JP3544788B2 - 線状ポリアミド酸、線状ポリイミド及び熱硬化性ポリイミド - Google Patents
線状ポリアミド酸、線状ポリイミド及び熱硬化性ポリイミド Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な線状ポリアミド酸または線状ポリイミド、およびこれらを熱処理して得られる熱硬化性ポリイミド、ならびにこの熱硬化性ポリイミドと繊維状補強材を含有してなる複合材に関する。
本発明の熱硬化性ポリイミドは、熱可塑性ポリイミドの優れた諸物性を有し、かつ一段と優れた耐熱性を有するものであり、本発明の線状ポリイミドまたはその前駆体である線状ポリアミド酸と繊維状補強材とを含有する複合材を加熱処理し、硬化させて極めて優れた耐熱性を有する複合材を提供する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリイミドはその優れた耐熱性に加え、機械物性、耐薬品性、難燃性、電気特性等の点において優れた特性を有しているために、成形材料、複合材料、電気・電子部品等の分野において幅広く用いられている。
例えば、代表的なポリイミドとしては、式(A)
【化19】
(デュポン社製、商品名;カプトン,ベスペル)が知られているが、このポリイミドは非熱可塑性であり、不溶不融のため成形加工性に難点がある。
【0003】
成形加工性が改善された非晶質熱可塑性ポリイミドとして、式(B)
【化20】
(ゼネラル・エレクトリック社製、商品名;ウルテム)が知られている(米国特許3,847,867号)。しかしながら、このポリイミドはガラス転移温度が215℃であり、充分な耐熱性を有してるとは言えない。
また、式(C)
【化21】
で表されるポリイミドは、本来ポリイミドが有する耐熱性、耐溶剤性、機械物性等を保持しつつ溶融成形が可能である(米国特許5,043,419号)。
しかしながら、このポリイミドは熱可塑性であるためガラス転移温度(250℃)を有しており、その温度以上では、変形、膨張、軟化および顕著な特性低下を伴うため、実質的に使用不可能である。
【0004】
一方、熱硬化性ポリイミドとして、式(D)
【化22】
で表されるポリイミドが知られている(ローヌ・プーラン社製、商品名;ケルイミド−601,F.D.Darmory,National SAMPE Symposium,p.693,第19巻 (1974))。このポリイミドは熱硬化性であるため、熱可塑性のポリイミドにくらべ変形や軟化が起こり難く、高温下で使用できる。しかしながら、このポリイミドは機械特性が劣る。
【0005】
さらに、別の熱硬化性ポリイミドとして、式(E)
【化23】
で表されるような、分子末端に炭素−炭素三重結合を有するポリイミドオリゴマーを熱処理して得られる熱硬化性ポリイミドが米国特許5,412,066号に開示されている。このポリイミドは熱硬化性であるが、それらのガラス転移温度は熱処理後においても230〜250℃であり、熱硬化性ポリイミドとしては十分な耐熱性がなく、高温時での使用温度に上限がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、極めて優れた耐熱性を有するポリイミド、すなわち、熱可塑性ポリイミドの優れた諸物性を有し、これらの熱可塑性ポリイミドの耐熱性をさらに向上させた熱硬化性ポリイミドを提供することである。
他の目的は、分子の末端が反応性有する分子末端封止剤で封止され、熱硬化させて耐熱性の優れた熱硬化性ポリイミドを提供し得る線状ポリイミドまたは線状ポリアミド酸を提供することである。
さらに他の目的は、これらの線状ポリイミドまたは線状ポリアミド酸と繊維補強材とを含有する複合材を、加熱処理して得られる熱硬化性ポリイミドと繊維補強材とを含有する、耐熱性および機械的特性に優れた複合材を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定の繰り返し単位を有し、その分子末端が炭素−炭素三重結合有する芳香族ジカルボン酸無水物で封止された線状ポリイミドまたは線状ポリアミド酸を、熱処理して得られる熱硬化性ポリイミドが、この特定の繰り返し単位を有する対応する熱可塑性ポリイミドまたはポリイミド共重合体の本来の諸物性を有し、かつ耐熱性および機械特性において極めて優れていることを見い出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、▲1▼ 式(1)
【化24】
〔式中、P1は式(a)または式(b)
【化25】
【化26】
で表わされる繰り返し単位を示し、
【0009】
S1は式(c)または式(d)
【化27】
【化28】
で表わされる1価の基の少なくとも1種であり、YおよびZは炭素数6から18であり、かつ単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、あるいは芳香族基が直接結合、カルボニル基、スルホン基、スルホキシド基、エーテル基、イソプロピリデン基、六フッ素化イソプロピリデン基、またはスルフィド基の架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基であり、Yは3価、Zは2価の基をそれぞれ示し、QはZの芳香環上の置換基を表し、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシ基、シアノ基、あるいはアルキル基またはアルコキシ基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはハロゲン化アルコキシ基である1価の基を示し、mおよびnは夫々の繰り返し単位のモル%を示し、mは100〜1モル%であり、nは0〜99モル%であり、繰り返し単位の間に定序性や規則性はない。またlは重合度を示し、1〜100の整数である。)で表される線状ポリイミド、
【0010】
▲2▼その先駆体である式(2)
【化29】
〔式中、P2は式(e)または式(f)
【化30】
【化31】
で表される繰り返し単位を示し、
【0011】
S2は式(g)または式(h)
【化32】
【化33】
で表わされる1価の基の少なくとも1種であり、Y、Z,Q、m、nおよびlは式(1)の場合と同じである〕で表される線状ポリアミド酸、
【0012】
さらに▲3▼ 上記の線状ポリイミドおよび/または線状ポリアミド酸を加熱硬化させて得られる熱硬化性ポリイミドである。
さらにまた▲4▼上記の線状ポリイミドおよび/または線状ポリアミド酸と繊維状補強材とを含有する複合材、ならびにこの複合材を加熱して得られる熱硬化性ポリイミドと繊維補強材とを含有してなる複合材である。
【0013】
上記線状ポリイミドおよび/または線状ポリアミド酸は、ジアミン成分として、(a)式(1−1)
【化34】
の4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルを単独または式(1−2)
【化35】
の4,4’−ジアミノジフェニルエーテルと混合して用い、
【0014】
(b)テトラカルボン酸二無水物成分として、ジアミン成分が、式(1−1)の4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルを単独の場合、式(1−3)
【化36】
のピロメリット酸二無水物を単独または式(1−4)
【化37】
3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物と混合して用い、
また、ジアミン成分が、式(1−1)の4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルと式(1−2)の4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとの混合物の場合、式(1−3)のピロメリット酸二無水物を用い、
【0015】
(c)分子末端封止剤である式(1−5)
【化38】
(式中、YおよびZは炭素数6から18であり、かつ単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、あるいは芳香族基が直接結合、カルボニル基、スルホン基、スルホキシド基、エーテル基、イソプロピリデン基、六フッ素化イソプロピリデン基、またはスルフィド基の架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基であり、Yは3価、Zは2価の基をそれぞれ示し、QはZの芳香環上の置換基を表し、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシ基、シアノ基、あるいはアルキル基またはアルコキシ基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはハロゲン化アルコキシ基である1価の基を示す)で表される炭素−炭素三重結合を有する芳香族ジカルボン酸無水物の存在下に反応させて製造することを特徴とする。
【0016】
式(1−5)の分子末端封止剤として、式(1−6)
【化39】
〔式中、Qは式(1−5)の場合と同じである〕で表される炭素−炭素三重結合を有する芳香族ジカルボン酸無水物が好ましく、より好ましくは式(1−7)
【化40】
の1−フェニル−2−(3,4−ジカルボキシフェニル)アセチレン無水物である。
【0017】
本発明において、好ましい線状ポリイミドまたは線状ポリアミド酸としてつぎが挙げられる。
すなわち、式(3)
【化41】
〔式中、S3は式(i)または式(j)
【化42】
【化43】
で表わされる1価の基の少なくとも1種であり、Qは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシ基、シアノ基、あるいはアルキル基またはアルコキシ基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはハロゲン化アルコキシ基である1価の基を示し、mおよびnは夫々の繰り返し単位のモル%を示し、mは100〜70モル%であり、nは0〜30モル%であり、繰り返し単位の間に定序性や規則性はない。またlは重合度を示し、1〜100の整数である。)で表される線状ポリイミド、
【0018】
およびその前駆体である式(4)
【化44】
〔式中、S4は下記式(k)または式(l)
【化45】
【化46】
で表わされる1価の基の少なくとも1種であり、Q、m、nおよびlは式(3)の場合と同じである〕である線状ポリアミド酸
【0019】
式(5)
【化47】
〔式中、Qは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシ基、シアノ基、あるいはアルキル基またはアルコキシ基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはハロゲン化アルコキシ基である1価の基を示し、mおよびnは夫々の繰り返し単位のモル%を示し、mは100〜70モル%であり、nは0〜30モル%であり、繰り返し単位の間に定序性や規則性はない。またlは重合度を示し、1〜100の整数である〕で表される線状ポリイミド
【0020】
またはその前駆体である式(6)
【化48】
〔式中、Q、m、nおよびlは式(5)の場合と同じである〕で表される線状ポリアミド酸、
【0021】
より好ましくは、式(7)
【化49】
〔式中、S5は式(o)または式(p)
【化50】
【化51】
で表わされる1価の基の少なくとも1種であり、mおよびnは夫々の繰り返し単位のモル%を示し、mは100〜70モル%であり、nは0〜30モル%であり、繰り返し単位の間に定序性や規則性はない。またlは重合度を示し、1〜100の整数である〕で表される線状ポリイミド
【0022】
またはその前駆体である式(8)
【化52】
(式中、S6は式(q)または式(r)
【化53】
【化54】
で表される1価の基の少なくとも1種であり、m、nおよびlは式(7)の場合と同じである)で表される線状ポリアミド酸、
【0023】
式(9)
【化55】
〔式中、mおよびnは夫々の繰り返し単位のモル%を示し、mは100〜70モル%であり、nは0〜30モル%であり、繰り返し単位の間に定序性や規則性はない。またlは重合度を示し、1〜100の整数である〕で表される線状ポリイミド
【0024】
およびその前駆体である式(10)
【化56】
〔式中、m、nおよびlは式(9)の場合と同じである〕で表される線状ポリアミド酸である。
【0025】
また、上記の各式において、m:nの組成比が100モル%:0モル%である線状ポリイミドおよび線状ポリアミド酸、すなわち、式(11)
【化57】
〔式中、YおよびZは炭素数6から18であり、かつ単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、あるいは芳香族基が直接結合、カルボニル基、スルホン基、スルホキシド基、エーテル基、イソプロピリデン基、六フッ素化イソプロピリデン基、またはスルフィド基の架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基であり、Yは3価、Zは2価の基をそれぞれ示し、QはZの芳香環上の置換基を表し、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシ基、シアノ基、あるいはアルキル基またはアルコキシ基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはハロゲン化アルコキシ基である1価の基を示し、lは重合度を示し、1〜100の整数である〕で表される線状ポリイミド、
【0026】
より詳しくは、式(11−1)
【化58】
で表される繰り返し単位からなり、その分子末端が式(11−a)および式(11−b)
【化59】
【化60】
〔式中、Q、ZおよびYは式(11)の場合と同じである〕である線状ポリイミド
【0027】
およびその前駆体である式(12)
【化61】
〔式中、Q、Z、Yおよびlは式(11)の場合と同じである〕で表される線状ポリアミド酸、
【0028】
より詳しくは、式(12−1)
【化62】
で表される繰り返し単位からなり、その分子末端が式(12−a)および式(12−b)
【化63】
【化64】
〔式中、Q、ZおよびYは式(11)の場合と同じである〕である線状ポリアミド酸であり、さらに式(11)および式(12)において、分子末端が式(11−c)および式(11−d)
【化65】
【化66】
〔式中、Qは式(11)の場合と同じである〕である線状ポリイミド
【0029】
または分子末端が式(12−c)および式(12−d)
【化67】
【化68】
〔式中、Qは式(11)の場合と同じである〕である線状ポリアミド酸であり、より好ましくは上記の末端基におけるQが水素原子である線状ポリイミドおよび線状ポリアミド酸である。
【0030】
本発明の線状ポリイミドはその前駆体である線状ポリアミド酸の対数粘度(N,Nージメチルアセトアミド溶媒、濃度0.5g/dl、35℃で測定。以下同一で測定。)が0.05ないし1.0dl/gである。
さらに本発明はこれらの好ましい線状ポリイミドおよび/または線状ポリアミド酸を熱処理することによって得られる熱硬化性ポリイミドであり、また線状ポリイミドおよび/または線状ポリアミド酸と繊維補強材とを含有する複合材、ならびにこの複合材を熱処理して得られる熱硬化性ポリイミドと繊維補強材とを含有してなる複合材である。
【0031】
熱可塑性ポリイミドは、各種特性に優れているが、ガラス転移温度以上での適用性が問題である。一方、熱硬化性ポリイミドは耐熱性が極めて優れ、高温度での適用が可能であるが、機械的特性(靱性)に問題がある。本発明の線状ポリイミドおよび/または線状ポリアミド酸は、上記の問題点を改善する熱硬化性ポリイミドを提供する。すなわち、本願発明の熱硬化性ポリイミドは、熱可塑性ポリイミドの耐熱性を改善し且つ本来の特性を有し、熱硬化性ポリイミドの機械的特性を改善されたものである。
したがって、各種複合材料、例えば航空機用のマトリックスとして新規な材料を提供できる。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明の線状ポリイミドおよび線状ポリアミド酸は、本願明細書において、次のように定義した。すなわち、例えば、線状ポリイミドを式(1)
【化69】
のように表わし、式中のP1、S1、Q、Y、Z、m、nおよびlを前記のように定義した。
【0033】
この線状ポリイミドは、
(1) 式(M)
【化70】
で表される繰り返し単位、
(2) 式(1)においてはP1で規定した、式(N)または式(O)
【化71】
【化72】
で表される繰り返し単位からなり、式(M)の繰り返し単位と式(N)または(O)で表す繰り返し単位との組成比を、式(1)においてはm:nで表す組成比で表し、モル%で示した。すなわち、式(1)における繰り返し単位の組成比は、繰り返し単位(M)が100〜1モル%、繰り返し単位(N)または(O)が0〜99モル%の組成比であることを示す。
【0034】
また分子末端の一方が式(P)
【化73】
で表される一価の基であり、他方が式(1)においてはS1で表す式(U)または式(V)
【化74】
【化75】
〔式(P)、(U)および(V)において、Q、YおよびZは式(1)の場合と同じである〕で表す1価の基の少なくとも一種である線状ポリイミドを表す。
【0035】
本発明のその他の式(3)、(5)、(7)、(9)、(11)で表す線状ポリイミドおよび式(4)、(6)、(8)、(10)、(12)で表す線状ポリアミド酸は、上記と同じように、繰り返し単位および繰り返し単位の組成比および分子末端基の線状ポリイミドおよび線状ポリアミド酸をそれぞれ示した。 また、本明細書における線状ポリイミドおよび線状ポリアミド酸は、式(M)の単独の繰り返し単位からなるもの〔式(11)、式(12)は独立して規定〕、および式(M)の繰り返し単位を必須とし、式(N)または式(O)の繰り返し単位を有する2種の繰り返し単位からなり、これらの繰り返し単位が無秩序に配列した線状ポリイミドまたはその前駆体である線状ポリアミド酸を含むものである。
【0036】
本発明の線状ポリアミド酸または線状ポリイミドは、つぎの方法で製造される。
必須のジアミン成分およびテトラカルボン酸二無水物成分は、前記式(1−1)の4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルおよび前記式(1−3)のピロメリット酸二無水物であり、また、これらと混合して使用するジアミン成分またはテトラカルボン酸二無水物は、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルまたは3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
したがって、本発明の線状ポリイミドまたは線状ポリアミド酸を製造するには4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルおよびピロメリット酸二無水物を必須のモノマーとし、またはこれらの必須のモノマーに4,4’−ジアミノジフェニルエーテルまたは3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を混合して使用する。
【0037】
具体的には、前記式(11)の線状ポリイミドまたは式(12)の線状ポリアミド酸を製造するためには、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルおよびピロメリット酸二無水物を使用する。
また、式(3)および(7)の2種の繰り返し単位を有する線状ポリイミドならびに式(4)および(8)の2種の繰り返し単位を有する線状ポリアミド酸を製造するには、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルおよびピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを使用し、さらに、式(5)および(9)の2種の繰り返し単位を有する線状ポリイミドならびに式(6)および(10)の2種の繰り返し単位を有するの線状ポリアミド酸を製造するには、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルおよびピロメリット酸二無水物を必須のモノマーと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とを使用する。
【0038】
本発明の線状ポリイミドおよび線状ポリアミド酸は、前述の芳香族ジアミンを必須モノマーとして用いるが、その良好な物性を損なわない範囲で他の芳香族ジアミンを更に加えて得ることもできる。加えることが可能なジアミンとしては、例えばm−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(4−アミノフェニル)スルホキシド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、
【0039】
1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’ービス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノーα,αージメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノーα,αージメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、
【0040】
4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ベンゾニトリル、および上記芳香族ジアミンの芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシ基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシ基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシ基で置換されてた芳香族ジアミン等が挙げられる。更にそれら芳香族ジアミンは単独または2種以上を混合して使用しても差し支えない。
【0041】
また、同様に他の芳香族テトラカルボン酸二無水物を更に加えることもできる。加えることが可能な芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2ービス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ー1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7,−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、および上記芳香族テトラカルボン酸二無水物の芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数13のハロゲン化アルキル基またはアルコキシ基で置換されてた芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合しても差し支えない。
【0042】
本発明の線状ポリイミドまたは線状ポリアミド酸の製造において、芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸二無水物成分の使用量は、芳香族ジアミン成分1モル当り芳香族テトラカルボン酸二無水物成分が0.1〜1.0モル比である。
0.1モル未満では良好な諸物性を有する熱硬化性ポリイミドを得るための線状ポリイミドが得られない。好ましいくは0.5〜1.0モル比であり、更に好ましくは0.7〜1.0モル比である。
また、ジアミン成分として4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとの2種のジアミンを使用する場合、これらジアミンの使用量は、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル:4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが100〜1モル%:0〜99モル%、好ましくは100〜70モル%:0〜30モル%であり、また、テトラカルボン酸二無水物成分としてピロメリット酸二無水物と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物との2種の芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用する場合、これらの芳香族テトラカルボン酸二無水物の使用量はピロメリット酸二無水物:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が100〜1モル%:0〜99モル%、好ましくは100〜50モル%:0〜50モル%である。
【0043】
また、本発明の線状ポリイミドまたは線状ポリアミド酸の分子末端を炭素−炭素三重結合を有する末端基で封止するために式(1−5)
【化76】
〔式中、Q、YおよびZは前記の通りである〕で表される炭素−炭素三重結合を有する芳香族ジカルボン酸無水物を用いる。
【0044】
使用される炭素−炭素三重結合を有する芳香族ジカルボン酸無水物は、1−フェニル−2−(3,4−ジカルボキシフェニル)アセチレン無水物、1−フェニル−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕アセチレン無水物、1−フェニル−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルカルボニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−フェニル−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルスルホニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−フェニル−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルスルフィニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−フェニル−2−{h−〔2−(3,4−ジカルボキシフェニル)イソプロパニル〕フェニル}アセチレン無水物、1−フェニル−2−{h−〔1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(3,4−ジカルボキシフェニル)イソプロパニル〕フェニル}アセチレン無水物、1−フェニル−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−フェニル−2−〔h−(s,t−ジカルボキシ)ナフチル〕アセチレン無水物、1−(g−フェノキシフェニル)−2−(3,4−ジカルボキシフェニル)アセチレン無水物、1−(g−フェノキシフェニル)−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕アセチレン無水物、1−(g−フェノキシフェニル)−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルカルボニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−(g−フェノキシフェニル)−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルスルホニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−(g−フェノキシフェニル)−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルスルフィニル)フェニル〕アセチレン無水物、
【0045】
1−(g−フェノキシフェニル)−2−{h−〔2−(3,4−ジカルボキシフェニル)イソプロパニル〕フェニル}アセチレン無水物、1−(g−フェノキシフェニル)−2−{h−〔1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(3,4−ジカルボキシフェニル)イソプロパニル〕フェニル}アセチレン無水物、1−(g−フェノキシフェニル)−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−(g−フェノキシフェニル)−2−〔h−(s,t−ジカルボキシ)ナフチル〕アセチレン無水物、1−(g−フェニルフェニル)−2−(3,4−ジカルボキシフェニル)アセチレン無水物、1−(g−フェニルフェニル)−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕アセチレン無水物、1−(g−フェニルフェニル)−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルカルボニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−(g−フェニルフェニル)−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルスルホニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−(g−フェニルフェニル)−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルスルフィニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−(g−フェニルフェニル)−2−{h−〔2−(3,4−ジカルボキシフェニル)イソプロパニル〕フェニル}アセチレン無水物、1−(g−フェニルフェニル)−2−{h−〔1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(3,4−ジカルボキシフェニル)イソプロパニル〕フェニル}アセチレン無水物、1−(g−フェニルフェニル)−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−(g−フェニルフェニル)−2−〔h−(s,t−ジカルボキシ)ナフチル〕アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルカルボニル)フェニル〕−2−(3,4−ジカルボキシフェニル)アセチレン無水物、
【0046】
1−〔g−(フェニルカルボニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルカルボニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルカルボニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルカルボニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルスルホニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルカルボニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルスルフィニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルカルボニル)フェニル〕−2−{h−〔2−(3,4−ジカルボキシフェニル)イソプロパニル〕フェニル}アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルカルボニル)フェニル〕−2−{h−〔1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(3,4−ジカルボキシフェニル)イソプロパニル〕フェニル}アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルカルボニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルカルボニル)フェニル〕−2−〔h−(s,t−ジカルボキシ)ナフチル〕アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルスルホニル)フェニル〕−2−〔3,4−ジカルボキシフェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルスルホニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルスルホニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルカルボニル)フェニル〕アセチレン無水物、
1−〔g−(フェニルスルホニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルスルホニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルスルホニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルスルフィニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルスルホニル)フェニル〕−2−{h−〔2−(3,4−ジカルボキシフェニル)イソプロパニル〕フェニル}アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルスルホニル)フェニル〕−2−{h−〔1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(3,4−ジカルボキシフェニル)イソプロパニル〕フェニル}アセチレン無水物、
【0047】
1−〔g−(フェニルスルホニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルスルホニル)フェニル〕−2−〔h−(s,t−ジカルボキシ)ナフチル〕アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルスルフィニル)フェニル〕−2−(3,4−ジカルボキシフェニル)アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルスルフィニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルスルフィニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルスルフィニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルカルボニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルスルフィニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルスルホニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルスルフィニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルスルフィニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルスルフィニル)フェニル〕−2−{h−〔2−(3,4−ジカルボキシフェニル)イソプロパニル〕フェニル}アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルスルフィニル)フェニル〕−2−{h−〔1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(3,4−ジカルボキシフェニル)イソプロパニル〕フェニル}アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルスルフィニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(フェニルスルフィニル)フェニル〕−2−〔h−(s,t−ジカルボキシ)ナフチル〕アセチレン無水物、1−〔g−(2−フェニルイソプロパニル)フェニル〕−2−(3,4−ジカルボキシフェニル)アセチレン無水物、1−〔g−(2−6ェニルイソプロパニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(2−フェニルイソプロパニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルカルボニル)フェニル〕アセチレン無水物、
【0048】
1−〔g−(2−フェニルイソプロパニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルスルホニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(2−フェニルイソプロパニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルスルフィニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(2−フェニルイソプロパニル)フェニル〕−2−{h−〔2−(3,4−ジカルボキシフェニル)イソプロパニル〕フェニル}アセチレン無水物、1−〔g−(2−フェニルイソプロパニル)フェニル〕−2−{h−〔1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(3,4−ジカルボキシフェニル)イソプロパニル〕フェニル}アセチレン無水物、1−〔g−(2−フェニルイソプロパニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(2−フェニルイソプロパニル)フェニル〕−2−〔h−(s,t−ジカルボキシ)ナフチル〕アセチレン無水物、1−〔g−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−フェニルイソプロパニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−フェニルイソプロパニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロー2ーフェニルイソプロパニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルカルボニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−フェニルイソプロパニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルスルホニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−フェニルイソプロパニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニルスルフィニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−フェニルイソプロパニル)フェニル〕−2−{h−〔2−(3,4−ジカルボキシフェニル)イソプロパニル〕フェニル}アセチレン無水物、
【0049】
1−〔g−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−フェニルイソプロパニル)フェニル〕−2−{h−〔1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(3,4−ジカルボキシフェニル)イソプロパニ〕)フェニル}アセチレン無水物、1−〔g−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−フェニルイソプロパニル)フェニル〕−2−〔h−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕アセチレン無水物、1−〔g−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−フェニルイソプロパニル)フェニル〕−2−〔h−(s,t−ジカルボキシ)ナフチル〕アセチレン無水物、およびこれらの芳香族ジカルボン酸無水物の芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがフッ素、塩素、臭素、よう素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、プロパキシ基、イソプロパキシ基、およびそれらアルキル基やアルコキシ基の水素原子の一部もしくは全部がフッ素、塩素、臭素、またはよう素などのハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基またはハロゲン化アルコキシ基で置換された芳香族ジカルボン酸無水物が挙げられる(上記の芳香族ジカルボン酸無水物名中、gは2、3または4であり、またhは2、3または4であり、さらにsは1から7までの整数であり、tは2から8までの整数でであり、かつt=s+1であり、かつsおよびtはhと異なる)。ここで芳香族ジカルボン酸無水物の芳香環上の置換はその置換基の種類や数に特に制限はない。
【0050】
これらの芳香族ジカルボン酸無水物は単独あるいは2種以上混合しても差し支えない。
これらの芳香族ジカルボン酸無水物の中で、例えば、1−メチルフェニル−2−(3,4−ジカルボキシフェニル)アセチレン無水物のような1−置換フェニル−2−(3,4−ジカルボキシフェニル)アセチレン無水物が好ましく、さらには1−フェニル−2−(3,4−ジカルボキシフェニル)アセチレン無水物が得られる熱硬化性ポリイミドの性質面及び実用面から最も好ましい。
芳香族ジカルボン酸無水物の使用量は、芳香族ジアミン成分1モル当り0.001〜1.0モル比である。0.001モル未満では得られる線状ポリイミドを熱処理しても架橋反応が十分に進まず、得られる熱硬化性ポリイミドの特性が不十分である。また、1.0モルを越えると得られる熱硬化性ポリイミドの機械的特性が低下する。好ましい使用量は0.01〜0.5モルである。
【0051】
また、本発明の熱硬化性ポリイミドの特性を損なわない範囲で上記の芳香族ジカルボン酸無水物以外の芳香族ジカルボン酸無水物を一部併用しても差し支えない。ここで使用される芳香族ジカルボン酸無水物として、例えば、無水フタル酸、2,3−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、3,4−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル無水物、2,3−ビフェニルジカルボン酸無水物、3,4−ビフェニルジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、1,2−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,2−アントラセンジカルボン酸無水物、2,3−アントラセンジカルボン酸無水物、1,9−アントラセンジカルボン酸無水物等が挙げられる。またそれら芳香族ジカルボン酸無水物は単独または2種以上混合しても差し支えない。
【0052】
芳香族ジカルボン酸無水物を添加、反応させる方法としては、
(イ)テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンを反応させた後に、芳香族ジカルボン酸無水物を添加して反応を続ける方法、
(ロ)芳香族ジアミンに芳香族ジカルボン酸無水物を加えて反応させた後、テトラカルボン酸二無水物を添加し、更に反応を続ける方法、
(ハ)テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミン、および芳香族ジカルボン酸無水物を同時に添加し、反応させる方法等が挙げられ、いずれの添加方法をとっても差し支えない。
本発明の線状ポリイミドまたは線状ポリアミド酸の製造には、特に限定されなく、全ての公知な方法が適用できる。この場合、式(1)で示される線状ポリイミドがその前駆体である式(2)の線状ポリアミド酸を一部含んでいても差し支えない。
【0053】
反応は、通常、溶媒中で行う。使用される溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメトキシアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕エーテル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ピロリン、ピコリン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、スルホラン、フェノール、o−クレゾール、mークレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール酸、p−クロロフェノール、アニソール、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられ、これらは単独あるいは2種以上で混合して使用してもよい。
有機溶剤中で上記の芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンおよび芳香族ジカルボン酸無水物とを反応させて、式(1)で代表される本発明の線状ポリイミドに対応する前駆体である式(2)の線状ポリアミド酸が得られる。この反応の温度、時間等の条件は特に限定されず、公知の条件を適用できる。
【0054】
この式(2)で表される線状ポリアミド酸は、0.5g/dlの濃度でN,N-ジメチルアセトアミド中、35℃で測定した対数粘度の値が、0.05〜1.0dl/gの範囲である。0.05dl/g未満では熱処理後に得られる本発明の熱硬化性ポリイミドの機械特性は極端に低下する。また1.0dl/gを越えると十分な熱処理を施しても熱硬化性ポリイミドが得られない。
ついで、得られた線状ポリアミド酸は、熱的または化学的にイミド化して、対応する線状ポリイミドが得られる。化学イミド化は、無水酢酸、トリフルオロ酢酸無水物、ポリリン酸、五酸化リンまたは塩化チオニルなどの脱水剤を用い化学的にイミド化する方法であり、この場合、ピリジン、イミダゾール、ピコリンおよびその異性体、キノリンおよびその異性体、トリエチルアミン等で代表されるアルキルアミンなどの有機塩基や水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどで代表される無機塩基を共存させても差し支えない。また、加熱イミド化は、線状ポリアミド酸を生成反応後、その溶液を加熱してイミド化を行なう方法であり、この場合も化学的イミド化方法と同様に上記の塩基を共存させることができる。
【0055】
イミド化の反応温度は、0〜400℃であり、化学的イミド化では、好ましくは0〜150℃の範囲であり、熱的イミド化では、好ましくは150〜350℃の範囲である。反応圧力は特に限定されず、常圧で十分実施できる。反応時間は、溶媒の種類、反応温度およびイミド化の方法によって異なるが、通常0.1〜48時間で十分である。
以上の方法によって、本願の線状ポリアミド酸および線状ポリイミドを製造することができる。
【0056】
本発明の熱硬化性ポリイミドは、上記のようにして得られる線状ポリイミドまたは線状ポリアミド酸、あるいはこれらの混合物を熱処理して得られる。
すなわち、熱硬化性ポリイミドを得るには、本発明の線状ポリイミドを用いる。また線状ポリイミドの一部がその前駆体である線状ポリアミド酸であっても差し支えない。更に本発明の線状ポリアミド酸そのものを熱処理して、熱的架橋反応と熱的イミド化を同時に行なうこともできる。
加熱処理温度は、線状ポリイミドまたは線状ポリアミド酸の種類や前記式(1−5)で表される芳香族ジカルボン酸無水物の種類によって異なるが、通常200〜500℃であり、好ましくは250〜450℃であり、更に好ましくは350〜400℃の範囲である。200℃より低い温度では熱架橋反応は起こり難く、500℃を越える温度では線状ポリイミドまたは線状ポリアミド酸の変性が起こり、熱硬化性ポリイミドの特性が十分に得られない。
熱処理時間は、線状ポリイミドまたは線状ポリアミド酸や芳香族ジカルボン酸無水物の種類および実施する熱処理温度によって異なるが、通常、0.1分間から24時間の範囲である。好ましくは1分間から1時間であり、更に好ましくは5〜30分間である。0.1分間より短時間では熱架橋反応が十分に起こらず熱硬化性ポリイミドが得られない。また24時間より長時間では得られる熱硬化性ポリイミドの変性が起こり、熱硬化性ポリイミドの特性が十分に得られない。熱処理圧力は特に限定されず、常圧で十分実施できる。
【0057】
また、熱架橋反応を促進させたりまたは抑制させることにより、その反応速度を制御するために、ガリウム、ゲルマニウム、インジウムまたは鉛を含有する金属触媒、モリブデン、マンガン、ニッケル、カドミウム、コバルト、クロム、鉄、銅、錫または白金等を含む遷移金属触媒、あるいはリン化合物、珪素化合物、窒素化合物または硫黄化合物を添加することができる。また上述と同様な目的で赤外線、紫外線やα、βまたはγ線等の放射線、電子線またはX線の照射、更にプラズマ処理やドーピング処理などを施しても差し支えない。
熱処理を行なう際、線状ポリイミドまたは線状ポリアミド酸の形態に特に限定はない。得られた線状ポリイミドまたは線状ポリアミド酸を粉状、顆粒状や塊状などの固形体、懸濁液または溶液にした後、熱処理を行なうことができる。固形体の場合はその要求される形状によって、例えば、フィルム、シート、繊維や各種の形を有する成形体にすることが可能である。この場合は溶融、押し出し、焼結、ブローおよびカレンダーなどの公知の成形方法を用いることができる。また溶剤を用いる場合は、熱処理条件により脱溶剤を伴いながら固形体の場合と同様な形状にすることができる。
【0058】
更に、粉状、顆粒状や塊状などの固形体、懸濁液または溶液で得られたものを炭素繊維、ガラス繊維や他の各種無機繊維、アラミド繊維や複素環ポリマー繊維や他の各種化学繊維、更にはそれらの繊維から織られた織布や紙状シートに混合または含浸させた後、熱処理することも可能である。
また更に、それらを金属、セラミック、プラスチックまたはガラスからなる板、箔または棒等の材料の上に塗布して熱処理すること、あるいは塗布した後、同種または異種の材料を重ねて挟みこみ熱処理と同時に両者を接着させることも可能である。接着を行なう場合は、加圧下で行うのが望ましい。
【0059】
本発明の熱硬化性ポリイミドは、本発明の目的を損なわない範囲で熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニルABS樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、PTFE、セルロイド、ポリアリレート、ポリエーテルニトリル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニルスルフィド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、変成ポリフェニレンオキシドおよびポリイミド等、または他の熱硬化性樹脂、例えば熱硬化性ポリブタジエン、ホルムアルデヒド樹脂、アミノ樹脂、ポリウレタン、シリコン樹脂、SBR,NBR、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリシアネートおよびフェノール樹脂等を目的に応じて一種もしくは2種以上の樹脂を適当量を配合することも可能である。配合方法は特に限定されない。
【0060】
また、本発明の熱硬化性ポリイミドは2種以上を目的に応じて適当量を混合して使用することも可能である。更に混合された熱硬化性ポリイミドに上述の樹脂を本発明の目的を損なわない範囲で一種もしくは2種以上を配合することも可能である。
また、更に次のような充填剤等を本発明の目的を損なわない範囲で用いてもよい。すなわち、グラファイト、カーボランダム、ケイ石粉、二硫化モリブデン、フッ素系樹脂などの耐摩耗性向上剤、ガラス繊維、カーボン繊維等の補強剤、三酸化アンチモン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の難燃性向上剤、クレー、マイカ等の電気的特性向上剤、アスベスト、シリカ、グラファイト等の耐トラッキング向上剤、硫酸バリウム、シリカ、メタケイ酸カルシウム等の耐酸性向上剤、鉄粉、亜鉛粉、アルミニウム粉、銅粉等の熱伝導度向上剤、その他ガラスビーズ、ガラス球、タルク、ケイ藻度、アルミナ、シラスバルン、水和アルミナ、金属酸化物、着色料等である。
本発明の複合材は、本発明の線状ポリイミドおよび/または線状ポリアミド酸と繊維状補強材とを含有する熱処理前の組成物またはこの組成物を熱処理した熱硬化性ポリイミドと繊維状補強材とを含有する熱硬化性ポリイミド複合材である。
【0061】
これらの本発明の複合材で用いる繊維状補強材としては、ガラス繊維のヤーン、ローピング、炭素繊維のトウ等の一方向長繊維または織布、マット、フェルト等の2次元的または3次元的多方向連続繊維状体が挙げられる。
これら繊維状補強材はE−ガラス、S−ガラス、T−ガラス、C−ガラス、AR−ガラス等のガラス繊維、PAN系、ピッチ系、またはレーヨン系からなる炭素繊維、グラファイト繊維、デュポン者のケプラーに代表される芳香族ポリアミド繊維、日本カーボン社のニカロン等の炭化ケイ素繊維、ステンレス繊維等の金属繊維、その他アルミナ繊維、ボロン繊維等で構成され、これら繊維は単独または組合せたものでもよく、さらに必要に応じてチタン酸カリウム繊維、マイカ、ケイ酸カルシウム等の他の補強材と組合せて用いることもでき、混合比には制限がなく、要求される性能に応じて決定される。
本発明で使用する繊維状補強材を上記の各種補強材から選択するに当たっては、繊維の持つ強度、弾性率、破断伸度等の機械的特性、電気的特性、比重等を基に複合材料への要求特性に合わせて選択すべきである。例えば、比強度、比弾性率への要求値が高い場合は、炭素繊維、ガラス繊維等を選択すべきであり、又電磁波シールド特性が要求される場合は炭素繊維、金属繊維等が好ましい。また、電気絶縁特性が要求される場合はガラス繊維等が好適である。
【0062】
繊維状補強材の繊維径、収束本数については用いる繊維状補強材の種類によって異なるが、例えば、炭素繊維の場合、繊維径は4〜8μm、収束本数は1000〜12000本が一般的である。繊維径は得られる複合材料の機械特性の面からは細い方が好ましい。ただし、ここに特定したものに限らず各種のものが使用可能であり、更に織布等においてはその織り方、厚み等には制限は無く、あらゆる種類の織布を用いることができる。
また他の繊維補強材についても、この炭素繊維の場合と同様にその種類や形状等に何等制限はない。更に繊維状補強材を表面処理することはマトリックス樹脂との密着性向上の面から好ましく、公知の表面処理が適用できる。例えば、ガラス繊維の場合、シラン系、チタネート系カップリング剤で処理することや炭素繊維を耐熱性高分子である芳香族ポリエーテル類や同ポリスルホン類で処理することは特に好ましい。
これらの繊維状補強材の複合材中の容積含有率は5〜85%、好ましくは30〜70%である。繊維状補強材の容積含有率が低いと補強材の効果が期待できず、逆に高いと得られる複合材料の層間強度が著しく低下し好ましくない。
【0063】
本発明の複合材のうち、熱処理前の複合材は、その製造方法は目的の複合材を得られる方法であればとくに限定はなく、公知の方法であっても適用可能であり、本発明の線状ポリイミドおよび/または線状ポリアミド酸と繊維状補強材を混合あるいは線状ポリイミドおよび/または線状ポリアミド酸の固形状物、懸濁液または溶液を繊維状補強材に塗布または含浸させて製造する。
繊維状補強材に線状ポリイミドおよび/または線状ポリアミド酸を含浸させる方法は、公知方法がすべて適用できるが、例えば、通常、次の方法が多用される。
1)線状ポリイミドおよび/または線状ポリアミド酸の懸濁液または溶液を用いて、繊維状補強材に塗布または繊維状補強材に浸漬して含浸させる方法。
2)線状ポリイミドおよび/または線状ポリアミド酸の粉末を空気などの気体中に浮遊させた状態で含浸させる方法。
【0064】
1)の方法で用いる溶媒には特に制限はなく、線状ポリイミドおよび/または線状ポリアミド酸の製造に用いられる溶媒の外、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール等の炭化水素系、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、フルオロベンゼンで代表される該炭化水素系の水素原子の一部または全部をハロゲン原子で置き換えたハロゲン化炭化水素系、酢酸エチル、酢酸ブチル、ぎ酸エチル等のエステル系、クレゾール、フェノール等のフェノール系、ピリジン、ピコリントリエチルアミン等のアミン系、スルホラン、ジメチルスルホキシド等の硫黄系、および水などが単体または混合して用いられる。1)の方法における、溶液または懸濁液は、濃度、溶解温度、溶解時間、懸濁粒子の径および形状等にとくに制限はない。
【0065】
繊維状補強材と線状ポリイミドおよび/または線状ポリアミド酸よりなる複合材料の製造方法として、例えば、次の一般な具体的方法が挙げられる。
即ち、複数のボビンより引き出した一方向長繊維、例えば、トウを引き揃えた繊維シートまたは多方向連続繊維を張力調整ロールにて引き取り方向に一定の張力をかける。一方、線状ポリイミドおよび/または線状ポリアミド酸を含む液体をダイから吐出させロール表面に塗布する。塗布厚みは得られる複合材料中の樹脂含有百分率設定値によって決定される。ついで前述の繊維シート又は多方向連続繊維を当該ロール表面に一定の張力で接触させて含浸させる。
さらに上記の方法によって含浸を行った後、加熱、乾燥して用いた溶媒を除去する。線状ポリアミド酸はこの乾燥において脱水閉環イミド化も同時に行なわれる。乾燥温度は溶媒の種類や溶液または懸濁液の濃度にもよるが、50〜300℃が好ましく、更に好ましくは150〜250℃である。300℃を越えると架橋反応が進み脱溶媒が不完全の状態になりやすいため好ましくない。また50℃未満では充分に乾燥しない。雰囲気は空気、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等制限はないが、好ましくは窒素やアルゴンが選択される。乾燥時間は乾燥温度、溶媒の種類や溶液または懸濁液の濃度にもよるが、0.5〜48時間が好ましく、更に好ましくは1〜6時間である。乾燥圧力は特に制限が無く、常圧でも減圧でもかまわない。その他、乾燥を行う上で乾燥機の種類や乾燥方法に特に制限はない。
【0066】
また、本発明の熱硬化性ポリイミドと繊維状補強材とを含有してなる複合材は、上記により得られる複合材を熱処理して、線状ポリイミドおよび/または線状ポリアミド酸を炭素−炭素三重結合に基づく架橋反応によりポリマー化して得られる。
熱処理の条件は、前記と同様、加熱処理温度は、通常200〜500℃であり、好ましくは250〜450℃であり、更に好ましくは350〜400℃の範囲である。200℃より低い温度では熱架橋反応は起こり難く、500℃を越える温度では線状ポリイミドまたは線状ポリアミド酸の変性が起こり、熱硬化性ポリイミドの特性が十分に得られない。
熱処理時間は、線状ポリイミドまたは線状ポリアミド酸や芳香族ジカルボン酸無水物の種類および実施する熱処理温度によって異なるが、通常0.1分間から24時間の範囲である。好ましくは1分間から1時間であり、更に好ましくは5〜30分間である。0.1分間より短時間では熱架橋反応が十分に起こらず熱硬化性ポリイミドが得られない。また24時間より長時間では得られる熱硬化性ポリイミドの変性が起こり、熱硬化性ポリイミドの特性が十分に得られない。熱処理圧力は特に限定されず、常圧で十分実施できる。
例えば、繊維状補強材と線状ポリイミドを含有してなる加熱処理前の複合材は、積層し、加熱圧縮により、所望する形状の成形物を製造することができる。積層複合材を製造する場合、積層方法や積層枚数は要求される性能に応じて種々の対応が可能である。加熱処理、すなわち、積層成形時の加熱温度は300℃を越える温度であれば良いのであるが、好ましくは350〜450℃である。また加圧力は形状により異なるが1kg/cm2 以上あれば十分である。加圧時間も形状により異なるが1分以上あれば十分である。
【0067】
線状ポリイミドや線状ポリアミド酸を加熱して熱硬化性ポリイミドに変換させる熱架橋反応は加圧圧縮と同時に行っても、加熱圧縮後別途行っても差し支えない。熱架橋反応の条件は先述したとおりである。
本発明の熱処理前後の複合材は圧縮成形、オートクレープ成形、スタンピングモールド成形、フィラメントワインディング、テープワインズィング等の公知の成形法が採用でき、成形方法に特に制限はない。
又、複合材の形状に制限はなく、平板、チャンネル、アングル、ストリンガー、丸棒、バイブ等が挙げられる。しかし、勿論、これら形状に限定されるものではなく、あらゆる形状のものが可能である。
【0068】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。尚、実施例中のポリイミドの物性は以下の方法により測定した。
ガラス転移温度 :DSC(島津DT−40シリーズ,DSC−41M)により、窒素気流中、16℃/分の昇温速度で測定。
5%重量減少温度:空気中でDTG(島津DT−40シリーズ,DTG−40M)により、空気気流中、10℃/分の昇温速度で測定。
対数粘度 :ポリアミド酸はN,N−ジメチルアセトアミド中、0.5g/100mlの濃度、35℃で測定した。
フィルムの機械物性:引張強度、引張伸度および引張弾性率の測定はASTM−D882に準拠した。
【0069】
実施例1
攪拌機、還流冷却器および窒素導入管を備えた容器に、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル36.85g(0.1mol)、ピロメリット酸二無水物21.16g(0.097mol)およびN−メチル−2−ピロリドン135.0gを装入し、窒素雰囲気下25℃で攪拌した。6時間後、1−フェニル−2−(3,4−ジカルボキシフェニル)アセチレン無水物1.49g(0.006mol)を添加し、そのまま18時間攪拌を継続した。得られた前駆体の線状ポリアミド酸の対数粘度は0.50dl/gであった。得られた線状ポリアミド酸の溶液をドクターブレードを用いてガラス板上に流延し、続いてそれを窒素気流下250℃で4時間乾燥し、厚み40μmの熱処理前の線状ポリイミドのフィルムを得た。この熱処理前の線状ポリイミドフィルムについてDSC測定を行ったところ、250℃にガラス転移温度、360℃に熱架橋反応による発熱ピークが観察された。また熱処理前の線状ポリイミドフィルム20mgをp−クロロフェノール5mlに入れ、加熱したところ150℃で完全溶解した。一方、熱処理前の線状ポリイミドフィルムを窒素気流下360℃で30分間熱処理を行い、厚み40μmの熱硬化性ポリイミドフィルムを得た。この熱処理後の熱硬化性ポリイミドフィルムについてDSC測定を行ったところ、276℃にガラス転移温度が観察されたが、発熱ピークは検出されなかった。また同様な方法でp−クロロフェノールによる溶解性試験を行ったところ、加熱還流状態で1時間経過後も溶解せ、目視観察では全く変化が認められなかった。また熱処理後の熱硬化性ポリイミドフィルムの5%重量減少温度は520℃であった。更に熱硬化性ポリイミドフィルムの機械物性を測定したところ、引張強度12.5kg/mm2 、引張弾性率30kg/mm2 、引張伸度75%であった。
【0070】
実施例2〜16
表1〜2に示すように、各種所定量の芳香族ジアミン、芳香族テトラカルボン酸二無水物および芳香族ジカルボン酸無水物、および各種溶媒を用いて、各種線状ポリアミド酸を得た。それらの対数粘度を実施例1の結果と共に表1〜2に示す。続いてこれら線状ポリアミド酸を実施例1と同様にイミド化を行い各線状ポリイミドフィルムを得た。それらのフィルムのガラス転移温度、発熱ピークおよびp−クロロフェノールによる溶解性試験を実施例1と同様に行った。その結果を表3〜4に示す。更に続いてそれらイミドフィルムに実施例1と同様な熱処理を施し、各種熱処理後の熱硬化ポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムについて、実施例1と同様にフィルム厚、ガラス転移温度、発熱ピーク、p−クロロフェノールによる溶解性試験、5%重量減少温度および機械物性を測定した。それらの結果を表3〜4に実施例1の結果と共に示す。
【0071】
比較例1〜2
表5に示すように、各種所定量の芳香族ジアミン、芳香族テトラカルボン酸二無水物および芳香族ジカルボン酸無水物、および各種溶媒を用いて、各種の線状ポリアミド酸を得た。それらの対数粘度を表5に示す。続いてそれら線状ポリアミド酸を実施例1と同様なイミド化を行い各イミドフィルムを得た。得られた各ポリイミドフィルムについて、実施例1と同様な測定を行った。それらの結果を表6に示す。
【0072】
実施例17〜19
表7で示すように実施例1、3および6で得られた線状ポリアミド酸の溶液と一方向長繊維を用いてそれぞれ複合材料を得た。
即ち、100本のボビンから引き出された炭素繊維のトウ(ベスファイトHTA−7−3000)100本を引き揃えて150mm巾の繊維シートとした。上記の線状ポリアミド酸溶液を定量ポンプを使用してダイから240mm径のロールに240μmの厚みに塗布し、このロール表面に前記繊維シートを150kgの張力で該接触させて、繊維シートに線状ポリアミド酸を含浸させた。次に溶液を含浸させた繊維シートを150℃の空気気流下で30分間、乾燥炉内で10cm/分の速度で移動させながら乾燥した。更に同一速度で280℃の窒素気流下30分間乾燥炉を経て、徐冷したのち引取機で巻き取った。得られた複合材は幅150mm、厚み0.15mmのものであった。この複合材を20枚同一方向に積層し、370℃、20kg/cm2 の条件で20分間熱プレスした後、圧力を保持したままで100℃まで冷却して200×200mmの平板を得た。このものの内部ボイド率、更に平板より所定の試験片を切り出し、曲げ強度、曲げ弾性率をASTM−790に準拠し測定した。結果を表7に示す。内部ボイド率とは平板の比重及び繊維含有重量百分率から求めたものである。
【0073】
実施例20〜22
実施例1、2および7で得られた線状ポリアミド酸の各溶液に無水酢酸とピリジンを室温で加えて、そのまま5時間室温で攪拌して化学的イミド化を行い、各ポリイミドの粉末を得た。3種の線状ポリイミド粉末を、それぞれ順にメチルエチルケトン、メタノールおよびヘキサンを用いて濃度25wt%の懸濁液を調製した。これら3種の懸濁液を使用して実施例17〜19と全く同様にして複合材を得た。ただし懸濁液を含浸する際、ロールは用いずに240mm幅、平坦部が300mmのスチール製のベルト上で含浸を行った。以下実施例17〜19と同様にして乾燥、プレス積層、熱処理を行った。得られた複合材の評価を実施例17〜19と同様に行い、表7に示す結果を得た。
【0074】
実施例23および24
実施例1で得られた線状ポリアミド酸の溶液、および実施例3で得られた線状ポリアミド酸の溶液を実施例20〜22と同様に化学イミド化して得られた線状ポリイミドの粉末をメチルエチルケトンを用いて調製した懸濁液を用い、繊維状補強材として炭素繊維平織り織布を用いて以下の方法によりそれぞれ複合材を得た。繰出軸に上架された多方向連続繊維を張力調整ロールにて引取方向に30kgの張力をかけ、240mm径のロールの接触させながら通過させた。一方、該溶液および該懸濁液を定量ポンプでダイから240mm幅、平坦部が300mmのスチール製のベルト上に塗布し、前記繊維をベルト表面に接触させて含浸をさせた。以下実施例17〜19と同様にして乾燥、プレス積層、熱処理を行った。得られた複合材の評価を実施例17〜19と同様に行い、表7に示す結果を得た。
【0075】
実施例25および26
実施例3の線状ポリアミド酸の溶液と実施例6で得られた線状ポリイミドの懸濁液とを用いて実施例23および24における炭素繊維平織り織布の代わりにガラス繊維の平織り織布を布繊維状補強材として用いて、実施例23および24と同様にして複合材を得た。得られた複合材の評価結果を表7に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
Claims (14)
- 式(1)
- 請求項1〜6に記載の線状ポリイミドの前駆体であり、その対数粘度(N,Nージメチルアセトアミド溶媒、濃度0.5g/dl、35℃で測定。)が0.05ないし1.0dl/gである線状ポリアミド酸。
- 請求項1〜6に記載の線状ポリイミドを熱処理して得られる熱硬化性ポリイミド。
- 請求項7に記載の線状ポリアミド酸を熱処理して得られる熱硬化性ポリイミド。
- 請求項1〜6に記載の線状ポリイミドと繊維状補強材とからなる複合材。
- 請求項7に記載の線状ポリアミド酸と繊維状補強材とからなる複合材。
- 請求項10または11に記載の複合材を熱処理して得られる熱硬化性ポリイミドと繊維状補強材からなる複合材。
- 請求項1〜6に記載の線状ポリイミドを含有する溶液または懸濁液。
- 請求項7に記載の線状ポリアミド酸を含有する溶液または懸濁液。
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