JP3712750B2 - 医療用チューブ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、医療用チューブ、特に、内視鏡を構成するカテーテルチューブに関する。
【0002】
【従来の技術】
身体腔内に挿入して用いられるカテーテルチューブにおいて、カテーテルチューブの先端を目的とする部位の方向へ向けたり、目的とする部位に位置させたりするために、遠隔操作によりその先端部を湾曲させる湾曲機構(首振り機構)を有するカテーテルチューブが開発されている。特に、内視鏡を構成するカテーテルチューブにおいては、観察部位の視野を選択するために、先端部の湾曲機構は、重要な機構の一つとなっている。
【0003】
従来、このような内視鏡としては、その先端部に、複数の節輪を回動自在に順次連結した湾曲部を設け、先端が該湾曲部にそれぞれ固定された4本のワイヤーのうちの所望のワイヤーを基端側の操作部にて牽引操作することにより、前記湾曲部を上下左右の4方向に湾曲させる構造のものが用いられていたが、近年、内視鏡の細径化を図るために、節輪を用いない構造の湾曲機構が開発されている。
【0004】
その一例として、ある程度の剛性が付与された非湾曲部とその先端側に位置する湾曲部とで構成されたチューブ本体の長手方向に沿って複数のルーメンが形成されたマルチルーメンカテーテルの1または2つのルーメン内に湾曲部牽引用のワイヤーを挿通した構造のカテーテルチューブがある。このカテーテルチューブでは、細径化のために、ワイヤーを収納するルーメン数を2以下としており、そのため、ワイヤーの牽引操作により湾曲部は1または2方向にのみ湾曲するので、その他の方向への湾曲は、カテーテルチューブ全体をその軸を中心に回転させることで対応している。
【0005】
このような、回転操作を伴うカテーテルチューブでは、カテーテルチューブの柔軟性を可能な限り損なわずに、回転のためのトルク伝達性を付与することが必要とされ、そのための有効な方法として、チューブ本体内に、線材の集合体よりなる補強部材を埋設することが提案されている。
【0006】
しかしながら、このような補強部材を内蔵するチューブ本体は、先端のチューブ切断面に補強部材の端面が露出しており、カテーテルチューブの体内への挿入時等に、露出した線材端で生体組織を傷付けるおそれがある。
【0007】
また、先端のチューブ切断面に、補強部材を有さない短チューブを接続する方法も考えられるが、この接続部に外部からの力が作用すると、補強部材の線材端がカテーテルチューブの外表面に露出することがあり、前記と同様、露出した線材端で生体組織を傷付けるおそれがある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、適度な柔軟性を有し、トルク伝達性、耐潰れ性に優れるとともに、補強材がチューブ外表面に露出せず、安全性が高い医療用チューブを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(7)の本発明により達成される。
【0010】
(1) 長手方向に沿って少なくとも1つのルーメンが形成された可撓性を有するチューブ本体と、該チューブ本体の少なくとも先端部に、チューブ本体の表面に露出することなく前記ルーメンを囲むように設けられた管状の補強材層と、前記チューブ本体の先端に接合された先端部材とを有する医療用チューブであって、
前記補強材層は、線状体を交差させて網状に形成した編組体、線状体をコイル状に巻回したもの、または板状に形成したものであり、かつ前記補強材層の先端部の外径が基端部の外径より小さく、
前記先端部材は、その基端側に前記チューブ本体の先端に嵌合する環状部を有し、該環状部の基端の内径は、前記チューブ本体の先端の外径より大きく、
前記補強材層の先端は、前記環状部の基端より先端側に位置していることを特徴とする医療用チューブ。
【0011】
(2) 前記補強材層の先端は、前記環状部の内部に埋入している上記(1)に記載の医療用チューブ。
【0012】
(3) 前記先端部材は、前記チューブ本体の材料より硬質の材料で構成されている上記(1)または(2)に記載の医療用チューブ。
【0013】
(4) 前記チューブ本体は、複数のルーメンを有し、そのうちの少なくとも1つのルーメン内に、光ファイバー束が収納されており、他のルーメン内にワイヤーが収納されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の医療用チューブ。
【0014】
(5) 前記チューブ本体は、前記他のルーメン内に収納されたワイヤーが基端方向へ牽引されたときに湾曲する湾曲部と、それより基端側に位置し、前記ワイヤーの牽引によっては湾曲しない部分とを有し、前記補強材層の先端部が前記湾曲部に位置している上記(4)に記載の医療用チューブ。
【0015】
(6) 前記ワイヤーの牽引によっては湾曲しない部分の前記他のルーメン内には、湾曲は可能であるがその長手方向には実質的に収縮しない抗収縮部材が収納され、該抗収縮部材の内部に前記ワイヤーが挿通されている上記(5)に記載の医療用チューブ。
【0016】
(7) 前記抗収縮部材は、その先端部が前記他のルーメンに対し固定され、かつ、前記抗収縮部材の先端部は、前記補強材層の先端部より基端側に位置している上記(6)に記載の医療用チューブ。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の医療用チューブを添付図面に示す好適実施例に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の医療用チューブを内視鏡(ファイバースコープ)を構成するカテーテルチューブに適用した場合の実施例を示す全体側面図、図2は、図1に示すカテーテルチューブの先端部の構成を示す斜視図、図3は、図2中のIII −III 線での断面図、図4は、図2中のIV−IV線での断面図、図5は、図4中のV−V線での断面図、図6は、図4中のVI−VI線での断面図、図7は、図1に示すカテーテルチューブにおけるチューブ本体の一部切欠き斜視図である。以下の説明において、図1〜図4中の右側を「基端」、左側を「先端」という。
【0019】
図1〜図7に示すように、本発明のカテーテルチューブ1は、チューブ本体2を有する。このチューブ本体2としては、例えば、軟質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体のような可撓性を有する高分子材料で構成され、特に、後述する境界部24での熱変形を可能とするために、ポリ塩化ビニルや熱可塑性ポリウレタンのような熱可塑性樹脂で構成されているのが好ましい。
【0020】
また、カテーテルチューブ1をX線透視下で確認できるようにするために、チューブ本体2にX線造影性を付与しておくのが好ましく、その方法としては、例えば、チューブ本体2の構成材料中に例えば硫酸バリウム、酸化ビスマス、タングステン等のX線不透過物質を配合する方法、このようなX線不透過物質によるマーカーを埋設または表面に付する方法等が挙げられる。
【0021】
また、挿入する体腔に対する摺動性を向上するために、チューブ本体2の外表面に、例えば親水性ポリマーやフッ素系樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン)のような低摩擦材料をコーティングしてもよい。
【0022】
チューブ本体2の先端側には、後述するワイヤー操作により湾曲する湾曲部21が形成されており、チューブの基端部23には、湾曲部21の湾曲操作やその他の操作を行う操作具9が設置されている。チューブ本体2の湾曲部21と基端部23との間は、中間部22で構成され、中間部22および基端部23は、後述するワイヤー牽引操作によっては湾曲しないような構造となっている。
【0023】
図2〜図4に示すように、チューブ本体2の先端には、先端部材7が接合されている。この先端部材7は、その基端側にチューブ本体2の先端26にこれを覆うように嵌合する環状部71を有している。チューブ本体2の先端の外周面には、その外径が先端へ向けて漸減するようテーパ部25が形成され、一方、環状部71の内周面には、前記テーパ部25に合致するようなテーパ部72が形成され、両テーパ部25、72同士が接着または融着されてチューブ本体2の先端に先端部材7が接合、一体化されている。これにより、環状部71の基端73の内径は、チューブ本体2の先端26の外径より大きく設定され、環状部71の嵌合状態で、チューブ本体2の先端26は、環状部71の先端74付近に位置する。
【0024】
なお、湾曲部21の外表面において、チューブ本体2と先端部材7との境界部は、実質的に段差のない連続面を構成しているのが好ましい。これにより、カテーテルチューブの体内(血管等の管状器官)への挿入等をより円滑かつ安全に行うことができる。
【0025】
また、先端部材7には、ルーメン75および76が貫通して形成されており、先端部材7をチューブ本体2の先端に接合した状態で、ルーメン75、76は、それぞれ、チューブ本体2に形成された後述するルーメン31、32と接続される。
【0026】
このような先端部材7は、チューブ本体2の先端に接合、一体化された後は、チューブ本体2の一部を構成する。
【0027】
先端部材7の主な構成材料としては、前記チューブ本体2の構成材料として例示したものの他、例えば、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、フッ素樹脂、硬質ポリ塩化ビニル、硬質ポリウレタン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン等の各種硬質樹脂、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、タングステン、金、白金等の各種金属、アルミナ、シリカ、ヒドロキシアパタイト等の各種セラミックス等の硬質材料を用いることができる。先端部材7をチューブ本体2の材料より硬質の材料で構成した場合には、後述する補強材層5の端部が外表面に露出しにくいという利点がある。
【0028】
なお、先端部材7は、その構成材料に応じて、チューブ本体2の先端に対し融着または接着される。例えば、先端部材7が前記硬質材料で構成されている場合には、接着剤にて接着される。
【0029】
また、先端部材7に対しても、前記と同様の方法によりX線造影性を付与することができ、これにより、カテーテルチューブ1の先端位置を把握することができる。さらに、先端部材7の外表面に、前記と同様の低摩擦材料をコーティングすることもできる。
【0030】
チューブ本体2の内部には、その長手方向のほぼ全長に渡り、4つのルーメン31、32、33および34が形成されている。図2、図3および図5に示すように、ルーメン31および32は、横断面において、それぞれチューブ本体2の中心軸を介して対向するよう配置されており、両ルーメン31、32の先端は、それぞれ、先端部材7に形成されたルーメン75、76を介してチューブ本体2の先端面に開放している。
【0031】
ルーメン31には、カテーテルチューブ1を挿入する身体腔内を観察する観察器具としての光ファイバー束8が収納されている。この光ファイバー束8は、例えば血管のような管状器官(以下、血管で代表する)の内壁へレーザー光を照射する等の医療処置にも使用することができる。
【0032】
光ファイバー束8は、図5に示すように、送光用ファイバー(ライトガイド)81および受光用ファイバー(イメージファイバー)82で構成されており、これらの光ファイバーを例えばエポキシ、アクリル、シリコーンゴム等の樹脂で固めて束状としたものである。
【0033】
また、光ファイバー束8の先端には、レンズ83が装着され、この部分はルーメン31の先端の開口付近に位置している。なお、光ファイバー束8は、ルーメン31に対し、固定的に設置されていても、摺動可能に設置されていてもよい。
【0034】
操作具9の基端側(図1中右側)の図示しない光源より発せられた光は、送光用ファイバー81内を伝達し、その先端から観察部分へ照射され、その反射光を受光用ファイバー82の先端より取り込み、その映像が該ファイバー82内を伝達され、操作具9の基端側の受像部(図示せず)へと導かれる。
【0035】
ルーメン32は、チューブ本体2の先端へ開放しており、その先端開口より血管内に流体を注入し、あるいは、血管内から流体を吸引することができる。具体的には、このルーメン32は、カテーテルチューブ1を挿入、留置した血管内へ薬液等を投与するのに用いられ、あるいは、内視鏡により血管内を観察する場合に、視界の妨げとなる血液を押し出すための透明液体(例えば、生理食塩水、ぶどう糖液)を噴射するフラッシュ用チャンネルとしても用いられる。
【0036】
また、ルーメン31、32は、上記の他、ガイドワイヤーや医療処置、診断具等の挿通用チャンネルとして用いることもできる。医療処置、診断具としては、例えば、鉗子類、細胞診ブラシ、注射針、高周波、超音波、電気水圧衝撃波等を発するプローブ類(結石破砕用)が挙げられる。
【0037】
なお、ルーメン31、32の少なくとも一方の内面を前述した低摩擦材料で構成する(例えば、低摩擦材料の被覆層を形成)こともできる。この場合には、そのルーメン内に挿入される光ファイバー束や医療処置、診断具等の摺動抵抗が減少し、これらの挿入操作や移動、回転等をより円滑に行うことができる。
【0038】
図4および図5に示すように、ルーメン33および34は、横断面において、それぞれチューブ本体2の中心軸を介して対向するよう、かつルーメン31、32と直行する方向に配置されており、両ルーメン33、34の先端は、それぞれ、先端部材7により閉塞されている。
【0039】
図4および図6に示すように、ルーメン33、34内には、それぞれ、平板状の線材を螺旋状に殆ど隙間なく巻回した平板コイルよりなる抗収縮部材6が収納されている。この抗収縮部材6は、柔軟性を有し、湾曲は可能であるが、その長手方向には実質的に収縮しない抗収縮性を有しており、後述するワイヤー41、42の牽引に伴うチューブ本体2の収縮を防止する。
【0040】
抗収縮部材6の先端部は、チューブ本体2の湾曲部21と中間部22との境界部24付近まで挿入されており、この境界部24において、固定されている。すなわち、境界部24の外周面を例えば熱収縮チューブ(図示せず)で被覆した状態で加熱、加圧(締め付け)すると、チューブ本体材料が溶融または軟化し、ルーメン33、34の内腔が狭くなり、ルーメン33、34のチューブ本体外周側の内壁面が内側へ突出するよう変形して、各抗収縮部材6の外周面に押圧、密着し、それらの摩擦力により、各抗収縮部材6の先端部がルーメン33、34に対し固定される。図示されていないが、熱収縮チューブの締め付けにより、境界部24の外面は、わずかに凹没している。
なお、抗収縮部材6の先端部の固定は、前記方法に限らず、例えば、境界部24において、ルーメン33、34の内面と各抗収縮部材6の外周面とを接着剤(充填材)等で接着する方法、かしめ部材によるかしめにより各抗収縮部材6を締め付けて固定する方法等を採用してもよい。
【0041】
各抗収縮部材6のルーメン33、34に対する固定は、その他の箇所、例えば、チューブ本体2の基端部23においてもなされている。なお、固定箇所および固定面積が多過ぎると、抗収縮部材6の柔軟性が損なわれるため、抗収縮部材6は、先端と基端の2箇所程度で固定されるのが好ましい。
【0042】
ルーメン33、34の各抗収縮部材6の中心部には、それぞれ挿通孔61が形成されており、両挿通孔61内には、湾曲部21を牽引して湾曲させるためのワイヤー41、42が挿通されている。ワイヤー41、42は、それぞれの挿通孔61の先端開口より露出し、湾曲部21におけるルーメン33、34内に挿通され、ワイヤー41、42の先端(ヘッド)43、44は、先端部材7に埋設、固定されている。この場合、ワイヤー41、42の先端43、44は、後述する補強材層5と同様、先端部材7の先端面に露出しないように配設されている。
【0043】
ワイヤー41、42の先端43、44は、それぞれ、チューブ本体2の中心軸から偏心した位置に固定されており、そのため、ワイヤー41、42のうちの一方を基端側へ牽引すると、図1中の一点鎖線で示すように、湾曲部21は、その牽引したワイヤー側へ湾曲する。この場合、境界部24および基端部23において抗収縮部材6がチューブ本体2に対し固定されているため、ワイヤー41、42の牽引による中間部22の湾曲は殆ど生じず、抗収縮部材6が存在しない湾曲部21のみが確実に湾曲する。
【0044】
なお、ワイヤー41、42としては、頻回の牽引操作により断線を生じることがない程度の強度および耐久性を有し、また、伸びの少ないものが好ましく、例えばステンレス鋼、超弾性合金等の金属線や、ポリアミド、ポリエチレン、ポリアリレート、ポリイミド等の高張力樹脂繊維、カーボンファイバー等による単線や繊維束が挙げられる。
【0045】
また、ワイヤー41、42の外径は、その構成材料やチューブ本体2の横断面形状、寸法、構成材料等の諸条件により異なるが、ワイヤー41、42を例えばポリアリレートの繊維束で構成した場合、その外径は、30〜500μm 程度、特に、50〜300μm 程度とするのが好ましい。
【0046】
抗収縮部材6の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼、銅または銅合金等の金属材料や、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル等の各種樹脂が挙げられる。
【0047】
また、抗収縮部材6の厚さは、その構成材料やチューブ本体2の横断面形状、寸法、構成材料等の諸条件により異なるが、例えば平板コイルに用いる線材が長方形断面のステンレス材である場合、その厚さは、20μm 〜1mm程度、特に、50〜300μm 程度とするのが好ましい。
【0048】
なお、抗収縮部材6の平板コイルは、一層一条巻きに限られるものではなく、複数層、複数条巻きであってもよい。
【0049】
図3〜図7に示すように、チューブ本体2の外周部には、チューブ本体2のほぼ全長に渡り、各ルーメン31〜34を囲むように管状の補強材層5が設置されている。この場合、補強材層5は、チューブ本体2の外表面に露出しないように埋設されている。
【0050】
本実施例における補強材層5は、線状体51(補強材)を交差させて網状に形成した編組体で構成されている(図7参照)。この編組体における線状体51の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、超弾性合金等の金属材料や、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド、ABS樹脂等の樹脂材料、カーボンファイバー等が挙げられる。この線状体としては、前記材料の単線や、同種または異種材料の繊維束を用いることができる。
【0051】
このように、チューブ本体2の外周部に補強材層5が設置され、補強されているため、カテーテルチューブ1のねじり剛性が高く、基端部23側での回転の際のトルク伝達性に優れる。さらに、チューブ本体2が湾曲したとき、それに伴ってルーメン31〜34が閉塞または狭窄し難く、また、チューブ本体2が例えばカテーテルチューブ挿入用のシースに設けられた逆流防止弁等により締め付けられても、ルーメン31〜34が潰れることによる閉塞または狭窄が防止される。
【0052】
なお、補強材層5は、各ルーメン31〜34の外周をそれぞれ2重または3重以上に囲んでいてもよい。
【0053】
このような補強材層5の外径は、ほぼ一定であるが、テーパ部25より先端側(先端部52)においては、その外径が先端に向けて漸減(細径化)している。すなわち、補強材層5の先端部52の外径は、補強材層5の基端部の外径より小さく設定されている。
【0054】
また、補強材層5の先端53は、先端部材7の先端面より基端側に位置している。すなわち、補強材層5の先端53は、先端部材7の環状部71の基端73より先端側であり、かつ環状部71の内側に位置している。
【0055】
このような構成とすることにより、特にチューブ本体2と先端部材7との接合部付近等に外力が作用した場合でも、補強材層5の線状体51がカテーテルチューブ1の外表面に露出せず、よって、カテーテルチューブ1の例えば血管への挿入時等において、血管内壁等を傷付けることがなく、安全である。
【0056】
なお、先端部材7をポリ塩化ビニルや熱可塑性ポリウレタンのような熱可塑性樹脂で構成した場合、チューブ本体2に対し融着(熱融着、高周波融着等)により接合するのに適している。このような融着により接合する場合には、図8に示すように、補強材層5の先端53が先端部材7の内部に入り込むことが可能となる。そのようにすれば、カテーテルチューブ1の外表面への線状体51の露出がさらに確実に防止される。
【0057】
図1に示すように、カテーテルチューブ1の基端側に接続された操作具9は、操作具本体91を有し、該操作具本体91の先端部に形成されたマニホールド部92よりチューブ本体2の基端部23が挿入されている。また、操作具本体91の基端側には、把持部93が形成されており、該把持部93の基端部には、内視鏡の光ファイバー束8を前記ルーメン31へ挿入するためのコネクタ94が装着されている。また、把持部93には、斜め方向に分岐した分岐部95が形成され、該分岐部95の端部には、前記ルーメン32へ例えば液体を注入するコネクタ96が装着されている。コネクタ94およびルーメン31、コネクタ96およびルーメン32は、操作具本体91内で、それぞれ、図示しない管路により接続されている。
【0058】
操作具本体91のマニホールド部92と把持部93との間には、ワイヤー41、42を牽引操作する操作ダイヤル97が回転可能に支持されている。この操作ダイヤル97の回転軸には、図示しない巻き取りリールが固着され、操作ダイヤル97と一体的に回転する。ワイヤー41、42の基端側は、それぞれ、ルーメン33、34の基端から露出して操作具本体91内を通り、前記巻き取りリールに互いに反対方向に巻き付けられている。これにより、操作ダイヤル97を例えば図1中時計回りに回転すると、ワイヤー42が牽引され、ワイヤー41が弛緩して湾曲部21が図1および図4中上方へ湾曲し、操作ダイヤル97を前記と逆方向に回転すると、ワイヤー41が牽引され、ワイヤー42が弛緩して湾曲部21が図1および図4中下方へ湾曲する。
【0059】
以上、本発明の医療用チューブを図示の実施例に基づき説明したが、本発明は、これに限定されるものでははい。
【0060】
本発明の医療用チューブにおいて、各ルーメンの数や配置は、図示の構成のものに限定されず、例えば、ルーメン数は、1〜3であってもよい。また、図示のルーメン31〜34に加え、他の1または2以上のルーメンが付加されているものであってもよい。例えば、チューブ本体2の先端部に、作動流体により拡張、収縮するバルーン(図示せず)を設けたバルーンカテーテルとした場合、バルーン内へ作動流体を供給するためのルーメンを付加することができる。
【0061】
また、補強材層5としては、図示のごとき編組体で構成されるものに限らず、例えば、線状体をコイル状に巻回したもの、板状のもの等であってもよい。
また、先端部材7の形状、特にチューブ本体2との接合部の形状は、任意のものが可能であり、また、先端部材7を有さないものであってもよい。
【0062】
以下、本発明の医療用チューブを具体的実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
【0063】
(実施例1)
図1〜図7に示す構造のカテーテルチューブを以下の方法により作製した。
まず、芯金の外面上に形成され、各ルーメン31〜34となる内腔をそれぞれ有する4本のルーメンチューブを用意し、これらを所望の配置で束ねた。
【0064】
次に、各ルーメンチューブの束の回りに、編組体(補強材層5)を巻き付け、さらに、各ルーメンチューブと同様の樹脂材料をコーティングして編組体を固定した。
次に、各ルーメンチューブを同様の樹脂材料で横断面が円形となるように被覆、固定し、編組体が埋設されたチューブ本体2を得た。
【0065】
このようにして得られたチューブ本体2の先端部を加熱しつつ、テーパ付きの金型に押し当てて、テーパ部25を形成した。このとき、図7に示すように、補強材層5の先端部52も、テーパ部25と同形状に整形された。
【0066】
一方、先端部材の素材に対し、金型を用いた加熱加工により、内面にテーパ部72を有する環状部71およびルーメン75、76を形成し、先端部材7を得た。また、この加熱加工の際、先端部材7の内部に、ワイヤー41、42の先端部を埋設した。
【0067】
次に、ルーメン33、34よりそれぞれ芯金を抜き取り、それらのルーメンにそれぞれ平板コイル(抗収縮部材6)を挿入した。平板コイルの先端部外面に予めウレタン系接着剤を塗布、乾燥し、該接着剤塗布部を境界部24に一致させた状態で、境界部24に熱収縮チューブを巻き付け、200℃の熱風で熱収縮させて、チューブ本体2を変形させるとともに前記接着剤を軟化させ、各平板コイルをルーメン33、34に対し接着固定した。
【0068】
次に、ルーメン31、75同士およびルーメン32、76同士が一致するようにしてチューブ本体2のテーパ部25と先端部材7のテーパ部72とを密着させた状態で、これらを金型により加熱、圧着し、その後冷却して、チューブ本体2と先端部材7とを接合、一体化した。このとき、先端が先端部材7に固定されているワイヤー41、42をそれぞれルーメン33、34内に先端側から挿入し、さらに両平板コイルの挿通孔61内に挿通した。
【0069】
次に、ルーメン31、32よりそれぞれ芯金を抜き取り、ルーメン31内に光ファイバー束8を挿入して、本発明のカテーテルチューブを得た。
最後に、カテーテルチューブの基端部に図1に示す構成の操作具9を装着して、内視鏡を構成した。
【0070】
このようにして得られた内視鏡用カテーテルチューブの諸条件は、次の通りである。
【0071】
<チューブ本体>
構成材料:熱可塑性ポリウレタン
(タングステンフィラー含有、軟化点:95℃)
外径:2.5mm
先端の外径:2.3mm
テーパ部のテーパ角度:約10°
全長:約50cm
ルーメン数:4本
操作ワイヤーおよび平板コイル収納用ルーメン:2本(内径0.6mm)
光ファイバー束収納用ルーメン:1本(内径1.0mm)
医療処置、診断具収納用ルーメン:1本(内径1.0mm)
【0072】
<先端部材>
構成材料:熱可塑性ポリウレタン
(タングステンフィラー含有、軟化点:130℃)
外径:2.5mm
環状部基端内径:2.5mm
環状部先端内径:2.1mm
テーパ部のテーパ角度:約10°
全長:約5mm
ルーメン数:4本
操作ワイヤー収納用ルーメン:2本(先端閉塞、内径0.3mm)
光ファイバー束収納用ルーメン:1本(内径1.0mm)
医療処置、診断具収納用ルーメン:1本(内径1.0mm)
【0073】
<平板コイル>
構成材料:ステンレス鋼
構造:一条一層密着巻き
外径:約0.5mm
内径:約0.35mm
【0074】
<ワイヤー>
構成材料:ポリアリレート製撚り糸
本数:2本
外径:約0.3mm
【0075】
<編組体>
素線構成材料:ステンレス鋼
素線数:各16本(右巻き8本、左巻き8本)
素線径:0.05mm
外径:2.4mm
先端の外径:2.2mm
先端の位置:先端部材の先端面より4mm基端側
【0076】
<光ファイバー束>
構成:イメージファイバー(直径約3μm の石英ファイバー約2000本)
ライトガイド(直径約50μm の石英ファイバー25本)
外径:約0.9mm
【0077】
(実施例2)
先端部材を熱可塑性ポリウレタン(タングステンフィラー含有、軟化点:95℃)で構成し、編組体の先端の外径を2.3mmとした以外は、実施例1と同様のカテーテルチューブを作製した。
【0078】
このカテーテルチューブにおいては、図8に示すように、編組体(補強材層5)の先端1mmが先端部材7の内部に埋入していた。
【0079】
(実施例3)
先端部材をポリカーボネート(タングステンフィラー含有)で構成し、チューブ本体に対し接着剤で接着した以外は、実施例1と同様のカテーテルチューブを作製した。
【0080】
上記実施例1〜3の各カテーテルチューブについて、操作具9の操作ダイヤル97を回転操作して、湾曲部21を湾曲させたところ、いずれも良好に湾曲操作がなされ、ルーメンの潰れによる閉塞、狭窄も生じなかった。
【0081】
次に、上記実施例1〜3の各カテーテルチューブについて、回転操作におけるトルク伝達性を調べた。その測定方法は、カテーテルチューブを直線状に伸ばした状態で、その基端側を回転させ、先端部に発生する回転力をトルクゲージにて測定することにより行った。
【0082】
測定の結果、実施例1〜3のカテーテルチューブは、いずれも、カテーテルチューブ基端側でのトルクを先端部に70%以上伝達しており、優れたトルク伝達性を有していた。
【0083】
次に、上記実施例1〜3の各カテーテルチューブについて、チューブ本体に所定の応力を作用させたときの編組体の露出の有無を調べた。その測定方法は、カテーテルチューブの先端を、チューブの軸と垂直な面に対して1kgf/cm2 の荷重で10秒間押し当てた。
【0084】
測定の結果、実施例1〜3、特に実施例3のカテーテルチューブは、編組体またはそれを構成する線状体のチューブ外表面への露出は、全く認められなかった。
【0085】
本発明の医療用チューブの用途は、前述した内視鏡用のカテーテルチューブに限らず、例えば、アブレーションカテーテル、心拍出量測定用カテーテル等の各種カテーテルチューブや、腹腔鏡下手術等に用いるトロカール管、その他各種管体等に適用することができる。
【0086】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の医療用チューブによれば、補強材層、特に編組体よりなる補強材層の設置により、優れたトルク伝達性およびルーメンの耐潰れ性が確保されるとともに、補強材の端部がチューブ本体の外表面に露出することが防止されるので、例えばチューブの身体腔内への挿入時に、その内壁面等の生体組織を傷付けるおそれがなく、安全性が高い。
【0087】
また、環状部を有する先端部材を設け、補強材層の先端を環状部の基端より先端側、特に環状部の内側に位置させた場合や環状部の内部に埋入した場合には、補強材の端部の露出防止効果がさらに顕著に発揮される。
また、補強部材を編組体とした場合には、軽量でかつ高い補強効果が得られ、トルク伝達性がさらに向上し、チューブの細径化にとって有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の医療用チューブを内視鏡を構成するカテーテルチューブに適用した場合の実施例を示す全体側面図である。
【図2】図1に示すカテーテルチューブの先端部の構成を示す斜視図である。
【図3】図2中のIII −III 線断面図である。
【図4】図2中のIV−IV線断面図である。
【図5】図4中のV−V線断面図である。
【図6】図4中のVI−VI線断面図である。
【図7】図1に示すカテーテルチューブにおけるチューブ本体の一部切欠き斜視図である。
【図8】カテーテルチューブの先端部の他の構成例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 カテーテルチューブ
2 チューブ本体
21 湾曲部
22 中間部
23 基端部
24 境界部
25 テーパ部
26 先端
31〜34 ルーメン
41、42 ワイヤー
43、44 先端
5 補強材層
51 線状体
52 先端部
53 先端
6 抗収縮部材
61 挿通孔
7 先端部材
71 環状部
72 テーパ部
73 基端
74 先端
75、76 ルーメン
8 光ファイバー束
81 送光用ファイバー
82 受光用ファイバー
83 レンズ
9 操作具
91 操作具本体
92 マニホールド部
93 把持部
94 コネクタ
95 分岐部
96 コネクタ
97 操作ダイヤル
Claims (7)
- 長手方向に沿って少なくとも1つのルーメンが形成された可撓性を有するチューブ本体と、該チューブ本体の少なくとも先端部に、チューブ本体の表面に露出することなく前記ルーメンを囲むように設けられた管状の補強材層と、前記チューブ本体の先端に接合された先端部材とを有する医療用チューブであって、
前記補強材層は、線状体を交差させて網状に形成した編組体、線状体をコイル状に巻回したもの、または板状に形成したものであり、かつ前記補強材層の先端部の外径が基端部の外径より小さく、
前記先端部材は、その基端側に前記チューブ本体の先端に嵌合する環状部を有し、該環状部の基端の内径は、前記チューブ本体の先端の外径より大きく、
前記補強材層の先端は、前記環状部の基端より先端側に位置していることを特徴とする医療用チューブ。 - 前記補強材層の先端は、前記環状部の内部に埋入している請求項1に記載の医療用チューブ。
- 前記先端部材は、前記チューブ本体の材料より硬質の材料で構成されている請求項1または2に記載の医療用チューブ。
- 前記チューブ本体は、複数のルーメンを有し、そのうちの少なくとも1つのルーメン内に、光ファイバー束が収納されており、他のルーメン内にワイヤーが収納されている請求項1ないし3のいずれかに記載の医療用チューブ。
- 前記チューブ本体は、前記他のルーメン内に収納されたワイヤーが基端方向へ牽引されたときに湾曲する湾曲部と、それより基端側に位置し、前記ワイヤーの牽引によっては湾曲しない部分とを有し、前記補強材層の先端部が前記湾曲部に位置している請求項4に記載の医療用チューブ。
- 前記ワイヤーの牽引によっては湾曲しない部分の前記他のルーメン内には、湾曲は可能であるがその長手方向には実質的に収縮しない抗収縮部材が収納され、該抗収縮部材の内部に前記ワイヤーが挿通されている請求項5に記載の医療用チューブ。
- 前記抗収縮部材は、その先端部が前記他のルーメンに対し固定され、かつ、前記抗収縮部材の先端部は、前記補強材層の先端部より基端側に位置している請求項6に記載の医療用チューブ。
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