JP3543047B2 - ハロゲン化銀乳剤およびハロゲン化銀カラー写真感光材料 - Google Patents

ハロゲン化銀乳剤およびハロゲン化銀カラー写真感光材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は写真の分野において有用であるハロゲン化銀(以下、「AgX」と記す)乳剤に関し、特に感度に優れ、かつ、処理液pH依存性、潜像保存性などに優れるハロゲン化銀乳剤を提供するものである。
本発明は、また、感度と画質の良好なハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
平板状AgX乳剤粒子を写真感光材料に用いた場合、非平板状AgX粒子に比べて、入射光が感光層を素通りしていく割合が減少し、光の捕捉効率が上昇し、かつ、画質(カバリングパワー、シャープネス、粒状性)、現像進行性、分光増感特性等が改良される。この為、互いに平行な双晶面を有し、主平面が{111}面である平板状粒子が多用されるようになった。しかし、{111}面は通常、殆んどがハロゲンイオン(以下X- )からなる面であるのに対し、{100}面はAg+ とX- が交互に配列した面であり、その前記写真特性がより優れる。従って、主平面が{100}面である平板状粒子が注目されている。該{100}平板粒子に関しては、特開昭51−88017号、特公昭64−8323号、特開平5−281640号、同5−313273号、同6−59360号、同6−324446号、欧州特許0534395A1号、米国特許5292632号、同5314798号、同5264337号に記載がある。本発明は従来の{100}平板粒子に対して、より優れた{100}平板粒子乳剤を提供するものである。該{100}平板粒子はそのエッジ方向への優先的成長を可能にする結晶欠陥を有する為に、平板状となるが、該欠陥形成法により生成する粒子の形状特性、写真特性が大きく異なる。また、該平板粒子の成長法によっても生成する粒子の形状特性、写真特性が大きく異なる。その為に、該欠陥の形成法の改良や該成長法の改良が注目されている。
欧州特許0534395A1号は{100}面形成を促進する吸着剤の存在下での該平板状粒子を形成する事を記載しているが、該方法は粒子形状、写真性において不満足な結果しか与えていない。
また、上記の従来の{100}平板粒子は、処理液pH依存性、潜像保存性の点で未だ実用的に不十分なレベルであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、感度/画質により優れ、処理液pH依存性、潜像保存性などに優れたAgX乳剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、感度/画質の良好なハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は次項によって達成された。
(1)少なくとも分散媒とハロゲン化銀粒子を有するハロゲン化銀乳剤において、該ハロゲン化銀粒子の全投影面積の60%以上が主平面が{100}面で、アスペクト比(直径/厚さ)が2.0以上100以下の、エピタキシャル接合された平板状粒子であり、かつ、該平板状粒子の非エピタキシャル接合部の主平面エッジの{100}側面により囲まれた直角平行四辺形、もしくはコーナーが欠けている場合は主平面エッジの{100}側面を延長することにより得られる直角平行四辺形の縦横比(長辺の長さ/短辺の長さ)が1〜6であり、該平板状粒子の非エピタキシャル接合部より溶解度の高いハロゲン化銀突起物によりエピタキシャル接合された平板状粒子であることを特徴とするハロゲン化銀乳剤。
(2)少なくとも分散媒とハロゲン化銀粒子を有するハロゲン化銀乳剤において、該ハロゲン化銀粒子の全投影面積の60%以上が主平面が{100}面で、アスペクト比(直径/厚さ)が2.0以上の異方成長性結晶欠陥を有する平板状粒子であり、かつ、該平板状粒子の主平面エッジの{100}側面により囲まれた直角平行四辺形、もしくはコーナーが欠けている場合は主平面エッジの{100}側面を延長することにより得られる直角平行四辺形の縦横比(長辺の長さ/短辺の長さ)が1〜6であり、浅い電子トラップとなる六配位ドーパントを結晶格子中に有することを特徴とするハロゲン化銀乳剤。
【0005】
(3)前記平板状粒子が異方成長性結晶欠陥を有し、該異方成長性結晶欠陥が転位線を有することを特徴とする(1)記載のハロゲン化銀乳剤。
(4)前記平板状粒子の結晶格子中に浅い電子トラップとなる六配位ドーパントを有することを特徴とする(1)または(3)項記載のハロゲン化銀乳剤。
)ハロゲン化銀乳剤が化合物A および/または化合物B の存在下で製造されることを特徴とする(1)〜()項のいずれかのハロゲン化銀乳剤。
ここで化合物A はAgBr粒子の{100}面の形成を促進する吸着剤が1分子中に2個以上、共有結合した有機化合物を表わし、化合物B はアルコール基(水酸基)を1分子中に2基以上有するゼラチン以外の有機化合物を表わし、かつ、両者はゼラチンおよびタンパク質以外の有機化合物を表わす。
)前記結晶欠陥が化合物A または化合物B がハロゲン化銀粒子に吸着した状態でAg とハロゲンイオンを添加することによって形成された欠陥であることを特徴とする(3)項記載のハロゲン化銀乳剤。
(7)前記平板状粒子が、Cl 、Br 、またはI 含率で10モル%以上のハロゲン組成差を有するハロゲン組成ギャップ界面を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀乳剤。
(8)前記結晶欠陥が、核形成時に、少なくとも一つのハロゲン組成ギャップ界面を形成することにより形成されることを特徴とする(2)または(3)項記載のハロゲン化銀乳剤。
)支持体上に青感光性乳剤層、緑感光性乳剤層、赤感光性乳剤層の少なくとも1つが感度の異なる感光性層を少なくとも2層以上有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該感色性層ユニットの最低感度層に(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)又は(8)の乳剤から選ばれる少なくとも1種を含有し、該感光性層ユニットの最高感度層に{111}主表面のアスペクト比2以上の感光性平板状ハロゲン化銀粒子よりなる乳剤を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0006】
その他、本発明の好ましい態様は次の通りである。
10)前記結晶欠陥形成が先ず、該欠陥を実質的に含まないAgX 核を形成し、次に該化合物A および/またはB を添加し、吸着させ、次にAg とハロゲンイオンを添加し、該AgX 核上に積層させることにより該欠陥が形成されることを特徴とする前記(3)項記載のハロゲン化銀乳剤。
11)該化合物A が、1種以上のエチレン性不飽和単量体の重合物であり、1分子中に2つ以上のイミダゾール基またはベンゾイミダゾール基を含有していることを特徴とする前記(1)〜()、(10)項記載のハロゲン化銀乳剤。
12)該化合物B が、分子量300以上で、1分子中のX 値(アルコール基数/全官能基数)が0.2〜1.0のポリビニルアルコールであることを特徴とする前記(1)〜()、(10)項記載のハロゲン化銀乳剤。
(1)該化合物A および/または化合物B の存在濃度が、平衡晶癖電位シフト量を10mV以上にする濃度であることを特徴とする前記(1)〜()、(10)〜(1)項記載のハロゲン化銀乳剤。
(1支持体上に青感光性乳剤層、緑感光性乳剤層、赤感光性乳剤層の少なくとも1つが感度の異なる感光性層を少なくとも2層以上有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該感色性層ユニットの最低感度層に(10)〜(13)の乳剤から選ばれる少なくとも1種を含有し、該感光性層ユニットの最高感度層に{111}主表面のアスペクト比2以上の感光性平板状ハロゲン化銀粒子よりなる乳剤を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に本発明を更に詳細に説明する。
前記化合物A0 は一般式(1) で表わされ、化合物B0 は一般式(2) で表わされる。a〜eは各成分の重量百分率を表わす。従って、a+b=100、d+e=100である。これらの化合物から順に説明する。
一般式(1) −(A)a −(B)b
一般式(2) −(D)d −(E)e
【0008】
(I)化合物A0
化合物A0 は、AgBr粒子の{100}面の形成を促進する吸着剤C0 を1分子中に、2個以上、好ましくは4〜103 個、より好ましくは8〜100個、更に好ましくは20〜100個、共有結合した有機化合物を表わす。ここで該化合物A0 とは、次の特性を有する化合物を指す。
先ず、従来の写真用ゼラチンの存在下で、平均直径約0.2μmの正常晶AgBr乳剤粒子を形成する。該乳剤から種晶としてN0 個の等量のサンプル乳剤を取り出す。従来の写真用ゼラチン分散媒水溶液中にその1つを入れ、60℃で、Ag+ とBr- を銀電位を一定値に保ちながらダブルジェットで添加し、新核を発生させずに平均直径約1.0μmに成長させる。種々の銀電位で同様の実験をし、銀電位、対、粒子形状、の関係を求める。一方、C0 を前記態様で共有結合した(吸着剤残基を結合した)化合物A0 を該水溶液中のゼラチン重量の30重量%だけ添加し、同様の実験をし、銀電位、対、粒子形状、の関係を求める。該粒子成長開始時の該水溶液のゼラチン量は18g/リットルである。Ag+ の添加量は、AgNO3 で70gである。pHは、A0 のpKa値以上の一定値、好ましくは(pKa+0.5)である。ここでpKa値は酸解離定数値を示す。銀電位は、室温飽和カロメル電極に対する銀棒の電位を示す。銀電位はその他、銀棒の代りに、AgBr電極、AgI電極、Ag2 S電極、またはそれらの2種以上の混晶電極を用いる事ができる。但し、両者の比較実験は、化合物A0 の有、無以外は、同一条件で行なわれる。
【0009】
両者の比較をした場合、同一形状の14面体粒子が得られる銀電位が、後者では、ゼラチン系に比べて10mV以上、好ましくは20〜150mV、より好ましくは30〜120mV、最も好ましくは50〜100mVだけ、低電位側にシフトした関係を与える。ある化合物をある量だけ存在させる事により、このような低電位シフトが生じた場合、その電位シフト量を本発明では、平衡晶癖電位シフト量と呼ぶ。該14面体粒子は、好ましくは、立方体粒子の各角が、平均で一辺長の30%だけ欠落した14面体粒子であり、該粒子形状の平面図は図1で表わされる。該銀電位測定のその他の詳細に関しては、宗森信ら訳、イオン選択性電極、共立出版(1977年)、電気化学便覧、第5章、丸善(1985年)の記載を参考にする事ができる。
【0010】
ここで、吸着剤C0 は共鳴安定化したπ電子対を有する窒素原子Nを少なくとも1個有する有機化合物であり、まず1)Nを環内に含む複素環化合物を挙げる事ができる。環内にNを1個のみ、ヘテロ原子として含む、置換可能な飽和または不飽和の複素環(例えばピリジン、インドール、ピロリジン、キノリン等)、Nを1個と、N、Oから選ばれる1個以上のヘテロ原子を環内に含む、置換可能な飽和または不飽和の複素環(例えばイミダゾリン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、ピペラジン、トリアゾール、テトラゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、ピリミジン、ピリミダゾール、ピラジン、トリアジン、テトラジン、ベンズイミダゾール等)を挙げる事ができる。
【0011】
その他、2)芳香族環に置換したN原子グループ基を有する (3)式で表わされる有機化合物を挙げる事ができる。ここでArは炭素原子数5〜14個からなる芳香族環で、好ましくは炭素環からなる芳香族環である。R1 とR2 はそれぞれ、H、Ar、脂肪族基、または一緒に5もしくは6員環を構成する例えばアニリン、α−ナフチルアミン、カルバゾール、1,8−ナフチリディン、ニコチン、ベンゾキサゾール等を挙げる事ができる。その他の詳細に関しては欧州特許0534395A1、特開平6−19029号の記載を参考にする事ができる。これらの化合物の中でより好ましいものはイミダゾール、ベンゾイミダゾールである。
【0012】
化合物A0 は、(4) 式で表わされる重合可能なエチレン性不飽和単量体を2分子以上重合させる事により、または(5) 式で表わされる重合可能なエチレン性不飽和単量体との共重合により形成される。(4) 式で表わされる単量体は1種のみであってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。前記態様を満たす割合で共重合すればよい。(4) 式中のC1 は化合物C0 が該単量体に結合した時の残基を表わす。(5) 式中のd1 は官能基(例えば、後述する具体的化合物におけるアミド、モルホリン、ピロリドン、スルホン酸、スルフィン酸、カルボン酸等を表わす。)を表わす。(5) 式の化合物は該共重合し、BやEの部分を構成する。
【0013】
【化1】
Figure 0003543047
【0014】
ここでR3 、R4 は水素原子または炭素数1〜10、好ましくは1〜5のアルキル基を表わす。
【0015】
(4) 式の化合物の具体例として次の化合物を挙げる事ができる。ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、4−アクリルアミドピリジン、N−アクリロイルイミダゾール、N−2−アクリロイルオキシエチルイミダゾール、4−N−(2−アクリロイルオキシエチル)アミノピリジン、1−ビニルベンゾイミダゾール、N−ビニルベンジルイミダゾール、N−メタクリロイルオキシエチルピロリジン、N−アクリロイルピペラジン、1−ビニルトリアゾール、3,5−ジメチル−1−ビニルピラゾール、N−メタクリロイルオキシエチルモルホリン、N−ビニルベンジルピペリジン、N−ビニルベンジルモルホリンのような塩基性窒素原子を含む複素環式基を有する単量体。
【0016】
Bを形成しえる共重合可能なエチレン性不飽和単量体として、好ましいものは、その単独重合体が酸性、中性、アルカリ性の水溶液のいずれかに可溶なものである。具体的化合物例として、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−エチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミドのような非イオン性単量体、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、ビニル安息香酸、スチレンスルホン酸、スチレンスルフィン酸、ホスホノキシエチルアクリレート、ホスホノキシエチルメタクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アクリルアミドプロピオン酸のようなアニオン性基を有する単量体、またはその塩、あるいは、N,N,N−トリメチル−N−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリメチル−N−3−アクリルアミドプロピルアンモニウムクロライドのようなカチオン性基を有する単量体を挙げる事ができる。
【0017】
Bはこれらの1種または2種以上の共重合体である。また、Bの中には、(1) 式の分子全体の水溶性を損なわない範囲内で他の疎水性のエチレン性不飽和単量体を共重合する事もできる。
例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、スチレン、α−メチルスチレン、メチルビニルケトン、脂肪族酸のモノエチレン性不飽和エステル(例、酢酸ビニル、酢酸アリル)、エチレン性不飽和のモノカルボン酸もしくはジカルボン酸のエステル(例、メタクリル酸エステル)、エチレン性不飽和のモノカルボン酸アミド(例、t−ブチルアルリルアミド)、モノエチレン性不飽和化合物(例、アクリロニトリル、メタクリロニトリル)、ジエン類(例、ブタジエン、イソプレン)。
(1) 式においてaは(0.002〜1.0)×100、好ましくは(0.01〜0.8)×100、より好ましくは(0.05〜0.7)×100、更に好ましくは(0.15〜0.6)×100である。化合物A0 の分子量は150〜106 、好ましくは300〜3×105 、より好ましくは103 〜3×105 である。
(4) 式においてC1 とエチレン性不飽和単量体の化学結合は、後述の(5) 式の如く、直接に結合した態様の他、 H2C=C(H)-L-C1 の如く2価の連結基Lを介して結合する事もできる。例えば H2C=C(H)-CONH-C1や H2C=C(H)COO-C1の態様を挙げる事ができる。該2価の連結基、その結合様式の詳細に関しては特開平3−109539号、同4−226449号の記載を参考にする事ができる。
化合物A0 は、より一般的に記すと、C1 基を有する重合可能なモノマーが2分子以上、好ましくは4〜103 分子、より好ましくは8〜100分子、更に好ましくは20〜100分子重合された態様の重合体である。C1 基を有する重合可能なモノマーを重合する事により、または即に存在する重合体にC1 基を結合させる事により形成する事ができる。重合方法としては付加重合、縮重合、重付加重合、開環重合、付加縮合を挙げる事ができ、好ましくはビニル化合物、ビニリデン化合物、ジエン化合物の付加重合であり、より好ましくは、ビニル化合物の付加重合である。その詳細に関しては、新実験化学講座19、高分子化学〔I〕、丸善(1978年)、第4版実験化学講座28、29、丸善(1992年)の記載を参考にする事ができる。該モノマーはC1 基を1基以上、好ましくは1〜3基、より好ましくは1基有する。C1 基は重合物の主鎖上にはなく、枝として結合している。化合物A0 は好ましくは、1種以上のエチレン性不飽和単量体の重合物であり、1分子中に2個以上、好ましくは4〜103 個、より好ましくは8〜100個、更に好ましくは20〜100個のイミダゾール基、またはベンゾイミダゾール基を有している。
【0018】
(II)化合物B0
化合物B0 は分子量が好ましくは90以上、より好ましくは300〜106 、更に好ましくは103 〜105 、最も好ましくは3000〜105 であり、1分子中にアルコール基を2基以上、好ましくは4〜105 基、より好ましくは10〜104 基、最も好ましくは30〜103 基または100〜103 基を有するゼラチンおよびタンパク質以外の化合物である。更には1分子中の(アルコール基数/全官能基数)=x1 が好ましくは0.05以上、より好ましくは0.2〜1.0、更に好ましくは0.4〜1.0であり、最も好ましくは0.6〜1.0である。ここで官能基とは、メチル基等の炭化水素残基よりも反応性に富む残基を指し、ヘテロ原子基、またはヘテロ原子を含む原子団を指す。また、1分子中における(全アルコール基の総質量/1分子の総質量)=x2 は0.01〜0.6が好ましく、0.05〜0.55がより好ましく、0.1〜0.5が最も好ましい。
【0019】
具体的化合物例としては、1)炭水化物をあげる事ができる。炭水化物は前記分子量規定を満たす多糖類であり、構成糖が1種類からなるホモ多糖、2種以上からなるヘテロ多糖を挙げる事ができる。構成糖としては(CH2 O)n の分子式をもつ、n=5〜7の単糖、糖アルコール、−CHO基の代わりに−COOH基をもつアルドン酸、−CH2 OH基が−COOH基となったウロン酸、アミノ糖をあげる事ができる。その他、糖誘導体(ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン、配糖体等)を挙げる事ができる。核酸を除く炭水化物が好ましく、配糖体を除く炭水化物がより好ましい。
炭水化物の具体例として、でんぷん質(かんしょでんぷん、ばれいしょでんぷん、タピオカでんぷん、小麦でんぷん、コーンスターチ)、こんにゃく、ふのり、寒天、アルギン酸ナトリウム、トロロアオイ、トラガント、ゴム、アラビアゴム、デキストラン、デキストリン、レバンを挙げる事ができ、ガラクトース(カンテン等)が好ましい。
【0020】
2)多価アルコール。アルカンポリオールとも称され、具体例としてグリセリン、グリシトール、エチレングリコールを挙げる事ができる。
3)(2) 式で表わされる重合体であり、式中Dは少なくとも1つのアルコール基を有するエチレン性不飽和単量体から形成される繰返し単位を表わす。Eはエチレン性不飽和単量体から形成されるD以外の繰返し単位を表わす。d、eは各成分の重量百分率を表わし、dは5〜100、好ましくは20〜100、より好ましくは40〜100、eは0〜95、好ましくは0〜80、より好ましくは0〜60である。Eを形成しえるエチレン性不飽和単量体としては、前記のBを形成しえるエチレン性不飽和単量体、および前記(4) 式で表わされる単量体を挙げる事ができる。
【0021】
3)の化合物として、より好ましい具体例は、酢酸ビニルとポリビニルアルコールの共重合体であり、その共重合比は、ポリ酢酸ビニルのケン化率の調節で選ぶ事ができる。
(1) 式および(2) 式で表わされる化合物のその他の詳細、およびそれらの重合方法に関しては、例えば鶴田禎二「高分子合成反応」改訂版、日刊工業新聞社(1971年)、大津隆行ら著、「高分子合成の実験法」、化学同人、124〜154頁(1972年)、特開平6−19029号および後記水溶性高分子の文献の記載を参考にする事ができる。
【0022】
1)〜3)の化合物は2種類以上を、好適な割合を選んで併用してもよい。これらの化合物はそのまま、粉末または溶液状態で反応溶液中に添加してもよく、酸性、中性、またはアルカリ性の水に溶かしてから添加してもよい。1)〜3)の化合物のその他の詳細に関しては、長友新治編、新・水溶性ポリマーの応用と市場、シーエムシー(1988)、経営開発センター出版部編、水溶性高分子・水分散型樹脂総合技術資料集、経営開発センター出版部(1981)、三沢忠則編、新増補三版、水溶性高分子、化学工業社(1990)、C. A. Finch 編、ポリビニルアルコール、John Wiley & Sons (1992年)の記載を参考にする事ができる。
【0023】
(III) AgX乳剤の物理特性
前記(1)〜(4)において、投影面積とはAgX乳剤粒子を互いに重ならない状態で、かつ、平板状粒子は主平面が基板面と平行になる状態で基板上に配置した時の粒子の投影面積を指す。本発明のAgX乳剤は少なくとも分散媒とAgX粒子を有するAgX乳剤であり、該AgX粒子の投影面積の合計の60%以上、好ましくは70〜100%、より好ましくは90〜100%が主平面が{100}面で、アスペクト比(直径/厚さ)が2以上の平板状粒子であり、好ましくは2.0以上100以下であり、より好ましくは2.0以上20以下であり、特に好ましくは4.0以上20以下である。
該平板状粒子の直径とは粒子を電子顕微鏡で観察した時、粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径を指すものとする。また厚さは平板状粒子の主平面間の距離を指す。該厚さは0.5μm以下が好ましく、0.03〜0.3μmがより好ましく、0.05〜0.2μmが更に好ましい。該平板状粒子の円相当投影粒径は10μm以下が好ましく、0.2〜5μmがより好ましい。該平板状粒子のハロゲン組成に特に制限はなく、あらゆる組成が可能であるが、I- 含率は20モル%以下が好ましく、0〜10モル%がより好ましい。該粒子の直径分布は単分散であることが好ましく、該分布の変動係数(標準偏差/平均直径)は0〜0.4が好ましく、0〜0.3がより好ましく0〜0.2が更に好ましい。
該粒子のアスペクト比は2.0以上100以下であり好ましくは2.0以上20以下である。
【0024】
主平面とは、平板状粒子の最大外表面、および、最大外表面と互いに平行なもう一方の大きな外表面を指す。該平板状粒子の投影輪郭形状(平板状粒子の主平面を基板面に平行に置いた時の図1の平面図におけるエッジ面のアウトライン形状)は次の通りである。▲1▼直角平行四辺形、▲2▼直角平行四辺形の4つの角の内の1つ以上が非等価的に欠落した形(詳細は特願平4−145031号、同5−264059号の記載を参考にすることができる)である態様、▲3▼直角平行四辺形の4つの辺の内の少なくとも相対する2つの辺が外側に凸の曲線である態様、▲4▼該4つの角が等価的に欠落した態様〔1つの粒子内で主平面の(最大欠落部面積/最小欠落部面積)<2の態様〕を挙げることができる。
【0025】
その他、▲5▼主平面とエッジの{100}面との間に{n10}面を有する態様、を挙げる事ができる。ここでnは1〜5の整数であり、好ましくは1であり、平板粒子の全表面に対する該{n10}面の面積比率は0.1〜30%が好ましく、1〜15%がより好ましい。前記▲2▼、▲4▼の場合、該欠落部のエッジ面は{111}面、{n10}面、またはその両面を持つ場合を挙げる事ができる。nは前記規定に従う。好ましくは▲1▼、▲2▼の態様である。
該平板状粒子のエッジの{100}面により囲まれた直角平行四辺形、もしくはエッジの{100}面を延長する事により形成された直角平行四辺形の縦横比は1〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3、最も好ましくは1〜2である。前者の直角平行四辺形は、該平板状粒子の投影アウトライン形状に該当し、後者の直角平行四辺形は、該平板状粒子の{100}面外接直角平行四辺形に該当する。
【0026】
また、本発明では、(該縦横比>6)の粒子、および/またはそのような形状の粒子の少なくとも2つ以上が直角あるいは平行に接合して成る結晶粒子は全AgXの18重量%以下、好ましくは0〜15%、より好ましくは0〜10%、最も好ましくは0〜2%である。
該平板粒子全体のハロゲン組成はAgBrCl、AgBr、AgBrI、AgClIおよびそれらの混晶であり、I- 含率は0〜20モル%が好ましく、0〜10モル%がより好ましい。AgCl含率は0〜50モル%が好ましく、1〜10モル%がより好ましい。
【0027】
該平板粒子の粒子内のハロゲン組成分布に関しては、特開平6−59360号、同5−313273号、特願平6−47991号、同5−27411号の記載を参考にする事ができる。該明細書の粒子構造の図面において、白地部と斜線部間で、Br- 含率、またはCl- 含率が1〜70モル%、好ましくは5〜50モル%異なる態様、またはI- 含率が0.3〜30モル%、好ましくは1〜20モル%異なる態様をあげる事ができる。該粒子構造の斜線部は少なくとも3原子層以上の厚さを示す。これらのハロゲン含率や該斜線部の厚さ分布は粒子内および粒子間で実質的に均一に分布している事が好ましい。
その他、粒子表面層のSCN- またはI- 含率が0.1モル%以上、好ましくは0.5〜50モル%の態様を挙げる事ができる。また、該粒子表面層のBr- 含率が1〜100モル%、好ましくは5〜80モル%の態様を挙げる事ができる。ここで粒子表面層とは表面から1〜1000原子層、好ましくは1〜3原子層の部分を指す。これらの含率および表面層の厚さは粒子表面および粒子間において実質的に均一に分布している事がより好ましい。
これらの実質的に均一とは、該含率のバラツキの変動係数(標準偏差/平均含率)が、好ましくは0〜0.4、より好ましくは0〜0.2、更に好ましくは0〜0.1を指す。
その他、粒子表面上で不均一に分布した態様(該変動係数>0.4)を挙げる事ができる。特に粒子のエッジ部や角部とその近傍がもり上った態様を挙げる事ができ、例えば米国特許第5275930号の記載を参考にする事ができる。
【0028】
(IV)該平板状粒子の形成
(IV)−1.種形成過程
該平板状粒子はそのエッジ方向への優先的成長を可能にする結晶欠陥(異方成長性結晶欠陥)を有する為に、平板状となる。該欠陥は平板状粒子の種形成時に形成される。該欠陥形成法として次の方法を挙げる事ができる。
1)化合物A0 および/もしくはB0 を含む水溶液中にAg+ とX- を添加する。この場合、生成したAgX核に該化合物が吸着し、更に該核上にAg+ とX- が積層する時に該欠陥が生じる。その他、添加したAg+ やX- と、該化合物が錯体を形成し、該錯体がAgX核に取り込まれた時に該欠陥が生じる事もある。
2)先ず、分散媒水溶液中で該欠陥を実質的に含まないAgX0 核を形成し、次に該化合物を添加し、該化合物をAgX0 核に吸着させる。次にAg+ とX- を添加し、該AgX核上に積層させる事により、該欠陥を形成する。ここで実質的にとは、AgX0 核が含む該欠陥量が、全種形成時に形成される該欠陥量の好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜5%、最も好ましくは0〜1%を指す。
該化合物の添加は、Ag+ とX- を添加しながら添加する事もできるし、Ag+ とX- の添加を停止した後に添加する事もできる。該化合物を添加した後、更に同一温度で、次のAg+ とX- を添加する事もできるし、または3℃以上、好ましくは5〜70℃、より好ましくは10〜60℃だけ昇温した後に、Ag+ とX- を添加し、該欠陥を形成する事もできる。後者の方がより好ましい。それぞれ最も好ましい条件を選んで添加する事ができる。
【0029】
3)AgX種を形成する時に、核内にハロゲン組成ギャップ界面を形成し、結晶格子歪を形成し、該欠陥を形成する。例えばAg+ とXa- を添加し、まず、AgXa核を形成し、次に、Ag+ とXb- を添加し、(AgXa|AgXb)種を形成する。この場合、Xa- とXb- はCl- 含率、またはBr- 含率、またはI- 含率で10〜100モル%、好ましくは30〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%だけ異なる。ここで、Xa- とXb- は添加したハロゲン塩溶液のハロゲン組成を指す。種中に該ギャップ面を1つ以上、好ましくは1〜5個、より好ましくは2〜4個形成する。(AgXa|AgXb)の形成方法としてはその他、AgXa核を形成後、Xc- のみ、またはモル量で(Xc- >Agc+ )、好ましくは(Xc- >2Agc+ )、より好ましくは(Xc- >5Agc+ )の割合でXc- とAgc+ を添加する方法があり、より好ましい。ここで(Xc- >2Agc+ )はXc- の添加モル量がAgc+ の添加モル量の2倍以上である事を示す。また、AgXcの溶解度はAgXaの溶解度の1/1.5以下が好ましく、1/3以下がより好ましく、1/8以下が更に好ましい。この場合、添加したXcとAgXa間でハロゲンコンバージョン反応が起こり、(AgXa|AgXc)が形成される。
【0030】
該X- の添加方法として、Cl2 、Br2 、I2 の単独、または複数を添加し、次に還元剤を添加し、X- を発生させる方法も用いる事ができる。それらは気体、水溶液、固体、包接化合物のいずれの態様で添加する事もできる。更にはX2 +X- →(X3)- の態様で添加する事もできる。例えば、(I3)- の水溶液を挙げる事ができる。該還元剤としては、X2 +2電子 2X- の標準電極電位よりもより負の標準電極電位を与える還元剤を添加すればよい。写真的に不活性な還元剤が好ましく、H2 SO3 が好ましい。前記炭水化物との混合水溶液として添加する事もできる。
その他、Br- またはI- 放出剤を該反応溶液中に添加した後、Br- またはI- を放出させる方法を用いる事ができる。該手法に関しては特開平6−19029号、欧州特許0561415A号、米国特許5061615号の記載を参考にする事ができる。
その他、まず、AgXa核を形成し、次にAgXb微粒子を添加し、熟成し、(AgXa|AgXb)ハロゲン組成ギャップを形成する方法。ここでXaとXbは前記規定に従う。また、AgXb微粒子は粒子直径0.15μm以下、好ましくは0.003〜0.07μm、より好ましくは0.005〜0.05μmの微粒子を指す。
【0031】
4)その他、核形成前に、分散媒水溶液中にI- を入れておく方法、および/または核形成時に添加するAg+ とX- の内、X- の方をI- とCl- を含む溶液とする方法を挙げる事ができる。前者の場合、I- の添加量は10-5〜10-1モル/リットル、好ましくは10-4〜10-2モル/リットルである。後者の場合、I- 含率は30モル%以下が好ましく、0.1〜10モル%がより好ましい。該Cl- 含率は30モル%以上が好ましく、50モル%以上が更に好ましい。
これらの場合の該欠陥形成量は、最終的に生成したAgX粒子の形状を見て、最適量を決める事が好ましい。該欠陥形成量が少なすぎると、該AgX中の平板状粒子の個数比率が少なくなる。多すぎると、1粒子中に多数の欠陥が入り、低アスペクト比粒子の個数比率が増す。従って、平板状粒子の投影面積比率が好ましい比率になる該欠陥形成量を選ぶ事が好ましい。1)、2)の場合は、該化合物の添加量を増す程、またゼラチンの濃度が低下する程、また、該化合物の吸着力が増す程、該欠陥形成量が増す。3)の場合は該ギャップ差が大きくなる程、また、該コンバージョン量が多くなる程、またAgXaまたはAgXbの添加量が多くなる程、該欠陥形成量が増す。4)の場合は、該I- 量を増す程、該欠陥形成量が増す。
これらの場合、該欠陥形成量は反応溶液のpHやX- 濃度にも依存する。従って、好ましいpH値、X- 濃度を選ぶ事ができる。該3)の場合、ハロゲンコンバージョン反応はAgXa核のエッジ部やコーナー部で優先的に起り、そこで該欠陥が優先的に形成される。
1)〜4)の方法の内、1)〜3)が好ましく、1)、2)がより好ましく、2)が最も好ましい。2)は低pH条件(pH=1〜6)においても有効に作用する為、より薄板化に有利な為である。なお、本願で核とは微細なAgX粒子を指す。
【0032】
(IV)−2.熟成、成長過程、本発明の粒子形成態様
このようにして、該結晶欠陥を含む種を形成した後、好ましくは次に熟成過程に入る。具体的には、5℃以上、好ましくは10〜70℃、より好ましくは20〜70℃だけ昇温し、オストワルド熟成し、非平板状粒子を消滅させ、平板状粒子を成長させる。Ag+ とX- を低速度で添加しながら該熟成を行う事もできる。その他、X- 濃度を上げたり、AgX溶剤を添加して、AgX溶解度を上げて該熟成を行う事もできる。この時の反応溶液のpHは1〜11、好ましくは1.7〜9の好ましい値を選ぶ事ができる。該AgX溶剤に関しては後述の文献の記載を参考にする事ができる。AgX溶剤の添加量は0〜10-1モル/リットル、好ましくは0〜10-3モル/リットルであり、該熟成後にAgX溶剤を失活させる事もできる。例えばNH3 の場合はNH4 +にかえ、チオエーテル化合物の場合は、チオエーテル基を酸化する事により失活させる事ができる。
該熟成により平板状粒子の個数比率は好ましくは1.5倍以上、より好ましくは3〜500倍、更に好ましくは6〜200倍に高められる。該平板粒子比率を高めた後、次に成長過程に入る。本発明の平板状粒子の粒子形成態様は次の様に分類される。
【0033】
(1) (IV)−1項の1)または2)の態様の種形成(→該吸着剤の吸着力を弱める処置→熟成)→成長。但し、( )内の1つ以上の工程を適宜、抜く事もできる。
(2) (IV)−1項の3)、4)の態様の種形成→熟成→成長。適度な吸着力の前記吸着剤A0 および/またはB0 を熟成前から成長終了の5分前までの期間に、好ましくは熟成後で成長前に添加する事ができる。
ここで該吸着剤の吸着力を弱める処置について説明する。▲1▼該吸着剤がA0 の場合、pHを該吸着剤の(pKa+0.5)以下、好ましくは(pKa+0.2)以下、より好ましくはpKa〜(pKa−4.0)に下げる。▲2▼該吸着剤がB0 の場合、反応溶液のpH、X- 濃度を選ぶ事により、該吸着力を弱める事ができる。多くの場合、反応溶液のpH値を下げる程、またX- 濃度を上げる程、該吸着力が弱くなる。pH値を下げる事により、アルコール基が−OH2 +に変化する事、アルコール基がハロゲン化水素と反応し、R−OH+HX→R−X+H2 Oに変化する事、等が効くものと考えられる。▲3▼その他、H22 、KMnO4 等の酸化剤を加えて、アルコール基をアルデヒドやカルボン酸に酸化する方法、▲4▼アルコール基をエステル化する方法、▲5▼脱水反応させる方法、▲6▼三ハロゲン化リンと反応させる方法、等がある。これらの詳細に関しては、モリソンボイド有機化学,第6版,第6章,東京化学同人(1994年)、S. Patai編, The Chemistry of the hydroxyl group, Interscience Publishers(1971年)の記載を参考にする事ができる。
【0034】
その他、これは吸着剤A0 およびB0 の両方に対して有効な処置であるが、▲7▼該欠陥形成を抑制する分散媒を添加する。例えばゼラチンを添加する。この場合、(ゼラチン重量/吸着剤重量)比を0.1以上、好ましくは0.3〜300倍、より好ましくは1〜100倍に上げる。▲8▼昇温する。昇温すると、一般に(吸着 脱着)平衡が右にずれる。好ましくは5〜60℃、より好ましくは10〜50℃だけ昇温する。▲9▼該吸着剤の一部もしくは全部(好ましくは10〜100%、より好ましくは20〜90%)を系外に除去する。例えば遠心分離法、限外濾過膜による濾過法を挙げる事ができる。この場合、▲7▼の化合物、例えば、ゼラチンを添加した後に除去する方法がより好ましい。該分散媒およびゼラチンは従来公知の写真用分散媒の中から好ましいものを選ぶ事ができ、後述の文献の記載を参考にする事ができる。これらの処置により、成長時における該欠陥形成を実質的に無くす事ができる。
本発明では、前記(2) の態様においても、成長中の該欠陥形成は実質的に行なわれない事が好ましい。ここで実質的にとは、成長時に生成する該欠陥の量が、成長直前に存在する該欠陥の量の30%以下、好ましくは0〜10%、より好ましくは0〜2%を指す。この場合、粒子成長時の形状制御能は残しておく事が好ましい。該吸着剤の吸着力を弱めていくと、先ず、該欠陥形成能がなくなり、更に弱めていくと形状制御能も弱くなり、通常のゼラチンと同等の形状制御能となる。従って適度に吸着力を弱める事により、該態様が得られる。ここで形状制御能とは、前記の銀電位、対、AgBr粒子の形状、の関係が、ゼラチン系に比べて10mV以上、好ましくは20〜150mV、より好ましくは30〜120mV、最も好ましくは50〜100mVだけ低電位側にシフトした関係を与える能力を指す。
【0035】
(2) の場合、添加した吸着剤は、該欠陥形成剤としてではなく、形状制御剤として作用する。形状制御能を更に直接的に説明すると次の通りである。該制御剤が存在する事と下記以外は同じ条件にして該平板状粒子を成長させた場合、存在しない場合に比べて成長中の厚さ増加が、80%以下、好ましくは0〜60%、より好ましくは0〜30%になる態様を指す。但し、反応溶液のpHはそれぞれ独立に、1〜11の内、最適の条件(最も厚さ増加が抑えられる条件)を選ぶ事ができるものとする。また、X- 濃度も自由に選択できる場合、同じ厚さの平板状粒子を生成するX- 濃度条件は、該存在しない場合に比べて、1.5倍以上、好ましくは2〜100倍になる。
【0036】
化合物C0 の存在下で該平板状粒子を形成する事は、欧州特許0534395A1号に記載されている。しかし、1分子中に化合物C0 を2個以上共有結合させた化合物A0 の方が、その効果はより優れる。それは化合物C0 がAgX粒子の{100}面上に吸着した時の吸着エネルギーをEC0 とすると、1分子中に化合物C0 をn個だけ結合させた化合物A0 のそれは、約nxEC0 になる為と考えられる。即ち、EC0 が小さくても、該nの値を選ぶ事により、吸着力をほぼ自由に選ぶ事ができる為と考えられる。この為に該結晶欠陥形成時には、強い吸着力態様が実現できる。一方、成長時には例えばA0 のpKa値以下のpHに調節する事により、該吸着力を弱める事ができる。(pKa−1.0)以下のpHに下げれば、該吸着力を殆んどなくする事もできる。従って、該吸着力をより広い範囲で自由に調節できるという利点があり、より優れた効果を得る事ができる。
前記(2) の態様の如くA0 を成長時に存在させる時は、はじめから弱い吸着力のC0 を選び、nを大きく選ぶ事により、新たな欠陥形成がなく、成長抑制も小さく、かつ、粒子形状は制御される態様を実現する事ができる。これらは図2に示す如く、1分子としては吸着サイトを多数有し、吸着態様は保たれ、粒子形状制御能は保持しているが、各吸着サイトの吸着力は弱い為、各サイトは、頻繁に吸着、脱着をくり返し、この脱着時にAg+ とX- の積層が可能になる為であると考えられる。
【0037】
一方、化合物B0 もAgX粒子に強く吸着し、該結晶欠陥を形成する事ができるし、成長時には、該欠陥を実質的に形成させないで、成長特性を制御する事ができる。該多価アルコール化合物による該欠陥形成作用、および、該平板状粒子の成長時の形状制御作用は従来、知られていなかった事であり、かつ、化合物A0 よりも、その効果がより優れている。この場合、1分子中のアルコール基の数を増す程(従って分子量も増す)、また、x1 値が増す程、吸着力が増す。従ってこれらの値を調節する事によっても、該吸着力を調節する事ができる。
吸着剤A0 、B0 いずれの場合も1分子中で、非吸着性水溶性官能基の比率が高くなる程、吸着力は弱まる。非吸着性水溶性官能基は、該吸着剤が反応溶液中で非吸着状態で自由に泳ぎ回ろうとするのを助ける。吸着剤A0 とB0 は両者を好ましい割合で併用して用いる事もできる。
【0038】
該多価アルコール化合物のAgX粒子表面への吸着態様は複雑である。該C0 がpKa以上のpH条件下で添加された場合、該C0 はAgX粒子表面のAg+ サイトに吸着し、AgX粒子のイオン伝導度(σi )を下げるが、化合物B0 がAgX粒子に吸着した場合は、立方体AgBr粒子、八面体AgBr粒子、立方体AgCl粒子のいずれの粒子のσi も上昇させた。このような吸着剤〔{100}面の形成を促進して、かつ、粒子のσi を上昇させる吸着剤〕は知られていなく、新しい現象である。特に立方体AgBr粒子のσi の上昇は2倍以上であった。従って、粒子表面のX- とも強く相互作用する事により、強力な形状制御性を発揮するものと考えられる。但し該σi の測定には誘電損失法を用いた。
本発明では該欠陥形成は粒子成長開始以前に実質的に終了している事が好ましい。粒子成長開始以前に添加される銀塩量は、粒子形成全体で添加される総銀塩量の1/2以下が好ましく、1/4以下がより好ましい。
該種、形成時、および該成長時には、該吸着剤単独で用いるよりは、ゼラチンを併用して用いる事がより好ましい。ゼラチンは公知のゼラチンを用いる事ができ、好ましくは0.05〜10g/リットル、より好ましくは0.2〜5g/リットル、(該吸着剤重量/ゼラチン重量)比は好ましくは0.01〜0.9、より好ましくは0.03〜0.5、更に好ましくは0.06〜0.3である。
該種晶形成時の温度は10〜90℃が可能であるが、該1)、2)の該欠陥形成時の温度は30〜90℃が好ましく、40〜85℃がより好ましい。化合物B0 のAgCl微粒子に対する欠陥形成能は50〜85℃領域ではpH4近傍が最大で、そこから離れるにつれ、低下する。
【0039】
(V)その他
本発明で種形成期間とは、AgX核形成開始から昇温開始までの期間を指し、熟成期間とは、昇温開始から成長開始までの期間を指し、成長期間とは成長開始から成長終了までの期間を指す。種形成期間、熟成期間および成長期間のpHは1〜11、好ましくは1.7〜9、X- 濃度は10-0.9モル/リットル以下、好ましくは10-4〜10-1.2、の組合せの中から最も好ましい組合せ条件を選ぶ事ができる。
前記酸化剤および還元剤に関しては、化学辞典、東京化学同人(1994年)の「酸化剤」、「還元剤」の項、特願平6−102485号、日本化学会編,新実験化学講座,第15巻,酸化と還元,丸善(1976年)、井本稔編,講座有機反応機構,第10巻,東京化学同人(1965年)、小方芳郎編,有機化合物の酸化と還元,南江堂(1963年)、特開昭61−3134号、化学大辞典,共立出版(1963年)の「酸化剤」、「還元剤」の項、の記載を参考にする事ができる。
【0040】
該欠陥の特性に関して、次に説明する。該欠陥の殆んどは主平面に平行な面における面欠陥と考えられる。それは該平板状粒子自身を−100℃以下で、透過型電子顕微鏡で撮影すると、図3に示される如く、転位線と判定される線と、それに対応してエッジ面にステップが観察される事に基づく。図3はその代表例であり、図中30は核に相当する部分を、31及び34は転位線を、32、33はステップラインを示す。(a)図の場合は、2本の転位線31の間のエッジ面がステップライン32を有し、成長促進作用を有し、(b)図の場合はエッジ面のステップライン33が成長促進作用を有する。該転位線は高温で粒子成長を行なった場合は、例えば(c)図の転移線34の様に粒子内を少しずつ動く事が観察される。本発明では、(a)図の如く、該平板状粒子の角の種の表面に相当する所から互いに鋭角の2本の転位線が伸びた態様の平板状粒子が全平板状粒子の投影面積の合計の20%以上、好ましくは30〜100%、より好ましくは40〜80%を占める態様が好ましい。該種は種形成時に生じた種に相当する。
なお、(IV)−1の3)において(AgCl|AgI|AgCl)ギャップ種や、AgCl核にI- をコンバージョン反応させて形成した該平板状粒子の場合、図3の33のステップラインが長い傾向がある。
該平板状粒子を形成した後、該粒子表面のハロゲン組成と異なるハロゲン組成のAgX層で、該粒子表面全体を覆う事もできる。その厚さは1原子層以上、好ましくは5〜103 原子層である。また、該平板状粒子を形成した後、ロダン塩またはハロゲン塩溶液を添加し、粒子表面にハロゲンコンバージョン反応を生じさせる事もできる。その添加モル数は、全粒子の表面ハロゲン原子のモル数の0.1〜103 倍である。該ハロゲン塩としてはI- 、Br- またはI- 、Br- 、Cl- の2種以上の混合塩(混合比はあらゆる混合比を選ぶ事ができる)を指す。
【0041】
該粒子形成時の分散媒としては、メチオニン含率が0〜40μmol/g のゼラチン、特願平6−184128号記載の修飾ゼラチン(例えばフタル化ゼラチン)を好ましく用いる事ができる。全分散媒の20〜100重量%、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは80〜100重量%で用いる事ができる。
その他、該AgX0 核形成後で、成長終了の5分前までの間に、分散媒のAg+ との錯体形成能を元の1〜90%に低下させる処置、好ましくは分散媒のpH2〜4における1.0重量%水溶液の該錯体形成能を元の3〜70%に低下させる処置を施す事が好ましい。具体的には酸化剤を添加する事が好ましく、H22 を添加する事が好ましい。これらの詳細に関しては特開平7−311428号の記載を参考にする事ができる。
本発明では該平板状粒子を製造する際に、化合物A0 および/または化合物B0 を存在させるが、その存在濃度は平衡晶癖電位シフト量が10mV以上、好ましくは20〜150mV、より好ましくは30〜120mV、最も好ましくは50〜100mVとなる濃度で添加する。
前記(IV)−1の2)において、AgX0 核は実質的に該欠陥を有しないが、これは次の方法で確認する事ができる。該核を低温(25〜40℃)で、AgX溶剤なしで、オストワルド熟成を生じさせなく、かつ、新核発生も生じさせない添加速度でAg+ とX- を添加し、すべての核を約0.3μm直径にまで成長させる。生成粒子のレプリカ膜の透過型電子顕微鏡写真像(TEM像)を観察し、該平板状粒子の比率を数える。前記態様のゼラチンを用い、より低過飽和度で成長させると、より高アスペクト比の平板状粒子が得られる。
【0042】
本発明の一つの様態においては、米国特許第4,435,501号明細書(Maskasky)(以下、「Maskasky」と称する)により提供された粒子表面の特定部位に突起物を形成するエピタキシャル付着されたハロゲン化銀を用いる。Maskaskyはホスト平板状粒子の表面に吸着したヨウ化物イオン、アミノアザインデンもしくは選択された分光増感色素等の部位指向体(site director)が、銀塩エピタキシーをホスト粒子の選択された部位、典型的にはエッジ及び/もしくはコーナーに向けることができることを示した。銀塩エピタキシーの組成及び部位に応じて、感度の顕著な増加が認められた。変性用化合物を、ホスト平板状粒子又はハロゲン化物塩エピタキシーのいずれかに必要に応じて内蔵させることが教示されている。
【0043】
本発明の{100}主平面平板状乳剤は粒子表面の特定の部位に突起物を形成するエピタキシャル付着されたハロゲン化銀を有することができる。この突起物は、平板状粒子の、少なくともエピタキシャル付着ホスト部位として働く部分、すなわち付着されるハロゲン化銀とのエピタキシャル接合部を形成する部分、を形成するハロゲン化銀よりも高い全体溶解度を示す。「より高い全体溶解度」とは、その突起部を形成するハロゲン化銀の平均溶解度がその平板状粒子のホスト部を形成するハロゲン化銀の平均溶解度よりも高くなければならないことを意味する。温度範囲0〜100℃におけるAgCl、AgBr及びAgIの水中での溶解度積がMeesの「The Theory of the PhotographicProcess」(第3版、Macmillan、New York(1966))の第6頁、表1.4に報告されている。例えば、一般的な乳剤調製温度である40℃では、AgClの溶解度積は6.22×10-10 、AgBrは2.44×10-12 そしてAgIは6.95×10-16 である。ハロゲン化銀の溶解度の差が大きいため、エピタキシャル付着するハロゲン化銀は、圧倒的大多数の場合において、ホスト平板状粒子のエピタキシャル付着を受ける部分よりも低いヨウ化物濃度を示さなければならないことは明白である。エピタキシャル付着される突起部が極薄平板状粒子の少なくとも突起部が付着する部分よりも高い全体溶解度を示さなければならないという要件により、{100}平板状粒子からハロゲン化物イオンが置換されることが減り、よって平板状粒子の形状の崩壊が回避される。
【0044】
本発明の実施では、どの場合も、ハロゲン化銀突起部がホスト{100}平板状粒子よりも10%以上、好ましくは15%以上、最適には20%以上高い塩化物濃度を示すように析出させる。より正確には、平板状粒子のエピタキシャル接合部を形成する部分における塩化物イオン濃度に対するハロゲン化銀突起部における塩化物濃度を上記のようにするのが好ましい。
【0045】
本発明ではエピタキシャル付着を行うと同時に{100}平板粒子乳剤に銀イオン及び塩化物イオンと共にヨウ化物イオンあるいは臭化物イオンを加え、更なる感度向上を図ることができる。ヨウ化物イオンの量は銀に対し、1.0モル%以上が好ましい。臭化物イオンの量は1〜50モル%が好ましく、特に好ましい量としては13モル%、40モル%付近が好ましい。
【0046】
ハロゲン化銀エピタキシーが(1)ホストの{100}平板状粒子とエピタキシャル付着した上記突起部との間に塩化物濃度の大きな差を含み且つ(2)該突起部の面心立方晶格子構造におけるヨウ化物包含量が高い場合に、最高レベルの写真性能が実現されると考えられる。
【0047】
化学増感及び分光増感の好ましい技法はMaskaskyに記載の技法と同じものを用いることができる。このときエピタキシー付着の量としては、ハロゲン化銀エピタキシーを{100}平板状粒子表面積の50%未満好ましくは30%未満、さらには、10%未満、最も好ましくは4%未満に制限する。最小量としては0.2モル%である。
【0048】
Maskaskyは、本発明の乳剤の形成に適用できるハロゲン化銀エピタキシーによるホスト平板状粒子の表面部被覆を制限するための種々の手法を教示している。Maskaskyは、ハロゲン化銀エピタキシーを平板状粒子の縁部もしくは角部の方向に向けることができる平板状粒子表面へ吸着した凝集形態にある分光増感色素を用いることを教示している。本発明の{100}平板状粒子についても同じくJ−凝集態色素を部位ディレクターとして用いることができる。J−凝集態色素としてはシアニン色素が好ましい。またこれらの色素の前にヨウ化物イオンをホストのAg量に対して0.1〜2モル%程度添加することも好ましい。
【0049】
本発明では{100}ホスト平板状粒子あるいは、ハロゲン化銀エピタキシーにドーパントを内蔵させることができる。本明細書中の用語「ドーパント」は、ハロゲン化銀の面心立方晶格子構造内に含まれる銀イオン又はハロゲン化物イオン以外の物質を意味する。
【0050】
本発明で用いることができるドーパントは特開平8−101474号明細書等に詳しく記載されている。すなわち浅い電子トラップとして働くことができるドーパントが有効である。これは、面心立法格子中に浅い電子トラップを導入することにより、より効率的に光電子を潜像形成に利用することができるよう意図されたもので、下記の条件を満たしているものである。
▲1▼HOMOが満たされていること。
▲2▼LUMOのエネルギーレベルがハロゲン化銀結晶格子の最低エネルギーレベル伝導体よりも高いエネルギーレベルであること。
【0051】
好ましい態様では、ドーパントとして下式を満足するヘキサ配位錯体を使用することが意図される:
(IV) 〔ML6 〕n
(式中、Mは充満フロンティア軌道多価金属イオン、好ましくはFe+2、Ru+2、Os+2、Co+3、Rh+3、Ir+3、Pd+4もしくはPt+4であり;L6 は独立して選択することができる6個の配位錯体リガンドを表すが、但し、リガンドの少なくとも4個はアニオンリガンドであり、リガンドの少なくとも1個(好ましくは少なくとも3個及び最適には少なくとも4個)はいずれのハロゲン化物リガンドよりも電気的陰性が高く;そしてnは−2、−3もしくは−4である。
【0052】
浅い電子トラップを提供することができるドーパントの具体例を以下に示す:
〔Fe(CN)6-4
〔Ru(CN)6-4
〔Os(CN)6-4
〔Rh(CN)6-3
〔Ir(CN)6-3
〔Fe(ピラジン)(CN)5-4
〔RuCl(CN)5-4
〔OsBr(CN)5-4
〔RhF(CN)5-3
〔IrBr(CN)5-3
〔FeCO(CN)5-3
〔RuF2 (CN)4-4
〔OsCl2 (CN)4-4
〔RhI2 (CN)4-3
〔IrBr2 (CN)4-3
〔Ru(CN)5 (OCN)〕-4
〔Ru(CN)5 (N3 )〕-4
〔Os(CN)5 (SCN)〕-4
〔Rh(CN)5 (SeCN)〕-3
〔Ir(CN)5 (HOH)〕-2
〔Fe(CN)3 Cl3-3
〔Ru(CO)2 (CN)4-1
〔Os(CN)Cl5-4
〔Co(CN)6-3
〔Ir(CN)4 (オキサレート)〕-3
〔In(NCS)6-3
〔Ga(NCS)6-3
【0053】
さらに、米国特許第5,024,931号明細書(Evans等)に教示されているように、オリゴマー配位錯体を用いてスピード増加することも考えられる。ドーパントは、通常の濃度(ここで、濃度は、平板状粒子における銀及び突起部における銀の両方を含めた総銀を基準とした濃度である)で効果がある。一般的に、浅い電子トラップ形成ドーパントを、銀1モル当たり少なくとも1×10-6モル〜溶解限界(典型的には銀1モル当たり約5×10-4モル以下の濃度)で取り込むことが意図される。好ましい濃度は、銀1モル当たり約10-5〜10-4モルの範囲である。尚、ドーパントを潜像形成部位の近くに配置すると、ドーパントの効果が増すので好ましい。
【0054】
ハロゲン化銀エピタキシーは、それ自体、写真感度をイオウ及び/もしくは金を用いた実質的に最適な化学増感により得られるのに匹敵するレベルまで増加させる。ハロゲン化銀をエピタキシャル付着させた平板状粒子を通常のカルコゲン(即ち、イオウ、セレンもしくはテルル)増感剤もしくは貴金属(例えば、金)増感剤でさらに化学増感すると、写真感度がさらに増加する。ハロゲン化銀エピタキシャル増感に適用できるこれらの通常の化学増感法は、Research
Disclosure、1989年12月、アイテム308119、セクションIII「化学増感」に記載されている。Kofron等は、これらの増感を平板状粒子乳剤に適用することを説明している。
【0055】
ハロゲン化銀エピタキシャル増感の特に好ましい手法では、イオウ含有熟成剤を、カルコゲン(典型的にはイオウ)及び貴金属(典型的には金)化学増感剤と組み合わせて用いる。意図するイオウ含有熟成剤には、米国特許第3,271,157号明細書(McBride)、米国特許第3,574,628号明細書(Jones)及び米国特許第3,737,313号明細書(Rosencrants等)で説明されているチオエーテルのような、チオエーテル類が含まれる。好ましいイオウ含有熟成剤は、米国特許第2,222,264号明細書(Nietz)、米国特許第2,448,534号明細書(Lowe等)及び米国特許第3,320,069号明細書(Illingsworth)で説明されているチオシアネート類である。好ましい種類のミドルカルコゲン増感剤は、米国特許第4,749,646号明細書及び第4,810,626号明細書(Herz等)に開示されている種類のテトラ置換ミドルカルコゲン尿素である。好ましい化合物には、下式で表されるものが含まれる:
【0056】
【化2】
Figure 0003543047
【0057】
(式中、Xはイオウ、セレンもしくはテルルであり;R1 、R2 、R3 及びR4 の各々は独立してアルキレン、シクロアルキレン、アルカリーレン、アラルキレンもしくは複素環アリーレン基を表すか、結合されている窒素原子と一緒に、R1 とR2 もしくはR3 とR4 は、5〜7員複素環を完成することができ;そしてA1 、A2 、A3 及びA4 の各々は独立して水素もしくは酸基を含む基を表すことができ、但し、A11 〜A44 の少なくとも一つは、炭素数1〜6の炭素鎖を介して尿素の窒素に結合された酸基を含有する)。
【0058】
Xは、好ましくはイオウであり、A11 〜A44 は、好ましくはメチルもしくはカルボキシメチル(但し、カルボキシ基は酸型でも塩型でもよい)である。特に好ましいテトラ置換チオ尿素増感剤は、1,3−ジカルボキシメチル−1,3−ジメチルチオ尿素である。好ましい金増感剤は、米国特許第5,049,485号明細書(Deaton)で開示されている金(I)化合物である。これらの化合物には、下式で表される化合物が含まれる:
(VI) AuL2 + X- もしくはAuL(L1 )+ X-
(式中、Lはメソイオン化合物であり;Xはアニオンであり;そしてL1 はルイス酸供与体である)。
【0059】
Kofron等は、化学増感を生じる加熱工程(仕上げ)の前に分光増感色素を乳剤に導入する、「仕上げ増感における色素」の利点を開示している。仕上げ増感における色素は、分光増感色素が平板状粒子表面に吸着してハロゲン化銀エピタキシャル付着の部位ディレクターとして作用する本発明の実施に特に有利である。Maskasky−Iは、J−凝集性分光増感色素、特に緑色及び赤色吸収シアニン色素を部位ディレクターとして使用することを教示している。これらの色素は、化学増感仕上げ工程前に乳剤に存在している。仕上げに存在する分光増感色素がハロゲン化銀エピタキシーの部位ディレクターとして利用されない場合には、はるかに広範囲の分光増感色素が利用できる。Kofron等により開示されている分光増感色素、特にスペクトルの緑色部及び赤色部で吸収極大を示す構造およびより長いメチン鎖類似体により示される青色分光増感色素が、本発明の{100}平板状粒子乳剤に含有させるのに特に好ましい。J−凝集性青吸収分光増感色素を部位ディレクター用として選択することが特に考えられる。有用な分光増感色素が、Research Disclosure、1989年12月、アイテム308119、セクションIV.分光増感及び減感、A.分光増感色素、により一般にまとめられている。
【0060】
本発明の特に好ましい態様では、分光増感色素は部位ディレクターとしても作用でき、そして/もしくは仕上げ中に存在することができるが、本発明の乳剤で分光増感色素が果たさなければならない唯一の機能は、スペクトルの少なくとも一領域に対する乳剤の感度を増加することである。従って、必要ならば、分光増感色素は化学増感が完了した後、本発明による{100}平板状粒子に添加することができる。
【0061】
本発明の感光材料は、支持体上に青感色性層、緑感色性層、赤感色性層のハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層が設けられていればよく、ハロゲン化銀乳剤層および非感光性層の層数及び層順に特に制限はない。典型的な例としては、支持体上に、実質的に感色性は同じであるが感光度の異なる複数のハロゲン化銀乳剤層から成る感光性層を少なくとも1つ有するハロゲン化銀写真感光材料であり、該感光性層は青色光、緑色光、および赤色光の何れかに感色性を有する単位感光性層であり、多層ハロゲン化銀カラー写真感光材料においては、一般に単位感光性層の配列が、支持体側から順に赤感色性層、緑感色性層、青感色性層の順に設置される。しかし、目的に応じて上記設置順が逆であっても、また同一感色性層中に異なる感光性層が挟まれたような設置順をもとり得る。
上記のハロゲン化銀感光性層の間及び最上層、最下層には各種の中間層等の非感光性層を設けてもよい。
該中間層には、特開昭61−43748号、同59−113438号、同59−11340号、同61−20037号、同61−20038号明細書に記載されているようなカプラー、DIR化合物が含まれていてもよく、通常用いられているように混色防止剤を含んでいてもよい。
各単位感光性層を構成する複数のハロゲン化銀乳剤層は、西独特許第1,121,470号あるいは英国特許第923,045号に記載されるように高感度乳剤層、低感度乳剤層の2層構成を好ましく用いることができる。通常は、支持体に向かって順次感光度が低くなる様に配列するのが好ましく、また各ハロゲン乳剤層の間には非感光性層が設けられていてもよい。また、特開昭57−112751号、同62−200350号、同62−206541号、同62−206543号等に記載されているように支持体より離れた側に低感度乳剤層、支持体に近い側に高感度乳剤層を設置してもよい。
【0062】
具体例として支持体から最も遠い側から、低感度青感光性層(BL)/高感度青感光性層(BH)/高感度緑感光性層(GH)/低感度緑感光性層(GL)/高感度赤感光性層(RH)/低感度赤感光性層(RL)の順、またはBH/BL/GL/GH/RH/RLの順、またはBH/BL/GH/GL/RL/RHの順等に設置することができる。
また特公昭55−34932号公報に記載されているように、支持体から最も遠い側から青感光性層/GH/RH/GL/RLの順に配列することもできる。また特開昭56−25738号、同62−63936号明細書に記載されているように、支持体から最も遠い側から青感光性層/GL/RL/GH/RHの順に配列することもできる。
また特公昭49−15495号公報に記載されているように上層を最も感光度の高いハロゲン化銀乳剤層、中層をそれよりも低い感光度のハロゲン化銀乳剤層、下層を中層よりも更に感光度の低いハロゲン化銀乳剤層を配置し、支持体に向かって感光度が順次低められた感光度の異なる3層から構成される配列が挙げられる。このような感光度の異なる3層から構成される場合でも、特開昭59−202464号明細書に記載されているように、同一感色性層中において支持体より離れた側から中間度乳剤層/高感度乳剤層/低感度乳剤層の順に設置されてもよい。
その他、高感度乳剤層/低感度乳剤層/中感度乳剤層、あるいは低感度乳剤層/中感度乳剤層/高感度乳剤層などの順に設置されていてもよい。また、4層以上の場合にも、上記の如く配列を変えてもよい。
【0063】
本発明の最も好ましい層構成の態様においては、支持体上に青感光性乳剤層、緑感光性乳剤層、赤感光性乳剤層の少なくとも1つが感度の異なる感光性層を少なくとも2層以上有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該感色性層ユニットの最低感度層に本発明の{100}主平面を有する平板状乳剤を含有し、該感光性層ユニットの最高感度層に{111}主平面のアスペクト比2以上の感光性平板状ハロゲン化銀粒子よりなる乳剤を含有するハロゲン化銀カラー写真感光材料が挙げられる。こうすることにより、感度/画質比の優れたハロゲン化銀カラー写真感光材料を得ることができる。
【0064】
本発明の方法で製造したAgX乳剤粒子を他の1種以上のAgX乳剤とブレンドして用いることもできるし、粒径の異なる本発明の乳剤粒子を2種以上ブレンドして用いることもできる。ブレンド比率(ゲストAgX乳剤モル/ブレンド後のAgX乳剤モル)は好ましくは0.99〜0.01の範囲で適宜、最適比率を選んで用いることができる。本発明の乳剤に粒子形成から塗布工程までの間に添加できる添加剤およびその添加量に特に制限はなく、従来公知のあらゆる写真用添加剤を最適添加量で添加することができる。例えばAgX溶剤、AgX粒子へのドープ剤(例えば第8族貴金属化合物、その他の金属化合物、カルコゲン化合物、SCN化物等)、分散媒、かぶり防止剤、増感色素(青、緑、赤、赤外、パンクロ、オルソ用等)、強色増感剤、化学増感剤(イオウ、セレン、テルル、金および第8族貴金属化合物、リン化合物、ロダン化合物、還元増感剤の単独およびその2種以上の併用)、かぶらせ剤、乳剤沈降剤、界面活性剤、硬膜剤、染料、色像形成剤、カラー写真用添加剤、可溶性銀塩、潜像安定剤、現像剤(ハイドロキノン系化合物等)、圧力減感防止剤、マット剤、帯電防止剤、寸度安定剤等をあげることができる。
【0065】
本発明法で調製したAgX乳剤は、従来公知のあらゆる写真感光材料に用いることができる。例えば、黒白ハロゲン化銀写真感光材料〔例えば、Xレイ感材、印刷用感材、印画紙、ネガフィルム、マイクロフィルム、直接ポジ感材、超微粒子乾板感材(LSIフォトマスク用、シャドーマスク用、液晶マスク用)〕、カラー写真感光材料(例えばネガフィルム、印画紙、反転フィルム、直接ポジカラー感材、銀色素漂白法写真など)に用いることができる。更に拡散転写感光材料(例えば、カラー拡散転写要素、銀塩拡散転写要素)、熱現像感光材料(黒白、カラー)、高密度 digital記録感材、ホログラフィー用感材などをあげることができる。塗布銀量は0.01g/m2以上の好ましい値を選ぶことができる。
AgX乳剤製造方法(粒子形成、脱塩、化学増感、分光増感、写真用添加剤の添加方法等)および装置、AgX粒子構造、支持体、下塗り層、表面保護層、写真感光材料の構成(例えば層構成、銀/発色材モル比、各層間の銀量比等)と製品形態および保存方法、写真用添加剤の乳化分散、露光、現像方法等に関しても制限はなく、従来もしくは今後公知となるあらゆる技術、態様を用いることができる。これらの詳細に関しては下記文献の記載を参考にすることができる。
【0066】
リサーチ ディスクロージャー(Research Disclosure)、176巻(アイテム17643)(12月、1978年)、同307巻(アイテム307105、11月、1989年)、ダフィン(Duffin)著、写真乳剤化学(Photographic Emulsion Chemistry) 、Focal Press, New York (1966年)、ビル著(E. J. Birr)、写真用ハロゲン化銀乳剤の安定化(Stabilization of Photographic Silver Halide Emulsion)、フォーカル プレス(Focal Press) 、ロンドン(1974年)、ジェームス編(T. H. James) 、写真過程の理論(The Theory of Photographic Process)第4版、マクミラン(Macmillan) 、ニューヨーク(1977年)
【0067】
グラフキデ著(P. Glafkides)、写真の化学と物理(Chimie et Physique Photographique) 、第5版、エディション ダ リジンヌヴェル(Edition del, Usine Nouvelle, パリ(1987年)、同第2版、ポウル モンテル、パリ(1957年)、ゼリクマンら(V. L. Zelikman et al.),写真乳剤の調製と塗布(Making and Coating Photographic Emulsion), Focal Press (1964年)、ホリスター(K. R. Hollister) ジャーナル オブ イメージング サイエンス(Journal of Imaging science), 31巻、P.148〜156(1987年)、マスカスキー(J. E. Maskasky), 同30巻、P.247〜254(1986年)同32巻、160〜177(1988年)、同33巻、10〜13(1989年)、
【0068】
フリーザーら編、ハロゲン化銀写真過程の基礎(Die Grundlagen Der Photogrphischen Prozesse Mit Silverhalogeniden),アカデミッシェ フェルラークゲゼルシャフト(Akademische Verlaggesellschaft), フランクフルト(1968年)。
日化協月報1984年、12月号、P.18〜27、日本写真学会誌、49巻、7〜12(1986年)、同52巻、144〜166(1989年)、同52巻、41〜48(1989年)、特開昭58−113926〜113928号、同59−90841号、同58−111936号、同62−99751号、同60−143331号、同60−143332号、同61−14630号、同62−6251号、
【0069】
特開平1−131541号、同2−838号、同2−146033号、同3−155539号、同3−200952号、同3−246534号、同4−34544号、同2−28638号、同4−109240号、同2−73346号、同4−193336号、同8−076306号、AgX写真分野のその他の日本特許、米国特許、欧州特許、世界特許、ジャーナル オブ イメージング サイエンス(Journal of Imaging Science)、ジャーナル オブ フォトグラフィック
サイエンス(Journal of Photographic Science) 、フォトグラフィック サイエンス アンド エンジニアリング(Photographic Science and Engineering)、日本写真学会誌、日本写真学会講演要旨集、International Congress of Photographic ScienceおよびThe International East-West Symposiumon the Factors Influencing Photographic Sensitivityの講演要旨集。
特願平6−104065号、特開平7−181620号。
本発明の乳剤は特開昭62−269958号、同62−266538号、同63−220238号、同63−305343号、同59−142539号、同62−253159号、特開平1−131541号、同1−297649号、同2−42号、同1−158429号、同3−226730号、同4−151649号、同6−27590号、欧州特許0508398A1の実施例の塗布試料の構成乳剤として好ましく用いることができる。
【0070】
【実施例】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の実施態様はこれに限定されるものではない。
【0071】
実施例1
(1)乳剤の調製
乳剤−1の調製
0.08Mの臭化カリウムを含有する1.0重量%のゼラチン溶液1.4リットルにそれを撹拌しながらダブルジェット法で、0.5Mの硝酸銀溶液と0.5Mの臭化カリウム溶液とを30秒間にそれぞれ15cc添加した。この間温度は30℃に保たれた。添加後、75℃まで温度を上昇させた。その後1.0M硝酸銀溶液105ccをゆっくり添加し、その後NH4 OHを添加しpH=9.5に15分間保った後pHをもとに戻しさらに120分間に150gの硝酸銀を含む硝酸銀溶液が加速された流量(終了時の流量が開始時の19倍)で添加された。この間KBr溶液がpBrが2.55に保たれるよう添加された。
この後、乳剤を35℃に冷却し、常法のフロキュレーション法で水洗し、ゼラチン溶液を加え、乳剤を再分散させ、40℃においてpH6.5、pAg8.6に調整した。
【0072】
乳剤の一部をサンプリングし、乳剤粒子のレプリカのTEM像[透過型電子顕微鏡写真像]を観察した。それによると全AgX粒子の投影面積の合計(以下、TPA)の94%が、主平面が{111}面、アスペクト比が3以上の平板状粒子であり、該平板状粒子の平均直径は1.4μm、平均アスペクト比5.9、直径分布の変動係数(分布の標準偏差/平均直径)(以下、C.V.)は0.19であった。
【0073】
乳剤−2の調製
反応容器にゼラチン水溶液−4[H2 O 1.2リットル、ゼラチン25g、NaCl 0.11gを含み、HNO3 でpH3.9に調節]を入れ、40℃に保ち、撹拌しながらAgNO3 −1液(AgNO3 10g/リットル)を8.0mlを2秒で添加した。5分後にX−41液(KBr 140g/リットル液)とAg−41液(AgNO3 200g/リットル液)を50ml/分で1分間、ほぼ同時混合添加した。ただし、X−41液の添加開始をAg−41液の添加開始よりも、1秒間、先行させた。該添加終了後1分後に、NaOH液を加え、pH5.5とした。更にポリビニルアルコール水溶液[PV−1 5g、H2 O 50ml]を加え、銀電位を50mVとし、温度を75℃に上げた。昇温後更に銀電位を50mVに再調節した。30分間熟成した後、Ag−42液(AgNO3 100g/リットル)とX−42液(KBr 71g/リットル)を用い、銀電位を50mVに保ちながら、Ag−42液を初速5ml/分、直線流量加速0.05ml/分で30分間添加した。3分後に沈降剤を加え、温度を30℃に下げ、pH4.0とし、乳剤を沈降させた。沈降乳剤を水洗し、38℃に昇温し、ゼラチン溶液を加え、乳剤を再分散させた。得られた乳剤粒子のレプリカのTEM像を観察したところ、次の通りであった。TPAの92%が主平面が{100}面、投影アウトライン形状は直角平行四辺形の4つの角の1つまたは2つが欠落した形状であり、その平均角欠け率はエッジ長の約10%であった。角が欠けたエッジ面は{110}面であった。平均直径1.4μm、平均アスペクト比6.0、C.V.0.21であった。
乳剤−2は、前記(IV)−1の3)の方法で該欠陥を形成し、化合物B0 の存在下で、高さX- 濃度条件で成長させた高AgBr含率の平板状粒子を示す。
【0074】
乳剤−3の調製
乳剤−1の0.5モル試料を40℃で溶融させ、そのpBrを約4に調節し、この調節の間に析出する少量のハロゲン化銀が12%Iになるような比率でAgNO3 溶液とKI溶液を同時に添加した。次いで、({111}ホスト粒子の初期量を基準として)2M%のNaClを添加した後、分光増感色素を添加し、以下の添加順により6M%のヨウ臭塩化銀エピタキシーを形成し、乳剤−3を得た。CaCl2 として添加した2.52M%Cl- 、NaBrとして添加した2.52M%Br- 、AgI(リップマン)懸濁液として添加した0.96M%I- 及び5.04M%AgNO3
用いた増感色素はS−10であった。
【0075】
【化3】
Figure 0003543047
【0076】
乳剤−4の調製
乳剤−2の0.5モル試料を乳剤−3と同様の手順で{100}ホスト粒子上に6M%のヨウ臭塩化銀エピタキシーを形成し、乳剤−4を得た。
【0077】
乳剤−5〜10の調製
乳剤1〜4の調製手順において、440mppmのK4 Ru(CN)6 を種々のタイミングで添加し、乳剤−5〜10を調製した。
乳剤−5は乳剤−1において、総Ag量の70%が添加された時点でK4 Ru(CN)6 を添加した。
乳剤−6は乳剤−2において、総Ag量の70%が添加された時点でK4 Ru(CN)6 を添加した。
乳剤−7は乳剤−3において、ホスト粒子の総Ag量の70%が添加された時点でK4 Ru(CN)6 を添加した。
乳剤−8は乳剤−3において、ヨウ臭塩化銀エピタキシーの導入中、NaBr添加の後、AgNO3 添加の前の時点でK4 Ru(CN)6 を添加した。
乳剤−9は乳剤−4において、ホスト粒子の総Ag量の70%が添加された時点でK4 Ru(CN)6 を添加した。
乳剤−10は乳剤−4において、ヨウ臭塩化銀エピタキシーの導入や、NaBr添加の後、AgNO3 添加の前の時点でK4 Ru(CN)6 を添加した。
【0078】
化学増感
乳剤−1〜10に0.75mgの4,4’−フェニルジスルフィドジアセトアニリド、増感色素(エピタキシーがある場合にはエピタキシー導入時に使用した増感色素を差し引いた量)、60mgのNaSCN/Agモル、増感剤1(硫黄増感剤)、増感剤2(金増感剤)、5.72mgのAPMT/Agモル及び3.99mgの3−メチル−1,3−ベンゾチアゾリウムヨージド/Agモルを添加した後、混合物を50℃で最適時間加熱して増感を完了させた。40℃に冷却した後、さらに114.35mgのAMPT/Agモルを添加した。
【0079】
(2)塗布試料の作製およびその評価
(1)で得られた乳剤1〜10に塗布助剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸塩、増粘剤としてp−ビニルベンゼンスルフォネート、硬膜剤としてビニルスルフォン系化合物を加えて乳剤塗布液を作った。続いてそれらの塗布液を下引き加工したポリエステルベース上に別々に均一に塗布し、その上に主にゼラチン水溶液からなる表面保護層を塗布して、塗布試料1〜10を作製した。このとき試料1〜10の塗布銀量はそれぞれ3.0g/m2 であり、保護層のゼラチン塗布量はそれぞれ1.3g/m2 であり、乳剤層のゼラチン塗布量はそれぞれ2.7g/m2 であった。
このようにして得られた塗布試料の評価を行うために以下の実験を行った。
【0080】
▲1▼写真特性;塗布試料1〜10の試料片を1/100”の露光時間50CMSの露光量でウェッジ露光したものを下記の組成の処理液で同時に20℃、4’現像し、次いで定着、水洗・乾燥後、センシトメトリーを行い、カブリ+0.1の濃度を与える露光量の逆数により感度を求めた。
▲2▼処理液pH依存性;塗布試料1〜10の試料片を2組用意し、1組は処理液のpHを0.5上げて処理し、他の1組は処理液のpHを0.5下げて処理し、▲1▼と同様にセンシトメトリーを行い、2つの処理での感度の差を▲1▼の感度で割った値に100をかけた値(%)を求め、処理液pH依存性を評価した(値が小さい程、良いとした)。
▲3▼潜像安定性;塗布試料1〜4の試料片を3組用意し、1/100”でウェッジ露光を行ってから、1組は50℃、30%RHで3日間保存し、別の1組は50℃、80%RHで3日間保存し、残りの1組はフリーザーで保存しコントロールとする。▲1▼と同様に処理しセンシトメトリーを行い感度を求め比較する。
【0081】
処理液
1−フェニル−3−ピラゾリドン 0.5g
ヒドロキノン 10g
エチレンジアミン四酢酸・2−ナトリウム 2g
亜硫酸カリウム 60g
ホウ酸 4g
炭酸カリウム 20g
臭化ナトリウム 5g
ジエチレングリコール 20g
水を加えて 1リットル
水酸化ナトリウムでpH10.0に調整
【0082】
得られた結果を表1にまとめた。
【0083】
【表1】
Figure 0003543047
【0084】
表1より本発明の効果が明らかである。すなわち、試料1〜4において本発明の試料4が最も感度が高く、おどろくべきことに潜像安定性に優れている。また、試料1、2、5、6において本発明の試料6が最も感度が高く、おどろくべきことに処理液pH依存性に優れている。また全試料において、本発明の試料9、10が最も感度が高く、かつ、潜像安定性、処理液pH依存性に優れている。
【0085】
実施例2
(1)乳剤の調製
乳剤−11の調製
0.08Mの臭化カリウムを含有する1.0重量%のゼラチン溶液1.4リットルにそれを撹拌しながらダブルジェット法で、0.5Mの硝酸銀溶液と0.5Mの臭化カリウム溶液とを30秒間にそれぞれ60cc添加した。この間温度は30℃に保たれた。添加後、75℃まで温度を上昇させた。その後1.0M硝酸銀溶液90ccをゆっくり添加し、その後NH4 OHを添加しpH=9.0に20分間保った後pHをもとに戻しさらに60分間に150gの硝酸銀を含む硝酸銀溶液が加速された流量(終了時の流量が開始時の19倍)で添加された。この間KBr溶液がpBrが2.05に保たれるよう添加された。
また総Ag量の70%が添加された時点で880mppmのK4 Ru(CN)6 を添加した。
この後、乳剤を35℃に冷却し、常法のフロキュレーション法で水洗し、ゼラチン溶液を加え、乳剤を再分散させ、40℃においてpH6.5、pAg8.6に調整した。
乳剤の一部をサンプリングし、乳剤粒子のレプリカのTEM像[透過型電子顕微鏡写真像]を観察した。それによると全AgX粒子の投影面積の合計(以下、TPA)の95%が、主平面が{111}面、アスペクト比が3以上の平板状粒子であり、該平板状粒子の平均直径は0.55μm、平均アスペクト比4.0、直径分布の変動係数(分布の標準偏差/平均直径)(以下、C.V.)は0.21であった。
【0086】
次に以上で得られた乳剤0.5モル試料を40℃で溶融させ、そのpBrを約4に調節し、この調節の間に析出する少量のハロゲン化銀が12%Iになるように比率でAgNO3 溶液とKI溶液を同時に添加した。次いで(ホスト粒子の初期量を基準として)2M%のNaCl添加した後、分光増感色素を添加し、以下の添加順により、6M%のヨウ臭塩化銀エピタキシーを形成し、乳剤−11を得た。CaCl2 として添加した2.52M%Cl- 、NaBrとして添加した2.52M%Br- 、AgI(リップマン)懸濁液として添加した0.96M%I- 及び5.04M%AgNO3
用いた増感色素はS−10であった。
【0087】
乳剤−12の調製
乳剤−12は乳剤−11において、ホスト粒子に添加したK4 Ru(CN)6 をヨウ臭塩化銀エピタキシー導入中、NaBrの添加後、AgNO3 添加の前に添加する変更を行った以外は同様な方法で調製した。
【0088】
乳剤−13の調製
反応容器にゼラチン水溶液−7(H2 O 1.2リットル、ゼラチン25g、KBr 0.3gを含みpH6.0)を入れ、温度を32℃に保ちながら、Ag−41液とX−41液きを30ml/分で5分間、同時混合添加した。次にポリビニルイミダゾール共重合物2[(5)式で表される。重量平均分子量1.5×105 、x:y:z:w=60:7:13:30]を10gとH2 O 100mlを含む水溶液を添加し、NaOH 1N液でpH9.0とした。次に60℃に昇温し、pH9.0に再調節し、KBr液(KBr 0.1g/ml)を用いて銀電位を25mVに調節した後、Ag−41液とX−41液を該電位に保ちながら20分間、同時混合添加した。Ag−41液の添加流量は25ml/分であった。また総Ag量の70%が添加された時点で880mppmのK4 Ru(CN)6 を添加した。添加後3分間攪拌した後、沈降剤を加え、温度を30℃に下げ、pH4.0とし、乳剤を沈降させた。沈降乳剤を水洗し、38℃に昇温し、ゼラチン溶液を加え、pBr2.8、pH6.4に調節した。
【0089】
【化4】
Figure 0003543047
【0090】
得られた乳剤粒子のレプリカのTEM像を観察したところ、次の通りであった。TPAの95%が主平面が{100}面、投影アウトライン形状は直角平行四辺形、平均直径0.55μm、平均アスペクト4.0、平均縦横比1.8であった。
次いで乳剤−11と同じ方法でヨウ臭塩化銀エピタキシーを形成し、乳剤−13を得た。
【0091】
乳剤−14の調製
乳剤−14は乳剤−13において、ホスト粒子に添加したK4 Ru(CN)6 をヨウ臭塩化銀エピタキシー導入中、NaBrの添加後、AgNO3 添加の前に添加する変更を行った以外は同様な方法で調製した。
【0092】
化学増感
乳剤−11〜14に、増感色素(エピタキシーがある場合にはエピタキシー導入時に使用した増感色素を差し引いた量)KSCNハイポ、塩化銀酸、APMTを最適量添加し、55℃にて最適時間加熱した後40℃に冷却し、AMPTを添加した。
【0093】
乳剤−11〜14の評価
実施例−1の(2)と同様に以上で得られた乳剤−11〜14の塗布試料を作成し、同様の評価実験を行ったところ乳剤−7〜10と類似の結果が得られた。
さらに以下のように多層カラー感光材料を作製した。
【0094】
試料201の作製
下塗りを施した厚み127μの三酢酸セルロースフィルム支持体上に、下記の組成の各層より成る多層カラー感光材料を作製し、試料101とした。数字はm2 当りの添加量を表わす。なお添加した化合物の効果は記載した用途に限らない。
【0095】
第1層:ハレーション防止層
黒色コロイド銀 0.10g
ゼラチン 1.90g
紫外線吸収剤U−1 0.10g
紫外線吸収剤U−3 0.040g
紫外線吸収剤U−4 0.10g
高沸点有機溶媒Oil−1 0.10g
染料E−1の微結晶固体分散物 0.10g
【0096】
第2層:中間層
ゼラチン 0.40g
化合物Cpd−C 5.0mg
化合物Cpd−J 5.0mg
化合物Cpd−K 3.0mg
高沸点有機溶媒Oil−3 0.10g
染料D−4 0.80mg
【0097】
Figure 0003543047
【0098】
第4層:低感度赤感性乳剤層
乳剤A 銀量 0.30g
乳剤B 銀量 0.20g
ゼラチン 0.80g
カプラーC−1 0.15g
カプラーC−2 0.050g
カプラーC−3 0.050g
カプラーC−9 0.050g
化合物Cpd−C 5.0mg
化合物Cpd−J 5.0mg
高沸点有機溶媒Oil−2 0.10g
添加物P−1 0.10g
【0099】
第5層:中感度赤感性乳剤層
乳剤C 銀量 0.50g
ゼラチン 0.80g
カプラーC−1 0.20g
カプラーC−2 0.050g
カプラーC−3 0.20g
高沸点有機溶媒Oil−2 0.10g
添加物P−1 0.10g
【0100】
第6層:高感度赤感性乳剤層
乳剤D 銀量 0.40g
ゼラチン 1.10g
カプラーC−1 0.30g
カプラーC−2 0.10g
カプラーC−3 0.70g
添加物P−1 0.10g
【0101】
第7層:中間層
ゼラチン 0.60g
添加物M−1 0.30g
混色防止剤Cpd−I 2.6mg
染料D−5 0.020g
染料D−6 0.010g
化合物Cpd−J 5.0mg
高沸点有機溶媒Oil−1 0.020g
【0102】
Figure 0003543047
【0103】
第9層:低感度緑感性乳剤層
乳剤−11 銀量 0.50g
ゼラチン 0.50g
カプラーC−4 0.10g
カプラーC−7 0.050g
カプラーC−8 0.10g
化合物Cpd−B 0.030g
化合物Cpd−D 0.020g
化合物Cpd−E 0.020g
化合物Cpd−F 0.040g
化合物Cpd−J 10mg
化合物Cpd−L 0.020g
高沸点有機溶媒Oil−1 0.10g
高沸点有機溶媒Oil−2 0.10g
【0104】
第10層:中感度緑感性乳剤層
乳剤F 銀量 0.40g
ゼラチン 0.60g
カプラーC−4 0.070g
カプラーC−7 0.050g
カプラーC−8 0.050g
化合物Cpd−B 0.030g
化合物Cpd−D 0.020g
化合物Cpd−E 0.020g
化合物Cpd−F 0.050g
化合物Cpd−L 0.050g
高沸点有機溶媒Oil−2 0.010g
高沸点有機溶媒Oil−4 0.050g
【0105】
第11層:高感度緑感性乳剤層
乳剤G 銀量 0.50g
ゼラチン 1.00g
カプラーC−4 0.20g
カプラーC−7 0.10g
カプラーC−8 0.050g
化合物Cpd−B 0.080g
化合物Cpd−E 0.020g
化合物Cpd−F 0.040g
化合物Cpd−K 5.0mg
化合物Cpd−L 0.020g
高沸点有機溶媒Oil−1 0.020g
高沸点有機溶媒Oil−2 0.020g
【0106】
第12層:中間層
ゼラチン 0.60g
化合物Cpd−L 0.050g
高沸点有機溶媒Oil−1 0.050g
【0107】
第13層:イエローフィルター層
黄色コロイド銀 銀量 0.020g
ゼラチン 1.10g
混色防止剤Cpd−A 0.010g
化合物Cpd−L 0.010g
高沸点有機溶媒Oil−1 0.010g
染料E−2の微結晶固体分散物 0.030g
染料E−3の微結晶固体分散物 0.020g
【0108】
第14層:中間層
ゼラチン 0.60g
【0109】
第15層:低感度青感性乳剤層
乳剤H 銀量 0.20g
乳剤I 銀量 0.30g
ゼラチン 0.80g
カプラーC−5 0.20g
カプラーC−6 0.10g
カプラーC−10 0.40g
【0110】
第16層:中感度青感性乳剤層
乳剤J 銀量 0.50g
ゼラチン 0.90g
カプラーC−5 0.10g
カプラーC−6 0.10g
カプラーC−10 0.60g
【0111】
第17層:高感度青感性乳剤層
乳剤K 銀量 0.40g
ゼラチン 1.20g
カプラーC−5 0.10g
カプラーC−6 0.10g
カプラーC−10 0.60g
高沸点有機溶媒Oil−2 0.10g
【0112】
Figure 0003543047
【0113】
Figure 0003543047
【0114】
Figure 0003543047
【0115】
また、すべての乳剤層には上記組成物の他に添加剤F−1〜F−8を添加した。さらに各層には上記組成物の他にゼラチン硬化剤H−1及び塗布用、乳化用界面活性剤W−3、W−4、W−5、W−6を添加した。
更に防腐、防黴剤としてフェノール、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−フェノキシエタノール、フェネチルアルコール、p−安息香酸ブチルエステルを添加した。
【0116】
有機固体分散染料の分散物の調製
染料E−1を以下の方法で分散した。即ち、メタノールを30%含む染料のウェットケーキ1430gに水及びBASF社製Pluronic F88(エチレンオキシド−プロピレンオキシド ブロック共重合体)200gを加えて撹拌し、染料濃度6%のスラリーとした。次に、アイメックス(株)製ウルトラビスコミル(UVM−2)に平均粒径0.5mmのジルコニアビースを1700ml充填し、スラリーを通して周速約10m/sec、吐出量0.51/minで8時間粉砕した。ビーズを濾過して除き、水に加えて染料濃度3%に希釈した後、安定化のために90℃で10時間加熱した。得られた染料微粒子の平均粒径は0.60μmであり、粒径の分布の広さ(粒径標準差×100/平均粒径)は18%であった。
【0117】
同様にして、染料E−2、E−3の固体分散物を得た。平均粒径は0.54μmおよび0.56μmであった。
試料201に用いたハロゲン化銀乳剤及びそれ等に用いた色素を表2、表3に示した。
【0118】
【表2】
Figure 0003543047
【0119】
【表3】
Figure 0003543047
【0120】
【化5】
Figure 0003543047
【0121】
【化6】
Figure 0003543047
【0122】
【化7】
Figure 0003543047
【0123】
【化8】
Figure 0003543047
【0124】
【化9】
Figure 0003543047
【0125】
【化10】
Figure 0003543047
【0126】
【化11】
Figure 0003543047
【0127】
【化12】
Figure 0003543047
【0128】
【化13】
Figure 0003543047
【0129】
【化14】
Figure 0003543047
【0130】
【化15】
Figure 0003543047
【0131】
【化16】
Figure 0003543047
【0132】
【化17】
Figure 0003543047
【0133】
【化18】
Figure 0003543047
【0134】
試料202〜204の作製
試料201の作製において、第9層の低感度緑感性乳剤層に用いた乳剤−11を乳剤−12〜14に置きかえた以外は同じ手順で、試料202〜204を作製した。
【0135】
(試料の評価)
これらの試料を、白色光源を用い、1/100秒のウエッジ露光した後、下記の現像処理を行い、センシトメトリーにより、フレッシュの(保存試験前の)写真性の評価を行った。
試料201〜204において第9層の感度はマゼンタの最低濃度より0.5大なる濃度を与える露光量の逆数により見積った。
さらに第1現像のpHを変えることにより、処理液pH依存性を、また、実施例−1と同じ、条件で潜像依存性の評価を行った。さらにこれらの試料の処理後のストリップスについて、顕微鏡により、粒状性の評価を行った。
【0136】
(標準処理の現像処理の処理工程と処理液)
処理工程 時間 温度 タンク容量 補充量
第一現像 6分 38℃ 12リットル 2200ミリリットル/m2
第一水洗 2分 38℃ 4リットル 7500ミリリットル/m2
反 転 2分 38℃ 4リットル 1100ミリリットル/m2
発色現像 6分 38℃ 12リットル 2200ミリリットル/m2
前漂白 2分 38℃ 4リットル 1100ミリリットル/m2
漂 白 6分 38℃ 12リットル 220ミリリットル/m2
定 着 4分 38℃ 8リットル 1100ミリリットル/m2
第二水洗 4分 38℃ 8リットル 7500ミリリットル/m2
最終リンス 1分 25℃ 2リットル 1100ミリリットル/m2
【0137】
各処理液の組成は以下の通りであった。
Figure 0003543047
【0138】
Figure 0003543047
【0139】
Figure 0003543047
【0140】
Figure 0003543047
【0141】
Figure 0003543047
【0142】
[定着液] [タンク液] [補充液]
チオ硫酸アンモニウム 80g タンク液に同じ
亜硫酸ナトリウム 5.0g 〃
重亜硫酸ナトリウム 5.0g 〃
水を加えて 1000ミリリットル
pH 6.60
pHは酢酸又はアンモニア水で調整した。
【0143】
Figure 0003543047
【0144】
その結果先の乳剤−11〜14の評価と同様の効果が確認できた。また試料203及び204は試料201及び202に対して、粒状性が良いことが確認できた。
【0145】
【発明の効果】
本発明のハロゲン化銀乳剤は、高感度、高画質で、このハロゲン化銀乳剤を用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料は高感度、高画質の画像形成が可能であり、処理条件のpH変動などにもかかわらず安定した高品質の画像を形成できるという優れた作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】14面体AgBr粒子の平面図を表わす。
【図2】1分子中に多数の弱い吸着基を有する吸着剤の吸着様態を表わす。
【図3】平板状粒子の転移線と面欠陥の態様例を表わす。
【符号の説明】
21 AgX粒子表面
22 吸着剤A0 の主鎖
23 吸着剤A0 の主鎖に共有結合した吸着剤C0 の残基を指す
30 核に相当する部分
31 転位線
32、33、35 エッジ面のステップライン
34 移動した転位線

Claims (9)

  1. 少なくとも分散媒とハロゲン化銀粒子を有するハロゲン化銀乳剤において、該ハロゲン化銀粒子の全投影面積の60%以上が主平面が{100}面で、アスペクト比(直径/厚さ)が2.0以上100以下の、エピタキシャル接合された平板状粒子であり、かつ、該平板状粒子の非エピタキシャル接合部の主平面エッジの{100}側面により囲まれた直角平行四辺形、もしくはコーナーが欠けている場合は主平面エッジの{100}側面を延長することにより得られる直角平行四辺形の縦横比(長辺の長さ/短辺の長さ)が1〜6であり、該平板状粒子の非エピタキシャル接合部より溶解度の高いハロゲン化銀突起物によりエピタキシャル接合された平板状粒子であることを特徴とするハロゲン化銀乳剤。
  2. 少なくとも分散媒とハロゲン化銀粒子を有するハロゲン化銀乳剤において、該ハロゲン化銀粒子の全投影面積の60%以上が主平面が{100}面で、アスペクト比(直径/厚さ)が2.0以上の異方成長性結晶欠陥を有する平板状粒子であり、かつ、該平板状粒子の主平面エッジの{100}側面により囲まれた直角平行四辺形、もしくはコーナーが欠けている場合は主平面エッジの{100}側面を延長することにより得られる直角平行四辺形の縦横比(長辺の長さ/短辺の長さ)が1〜6であり、浅い電子トラップとなる六配位ドーパントを結晶格子中に有することを特徴とするハロゲン化銀乳剤。
  3. 前記平板状粒子が異方成長性結晶欠陥を有し、該異方成長性結晶欠陥が転位線を有することを特徴とする請求項1記載のハロゲン化銀乳剤。
  4. 前記平板状粒子の結晶格子中に浅い電子トラップとなる六配位ドーパントを有することを特徴とする請求項1または3記載のハロゲン化銀乳剤。
  5. ハロゲン化銀乳剤が化合物A および/または化合物B の存在下で製造されることを特徴とする請求項1〜のいずれかのハロゲン化銀乳剤。
    ここで化合物A はAgBr粒子の{100}面の形成を促進する吸着剤が1分子中に2個以上、共有結合した有機化合物を表わし、化合物B はアルコール基(水酸基)を1分子中に2基以上有するゼラチン以外の有機化合物を表わし、かつ、両者はゼラチンおよびタンパク質以外の有機化合物を表わす。
  6. 前記結晶欠陥が化合物A または化合物B がハロゲン化銀粒子に吸着した状態でAg とハロゲンイオンを添加することによって形成された欠陥であることを特徴とする請求項3記載のハロゲン化銀乳剤。
  7. 前記平板状粒子が、Cl 、Br 、またはI 含率で10モル%以上のハロゲン組成差を有するハロゲン組成ギャップ界面を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀乳剤。
  8. 前記結晶欠陥が、核形成時に、少なくとも一つのハロゲン組成ギャップ界面を形成することにより形成されることを特徴とする請求項2または3記載のハロゲン化銀乳剤。
  9. 支持体上に青感光性乳剤層、緑感光性乳剤層、赤感光性乳剤層の少なくとも1つが感度の異なる感光性層を少なくとも2層以上有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該感色性層ユニットの最低感度層に上記請求項1、2、3、4、5、6、7又はの乳剤から選ばれる少なくとも1種を含有し、該感光性層ユニットの最高感度層に{111}主表面のアスペクト比2以上の感光性平板状ハロゲン化銀粒子よりなる乳剤を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
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