JP3543885B2 - ポリスチレン樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリスチレン系樹脂組成物に関し、詳しくは、特定の化合物を含む物性の良好なポリスチレン系樹脂組成物並びにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリスチレンは透明で硬く、寸法安定性、電気絶縁性に優れた樹脂であるが衝撃に弱い。この欠点を改良するためにゴムを加えた耐衝撃性スチレン樹脂が開発されている。
【0003】
耐衝撃性スチレン樹脂はポリスチレンにゴムをブレンドしたものも知られているが単にゴムをブレンドしただけでは耐衝撃性の改良効果が小さい。また表面の光沢と衝撃強度のバランスの優れたポリスチレン系樹脂としてABS樹脂が知られている。
【0004】
これらの樹脂は通常はスチレン単独あるいはスチレンとアクリロニトリルあるいはメチルメタクリレートなどとの(共)重合時にゴムを加えてグラフト反応によりゴムにスチレンをグラフト化することによりゴムを分散しやすくして耐衝撃性の良好なゴム変性スチレン樹脂組成物が製造されている。
【0005】
この様にして製造されるゴム変性スチレン系樹脂組成物の物性にはゴム粒子の大きさとその構造が大きな影響を与えていることが知られており、ゴム粒子のモルフォロジーをコントロールすることにより物性の良好なゴム変性スチレン系樹脂組成物を合成する検討がなされている。
【0006】
この様な耐衝撃性ポリスチレン樹脂やABS樹脂を製造する方法として現在では塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状−懸濁重合法、乳化重合法などの重合方法が工業的に実施されている。これらの方法で製造される耐衝撃性スチレン系樹脂は耐衝撃性と剛性のバランスに優れていることから、家電製品やOA機器、自動車部品を始め、多くの工業部品にも使用されている。
【0007】
これらのゴム変性スチレン系樹脂組成物に含まれるゴムは衝撃の改良には多く入れるほど有効であるが、グラフト率の低いゴム粒子はポリマーのマトリックスの中でゴム同士が凝集し易く、ゴム粒子の分散状態が不均一になる傾向があることが知られている。ゴム粒子の分散状態が不均一になったゴム変性スチレン系樹脂組成物はゴム量を増やしても衝撃強度が大きくならない。また、凝集したゴム粒子が巨大粒子や異形粒子となって、表面の光沢を低下させる原因ともなる。
【0008】
衝撃強度改良のため、米国特許4493922号や特開昭63−112646号公報ではスチレン−ブタジエン共重合ゴムを用いて形成された単一オクルージョン構造のゴム粒子を有するゴム変性スチレン樹脂と少量のサラミ構造のゴム粒子を有する通常のゴム変性スチレン樹脂組成物をブレンドする方法が提案されている。これらの方法では衝撃強度は改良されるが製造工程が複雑であり、物性も十分とは言えない。
【0009】
また特開昭52−86444号公報にはゴム状重合体としてブタジエン単量体に占めるシス1、4結合の割合が90モル%以上のポリブタジエンを用いたHIPS、また特公昭55−30525号公報には有機過酸化物を使用して特定のゴム状重合体を使用して樹脂中のゲル含有量を増加させる方法が開示されているが、この方法では樹脂の流動性が低下する。
【0010】
また特開昭60−130613、130614号公報には特定のゴム状重合体を使用し、分散ゴム粒子の粒径や粒径分布を特定した樹脂組成物について開示されているが、製品の流動性を向上せしめて衝撃強度を高く保持したゴム変性スチレン樹脂組成物を製造する技術については何等開示されていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
単にゴムを添加して耐衝撃性を改善する方法では、柔らかいゴムを添加するため耐衝撃性をある程度改良することはできるが十分ではなく、さらに表面光沢や流れ性などの他の物性が低下し、物性のバランスとして必ずしも満足できるものではないという問題があり、さらに有用な組成物の開発が望まれている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ポリスチレン系樹脂組成物の耐衝撃性とその他の物性とのバランスを向上させた新たな組成物について鋭意探索したところ特定の化合物を組み合わせることで物性の優れた組成物が得られることを見いだし本発明を完成した。即ち本発明は、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(A)100重量部、カルボニル基を有するスチレン系共重合体(B)0.1〜20重量部および(B)と反応しうるエポキシ基(II)を有するエラストマー(C)0.1〜20重量部を加熱混合して得られるゴム変性ポリスチレン樹脂(A)よりも光沢に優れたポリスチレン系樹脂組成物を提供することにある。
【0013】
また本発明は、該カルボニル基を有するスチレン系共重合体(B)がスチレン−無水マレイン酸共重合体である上記記載のポリスチレン系樹脂組成物を提供することにある。
【0014】
また本発明は、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(A)、カルボニル基を有するスチレン系共重合体(B)、(B)中のカルボニル基(I)と反応しうる反応性官能基であるエポキシ基(II)を有するエラストマー(C)よりなる前記の組成物において、さらにルイス酸またはラジカル発生剤から選ばれた反応助剤の存在下で加熱混合してなるポリスチレン系樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられるゴム変性ポリスチレン系樹脂(A)としては、グラフト可能なゴムの存在下にスチレン単独、またはスチレンおよびスチレンと共重合可能な単量体を重合させて得られる共重合体である。
【0016】
そのグラフト可能なゴムとしては、通常耐衝撃性ポリスチレンのゴム成分として使用されるゴムであれば特に限定はないが、例えばポリブタジエン(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、EPM、EPDMなどを挙げることができる。
【0017】
ポリブタジエンとしては種々の公知のものが使用できるが、例えばS.V値(5wt%スチレン溶液の25℃の粘度)が25〜150cps、共役ジエン部分のビニル結合の割合が全飽和結合に対して20〜80%のものが好ましく使用できる。
【0018】
またスチレン−ブタジエン共重合体はスチレン含有率が1〜45wt%、S.V値(5wt%スチレン溶液の25℃の粘度)が6〜40cpsのランダム又はブロック共重合体が好ましく使用される。
【0019】
またスチレンと共重合可能な単量体としては、通常スチレンと共重合される公知の単量体が使用されるが、環置換スチレン:o−、m−,p−ビニルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等、環置換ハロスチレン:o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、2,4−ジクロロスチレン等、α−アルキルモノビニリデン芳香族単量体:α−メチルスチレン、α−メチルビニルスチレン、α−メチルジアルキルスチレン、ニトリル類:アクリロニトリル等、酸無水物:無水マレイン酸等、アクリル酸類:メタクリル酸、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、マレイミド等が例示される。
【0020】
これ等の共重合可能な単量体は0〜40重量%が好ましく使用される。
【0021】
また、特にABS樹脂などが好ましく使用される。
(A)成分である(共)重合体の通常分子量は約10,000〜40,000である。
【0022】
本発明において用いられるカルボニル基を有するスチレン系共重合体(B)は、通常のスチレンにカルボニル基(I)を有するモノマーをグラフト化したグラフト共重合体や、スチレンとカルボニル基を有する単量体を共重合して得られる共重合体であり、分子量は10、000〜35、000カルボニル基(I)を有するモノマーの含有量が0.1〜15重量%である。
【0023】
スチレンとグラフト共重合または共重合するカルボニル基を有する単量体としては例えば無水マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、アクリル酸等が挙げられる。
【0024】
本発明の方法で用いるカルボニル基(I)を有するスチレン系共重合体(B)と反応しうるエポキシ基(I)を有するエラストマー(C)は、エポキシ基を有すれば特に限定はないが、例えばエラストマーにエポキシ基を有するモノマーをグラフト重合する方法、エラストマー中に存在する不飽和結合に過カルボン酸を反応させてエポキシ化する方法、アニオン重合によりエラストマー部分を重合後にエポキシ基を有する化合物を反応又は重合する方法等により製造できる。
【0025】
(C)のエラストマーの構造は特に限定は無いが、例えばエチレン・プロピレンコポリマーゴム(EPR)、エチレン・ブテン−1コポリマーゴム(EBR)、プロピレン・ブテン−1コポリマーゴム(PBR)、エチレン・プロピレンジエンコポリマーゴム(EPDM)、エチレン・プロピレン・ブテンターポリマーゴム(EPBR)、スチレン・ブタジエンコポリマーゴム(SBR)、水添スチレン・ブタジエンコポリマーゴム(SEBR)等が例示される。
【0026】
エポキシ基(II)を有するグラフト重合するモノマーとしては分子中にグラフト重合できる二重結合とエポキシ基を有する化合物であれば使用できる。
【0027】
例えばグリシジルメタクリレート、N−[4−(2,3−エポキシプロピル)−3,5−ジメチルベンジル]メタクリルアミド、グリシジルアクリレート、N−[4−(2,3−エポキシプロピル)−3,5−ジメチルベンジル]アクリルアミド等が例示される。
【0028】
エポキシ基の含有量は(C)中の0.01〜25重量%、好ましくは0.1〜20重量%である。
【0029】
これらの(B)および(C)を合成する方法の一例として、通常ポリスチレンやエラストマーに反応性官能基(I)や(II)を有するモノマーをグラフト化する方法が挙げられる。
【0030】
例えば、溶液中でグラフト化する方法としては、キシレンやクロルベンゼン等の芳香族系の溶媒に、ポリスチレンやエラストマーと反応性官能基(I)または(II)を有するモノマー及び必要により触媒を溶解して90〜200℃の温度で0.5〜20時間攪拌しながら反応を行う。
【0031】
また、溶融混練時にグラフト化する方法として、ポリスチレンやエラストマーと反応性官能基(I)または(II)を有するモノマー及び必要により触媒を混合後、押出機や混練機を用いて180〜300℃の温度で加熱して溶融状態で0.1〜10分間混練することで得られる。
【0032】
これらのいずれの反応の場合にも触媒としては、通常に用いられているラジカル重合用開始剤が利用でき、このラジカル重合用開始剤として例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化ジクミル、過酸化ジクミルブチル、ペルオキシ安息香酸、過酸化アセチル、t−ブチルペルオキシ安息香酸、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(n−プロピル)ペルオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0033】
これらの触媒の使用量は通常、反応性モノマー100重量部に対して、0.1〜10重量部である。
【0034】
ここでポリスチレンあるいはエラストマーに対する反応性モノマーのグラフト量としては、それぞれ全体の0.1〜25重量%、好ましくは0.5〜20重量%である。
【0035】
本発明では、これらの(B)と(C)とをゴム変性ポリスチレン系樹脂(A)100重量部に対し(B)、(C)各々0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部の割合で加熱混合される。
【0036】
これらのカルボニル基を有するスチレン系共重合体(B)および(B)と反応しうる反応性モノマーを有するエラストマー(C)をゴム変性ポリスチレン(A)と共に200〜270℃で、例えば押出機等で加熱混合することにより、それぞれの反応性官能基である(I)と(II)が反応してゴムとポリスチレンのグラフト構造を形成するものと思われる。
【0037】
また、これらの加熱混合の際には必要に応じて、反応助剤として、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の酸触媒、ナトリウムメトキシド、トリエチルアミン等の塩基触媒あるいはテトラブトキシチタン、ジブチルスズジラウレート等のルイス酸触媒あるいはラジカル発生剤などを用いてもよい。触媒を用いる場合の添加量は、上記混合物に対して0.01〜5重量%程度である。
【0038】
反応助剤を添加することで樹脂組成物の耐衝撃性、剛性や強度が向上して好ましい。
【0039】
(B)と(C)の混合割合はそれぞれの含まれている反応性官能基(I)と(II)の割合により異なるが、お互いの官能基のモル比で表すと、通常、反応性官能基(II)1当量に対して(I)の割合が0.1〜100、に好ましくは0.5〜50、さらに好ましくは1〜15当量である。また、これらの量はさらにゴム変性ポリスチレン樹脂(A)100重量部に対し、(B)または(C)はそれぞれ好ましくは0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部の割合で加熱混合される。
【0040】
このような使用割合の上記範囲を上回ると、成形性が著しく低下し成形物の外観が悪化するだけで、格別その効果は増大しない。また下回る量では物性向上の効果がない。
【0041】
本発明の組成物には、さらに安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、界面活性剤などの通常ポリスチレン系樹脂に添加される各種添加剤を添加することができる。
【0042】
本発明において、上記各成分を混合する方法についても特に制限はなく、単に各成分をタンブラー、ヘンシェルミキサー等で予め混合し、ついで押出機、バンバリーミキサー等の溶融混練装置を用いてポリスチレン系樹脂組成物の融点以上、一般には融点以上〜280℃以下の温度で溶融混練する方法で行えば良い。
【0043】
【実施例】
以下に実施例を示し本発明をさらに説明する。
【0044】
実施例1
ABS樹脂(三井東圧化学(株)社製サンタックUT−61)100重量部、無水マレイン酸8.1重量%を含むスチレン・無水マレイン酸共重合体(SMA;三井東圧化学(株)社製ダイラーク232)8.4重量部およびエポキシ化ポリブタジエンゴム(エポキシ当量158〜178g/モル、エポリード4700)1.6重量部を(表1)に示した割合で加え、さらに酸化防止剤0.1重量部、ステアリン酸0.1重量部を加えヘンシェルミキサーで混合した後、押し出し機で250℃に加熱混合しペレットを得た。
【0045】
このペレットを用い射出成形機(日精樹脂工業(株)社製FE80S12ASE)でテストピースを成形し物性を測定した。結果は(表1)に示す。
なお、曲げ弾性率はASTM−D790、引張強度はASTM−D882、アイゾット衝撃強度はASTM−D256、光沢はASTM−D523、MFIはASTMD−1238に準拠して測定した。
【0046】
比較例1
スチレン・無水マレイン酸共重合体(SMA;三井東圧化学(株)社製ダイラーク232)およびエポキシ化リブタジエンゴム(実施例1使用のものと同じ)を混合せず、ABS樹脂(三井東圧化学(株)社製サンタックUT−61)だけを用いた他は実施例1と同様に行った。結果を(表1)に示す。
【0047】
比較例2
エポキシ化ポリブタジエンゴムを添加しなかった以外は実施例1と同様にして実験を行った結果を表1に示す。
【0048】
比較例3
スチレン・無水マレイン酸共重合体(SMA;三井東圧化学(株)社製ダイラーク232)100重量部、エポキシ化リブタジエンゴム(実施例1使用のものと同じ)19.0重量部を用いた他は実施例1と同様に行った。結果を(表1)に示す。
【0049】
実施例2
押し出し機での加熱混合時に触媒としてp−トルエンスルホン酸を(表1)に示した割合で添加した他は実施例1と同様に行った。結果は(表1)に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【発明の効果】
本発明の組成物は、従来公知の組成物に比較して耐衝撃性と光沢や流動性などのバランスが優れ、成形品の薄肉化を計ることも可能となり工業的に極めて価値がある。
Claims (3)
- ゴム変性ポリスチレン系樹脂(A)100重量部、カルボニル基を有するスチレン系共重合体(B)0.1〜20重量部および(B)と反応しうるエポキシ基(II)を有するエラストマー(C)0.1〜20重量部を加熱混合して得られるゴム変性ポリスチレン樹脂(A)よりも光沢に優れたポリスチレン系樹脂組成物。
- カルボニル基を有するスチレン系共重合体(B)がスチレン−無水マレイン酸共重合体である請求項1記載のポリスチレン系樹脂組成物。
- ゴム変性ポリスチレン系樹脂(A)、カルボニル基を有するスチレン系共重合体(B)、(B)中のカルボニル基(I)と反応しうる反応性官能基であるエポキシ基(II)を有するエラストマー(C)よりなる請求項1記載の組成物において、さらにルイス酸またはラジカル発生剤から選ばれた反応助剤の存在下で加熱混合してなるポリスチレン系樹脂組成物の製造方法。
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