JP3542208B2 - 内視鏡 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は特に挿入部に耐薬品性及び滑り性をもたせた内視鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
可撓性のある挿入部を有した内視鏡では一般に挿入部が樹脂チューブで構成された可撓管部と、この先端に接続された首振り可能な湾曲管部とから構成されている。この種の内視鏡では前記可撓管部や湾曲管部を被覆する樹脂チューブの外表面に極薄の膜厚樹脂をコーティングしていた。このコーティングを施す目的は挿入部の滑り性を向上して患者に与える苦痛を軽減することや、内視鏡を繰り返し使用するために行う消毒・滅菌の際に使用する薬剤によって樹脂が劣化し、挿入部が劣化損傷しないように耐薬性を向上することにある。
【0003】
このコーティングの材質としては様々なものが提案されており、そのコーティング方法としては特開平7−39511号公報に開示されているように、スプレーによる吹き付け、ハケ等による塗布、コーティング液への浸漬等の方法が従来より行われていたが、いずれにしても液状のコーティング剤を塗り付けるものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
(従来技術の欠点)
液状コーティング剤は一般的な特性として、液体の表面張力等の影響により均一な膜厚にコントロールすることが困難であったり、微細な隙間の中にはコーティング剤が入り込まず、均質にコーティングすることが不可能であった。また従来はコーティング作業の手順上、可撓管部と湾曲管部の樹脂チューブを単品状態で別々にコーティングし、その後、可撓管部と湾曲管部を接続せざるを得なかった。このような事情から製造上の作業性が悪い上、可撓管部及び湾曲管部の樹脂チューブの可撓性や耐薬性にムラが生じたり、可撓管と湾曲管部の接続部分から薬剤が浸透して接続強度が劣化することがあった。
(本発明の目的)
本発明は前記課題に着目してなされたもので、その目的とするところはコーティングのムラがなく、接続部等の微細な隙間にも十分な膜厚の形成が確保でき、しかも、滑り性や耐薬性にすぐれ、作業性も良いコーティングを行うことができる内視鏡を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、挿入部を有する内視鏡において、部組状態での前記挿入部の外表面にポリパラキシレン樹脂を化学蒸着したことを特徴とするものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係る内視鏡を説明する。
(構成)
図1はコーティングを施す前の状態の内視鏡挿入部の部組を示す断面図である。内視鏡挿入部は可撓管部1と湾曲管部2を接続部材3で接続して構成されている。
【0007】
前記可撓管部1はポリアミドやポリウレタン等の可撓性を有する樹脂製管4の肉厚の中に、耐キンク性や耐潰れ性を向上させるための補強部材5を一体的に埋没するように成型して形成されている。補強部材5としては例えば金属板を螺旋状に巻いた螺旋管と金属素線を網管状に編んだ網状管とを積層したものや、金属板を網管状に編んだものが適している。また、この樹脂製管4を筒状の外装被覆部材としてこれの内側に別の筒状の芯材を付加的に配設する構成のものとしてもよい。
【0008】
この可撓管部1の先端部外周には外装樹脂部分を全周にわたって剥ぎ取った段差部6が形成されている。この段差部6には筒状の接続部材3の手元側端部が密に嵌合して接着固定されており、可撓管部1と接続部材3の両者はその外径を太くすることなく等径で外周面が面一な関係で接続されている。
【0009】
前記接続部材3はその内周面に湾曲操作ワイヤー7を挿通するためのワイヤーガイド管8が少なくとも1本以上固着されている。ワイヤーガイド管8は例えば密巻きのコイル部材によって構成されている。
【0010】
前記湾曲管部2は複数の節輪11をピン12で回動自在に接続してなり、その外周に樹脂チューブ13を被覆して構成されている。樹脂チューブ13はポリアミドやポリウレタン、フッ素ゴム等の可撓性を有する樹脂製であり、その肉厚の中には金属素線を網管状に編んだ網状管14を一体的に埋没して成形することにより構成されている。網状管14を補強部材として設けているため、湾曲管部2は前記樹脂チューブ13を鉗子等によって把持するようにしても、それが破断し難い。従って、水漏れ故障を引き起こす危険が少ない。なお、網状管14の代わりに金属板を螺旋状に巻いた螺旋管(フレックス管)を用いて補強するようにしてもよい。
【0011】
前記接続部材3の先端側端部内には前記湾曲管部2の最後端の節輪11の後端部分が密に嵌入し、その両者を接着により固定している。この接着固定する際に湾曲管部2と接続部材3との回転方向の位置決めをするため、接続部材3の先端部には図2で示すように半月状の切欠き15を設け、節輪11の外周面には前記切欠き15と同じ位置にその長手軸方向に沿ってけがき線16を設けている。
【0012】
そして、湾曲管部2と接続部材3を組み付ける際、その切欠き15とけがき線16の位置を合わせて回転方向の位置決めを行う。このため、その位置決め作業効率がよくなる。また、接続部材3にはけがき線やマジック印等ではなく切欠き15を設けるため、これを露出させる形式でも外観は悪化しない。なお節輪11のけがき線16は接続部材3の中に隠れる範囲に設ける。
【0013】
前記樹脂チューブ13の後端部内周面は最も後端側の節輪11の外周面に被嵌して接着固定されている。また、樹脂チューブ13の先端部内周面は最も先端側の節輪11の外周面に被嵌して接着固定されている。
【0014】
前記湾曲管部2の節輪11には湾曲操作ワイャー7を挿通してガイドするためのガイド部17が切り起こして形成されており、湾曲操作ワイヤー7の先端は最も先端側の節輪11に固着され、湾曲操作ワイヤー7の手元側部分は前記ガイド部17および上記ワイヤーガイド管8を通ってそのワイヤーガイド管8より手元側に延出している。湾曲操作ワイヤー7は内視鏡操作部に設けられた湾曲操作装置に連結され、その湾曲操作装置により個別的に牽引される。そして、牽引した向きに前記湾曲管部2を湾曲するようになっている。
【0015】
以上のような内視鏡挿入部の部組状態でその全外周にはコーティングが施される。すなわち、例えばポリパラキシリレン樹脂を化学蒸着する。ポリパラキシリレン樹脂にはポリモノクロロパラキシリレン(poly−monochloro−para−xylylene )、ポリパラキシリレン(poly−para−xylylene)、ポリジクロロパラキシリレン(poly−dichloro−para−xylylene )等があり、それぞれ性質が適するものを選択または組み合わせてコーティング剤とする。
【0016】
コーティング処理は組み付け完了した挿入部部組を化学蒸着装置のチャンバー内に入れて減圧した後、チャンバー内に気化したポリパラキシリレン樹脂を送り込んで所定時間その雰囲気中に放置することで行われる。コーティング厚は樹脂雰囲気中での放置時間で調節可能である。
【0017】
なお、挿入部部組の形態は、上述のものに限られるものではなく、湾曲管部2の先端側に後述する挿入部先端部の先端枠を接続し、イメージガイドファイバーやライトガイドファイバー等の挿入部内蔵物を組み込んだ状態で、その部組の周面にコーティングを施してもよい。また、コーティングをしたくない部分があればその部分をテープ等でマスキングをしておく。
【0018】
図3は挿入部先端部20を示す断面図であり、図4は図3中のA−A線に沿う断面図である。
挿入部先端部20は先端枠21を備え、この先端枠21にはイメージガイドファイバー22、ライトガイドファイバー23、鉗子チャンネル用チューブ24を接続固定するための接続孔25,26,27が設けられている。各接続孔25,26,27を加工する際、先端枠21の外周面との間の壁が切れてバリが発生しないよう予め切欠き28,29,30を設けてある。
【0019】
ライトガイドファイバー23の先端面には水密および耐薬性を確保するためのカバーガラス31が設置されている。このカバーガラス31は平板状であり、しかも、ライトガイドファイバー23とほぼ同外径に設けられている。これによりライトガイドファイバー23の出射端の部分の細径化が図れるとともに液密確保が容易である。
【0020】
前記湾曲管部2の外周の樹脂チューブ13の最先端部分は先端枠21の後端部外周面を全周にわたって削り落とした小径の段差部32に被嵌して接着剤によって固定されている。樹脂チューブ13の外周に糸を巻き付けて接着する固定方式に比べて外周の細径化が図れる。また、湾曲管部2から挿入部先端部20にわたり同外径で面一に形成できる。
【0021】
図5は内視鏡操作部内の、前記ワイヤーガイド管8の後端部近傍を示す断面図である。
ワイヤーガイド管8の後端部は内視鏡操作部内に設けられて調整ねじ部材を兼ねた円筒状のストッパー部材41の孔42に嵌め込まれている。ストッパー部材41には孔42の一端部において連通し、かつ同軸に設けられ、その孔42よりも内径の小さい小孔43が設けられている。前記ワイヤーガイド管8の後端部には小孔43へのワイヤーガイド管8の落ち込みを防止するためのパイプ44が被嵌固定されている。前記湾曲操作ワイヤー7は前記ワイヤーガイド管8及び小孔43を通って図示しない湾曲操作装置に接続されている。
【0022】
(効果)
内視鏡挿入部の部組状態でその全外周に施すコーティングが化学蒸着法で行うので、液状コーティングに比べて膜厚のムラが非常に少なく、従って、可撓性や耐薬性に偏りがない。
【0023】
接続部材3と可撓管部1および湾曲管部2の接続部等の微細な隙間にも十分コーティングが施されるので、確実に水密が確保できると同時に隙間に薬剤が浸透しないので、接着強度劣化を起こす心配がない。
【0024】
化学蒸着法で行うコーティングは気化したコーティング剤の雰囲気中に内視鏡挿入部の部組を放置しておくだけなので、その挿入部部組状態でのコーティングが可能であり、きわめて作業性がよい。
【0025】
化学蒸着に使用するポリパラキシリレン樹脂はその特性として滑り性がよく、耐薬性もよい。
[付記]
(1)可撓性を有する挿入部を具備する内視鏡において、前記挿入部の外表面にポリパラキシリレン樹脂を化学蒸着したことを特徴とする内視鏡。
【0026】
(2)樹脂よりなる可撓管の先端側に、樹脂チューブを被覆した湾曲部を接続した内視鏡において、前記可撓管と前記湾曲部を接続した後、一体的に外表面にポリパラキシリレン樹脂を化学蒸着したことを特徴とする内視鏡。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、挿入部外周のコーティングにムラがなく、また接続部等の微細な隙間にも十分な膜厚の形成が確保できる。しかも、挿入部外周の滑り性や耐薬性にすぐれる。また、コーティングを行う作業性もよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】コーティングを施す前の状態の内視鏡挿入部の部組を示す断面図。
【図2】接続部材と湾曲管部の節輪との組み付ける際の位置決め状況の説明図。
【図3】挿入部先端部を示す断面図。
【図4】図3中のA−A線に沿う断面図。
【図5】ワイヤーガイド管の後端部近傍を示す断面図。
【符号の説明】
1…可撓管部
2…湾曲管部
3…接続部材
6…段差部
7…湾曲操作ワイヤー
11…節輪
13…樹脂チューブ
14…網状管
20…挿入部先端部
21…先端枠
Claims (1)
- 挿入部を有する内視鏡において、
部組状態での前記挿入部の外表面にポリパラキシレン樹脂を化学蒸着したことを特徴とする内視鏡。
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