以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。
図1から図30は本発明に係る下糸糸巻き装置付きミシンの実施形態の一例を示すものであり、図1は要部の外観斜視図、図2は水平釜近傍の要部の構成を示す斜視図、図3は水平釜近傍の要部の構成を示す一部切断断面図、図4は外釜近傍の要部の構成を示す分解図、図5は下糸張力手段を示す斜視図、図6は内釜の底部近傍を示す平面図、図7はボビンを示す縦断面図、図8は図7の平面図、図9は糸保持部材の要部を示す平面図、図10は図9の正面図、図11は図9の一部拡大平面図、図12は糸保持部材表出手段の要部を示す斜視図、図13は針板近傍の要部を示す斜視図、図14はボビン駆動部材移動手段の要部を示す斜視図、図15は回転伝道機構の他例の構成を示す説明図、図16は専用下糸繰出機構の一例の要部の構成を示す説明図、図17は上糸繰出機構の一例の要部の構成を示す説明図、図18は針棒切外し機構の一例の要部の構成を示す分解斜視図、図19は糸巻き径検出手段の一例の要部の構成を示す斜視図、図20は図19の平面図、図21は操作部の一例の要部の構成を示す説明図、図22は専用下糸保持検出手段の一例の要部の構成を示す正面図、図23は図22のY−Y線に沿った側断面図、図24は図22のZ−Z線に沿った側断面図、図25は布送り機構の一例の要部の構成を示す分解斜視図、図26は送り歯上下動切外し機構の一例の要部の構成を示す斜視図、図27は図26の要部の正面図、図28は制御手段の要部の構成を示すブロック図、図29は下糸の糸巻き量を示す説明図、図30は下糸の限界糸巻き回数を示す説明図である。
本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシンは、形状縫いなどと称される刺繍縫いを行うことのできるミシンに用いたものであり、糸巻き動作時に、ボビンに供給する下糸として下糸専用糸あるいは上糸を選択することができるようにされている。
図1に示すように、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1のミシン本体1aは、下部にミシンベッド1bが配設され、上部にミシンベッド1bと平行にしてミシンアーム1cが配設されており、ミシンベッド1bとミシンアーム1cとは、図1右方に示すミシン脚柱部1dにより接続されて、全体として正面ほぼコ字形状に形成されている。そして、ミシンベッド1bには、所定の縫い模様を形成するのに必要な補助部品としての平面ほぼU字形状とされた着脱可能な公知の刺繍装置240が装着されており、ミシンベット1bに装着した刺繍装置240の可動部としての刺繍枠239に縫製物Sをセットした状態で刺繍枠239を縦横(XY)方向へ移動させながら所定の形状縫いを行うことができるようになされている。この刺繍装置240の着脱状態は、後述する刺繍装置センサ217(図28)によって制御手段93へ送出可能になっている。さらに、刺繍装置240をミシンベッド1bに装着した場合には、公知の如く後述する送り歯312(図25)を針板5の下方に保持することができるようになっている。このような下糸糸巻き装置付きミシン1においては、図1手前側に示す前面側が操作側とされて設置されるのが一般的である。
前記ミシン本体1aのミシンベッド1bのミシン脚柱部1dの左方に近接した操作側位置には、後述する下糸専用糸EDSを巻回した下糸糸駒111が着脱自在に装着可能な下糸糸駒装着部168が設けられており、この下糸糸駒装着部168には、下糸糸駒111を回転自在に支持するための下糸立棒117がその先端を上方に向けて立設されている。そして、下糸糸駒装着部168は、前記刺繍枠239が移動した際に下糸専用糸EDSを巻回した下糸糸駒111と前記刺繍枠239とが干渉しない位置に設けられている。つまり、下糸専用糸EDSが巻回された下糸糸駒111は、ミシン本体1aの操作側の所定の縫い模様を形成するのに必要な補助部品としての刺繍装置240を装着した場合にこの刺繍装置240の刺繍枠239と干渉しない位置に着脱可能に設置されている。この下糸糸駒装着部168の形成位置、詳しくは、下糸糸駒111のミシン本体1aへの配置位置としては、少なくとも刺繍装置240の刺繍枠239を着脱せずに下糸糸駒111の着脱(交換)を行うことができる位置が好ましく、ミシン外部から刺繍枠239を着脱せずに下糸糸駒111の着脱を操作側からできる位置が最も好ましい。また、下糸糸駒111は、図示しない下糸糸駒カバーによって下糸糸駒111をミシンフレーム1fの内部に配置する構成でも、下糸糸駒111をミシンフレーム1fの外部に露出配置する構成でも、下糸糸駒111の一部がミシンフレーム1fの外部に露出配置する構成でも何れであってもよい。
なお、下糸糸駒111の配設位置としては、刺繍装置240の刺繍枠239をミシン脚注部1dから最も離間した図1左方に示す後退位置に位置した際に、刺繍装置240の刺繍枠239を着脱せずに下糸糸駒111の着脱(交換)を行うことができる位置であってもよく、この場合でもミシン外部から刺繍枠239を着脱せずに下糸糸駒111の着脱を操作側からできる位置が好ましい。
前記ミシンアーム1cの図1左方に示すミシンアーム1cの頭部と称される自由端部に位置するミシンヘッド1eの下部の所望の位置には、縫製動作時に縫製物Sを上方から押さえる公知の布押え208が配設されており、この布押え208は、図示しない公知の押え機構によって上下移動可能とされている。このミシンアーム1cの下部には、ミシンヘッド1e側からミシン脚柱部1dに向かって縫製動作のON/OFFに用いる縫製スタート/ストップスイッチ238、返し縫いのON/OFFに用いる返し縫いスイッチ301、縫製動作を終了した後に縫製物Sに連なる糸の切断を行う図示しない公知の糸切断装置の操作に用いる糸切りスイッチ302、縫製動作時における縫製速度を制御する縫製速度調整ボリュームスイッチ303などが配設されている。これらの縫製スタート/ストップスイッチ238、返し縫いスイッチ301および縫製速度調整ボリューム303スイッチは、後述する制御手段93に電気的に接続されている。また、ミシン脚柱部1dの前面側には、操作部170が配設されている。この操作部170の詳しい構成については後述する。
図2および図3に示すように、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1は、ミシンヘッド1e(図1)の内部に配設された公知の針棒機構により、縫製動作時にミシン主軸とも称される上軸(共に図示せず)に連動して上下方向へ往復運動する針棒2の先端部に取着された針3の前方に配設された釜たる水平釜4を有している。この水平釜4は、ミシンベット1bの一部を構成する図3上方に示す針板5の下方に位置するようにしてミシン本体1a(図1)を構成するミシン機枠と称せられるミシンフレーム1fの内部、詳しくは、ミシンベッド1bの内部に配設されており、縫製動作時に公知の針棒機構、天秤機構などと協働して形状縫いと称される分類に区分される刺繍装置240を用いた刺繍縫いなどの所望の縫い目を形成するようにされている。なお、刺繍装置240を用いない場合における水平釜4は、縫製動作時に公知の針棒機構、天秤機構および後述する布送り機構310(図25、図26)により動作する送り歯312などと協働して実用縫いと称される分類に区分される直線縫い、ジグザグ縫い、ボタンホール縫いなどの所望の縫い目を形成するようにされている。なお、縫製動作時において針3を上軸に連動して上下方向へ往復運動させる針棒2の上下方向への往復運動は、後述する針棒切外し機構140によって、糸巻き動作時に上軸の回転から切外して針3の上下方向への往復運動を停止させて針3を上方に保持可能とされている。
前記水平釜4は、縫製動作時に、下軸311(図25)に連動して図2矢印Aにて示す上方から見て反時計方向へ正回転する外釜7を有している。この外釜7は、図3に示すように、上部が大径の大径部7aとされ下部が小径の小径部7bとされた2段のほぼ筒状に形成されている。そして、外釜7の小径部7bには、下軸311に固定されたねじギア(図示せず)と噛合するねじギア8(図3)が固定されており、外釜7は、このねじギア8によって上軸に連動して回転駆動する下軸311の回転運動に連動して回転可能に形成されている。
前記外釜7の軸心部には、図3および図4に示すように、ほぼ円筒形状に形成された釜軸9が前記ねじギア8の軸心部を貫通するようにして配設されており、この釜軸9の下端部は、図3下方に示す釜取付台10に図示しないねじなどにより固定されている。この釜取付台10は、ミシンフレーム1fのミシンベッド1b内部に固定されたベースフレーム33に取着されている。そして、釜軸9の軸心部には、図3および図4に示すように、上下両端部が釜軸9の上下両端から突出するボビン駆動部材11が回転可能かつ軸方向に移動可能にして配設されており、ボビン駆動部材11の下部の外周面に配設されたボビン駆動部材付勢ばね12の上端を前記釜軸9あるいは釜取付台10の下端面に当接するとともに、ボビン駆動部材付勢ばね12の下端部をボビン駆動部材11の下端部近傍に取着した止め輪13の上面に当接させることにより、ボビン駆動部材11は常時は下方に向けて付勢されている。
前記ボビン駆動部材11の上端部には、図4に詳示するように、ボビン駆動ギア14が設けられている。このボビン駆動ギア14は、外釜7の大径部7aと小径部7bとをつなぐ段部7cの内部、詳しくは大径部7aの内部底部たる外釜底部7eに外釜7と同軸で回転可能に配設された外釜底板16の軸心部に板厚方向に貫通するようにして設けられたボビン駆動ギア14と同一形状のギア孔17に常に嵌合されている。そして、外釜底板16は、前記ギア孔17を軸心部に有するほぼ円盤状の基部16aと、この基部16aの外周面下方から径方向外側に向かって延出された平板状の複数、本実施形態においては4つの等角度分配置された係合突起16bを有している。そして、外釜底板16の上部には環状に形成された磁性部材(マグネット)332が配設されている。この磁性部材332の内周面には、前記外釜底板16の基部16aが嵌合されており、磁性部材332の下面には、複数、本実施形態においては4つの係合溝332aが等角度分配置されており、これらの係合溝332aには前記外釜底板16の係合突起16bがそれぞれ係合されている。
すなわち、磁性部材332の磁力により、磁性部材332は、外釜底板16を間に挟んで外釜7の外釜底部7eに吸着可能とされており、その結果、外釜7の回転が磁性部材332に伝達して磁性部材332を外釜7と同一方向へ回転させ、この磁性部材332の回転は、磁性部材332の係合溝332aに係合する係合突起16bを介して外釜底板16に伝達して外釜底板16を外釜7と同一方向へ回転させ、この外釜底板16の回転は、外釜底板16の軸心部に形成されたギア孔に噛合されたボビン駆動ギア14を介してボビン駆動部材11を外釜7と同一方向へ回転させるようになされており、ボビン駆動部材11は、外釜7と回転中心が同軸上に位置するようにして一体回転するようになされている。
前記外釜底板16および前記磁性部材332により本実施形態の駆動力伝達手段330が構成されている。
なお、駆動力伝達手段330としては、磁力によって外釜底板16に吸着することのできるもの、例えば外釜底板16および前記磁性部材332を一体形成したもの、具体的には磁性素材により円板状の磁性部材を形成しその軸心部にギア孔17を設けたものなどでもよく、特に、本実施形態の形状および構成に限定されるものではない。
図3に示すように、前記外釜7の大径部7aの内部には、上部が開口のほぼカップ状に形成された内釜18が配設されており、この内釜18の内部には、後述するボビン22が自由回転可能に収納可能とされている。この内釜18は、例えば樹脂により形成されており、内釜18の外釜底部7eと対向する面には、磁力によって吸引される素材、例えば、鋼材によりほぼU字状に形成された吸着体18aが固着されている。そして、内釜18は、外釜7の大径部7aの内周面の上部に形成されたレース面7dにより回転自在に支持されている。さらに、本実施形態の内釜18は、外釜7に装着されると前記磁性部材332の磁力によって外釜7、詳しくは外釜7の外釜底部7eに向かって付勢されているので、内釜18は、外釜7の所定位置に回転可能に支持した状態を容易に保持することができ、その結果、外釜7から内釜18が不必要に飛び出すのを確実に防止するとともに、ボビン暴れを確実に防止することができるようになっている。そして、内釜18は、縫製動作時において外釜7が正回転した際に、外釜7との摩擦により外釜7とともに正回転するが、この内釜18の回転は、外釜7の上端より上方に位置する内釜18の外周面に設けた突起19(図2)をミシンフレーム1fに固定された内釜回り止め20(図2)に当接させることにより停止させることができるようになっている。また、外釜7が逆回転した際の内釜18の逆回転は、ミシンフレーム1fに固定された弾性を有する内釜逆転止め21(図2)により停止させることができるようになっている。すなわち、外釜7は、内釜18を内方で非回転支持するようにされている。
前記内釜18の内部には、後述するボビン22を内部に収納するためのほぼ円柱状に形成されたボビン収納穴23が凹設されている。このボビン収納穴23の軸心は、前記外釜7の軸心に対して布送り方向上流側から見て左方にずらして配設されている。このボビン収納穴23の軸心を外釜7の軸心に対してずらして配設した水平釜4、すなわち、内釜18の回転中心を外釜7の回転中心に対してずらした異心軸となる水平釜4は、縫製動作時のヒッチステッチを容易に防止して縫製品質を向上させることができるとともに、図示しない糸切り装置や下糸繰出装置などを配設するスペースを容易に確保することができるようになっている。そして、ボビン収納穴23の周面の一部には、ボビン収納穴23に対するボビン22の着脱を容易に行うため上部が開口のボビン着脱用凹溝24が形成されている。さらに、ボビン収納穴23の上部の周方向の一部には、ボビン収納穴23の一部を兼ねた下糸張力手段25(図5)が配設されている。
前記下糸張力手段25は、ボビン22に下糸DSを巻き取って供給した後に、縫製動作時において下糸DSに適正な張力を付与するためのものであり、図5に示すように、円弧状に形成された基板26を有している。この基板26の内周面は、前記ボビン収納穴23の内面の一部を形成するようにボビン収納穴23の内径寸法とほぼ同一の曲率かあるいはボビン収納穴23の内径寸法より僅かに大きな曲率で形成されている。そして、基板26の上端縁には、前記外釜7が逆回転した際に、内釜18の上面に沿って図5右方から左方へ移動する下糸DSが入り込む糸導入口27が形成されており、この糸導入口27には、下糸DSが通過可能な幅で板厚方向に貫通する糸導入溝28の先端部が接続されている。そして、糸導入溝28の後端部は、基板26の糸導入口27より図5左方下方に形成された板厚方向に貫通するほぼ円形の糸係止孔29に接続されている。さらに、糸係止孔29より図5左方に位置する基板26の上端縁には、溝状の糸出口30が凹設されている。また、基板26の外周面には、糸係止孔29から糸出口30へ至る下糸DSを押さえるため図5に想像線にて示す下糸押さえ板ばね31が密着配置されており、ボビン22に巻回された下糸DSは、図5に示すように、糸係止孔29と糸出口30との間で下糸押さえ板ばね31によって所定の張力を付与された状態で縫い目につながるようにされている。そして、下糸押さえ板ばね31と基板26とは、下糸押さえ板ばね31を基板26の外周面に重ねたうえで取付ねじ32により前記内釜18に固定されている。
前記ボビン収納穴23の図3下方に示す底部23aには、図6に示すように、ボビン収納穴23の軸心と一致するボビン22の軸心と、外釜7の軸心とを含むように板厚方向に貫通する内釜貫通孔34が形成されており、この内釜貫通孔34には、前記ボビン駆動部材11がボビン駆動部材付勢ばね12の付勢力に抗して上昇した際に、ボビン駆動部材11の上端部に設けられているボビン駆動ギア14が進入可能とされている。そして、ボビン駆動ギア14が内釜貫通孔34に進入すると、このボビン駆動ギア14は、糸巻き動作時にのみ後述するボビン22に形成された回転伝道機構340の一部を構成するボビン従動ギア35に噛合可能とされている。
図7に示すように、前記ボビン22は、下糸DSが外周面に巻回されるボビン中心軸36を有しており、このボビン中心軸36の両端部には相互に対向するようにして上フランジ37および下フランジ38が配設されている。すなわち、ボビン中心軸36の上端部には上フランジ37が、下端部には下フランジ38が配設されている。そして、下フランジ38の図7下方に示す下端面38aには、前記ボビン駆動部材11がボビン駆動部材付勢ばね12の付勢力に抗して上昇した際に、ボビン駆動部材11の上端部に設けられているボビン駆動ギア14と噛合可能なボビン従動ギア35がその軸心を下フランジ38、すなわち、ボビン22の軸心と同一にして配設されている。また、上フランジ37には、図8に示すように、外周縁に開口39aを備えたスリット39が形成されている。さらに、上フランジ37と下フランジ38とは、ボビン中心軸36により間隔を隔てて相互に対向するように平行に配設されている。さらにまた、ボビン中心軸36の上フランジ37との接続部位には、図7に示すように、径方向外側に突出するほぼ環状の壁部40が形成されており、この壁部40の上面と上フランジ37の下面との間に糸捕捉部としての凹溝41が形成されており、この糸捕捉部としての凹溝41には、前記スリット39の根本であるスリット底部39bが接続されている。このスリット底部39bは、ボビン22の回転中心から離れた位置に形成されている。また、スリット39の開口39aが形成された上フランジ37の外周縁には、鋭角な鋭角部39aaと、鈍角な鈍角部39abとが形成されている。つまり、図8に矢印にて示す糸巻き動作時のボビン22の回転方向の先頭側に位置するスリット39の開口39aが形成された上フランジ37の外周縁には、鋭角な鋭角部39aaが形成されており、その下方に位置する図8に矢印にて示す糸巻き動作時のボビン22の回転方向の末尾側に位置するスリット39の開口39aが形成された上フランジ37の外周縁には、鈍角な鈍角部39abが形成されており、糸巻き動作時に供給される下糸DSを確実かつ容易に捕捉することができるようになっている。
なお、糸捕捉部としては、スリット39の底部39bが接続されているボビン中心軸36の上フランジ37との接続部位にV字形状の溝を設ける構成や、スリット39の底部39bが接続されているボビン中心軸36の上フランジ37との接続部位に糸を捕捉しやすい摩擦係数の大きい凹凸を溶射やブラストなどによって設けた構成などの糸巻き動作時に供給される下糸DSの糸端部分を確実かつ容易に捕捉することができる構成であればよい。
図8に示すように、上フランジ37の上面には、ボビン回転被検出部としての図8に白抜きにて示す高反射率部210aと図8に斜線にて示す低反射率部210bとを所定間隔で交互に繰返し配置した反射テープ210が貼着されている。そして、ボビン22が回転した際の反射テープ210の回転は、針板5の下面、詳しくは針板5の釜カバー204(図45)の下面にボビン22と対向するように配設された光りセンサなどからなる反射型光センサ211(図3)により検出することができるようになっている。この反射型光センサ211は、後述する制御手段93に電気的に接続されており(図28)、ボビン22の回転の有無やボビン22の回転状態などを制御手段93へ送出することができるようにされている。
すなわち、本実施形態の反射テープ210および反射型光センサ211は、後述するように、ボビン22に巻回された下糸DSの有無をボビン22の回転の有無により検出する機能と、ボビン22の回転状態を検出する機能との両者を併せもっている。
前記反射テープ210および反射型光センサ211により、本実施形態の下糸検出手段214およびボビン回転状態検出手段215が構成されている。
なお、ボビン回転被検出部としては、反射テープ210のかわりに、上フランジ37の上面に、高反射率部210aと低反射率部210bとを直接形成する構成であってもよい。
図2に戻って、前記外釜7の大径部7aの外周面には、縫製動作時に縫い目を形成するため上糸ループを捕捉する剣先42、糸巻き動作後の供給側に位置する下糸DSの切断のための切断刃43およびさそい込み部44が配設されている。さらに、前記外釜7が逆回転した場合に切断刃43に隣接する切断刃43の図2左方に示す回転方向手前側には、開口部45が形成されている。また、図3および図6に示すように、前記外釜7の大径部7aの外周面には、糸巻き動作後にボビン22に巻き取られて供給された下糸DSを捕捉する平面ほぼコ字形状とされたフック部46a(図6)を外釜7が逆回転した際に回転方向に対して正対するように設けた糸捕捉フック46が突設されている。この糸捕捉フック46のフック部46aの背面には、図6に示すように、外釜7が正回転した際に、外釜7の外周面の近傍に位置する下糸DSを外釜7から離間する方向へ移動可能な糸離間用傾斜面47が形成されている。また、前記切断刃43は、前記外釜7の外周面にほぼ接線方向で前記剣先42と対向する向きに固定されており、前記糸捕捉フック46と前記切断刃43とは、糸捕捉フック46が下糸張力手段25に下糸DSの糸掛けを終了するまでは糸捕捉フック46から前記糸保持部材48へ至る下糸DSの外釜7の外周面に巻き付いている部位から切断刃43が離間した状態を保持し、糸捕捉フック46が下糸張力手段25に下糸DSの糸掛けを終了した後に糸捕捉フック46から糸保持部材48へ至る下糸DSの外釜7の外周面に巻き付いている部位に切断刃43が当接するように位置関係が設定されている。
図2に示すように、前記水平釜4の図2右方には、糸保持部材48が配設されている。この糸保持部材48は、糸巻き動作時に、ボビン22に供給する下糸DSとして下糸専用糸EDSあるいは上糸USのどちらを選択した場合であっても、糸巻き動作時に下糸DSとなる何れか一方の糸端近傍を保持、詳しくはボビン22に供給する下糸DSとして下糸専用糸EDSを選択した場合には下糸専用糸EDSの糸端近傍を保持し、ボビン22に供給する下糸DSとして上糸USを選択した場合には上糸USの糸端近傍を捕捉することができるようになっている。そして、糸保持部材48は、図2左方に示すほぼ平板状の糸保持捕捉部49と、この糸保持捕捉部49の図2右方に示す後端部から図2手前側下方に向けて延出された取付部50とを有している。そして、取付部50の先端には、糸保持捕捉部49の板厚方向に平行に延在する取付面50aが設けられており、この取付面50aには、糸保持捕捉部49に対してほぼ平行に位置するようにして前後1対とされた前取付ピン51および後取付ピン52が所望の間隔をおいて糸保持捕捉部49から離間するように図2手前側に向かって突設されている。この前後1対の各取付ピン51,52は、後述する糸保持部材移動手段53によって移動可能に支持されるようになっている。
図9および図10に示すように、糸保持部材48を構成する前記糸保持捕捉部49の図9下方に示す前端縁の図9左右に示す長手方向のほぼ中央部には、糸巻き動作時にボビン22に供給する下糸DSとして上糸USを選択した際の下糸DSが通過するほぼ鋸刃状の掛け溝54が形成されている。この掛け溝54の図9左方に示す先端側に隣位する位置には、図9下方に示す手前側に向けて突出するとともに、図10に示すように、下方に向けて傾斜するようにして折曲延出された後舌片55が形成されている。
前記後舌片55の図9左方に示す先端側には、上方に向かって延在する直立部61が形成されており、この直立部61の上端には、先端側に向かって水平方向に延長された水平部62が形成されている。そして、水平部62は、図9左方に位置し図9上方に示す奥端縁が直線状に形成され糸保持捕捉部49の先端側に位置する幅の狭い平面ほぼ長方形状の前水平部62aと、この前水平部62aと前記直立部61の上端とを接続する幅の広い平面ほぼ長方形状の後水平部62bとから形成されている。さらに、後水平部62bの図10左方下方に示す角部には斜めの面取りが施されている。また、前水平部62aの先端は、糸保持捕捉先端63とされており、この糸保持捕捉先端63は、図11に詳示するように、前水平部62aの先端部から図11下方に示す前端縁が直線状に連なるようにして幅狭く延出された接続部63aと、この接続部63aの先端から図11上方に示す奥側に向けてほぼ直角に折曲延出された折曲部63bと、この折曲部63bの先端から図11右方に示す後端部側に向けて延出されるとともに、図10に示すように、下方に向けて傾斜するようにして前記接続部の先端近傍の部位に対して間隔をおいてほぼ平行に延在するように折曲延出された折曲先部63cとを有している。そして、折曲部63bの図11右方に示す後端部側の端縁には、糸巻き動作時に、下糸DSとして供給される上糸USの糸端を糸巻き動作時の前記ボビン22の回転によって切断するための糸端切断刃56が形成されている。さらに、糸保持捕捉先端63の接続部63aと折曲部63bと折曲先部63cとにより囲まれた空間は、糸巻き動作時に、下糸DSとして供給される上糸USの糸端をさそい込むさそい込み開口63dとされている。
図9に示すように、前記糸保持捕捉部49の後舌片55より図9右方に示す後端側の上面の幅方向ほぼ中央部には、糸巻き動作時にボビン22に供給する下糸DSとして下糸専用糸EDSを選択した際に、下糸DSのガイドとなるほぼ横L字状の糸ガイド舌片65が、その自由端を図9下方に示す手前側に向けて上方に突出形成されている。なお、糸ガイド舌片65は、設計コンセプトなどの必要に応じて設ければよい。
図9および図10に示すように、前記糸保持捕捉部49の先端側の上面には、糸保持板ばね66がねじ67(図9)により密着配置されている。この糸保持板ばね66には、糸保持捕捉部49に形成された掛け溝54と平面同一形状の上掛け溝68が形成されており、この上掛け溝68の図9左方に示す先端側には、前記後舌片55の上方に位置するようにして、図9下方に示す手前側に向けて突出するとともに、図10に示すように、上方に向けて傾斜するようにして折曲延出された上後舌片69が形成されている。そして、上後舌片69と後舌片55との当接部の根本の内側が、糸巻き動作時にボビン22に供給する下糸DSとして上糸USを選択した際の下糸DSを後述する糸位置規制部58の供給側で保持する上糸用後方保持部70とされている。
前記糸保持板ばね66の上掛け溝68の図9上方に示す奥端縁には、上掛け溝68とほぼ同様の掛け凹溝71が形成されており、この掛け凹溝71の右方には、図9上方に示す奥側に向けて突出するとともに、図10に示すように、上方に向けて傾斜するようにして折曲延出された糸掛舌片72が隣設形成されている。この糸掛舌片72は、糸巻き動作時に前記ボビン22に供給する下糸専用糸EDSに張力を付与するための専用糸張力付与手段296として機能する。すなわち、専用糸張力付与手段296としての糸掛舌片72は、糸巻き動作時にボビン22に供給する下糸専用糸EDSにボビン22の近傍で適正な張力を確実に付与することができるので、ボビン22に下糸専用糸EDSを適正な状態で巻回することができる。そして、糸掛舌片72と糸保持捕捉部49の上面との当接部の根本の内側が、糸巻き動作時にボビン22に供給する下糸DSとして下糸専用糸EDSを選択した際の下糸専用糸EDSを後述する糸位置規制部58の供給側で保持する専用下糸用後方保持部73とされている。
前記糸保持板ばね66の上後舌片69の図9左方には、図9下方に示す手前側に向けて突出するとともに、図10に示すように、上方に向けて傾斜するようにして折曲延出された前舌片57が前記上後舌片69とほぼ平行にして適宜な間隔を隔てて形成されている。そして、前舌片57の根本の下面の図9上方に示す奥側の部位が、糸巻き動作時に、後述する上方糸保持部59および上方糸係止部60より供給側に位置する下糸専用糸EDSあるいは下糸DSとして供給される上糸USを前記ボビン22の上フランジ37に当接可能に位置させる糸位置規制部58とされている。
前記糸保持板ばね66の図9左方に示す先端側は、図9下方に示す前端縁が直線状の正面ほぼ横L字状に形成されており、図9左方下方に示す角部が糸保持板ばね先端74とされている。そして、糸保持板ばね66の図9左方に示す先端縁は、図9に示すように、糸保持板ばね先端74から図9上方に示す奥端縁に向けて図9右方に示す後端縁側に向かって斜めに傾斜して形成されているとともに、その途中の糸保持捕捉部49の前水平部62aと重なった部位には、図9上方に向けて凸の凸状部75が形成されている。また、糸保持板ばね先端74から凸状部75までの先端側部位は、図10に示すように先端側上方に向けて傾斜するようにして折曲延出されている。そして、糸保持板ばね66の図9下方に示す下端縁と糸保持捕捉部49の先端縁との交叉部が、糸巻き動作時において後述する進入位置に位置した際に、供給される下糸DSとしての上糸USを前記ボビン22の上フランジ37の上方に位置するように捕捉して係止可能な上方糸係止部60とされ、糸保持板ばね66の凸状部75と糸保持捕捉部49の上面との当接部が、糸巻き動作時において後述する進入位置に位置した際に、供給される下糸専用糸EDSを前記ボビン22の上フランジ37の上方に位置するように保持可能な上方糸保持部59とされている。
なお、本実施形態においては、ボビン22に供給する下糸DSとして下糸専用糸EDSあるいは上糸USの何れを選択した場合においても何れか一方の糸端近傍が保持または捕捉可能な糸保持部材48を用いる構成としたが、ボビン22に供給する下糸DSとして下糸専用糸EDSのみを供給する場合においては、前記糸位置規制部58、上方糸保持部59および専用下糸用後方保持部73のみを有する構成としてもよい。また、ボビン22に供給する下糸DSとして上糸USのみを供給する場合においては、前記糸位置規制部58、上方糸係止部60、上糸用後方保持部70および専用糸張力付与手段296のみを有する構成としてもよい。
図2に戻って、前記糸保持部材移動手段53は、少なくとも糸保持部材48の先端部を退避位置と進入位置との間を進退させるものであり、前記糸保持部材48の取付面50aに突設された前取付ピン51および後取付ピン52が挿通される移動溝76を有している。この移動溝76は、前記ベースフレーム33に固定された断面ほぼL字状の機構台77の立設部77aの上部近傍に形成されており、図2左方に示す長手方向をほぼ水平にして形成された長孔形状の水平部76aと、この水平部76aの図2右方に示す後端側に、上下方向に位置する長手方向のほぼ中央部が接続され後端側に向けて凸のほぼ円弧状に形成された上下部76bとから形成されている。そして、移動溝76に前取付ピン51および後取付ピン52の先端を手前側に向けて突出するようにして挿通したうえで、前取付ピン51および後取付ピン52の先端に止め輪78をそれぞれ取着することにより、糸保持部材48が機構台77に取着されている。つまり、移動溝76によって糸保持部材48の移動軌跡を規制することができるようになっている。また、上下部76bは、後述する下糸専用糸FDSの糸掛け動作時において糸保持部材表出手段261による糸保持部材48の少なくとも糸保持部分をミシン外部に突出させる際の移動軌跡を規制することができるようになっている。
前記機構台77の立設部77aの図2手前側右下には、平板状の駆動板下79が適宜な間隔をおいて平行に配設されており、この駆動板下79は、駆動板下79の図2奥側に示す裏面に突設した前後1対のガイドピン80(一方のみ図示)の先端を、前記機構台77の移動溝76の下方に移動溝76の水平部76aに対して平行に延在するようにして形成したガイド溝81を貫通するようにして挿通したうえでガイドピン80の先端に止め輪82をそれぞれ公知の如く取着することによりガイド溝81に沿って移動自在に支持されている。
また、前記機構台77の立設部77aの図2手前側右上には、平板状の駆動板上83が適宜な間隔をおいて平行に配設されており、この駆動板上83の下端部は、前記駆動板下79の上端縁の右側に配設されたガイドロッド84に挿通されるとともに、ガイドロッド84の図2右方に示す後端側の外周面に装着された付勢ばね85により、常時は図2左方に示す先端側に向けて付勢されている。そして、駆動板上83の下端縁には、係止溝86が形成されており、この係止溝86に対して駆動板下79の上端縁のガイドロッド84の右方に上方に向けて突設した係止ピン87を嵌合することにより、駆動板上83がガイドロッド84を中心として回転するのを防止することができるようになっている。さらに、駆動板上83には、前記後取付ピン52を上下動させることにより、糸保持部材48の先端を外釜7の大径部7aに沿って上下動させるためのカム面88を形成するため、図2左方が開口の左斜め上方から右斜め下方に向かうカム溝89が形成されており、このカム溝89には、前記後取付ピン52の先端部が嵌合可能に形成されている。また、駆動板下79の下端縁には、駆動モータ91の出力軸に取着されたピニオン92と噛合するラック90が形成されており、駆動モータ91の回転により、駆動板下79がガイド溝81に沿って移動可能とされており、その結果、糸保持部材48が進退自在になされている。
また、前記糸保持部材移動手段53の駆動モータ91は、図2に示すように、後述する制御手段93に電気的に接続されており、制御手段93から送出される制御指令に基づいて所定のタイミングで駆動されるようにされている。
前記機構台77の立設部77aの図2奥側に示す裏面には、軸251が固定されており、この軸251には、ねじりコイルばね252の胴部が取着されている。また、軸251の先端部は、ねじりコイルばね252の胴部が取着される部位よりその外径寸法が大きく形成されており、ねじりコイルばね252が軸215から脱落するのを防止する抜け止めになっている。さらに、ねじりコイルばね252の図2左方に示す一方の腕252aの先端部は、機構台77の立設部77aに形成された板厚方向に貫通する貫通孔253に掛けられて回り止めとなっており、ねじりコイルばね252の図2右方に示す他方の腕252bの先端部は、糸保持部材48の取付部50の裏面に所定の付勢力をもって当接している。つまり、図2に示すように、糸保持部材48は、常時はねじりコイルばね252の付勢力をもって前取付ピン51を中心として図2反時計方向へ回転するように付勢されており、糸保持部材48の先端部は、外釜7外周面近傍の下方の退避位置に位置するように形成されている。
前記機構台77の立設部77aの上端縁の長手方向ほぼ中央部は、図2に示すように、上方に向かって突出するように突出取付部260が突設されており、この突出取付部260の裏面には、図12に示す糸保持部材表出手段261が配設されている。この糸保持部材表出手段261は、図12に示すように、前記突出取付部260の裏面に固定された固定軸262を有しており、この固定軸262には、従動リンク体263が1対の止め輪265(一方のみ図示)によって軸方向への位置決めがされた状態で回転可能に取着されている。また、固定軸262には、ねじりコイルばね264の胴部が取着されている。そして、ねじりコイルばね264の図12下方に示す一方の腕264aの先端部は、機構台77の立設部77aの上端縁に掛けられて回り止めとなっており、ねじりコイルばね264の図12上方に示す他方の腕264bの先端部は、従動リンク体263に所定の付勢力をもって当接している。つまり、従動リンク体263は、ねじりコイルばね264の付勢力によって、常時は固定軸262を中心として図12反時計方向へ回転するように付勢されており、従動リンク体263の図12左方に示す従動腕263aを左斜め上方に位置させ、従動リンク体263の図12右方に示す作動腕263bをほぼ水平に位置させるようになっている。また、従動腕263aの先端部は、後述する開閉カバー271の突出部277(図13)の移動軌跡上に位置しており、作動腕263bの先端部下部は、常時は糸保持部材48の取付部50に対して上方から当接可能にして上方に離間した位置に位置している。
なお、作動腕263bの先端部下部を糸保持部材48の取付部50に対して上方から軽い当接力、すなわち、糸保持部材48を図2反時計方向へ回転するように付勢しているねじりコイルばね252の付勢力より弱い力で当接させる構成としてもよい。
図13に示すように、前記針板5の所望の位置には、針3が上下動するための板厚方向に貫通する針通過孔272およびボビン22をミシン内部から抜き取るための板厚方向に貫通するボビン抜取用貫通孔273が形成されている。このミシンベッド1bの一部を構成する針板5の糸保持部材48の上方に位置する部位には、下糸専用糸EDSを前記糸保持部材48の少なくとも先端部側に位置する糸保持部分へ糸掛けする下糸専用糸EDSの糸保持部材48への糸掛け動作時に用いるほぼ長方形の開口部274が設けられており、この開口部274には、開口部274を開閉するため進退自在にスライド移動可能に形成された開閉カバー271が配設されている。この開閉カバー371の上面は、前記針板5の上面とほぼ面一に形成されている。そして、開閉カバー271の図13左方に示す先端部近傍には、作業者が開閉カバー271を進退操作してスライド移動するための指掛け275が形成されている。さらに、針板5の開閉カバー271の図13右方に示す後部には、開閉カバー271を図13右方にスライドさせて後退させて開口部274を開状態とした際に、開閉カバー271を下方から支持する凹部276が形成されている。また、開閉カバー271の図13左方下方に示す角部の下方には、開閉カバー271を後退させた際に、前記糸保持部材表出手段261の従動リンク体263の従動腕263aを駆動させる糸保持部材表出駆動手段としての突出部277が形成されている。さらにまた、針板5の図13に示す開閉カバー271の閉状態における後端部近傍には、後述する下糸専用糸EDSが巻回された下糸糸駒111(図16)から繰り出される下糸専用糸EDSを開口部274の内部に導くための糸掛け溝たる溝部278が開口部274の長手方向に対して直交する方向に沿って形成されている。
すなわち、本実施形態においては、開口部274を開閉可能な開閉カバー271の開閉動作に連動して糸保持部材表出駆動手段としての突出部277が糸保持部材表出手段261を駆動させることができるようになっている。
さらに説明すると、開口部274を開状態とするために、開閉カバー271を開閉カバー271の開動作である図13右方に後退させる途中で突出部277が従動腕263aに当接し、ねじりコイルばね264の付勢力によって固定軸262を中心として反時計方向へ付勢されている従動リンク体263をねじりコイルばね264の付勢力に抗して時計方向へ回動させ、従動リンク体263の作動腕263bの先端部下部が所定のタイミングで糸保持部材48の取付部50に対して上方から当接し、前取付ピン51を中心として反時計方向へ回転するように付勢されている糸保持部材48をねじりコイルばね252の付勢力に抗して時計方向へ回動させ、その結果、糸保持部材48の先端部側に設けられている糸保持部分を開口部274を通過させてミシン外部に表出、本実施例においては突出した糸掛け位置に位置させることができるようになっている。
なお、糸保持部材48の先端部の移動軌跡は、前述したように、移動溝76の上下部76bによって規制されるようになっている。
また、糸掛け位置としては、作業者が指で下糸専用糸EDSを前記糸保持部材48の糸保持部分へ糸掛けすることのできる開口部274近傍の位置であれば、例えば、開口部274の内部位置や、開口部274の針板5表面と同一面位置などでもよく、特に、本実施形態の糸掛け位置に限定されるものではない。この糸掛け位置は、設計コンセプトなどの必要に応じて選択するとよい。
図3に示すように、前記ボビン駆動部材11の下方には、ボビン駆動部材移動手段94が配設されている。このボビン駆動部材移動手段94は、ボビン駆動部材11の下方に位置する平面ほぼL字状に形成された作動板95を有している。この作動板95の図3右方に示す後端部には、図2、図3および図14に示すように、ギア連結リンク96が連設されている。このギア連結リンク96の長手方向のほぼ中央部には、前記機構台77の図2左方下方の角部近傍に立設されたリンク支持ピン97が図2手前側に突出するようにして挿通されており、このリンク支持ピン97の先端側に取着された止め輪98によって、ギア連結リンク96はリンク支持ピン97を中心として回転可能に支持されるようにして機構台77に取着されている。さらに、作動板95は、図14に示すように、一端が作動板95に係止され他端がベースフレーム33に係止されたばね6により、常時はリンク支持ピン97を中心として反時計方向へ付勢されているとともに、作動板95のリンク支持ピン97を中心とした反時計方向への回転は、機構台77に突設された位置決めピン99にギア連結リンク96の下端面が当接した位置で保持されており、その結果、作動板95は、常時はボビン駆動部材11の下方に離間し、ボビン駆動部材11の上端に配設されたボビン駆動ギア14が外釜底板16のギア孔17と噛合し、かつ、ボビン駆動ギア14がボビン従動ギア35から離間した離間位置を保持することができるようになっている。
図14に示すように、ギア連結リンク96の右方下方には、上に凸の円弧状溝部100が形成されており、この円弧状溝部100の左側下方には、ほぼ上下方向に向けて延在する当接縁100Aが形成されている。この当接縁100Aには、前記機構台77のリンク支持ピン97の右方下方に立設された支持ピン101に止め輪102によって回動可能に取着されたほぼベルクランク状のストッパ103の作動腕104に板厚方向に貫通するようにして配設されたストッパピン105が当接可能とされている。そして、ストッパ103の図14左方に示す駆動腕106には、一端が駆動腕106に係止され他端がベースフレーム33に係止されたばね107が配設されており、ストッパピン105は、常時はばね107の付勢力をもって反時計方向へ付勢された状態で円弧状溝部100の左方下方にほぼ上下方向に向けて形成された当接縁100Aに向けて付勢されている。また、ギア連結リンク96の上端縁の図14右方には、図2に示す前記駆動板下79の裏面に突設された作動ピン108が駆動板下79の進退運動に連動して接離可能な傾斜カム面109が形成されており、前記駆動板下79が図2左方に示す前進側に向かって前進する途中で作動ピン108が傾斜カム面109に当接し、リンク支持ピン97を中心として反時計方向へ付勢されているギア連結リンク96をばね6の付勢力に抗して時計方向へ回動させ、その結果、作動板95の先端を所定のタイミングで上昇させて前記ボビン駆動部材11と当接させて前記ボビン駆動部材11を上昇させ、ボビン駆動部材11の上端に配設されボビン駆動ギア14を上昇させ、外釜底板16のギア孔17と噛合しているボビン駆動ギア14を外釜底板16のギア孔17とボビン従動ギア35との両者に噛合させて、ボビン駆動部材11とボビン22を連結させた連結位置に位置させることができるようになっている。
また、前記駆動板下79が図2左方に示す前進側に向かって前進する途中で作動ピン108が傾斜カム面109に当接し、リンク支持ピン97を中心として反時計方向へ付勢されているギア連結リンク96をばね6の付勢力に抗して時計方向へ回動させると、ばね107の付勢力をもって反時計方向へ付勢されたストッパピン105が円弧状溝部100の溝底100aに嵌合して係合するようになっている。さらにまた、円弧状溝部100の溝底100aに嵌合したストッパピン105は、駆動板下79が図2左方に示す前進端から図2右方に示す後退端に移動する途中で、駆動板下79の先端部から突出するように配設されたほぼ倒立L字状のストッパピン作動腕159と当接することにより、円弧状溝部100の溝底100aから離間し、作動ピン108が傾斜カム面109から離間してばね6の付勢力によって反時計方向へ付勢されているギア連結リンク96の反時計方向への回動により、円弧状溝部100の左方下方に形成された当接縁100Aに対向するようになっている。
したがって、本実施形態におけるストッパピン105は、図2に示す駆動板下79が図2右方に示す後退端に位置した場合、円弧状溝部100から離間した状態を保持してボビン駆動部材11とボビン22を離間位置に保持することができ、図2に示す駆動板下79が図2左方に示す前進端に位置した場合、円弧状溝部100の溝底100aに嵌合した状態を保持してボビン駆動部材11とボビン22を連結位置に保持することができるようになっている。
すなわち、ボビン駆動部材移動手段94は、前記糸保持部材移動手段53に連動して動作するように形成されている。
なお、ボビン駆動部材移動手段94を独立した他の駆動モータにより駆動させる構成としてもよい。
前記ボビン駆動ギア14およびボビン従動ギア35により、本実施形態のボビン駆動部材11とボビン22とを接離可能に接続する回転伝達機構240が構成されている。
このようなボビン駆動ギア14と、ボビン22のフランジの一端面たる下フランジ38に設けられたボビン従動ギア35を有する回転伝動機構340は、糸巻き動作時にのみボビン22を外釜7の回転方向に対して確実に逆回転させることができ、その結果、糸巻き動作時にボビン22のスリット39へ下糸USをより容易かつ確実にに捕捉させることができるので、ボビン22への下糸USの供給をより確実かつ適正に行うことができる。
なお、ボビン駆動ギア14およびボビン従動ギア35により形成された回転伝達機構240のかわりに、図15に示すように、ほぼ円錐形状のボビン駆動摩擦車14Aおよびボビン従動摩擦車35Aにより形成された回転伝達機構240であってもよい。この場合の外釜底板16の軸心部には、ギア孔17を形成するかわりに、ボビン駆動摩擦車14Aとボビン従動摩擦車35Aとが接続した状態で外釜底板16の回転をボビン駆動摩擦車14Aに伝達可能な板厚方向に貫通する伝達孔17Aを形成すればよい。
このようなボビン駆動摩擦車14Aと、ボビン22のフランジの一端面たる下フランジ38に設けられたボビン従動摩擦車35Aを有する回転伝動機構340は、糸巻き動作時にのみボビン22を外釜7の回転方向に対して確実に逆回転させることができ、その結果、糸巻き動作時にボビン22のスリット39へ下糸USをより容易かつ確実に捕捉させることができるので、ボビン22への下糸USの供給をより確実かつ適正に行うことができる。
すなわち、回転伝達機構240としては、ボビン駆動部材11とボビン22とを異心軸で結合可能な各種の構成のものから、設計コンセプトなどの必要に応じて選択して用いればよい。
つぎに、ボビンに供給する下糸として下糸専用糸を供給する場合に用いる専用下糸繰出機構の一例について図16により説明する。
本実施形態のボビン22に供給する下糸DSとして下糸専用糸EDSを供給する場合の専用下糸繰出機構110は、糸巻き動作時に、ボビン22に巻き取られる下糸専用糸EDSに適正な張力を付与するためのものである。そして、少なくとも糸巻き動作を開始する前には、下糸専用糸EDSが巻回された下糸糸駒111を、図1に示すように、ミシンベッド1bのミシン脚柱部1dの左方前方に近接した位置に下糸糸駒111が収納可能な下糸糸駒装着部168の内部に、先端が上方を向くようにして立設した下糸立棒117に回転自在に支持し、糸巻き動作の開始時においては、図16に示すように、糸巻き動作時に図1に示す下糸立棒117に回転自在に支持された下糸糸駒111から繰り出される下糸専用糸EDSは、図1に示す下糸糸案内118および糸掛け溝たる溝部278と、図16に示す供給側に位置する専用下糸繰出機構110を介して前記糸保持部材48に糸端側が保持されるように糸掛けされる。
図16に示すように、専用下糸繰出機構110は、図示しない取付ステーに支持された下糸調子ピン112を有しており、この下糸調子ピン112の外周面には可動皿113が下糸調子ピン112に沿って移動自在に配設されている。そして、下糸調子ピン112の下端部には固定皿114が可動皿113と相互に対向するようにして配設されている。さらに、下糸調子ピン112の外周面には、下糸調子ばね115が外挿されており、この下糸調子ばね115の下端を可動皿113の上面に当接させるとともに、下糸調子ばね115の上端を下糸調子ピン112の上端近傍に取着した止め輪116の下面に当接させることにより、常に可動皿113を固定皿114に向けて付勢することができるようになっている。すなわち、下糸専用糸EDSは、下糸調子ばね115の付勢力をもって固定皿114と可動皿113との間に挟持されるようになっている。
つぎに、ボビンに供給する下糸として上糸を供給する場合に用いる上糸繰出機構の一例について図17により説明する。
本実施形態の上糸繰出機構120は、縫製動作時およびボビン22に供給する下糸DSとして上糸USを供給する場合の糸巻き動作時において、上糸糸駒121から繰り出される上糸USに適正な上糸張力を付与するとともに、縫製動作時においては縫い目を形成するのに必要な分だけの上糸USを繰り出した後に図示しない公知の天秤機構による天秤糸締め時に適正なタイミングで上糸USを保持し、糸巻き動作時においては前記糸保持部材48に上糸USを係止するのに必要な分だけの上糸USを繰り出した後に図示しない公知の天秤機構による天秤糸締め時に適正なタイミングで上糸USを保持し、糸巻き動作時においてボビン22に供給する下糸DSとしての上糸USを巻き取る糸巻き動作の開始時においては保持された上糸USを適正なタイミングで解放するものである。
図17に示すように、上糸繰出機構120は、取付板122の上面に立設された駆動ローラ支持軸123によって回転自在に支持された駆動ローラ124を有している。そして、上糸張力付与装置119を介して図示しない上糸立棒に回転自在に支持された上糸糸駒121から繰り出された上糸USが駆動ローラ124の外周面の一部に巻き付くように当接されている。この駆動ローラ124の下端部には、取付板122の下面に取着されたステッピングモータなどからなる駆動モータ125の取付板122の上方へ先端部が突出する出力軸125aの先端部に固着された駆動ギア126と噛合する従動ギア127が同軸状に形成されており、その結果、駆動ローラ124は、駆動モータ125の回転によって回転可能とされている。
前記駆動ローラ124の外周面には、駆動ローラ124の外周面の一部に巻き付けられて当接している上糸USを介して駆動ローラ124の外周面に接離する1対の従動ローラ128が間隔をおいて平行に配設されている。これら各従動ローラ128は、取付板122の上方に配設された移動板129の上面に立設された従動ローラ支持軸130によってそれそれ回転自在に支持されている。そして、移動板129には、前記駆動ローラ124が嵌合可能な板厚方向に貫通する長孔131が形成されており、この長孔131を駆動ローラ124の外周面に外嵌することにより、移動板129の下面が従動ギア127の上面に支持されている。また、移動板129の図14左方に示す左端部近傍には、ほぼベルクランク状に形成され長手方向のほほ中央部が取付板122の上面に立設されたリンク支持ピン132によって回動可能に支持された移動板駆動リンク133の図17下方に示す一端が連結ピン134によって回動自在に取着されており、移動板駆動リンク133のリンク支持ピン132を中心とする回動動作にともなって、前記移動板129が駆動ローラ124の外周面に外嵌する長孔131によって移動軌跡を規制された状態で進退運動し、その結果、各従動ローラ128が上糸USを介して駆動ローラ124の外周面に接離するようにされている。
さらに、前記移動板駆動リンク133の図17上方に示す他端近傍には、付勢ばね135の一端が係止されており、この付勢ばね135の付勢力は、常時は移動板駆動リンク133をリンク支持ピン132を中心として反時計方向へ付勢して移動板129を図17右方へ前進させ、各従動ローラ128を駆動ローラ124に対して所定の当接力をもって当接させるようになっており、その結果、上糸USに対して所定の上糸張力を付与することができるようになっている。また、駆動モータ125は、図17に破線にて示すように、後述する制御手段93に電気的に接続されており、制御手段93から送出される制御指令に基づいて所定のタイミングで駆動ローラ124を回転駆動して上糸USを設定量だけ繰り出すようにされている。
すなわち、駆動モータ125を回転駆動させずに、各従動ローラ128を駆動ローラ124に対して当接させることにより、上糸USが保持された保持状態とされ、この保持状態で駆動モータ125を回転駆動することにより、所定の上糸張力が付与された状態で上糸USを設定量だけ繰り出すことができるようになっている。
前記移動板駆動リンク133の図17上方に示す他端近傍には、図示しない支持ステーに取着されたソレノイド136の進退自在な出力軸136aに一端が取着された駆動ロッド137の他端が係止されている。そして、ソレノイド136の出力軸136aは、常時は前記付勢ばね135の付勢力によって各従動ローラ128が駆動ローラ124に対して当接して上糸USに対して所定の上糸張力を付与する状態を保持可能な前進位置に位置している。そして、ソレノイド136は、図17に破線にて示すように、後述する制御手段93に電気的に接続されており、制御手段93から送出される制御指令に基づいて所定のタイミングでソレノイド136の出力軸136aを前進位置から後退位置に位置させることにより、付勢ばね135を伸張させて各従動ローラ128を駆動ローラ124から離間させ、前記保持状態とされた上糸USを解放することができるようになっている。
前記ソレノイド136および駆動ロッド137により、本実施形態の糸巻き動作時にボビン22に供給する下糸DSとしての上糸USを巻き取る糸巻き動作の開始時において保持された上糸USを適正なタイミングで解放する糸ゆるめ手段138が構成されてる。
また、下糸DSとしての上糸USは、上糸糸駒121と上糸繰出機構120との間で、上糸張力付与装置119により適度の張力が付与され、上糸糸駒121から上糸繰出機構120に入るときの糸の暴れが取り除かれるとともに、糸巻きに必要な張力を与えることができるようになっている。
前記上糸繰出機構120から繰り出される上糸USは、上糸経路に配設された公知の上糸張力ばね220を介して針3に至るように形成されている。この上糸張力ばね220は、上糸USの有無を検出する上糸検出手段221の一部を構成するほぼ扇形状の遮蔽板222を連動動作するように形成されている。そして、上糸検出手段221は、縫製動作が行われている場合、上糸USに付与される上糸張力によってたわまされる上糸張力ばね220に連動する遮蔽板222が光りセンサ(フォトインタラプタ)223を遮蔽、解放することにより上糸USの有無を検出することができるようになっている。
前記遮蔽板222および光りセンサ223により、本実施形態の上糸検出手段221が構成されてる。
つぎに、針棒切外し機構の一例について図18により説明する。
本実施形態の針棒切外し機構は、特開昭58−183191号公報に記載されたものを利用したものであり、構成の詳細な説明は省略し要部のみについて説明する。
図18に示すように、本実施形態の針棒切外し機構140においては、針棒2は針棒ゲート141内を上下方向に往復運動するように支持されており、針棒ゲート141はミシンヘッドe(図1)内部に装着されたブラケット142の上部の球形ソケット部143へ、針棒ゲート141の上部軸受144が係合し、針棒ゲート141の下部は針棒2が溝孔145に沿って横方向にジグザク往復揺動し得るように形成されている。そして、糸巻き動作時において、図示しない上軸に連動して上下方向へ往復運動させる針棒2の上下方向への往復運動を上軸の回転から切外す場合には、後述する制御手段93から所定のタイミングで送出される制御指令に基づいて、針棒ゲート141の頂端部のブラケット146の指片147を図示しないソレノイドなどにより駆動し、細長い薄板金属部材148、針棒キャリア149に取着された掛止部材150の楔151、カム指片152、駆動スタッド153および駆動スタッドヒンジピン154などを介して楔151を駆動スタッドヒンジピン154内の切欠き155から外し、針棒2が駆動スタッド153から離れれば、引張りばね156が針棒2をその最上位置に引き上げるように形成されている。
なお、針棒切外し機構140としては、針3を上軸に連動して上下方向へ往復運動させる針棒2の上下方向への往復運動を糸巻き動作時に上軸の回転から切外して針3の上下方向への往復運動を停止させ針3を上方に保持可能なもの、例えば実公平2−36455号公報に記載されたものなどを用いてもよい。
また、針棒2を上軸に連動して上下方向へ往復運動させる針棒機構については、従来公知のものでありその説明は省略する。
つぎに、糸巻き径検出手段の一例について図19および図20により説明する。
本実施形態の糸巻き径検出手段160は、前記ボビン22に巻回される下糸DSの最大糸巻き径を検出するためのものである。
図19および図20に示すように、本実施形態の糸巻き径検出手段160は、外釜7の大径部7aの上端近傍に相互に対向するようにして配設された発光素子161と受光素子162とを有している。そして、発光素子161から受光素子162へ至る光路163は、外釜7の上方に位置しており、ボビン22の上フランジ37と下フランジ38との間で、図20に破線にて示す下糸DSの最大糸巻き径164を検出し得るようにされている。さらに、内釜18には、内釜18が内釜回り止め20に当接した状態で、前記光路163と一致する図示しない光路孔が形成されており、外釜7の大径部7aの外周面には、特定の位相で光路163と一致する図示しない光路貫通孔が形成されている。
ここでいう特定の位相とは、内釜18に形成された図示しない光路孔と、外釜7の大径部7aの外周面に形成された図示しない光路貫通孔が、光路163と直線的に一致する位相をいう。つまり、この特定の位相区間のみ光路163が開かれる。そして、ボビン22に巻かれる糸径がこの光路163を遮らないうちは、この特定の位相区間で受光素子162はONする。糸が巻かれてゆき、糸径が光路163を遮ると受光素子はOFFする。光路163は、糸径の最大位置に配設してあるので、前記受光素子162の信号の変化により最大糸巻き径164を検出することができる。
つぎに、操作部の一例について図1および図21により説明する。
本実施形態の操作部170は、図1に示すように、ミシン脚柱部1dの操作側たる前面側に配設されており、図21に示すように、後述する制御手段93に記憶されている複数の縫いデータを簡便な模様と番号で表示する模様表示画面171が図21右下に配置されており、この模様表示画面171の上方には、模様表示画面171に表示された模様の番号を選択することにより複数の模様縫いデータから所望の模様縫いデータを選択する模様選択手段としての模様選択スイッチ172が配置されている。そして、模様表示画面171の左方には、糸巻き動作時にボビン22に供給する下糸DSとして下糸専用糸EDSおよび上糸USの何れか一方を選択する巻き糸選択手段としての巻き糸設定スイッチ173が配置されており、その上方には、糸巻き動作時にボビン22に巻回される下糸DSの糸巻き量を大、中、小の3段階に設定する糸巻き量設定手段としての糸巻き量設定スイッチ174が配置されている。さらに、糸巻き量設定スイッチ174の上方には、各種のメッセージや設定状態などを表示する警告手段175および糸巻き動作の実行中にボビン22に下糸DSとして供給される下糸専用糸EDSの糸無しを認識せしめる表示および/または警告を行う糸無し告知手段178ならびに縫製動作の再スタートを表示する再スタート告知手段225を兼ねた表示画面176が配置されており、その左側には、糸巻き動作のON/OFFを制御する糸巻きスタート/ストップスイッチ177が配置されている。さらに、操作部170には、自動的に糸巻き動作を開始する自動糸巻きモードと作業者の操作により糸巻き動作を開始する手動糸巻きモードとを切り換える糸巻きモード切替スイッチ226(図28)や、ボビン22への下糸DSの供給を終了した場合、自動的に縫製動作を再スタートする自動再スタートモードと作業者の操作により縫製動作を再スタートする手動再スタートモードとを切り換える再スタートモード切替スイッチ227(図28)なども配設されている。そして、これらの模様表示画面171、模様選択スイッチ172、巻き糸設定スイッチ173、糸巻き量設定スイッチ174、表示画面176および糸巻きスタート/ストップスイッチ177、糸巻きモード切替スイッチ226、再スタートモード切替スイッチ227などは、タッチパネルとされており、後述する制御手段93に電気的に接続されている。
なお、操作部170の構成は、糸巻き動作にかかわる部位についてのみを説明したものであり、操作部170には、縫製動作にかかわる公知の各種のスイッチおよび表示画面(共に図示せず)なども当然配置されている。
また、糸巻き動作時にボビン22に供給する下糸DSとして下糸専用糸EDSあるいは上糸USのみを用いる場合には、巻き糸設定スイッチ173を設ける必要はない。
さらに、警告手段175および糸無し告知手段178ならびに再スタート告知手段225としては、表示画面176への表示だけでなく、ブザーあるいはパトライトのような安全灯などからなる安全確保手段228(図28)を付加する構成としてもよい。このような安全確保手段228は、作業者が表示画面176へのメッセージの表示を見落とすのを確実に防止することができるとともに、作業者以外の周囲の人々への警告を行うことができる。なお、安全確保手段228は、下糸糸巻き装置付きミシン1に付設してもよいし、外部に個別に設置してもよい。
つぎに、専用下糸保持検出手段の一例について図16および図22から図24により説明する。
図16に示すように、本実施形態の専用下糸保持検出手段180は、糸保持部材48と専用下糸繰出機構110との間に配設されている。この専用下糸保持検出手段180は、図22から図24に示すように、ほぼ横長の長方体状に形成された本体181を有しており、この本体181には、下糸専用糸EDSの糸経路に沿うようにして凹設された糸溝182が形成されている。この糸溝182には、糸溝182内を通過する下糸専用糸EDSを糸溝底部183(図23、図24)へ案内するほぼ三角板状の左右1対のガイドリブ184が間隔をおいて形成されている。そして、本体181の図22左右方向に示す長手方向の中央部には、糸溝底部182の直近を通過する下糸専用糸EDSと直交するように上下方向に貫通する貫通孔185(図22、図24)が形成されており、この貫通孔185の上部には、発光素子186が配設されている。また、貫通孔185の下部には受光素子187、例えばソーラーセルが配設されている。そして、発光素子186および受光素子187は、後述する制御手段93に電気的に接続されており、糸溝底部182の直近を通過する下糸専用糸EDSの有無の検出データを制御手段93へ送出することができるようになっている。
つぎに、布送り機構および送り量制御機構ならびに送り歯上下動切外し機構の一例について図25から図27により説明する。
本実施形態の布送り機構は、従来公知のものを利用したものであり、構成の詳細な説明は省略し要部のみについて説明する。
図25に示すように、本実施形態の布送り機構310は、ミシンベッド1b(図1)内にほぼ水平に配設された固定軸343を有しており、この固定軸343には、揺動体344が揺動可能に支持されている。この揺動体344の上部には、前記固定軸343と平行な支持軸345が回動可能に支持されている。そして、支持軸345の図25左方に示す一端には連結部材346が固着されており、この連結部材346には前記支持軸345の軸線と直交する挿通孔346aを備えている。そして、この連結部材346を包囲するようにして送り台347が配置されている。この送り台347は、短脚部348の切欠部348aを支持軸345に上下動可能に嵌合するとともに、上挿通孔349aおよび下挿通孔349bの両者に案内軸350の上下両端部を緩挿した状態で案内軸350に案内されて支持軸345の軸線に対して直交する方向に往復移動可能となっている。前記案内軸350は、前記連結部材346の挿通孔346aに挿入固着されている。また、送り台347は、圧縮ばね351の付勢力によって常時は下方に向かって移動付勢されている。さらに、送り台347の上面には、周知の送り歯312が取着されており、送り台347の上方には、送り歯312が出没する透孔352を有する針板5が配置されている。そして、下軸311に取着された水平送りカム353の回転により、揺動体344の図25右側に示す一側に軸着された二股レバー354が水平送りカム353のカム形状にしたがって往復揺動され、揺動体344が予め設定された範囲内において送り量制御機構360の一部を構成する公知の送り調節器361により設定された量の揺動運動を行い、これにより支持軸345および案内軸350を介して送り台347が前後方向に往復揺動し、これにより送り歯312が、前後方向に往復移動して周知の水平送り運動を行うようになっている。
また、前記下軸311には、上下送りカム314が取着されている。この上下送りカム314の内周面には、図27に示すように、図27右方に示す一端に接続する長溝315が形成されており、この長溝315を下軸311に突設したピン316と嵌合させることにより、下軸311の軸方向に沿ってスライド可能とされている。この上下送りカム314は、カム部317と、下軸311と同心に形成された同心円部318と、環状に形成された溝部319とを有しており、溝部319には、図26および図27に示すように、後述する送り歯上下動切外し機構370の一部を構成するドロップフィード作動板320の板部321が係合し、上下送りカム314のスラスト方向位置を規制している。
そして、下軸311に取着された上下送りカム314の回転により、この上下送りカム314のカム部317に当接している揺動レバー355がカム部317のカム形状にしたがって揺動し、この揺動レバー355の先端に設けられたコロ356と送り台347の折曲部357との係合により、送り台347が上下方向に往復動し、これにより送り歯312が、上下方向に往復移動して送り歯312の先端が針板5の透孔352から出没する周知の上下送り運動を行うようになっている。そして、この上下送り運動に前記水平送り運動が合成されて、送り歯312は周知の四送り運動を行うことができるようになされている。
図25に示す前記送り調節器361は、後述する制御手段93に接続されたステッピングモータなどからなる送り量制御モータ362(図28)によって駆動されるようになっており、制御手段93から送出される制御指令に基づいて送り量制御モータ362の駆動量たるステップ数などを制御することにより、送り歯312の水平送り運動による縫製物Sの送り量を制御することができるようにされている。
前記送り調節器361および送り量制御モータ362により、本実施形態の送り歯312の水平送り運動による縫製物Sの送り量を調整するように前記布送り機構310を制御する送り量制御機構360が構成されている。
図26および図27に示すように、本実施形態の送り歯上下動切外し機構370は、上下送りカム314の溝部319に係合する板部321を具備するドロップフィード作動板320を有している。このドロップフィード作動板320の裏面には1対の裏面突出ピン323a,323bが設けられており、この1対の裏面突出ピン323a,323bは、ミシンフレーム1fに設けられた1対の長穴324a,324bに止め輪325にてそれぞれ取り付けられており、通常は、ばね326により各穴324a,324bの図27左端に当接し、前記布送り機構310の揺動レバー355が上下送りカム314のカム部317と当接するようになっている。そして、ソレノイド327がドロップフィード作動板320を図27右方向へ移動させると、布送り機構310の上下送りカム314も右方向へ移動し、上下送りカム314の同心円部318が揺動レバー355と当接する。この状態で下軸311が回転しても、揺動レバー355は動作せず、送り歯312は針板5の上面より下方に位置した下方停止の状態、すなわちドロップフィードした状態を保持することができるようになっている。
したがって、本実施形態の送り歯上下動切外し機構370は、前記布送り機構310によって駆動される前記送り歯312の上下送り運動を上下送り駆動源としての下軸311の回転から切外して前記送り歯312の上下送り運動を停止することができるようになっている。
つぎに、制御手段の一例について図28により説明する。
図28に示すように、前記制御手段93は、少なくともCPU190および適宜な容量のROM、RAMなどにより形成されたメモリ191を有しており、この制御手段93には、前記操作部170に配設された模様表示画面171、模様選択スイッチ172、巻き糸設定スイッチ173、糸巻き量設定スイッチ174、警告手段175および糸無し告知手段178ならびに再スタート告知手段225を兼ねた表示画面176、糸巻きスタート/ストップスイッチ177、糸巻きモード切替スイッチ226、再スタートモード切替スイッチ227、縫製動作のON/OFFを制御する縫製スタート/ストップスイッチ238、上軸センサと称される主軸センサ218、ボビン回転状態検出手段215を兼ねた下糸検出手段214の反射型光センサ211、上糸検出手段221の光りセンサ223、選択された模様を形成するのに必要な補助部品としての刺繍装置240の着脱状態を検出する刺繍装置センサ217、返し縫いスイッチ301、糸切りスイッチ302、縫製速度調整ボリュームスイッチ303、ブザーや安全灯などの安全確保手段228、上糸繰出機構120の駆動モータ125およびソレノイド136、図示しない押え機構に装着されている布押えが208の高さ位置から縫製物Sの厚さを検出する布厚センサ231、ミシンモータ235、針振りモータ236、刺繍装置240のステッピングモータなどからなる縦送り用のYモータ240Aおよび横送り用のXモータ240B、布送り機構310によって駆動される送り歯312の水平送り運動による縫製物Sの送り量を制御する送り量制御機構360の送り調節器361を制御する送り量制御モータ362、布送り機構310によって駆動される送り歯312の上下送り運動を送り駆動源としての下軸311の回転から切外して送り歯312の上下送り運動を停止可能な送り歯上下動切外し機構370を駆動するソレノイド327、図示しない電源スイッチや縫製動作にかかわる公知の各種のスイッチ類などが電気的に接続されている。また、反射型光センサ211は、A/D変換器233を介して接続されている。さらにまた、上糸繰出機構120の駆動モータ125およびソレノイド136、ミシンモータ235、針振りモータ236、刺繍装置240用の駆動モータ240A,240B、送り量制御機構360の送り量制御モータ362、送り歯上下動切外し機構370のソレノイド327などは、それぞれを駆動するためのコントローラとも称される駆動回路120a、235a、236a、240a、362a、327aを介して接続されている。
また、CPU190は、少なくとも選択された模様縫いデータを認識する縫いデータ認識手段229としても機能する。
前記メモリ191は、少なくとも糸巻き中断動作制御部281と、刺繍動作制御部282と、糸巻き時送り歯制御部283と、糸巻き強制停止制御部284とその他の動作制御を行うプログラムやデータを格納した格納部285とを有している。
前記糸巻き中断動作制御部281には、前記専用下糸保持検出手段180が糸巻き動作の実行中に前記ボビン22に下糸DSとして供給される下糸専用糸EDSの糸無しを検出した場合、実行中の糸巻き動作を停止して、警告手段175および再スタート告知手段225としても機能する前記糸無し告知手段178としての表示画面176に警告をメッセージなどで画面表示したり、ブザー、安全灯などからなる安全確保手段228を駆動するプログラムが格納されている。
前記刺繍動作制御部282には、前記刺繍装置240を駆動して縫製物Sに刺繍縫いを行う縫製動作の実行中に下糸DSの糸巻き動作を行う場合、前記刺繍装置240の刺繍枠239を停止状態に保持する、詳しくは、前記刺繍装置240のYモータ240AおよびXモータ240Bを停止するプログラムが格納されている。
前記糸巻き時送り歯制御部283には、糸巻き動作時に前記送り歯312の上下送り運動および/または水平送り運動を停止するように前記送り量制御機構360および前記送り歯上下動切外し機構370を動作させるプログラムが格納されている。ここでいう送り歯312の上下送り運動を停止するとは、送り歯312の上下送り運動たる上下移動を完全に停止させることでも、糸巻き動作を終了するまで送り歯312の上下送り運動たる上下移動をほぼ零にすることでもどちらであってもよい。さらに、水平送り運動を停止するとは、送り歯312の水平送り運動たる前後移動を完全に停止させることでも、糸巻き動作を終了するまで送り歯312の水平送り運動たる前後移動をほぼ零にすることでもどちらであってもよい。また、送り歯312の上下送り運動を停止した際の送り歯312の位置は、針板5の下方とするのが一般的である。なお、送り歯312の上下送り運動を停止した際の送り歯312の位置が、針板5の上方に送り歯312の先端が突出した上方停止の場合には、送り歯312の水平送り運動を停止させることが肝要であり、送り歯312の上下送り運動を停止した際の送り歯312の位置が、針板5の下方に位置する下方停止の場合には、送り歯312の水平送り運動は停止させても停止させなくても何れでもよい。こられの送り歯312の停止位置などは、設計コンセプトなどの必要に応じて選択するとよい。
前記糸巻き強制停止制御部284には、糸巻き動作の実行中の前記縫製スタート/ストップスイッチ238あるいは前記糸巻きスタート/ストップスイッチ177の操作により、糸巻き動作を強制的に停止するプログラムが格納されている。
ここで、前記格納部285に格納されているプログラムやデータの要部について以下に説明する。
前記格納部285には、下糸専用糸EDSの糸巻き動作を行うため、糸巻き動作時に、下糸専用糸EDSをボビン22に巻回する下糸DSとして選択した際に、上方糸保持部59と糸位置規制部58との間に連なる下糸専用糸EDSをスリット39に入り込ませて下糸専用糸EDSをボビン22に巻き取るように針棒切外し機構140、水平釜4、ボビン駆動部材移動手段94および糸保持部材移動手段53を動作させるプログラムが格納されている。このプログラムの具体例としては、針棒2の上下方向への往復運動を上軸の回転から切外して針3の上下方向への往復運動を停止させ針3を上方に保持させた後に、糸保持部材48を進入位置に位置させて上方糸保持部59と糸位置規制部58との間に連なる下糸専用糸EDSをボビン22の上フランジ37の少なくとも外周縁に当接させ、その後、ボビン駆動部材11を連結位置に位置させた後に外釜7を回転させて上方糸保持部59と糸位置規制部58との間に連なる下糸専用糸EDSをスリット39に入り込ませて下糸専用糸EDSをボビン22に巻き取るように針棒切外し機構140、水平釜4、ボビン駆動部材移動手段94および糸保持部材移動手段53を動作させる構成とするとよい。なお、このようなプログラムとしては、前記具体例に限定されるものではなく、針棒2を上軸の回転から切り外して針3を上方で保持するタイミング、糸保持部材48を進入位置に位置させるタイミング、ボビン駆動部材11を連結位置に位置させるタイミングおよび外釜7を回転させるタイミングなどは、設計コンセプトなどの必要により、前後関係を決定すればよい。
また、前記格納部285には、上糸USの糸巻き動作を行うため、糸巻き動作時に、上糸USをボビン22に巻回する下糸DSとして選択した際に、下糸糸巻き装置付きミシン1を駆動させて針3を上下動させて上糸USのループを外釜7の剣先42により内釜18の上下に分けて回し、内釜18の上を通る上糸USを糸保持部材48の上方糸係止部60および糸位置規制部58により捕捉させ、その後、上方糸係止部60と糸位置規制部58との間に連なる上糸USをスリット39に入り込ませて上糸USをボビン22に下糸DSとして巻き取るように針棒切外し機構140、水平釜4、ボビン駆動部材移動手段94および糸保持部材移動手段53を動作させるプログラムが格納されている。このプログラムの具体例としては、糸巻き動作時に、上糸USをボビン22に巻回する下糸DSとして選択した際に、糸保持部材48を進入位置に位置させた後に下糸糸巻き装置付きミシン1を駆動させて針3を上下方向へ1往復動作させて上糸USのループを外釜7の剣先42により内釜18の上下に分けて回し、内釜18の上を通る上糸USを糸保持部材48の上方糸係止部60および糸位置規制部58により捕捉させ、その後、針棒2の上下方向への往復運動を上軸の回転から切外して針3の上下方向への往復運動を停止させ針3を上方に保持させた後に、ボビン駆動部材11を連結位置に位置させ、その後、外釜7を回転させて上方糸係止部60と糸位置規制部58との間に連なる上糸USをスリット39に入り込ませて上糸USをボビン22に下糸DSとして巻き取るように針棒切外し機構140、水平釜4、ボビン駆動部材移動手段94および糸保持部材移動手段53を動作させる構成とするとよい。なお、このようなプログラムとしては、前記具体例に限定されるものではなく、針棒2を上軸の回転から切り外して針3を上方で保持するタイミング、糸保持部材48を進入位置に位置させるタイミング、ボビン駆動部材11を連結位置に位置させるタイミングおよび外釜7を回転させるタイミングなどは、設計コンセプトなどの必要により、前後関係を決定すればよい。
なお、ボビン22に巻回する下糸DSとして下糸専用糸EDSのみを用いる場合には、下糸専用糸EDSの糸巻き動作を行うプログラムのみを格納し、上糸USのみを用いる場合には、上糸USの糸巻き動作を行うプログラムのみを格納する構成であってもよい。
また、前記格納部285には、下糸再保持動作を行うため、糸巻き動作時に下糸専用糸EDSをボビン22に巻回する下糸DSとして選択した際の糸巻き動作終了後に、糸保持部材48を糸捕捉位置に位置させた後に、外釜7を回転させて外釜7の外周面の近傍に位置する下糸専用糸EDSを外釜7から離間する方向へ移動させて糸保持部材48の上方糸保持部59に保持させた後、前記糸保持部材48を退避位置へ移動させるように水平釜4、糸保持部材移動手段53を動作させるプログラムが格納されている。
また、前記格納部285には、上糸USの制御を行うため、上糸繰出装置120から繰り出される上糸USの繰り出し量を所定量とするとともに、ボビン22が下糸DSとしての上糸USを巻き取る際に糸ゆるめ手段138が上糸USを解放するように動作させるプログラムが格納されている。なお、ボビン22に巻回する下糸DSとして下糸専用糸EDSのみを用いる場合には、上糸繰出装置120としては、従来公知のものを用いればよい。
また、前記格納部285には、糸巻き動作後の下糸USへ下糸張力を付与するため、糸巻き動作終了後に、ボビン22に連なる外釜7の近傍に位置する糸を外釜7の外周面の上面より下方に位置するように退避位置に位置させて、糸捕捉フック46でボビン22に連なる外釜7の近傍に位置する糸を捕捉可能とした後に、外釜7を逆回転させて、ボビン22に連なる外釜7の近傍に位置する糸を糸導入口27に入り込ませるように、糸保持部材48および外釜7を動作させるプログラムが格納されている。
また、前記格納部285には、外釜7を逆回転させるための外釜逆回転機構205として、ミシンモータ235の回転方向を制御することにより外釜7を逆回転させるプログラムが格納されている。
また、前記格納部285には、糸巻き量を制御するため、糸巻き量設定手段としての糸巻き量設定スイッチ174により下糸DSの糸巻き量が最大設定値(大)とされた場合には、糸巻き径検出手段160が最大糸巻き径を検出するか、あるいは、後述する糸巻き数計測手段206が限界糸巻き回数設定部198により設定された限界糸巻き回数を検出するまで糸巻き動作を行い、糸巻き量設定スイッチ174により設定される糸巻き量が最大設定値より少ない場合には、糸巻き量設定スイッチ174により設定された糸巻き量に応じてボビン22の糸巻き回転数を設定し、糸巻き数計測手段206が設定されたボビン22の糸巻き回転数を検出するまで糸巻き動作を行うプログラムが格納されている。この糸巻き量を制御するプログラムには、糸巻き数計測手段206として、ボビン22が糸巻き動作を開始してからのボビン22の回転数を反射型光りセンサ211で検出することによりボビン22の糸巻き回転数を検出するプログラムも格納されている。なお、糸巻き数計測手段206としては、ボビン22が糸巻き動作を開始してからのミシンモータ235の回転数を図示しない光センサで検出し、この時のミシンモータ235の回転数を予め記憶した換算テーブルと比較することによりボビン22の糸巻き回転数を検出するものであってもよい。
なお、糸巻き量の制御に限界糸巻き回数を用いない場合には、糸巻き量設定手段としての糸巻き量設定スイッチ174により下糸DSの糸巻き量が最大設定値(大)とされた場合には、糸巻き径検出手段160がボビン22に巻回される下糸DSの最大糸巻き径164を検出するまで糸巻き動作を行い、糸巻き量設定スイッチ174により設定される糸巻き量が最大設定値より少ない場合には、糸巻き量設定スイッチ174により設定された糸巻き量に応じてボビン22の糸巻き回転数を設定し後述する糸巻き数計測手段206が設定されたボビン22の糸巻き回転数を検出するまで糸巻き動作を行うプログラムを格納すればよい。
前記糸巻き量設定スイッチ174により設定される下糸DSの糸巻き量は、中位の糸を基準として設定されている。つまり、図29に示すように、ボビン22に巻回した糸がボビンからはみださない量とし、ボビン22に巻回した糸の直径で管理する。これを最大糸巻き径(大)164とし、この最大糸巻き径164を前記糸巻き径検出手段160で検出するまで糸巻きを実行するようになっている。そして、最大糸巻き径(大)164より少ない糸巻き量(中),(小)では、ボビンの回転数で管理する。図29に中で示す中位の太さの糸で最大糸巻き径164まで巻回するための糸巻き回数nに対して、糸巻き量(中)は糸巻き回数(2/3)n、糸巻き量(小)は糸巻き回数(1/3)nのように少なくなる。このため、糸巻き量(大)における最大糸巻き径164は糸の太さにかかわらず糸の巻き径が同一径となるが、糸巻き量(中)および糸巻き量(小)においては、糸の太さによって実際の糸の巻き径が異なることとなる。本来下糸DSの糸巻き量は糸の長さによって管理するのが理想ではあるが、下糸DSの糸巻き量を糸の長さで管理するのは複雑かつ高価な装置を必要とするなどの理由により困難であり、下糸DSの糸巻き量を糸巻き回数で管理することにより容易に理想に近いものとすることができる。
なお、図29および図30における符号naは細糸を最大糸巻き径164まで巻いた場合の巻き回数を示し、符号nbは太糸を最大糸巻き径164まで巻いた場合の巻き回数を示す。
また、中位の糸を基準として下糸DSの糸巻き量を設定せずに、細糸、中位の糸、太糸などの糸の太さ毎に糸巻き量を設定するようにしてもよい、この場合には、操作部170に図示しない糸に太さの選択手段を設けるとよい。
前記限界糸巻き回数Nについて説明すると、細糸を用いた場合には、ボビン22に最大糸巻き径164まで下糸DSを巻回すると、ボビン22に巻回した糸量が多くなり、特に家庭用ミシンなどにおいては下糸DSを使い切れない状態となる。そこで、図30に示すように、限界糸巻き回数N(n<N<na)を設定し、最大糸巻き径164に到達しなくても限界糸巻き回数Nで糸巻きを終了するようになっている。なお、細糸、中位の糸、太糸などの糸の太さ毎に限界糸巻き回数を設定するようにしてもよい。
また、前記格納部285には、複数の模様縫いデータ、例えば、実用縫いと称される分類に区分される直線縫い、ジグザグ縫い、ボタンホール縫いなどに用いる多種多様の縫い模様の模様縫いデータや、形状縫いと称される分類に区分される刺繍装置240を用いた刺繍縫いなどに用いる多種多様の縫い模様の模様縫いデータが格納されるとともに、これら縫い模様による縫い目を形成するための布送りピッチ、針振りピッチ、針振り幅などの動作時のデータや、縫い模様に応じて用いる上糸USおよび下糸DSの種類や、糸巻き動作時におけるボビン22に供給する下糸DSの種類、糸巻き量、限界糸巻き回数などの各種のデータも格納されている。
また、前記格納部285には、前記操作部170の模様選択手段としての模様選択スイッチ172により選択された模様データに応じてボビン22に供給する下糸DSの選択、すなわち、ボビン22に供給する下糸DSとして下糸専用糸EDSを用いるのかそれとも上糸USを用いるのかの選択、および/または、ボビン22に供給する下糸DSの糸巻き量を自動的に設定するプログラムが格納されている。すなわち、前記操作部170の模様選択手段としての模様選択スイッチ172により選択された模様データに応じて、各種の設定を自動設定することができるとともに、各種の設定を手動設定することもできるようにされている。なお、糸巻き動作時に、下糸USとして上糸USあるいは下糸専用糸EDSを用いる場合には、ボビン22に供給する下糸DSの選択にかかわる部分を除いた部分の各種の設定を自動設定することができるプログラムを格納するとよい。
また、前記格納部285には、誤巻き取り動作を防止するため、設定状態と下糸糸巻き装置付きミシン1の状態とが合致しているか否かを判定し、設定状態と下糸糸巻き装置付きミシン1の状態とが合致していない場合、すなわち、専用下糸保持検出手段180が下糸専用糸EDSを検出した際には上糸USの糸巻き動作を、専用下糸保持検出手段180が下糸専用糸EDSを検出しない際には下糸専用糸EDSの糸巻き動作をそれぞれ無効とするプログラムが格納されている。また、糸巻き動作を無効とした場合には、操作部170の表示画面176に警告をメッセージなどで画面表示したり、ブザー、安全灯などからなる安全確保手段228を駆動するプログラムも格納されている。
また、前記格納部285には、縫製動作時に上糸USおよび下糸DSの何れが無くなったのかを判別するため、縫製動作時に、上糸検出手段214の上糸センサ223および下糸検出手段214の反射型光センサ211から送出される検出信号に基づいて上糸USおよび下糸DSの有無を監視し、下糸検出手段214の反射型光センサ211による下糸無しの検出信号が上糸検出手段214の光りセンサ223による上糸無しの検出信号より先に送出された場合には下糸無しと判別し、上糸検出手段214の上糸センサ223による上糸無しの検出信号が下糸検出手段214の反射型光センサ211による下糸無しの検出信号より先に送出された場合には上糸無しと判別するプログラムが格納されている。このような糸無し判別制御部241は、上糸USおよび下糸DSのそれぞれの有無を同時に監視することができるとともに、上糸USおよび下糸DSの何れが無くなったのかを確実かつ容易に判別することができる。さらに、糸無し判別制御部241が下糸無しと判断した場合、糸巻き動作を容易に開始することができる。
また、前記格納部285には、縫製動作の実行中に下糸USが無くなった際に、縫製動作を中断した時の針位置を制御するため、縫製動作時に、下糸検出手段214の反射型光センサ211から下糸無しの検出信号が送出された場合、下糸無しの検出信号を検出した時点における縫製位置から複数針運針した後で下糸糸巻き装置付きミシン1を停止するプログラムが格納されている。このようなプログラムは、下糸DSの残り糸を確実に消費することができるとともに、下糸DSの残り糸を確実に消費した後に、糸巻き動作を開始することができ、その結果、糸巻き動作の自動化を容易に行うことができる。
また、前記格納部285には、中断した縫製動作を再開する際の針位置を制御するため、糸巻き動作によってボビン22に下糸DSを供給した後に、下糸無しの検出信号を検出した時点における縫製位置から複数針戻した位置から縫製動作を再スタートさせるプログラムが格納されている。このようなプログラムは、ボビン22に下糸DSを供給した後に、下糸無しの検出信号を検出した時点における縫製位置へ自動的に戻って縫製動作を再開することができ、その結果、作業性を確実に向上させることができるとともに、ほつれのない縫い目を確実に形成することができる。
また、前記格納部285には、糸巻きモードを判別するため、糸巻きモード切替スイッチ226の設定状態に基づいて自動的に糸巻き動作を行うか否かを判別するプログラムが格納されている。このようなプログラムは、作業者の操作による糸巻きモード切替スイッチ226の設定状態に応じて、糸巻き動作のモードを容易に選択することができる。さらに、糸巻きモード切替スイッチ226により設定されたモードで糸巻き動作を容易に開始することができる。
また、前記格納部285には、糸巻きモードを自動設定するため、模様選択手段としての模様選択スイッチ172により選択された模様縫いデータおよび/または選択された模様を形成するのに必要な補助部品である刺繍装置240の着脱状態を検出する刺繍装置センサ217から送出される検出信号に基づいて自動的に下糸DSの糸巻き動作を開始する自動糸巻きモードあるいは作業者の操作により下糸DSの糸巻き動作を開始する手動糸巻きモードを自動的に設定するプログラムが格納されている。このようなプログラムは、選択された模様縫いデータおよび/または選択された模様を形成するのに必要な補助部品240の着脱状態に基づいて、糸巻き動作のモードを自動的に選択することができ、その結果、直線縫い、ジグザグ縫い、ボタンホール縫いなどの実用縫いを行う場合には、糸巻きモード切替スイッチ226の設定状態によって、下糸DSの種類の変更や、下糸DSの巻き量の微妙な調整に好適な手動糸巻きモードを容易に選択することができ、刺繍縫いを行う場合には、糸巻きモード切替スイッチ226の設定状態によって、一般的に一種類の下糸DSを用いるのに好適な自動糸巻きモードを容易に選択することができる。さらに、糸巻きモード自動設定制御部245により設定されたモードで糸巻き動作を容易に開始することができる。
また、前記格納部285には、縫製動作の再スタートを制御するため、糸巻き動作によってボビン22への下糸DSの供給を終了した場合、縫製動作を自動的に再スタートするプログラムが格納されている。このようなプログラムは、糸巻き動作が終了した後に、縫製動作を自動的に再スタートすることができるので、作業性を確実に向上させることができる。
また、前記格納部285には、縫製動作の再スタート動作を制御するため、再スタートモード切替スイッチ227の設定状態に基づいて自動的に再スタートするか否かを判別するプログラムが格納されている。このようなプログラムは、再スタートモード切替スイッチ227の設定状態に基づいて、縫製動作を再スタートする際のモードを容易に選択することができる。さらに、このようなプログラムによれば、糸巻き動作が終了した後に、再スタートモード切替スイッチ227により設定されたモードで縫製動作を容易に再スタートすることができるので、作業性を確実により向上させることができる。
また、前記格納部285には、縫製動作の再スタートを告知するため、糸巻き動作によってボビン22への下糸DSの供給を終了して縫製動作を再スタートする前に、再スタート告知手段225が動作するように制御するプログラムが格納されている。なお、再スタート告知手段225に安全確保手段228を付加する構成の場合には、再スタート告知手段225および安全確保手段228の両者を動作させるようになっている。このようなプログラムは、糸巻き動作を終了した後の縫製動作を再スタートする前に再スタート告知手段225を容易かつ確実に動作させることができ、その結果、再スタートすることを作業者あるいは周囲の人々に容易かつ確実に認識させることができ、その結果、縫製動作が再スタートすることを作業者あるいは周囲の人々に容易かつ確実に認識させることができるので、縫製動作の再スタートを行う場合における安全性を高めることができる。さらにまた、このようなプログラムは、特に、再スタートを自動的に行う場合における安全性を高めることができる。
また、前記格納部285には、動作状態を判別するため、ボビン回転状態検出手段215から送出される検出信号に基づいて、縫製動作時には縫製状態が正常か否かを判断し、糸巻き動作時には糸巻きが正常か否かを判断するプログラムが格納されている。
また、前記格納部285には、誤動作を防止するため、縫製動作中における糸巻き動作を無効とするプログラムが格納されている。このようなプログラムは、縫製状態および糸巻き状態のそれぞれの正常と異常とを確実かつ容易に判断することができるとともに、縫製動作および糸巻き動作の異常を検出した場合にミシン停止することができ、その結果、安全性を高めることができる。また、このようなプログラムは、縫製動作中における糸巻き動作のスタートを確実に防止することができ、その結果、高い安全性を確実に確保することができる。
なお、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1の下糸検出手段214は、ボビン回転状態を検出するボビン回転状態検出手段215としても機能する。
また、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1においては、ボビン22に供給する下糸DSとして下糸専用糸EDSおよび上糸USを選択可能としたが、ボビン22に供給する下糸DSとして下糸専用糸EDSあるいは上糸USのみを用いる構成としてもよい。
さらに、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1においては、開口部274および開閉カバー271を針板5に配設したが、糸掛け時に、糸保持部材48を水平方向などのミシンベッド1bの一部を構成する針板5以外の場所でミシン1外部へ突出させる構成、すなわち、開口部274および開閉カバー271を針板5以外のミシンベッド1bに設ける構成としてもよい。
またさらに、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1においては、開閉カバー271に糸保持部材表出駆動手段としての突出部277を配設し、開閉カバー271の開閉動作に連動して突出部277を糸保持部材表出手段261の従動腕263aに接離させることにより、糸保持部材表出手段261を連動駆動したが、糸保持部材表出手段261の従動腕263aを往復動シリンダなどのアクチェータにより駆動可能とするとともに、開閉カバー271の移動による開口部274の開閉状態を光りセンサ、近接スイッチなどからなるセンサで検出し、このセンサの検出信号に基づいてアクチェータを駆動することにより、糸保持部材表出手段261を開閉カバー271の開閉動作に連動して駆動する構成としてもよい。
さらに、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1においては、糸巻き動作終了後に、外釜7に設けた切断刃43により、供給側の糸を切断する構成としたが、外釜7の外周に巻き付いた糸を捕捉して切断する構成としてもよい。
また、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1においては、糸掛け位置として、糸保持部材48の糸保持部分を針板5より突出させた位置に移動する構成としたが、この糸掛け位置は、糸保持部分が針板表面近傍の糸掛け位置に移動する構成としてもよく、下糸DSを開口部274から指で係止できる位置ならばよい。そして、この場合、開口部274は、四角状の指が入る大きさの開口部274でなくとも、例えば、U字状、V字状の案内長孔で構成してもよい。
さらにまた、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1においては、上糸USをボビン22に供給する下糸DSとして用いる場合に、糸巻き動作終了後に、ボビン22から出て布へつながる糸の切断を、ボビン22の上フランジ37に形成したスリット39のエッジで行う構成としたが、この糸の切断としてはボビン22の上部中央を押し部材で上方から押し付けて、押し部材とボビン22の上フランジ37との間を糸が繰り返しくぐり抜けることによって切断する構成としてもよい。
また、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1においては、糸保持部材移動手段53の駆動モータ91を駆動することにより糸保持部材48を移動させる構成としたが、糸保持部材48を手動で移動させる構成としてもよい。
さらに、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1においては、下糸DSの保持状態を検出する専用下糸保持検出手段180として発光素子186と受光素子187とにより検出させる構成としたが、専用下糸保持検出手段180としては、下糸DSの張力を検出する構成としてもよい。
なお、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1においては、針棒2の上下動は上軸の回転と連結されており、針棒切外し機構140は、上軸と針棒2を切り離す構成となっているが、針棒2の上下動が独立した駆動源を有し、針棒2のみ停止させることができる構成であってもよい。
さらに、本実施形態においては、針棒切外し機構140を備えた実施形態について述べたが、ボビン22に供給する下糸DSとして、下糸専用糸EDSのみを用いる場合には、この針棒切外し機構140がなくても、糸巻き実行時に上糸経路内の上糸USを取り除いておけば、下糸専用糸EDSをボビン22に巻くことができる。
さらにまた、下糸糸駒111の配設位置として、刺繍装置240の刺繍枠239をミシン脚注部1dから最も離間した図1左方に示す後退位置に位置した際に、刺繍装置240の刺繍枠239を着脱せずに下糸糸駒111の着脱(交換)を行うことができる位置とした場合には、前記格納部285に、刺繍装置240を駆動して縫製物Sに刺繍縫いを行う縫製動作の実行中に下糸DSの糸巻き動作を行う場合、前記刺繍動作制御部282が前記刺繍装置240の刺繍枠239を単に停止状態に保持するだけでなく、前記刺繍装置240の刺繍枠239を後退位置に位置させた後に停止状態に保持するプログラムを格納するとよい。
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
まず、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1における糸巻きスタート/ストップスイッチ177の操作によるボビン22への下糸DSの供給動作である糸巻き動作について説明する。
本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1における糸巻きスタート/ストップスイッチ177の操作による糸巻き動作は、縫製動作の途中で下糸DSがなくなった場合、あるいは、縫製準備の下糸DSの糸巻きのために空のボビン22を内釜18にセットして、下糸糸巻き装置付きミシン1に電源を供給した状態で行う。
そして、糸巻き動作は、操作部170の模様選択スイッチ172(図21)を操作して模様を選択することにより開始する。そして、模様選択スイッチ172を操作して模様を選択することにより、格納部285に格納されたプログラムによて格納部285に格納された各種のデータから模様選択スイッチ172により選択された模様に応じて下糸DSの糸巻き量、巻き糸、糸巻き動作などを自動的に設定する。例えば、刺繍縫いであれば、糸巻き量は(大)で巻き糸は下糸専用糸EDSなどと設定し、直線縫いであれば、糸巻き量は(中)で巻き糸は上糸USなどというように設定する。この時、制御手段93は、選択された巻き糸の種類に応じた糸巻き動作を選択するとともに、糸巻き動作に関連する各種動作および動作順序も設定する。
このように、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1によれば、縫製条件に応じてボビン22に巻き取る下糸DSの巻取り量を選択することができる。さらに、縫製動作時の縫い模様に応じて下糸DSの選択およびこの下糸DSの糸巻き量を自動的に設定することができるので、糸巻き動作にかかわる操作を容易にすることができる。
なお、糸巻き量や巻き糸などは、前記巻き糸設定スイッチ173、糸巻き量設定スイッチ174などを操作することにより手動操作にて変更することも可能、すなわち手動操作による設定も可能である。
前記自動設定あるいは手動操作による設定を行った際には、前記格納部285に格納されたプログラムによって設定状態と下糸糸巻き装置付きミシン1の状態とが合致しているか否かを判定し、設定状態と下糸糸巻き装置付きミシン1の状態とが合致していない場合、すなわち、専用下糸保持検出手段180が下糸専用糸EDSを検出した際には上糸USの糸巻き動作を、専用下糸保持検出手段180が下糸専用糸EDSを検出しない際には下糸専用糸EDSの糸巻き動作をそれぞれ無効とし、警告手段175として機能する操作部170の表示画面176に警告を画面表示したり、安全確保手段228を駆動する。その結果、誤巻き取り動作防止部202は誤動作を未然に防止し、警告手段175は、操作者に各種の警告を容易に認識させることができる。
また、各種の設定が終了し、前記格納部285に格納されたプログラムによって設定状態と下糸糸巻き装置付きミシン1の状態とが合致していると判断した場合には、糸巻きスタート/ストップスイッチ177を操作して糸巻きを開始する。
このように、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1によれば、糸巻き動作の設定状態とミシンの状態とを合致させることができるので、下糸専用糸EDSをボビン22に供給する下糸DSとして用いる場合の下糸専用糸EDSの糸保持部材48に対する糸掛け忘れなどを確実に防止することができるとともに誤動作を未然に防止することができる。
なお、自動糸巻きの場合には、縫製動作の途中で上糸検出手段214の上糸センサ223および下糸検出手段214の反射型光センサ211から送出される検出信号に基づいて前記格納部285に格納されたプログラムによって下糸DSの有無が判別され、下糸無しと判別した場合には下糸糸巻き装置付きミシン1を停止し、その後、予め設定された条件で下糸DSの糸巻き動作を開始する。
本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1は、ボビン22に供給する下糸DSとして糸巻き動作時に既に糸掛けされている上糸USと下糸専用糸EDSの何れか一方を選択して用いることができるようになっており、上糸USをボビン22に供給する下糸DSとして用いる場合には、糸保持部材48には糸掛けせず、糸保持部材48に糸を持たせない状態としておく。また、下糸専用糸EDSをボビン22に供給する下糸DSとして用いる場合には、予め図16に示すように下糸専用糸EDSを専用下糸繰出装置110を介して糸保持部材48に糸掛けしておく。
ここで、下糸専用糸の糸保持部材への糸掛け動作について図12、図13、図16、図31、図32および図33により説明する。
図31は本発明に係る下糸糸巻き装置付きミシンの初期状態を示す要部の正面図、図32は本発明に係る下糸糸巻き装置付きミシンの糸保持部材がミシン外部に突出した状態を示す要部の斜視図、図33は本発明に係る下糸糸巻き装置付きミシンの糸保持部材がミシン外部に突出した状態を示す要部の正面図である。
図11および図31に示すように、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1の縫製動作時あるいは停止時の初期状態においては、針板5に設けられた開口部274は、開閉カバー271によって塞がれており、糸保持部材48は、開閉カバー271の下方のミシン内部に位置している。すなわち、図11および図31に示すように、開閉カバー271の突出部277と、糸保持部材表出手段261の従動リンク体263の従動腕263aとは離間しており、従動リンク体263は、図11および図31に示すように、ねじりコイルばね264の付勢力によって、固定軸262を中心として反時計方向へ回転するように付勢されており、従動リンク体263の従動腕263aは左斜め上方に位置し、従動リンク体263の作動腕263bをほぼ水平に位置している。
また、糸保持部材48は、図11および図31に示すように、糸保持部材移動手段53により、糸保持部材48の長手方向先端部が外釜7の外周面近傍の下方の退避位置に位置している。すなわち、図11および図31に示すように、糸保持部材移動手段53の駆動板下79および駆動板上83が右方に示す後退端に位置し、糸保持部材48の後取付ピン52は、糸保持部材移動手段53の移動溝76の上下部76bの上方に位置した状態でその先端部がカム溝89のカム面88の先端近傍により上方から当接している。また、図31に示すように、ボビン駆動部材11は、ボビン駆動部材移動手段94により、ボビン22と切り離されボビン22を非回転状態とする離間位置に位置している。つまり、駆動板下79が後退端に位置することにより、ボビン駆動部材移動手段94の作動ピン108が傾斜カム面109から離間し、ばね6(図14)の付勢力によってギア連結リンク96がリンク支持ピン97を中心として反時計方向へ付勢され、作動板95がボビン駆動部材11の下端の下方に離間し、ボビン駆動部材11は、ボビン駆動部材付勢ばね12の付勢力によって下方に向けて付勢され、ボビン駆動部材11の上端部に設けられたボビン駆動ギア14が、ボビン従動ギア35から下方へ離間して回転伝道機構340が切り離された状態となり、ボビン22は回転しない、なお、ボビン駆動ギア14は、外釜底板16のギア孔17に嵌合されて外釜7と一体で回転する。また、ストッパピン105は、ストッパピン作動腕159と当接して円弧状溝部100の左方下方に形成された当接縁100Aに対向している。
ここで作業者が開閉カバー271を操作することにより、下糸専用糸EDSの糸保持部材48への糸掛け動作を開始する。すなわち、作業者が開閉カバー271の指掛け275に指を掛けて開閉カバー271を図13および図31において右方に向かって後退操作することにより、下糸専用糸EDSの糸保持部材48への糸掛け動作を開始する。
そして、作業者が開閉カバー271の指掛け275に指を掛けて開閉カバー271の開動作として開閉カバー271を後退操作すると、開閉カバー271が図13および図31右方に向かってスライド移動し、針板5に設けられ開閉カバー271によって塞がれた開口部274が左方側から徐々に開放される。そして、開閉カバー271が後退移動して後退端に到達する途中で、開閉カバー271に設けられた糸保持部材表出駆動手段としての突出部277が、糸保持部材表出手段261の従動リンク体263の従動腕263aに当接し、初期状態においてねじりコイルばね264の付勢力によって固定軸262を中心として反時計方向へ回転するように付勢されている従動リンク体263は、ねじりコイルばね264の付勢力に抗して付勢方向と反対の時計方向へ回転を開始し、従動リンク体263の作動腕263bの先端部下部が所定のタイミングで糸保持部材48の取付部50に対して上方から当接し、移動溝76の上下部76bによって移動軌跡を規制されている糸保持部材48の後取付ピン52は、移動溝76の上下部76bを上方から下方へ向かって移動を開始し、その結果、前取付ピン51を中心として反時計方向へ回転するように付勢されている糸保持部材48は、ねじりコイルばね252の付勢力に抗して付勢方向と反対の時計方向へ回転を開始する。
ついで、開閉カバー271がさらに後退移動して後退端に到達すると、図13および図31に示す各部は、図32および図33に示すように、開閉カバー271によって塞がれていた開口部274が全開となって開状態になるとともに、開閉カバー271の糸保持部材表出駆動手段としての突出部277が、最も後退した後退端に位置する。そして、突出部277の後退端への移動は、従動リンク体263を時計方向へ回転し、従動リンク体263の作動腕263bの先端部下部が糸保持部材48の取付部50を押し下げ、糸保持部材48が前取付ピン51を中心として時計方向へ回転し、糸保持部材48の先端が針板5に設けた開口部274を通過して針板5の上部のミシン外部に突出し、糸保持部材48の糸保持部分が開口部274を通過してミシン外部に突出した糸掛け位置を保持するようになっている。
ついで、予め専用下糸保持検出手段180まで糸掛けされた下糸専用糸EDSの糸端側を図16に示すように糸保持部材48に糸掛けすることにより、下糸専用糸EDSの糸保持部材48への糸掛け動作が終了する。この時、下糸専用糸EDSは、針板5に形成された溝部278を介して開口部274に入り込むようにして糸保持部材48へ糸掛けされる。
そして、下糸専用糸EDSの糸保持部材48への糸掛けを終了したら、開閉カバー271の閉動作として開閉カバー271を開口部274を塞ぐように前進操作させると、図32および図33に示す各部は、糸保持部材48が下糸専用糸EDSの糸端側を保持した状態で各部が逆動作して図13および図31に示すもとの初期状態に復帰し、下糸専用糸EDSがいつでもボビン22に供給可能な状態となる。
このように、本実施形態によれば、開閉カバー271の開動作に連動して糸保持部材48の少なくとも糸保持部分をミシン外部に表出、本実施形態において突出させることができるので、1回の操作によって下糸専用糸EDSの糸保持部材48への糸掛けを可能な状態とすることができる。また、糸保持部材48の少なくとも糸保持部分がミシン外部に表出するので、下糸専用糸EDSの糸保持部材48への糸掛けを容易に行うことができる。つまり、糸保持部材48の少なくとも糸保持部分がミシン外部に表出するので、糸掛けの作業性および操作性に優れ、その結果、下糸専用糸EDSの糸保持部材48への糸掛け動作時の労力および時間を確実に低減することができる。
なお、糸保持部材表出手段261を開閉カバー271の開閉動作にかかわりなく単独で駆動可能に形成する構成としてもよい。
つぎに、下糸専用糸の糸巻き動作を図31および図34から図37により説明する。
図34から図37は下糸専用糸の糸巻き動作を示すものであり、図34は前進開始前状態を示す図31と同様の図、図35は前進状態を示す図31と同様の図、図36は図35の平面図、図37は糸巻き可能状態を示す図31と同様の図である。
図31に示すように、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1の縫製動作時あるいは停止時の初期状態においては、糸保持部材48は、糸保持部材移動手段53により、糸保持部材48の長手方向先端部が外釜7の外周面近傍の下方の退避位置に位置している。すなわち、糸保持部材移動手段53の駆動板下79および駆動板上83が図31右方に示す後退端に位置し、糸保持部材48の後取付ピン52は、糸保持部材移動手段53の移動溝76の上下部76bの上方に位置した状態でその先端部がカム溝89のカム面88の先端近傍により上方から当接している。
また、ボビン駆動部材11は、ボビン駆動部材移動手段94により、ボビン22と切り離されボビン22を非回転状態とする離間位置に位置している。すなわち、駆動板下79が後退端に位置することにより、ボビン駆動部材移動手段94の作動ピン108が傾斜カム面109から離間し、ばね6の付勢力によってギア連結リンク96がリンク支持ピン97を中心として反時計方向へ付勢され、作動板95がボビン駆動部材11の下端の下方に離間し、ボビン駆動部材11は、ボビン駆動部材付勢ばね12の付勢力によって下方に向けて付勢され、ボビン駆動部材11の上端部に設けられたボビン駆動ギア14が、ボビン従動ギア35から下方へ離間し、外釜底板16のギア孔17に嵌合されて外釜7と一体で回転する。さらに、ストッパピン105は、ストッパピン作動腕159と当接して円弧状溝部100の左方下方に形成された当接縁100Aに対向している。
そして、縫製動作時においては、内釜18を回る上糸USは、内釜18の底面とボビン駆動ギア14の上面とで形成する隙間を通過する。
ついで、糸巻きスタート/ストップスイッチ177の操作による手動糸巻きモード、あるいは、糸巻き信号による自動糸巻きモードにより糸巻き動作を開始する。なお、自動糸巻きモードについては後述する。
そして、制御手段93から制御指令が各部に送出されると、まず、専用下糸保持検出手段180が糸巻き動作時に供給される下糸専用糸EDSが糸保持部材48に保持されているか否かを検出し、この検出結果は制御手段93に送出され、制御手段93の格納部285に格納されたプログラムによって、設定状態と下糸糸巻き装置1の状態とが合致しているか否かが判定され、専用下糸保持検出手段180が下糸専用糸EDSを検出しない場合には、糸巻き動作を行わずに、警告手段175としても機能する操作部170の表示画面176に警告をメッセージなどで表示したり、ブザー、安全灯などからなる安全確保手段228を動作して終了する。これにより、糸巻き動作の誤動作を容易かつ確実に防止することができる。
また、専用下糸保持検出手段180が下糸専用糸EDSを検出した場合には、刺繍装置240を駆動して縫製物Sに刺繍縫いを行う縫製動作の実行中に下糸DSの糸巻き動作を行う場合、刺繍枠239が移動して縫い目形成動作が進行するのを防止するため、前記刺繍動作制御部282が刺繍装置240の刺繍枠239を停止状態に保持する、詳しくは前記刺繍装置240のYモータ240AおよびXモータ240Bを停止する。
なお、刺繍装置240を用いずに布送り機構310を駆動した縫製動作の実行中に下糸DSの糸巻き動作を行う場合には、糸巻き動作を実行中に縫製物Sが送られるのを防止するため、糸巻き時送り歯制御部283が糸巻き動作時に前記送り歯312の上下送り運動および/または水平送り運動を停止するように前記送り量制御機構360および前記送り歯上下動切外し機構370を動作する。
ついで、制御手段93から送出される制御指令に基づいて、糸保持部材移動手段53の駆動モータ91が駆動し、糸保持部材移動手段53の駆動板下79が機構台77のガイド溝81に沿って図31左方に示す水平釜4に接近する方向へ前進移動する。この、駆動板下79の前進移動は、付勢ばね85を介して駆動板上83に伝達し、駆動板上83が駆動板下79と一体で前進する。すると、駆動板上83のカム溝89が前進して、糸保持部材48の後取付ピン52は、カム溝89のカム面88によって下方に向けて押し下げられ、その結果、後取付ピン52は、移動溝76の上下部76bの上方から下方に向けて移動する。そして、後取付ピン52と前取付ピン51との中心間距離は、移動溝76の円弧状に形成された上下部76bの曲率半径と同一とされているので、糸保持部材48は後取付ピン52を中心として図31において時計方向へ回転し、図31に示す各部は図34に示すように、糸保持部材48の長手方向先端部が外釜7の外周面に沿って上方に位置し前進可能状態となる。また、ストッパピン105は、ストッパピン作動腕159と当接した状態で当接縁100Aに当接する。
つぎに、駆動モータ91のさらなる駆動によって駆動板下79がさらに前進移動すると、糸保持部材48が移動溝76に沿って前進移動し、図34に示す各部は図35および図36に示すように、前取付ピン51が移動溝76の図35左方に示す先端に当接し、糸保持部材48の前進移動は、糸保持部材48の先端部がミシン脚柱部1d側から内釜18の内部、詳しくはボビン着脱用凹溝24の上方に進入した進入位置で停止し前進状態となる。この時、ボビン駆動部材移動手段94の作動ピン108が傾斜カム面109と当接する。また、ストッパピン105は、ストッパピン作動腕159から離間した状態で当接縁100Aに当接する。
つぎに、駆動モータ91がさらに駆動すると、駆動板下79がさらに前進移動し、図35および図36に示す各部は図37に示すように、ボビン駆動部材移動手段94の作動ピン108が傾斜カム面109を押し下げ、ギア連結リンク96が時計方向へ回転し、作動板95がボビン駆動部材11の下端に当接してボビン駆動部材11をボビン駆動部材付勢ばね12の付勢力に抗して上昇させ、ボビン駆動部材11の上端部に設けられたボビン駆動ギア14が、外釜底板16のギア孔17とボビン従動ギア35との両者と噛合して回転伝道機構340を構成するボビン駆動部材11とボビン22とを連結し、ボビン22を回転状態とする連結位置に位置し、駆動板下79が前進端に位置し糸巻き可能状態となる。この時、同時に、ストッパ103がばね107(図14)の付勢力によって反時計方向へ回転し、ストッパピン105がギア連結リンク96の円弧状溝部100の溝底100aに嵌合する。また、駆動板下79は前進移動するが、付勢ばね85が軸方向に収縮して駆動板上83の移動は停止状態を保持し、その結果、糸保持部材48は、糸保持部材48の先端部が内釜18の内部上方に進入した進入位置を保持する。
また、糸巻き可能状態におけるボビン22と糸保持部材48の位置関係は、図10に示すように、糸保持部材48の上方糸保持部59と糸位置規制部58との間に斜めに連なる下糸専用糸EDSをボビン22の上フランジ37の外周縁に押し付けている。
このように、糸保持部材48の先端部がミシン脚柱部1d側から内釜18の上方、詳しくはボビン着脱用凹溝24の上方に進入した進入位置に位置することにより、糸保持部材48は、下糸DSのボビン22への捕捉をより容易かつ確実にすることができるようになっている。
つぎに、制御手段93から送出される制御指令により、針棒切外し機構140が針棒2の上下方向への往復運動を上軸の回転から切外して針3の上下方向への往復運動を停止させ針3を上方に保持し、その後、下糸糸巻き装置付きミシン1を駆動する。
そして、下糸糸巻き装置付きミシン1が駆動すると、外釜7が正回転し、この外釜7の回転は、駆動力伝達手段330、詳しくは外釜7の外釜底部7e磁力によって吸着している磁性部材332、外釜底板16をこの順に介してボビン駆動部材11の上端のボビン駆動ギア14を正回転させ、その結果、ボビン駆動ギア14と噛合しているボビン従動ギア35を外釜7の回転方向と反対方向へ逆回転させ、ボビン22が外釜7の回転方向と反対方向へ逆回転する。
この時、駆動力伝達手段330の磁性部材332は、磁性部材332の磁力によって外釜7と一体回転するので、糸巻き動作時にボビン22を容易に回転させることができる。一方、駆動力伝達手段332は、糸巻き動作時に、供給側に位置する下糸DSに過負荷が加わった場合、すなわち、下糸DSの供給経路で下糸DSの引っ掛かりなどのトラブルの発生などによりボビン22の回転が停止した場合、駆動力伝達手段330と外釜7との一体回転を磁性部材332の磁力による駆動力伝達手段332と外釜7との吸着力を越えた時点でスリップさせて駆動力伝達手段332の回転を容易に停止することができ、その結果、糸巻き動作時に下糸DSの供給経路で下糸DSの引っ掛かりなどのトラブルが生じた場合の駆動力伝達手段332の一部の破損やボビン暴れを確実に防止できるので、安全性を高めることができる。
また、駆動力伝達手段332の磁性部材332は、内釜18を外釜7に吸引するので、内釜18を外釜7のレース面7dに回転可能に支持した状態を容易かつ確実に保持することができ、その結果、外釜7から内釜18が不必要に飛び出すのを確実に防止することができる。
そして、ボビン22の逆回転により、ボビン22の上フランジ37の外周縁に押し付けられた糸保持部材48の上方糸保持部59と糸位置規制部58との間に斜めに連なる下糸専用糸EDSが、ボビン22のスリット39の開口39aに容易に捕捉され、ボビン中心軸36に形成された糸捕捉部としての凹溝41内に供給側、すなわち下糸糸駒111側の下糸専用糸EDSが導かれてしっかりと巻かれる。したがって、ボビン22に下糸DSを容易かつ確実に供給することができるとともに、縫製動作によって下糸専用糸EDSが消費される場合、下糸DSが完全に消費されるまでボビン22を確実に回転させることができる。
そして、ボビン22の回転により凹溝41内に下糸専用糸EDSが巻回されると、下糸専用糸EDSは壁部40を図7下方へ乗り越えてボビン中心軸36の外周面に巻き付き、ボビン22の回転の継続により糸巻きがさらに行われる。また、糸保持部材48の上方糸保持部59に保持された糸端側の下糸専用糸EDSは、ボビン22の回転に多少引かれて短くなり、スリット39から飛び出た状態となる。この時、ボビン22に巻回される下糸専用糸EDSには、図16に示すように、糸保持部材48の糸保持ばね66に一体形成された専用糸張力付与手段296により適正な張力を容易に付与することができるので、ボビン22に下糸専用糸EDSを適正な状態でしっかりと巻回することができる。
そして、ボビン22に対する下糸専用糸EDSの巻回は、前記格納部285に格納されたプログラムによって設定された糸巻き量に到達するまで行われ、ボビン22に対する下糸専用糸EDSの巻回が予め設定された糸巻き量に到達すると下糸糸巻き装置付きミシン1が停止する。この時、針棒切外し機構140が針棒2の上下方向への往復運動を上軸の回転から切外して針3の上下方向への往復運動を停止させ針3を上方に保持した状態を保持している。
また、ボビン22に巻かれた下糸専用糸EDSは、凹溝41内にしっかりと巻回されるので、縫製動作によって下糸専用糸EDSが消費される場合、下糸専用糸EDSは、ボビン中心軸36の外周面側から消費され最後に糸捕捉部としての凹溝41内にしっかりと巻き付いた糸端側が消費されるので、下糸専用糸EDSが完全に消費されるまでボビン22を確実に回転させることができる。
さらにまた、糸巻き動作の実行中に、前記専用下糸保持検出手段180が糸巻き動作時に供給される下糸専用糸EDSの糸無しを検出した場合には、下糸糸駒111に巻回されている下糸専用糸EDSがなくなったか、何らかのトラブルによる下糸専用糸EDSの糸切れであるので、糸巻き中断動作制御部281に格納されたプログラムによって、実行中の糸巻き動作を停止して、警告手段175および再スタート告知手段225としても機能する前記糸無し告知手段178としての表示画面176に警告をメッセージなどで画面表示したり、ブザー、安全灯などからなる安全確保手段228を駆動する。
つぎに、下糸専用糸の下糸張力手段への糸掛け動作および下糸専用糸の切断動作について図38から図42により説明する。
図38から図42は下糸専用糸の下糸張力手段への糸掛け動作および下糸専用糸の切断動作を示すものであり、図38は下糸捕捉可能状態を示す図30と同様の図、図39は糸捕捉フックと下糸専用糸との位置関係を示す要部の説明図、図40は糸掛け動作および切断動作における途中経過を示す要部の斜視図、図41は図40につづく途中経過を示す図40と同様の図、図42は図41につづく途中経過を示す図40と同様の図である。
この下糸専用糸EDSの下糸張力手段25への糸掛けは、縫製動作を行う際に必要な下糸張力を、ボビン22に供給した下糸DSに付与するためのものである。
前記糸巻きが終了した後に、制御手段93から送出される制御指令により、駆動モータ91が逆回転駆動し、駆動板下79が後退移動する。そして、駆動板下79の後退移動は、図37に示す各部は図38に示すように、糸保持部材48の長手方向先端部が、外釜7の外周面近傍の下方の退避位置の若干上方、すなわち、糸捕捉フック46の回転軌跡の下方に位置した糸捕捉位置で停止し下糸捕捉可能状態となる。この時、ボビン駆動部材移動手段94の作動ピン108は傾斜カム面109から離間するが、ストッパピン105がギア連結リンク96の円弧状溝部100の溝底100aに嵌合した状態を保持するので、ボビン駆動部材11は上昇した状態を保持し、ボビン駆動部材11の上端部に設けられたボビン駆動ギア14は外釜底板16のギア孔17とボビン従動ギア35との両者と噛合してボビン駆動部材11とボビン22とを連結しボビン22を回転状態とする連結位置を保持する。そして、図38に示すように、ボビン22に巻回された下糸専用糸EDSの供給側は、糸保持部材48の糸捕捉位置への移動によって糸保持部材48に引かれて外釜7の外周角で下方に屈曲し、糸保持部材48の上方糸保持部59に保持されずに、糸保持部材48の糸保持板ばね66の先端縁と糸保持捕捉部49の先端縁との交叉部において係止される。
また、つぎの下糸専用糸EDSによる糸巻き動作を行うためには、糸保持部材48の上方糸保持部59に下糸専用糸EDSの糸端を保持させることにより、糸保持部材48への下糸専用糸EDSの糸掛け動作を省略して操作を容易とすることができる。
ついで、図38に示す下糸捕捉可能状態で、制御手段93から送出される制御指令により、図示しない上軸が1回転する分だけミシン、詳しくは下糸糸巻き装置付きミシン1のミシンモータ235を駆動する。すると、外釜7が正回転し、外釜7の外周面に配設された糸捕捉フック46の糸離間用傾斜面47が前記外釜7の外周角で下方に屈曲した部分の下糸専用糸EDSを外釜7の外周面から離れる方向に押し出し、ボビン22に巻回された下糸専用糸EDSの供給側が糸保持部材48の上方糸保持部59に押し込まれ、その結果、下糸専用糸EDSを上方糸保持部59に保持することができる。
つぎに、制御手段93から送出される制御指令により、駆動モータ91がさらに逆回転駆動し、駆動板下79が後退端に達すると、図38に示す下糸捕捉可能状態の各部は図31に示す初期状態に復帰する。この時、糸保持部材48の先端部は、外釜7の外周面に沿って下方に移動するため、ボビン22と糸保持部材48の上方糸保持部59との間に連なる下糸専用糸EDSは張られる。また、同時に、駆動板下の79のストッパピン作動腕159によって、ストッパ103のストッパピン105が支持ピン101を中心として時計方向に回転して、ストッパピン105をギア連結リンク96の円弧状溝部100から切り離す。そして、ストッパピン105がギア連結リンク96の円弧状溝部100の溝底100aから離間され、ギア連結リンク96は、ばね6の付勢力によりリンク支持ピン97を中心として反時計方向へ回転して作動板95がボビン駆動部材11の下方へ離間し、その結果、ボビン駆動部材11は、ボビン22と切り離されボビン22を非回転状態とする離間位置に復帰し、ボビン22は、回転自在なフリー状態となる。
つぎに、制御手段93から送出される制御指令により、ミシン、詳しくは下糸糸巻き装置付きミシン1のミシンモータ235を逆回転駆動すると、外釜7が逆回転し、糸捕捉フック46のフック部46aが外釜7の外周近傍に位置する前記ボビン22と糸保持部材48の上方糸保持部59との間に位置する下糸専用糸EDSを捕捉する。そして、糸捕捉フック46のフック部46aが下糸専用糸EDSを捕捉した状態で逆回転し、図39下方に示す位置に到達すると、ボビン22から出た下糸専用糸EDSは、図40に示すように、下糸張力手段25の基板26の上端縁に乗り上げ、内釜18の突起19と内釜回り止め20との間の隙間を通過する。また、糸捕捉フック46のフック部46aの下方から出た下糸専用糸EDSは、外釜7の大径部7aの外周に巻き付いて糸保持部材48の上方糸保持部59へつながる。
つぎに、外釜7のさらなる逆回転により、下糸張力手段25の基板26の上端縁に乗り上げた下糸専用糸EDSは、基板26の上端を滑って図39左斜め下方に示す位置に到達すると、下糸張力手段25の基板26の上端縁に形成されている糸道入口27へ誘い込まれ、その結果、図41に示すように、下糸専用糸EDSは糸導入溝28に進入する。
つぎに、外釜7のよりさらなる逆回転により、糸導入溝28に進入した下糸専用糸EDSは、図39左方および図42に示す位置に到達すると、図5に示す下糸張力手段25の糸係止孔29と糸出口30との間に下糸押さえ板ばね31の付勢力をもって付勢された状態で配置され、その結果、縫製動作時に必要な適正な下糸張力を下糸専用糸EDSに確実に付与することができる。
このように、内釜17の回転中心、すなわち、ボビン22の回転中心を外釜7の回転中心に対してずらすとともに、糸巻き動作時にのみボビン22を外釜7の回転方向に対して逆回転させることにより、糸巻き動作時にボビン22のスリット39への下糸DS(下糸専用糸EDSあるいは上糸US)を容易に捕捉させることができるとともに、下糸張力手段25への下糸UD(下糸専用糸EDSあるいは上糸US)の糸掛けを容易により適正かつ確実に行うことができる。また、このような構成は、縫製動作時のヒッチステッチを容易に防止して縫製品質を向上させることや、図示しない糸切り装置や下糸繰出装置などを配設するスペースを容易に確保することもできる。さらに、糸巻き終了後に、外釜7を逆回転させるという動作で下糸張力手段25への糸掛けを行う本実施形態の構成は、下糸張力手段25からの糸出口30を内釜18上に設けることができ、従来の糸巻き後のボビンから布への下糸経路が釜の下を通るので糸道屈曲抵抗が大きくなるなどの下糸DSの張力不安定の要因を確実に除去し、下糸DSに適正な下糸張力を容易に付与することができる。
そして、前記下糸専用糸EDSが図39左方に位置すると、外釜7に配設された切断刃43の刃先が、図39に符号Bにて示す上方糸保持部59から出た下糸専用糸EDSが外釜7の外周面に巻き付き始まる接点付近に位置するので、外釜7の外周面に巻き付いた下糸専用糸EDSは、図2に示すさそい込み部44の斜面を乗り越えて切断刃44に押し付けられて切断される。そして、この位置でボビン22から糸保持部材48の上方糸保持部59へ連なる下糸専用糸EDSを切断することにより、縫い目の結束に必要な下糸張力手段25からの下糸DSの長さを十分に確保することができるとともに、糸保持部材48の上方糸保持部59から出る糸端側の糸残りを少なくすることができる。
ついで、制御手段93から送出される制御指令により、外釜7の逆回転を停止するとともに、針棒切外し機構140が上軸の回転運動から切り離した針棒2の上下方向への往復運動を上軸の回転に連結することにより、下糸糸巻き装置付きミシン1の各部が初期状態に復帰し、下糸専用糸EDSの糸巻き動作が終了する。
また、ボビン22に供給する下糸DSとして下糸専用糸EDSを用いる場合には、糸巻き動作終了後に、下糸専用糸EDSの糸端を糸保持部材48に容易に保持させることができるので、下糸糸駒111から下糸専用糸EDSがなくなるまでは、糸巻き動作を繰り返し容易に行うことができる。
つぎに、上糸の糸巻き動作を図9、図10、図31から図37、図43および図44により説明する。なお前述した下糸専用糸EDSの糸巻き動作と同様の部分については説明を省略する。
図43は本発明に係る下糸糸巻き装置の糸保持部材が上糸を捕捉した上糸捕捉状態を示す説明図、図44は本発明に係る下糸糸巻き装置の糸保持部材が捕捉した上糸の糸端の切断動作を示す説明図である。
本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1による上糸USの糸巻き動作は、糸保持部材48に糸掛けしない状態で、糸巻きスタート/ストップスイッチ177の操作による手動糸巻きモード、あるいは、糸巻き信号による自動糸巻きモードにより糸巻き動作を開始する。なお、自動糸巻きモードについては後述する。
そして、制御手段93から制御指令が各部に送出されると、まず、専用下糸保持検出手段180が糸巻き動作時に供給される下糸専用糸EDSが糸保持部材48に保持されているか否かを検出し、この検出結果は制御手段93に送出され、制御手段93の誤巻き取り動作防止部202により、設定状態と下糸糸巻き装置1の状態とが合致しているか否かが判定され、専用下糸保持検出手段180が下糸専用糸EDSを検出した場合には、糸巻き動作を行わずに、警告手段175としても機能する操作部170の表示画面176に警告をメッセージなどで表示したり、安全確保手段228を駆動して終了する。これにより、誤動作を確実に防止することができる。
また、専用下糸保持検出手段180が下糸専用糸EDSを検出しない場合には、下糸専用糸EDSの糸巻き動作と同様に、刺繍装置240を駆動して縫製物Sに刺繍縫いを行う縫製動作の実行中に下糸DSの糸巻き動作を行う場合、刺繍枠239が移動して縫い目形成動作が進行するのを防止するため、前記刺繍動作制御部282が刺繍装置240の刺繍枠239を停止状態に保持する、詳しくは前記刺繍装置240のYモータ240AおよびXモータ240Bを停止する。
なお、刺繍装置240を用いずに布送り機構310を駆動した縫製動作の実行中に下糸DSの糸巻き動作を行う場合には、糸巻き動作を実行中に縫製物Sが送られるのを防止するため、糸巻き時送り歯制御部283が糸巻き動作時に前記送り歯312の上下送り運動および/または水平送り運動を停止するように前記送り量制御機構360および前記送り歯上下動切外し機構370を動作する。
ついで、制御手段93から送出される制御指令に基づいて、糸保持部材移動手段53の駆動モータ91が駆動し、前述した下糸専用糸EDSの糸巻き動作と同様に、図31に示す初期状態に位置する糸保持部材48は、図34に示す前進開始前状態を介して図35および図36に示す前進状態に位置する。そして、図35および図36に示す前進状態に位置すると、制御手段93から送出される制御指令に基づいて、駆動モータ91が停止する。
つぎに、下糸糸巻き装置付きミシン1が図35および図36に示す前進状態で停止すると、制御手段93から送出される制御指令に基づいて、図示しない上軸が1回転する分だけミシン、詳しくは下糸糸巻き装置付きミシン1のミシンモータ235を駆動する。すると、針棒2の上下運動により上停止位置に位置する針3が上下方向へ1針分だけ1往復動作するとともに、針3の針穴から出た上糸ループは、正回転する外釜7の剣先42により捕捉されて内釜18を回る。この時、剣先42により、内釜18を回る上糸USは、内釜18の上下に分けられて、布側の上糸USが内釜18の上を通り、針側の上糸USが内釜18の底面とボビン駆動ギア14の上面とで形成する隙間を通過する。なお、縫製動作の途中で上糸USの糸巻きを行う場合には、図5に示すように、上糸USの一端が布の縫い目につながっているので何ら差し障りはないが、それ以外の場合には、上糸USの糸端を手などで保持してからミシン、詳しくは下糸糸巻き装置付きミシン1のミシンモータ235を駆動することが肝要である。
そして、内釜18の上面を回る上糸USは、図35および図36に示すように、糸保持部材48の先端部が内釜18の内部上方に進入した進入位置で停止しているので、図9に詳示する糸保持板ばね66の先端縁と糸保持捕捉部49の先端縁との交叉部により形成される上方糸係止部60が形成する開口部位にさそい込まれる。そして剣先42のさらなる回転により、内釜18の突起19と内釜回り止め20との間の隙間を通過した後に、糸位置規制部58を介して図9に詳示する糸保持板ばね66の上後舌片69と糸保持捕捉部49の後舌片55により形成される上糸用後方保持部70が形成する開口部位にさそい込まれ、その後、内釜18から上糸USが抜けて、図43に示すように、上糸USが糸保持部材48に捕捉され上糸捕捉状態となる。この時、上糸USは図43に示すように、前記上方糸保持部59には保持されず、上方糸係止部60に係止されており、上方糸係止部60と上糸用後方保持部70との間に連なる部位は、図10に示す前記下糸専用糸EDSとほほ同様に糸位置規制部58に位置するように張られる。
なお、縫製動作時における上糸USは、図17に示す上糸繰出機構120により、1針毎に、制御手段93から送出される制御指令にしたがって駆動される駆動モータ125により縫い目に必要な糸量のみが繰り出され、糸締め時には駆動モータ125が停止して駆動ローラ124と従動ローラ128との間で上糸USが糸保持され適正な糸調子を得ることができる。
また、糸巻き動作時における上糸USは、糸巻き動作を開始した直後の水平釜4が駆動する第1針目では縫製動作に必要な縫い目に必要な糸量は不要であるが、図43に示す糸経路分の糸量が必要となる。また、上糸USを糸保持部材48に確実に捕捉させるため上糸USに適正な張力も必要である。そこで、制御手段93から送出される制御指令にしたがって、上糸繰出機構120により、図43に示す糸経路に必要な糸量とほぼ同等あるいは若干少な目の上糸USを繰り出した後に、図示しない天秤機構による糸締め時において、駆動モータ125を停止させて駆動ローラ124と従動ローラ128との間で上糸USを保持することにより、上糸USを糸保持部材48に確実に捕捉することができる。
また、下糸糸巻き装置1が図35および図36に示す前進状態で停止した状態においては、ボビン駆動ギア14がボビン従動ギア35から下方へ離間している。
つぎに、前述したように、制御手段93から送出される制御指令により、針棒切外し機構140が針棒2の上下方向への往復運動を上軸の回転から切外して針3の上下方向への往復運動を停止させ針3を上方に保持し、その後、下糸糸巻き装置付きミシン1を駆動する。
つぎに、糸保持部材48が上糸USを捕捉した後に、駆動モータ91のさらなる駆動によって前述したように、図35および図36に示す各部は図37に示す糸巻き可能状態となる。
また、糸巻き可能状態におけるボビン22と糸保持部材48の位置関係は、図10に示すように、糸保持部材48の上方糸係止部64と糸位置規制部58との間に斜めに連なる上糸USをボビン22の上フランジ37の外周縁に押し付けている。
つぎに、制御手段93から送出される制御指令により、下糸糸巻き装置付きミシン1が駆動すると、外釜7が正回転し、この外釜7の回転は、外釜底板を介してボビン駆動部材11の上端のボビン駆動ギア14を正回転させ、その結果、ボビン駆動ギア14と噛合しているボビン従動ギア35を外釜7の回転方向と反対方向へ逆回転させ、ボビン22が外釜7の回転方向と反対方向へ逆回転する。
そして、ボビン22の逆回転により、ボビン22の上フランジ37の外周縁に押し付けられた糸保持部材48の上方糸係止部64と糸位置規制部58との間に斜めに連なる上糸USが、ボビン22のスリット39の開口39aに捕捉され、ボビン中心軸36に形成された凹溝41内に供給側たる針側、すなわち上糸糸駒121側の上糸USが導かれる。そして、ボビン22の回転により凹溝41内に上糸USが巻回されると、また、上糸USがボビン22のスリット39の開口39aに捕捉されると、糸ゆるめ手段138の一部を構成するソレノイド136が駆動され、各従動ローラ128が駆動ローラ124から離間して解放され、ボビン22の回転の継続により上糸USは上糸糸駒121から引き出されて糸巻きがさらに行われる。
このように、上糸USをボビン22に供給する下糸DSとして用いる場合に、糸巻き動作時において糸ゆるめ手段138が各従動ローラ128と駆動ローラ124との間に保持された上糸USの保持状態を解放するので、上糸USに無理な力が加わらずに円滑な糸巻き動作を容易に行うことができる。
なお、ボビン22のスリット39からでて縫製物Sの縫い目へつながる上糸USの糸端側は、図44に示すように、スリット39の底部39bがボビン22の回転中心からずれているので、図44に破線の円にて示すように回転するため、スリット39の底部39bから出た上糸USは、ボビン22の図44時計方向への回転にともなって糸保持部材48の糸保持捕捉先端63に一体形成されたさそい込み開口63dに誘い込まれ、その後のさらなるボビン22の回転により、折曲部63bの図11右方に示す後端部側の端縁に設けられた糸端切断刃56によってボビン22の直ぐ近くで容易かつ確実に直接切断され、その結果、ボビン22から突出する上糸USの糸端を短くすることができる。つまり、糸端切断刃56は、糸巻き動作時にボビン22に下糸DSとして供給される上糸USの糸端近傍を確実かつ容易に切断することができる。
そして、ボビン22に対する上糸USの巻回は、前記格納部285に格納されたプログラムによって設定された糸巻き量に到達するまで行われ、ボビン22に対する上糸USの巻回が予め設定された糸巻き量に到達すると下糸糸巻き装置付きミシン1が停止する。この時、針棒切外し機構140が針棒2の上下方向への往復運動を上軸の回転から切外して針3の上下方向への往復運動を停止させ針3を上方に保持した状態を保持している。
なお、本実施形態においては、糸巻き動作を強制的に停止するプログラムがメモリ191の糸巻き強制停止制御部284に格納されており、糸巻き動作の実行中の前記縫製スタート/ストップスイッチ238あるいは前記糸巻きスタート/ストップスイッチ177の操作、詳しくはOFF操作により、糸巻き動作を強制的に停止することができるようになっており、その結果、ボビン22への下糸DSの供給を安全かつ適正に行うことができる。
つぎに、ボビンに供給した下糸としての上糸の下糸張力手段への糸掛け動作および上糸の切断動作について図39から図42により説明する。
このボビン22に供給した下糸DSとしての上糸USの下糸張力手段25への糸掛けは、縫製動作を行う際に必要な下糸張力をボビン22に供給した下糸DSに付与するためのものである。
前記糸巻きが終了した後に、制御手段93から送出される制御指令により、駆動モータ91が逆回転駆動し、駆動板下79を後退移動して、図37に示す各部を図31に示す初期状態まで復帰する。そして、ボビン22に供給した下糸DSとしての上糸USの下糸張力手段25への糸掛け動作は、下糸専用糸EDSの下糸張力手段25への糸掛け動作と異なり、糸保持部材48の上方糸保持部59に糸端を保持させる必要がないので、ボビン22から出た下糸DSとしての上糸USは、初期状態において図39に符号Cにて示す糸経路とほぼ同様となる。この初期状態から、前述した下糸専用糸EDSの下糸張力手段25への糸掛け動作と同様に、制御手段93から送出される制御指令により、ミシン、詳しくは下糸糸巻き装置付きミシン1のミシンモータ235を逆回転駆動すると、外釜7が逆回転し、糸捕捉フック46のフック部46aが外釜7の外周近傍に位置する前記ボビン22と糸保持部材48の上方糸係止部60との間に位置する上糸USを捕捉し、糸捕捉フック46のフック部46aが上糸USを捕捉した状態で逆回転し、ボビン22から出た上糸USは、下糸張力手段25の基板26の上端縁に形成されている糸道入口27へ誘い込まれて糸導入溝28に進入し、外釜7のよりさらなる逆回転により、糸導入溝28に進入した下糸DSとしての上糸USは、下糸張力手段25の糸係止孔29と糸出口30との間に下糸押さえ板ばね31の付勢力をもって付勢された状態で配置され、その結果、縫製動作時に必要な適正な下糸張力を下糸DSとしての上糸USに確実に付与することができる。
また、下糸DSとしての上糸USは、前記下糸専用糸EDSと同様に、外釜7に配設された切断刃43の刃先により切断され、針側の糸残りとして縫い目の結束に必要な長さを十分に確保することができる。
ついで、制御手段93から送出される制御指令により、外釜の逆回転を停止するとともに、針棒切外し機構140が上軸の回転運動から切り離した針棒2の上下方向への往復運動を上軸の回転に連結することにより、下糸糸巻き装置1の各部が初期状態に復帰し、下糸DSとしての上糸USの糸巻き動作が終了する。
以上の説明は、糸巻きスタート/ストップスイッチ177の操作による手動糸巻きモードにおける糸巻き動作であるが、以下に、自動化についての説明を行う。
まず、ボビンの回転状態および下糸無しの検出動作について図7、図8、図45および図46により説明する。
図45は本発明に係る下糸糸巻き装置付きミシンの下糸検出手段の要部の構成を示す一部透視平面図、図46は反射型光センサのセンサ出力および主軸センサの出力信号を示す線図である。
前記ボビン22に下糸DSが巻回された状態で縫製が行われると、ボビン22が回転し、図3および図45に示すように、反射型光センサ211の下方を上フランジ37の上面に設けられた反射テープ210の図8に白抜きにて示す高反射率部210aと図8に斜線にて示す低反射率部210bとが交互に通過する。そして、反射テープ210の高反射率部210aが反射型光センサ211と対向すると反射型光センサ211は電流を多く流し、反射テープ210の低反射率部210bが反射型光センサ211と対向すると反射型光センサ211は電流が少なくなる。そこで、負荷抵抗に前記電流を通電すると、図46に示すように、ほぼパルス状のセンサ出力を得ることができる。また、ボビン22から下糸DSが消費され、ボビン中心軸36から下糸DSの糸端が離れると、ボビン22の回転が無くなり、反射型光センサ211のセンサ出力はほぼ一定のレベルとなり、図46に示すように、ほぼフラット状のセンサ出力を得ることができる。なお、図46に、主軸センサ218の出力信号(主軸信号)を合わせて示す。この主軸信号は、1サイクルが1針(ミシン1針分)を示す。
前記反射型光センサ211のセンサ出力は、図28に示すように、制御手段93のA/D変換器233を介してCPU190に出力される。そして、CPU190は、A/D変換器233から送出される出力を、図46に示す主軸センサ218の出力信号により得られる所定の針数Nの間に所定数のサンプリングを行いその間のセンサ出力の値をメモり191に記憶する。そして、得られたセンサ出力の最大値と最小値を算出し、得られたセンサ出力の最大値と最小値の差が所定の閾値(所定の電圧値)以上であればボビン回転と判別し、得られたセンサ出力の最大値と最小値の差が所定の閾値(所定の電圧値)以下であればその状態が所定針数分続いたと判断してボビン22から下糸DSが無くなってボビン22の回転が停止したと判別する。
ここで、センサ出力の最大値と最小値の差が所定の閾値(所定の電圧値)以下の状態を複数針みる理由は、糸の消費量が少ない模様を縫製している場合や、ボビン22に下糸DSが多く巻かれている場合などにおいては、ボビン22の回転角度が小さいため針数が1、2針では、反射型光センサ211の下方を高反射率部210aと低反射率部210bとが通過しないからである。
このように、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1によれば、ボビン22の回転状態とボビン22に巻回された下糸DSの有無を確実かつ容易に判別することができる。
前記ボビンの回転状態とボビンに巻回された下糸の有無の判別について図47に示すフローチャートにより説明する。
図47は本発明に係る下糸糸巻き装置付きミシンのボビンの回転状態とボビンに巻回された下糸の有無の判別を説明するフローチャートである。
前記ボビン22の回転状態とボビン22に巻回された下糸DSの有無の判別は、図47に示すように、まず、ステップST100 において反射型光センサ211の出力を読み込み、つぎのステップST101 において読み込んだ値をメモリ191に記憶し、つぎのステップST102 においてタイマー処理を行い、つぎのステップST103 において主軸信号により針数をカウントし、つぎのステップST104 に進行する。
ついで、ステップST104 において針数をN針みたか判断し、ステップST104 の判断がNO(N針より少ない)の場合には、前記ステップST100 へ戻り、ステップST104 の判断がYES(N針と等しい)の場合には、つぎのステップST105 に進行し、ステップST105 においてセンサ出力の最大値と最小値を算出し、つぎのステップST106 に進行する。
ついで、ステップST106 において、得られたセンサ出力の最大値と最小値の差が所定の閾値(所定の電圧値V)より小さいか否かを判断し、ステップST106 の判断がNO(閾値より大きい)場合には、ボビン22が回転状態にあると判別して前記ステップST100 へ戻る。
前記ステップST106 の判断がTES(閾値より小さい)場合には、つぎのステップST107 へ進行して、その状態が所定針数分続いたと判断してボビン22から下糸DSが無くなってボビン22の回転が停止したと判別し終了する。
なお、ボビン22の回転状態とボビン22に巻回された下糸DSの有無の判別は、メモリ191に格納した前記フローチャートを実行し得るプログラムとCPU190などにより行う。
つぎに、残り糸の消費について説明する。
前記下糸DSは、ボビン22の回転が停止しても下糸張力手段25に挟まれた状態で残っており、この状態では、新たな下糸DSをボビン22に供給することができない。そこで、縫製中断時針位置制御部242から送出される制御指令によって、この残り糸を模様として複数針縫って完全に消費した後、すなわち、前記下糸検出手段214から下糸無しの検出信号が送出された場合、下糸無しの検出信号を検出した時点における縫製位置から複数針運針した後で下糸糸巻き装置付きミシン1を停止し、その後に、自動糸巻きスタート処理を行う。ここでの針数は、ボビン22が停止した後の残り糸量は、前記ボビン22構造により糸の種類、糸の太さによる差が少なく、釜近傍の糸道経路によって決定されほぼ一定の長さなので、残り糸量を予めメモリ191の一部を構成するROMに記憶しておき、この残り糸量をボビン22が停止した後の1針毎の下糸消費量で減算して行き判断する。前記下糸消費量は、上糸消費量とほぼ一致するので、上糸消費量を算出することによって容易に推測できる。また、上糸消費量は、公知の自動糸調子ミシンに見るように、布厚と布送り量と針振り量とから容易に算出することができる。
つぎに、残り糸の消費について図48に示すフローチャートによりさらに説明する。
図48は本発明に係る下糸糸巻き装置付きミシンの残り糸の消費を説明するフローチャートである。
前記残り糸の消費は、図48に示すように、まず、ステップST200 において、ボビン22が停止した後の残り糸量”L”をメモリ191の一部を構成するROMから読み込む。
ついで、ステップST201 において、主軸信号のON/OFFを判断し、主軸信号がOFFの場合には、主軸信号がONになるまで待機し、主軸信号がONの場合には、つぎのステップST201 において、布厚と布送り量と針振り量とから1針毎の下糸消費量”l”を算出し、つぎのステップST202 において、前記残り糸量Lから下糸消費量lを減算した値を新たな残り糸量”L”に設定してつぎのステップST204 に進行する。
ついで、ステップST204 において、残り糸量”L”が0より小さいか否かを判断し、ステップST204 の判断がNO(残り糸がある)の場合には、前記ステップST201 に戻り、ステップST204 の判断がYES(残り糸無し)の場合には、つぎのステップST205 に進行し、ミシン停止、すなわち、下糸無しの検出信号を検出した時点における縫製位置から複数針運針した後でミシンを停止、詳しくは、下糸糸巻き装置付きミシン1のミシンモータ235を停止し、つぎのステップST106 において下糸巻き制御、すなわち、自動糸巻きスタート処理を行い終了する。
なお、残り糸の消費は、縫製中断時針位置制御部242に格納されたプログラムとCPU190などにより行う。
このように、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1によれば、残り糸の消費およびその判別を確実かつ適正に行うことができるので、下糸DSの残り糸を確実に消費した後に、ボビン22に下糸DSを供給する糸巻き動作を開始することができ、その結果、糸巻き動作の自動化を容易に行うことができる。
つぎに、上糸無しと下糸無しとの判別について説明する。
本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1は、縫製動作中に上糸切れと称される上糸USが無くなった場合においても、下糸DSに張力が発生しなくなり、ボビン22の回転が停止する。そこで、上糸無しと下糸無しとの判別は、図17に示す前記上糸検出手段221を利用する。この上糸検出手段221は、図17に示すように、上糸USが有り、正常に縫製動作が行われている場合には、上糸USに張力が発生し、上糸経路に配設されている上糸張力ばね220をたわませ、この上糸張力ばね220と連動する遮蔽板222が光りセンサ(フォトインタラプタ)223を遮蔽、解放する公知のものである。そして、縫製動作中に上糸USが無くなった場合は、すぐに上糸USに張力が発生しなくなり、光りセンサ223の出力状態で上糸USが無くなったことを検出することができる。しかし、上糸USが無くなった場合、下糸DSは、布に縫い目を形成しているため、布が送られると下糸DSが引っ張られるので、ボビン22は回転する。逆に、正常に下糸DSが消費された場合、ボビン22の回転は停止するが、残り糸があるため上糸張力が発生し、上糸検出手段221は動作しない。したがって、どちらが先にその状態になったかを判定することにより、上糸無しと下糸無しとを判別することができる。すなわち、ボビン22の回転状態と上糸USの有無とをほぼ同時に監視し、先に無い状態を検出した方を優先して判断する。
つぎに、上糸無しと下糸無しとの判別について図49に示すフローチャートによりさらに説明する。
図49は本発明に係る下糸糸巻き装置付きミシンの上糸無しと下糸無しとの判別を説明するフローチャートである。
前記上糸無しと下糸無しとの判別は、図49に示すように、まず、ステップST300 において、下糸検出手段214を兼ねたボビン回転状態検出手段215の一部を構成する反射型光センサ211の出力状態により、ボビン22の回転の有無を判断し、ステップST300 の判断が無し(ボビン停止状態)の場合には、つぎのステップST301 において、上糸検出手段221の一部を構成する光りセンサ223の出力状態により、上糸USの有無を判断し、ステップST301 の判断が有り(上糸有り)の場合には、つぎのステップST302 において下糸無しと判断して終了する。また、ステップST301 の判断が無し(上糸無し)の場合には、つぎのステップST303 において異常(異常動作)と判断して終了する。
前記ステップST300 の判断が有り(ボビン回転状態)の場合には、つぎのステップST304 において、上糸検出手段221の一部を構成する光りセンサ223の出力状態により、上糸USの有無を判断し、ステップST304 の判断が無し(上糸無し)の場合には、つぎのステップST305 において上糸無しと判断して終了する。また、ステップST304 の判断が有り(上糸有り)の場合には、つぎのステップST306 において正常(正常動作)と判断して終了する。
このように、上糸USおよび下糸DSのそれぞれの有無を監視することにより、上糸USおよび下糸DSの何れが無くなったのかを確実かつ容易に判別することができる。
なお、上糸無しと下糸無しとの判別は、メモリ191の格納部285に格納されたプログラムとCPU190などにより行う。
つぎに、自動糸巻きスタートについて説明する。
本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1によれば、前述したように、下糸DSの残り糸を完全に消費したと判断した後に、糸巻きスタート/ストップスイッチ177の設定状態にかかわらずを糸巻きスタートを自動的に行うことができる。
つぎに、自動糸巻きモードと手動糸巻きモードの選択について図50および図51により説明する。
図50は本発明に係る下糸糸巻き装置付きミシンの自動糸巻きモードと手動糸巻きモードの選択の一例を説明するフローチャート、図51は本発明に係る下糸糸巻き装置付きミシンの自動糸巻きモードモードと手動糸巻きモードの選択の他例を説明するフローチャートである。
前記自動糸巻きモードと手動糸巻きモードの選択の一例としては、図50に示すように、ステップST400 において、糸巻きモード切替スイッチ226(図50においてスイッチAと記す)の設定状態、すなわち、糸巻きモード切替スイッチ226のON/OFFを判断し、ステップST400 の判断がON(自動糸巻きモード)の場合には、つぎのステップST401 において、下糸糸巻き装置付きミシン1を自動糸巻きモードに設定して終了する。
前記ステップST400 の判断がOFF(手動糸巻きモード)の場合には、つぎのステップST402 において、下糸糸巻き装置付きミシン1を手動糸巻きモードに設定して終了する。
すなわち、本実施形態においては、糸巻きモード切替スイッチ226の設定状態に応じて、自動糸巻きモードと手動糸巻きモードの選択を行うことができるようになっている。そして、糸巻きモード切替スイッチ226の設定が自動糸巻きモードに設定された場合は、自動的に糸巻き動作をし、糸巻きモード切替スイッチ226の設定が手動糸巻きモードに設定された場合は、糸巻きスタート/ストップスイッチ177をON操作することにより糸巻き動作をする。
なお、自動糸巻きモードと手動糸巻きモードの選択は、メモリ191の格納部285に格納されたプログラムとCPU190などにより行う。
前記自動糸巻きモードと手動糸巻きモードの選択の他例としては、図51に示すように、ステップST500 において、模様選択処理、すなわち、模様選択スイッチ172の操作により、複数の模様縫いデータから所望の模様縫いデータを選択し、つぎのステップST501 に進行する。
ついで、ステップST501 において、模様の種類の判断、すなわち、選択された縫い模様が直線縫い、ジグザグ縫い、ボタンホール縫いなどに用いる実用縫いと称される分類に区分される実用模様か、それとも、刺繍縫いと称される分類に区分される刺繍模様かを判断し、ステップST501 の判断が刺繍模様の場合は、つぎのステップST502 において、下糸糸巻き装置付きミシン1を自動糸巻きモードに設定して終了する。
なお、模様の種類の区分は、前記縫いデータ記憶部200に記憶した模様縫いデータ毎に模様の種類の区分を表示するデータをもたせることができるので、模様選択スイッチ172の操作により選択された模様縫いデータの模様の種類の区分は、CPU190により容易に認識することができる。
また、模様選択スイッチ172の操作により複数の模様縫いデータから選択された所望の模様縫いデータに基づいて行うかわりに、選択された模様を形成するのに必要な補助部品の着脱状態、つまり、刺繍縫いを行う際の刺繍装置240の着脱状態を検出する刺繍装置センサ217から送出される検出信号によってもCPU190により容易に認識することができる。
前記ステップST501 の判断が実用模様の場合には、つぎのステップST503 において、下糸糸巻き装置付きミシン1を手動糸巻きモードに設定して終了する。
すなわち、本実施形態においては、選択された模様縫いデータおよび/または選択された模様を形成するのに必要な補助部品の着脱状態に応じて、自動糸巻きモードと手動糸巻きモードの選択を行うことができるようになっている。そして、下糸糸巻き装置付きミシン1が自動糸巻きモードに設定された場合は、自動的に糸巻き動作をし、下糸糸巻き装置付きミシン1が手動糸巻きモードに設定された場合は、糸巻きスタート/ストップスイッチ177をON操作することにより糸巻き動作をする。
なお、模様の種類の区分についてはCPU190により行い、自動糸巻きモードと手動糸巻きモードの選択は、メモリ191の格納部285に格納されたプログラムとCPU190などにより行う。
つぎに、ボビンへ下糸を供給する糸巻き動作の実行中における糸巻き動作の停止について説明する。
本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1においては、前記メモリ191の糸巻き強制停止制御部284に格納されたプログラムとCPU190などにより、糸巻き動作の実行中に縫製動作のON/OFFを制御する縫製スタート/ストップスイッチ238(図1)あるいは糸巻き動作のON/OFFを制御する糸巻きスタート/ストップスイッチ177を作業者が操作することで糸巻き動作を強制的に停止することができる。
つぎに、ボビンへ下糸を供給する糸巻き動作が終了したあとの縫製動作の自動再スタートについて説明する。
前記ボビン22へ下糸DSを供給する糸巻き動作が終了したあとの縫製動作の再スタートは、以下に示す2通りの方法で行うことができる。
前記縫製動作の再スタートの第1の方法においては、糸巻き動作が終了すると、CPU190は糸巻き動作の終了を表示画面176および/または安全確保手段228により作業者に知らせる。そして、作業者は、表示画面176および/または安全確保手段228により、糸巻き動作の終了を確認した後に、重ね縫いをするために、返し縫いスイッチ301を操作して縫製物Sを何針か前に戻してから縫製動作のON/OFFを行う縫製スタート/ストップスイッチ238をON操作してミシンスタートして縫製動作を再スタートする。
前記縫製動作の再スタートの第2の方法においては、糸巻き動作が終了すると、CPU190は糸巻き動作の終了を表示画面176および/または安全確保手段228により作業者に知らせた後に、自動的に何針か前に戻し、自動的にミシンスタートして縫製動作を再スタートする。これは特に、刺繍装置240を用いた刺繍縫いを行う場合に有効である。針位置に対して相対的に刺繍装置240の刺繍枠239を移動させて、刺繍模様を形成する自動刺繍機であれば、正確に何針でも前に戻ることができる。この再スタートする時点で、表示画面176および/または安全確保手段228からなる再スタート告知手段225を動作して、再スタートすることを、作業者あるいは周囲の人々に容易かつ確実に認識させることができるので、特に、再スタートを自動的に行う場合における安全性を高めることができる。
なお、自動的な縫製動作の再スタートは、メモリ191の格納部285に格納されたプログラムとCPU190などにより行う。さらに、何針か前に戻すのは、メモリ191の格納部285に格納されたプログラムとCPU190などにより行う。またさらに、再スタート告知手段225の動作は、メモリ191の格納部285に格納されたプログラムとCPU190などにより行う。
つぎに、自動再スタートモードと手動再スタートモードの選択について図52により説明する。
図52は本発明に係る下糸糸巻き装置付きミシンの自動再スタートモードと手動再スタートモードの選択を説明するフローチャートである。
前記縫製動作を再スタートする際の自動再スタートモードと手動再スタートモードの選択は、図51に示すように、まず、ステップST600 において、再スタートモード切替スイッチ227(図52においてスイッチBと記す)の設定状態、すなわち、再スタートモード切替スイッチ227のON/OFFを判断し、前記ステップST600 の判断がOFF(手動再スタートモード)の場合には、つぎのステップST601 において、下糸糸巻き装置付きミシン1を手動再スタートモードに設定して終了する。なお、下糸糸巻き装置付きミシン1を手動再スタートモードに設定した場合には、縫製動作の再スタートは、縫製スタート/ストップスイッチ238をON操作することにより開始する。
前記ステップST600 の判断がON(自動再スタートモード)の場合には、つぎのステップST602 において、前記図45のステップST501 と同様に、模様の種類が実用模様か、それとも、刺繍模様かを判断し、ステップST602 の判断が実用模様の場合には、ステップST601 に進行し、下糸糸巻き装置付きミシン1を手動再スタートモードに設定して終了する。
前記ステップST602 の判断が刺繍模様の場合には、つぎのステップST603 に進行して下糸糸巻き装置付きミシン1を自動再スタートモードに設定し、つぎのステップST604 に進行して縫製位置を何針か前に戻し、つぎのステップST605 に進行して再スタート告知手段225を動作して再スタートの告知を作業者あるいは周囲の人々に行い、つぎのステップST606 に進行してミシンスタートして縫製動作を再開し終了する。
すなわち、再スタートモード切替スイッチの設定状態、模様選択スイッチ172の操作により選択された模様縫いデータの模様の種類、選択された模様を形成するのに必要な補助部品の着脱状態、つまり、刺繍縫いを行う際の刺繍装置240の着脱状態を検出する刺繍装置センサ217から送出される検出信号などを単独もしくは組み合わせることによって、縫製動作を再スタートする際の自動再スタートモードと手動再スタートモードの選択を行う。
なお、再スタートモード切替スイッチ227の設定状態に応じて自動的に縫製動作の再スタートを行うか否かを判別するのは、再スタート動作制御部247に格納されたプログラムとCPU190などにより行う。さらに、ステップST604 における縫製位置を何針か前に戻すのは、縫製再開時針位置制御部243に格納されたプログラムとCPU190などにより行うとともに、戻す針数は、メモリ191の格納部285に格納されたプログラムとCPU190などにより、前記残り糸の消費を行う際に運針した針数分と同一とする。またさらに、再スタート告知手段225の動作は、メモリ191の格納部285に格納されたプログラムとCPU190などにより行う。
つぎに、縫製動作時の異常検出について図53に示すフローチャートにより説明する。
図53は本発明に係る下糸糸巻き装置付きミシンの異常検出を説明するフローチャートである。
本実施形態のボビン回転状態検出手段215を兼ねた下糸検出手段214は、前述したように、ボビン22の回転の有無と、縫製動作中におけるボビン22に巻回されている下糸DSの下糸無しを検出することができるが、縫製動作の開始後または糸巻き動作開始後のそれぞれのボビン22の回転の有無を検出して、ボビン22の回転が無い場合には、糸掛け異常または糸巻き異常と判断して再スタート告知手段225を動作させて、下糸糸巻き装置付きミシン1の動作を停止することができる。
すなわち、図53に示すように、ステップST700 において、ボビン回転状態検出手段215の反射型光センサ211から送出されるセンサ出力によって縫製開始後のボビン回転の有無を判断し、ステップST700 の判断がNO(ボビン停止状態)の場合には、つぎのステップST701 において糸掛け異常としてミシン停止し、つぎのステップST702 で作業者は必要なエラー処理を行う。なお、ミシン停止する際には、再スタート告知手段225を動作させて異常の表示および/または警告を行うことが作業効率を向上するうえで好ましい。
前記ステップST700 の判断がYES(ボビン回転状態)の場合には、つぎのステップST703 において正常運転を行い、つぎのステップST704 においてボビン回転の有無を判断し、ステップST704 の判断がYES(ボビン回転状態)の場合には、運転状態を保持する。
前記ステップ704 の判断がNO(ボビン停止状態)の場合には、つぎのステップST705 においてボビン22から下糸DSが無くなったと判断して前述した残り糸の消費処理を行い、つぎのステップST706 において前述した糸巻き動作処理を行い、つぎのステップST707 において糸巻き開始後のボビン回転の有無を判断する。
前記ステップST707 の判断がNO(ボビン停止状態)の場合には、つぎのステップST708 において糸巻き異常としてミシン停止し、つぎのステップST709 で作業者は必要なエラー処理を行う。なお、ミシン停止する際には、再スタート告知手段225を動作させて異常の表示および/または警告を行うことが作業効率を向上するうえで好ましい。
前記ステップST707 の判断がYES(ボビン回転状態)の場合には、つぎのステップST710 に進行して、糸巻きが終了したか否かを判断し、ステップST710 の判断がNO(所定量の糸巻きが終わっていない)場合には、ステップST706 に戻って所定量の糸巻きが終了するまで糸巻き動作処理を行う。
前記ステップST710 の判断がYES(糸巻き終了)の場合には、つぎのステップST711 において前述した再スタート告知処理を行い、つぎのステップST712 において前述した再スタート処理を行い、ステップST704 に戻って縫製動作が終了するまで繰り返す。
なお、縫製動作時および糸巻き動作時の正常か否かの判断は、メモリ191の格納部285に格納されたプログラムとCPU190などにより行う。
したがって、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1のボビン22のフランジ37に設けられた高反射率部210aと低反射率部210bとを交互に繰返し配置してなるボビン回転被検出部210と、このボビン回転被検出部210を検出する反射型光センサ211からなる下糸検出手段214は、反射型光センサ211により、ボビン22の回転状態とボビン22の停止状態とを確実かつ適正に検出することができるとともに、縫製動作中におけるボビン22の回転状態からボビン22の停止状態への変化によって、ボビン22から下糸DSが無くなったことを容易かつ確実に検出することができる。さらに、下糸検出手段214は、糸掛けや、糸巻き動作の異常を容易に検出することもできる。
つぎに、縫製動作中における糸巻き動作の防止について説明する。
本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1においては、前記メモリ191の格納部285に格納されたプログラムとCPU190などにより、縫製動作中における糸巻きスタート/ストップスイッチ177のON操作による糸巻きスタートを確実に禁止することができる。
したがって、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1によれば、使用中の上糸USを外さず、かつ、水平釜4からボビン22を取り外すことなくボビン22に刺繍縫いなどに用いる下糸専用糸EDSあるいは下糸DSとしての上糸USを容易に選択して供給することができる。
また、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1によれば、下糸専用糸EDSが巻回された下糸糸駒111をミシン本体1aに設置できるので、ミシンの大型化や設置スペースが大きくなるのを防止することができる。さらに、下糸専用糸EDSが巻回された下糸糸駒111をミシン本体1aに設置できるので、下糸専用糸EDSを糸保持部材48に糸掛けした状態でミシンケースに収納することもできる。また、下糸専用糸FDEが巻回された下糸糸駒111をミシン本体1aの操作側に設置できるので、下糸専用糸EDSを糸保持部材48に糸掛けする際の作業性が向上するとともに、下糸糸駒111に巻回された下糸専用糸EDSの視認性が向上するので、糸が無くなったことに気付きやすい。
さらに、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1の専用下糸保持検出手段180は、糸巻き動作の実行中にボビン22に下糸DSとして供給される下糸専用糸EDSの糸無しを確実に検出することができる。
また、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1の糸巻き中断動作制御部281によれば、専用下糸保持検出手段180が糸巻き動作の実行中にボビン22に下糸DSとして供給される下糸専用糸EDSの糸無しを検出した場合、実行中の糸巻き動作を停止して、糸無し告知手段178を動作させることができるので、糸巻き動作の途中で下糸専用糸EDSが供給されずに糸巻き動作を実行するのを確実に防止することができるとともに、糸無し告知手段178は糸専用糸EDSの糸無しを作業者に容易かつ確実に認識させることができるので、その結果、安全性が向上する。
また、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1によれば、縫製物Sに刺繍縫いを行う縫製動作の実行中に下糸DSの糸巻き動作を行う場合、刺繍動作制御部282が刺繍装置240の刺繍枠239を停止状態に保持することができるので、下糸DSの糸巻き動作を適正に行うことができるとともに、刺繍縫いの途中で糸巻き動作を行っても刺繍模様を円滑につなぐことができ、その結果、高い縫製品質を確実かつ容易に保持することができる。
また、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1の糸巻時送り歯制御部283によれば、糸巻き動作時に送り歯312の上下送り運動および/または水平送り運動を停止することができるので、下糸DSの糸巻き動作を適正に行うことができる。さらにまた、糸巻時送り歯制御部283は、糸巻き動作時に送り歯312の上下送り運動を下方停止した場合には、糸巻き動作時にセットされた縫製物Sに送り歯312が当接するのを防止することができるし、糸巻き動作時に送り歯312の水平送り運動を停止した場合には、糸巻き動作時にセットされた縫製物Sに送り歯312が繰り返し当接するのを防止することができ、その結果、布押え208を下げた状態で糸巻き動作を行うことができるとともに、糸巻き動作時に縫製物Sに傷が付くのを確実に防止しすることができる。すなわち、高い縫製品質を確実かつ容易に保持することができる。
また、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1の巻き糸選択手段としての巻き糸設定スイッチ173は、ボビン22に供給する下糸DSとして、上糸USおよび下糸専用糸EDSの何れかを確実に選択することができる。すなわち、縫い模様に応じてボビン22に供給する下糸DSの種類を容易に選択することができる。
また、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1の糸巻き強制停止制御部284は、糸巻き動作の実行中に縫製スタート/ストップスイッチ238あるいは糸巻きスタート/ストップスイッチ177を操作することにより糸巻き動作を強制的に停止することができ、その結果、ボビン22への下糸DSの供給を安全かつ適正に行うことができる。
また、本実施形態の下糸糸巻き装置付きミシン1における前記糸巻き量設定手段としての糸巻き量設定スイッチ174、糸巻き径検出手段160、糸巻き数計測手段206および糸巻き量制御部197は、ボビン22に巻回する下糸DUの量を適正かつ容易に制御することができるものであり、本発明に係る下糸糸巻き装置付きミシン1だけでなく、従来からある各種の下糸糸巻き装置付きミシンにも適用することができる。
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。