
【0047】
なお、ゲル化時間は直径0.8cm程度の棒で液をゆっくりかき混ぜ、抵抗が急に大きくなった時間をゲル化時間とした。ゲルの状態は溶液型注入材を注ぎ込んでから7日後および28日後に目視により確認した(7日後に変化のなかったものについては28日後も変化していなかった)。他方、固結体を浸漬しない場合についてはカップ倒立法でゲル化時間を測定したが、両者の間に大差はなかった。
【0048】
実施例1〜5および参考例
カルシウムアルミネートとスラグとを主成分とする懸濁型地盤固結材(注入材)の実施例1〜5と、カルシウムアルミネートと石膏とを主成分とする懸濁型地盤固結材の参考例を下記の表5に示す。これらについて、ゲル化時間、配合液調製2分後のpHおよび密封養生1日および28日の一軸圧縮強度を表5に併記する。
【0049】
【表5】
Figure 0003545322
【0050】
実施例6〜17および比較例1、2
実施例1〜5および参考例の懸濁型注入材と、配合例1〜8の溶液型注入材とで接触試験を行い、固結体の強度および溶液型注入材の性状を測定した。その結果を下記の表6に示す。なお、表6の内容を理解し易いように、主成分をカッコ内に表示した。
【0051】
【表6】
Figure 0003545322
【0052】
実施例18〜21および比較例3
上記表5記載の配合のうち代表的なものについて、固結体浸漬水のpHを以下の方法により測定した。固結体100mlを水500mlに浸漬し3日後に浸漬水のpHを測定した。その結果は下記の表7に示す通りである。なお、配合の主成分のみを示した。また、実施例18〜21の養生水について原子吸光法によりクロムを測定したが、未検出であった。
【0053】
【表7】
Figure 0003545322
【0054】
実施例22
砂質土地盤に、図1記載の注入管を使用した注入工法において、カルシウムアルミネート1を1m当たり150kg使用して調製した懸濁液を建て込みに使用した。懸濁液は約40分で増粘した。建て込み1日後にその一部をサンプリングし、強度を測定したところ、0.45MN/mであり、注入管の固定には何ら問題はなかった。次いで、カルシウムアルミネート1を1m当たり200kg使用して調製した懸濁液を一次注入材として地盤に注入した。注入圧約0.5MPaで所定量が注入された。1ケ月後、掘削したところ浸透注入されており、固結体(サンドゲル)の強度を測定したところ0.63MN/mであった。
【0055】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば主に以下の1〜3の効果が得られる。
1.アルカリ公害が極めて少なく、水質保全性に優れている。
弱アルカリ性懸濁型地盤固結材を使用するため、アルカリ、特に水ガラスに起因するアルカリの溶脱がない。
2.重金属の溶出がない。
特に、六価クロムを含有していない材料を使用しているため、その溶脱がない。
3.溶液型固結材の耐久性が高い。
アルカリに対して耐久性の高い溶液型シリカ固結材を使用しており、懸濁型地盤固結材と併用した場合にも、固結した溶液型固結材がアルカリによって溶解することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の地盤固結工法の一具体例を示す注入管装置および地盤の断面図である。
【図2】本発明の地盤固結工法の他の具体例を示す注入管装置および地盤の断面図である。
【符号の説明】
A 注入管装置
1 外管
1a 外管管路
2 内管
2a 内管管路
3 外管吐出口
3a 外管吐出口
4 ゴムスリーブ
5 内管吐出口
6 パッカ
7 内壁面
8 地盤
9 袋パッカ
10 スリーブグラウト
11 削孔
12 空間

Claims (8)

  1. 懸濁型地盤固結材と溶液型シリカ固結材とを併用する地盤固結工法において、懸濁型地盤固結材として、カルシウムアルミネート、またはカルシウムアルミネートとスラグとを主成分とする懸濁型地盤固結材を用いることを特徴とする地盤固結工法。
  2. 上記スラグが比表面積6000cm2/g以上の微粒子である請求項1記載の地盤固結工法
  3. 上記懸濁型地盤固結材を、注入管周囲の空隙に填充するためのスリーブグラウトとして用いる請求項記載の地盤固結工法。
  4. 上記懸濁型地盤固結材を注入管周囲に填充し、一次注入材として地盤に注入する請求項記載の地盤固結工法。
  5. 上記溶液型シリカ固結材が水ガラスの脱アルカリ処理または中和処理によって得られた水溶性シリカ化合物を主成分とする請求項記載の地盤固結工法。
  6. 注入管に装着させた袋体に上記懸濁型地盤固結材を充填して、袋体を膨張させる請求項記載の地盤固結工法。
  7. 水溶性シリカ化合物を主成分とする上記溶液型シリカ固結材を上記袋体外の地盤に注入する請求項記載の地盤固結工法。
  8. 上記溶液型シリカ固結材が燐酸化合物および/または金属イオン封鎖剤を含む請求項記載の地盤固結工法。
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