JP3545099B2 - 下糸巻回装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ボビンに下糸を巻回する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上糸と下糸とを使用して縫製を行うミシン、特に高速の縫製作業を行う工業用のミシンにあっては、下糸を巻回したボビンを頻繁に交換する必要がある。一般には、下糸が消費された時にミシンの運転を一旦停止し、ボビンケースを釜から抜き取った後に、ボビンに下糸を巻回し、この下糸が新たに巻回されたボビンをボビンケースに収容して該ボビンケースを釜内に装着する一連の操作を手作業で行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような人手によるボビンへの下糸の巻回作業及びボビンケースの交換作業は極めて非能率的であり、生産性の低下の原因となっている。そこで、本出願人は、先に出願した特願平5−239194号明細書において、上記問題点の解決を図っている。
【0004】
この特願平5−239194号明細書記載の下糸自動供給装置は、ボビンへ下糸を自動的に巻回させるボビン糸巻き手段(下糸巻回装置)と、釜内のボビンを収容したボビンケースを、該ボビン糸巻き手段により下糸巻回済みのボビンを収容したボビンケースに交換するボビン交換装置と、を備えており、従ってボビンへの下糸の巻回作業及びボビンケースの交換作業の自動化が図られて生産性を向上することが可能となっている。
【0005】
また、上記装置は、縫製条件に従ってボビンに必要な下糸巻き量を予め演算し、この演算された下糸巻き量に略一致するまで、上記ボビン糸巻き手段を作動させる下糸巻量制御手段と、を備えている。すなわち、ボビンに必要な下糸巻回量を予め演算し、この演算された下糸巻回量をボビンに巻回する構成としているので、ボビンに巻回された下糸の使いの残しを極めて少なくできるようになっている。
【0006】
しかしながら、この特願平5−239194号明細書記載の装置にあっても以下の問題点があった。すなわち、上記装置にあっては、作業者が巻取り長さや糸番手を含む糸太さ入力を行うわけであるが、例えば作業者が巻取り長さの入力量を間違って入力してしまい特に巻取り長さを多く入力してしまった場合や、また例えば作業者が糸番手を含む糸太さ入力を間違えてしまい特に実際の糸太さより細い糸太さを入力してしまった場合には、ボビンの最大巻回量(ボビンの最大下糸巻回能力)より多く巻回することになってしまうことがあり、このような事態となると、下糸がボビンから溢れて装置を停止せざるを得ず、装置の信頼性が低下するといった問題があった。
【0007】
また、このような事態となってもボビンから下糸が溢れて装置が停止しない限り糸太さ入力の間違いに気が付かないといった問題もあった。
【0008】
さらにまた、入力スイッチの数が比較的多いことから、入力作業が煩雑となると共に装置が高コスト化するといった問題もあった。
【0009】
そこで本発明は、巻回される下糸がボビンの最大巻回量を上回ってボビンから溢れるというようなことがなく、信頼性が向上される一方で、指定によりこの最大巻回量をボビンに巻回することができる下糸巻回装置を提供することを第1の目的とする。
【0010】
また、本発明は、ボビンの最大巻回量を基準とした割合巻回量を外部入力に従ってボビンに巻回することができる下糸巻回装置を提供することを第2の目的とする。
【0011】
また、本発明は、糸太さ入力の間違いを検知でき、信頼性が向上される下糸巻回装置を提供することを第3の目的とする。
【0012】
また、本発明は、一部の入力スイッチを省略でき、操作性が向上されると共に低コスト化が図られる下糸巻回装置を提供することを第4の目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、請求項1の下糸巻回装置は、糸供給源からの糸をボビンに巻き付けるように回転する巻取手段と、糸供給源からの糸経路上の糸移動速度を検出する糸移動速度検出手段と、この糸移動速度検出手段の検出結果に基づいて前記巻取手段の駆動を停止する制御手段と、を備えた。
【0014】
上記第1または第2の目的を達成するために、請求項2の下糸巻回装置は、請求項1に加えて、糸移動速度検出手段は、糸の移動速度に比例した周波数を検出し、制御手段は、この糸移動速度検出手段からの所定周波数を検出すると巻取手段の駆動を停止することを特徴としている。
【0015】
上記第1の目的を達成するために、請求項3の下糸巻回装置は、請求項1に加えて、制御手段は、糸移動速度検出手段の検出結果によりボビンの下糸巻回量を検出することを特徴としている。
【0016】
上記第2の目的を達成するために、請求項4の下糸巻回装置は、請求項1に加えて、ボビンの最大巻回量を基準とした割合巻回量を設定可能な入力手段を備え、制御手段は、糸移動速度検出手段から前記割合巻回量に対応する糸移動速度を検出すると巻取手段の駆動を停止することを特徴としている。
【0017】
上記第3の目的を達成するために、請求項5の下糸巻回装置は、請求項1に加えて、糸供給源からの下糸供給量を検出する下糸供給量検出手段と、糸太さを入力可能な糸太さ入力スイッチと、前記下糸供給量検出手段及び糸太さ入力スイッチ並びに糸移動速度検出手段からの出力に基づいて、糸太さの入力エラーを判定可能な判定手段と、を備えた。
【0018】
上記第4の目的を達成するために、請求項5の下糸巻回装置は、請求項1に加えて、糸供給源からの下糸供給量を検出する下糸供給量検出手段と、この下糸供給量検出手段及び糸移動速度検出手段からの出力に基づいて、糸太さを判定可能な判定手段と、を備えた。
【0019】
【作用】
このような請求項1または2の下糸巻回装置によれば、巻取手段の回転により糸供給源からの糸はボビンに巻き付けられ、この時糸供給源からの糸経路上の糸移動速度として例えば糸の移動速度に比例した周波数が糸移動速度検出手段により検出され、この糸移動速度検出手段からの検出結果として例えば所定周波数が検出されると、巻取手段の駆動が停止される。従って、この所定周波数を例えばボビンの最大巻回量に対応させておけば、たとえ巻取り長さや糸太さの入力を間違えたとしても、下糸がボビンの最大巻回量を上回って巻かれボビンから溢れてしまうということはない。また、例えば外部入力手段による指定によって上記ボビン最大巻回量に対応する所定周波数となるまでボビンに下糸を巻回するようにすれば、ボビンには常に最大巻回量が巻かれるようになる。さらにまた、上記所定周波数を一定としてこの所定周波数となるまでボビンに下糸を必ず巻回する構成とすれば、下糸巻回量を指定する入力スイッチが必要なくなる。
【0020】
また、請求項3の下糸巻回装置によれば、糸太さをパラメータとしてボビンの下糸巻回量と糸供給源からの糸経路上の糸移動速度とには対応関係があることから、糸移動速度検出手段の検出結果に基づいてボビンの下糸巻回量が検出される。
【0021】
また、請求項4の下糸巻回装置によれば、入力手段によりボビンの最大巻回量を基準とした割合巻回量(最大巻回量の何割巻き、何十%巻きというような割合巻回量)が設定され、この入力された割合巻回量に対応する糸移動速度が糸移動速度検出手段から検出されると、制御手段により巻取手段の駆動が停止される。従って、割合巻回量がボビンに巻回されるようになる。
【0022】
また、請求項5の下糸巻回装置によれば、ボビンの下糸巻回量(下糸供給量)と糸供給源からの糸経路上の糸移動速度とには糸太さ入力スイッチにより入力される糸太さをパラメータとした対応関係があることから、判定手段により、これら糸太さ、下糸供給量検出手段並びに糸移動速度検出手段からの出力に基づいて、糸太さの入力エラーが判定され、この判定手段により入力エラーが判定されると、例えばその入力エラーが作業者に知らしめられる。
【0023】
また、請求項6の下糸巻回装置によれば、ボビンの下糸巻回量(下糸供給量)と糸供給源からの糸経路上の糸移動速度とには糸太さをパラメータとした対応関係があることから、判定手段により、これら下糸供給量検出手段及び糸移動速度検出手段からの出力に基づいて糸太さが判定される。従って、糸太さ入力スイッチが必要なくなる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。本実施例の下糸自動供給装置は、図18に示されるように、下糸巻回装置162と、残糸除去装置161と、これら下糸巻回装置162の下糸巻回位置C、残糸除去装置161の残糸除去位置B、釜位置(ボビンケース着脱位置)A、ダミー軸(ボビンケース保持手段)6のボビンケース着脱位置Dにボビンケース2を移動可能なボビン交換装置160と、から概略が構成されている。先ず、図19乃至図23を参照しながら、ボビン交換装置160について以下説明する。
【0025】
図19乃至図23において、符号1はボビンケース2が装着される釜を、1aは釜軸を、3はミシン本体に取り付けられたメインベースに立設すると共に釜1の直下に配設された支持体としてのベース板をそれぞれ示しており、該ベース板3には、釜軸1aに平行な軸心を有す搬送軸4の基端4aが固定され、該搬送軸4はベース板3に片持ち支持された状態となっている。 この搬送軸4の先端4b側(反ベース板側)には、中空円筒の外周面を軸線方向に沿って2箇所切断し該切断面が同士が対向するよう形成された搬送ブロック12(図19参照)が、当該搬送軸4に対して回転可能且つ摺動可能に支持されている。
【0026】
搬送ブロック12の各切断面には、L字状に折曲された搬送板10,10のL字を構成する一方の板状部分がそれぞれ固定されており、L字を構成する他方の板状部分は、図19に示されるように、軸線を挟んで互いに対向した状態となっている。
【0027】
各搬送板10,10には、軸線方向に沿って釜側に折曲された保持部11,11の一方の端部がそれぞれ固定されており、これら保持部11,11の他方の端部(釜側を向く端部)には、ボビンケースを把持または開放可能なボビンケース把持手段(不図示)がそれぞれ固定されている。このボビンケース把持手段としては、例えば特開平5−192476号公報の下糸自動供給装置や本出願人が先に出願した特願平5−121960号明細書のミシンの下糸自動供給装置に記載されている一対の電磁石吸着ヘッドを始めとして、例えば本出願人が先に出願した特願平5−116363号明細書のミシンの下糸自動供給装置に記載されているレバー爪によるもの等、適宜のものを採用することができ、要は、ボビンケース2を必要に応じて対向部材(例えば、釜1)に対して着脱できるものであれば良い。
【0028】
上記搬送ブロック12の外周には回動歯車13が固定されており、該回動歯車13には、図20に示されるように、釜軸1a方向に沿って長尺なる形状の駆動歯車19が噛合している。この駆動歯車19は、その一端が、ベース板3に取り付けられたモータ固定板21の搬送軸他端側に突出した部分に回転可能に支持されており、他端は、モータ固定板21に固定された回動モータ20の出力軸に直結された状態となっている。この回動モータ20には、図1及び図2に示されるように、ドライバ149が接続されており、該回動モータ20はこのドライバ149により駆動されるようになっている。
【0029】
すなわち、ドライバ149に従って回動モータ20が回転すると、駆動歯車19、回動歯車13を介して、搬送ブロック12及び搬送板10,10並びに保持部11,11から構成される回転手段としての回動アーム70が回転するようになっている。なお、この回動アーム70の回転動作は、本実施例にあっては、該回動アーム70が退避位置にある時(図20乃至図22参照)に、行われるようになっている。また、搬送軸4は片持ち支持であるが、上記駆動歯車19によりガイドされていることから、その支持強度は充分となっている。
【0030】
上記搬送ブロック12の外周における上記回動歯車13より搬送軸4の固定端側には、図示されない例えばストップリングが固定されており、該搬送ブロック12の外周における回動歯車13とストップリングとの間には、直動カラー14が回転可能に支持されている。この直動カラー14には、図19乃至図21に示されるように、釜軸1aに平行に移動可能に支持されたラック16の一端が固定されており、このラック16の他端にはピニオン17が噛合している。このピニオン17は、ベース板3に取り付けられた移動モータ18の出力軸に固定されている。この移動モータ18には、図1及び図2に示されるように、ドライバ250が接続されており、該移動モータ18はこのドライバ250により駆動されるようになっている。
【0031】
すなわち、ドライバ250に従って移動モータ18が駆動すると、ピニオン17を介してラック16と共に直動カラー14、回動アーム70が搬送軸4の軸線方向に沿って移動するようになっている。すなわち、回動アーム70は、搬送軸4に対して回転できると共に、搬送軸4に沿って摺動できるようになっている。
【0032】
上記搬送軸4の開放端側には、センサ固定板33が取付けられており、このセンサ固定板33上には、発光素子31aと受光素子31bとからなる回動センサ31が取り付けられている。また、上記回動アーム70には、図19及び図20に示されるように、センサ板32が固定されており、該回動アーム70の回転時に、センサ板32が発光素子31aと受光素子31bとの間を通過し得るように、回動センサ31及びセンサ固定板33並びにセンサ板32の位置調整がなされている。
【0033】
ベース板3には、図19及び図21に示されるように、上記回動センサ31と同構造の直動センサ41が取り付けられている。また、上記ラック16には、センサ板15が固定されており、該回動アーム70の直動時に、センサ板15が直動センサ41の発光素子41aと受光素子41bとの間を通過し得るように、直動センサ41及びセンサ板15の位置調整がなされている。
【0034】
また、ベース板3における上記ボビンケース把持手段の回転軌跡の対向位置であって、図18に示されるように、釜1直下の位置Dには、ボビンケース保持手段としてのダミー軸6が固定されている。このダミー軸6は、図23に示されるように、中釜軸5と同構造となっており、ボビンが収容されたボビンケース2を押し込めば、該ボビンケース2を保持できるようになっている。そして、押し込められたボビンケース2の既設のボビン係止爪2dが、図18に示されるように、ダミー軸6の近傍に突設された回り止め部材5aaの係止溝に係合するよう構成されている。すなわち、ボビンケース2は所定の位置に位置決めされて保持されるようになっている。
【0035】
ところで、上記下糸巻回位置C、残糸除去位置Bは、図18に示されるように、搬送軸4の下方の範囲V且つ同軸線に沿った直立平面よりミシンベッド101を起こす際の回動支点103側の範囲Wであって、ボビンケース把持手段の回転軌跡の対向位置に配置されている。また、残糸除去位置Bは下糸巻回位置Cより下方に配置されている。また、残糸除去位置Bの搬送軸線方向(図18における紙面に垂直な方向)の位置はボビンケース把持手段の退避位置にあり、下糸巻回位置Cの搬送軸線方向の位置はボビンケース把持手段を退避位置から多少前進させた位置(図18における紙面に向かって進めた位置)にある。
【0036】
残糸除去位置Bには、図1に示されるような残糸除去装置161が配設されている。この実施例の残糸除去位置161は、例えばボビン7に巻かれた糸の先端を挟持または開放可能とした挟持部材を有し、一軸線を中心に例えば残糸除去モータM2の駆動等によって回転することにより挟持部材により挟持したボビン糸を自動的に巻取可能とするものである。この残糸除去モータM2にはドライバ148が接続されており、該残糸除去モータM2はドライバ148により駆動されるようになっている。なお、上記残糸除去装置を他の構成の残糸除去位置に代えてることも可能であり、要は、該ボビンケース7をボビンケース把持手段によって把持した状態(図1の状態)若しくは上記ダミー軸6と同様な構成の保持軸に該ボビンケースが受け渡されて当該ボビンケース2を保持した状態で、ボビン7に巻かれた糸を引き出す引き出し手段の糸引き出し動作によって、ボビン7が回転されて、ボビン7に巻回された糸が引き出されるようなものであればどのようなものであっても良く、例えば本出願人が先に出願した特願平5−203610号明細書や特願平6−40351号明細書のボビンの残糸除去装置を始めとして、適宜のものを採用することができる。
【0037】
上記残糸除去装置161には、図1に示されるように、回転検出手段としての例えば反射型光センサ144が付設されている。この反射型光センサ144は、ボビンケース2の開放端側にそれぞれ配設されており、図16に示されるようなボビン7の側面に1箇所穿設された反射孔7aに対向するように配設されている。なお、符号7bは、後述の下糸巻回装置162のクラッチ機構150aにボビン7を連結させるためのクラッチ孔を示している。そして、この反射型光センサ144には、カウンタ146が接続されている。
【0038】
従って、ボビン7が回転すると、該反射型光センサ144からは、図17に示されるように、連続したパルス波が出力され、これらパルス波はカウンタ146により計数される。ここで、下糸がボビン7から除去されてしまうとボビン7の回転が停止することから、反射型光センサ144に接続されるカウンタ146の出力により、ボビン7の残糸除去時の回転数(残糸除去量)が判るようになっている。
【0039】
また、上記ボビンケース把持手段の回転軌跡の対向位置であって、図18に示される位置Cには、図1、図2、図9乃至図13に示されるような、下糸巻回装置162が配設されている。この下糸巻回装置162は、下糸巻回機構162Aと下糸繰り出し機構162Bとに大別される。
【0040】
下糸巻回機構162Aは、ボビン7を回転させるボビン駆動機構162Eを備える。このボビン駆動機構162Eについて以下説明する。図9において、符号150は巻取り軸を示しており、この巻取り軸150は図示されないベースに回転自在に支承されている。巻取り軸150の一端にはボビン7に形成されたクラッチ孔7bに連結可能なクラッチ機構150aが、他端にはプーリ150bがそれぞれ固定されている。上記ベースにはボビン駆動手段としてのボビン駆動モータM1も固定されている。このボビン駆動モータM1の出力軸にはプーリ152が固定されており、このプーリ152とプーリ150bとの間にはベルト151が掛け渡されている。上記ボビン駆動モータM1にはドライバ147が接続されており、該ボビン駆動モータM1はドライバ147により駆動されるようになっている。
【0041】
すなわち、回動アーム70の回転により下糸巻回位置Cに至ったボビンケース2が該回動アーム70の前進動作により前進すると共にドライバ147に従ってボビン駆動モータM1が駆動すると、巻取り軸150が回転すると共、該クラッチ機構150aとボビン7とが連結されるようになっている。なお、クラッチ機構は、上述のような孔に係合する構成のものに限定されるものではなく、他の構成のものであっても構わない。
【0042】
また、下糸繰り出し機構162Bは、図9に示されるように、下糸供給源としての糸巻き200(図12参照)からの下糸99を繰り出す繰り出し機構162Fを備える。この繰り出し機構162Fについて以下説明する。図9乃至図11において、符号153はコの字状のベースを示している。このベース153の一方の側板153aには、繰り出しモータM3が固定されており、その出力軸156は該側板153aを貫いている。この繰り出しモータM3にはドライバ180が接続されており、該繰り出しモータM3はドライバ180により駆動されるようになっている。また、繰り出しモータM3の回転速度は、上記ボビン駆動モータM1の回転速度より小となるように設定されている。
【0043】
一方、ベース153の他方の側板153bには、繰り出しモータM3の出力軸156に軸心を一致させた繰り出しローラ軸155が回転自在に支承されており、この繰り出しローラ軸155の反繰り出しモータM3側端部には、糸巻き200からの下糸99が巻回された(1巻きされた)繰り出しローラ154が固定されている。繰り出しモータM3の出力軸156と繰り出しローラ軸155との間には、当該軸155,156同士の回転を連結・遮断するワンウェイクラッチ157が介在している。該ワンウェイクラッチ157はスリーブ159に内蔵されており、このスリーブ159にはセンサスリット158が固定されている。
【0044】
上記ワンウェイクラッチ157は、繰り出しローラ軸155の回転速度が繰り出しモータM3の出力軸156の回転速度を上回ると、該繰り出しモータM3の出力軸156の回転を繰り出しローラ軸155に対して遮断する構成となっている。上記センサスリット158は、図14に示されるように、円盤状をなし、外周に複数の溝が設けられている。このセンサスリット158の対向位置にはフォトセンサ60が配設されており、センサスリット158の溝を検出可能となっている。すなわち、フォトセンサ60により繰り出しローラ154の回転を検出できるようになっている。
【0045】
以上のように繰り出し機構162Fは構成されており、この繰り出し機構162Fのフォトセンサ60にはカウンタ145が接続されている。従って、繰り出しローラ154が回転すると、該フォトセンサ60からは、図15に示されるように、連続したパルス波が出力され、これらパルス波はカウンタ145により計数されて、ボビン7への下糸巻回時の回転数(下糸巻回量)が判るようになっている(詳しくは後述)。すなわち、これらフォトセンサ60及びカウンタ145によりボビンに巻回される下糸量を検出する下糸量検出手段が構成されている。
【0046】
上記繰り出し機構162Fには、下糸99の緩みを取る緩み取り機構が付設されている。この緩み取り機構は、繰り出しローラ軸155に対して図示されない軸受を介して回転自在に支承され孔に下糸99が通された緩み取りレバー162aaと、この緩み取りレバー162aaを下糸99の緩みを取る方向に付勢するバネ164と、このバネ164の付勢力による緩み取りレバー162aaの回動を規制するストッパ163と、から構成されている。
【0047】
また、下糸繰り出し機構162Bは、繰り出し機構162Fにより繰り出された下糸99をボビンケース2の開口部2Aに案内するエアー案内手段162Gを備えている。このエアー案内手段162Gについて以下説明する。図9において、符号165は略中空円筒状の糸吸引器を示しており、この糸吸引器165には、図9及び図13に示されるように、内部空間と外部とを連通し上流側から下流側に向う吸引孔165aが形成されている。この糸吸引器165の上流側には、該糸吸引器165の内部空間に連通するエアーチューブ166の一端が接続されている。このエアーチューブ166の他端には電磁弁168が接続されており、この電磁弁168には図示されないエアー源が接続されている。
【0048】
糸吸引器165の下流側には、該糸吸引器165の内部空間に連通しこの糸吸引器165に対して回転可能なエアーチューブ167の一端が接続されている。このエアーチューブ167の他端側はLの字状に折曲されており、上述のクラッチ機構150aとボビン7とが連結された状態で、その先端のエアーノズル167aがボビンケース2の開口部2Aに対向するように位置調整がなされている。すなわち、電磁弁168がオンすると、エアー源からエアーが供給されて当該エアーはエアーチューブ166、糸吸引器165、エアーチューブ167を介して、エアーノズル167aから吹き出すようになっている。
【0049】
上記エアーチューブ167の途中部分は下糸巻回装置140のベース100に回転自在に支承されている。このエアーチューブ167は、バネ170により図10における反時計方向に付勢されている一方で、ノズル退避ソレノイド169の駆動により該バネ170の付勢力に抗する方向に回動される。このノズル退避ソレノイド169にはドライバ181が接続されており、該ノズル退避ソレノイド169はドライバ181により駆動されるようになっている。すなわち、ドライバ181に従ってノズル退避ソレノイド169がオフすると、バネ170の付勢力によりエアーノズル167aがボビンケース2の開口部2Aから退避し、ドライバ181に従ってノズル退避ソレノイド169がオンすると、バネ170の付勢力に抗してエアーノズル167aがボビンケース2の開口部2Aに向うようになっている。
【0050】
繰り出し機構162Fと糸巻き200との間には、図12に示されるように、下糸99の張力を可変とする糸張力可変手段204が設けられている。この糸張力可変手段204は、通過する下糸99を押圧する張力ばね205と、この張力ばね205の押圧力をマニュアル操作により調整する螺子206と、ミシンベッド100内に配され上記張力ばね205の押圧力に抗するソレノイド推力を生ぜしめるソレノイドSOLと、から構成されている。
【0051】
この糸張力可変手段204を駆動する電気回路は、ソレノイドSOLに電源Vを直列に接続し、その間にスイッチSWを介した構成となっている。
【0052】
従って、スイッチSWをオフした場合には、上記ソレノイド推力が発生せず、下糸99には張力ばね205の押圧力が最大限にかかり、下糸張力は最大となる。また、スイッチSWをオンした場合には、上記ソレノイド推力が最大限に発生し、下糸99には張力ばね205の押圧力からソレノイド推力を減じたものがかかり、下糸張力は最小となる。
【0053】
なお、上記残糸除去装置161、下糸巻回装置162が、図18乃至図23のベース板3に接触する場合には、該ベース板3は適宜切欠かれる。また、図18にあっては、残糸除去位置Bと下糸巻回位置Cとダミー軸6に対するボビン着脱位置Dが近接しており、保持部11が誇張されて記載されている。このため、保持部11が残糸除去装置161や下糸巻回装置162に接触することも心配されるが、実際には、このような接触が生じないように充分なスペースが確保されている。
【0054】
ところで、本実施例にあっては、ボビンケース把持手段は、移動モータ18により、ボビンケース着脱位置(釜位置;ダミー軸の位置)A,Dと反釜側に移動した退避位置(図20乃至図23参照)とに移動可能である。すなわち、ボビンケース把持手段が退避位置に移動すると、上記センサ板15が上記直動センサ41の発光素子41aと受光素子41bとの間を遮蔽することになり、これによってボビンケース把持手段の退避位置への移動が検出される。そして、今度は当該退避位置で、原点位置が検索される。すなわち、ボビンケース把持手段を退避位置で回動させ、センサ板32が発光素子31aと受光素子31bとの間を遮蔽した位置を例えば原点位置としておけば、この位置にボビンケース把持手段を回動すれば原点位置に復帰することになる。また、上記回動モータ20として例えばパルスモータを用いた場合には、このパルスモータのパルス数をカウントすることによって、該ボビンケース把持手段を、上記釜位置A、下糸巻回位置C、残糸除去位置B、ダミー位置Dに、回動制御することができる。
【0055】
また、上記下糸自動供給装置には操作パネル252が付設されており(図1参照)、この操作パネル252には、図2に示されるように、電源スイッチ252a、操作スイッチ252b、下糸量設定手段としての設定スイッチ252cが付設されている。電源スイッチ252aはメイン電源をオン・オフするものである。
【0056】
操作スイッチ252bは、さらに自動スタートスイッチ252ba、マニュアルスタートスイッチ252bb、マニュアルストップスイッチ252bc、縫製パターン入力スイッチ252bdを備えている。
【0057】
自動スタートスイッチ252baは、電源スイッチ252aがオンされる度に下糸自動供給装置を自動スタートモードにし自動スタートさせるためのものである。この自動スタートモードの解除は、自動スタートスイッチ252baをオフすることによりなされる。
【0058】
マニュアルスタートスイッチ252bbは、自動スタートモードが選択されていない時に、オペレーターが必要に応じて下糸自動供給装置をスタートさせるためのものである。
【0059】
マニュアルストップスイッチ252bcは、下糸自動供給装置の動作中に、オペレーターが必要に応じて下糸自動供給装置を停止させるためのものである。
【0060】
縫製パターン入力スイッチ252bdは、縫製パターンの入力に応じて、後述の切換手段63に切換え信号を入力するものである。
【0061】
設定スイッチ252cは、ディップスイッチ、コードスイッチ等よりなり、これらによって糸太さ、糸巻取り長さを入力できるようになっている。このうち、糸巻取り長さの設定に関しては、大まかで大きめの値の設定が可能となっている(詳しくは後述)。また、この設定スイッチ252cには割合巻回量設定スイッチが付設されている。この割合巻回量設定スイッチとは、ボビンの最大巻回量(最大巻回許容量)を基準とした割合巻回量(最大巻回量の何割巻き、何十%巻きというような割合巻回量)を設定できるもので、例えば100%巻き(最大巻回量)、50%巻き(最大巻回量の半分)、10%巻き(最大巻回量の1/10)というような設定が可能となっている。
【0062】
上記ドライバ147,148,149,180,181,250、電磁弁168、カウンタ145,146、フォトセンサ60、電源スイッチ252a、操作スイッチ252b、設定スイッチ252c及びミシン本体251には、図1及び図2に示されるように、下糸自動供給装置制御手段(CPU)255が接続されている。
【0063】
この下糸自動供給装置制御手段255は、図2に示されるように、カウンタ145からの下糸巻回時の繰り出しローラ回転計数(下糸巻回長さに対応)を監視しながら下糸巻回装置162の駆動・停止を制御する信号をドライバ147,180,181、電磁弁168に送出する下糸巻回装置制御手段260(詳しくは後述)と、カウンタ146からの残糸除去時のボビン回転計数(残糸長さに対応)を監視しながら残糸除去装置161の駆動・停止を制御する信号をドライバ148に送出する残糸除去装置制御手段262と、カウンタ145からの下糸巻回時の繰り出しローラ回転計数(下糸巻回長さに対応)及びカウンタ146からの残糸除去時のボビン回転計数(残糸長さに対応)並びに設定スイッチ252cより入力される糸太さに基づいて、(下糸巻回時の繰り出しローラ回転計数に基づくボビン下糸巻回量)−(残糸除去時のボビン回転計数に基づく残糸量;上記糸太さに応じてその残糸量を補正したもの)という演算を行うことにより次回の縫製に必要な下糸量(今回の実際の下糸消費量;次回の下糸巻回時の下糸巻回量)を算出すると共に、この次回の縫製に必要な下糸量(次回の下糸巻回時の繰り出しローラ回転計数;設定下糸巻回量)を、ボビンに巻回するよう下糸巻回装置制御手段260に信号として送出する演算手段264と、を備えている。
【0064】
下糸自動供給装置制御手段255は、さらに設定スイッチ252cからの入力に従って、設定された糸巻取り長さを繰り出しローラの回転数に換算する回転数換算手段265を備えており、この下糸設定回転数と上記次回の下糸巻回時の繰り出しローラ回転数とを切換えて下糸巻回装置制御手段260に送出する切換手段263を備えている。この切換手段263による切換えは、例えば電源スイッチ252a、操作スイッチ252bからの入力に従って行われる。すなわち、電源スイッチ252aのオン時には実際の縫製を未だしておらず次回の下糸巻回時の繰り出しローラ回転数が算出されていないので、下糸設定回転数が下糸巻回装置制御手段260に送出されるよう切換えがなされる。但し、下糸巻回装置制御手段260からの信号により2番目または3番目のボビンに対しては次回の下糸巻回時の繰り出しローラ回転数が下糸巻回装置制御手段260に送出されるよう切換えがなされる(詳しくは後述)。また、操作スイッチ252bによる縫製パターン変更時も同様に、下糸設定回転数が下糸巻回装置制御手段260に送出されるよう切換えがなされる。
【0065】
また、下糸巻回装置制御手段260は、カウンタ145からの下糸巻回時の繰り出しローラ回転計数に基づいて下糸のボビン軸への絡み付きを検出できるようになっている。そして、この絡み付き以降の繰り出しローラ回転計数を下糸巻回量とし、ボビン駆動モータM1の駆動・停止を制御するようになっている。また、この絡み付き以降の繰り出しローラ回転計数を下糸巻回量とするよう上記演算手段264に信号を送出するようになっている(これらに関しては詳しくは後述)。
【0066】
また、下糸自動供給装置制御手段255は、フォトセンサ60からの信号に基づいて、供給される下糸の移動速度として例えばローラ周波数を検出する周波数検出手段350を備えている。この周波数の検出としては、例えば一定時間内に検出パルスが幾つ発生するかということを把握することによりなされる。
【0067】
ここで、この検出パルス周波数FMとカウンタ145の出力から求まる巻取長さとの間には、図3(f)に示される関係がある。すなわち、ボビン駆動モータM1が一定速度で回転してボビンに下糸を巻回していくと、ボビン回転速度は一定であるが、下糸供給路の糸移動速度(周波数)はボビンに下糸が巻回され下糸径が大きくなるに比例して大きくなっていく。この比例関係は糸太さにより図示の如く変動する(傾きが異なる)が、糸太さに拘らずボビンに巻回できる最大下糸巻回量は一定の周波数Fmaxとなる。従って、本実施例においては、下糸巻回装置制御手段260に入力される周波数検出手段350からの周波数FMが上記最大周波数Fmaxとなったら、ボビン駆動モータM1の駆動を停止し、それ以上下糸が巻回されてボビンから溢れないようになっている。因に、本実施例に用いられているボビン駆動モータM1は、パルスモータやサーボモータのように定速度回転可能なモータである。
【0068】
また、下糸自動供給装置制御手段255は、上記周波数検出手段350からの周波数FM、カウンタ145の出力から求まる巻取長さ、設定スイッチ252cの糸太さ入力スイッチから入力される糸太さに基づいて糸太さの入力エラーを判定可能な糸太さ入力エラー判定手段351を備えている。すなわち、この糸太さ入力エラー判定手段351は、図3(f)に示されるようなデータテーブルを記憶しており、実際に検出している周波数FM、巻取長さに基づいて糸太さが判るようになっており、データテーブルより求められた太さが入力されている糸太さと異なった場合には、糸太さ入力を間違えたとして異常警告手段300に動作指令を送出し、例えば警報ランプ300aを点滅させたりエラーブザー300bを鳴らしめるようになっている。なお、糸太さの判定としては、例えばある一定巻取長さ間における周波数の変動を求めて糸太さ直線(図3(f)参照)の傾きを算出し、この傾きにより糸太さを判定するようにするとさらに高精度になる。
【0069】
また、下糸巻回装置制御手段260は、上記設定スイッチ252cの割合巻回量設定スイッチ入力による入力がなされた場合には、この設定された割合量となるとボビン駆動モータM1の駆動を停止するようになっている。すなわち、割合巻回量設定スイッチ入力が例えば100%巻き(最大巻回量)の場合には、上記周波数Fmaxとなるまで下糸を巻回するようになっている。また、割合巻回量設定スイッチ入力が例えば50%巻き(最大巻回量の半分)の場合には、上記周波数Fmaxを基準とした半分まで下糸を巻回するようになっている。
【0070】
また、下糸自動供給装置制御手段255は、ボビン交換装置160の駆動・停止を制御する信号をドライバ149,250に送出するボビン交換装置制御手段261と、ミシン本体251を制御するミシン制御手段266と、ボビン交換装置制御手段261及び上記自動スタートスイッチ252ba並びにマニュアルスイッチ252bb,252bcからの情報に基づいて、ミシン制御手段266、ボビン交換装置制御手段261に動作禁止指令または動作許可指令を送出する動作禁止・許可指令発生手段80と、を備えている。
【0071】
すなわち、動作禁止・許可指令発生手段80は、自動スタートスイッチ252baにより自動スタートモードが選択されている場合には、電源オン後に、ミシン制御手段266に動作禁止指令を、ボビン交換装置制御手段261に動作許可指令をそれぞれ送出し、ボビン交換装置160に対して決められた手順の動作を行わせるようになっている。勿論、手順中にボビン交換装置制御手段261と残糸除去装置制御手段262、下糸巻回装置制御手段260との間で信号の授受がなされ、残糸除去装置161、下糸巻回装置162も駆動されるようになっている(詳しくは後述)。
【0072】
また、自動スタートスイッチ252baにより自動スタートモードが選択されておらず且つマニュアルスタートスイッチ252bbがオフの場合には、ミシン制御手段266に動作許可指令を、ボビン交換装置制御手段261に動作禁止指令をそれぞれ送出するようになっている。
【0073】
また、マニュアルスタートスイッチ252bbのオンにより装置がスタートされた場合には、ミシン制御手段266に動作禁止指令を、ボビン交換装置制御手段261に動作許可指令をそれぞれ送出し、ボビン交換装置160に対して決められた手順の動作を行わせるようになっている。
【0074】
また、動作禁止・許可指令発生手段80は、ボビンケース2を釜から取り出した場合にマニュアルストップスイッチ252bcのオン・オフの確認を行い、オンの場合には、ミシン制御手段266に動作許可指令を、ボビン交換装置制御手段261に動作禁止指令をそれぞれ送出するようになっており、オフの場合には、ミシン制御手段266に動作禁止指令を、ボビン交換装置制御手段261に動作許可指令をそれぞれ送出するようになっている。
【0075】
さらにまた、動作禁止・許可指令発生手段80は、ミシン制御手段266から縫製終了信号を受けた場合には、ミシン制御手段266に動作禁止指令を、ボビン交換装置制御手段261に動作許可指令をそれぞれ送出するようになっており、ボビンケース2が釜に装着された場合には、ミシン制御手段266に動作許可指令を、ボビン交換装置制御手段261にも動作許可指令をそれぞれ送出するようになっている。
【0076】
なお、本実施例にあっては、ミシン制御手段266に縫製を制御する機能を持たせていないが、例えば電源スイッチ252a、縫製パターン入力スイッチ252bdからの入力信号に従って、ミシン251の縫製動作を制御させることも可能である。
【0077】
上記下糸自動供給装置制御手段255には、処理手順をプログラム及び固定データの形で格納するROM253、演算に使用するデータや演算結果等を一時的に記憶するRAM254が接続されている。ROM253に書き込まれたプログラムをフローチャートで示すと図4乃至図8のようになる。
【0078】
以下、プログラムに従い本装置の動作を説明する。プログラムがスタートし、先ず、電源スイッチ252aが投入されると、ステップ1において、ミシン本体251に動作禁止指令を出す。これは、釜1からボビンケース2を取り出す際に、誤ってペダルを踏んだりしてミシンが作動するのを防止するためである。次いで、ステップ2へ進み、ステップ2において、下糸自動供給装置の初期化を行う。
【0079】
ここでは、現在の状態(前回の電源スイッチ252aオフ時の状態)を検出し、若し釜1にボビンケース2が入っている状態であれば、該ボビンケース2を釜1から取り出し、その後残糸除去し、また下糸巻回途中の状態であれば、下糸を切断し、その後残糸除去する。すなわち、ボビンケース2を下糸が巻回されていない状態とする。これらボビンケース2の釜1に対する着脱動作、下糸巻回動作、残糸除去動作に関しては後述する。また、切換手段263により、下糸自動供給装置制御手段255の接続を設定スイッチ252c側に切換える。
【0080】
そして、ステップ3へ進み、ステップ3において、ボビン交換装置160の回動アーム70を回動して、把持されたボビンケースを待機位置で待機させる。この待機位置は何処であっても構わない。なお、説明の都合上、待機しているボビンをボビンX、他方のボビンをボビンYとする。そして、この時、下糸自動供給装置全体も待機状態となる。次いで、ステップ4に進み、ステップ4において、下糸自動供給装置を電源オン後に自動でスタートさせる自動スタートモードが選択されているか否かを判定する。そして、自動スタートモードが選択されていない場合にはステップ5に進み、ステップ5において、下糸自動供給装置をマニュアル(手動)でスタートさせるマニュアルスタートスイッチをオンしたか否かを判定し、オンしていない場合にはステップ5aに進み、ステップ5aにおいて、ミシン本体251にミシン動作を許可する信号を送出してステップ5にリターンし、マニュアルスタートスイッチがオンされるまで同様な動作を繰り返す。従って、この待機状態にあっては、オペレーターは手作業でボビンを交換し、縫製を行うことになる。一方、ステップ5において、マニュアルスタートスイッチをオンしたと判定した場合には、ステップ5bに進み、ステップ5bにおいて、ミシン本体251にミシン動作を禁止する信号を送出してステップ6へ進む。
【0081】
また、ステップ4において、自動スタートモードが選択されたと判定した場合にもステップ6へ進み、ステップ6において、設定スイッチ252cから入力される糸太さ、糸巻取り長さLmを読み込んでステップ7に進み、ステップ7において、設定された糸巻取り長さLmを繰り出しローラ154の回転数に換算する。すなわち、糸巻取り長さLmをボビンに巻回するには繰り出しローラ154を何回転させれば良いかという、その回転数Rmを算出する。
【0082】
そして、ステップ8へ進み、ステップ8において、一方のボビンXを下糸巻回位置Cへ搬送してステップ9へ進み、ステップ9において、ボビンXに下糸を巻回する。
【0083】
この巻回動作の手順を詳細に表したのが図7である。先ず、ステップ1に進む前に、繰り出しローラ154に、糸巻き200、糸張力可変手段204からの下糸99を1巻きすると共に、この1巻きした下糸を緩み取りレバー162aaの孔に通しておく。この時点で、糸張力可変手段204のスイッチSWをオンにし、上記ソレノイド推力を最大限に発生させて下糸張力を最小とする。次いで、この下糸99の糸端を糸吸引器165の吸引孔165aに挿入し、少々押し込む。次いで、回動アーム70の回転により下糸巻回位置Cに至ったボビンケース2を該回動アーム70の前進動作により前進させると共にボビン駆動モータM1を一時駆動して、クラッチ機構150aとボビンXとを連結する。
【0084】
そして、ステップ1において、ボビン駆動モータM1を駆動しボビンXを回転させる(図3参照)。次いで、ステップ2に進み、ステップ2において、電磁弁168をオンし、エアーチューブ166,167にエアー源からのエアーを流し、吸引孔165aに挿入し押し込まれていた下糸99を、エアーの流れによってエアーノズル167aに導いてその糸端を該エアーノズル167aより露出させる。次いで、ステップ3へ進み、ステップ3において、ノズル退避ソレノイド169をオンし、エアーノズル167aをボビンケース2の開口部2Aに向わせる。次いで、ステップ4に進み、ステップ4において、繰り出しモータM3をオンし、下糸99を繰り出す。すると、ボビンケース2内に導かれた下糸99はボビン軸回転とボビンケース内に形成された渦流との共働によってボビン軸に絡み付く。
【0085】
次いで、ステップ5に進み、ステップ5において、繰り出しモータM3が規定ステップに達したか否かを判定し、達していない場合には達するまで同様な判定を繰り返し、達した場合にはステップ6に進み、ステップ6において、繰り出しモータM3をオフしてステップ7へ進み、ステップ7において、カウンタ145からの回転計数に従って下糸99がボビン軸に絡み付いたか否かを判定する。
【0086】
すなわち、ステップ6において、繰り出しモータM3をオフしていることから、下糸がボビン軸に絡み付いていない場合には、カウンタ145からの回転計数は増加しないが、下糸がボビン軸に絡み付いた場合には、繰り出しローラ154が回転しフォトセンサ60からはパルスが出力されてカウンタ145からの回転計数が増加する。従って、繰り出しモータM3をオフ後にカウンタ145の回転計数が増加したら、下糸99がボビン軸に絡み付いたと判定できる。また、繰り出しモータM3をオフしていることから、ワンウェイクラッチ157により、該繰り出しモータM3の出力軸156の回転は繰り出しローラ軸155に対して遮断され、繰り出しローラ154は以降ボビン駆動モータM1の回転速度で駆動される。
【0087】
そして、ステップ7において、下糸99がボビン軸に絡み付いていない場合には、ステップ4にリターンし、繰り出しモータM3を再駆動すると共に、ノズル退避ソレノイド169のオン及び電磁弁168のオンを、そのまま続行させる(図3(a)〜(c)の点線部参照)。すなわち、リトライ動作を行わせる。
【0088】
そして、ステップ7において、下糸99がボビン軸に絡み付いたと判定された場合には、ステップ8に進み、ステップ8において、ノズル退避ソレノイド169をオフし、エアーノズル167aをボビンケース2の開口部2Aから退避させてステップ9に進み、ステップ9において、電磁弁168をオフしてステップ10に進み、ステップ10において、カウンタ145からの有効検出パルス総数PMを読み込むと共に、検出パルス周波数FMを測定する。
【0089】
ここで、ボビン回転ではなくカウンタ145からの有効検出パルス総数PMを基にして下糸巻回量を検出していることから(供給している下糸の長さを基にしていることから)、当該下糸巻回量はボビン回転によるものより精度が向上されている。また、下糸巻回量は下糸のボビン軸への絡み付きを検出してからカウントがなされるようになっており、これもまた下糸巻回量の精度を向上する一因となっている。
【0090】
そして、ステップ11に進み、ステップ11において、PM<Pm(設定された巻取長さLmに対応するパルス総数)であるか否かを判定し、PM≧Pmの場合には、設定された巻取長さLmを巻回できたとしてステップ18に進み、ステップ18において、ボビン駆動モータM1を停止してステップ16に進み、ステップ16において、糸張力可変手段204のスイッチSWをオフにし、上記ソレノイド推力をなくして下糸張力を最大にした状態で、該ボビンケース2の開口部2Aより導出する下糸99をボビンケースに自動的に糸掛し、この糸掛け動作が終わったら、糸張力可変手段204のスイッチSWをオンし、上記ソレノイド推力を最大限に発生させて下糸張力を最小とした状態で、下糸張力ばね下から導出する下糸を所定量残した切断を自動的に行う。
【0091】
このボビンケース2への糸掛け機構及び糸掛けのなされた下糸の切断機構に関しては、例えば特開平5−192476号公報や特願平4−18868号明細書等に記載の機構を適宜採用できるが、本願発明要旨とは直接関係ないので、ここでの説明は省略する。
【0092】
そして、ステップ17に進み、ステップ17において、上記PM、FMを基に図3(f)に示されるデータテーブルに従って糸太さを判定し記憶するが、入力された糸太さと異なる場合には異常警告手段300を動作させ、糸太さ入力の間違いをオペレーターに知らしめるようになっている。
【0093】
一方、ステップ11において、PM<Pmの場合にはステップ12に進み、ステップ12において、FM<Fmaxであるか否かを判定し、FM<Fmaxの場合にはステップ10にリターンし、FM≧Fmaxの場合には例えば糸太さや巻取長さの入力ミスによって下糸巻回中にボビンから下糸が溢れてしまうとしてステップ13に進み、ステップ13において、ボビン駆動モータM1を停止してステップ14に進み、ステップ14において、異常警告手段300を動作させて異常をオペレーターに知らしめて、ステップ15に進み、ステップ15において、Pm←PMにしてステップ16に進み、以降は上記と同様な流れとなる。
【0094】
そうしたら、図4に示されるステップ10に進み、ステップ10において、回動アーム70を回転すると共に釜側に前進させ、ボビンケース把持手段によりボビンXを釜内に装着してステップ11へ進み、ステップ11において、ミシン本体251の動作を許可する。すなわち、縫製が可能な状態となって縫製が開始される。
【0095】
次いで、ステップ12へ進み、ステップ12において、釜内のボビンXを用いた縫製中に、回動アーム70を後退させると共に回転し、他方のボビンYを下糸巻回位置Cへ搬送してステップ13へ進み、ステップ13において、ボビンYに下糸を巻回する。このボビンYへの下糸巻回動作は、上記ボビンXと同様に、図7に示されるフローに従って行われる。この時の糸巻取り長さはボビンXと同様にLmである。
【0096】
このようにして、ボビンYに下糸が巻回されたらステップ14へ進み、ステップ14において、ボビンXに対する所定枚数N枚の縫製が終了したか否かを、例えばミシン251の糸切り信号等により判定し、ボビンXに対する縫製が終了していない場合には終了するまで同様な判定を繰り返し、ボビンXに対する縫製が終了した場合にはステップ15へ進み、ステップ15において、ミシン動作を禁止してステップ16へ進み、ステップ16において、回動アーム70を回転すると共に釜側に前進させ、ボビンケース把持手段により、釜内の残糸のあるボビンXを回動アーム70の一端に保持し、回動アーム70を後退させる。
【0097】
次いで、ステップ17へ進み、ステップ17において、下糸自動供給装置をマニュアル(手動)でストップさせるマニュアルストップスイッチをオンしたか否かを判定し、マニュアルストップスイッチがオンされた場合には、ステップ18に進み、ステップ18において、ミシン本体251にミシン動作を許可する信号を送出してステップ17にリターンし、マニュアルストップスイッチがクリアされるまで同様な動作を繰り返す。従って、この待機状態にあっては、オペレーターは手作業で下糸を巻回したボビンを釜に装着し、縫製を行うことになる。一方、ステップ17において、マニュアルストップスイッチがオンされていないと判定した場合には、ステップ17aに進み、ステップ17aにおいて、ミシン本体251にミシン動作を禁止する信号を再度送出してステップ19へ進み、ステップ19において、回動アーム70を回転すると共に釜側に前進させ、ボビンケース把持手段により、ボビンYを釜内に装着してステップ20へ進み、ステップ20において、ミシン本体251の動作を許可し、縫製を開始する。
【0098】
そして、ステップ21へ進み、ステップ21において、回動アーム70をガイド軸4の後退位置に後退すると共に回転し、回動アーム70の一端に保持している残糸付きボビンXを残糸除去位置Bへ進ませて、ステップ22へ進み、ステップ22において、ボビンXの残糸を除去する。
【0099】
この残糸除去動作の手順を詳細に表したのが図8であり、先ず、ステップ1において、残糸除去モータM2を駆動しボビンXに残っている残糸の巻取を開始してステップ2へ進み、ステップ2において、ボビンXの残糸が除去されているか否かを判定する。この判定は、ボビンXの残糸が除去されてしまうとボビンXの回転が停止し、反射型光センサ144からパルス波が出力されなくなることによりなされる。
【0100】
そして、ステップ2において、パルス波が出力されている場合には残糸除去中としてパルス波が出力されなくなるまで同様な判定を繰り返し、一方パルス波が出力されなくなった場合には残糸除去が完了したとしてステップ3へ進み、ステップ3において、残糸除去モータM2の駆動を停止してステップ4へ進み、ステップ4において、反射型光センサ144及びカウンタ146によって検出されるボビンXの残糸除去時の回転数(残糸除去量)Rzを記憶して、図8に示される残糸除去処理のフローを終了する。
【0101】
そして、図5に示されるメインフローのステップ23へ進み、ステップ23において、ボビンXの残糸除去時の回転数(残糸除去量)Rzを残糸長さLzに換算する。この時、残糸除去長さLzは、ボビン回転数Rzに糸太さを考慮して補正される。そして、ステップ24へ進み、ステップ24において、ボビンXを用いての実際の縫製による下糸消費長さ(下糸消費量)Lsを、Ls=Lm−Lzから算出してステップ25へ進み、ステップ25において、次回の縫製に必要な下糸量(繰り出しローラ回転数に対応)Lm=Ls+Lz(min)から算出する。ここで、Lsはステップ24において算出された値であり、Lz(min)は、残糸除去装置161の挟持部材による挟持に必要とされるボビンケース2から導出する下糸長さであり、このように、Lz(min)を、次回の縫製に必要な下糸量Lmに加味すると、さらにその下糸巻回量Lmの精度を向上することができる。
【0102】
そして、ステップ26へ進み、ステップ26において、次回の縫製に必要な下糸量Lmを、上記繰り出しモータM3の回転数Rmに換算してステップ27へ進み、ステップ27において、回動アーム70を回転し、残糸の除去された空ボビンXを下糸巻回位置Cへ進ませる。そうしたら、ステップ28へ進み、ステップ28において、下糸巻回装置162によって空ボビンXに下糸を巻回する。このボビンXへの下糸巻回動作は、上記と同様に、図7に示されるフローに従って行われる。この時の糸巻取り長さはステップ25にて算出された値Lmである。
【0103】
そして、ステップ29〜ステップ43の処理を行うが、このステップ29〜ステップ43の処理は、ステップ14〜ステップ28において行った処理をボビンX,Yを入れ換えて行うようにしたものなので、ここでの説明は省略する。そして、ステップ43の処理が終わったら、ステップ14へリターンする。
【0104】
ところで、上記装置にあっても、先ず最初にボビンケース把持手段にボビンケース2を装着するには手作業が必要となる。このような場合にあっては、先ず、回動アーム側から手を差し込んで、下糸巻回済みのボビンを収容したボビンケースを、中釜軸5に装着するのと同様に、手の平を返すことなくダミー軸6に押し込んで、各々のボビンケースをそれぞれダミー軸6に装着する。
【0105】
次いで、電源スイッチがオンされたら、回動アーム70を原点位置に復帰させ、スタートスイッチのオンにより、回動アーム70を回動させて一方のボビンケース把持手段をダミー位置Dに対向させる。そして、該回動アーム70を前進させて、該ダミー軸6に保持されている下糸巻回済みのボビンを収容したボビンケースを一方のボビンケース把持手段に把持させることにより、ボビンケース把持手段にボビンケースを装着できるようになっている。
【0106】
また、ボビンケース把持手段に把持されているボビンケースを取り出す場合若しくは色違いの下糸を使用するためにボビンケースを一時的にダミー軸6に保持させておく場合にあっては、ボビンケースを把持したボビンケース把持手段をダミー軸6に対向させると共に、前進させれば、該ボビンケース把持手段に把持されていたボビンケースをダミー軸6に受け渡すことができる。また、ボビンケースを取り出す場合には、中釜軸5からボビンケースを取り出すのと同様に、回動アーム側から手を差し込めば、手の平を返すことなくダミー軸6に保持されているボビンケースを取り出すことができる。
【0107】
すなわち、本実施例にあっては、ダミー軸6を設けることにより、ボビンケース把持手段に対するボビンケース2の脱着をする際に、ダミー軸6に対してボビンケース2を手の平を返すことなく脱着でき、ボビンケース把持手段に対するボビンケース2の着脱を容易に行い得るようになっている。
【0108】
このように、本実施例においては、ボビン駆動モータM1の回転により糸巻き200からの下糸99をボビン7に巻き付け、この時糸巻き200からの糸経路上の糸移動速度として例えば糸の移動速度に比例した周波数を周波数検出手段350により検出し、この周波数検出手段350からの検出結果として例えば所定周波数Fmaxを検出すると、ボビン駆動モータM1の駆動を停止する一方で、この所定周波数Fmaxをボビンの最大巻回量に対応させ、たとえ巻取り長さや糸太さの入力を間違えたとしても、下糸がボビンの最大巻回量を上回って巻かれてボビンから溢れてしまうことがないよう構成しているので、信頼性を向上することが可能となっている。
【0109】
また、設定スイッチ252cの割合巻回量設定スイッチによる指定によって上記所定周波数Fmaxとなるまでボビンに下糸を巻回するようにしているので、これにより糸太さ等に拘らずボビンに常に最大巻回量を巻回することができるようになっている。
【0110】
また、設定スイッチ252cの割合巻回量設定スイッチによりボビンの最大巻回量を基準とした割合巻回量(最大巻回量の何割巻き、何十%巻きというような割合巻回量)を設定し、この入力された割合巻回量に対応する周波数を周波数検出手段350が検出すると、下糸巻回装置制御手段260によりボビン駆動モータM1の駆動を停止するよう構成しているので、ボビンの最大巻回量を基準とした割合巻回量を割合巻回量設定スイッチに従ってボビンに巻回することが可能となっている。
【0111】
また、ボビンの下糸巻回量(下糸供給量)PMと糸供給源からの糸経路上の糸移動速度としての周波数FMとには糸太さ入力スイッチにより入力される糸太さをパラメータとした対応関係があることから、糸太さ入力エラー判定手段351により、糸太さ、下糸供給量検出手段60,145並びに周波数検出手段350からの出力に基づいて、糸太さの入力エラーを判定し、この判定手段351により入力エラーを判定すると、例えば入力エラーを作業者に知らしめるよう構成しているので、糸太さ入力の間違いを検知することができるようになっており、信頼性を向上することが可能となっている。
【0112】
また、本実施例の装置によれば以下の効果のもある。すなわち、下糸絡み付き検出手段(カウンタ145及び下糸巻回装置制御手段260)により下糸のボビン軸への絡み付きを検出しないと、下糸のボビン軸への絡み付きに必要な動作を再度またはそのまま行い、この動作により下糸のボビン軸への絡み付きの可能性を高めるよう構成しているので、信頼性をさらに向上することが可能となっている。
【0113】
また、実際に巻回されている下糸巻回量を、ボビン軸への絡み付き以降のものとすると共にボビン回転によるものではなく繰り出しローラ154の回転に基づくものとするよう構成しているので、糸太さに拘らずボビン7の下糸巻回量を正確に把握することが可能となっている。
【0114】
また、残糸除去装置161によりボビン7の残糸を除去し、この残糸量を反射型光センサ144及びカウンタ146により検出し、この残糸量及びボビンに巻回された下糸量に基づいて、演算手段264により次回の縫製に必要な下糸量を演算し、この次回の縫製に必要な下糸量を下糸巻回装置制御手段260に送出し、この下糸巻回装置制御手段260により下糸巻回装置162を駆動し、ボビン7に巻回される下糸量を反射型光センサ60及びカウンタ145により検出して、ボビン7に巻回される下糸量が次回の縫製に必要な下糸量に一致したら、下糸巻回装置制御手段260により下糸巻回装置162の駆動を停止し、実際の下糸消費量を次回の縫製に必要な下糸量としてボビンに巻回するよう構成しているので、毎回決まったパターンを縫製するミシンに対しては、ボビンの下糸の使い残しを最小限に抑えることが可能となっている。
【0115】
以上本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもなく、例えば、上記実施例においては、下糸供給側の糸移動速度として例えば糸移動速度に比例した周波数を用いているが、周波数に限定されるものではなく、例えば糸移動速度に比例した音波等を用いるようにしても良い。
【0116】
また、糸太さをパラメータとしてボビンの下糸巻回量と糸供給源からの糸経路上の糸移動速度(周波数)とには、図3(f)に示されるような対応関係があることから、図3(f)に示されるようなデータテーブルを記憶しておいて、糸移動速度検出手段(周波数検出手段)350の検出結果に基づいてボビンの下糸巻回量を検出するようにすることも可能である。
【0117】
また、上記実施例では、図3(f)に示されるようなデータテーブルを記憶しているので、実際に検出している周波数FM、巻き取り長さに基づいて糸太さを判定できる。このため、設定スイッチ252cからの糸太さ入力を省略しても、判定した糸太さから残糸除去時の残糸長さを正確に測定できるので、次回の縫製に必要な下糸量を高精度に算出することができる。また、このようにした場合には、糸太さ入力スイッチが要らなくなることから、操作が容易になると共に低コスト化を図ることが可能となる。
【0118】
さらにまた、上記実施例では、下糸巻回量を指定する入力スイッチ(糸巻取り長さ入力スイッチ、割合巻回量設定スイッチ等)に従ってボビンに下糸を巻回するようにしているが、この下糸巻回装置自体を一定の周波数に対応するボビン下糸巻回量(ボビン最大巻回量を含む)をボビンに必ず巻回する装置とすれば、下糸巻回量を指定する入力スイッチが必要なくなり、操作が容易になると共に低コスト化を図ることが可能となる。
【0119】
なお、ボビン駆動モータM1が定速度回転できないモータの場合には、検出パルスの周波数の測定を以下のようにすれば良い。すなわち、モータの回転量に応じて基準信号を発生させ、この基準信号の間に発生する検出パルスの数を数えれば良く例えばモータ一回転に一回基準パルスを発生させるようにすれば良い。
【0120】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1または2の下糸巻回装置によれば、巻取手段の回転により糸供給源からの糸をボビンに巻き付け、この時糸供給源からの糸経路上の糸移動速度として例えば糸の移動速度に比例した周波数を糸移動速度検出手段により検出し、この糸移動速度検出手段からの検出結果として例えば所定周波数を検出すると、巻取手段の駆動を停止するよう構成したものであるから、この所定周波数を例えばボビンの最大巻回量に対応させれば、たとえ巻取り長さや糸太さの入力を間違えたとしても、下糸がボビンの最大巻回量を上回って巻かれてボビンから溢れてしまうことがなく、信頼性を向上することが可能となる。また、例えば外部入力手段による指定によって上記所定周波数となるまでボビンに下糸を巻回するようにすれば、これにより糸太さ等に拘らずボビンには常に最大巻回量を巻回することが可能となる。また、例えば上記所定周波数を一定としてこの所定周波数となるまでボビンに下糸を必ず巻回する構成とすれば、下糸巻回量を指定する入力スイッチが必要なくなり、操作性の向上及び低コスト化を図ることが可能となる。
【0121】
また、請求項3の下糸巻回装置によれば、請求項1に加えて、糸太さをパラメータとしてボビンの下糸巻回量と糸供給源からの糸経路上の糸移動速度とには対応関係があることから、糸移動速度検出手段の検出結果に基づいてボビンの下糸巻回量を検出することも可能である。
【0122】
また、請求項4の下糸巻回装置によれば、請求項1に加えて、入力手段によりボビンの最大巻回量を基準とした割合巻回量(最大巻回量の何割巻き、何十%巻きというような割合巻回量)を設定し、この入力された割合巻回量に対応する糸移動速度を糸移動速度検出手段が検出すると、制御手段により巻取手段の駆動を停止するよう構成したものであるから、ボビンの最大巻回量を基準とした割合巻回量を外部入力に従ってボビンに巻回することが可能となる。
【0123】
また、請求項5の下糸巻回装置によれば、請求項1に加えて、ボビンの下糸巻回量(下糸供給量)と糸供給源からの糸経路上の糸移動速度とには糸太さ入力スイッチにより入力される糸太さをパラメータとした対応関係があることから、判定手段により、糸太さ、下糸供給量検出手段並びに糸移動速度検出手段からの出力に基づいて、糸太さの入力エラーを判定し、この判定手段により入力エラーを判定すると、例えば入力エラーを作業者に知らしめるよう構成したものであるから、糸太さ入力の間違いを検知することができるようになり、信頼性を向上することが可能となる。
【0124】
また、請求項6の下糸巻回装置によれば、請求項1に加えて、ボビンの下糸巻回量(下糸供給量)と糸供給源からの糸経路上の糸移動速度とには糸太さをパラメータとした対応関係があることから、判定手段により、これら下糸供給量検出手段及び糸移動速度検出手段からの出力に基づいて糸太さを判定し、糸太さ入力スイッチを不要とするよう構成したものであるから、操作性の向上及び低コスト化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例におけるボビンの下糸巻回装置を適用した下糸自動供給装置の全体構成図である。
【図2】図1のCPU内の構成を具体的に表した制御ブロック図である。
【図3】同上下糸巻回装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】同上下糸自動供給装置の動作手順を表したフローチャートである。
【図5】図4に続くフローチャートである。
【図6】図5に続くフローチャートである。
【図7】同上下糸自動供給装置の動作手順内の下糸巻回処理を具体的に表したフローチャートである。
【図8】同上下糸自動供給装置の動作手順内の残糸除去処理を具体的に表したフローチャートである。
【図9】同上下糸巻回装置の斜視図である。
【図10】図9の繰り出し機構の正面図である。
【図11】図9の繰り出し機構の側面図である。
【図12】同上下糸巻回装置に適用された糸張力可変手段の正面図である。
【図13】図9の下糸吸引器の横断面図である。
【図14】同上繰り出し機構における繰り出しローラの回転検出手段の正面図である。
【図15】同上繰り出しローラの回転時に検出される波形図である。
【図16】本実施例に用いられるボビンの回転検出手段側の正面図である。
【図17】同上ボビンの回転検出手段からボビン回転時に出力される波形図である。
【図18】同上下糸自動供給装置に用いられている各装置の配置関係を表した下糸自動供給装置の正面図である。
【図19】同上下糸自動供給装置に用いられているボビン交換装置の正面図である。
【図20】同上ボビン交換装置の平面図である。
【図21】同上ボビン交換装置における直動機構部分を表した右側面図である。
【図22】同上ボビン交換装置における回動機構部分を表した右側面図である。
【図23】同上ボビン交換装置のダミーポジション及びダミー軸を説明するための概略側面図である。
【符号の説明】
7 ボビン
60,145 下糸供給量検出手段
99 糸
200 糸供給源
252c 割合巻回量入力手段、糸太さ入力スイッチ
260 制御手段
300 異常警告手段
350 糸移動速度検出手段
351 糸太さ入力エラー判定手段
M1 巻取手段
Fmax 所定周波数
Claims (6)
- 糸供給源からの糸をボビンに巻き付けるように回転する巻取手段と、
糸供給源からの糸経路上の糸移動速度を検出する糸移動速度検出手段と、
この糸移動速度検出手段の検出結果に基づいて前記巻取手段の駆動を停止する制御手段と、を備えた下糸巻回装置。 - 請求項1記載の下糸巻回装置において、
糸移動速度検出手段は、糸の移動速度に比例した周波数を検出し、
制御手段は、この糸移動速度検出手段からの所定周波数を検出すると巻取手段の駆動を停止することを特徴とする下糸巻回装置。 - 請求項1記載の下糸巻回装置において、
制御手段は、糸移動速度検出手段の検出結果によりボビンの下糸巻回量を検出することを特徴とする下糸巻回装置。 - 請求項1記載の下糸巻回装置において、
ボビンの最大巻回量を基準とした割合巻回量を設定可能な入力手段を備え、
制御手段は、糸移動速度検出手段から前記割合巻回量に対応する糸移動速度を検出すると巻取手段の駆動を停止することを特徴とする下糸巻回装置。 - 請求項1記載の下糸巻回装置において、
糸供給源からの下糸供給量を検出する下糸供給量検出手段と、
糸太さを入力可能な糸太さ入力スイッチと、
前記下糸供給量検出手段及び糸太さ入力スイッチ並びに糸移動速度検出手段からの出力に基づいて、糸太さの入力エラーを判定可能な判定手段と、を備えた下糸巻回装置。 - 請求項1記載の下糸巻回装置において、
糸供給源からの下糸供給量を検出する下糸供給量検出手段と、
この下糸供給量検出手段及び糸移動速度検出手段からの出力に基づいて、糸太さを判定可能な判定手段と、を備えた下糸巻回装置。
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