JP3541492B2 - 杢調パイル布帛 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、車両内装用、家庭内装用、オフィス内装用、展示場内装用あるいは衣料用等に好適なパイル布帛に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両内装用の布帛としては織物、編物、パイル織編物、レザー、レザー調の布帛など種々の布帛が使用されている。この中で特に多く使用されている布帛は、モケットと呼ばれるパイル織物、トリコットの起毛布帛、ダブルラッセル編物がある。
【0003】
これらパイル布帛の改良についても、例えば、特開平5−321060号公報に見られるように使用時に毛倒れしないように収縮率の異なる繊維を混用する方法が提案されている。
【0004】
また、パイル布帛特有の白ボケ現象を改良するため、例えば、特開昭62−268855号公報、特開昭63−105143号公報では、パイル糸として用いるポリエステル繊維が芯鞘構造で、鞘成分は芯成分より濃く染まりやすいような成分を使用したものである。
【0005】
さらに、シルク調パイル布帛を得るため、例えば、特公平6−21398号公報では変形十字あるいはT字断面形状繊維の繊度ミックス繊維を使用することが提案されている。特開昭62−21842号公報、特開昭63−59454号公報では扁平糸を用いてソフトな風合いを有し、立毛感や地透け感を改善したものも提案されている。
【0006】
さらにまた、特開昭63−126941号公報にはソフトな風合いで毛倒れしない立毛パイル布帛を得る方法として、少なくとも2種類のフイラメントからなり、繊度の小さいフィラメントが繊度の大きいフィラメントを中心にして周囲を囲むように配列され、かつ繊度の小さいフィラメントの先端が繊度の大きいフィラメントの先端よりも高く突出してカットパイル先端面に凹凸が形成されている立毛布帛が提案されている。
【0007】
しかしながら、上記いずれの従来技術においてもソフトな風合いを有しながら、耐毛倒れ性が良好で、かつパイル面のカバリング性が高く、パイル表面に明度差の杢感を有し、しかもプリント発色性に優れるという特性を兼ね備えた杢調パイル布帛は得られていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ソフトな風合いを有し、耐毛倒れ性が良好で、パイル面のカバリング性が高く、パイル表面に明度差の杢感を有し、かつプリント発色性の良好な杢調パイル布帛を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記の課題を解決するために、以下の構成を有する。
【0010】
すなわち、パイル布帛のパイル部構成繊維が単繊維繊度が1.5〜6デニールであるポリエステルからなり、該パイル部構成繊維がH型断面繊維を含み、該H型断面繊維の縦横の長さ比b/aが1.2以下であり、かつ縦の長さbと連結部の幅cとの関係が(b−c)/2≧2μmであって、さらに該パイル部構成繊維が艶消剤0.7重量%以下を含む丸断面形状を有する繊維Aが20〜80重量%と、艶消剤1.5重量%以上を含む上記H型断面繊維である繊維Bが80〜20重量%からなるとともに、パイル部構成繊維が綿染め、糸染め、または地染めされてなり、着色プリント、プリント抜染、抜染後着色プリント、または抜染剤入り着色プリントされてなることを特徴とする杢調パイル布帛である。
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明の杢調パイル布帛は、パイル部構成繊維にH型断面繊維を含むものである。図1は、本発明の杢調パイル布帛を構成するH型断面繊維の断面の一例を示す説明図である。この断面形状は、本発明の風合い、耐毛倒れ性、パイル面のカバリング性、プリント発色性に影響する重要な要素であり、図1のようにH型の形状を有する断面である。すなわち、本発明でいうH型断面形状は、図1でより具体的に説明すると、両側に位置して上下方向に伸びている部分(以下「足」と称する)と、その二つの足を結ぶように水平線(左右)方向に伸びている連結部とから形成されてH型をなす断面形状である。
【0013】
本発明においては、H型断面形状が、横方向の長さaと縦方向の長さbとの比b/aが1.2以下であることが重要である。ここでいうH型断面形状の横方向の長さaとは、図1で示すように両足の外側面の接線間の長さをいう。一つの足の外側面に接する接線L1 と他の足の外側面に接する接線L2 が平行にならない場合は、図2に示す各交点から求めるものとする。すなわち、図2に示すように、足の外側面に接する接線L1 ,L2 を描き、接線L1 と左の足の上端に接する水平線M1 との交点O、接線L1 と左の足の下端に接する水平線M2 との交点P、の接線L2 と右の足の上端に接する水平線M3 との交点Q、接線L2 と右の足の下端に接する水平線M4 との交点Rを求める。次に、交点Oと交点Qをそれぞれ通過する垂線間の距離a1 と、交点Pと交点Rをそれぞれ通過する垂線間の距離a2 を求め、それらの距離の平均値、すなわち、(a1 +a2 )/2の値を横方向の長さaとする。
【0014】
また、H型断面形状の縦方向の長さbとは、図1に示すように、両足の上部を結ぶ接線と両足下部を結ぶ接線間の長さをいう。一つの足の長さと他の一つの足の長さが異なる場合には、先の図2でいうと、左の足の長さとして、左の足の上端に接する水平線M1 と左の足の下端に接する水平線M2 との距離b1 を求め、右の足の長さとして、右の足の上端に接する水平線M3 と右の足の下端に接する水平線M4 との距離b2 を求め、それらの距離の平均値、すなわち(b1 +b2 )/2の値を縦方向の長さbとする。
【0015】
H型断面繊維の縦横の長さ比b/aが1.2を越えると両足の長さが長くなり、両足をつないでいる連結部の長さが短くなって、両足の占める面積が大きくなり、いわゆる扁平断面に近くなって耐毛倒れ性が低下しやすくなる。
【0016】
また、H型の両足をつないでいる連結部の幅c(図1で説明すると、連結部の上下方向の長さ)がbとの関係において、(b−c)/2が2μm以上であることが必要である。2μm未満であればH型断面で二つの足と連結部によって形成される溝(上側と下側に形成される凹部)が浅くなり、単純な扁平繊維と同様の形状となるため耐毛倒れ性が低下しやすくなり、それと共にソフトな風合いを保ちながらパイル面の高いカバリング性や高いプリント発色性を得ることができなくなる。
【0017】
なお、このb/aおよび(b−c)/2は、パイルの電子顕微鏡断面写真(倍率は1000倍)をとり、その写真からa、b、cの長さを測定して、断面20個所の平均を求めたものである。
【0018】
次に、本発明の杢調パイル布帛のパイル部構成繊維に含まれるH型断面繊維の割合は、20重量%以上80重量%以下とするものである。20重量%未満では本発明の狙いであるソフトな風合いを有し、耐毛倒れ性が良好で、パイル面のカバリング性が高く、かつプリント発色性の良好な杢調パイル布帛が得難くなり、特にプリント発色性が低くなる。
【0019】
ここでいうプリント発色性とは、通常のオーバープリントの発色性や柄のシャープさ、地染め後のオーバープリントの発色性や柄のシャープさ、地染め後の抜染での染料の抜け易さ、地染め抜染後のプリントでの発色性や柄のシャープさ、地染め後の着抜プリントでの発色性や柄のシャープさである。
【0020】
本発明の杢調パイル布帛のプリント発色性が良いのは、従来の丸断面性繊維などと比較下に解析した結果、H型断面形状によってプリント糊がパイルの深さ方向に深く浸透し多量に付着し易い形状であり、そのためいわゆる糊食い性が良いことや、H型断面形状によってパイルが良く分散して立毛しているため、プリント糊がいずれのパイルにも均一に付着し易いためであると考えられる。
【0021】
本発明においては、繊維Aとして丸断面繊維、繊維BとしてH型断面繊維を用いる。H型断面繊維と丸断面繊維とを組み合わせた場合には、断面形状の異なる組み合わせの効果によってさらに耐毛倒れ性や抗フィブリル性を向上させることができる。また、この場合、丸断面繊維に艶消剤を0.7重量%以下含む繊維Aとし、H型断面繊維に艶消剤を1.5重量%以上含む繊維Bとしてパイル布帛とすると、丸断面繊維とH型断面繊維の明度差をより高めることができるため、杢感がより明瞭になる。
【0022】
さらに、本発明の杢調パイル布帛のパイル部構成繊維は、艶消剤の含有量が異なる繊維からなるものである。すなわち、艶消剤0.7重量%以下を含む繊維Aと艶消剤1.5重量%以上を含む繊維Bからなるものであり、これらの割合は、繊維Aを20〜80重量%、繊維Bを80〜20重量%とする必要がある。
【0023】
この艶消剤は、パイルが染色された場合ほぼ同等の染料が繊維に与えられても、例えば図3のように艶消剤を多量に含む繊維は、艶消剤の乱反射作用により明度が高くなる効果があり、高明度化をより効果的にするには艶消剤を1.5重量%以上含有させる必要がある。反対に艶消剤の乱反射作用による高明度化を押さえるには艶消剤0.7重量%以下にする必要がある。同一条件で同時に染色された場合のこれら明度の高いパイル構成繊維と明度の低いパイル構成繊維で得られる杢感を表現するには繊維Aあるいは繊維Bの割合を20重量%以上にする必要がある。繊維Aあるいは繊維Bの割合がそれぞれ20重量%未満では明度の高いパイル構成繊維または明度の低いパイル構成繊維の割合が低くなり過ぎて十分な杢感が得られない。艶消剤は特に限定されるものではないが、酸化チタンが代表的な例として挙げられ、その他、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化アルミニウムなどの無機粒子などが挙げられる。
【0024】
なお、繊維Aあるいは繊維Bは本発明でいうH型断面繊維のみであってもよいし、H型断面繊維と他の断面繊維、例えば丸断面繊維、三葉形断面繊維、扁平断面繊維等との混用であってもよい。特に、H型断面繊維と丸断面繊維とを組み合わせた場合には、断面形状の異なる組み合わせの効果によってさらに耐毛倒れ性や抗フィブリル性を向上させることができるので好ましい。また、この場合、丸断面繊維に艶消剤を0.7重量%以下含む繊維Aとし、H型断面繊維に艶消剤を1.5重量%以上含む繊維Bとしてパイル布帛とすると、丸断面繊維とH型断面繊維の明度差をより高めることができるため、杢感がより明瞭になるので好ましい。
【0025】
なお、一般に杢感とは、明度の高いパイルと明度の低いパイルあるいは色相差や彩度差等があるパイルが互いに集団で存在し、粒状を呈するものをいうが、ここでいう杢感とは、明度の高いパイルと明度の低いパイルが互いに集団で存在し、粒状を呈するものの他、これら明度差を有するパイルが分散状態で存在する、いわゆる霜降り状のものもあえて杢感と定義する。
【0026】
本発明の杢調パイル布帛において、パイル部構成繊維の繊維Aおよび繊維Bの単繊維繊度は、ソフトな風合いを得つつ、毛倒れ、繊維のささくれ現象であるいわゆるフィブリル化を防止する観点から、1.5デニール以上であり、一方、繊維の曲げ剛性が高くなって風合いが粗鋼になるのを防ぐ観点から、6デニール以下である。より好ましくは2デニール以上4デニール以下の範囲である。杢調パイル布帛が車両用に用いられる場合、パイルとしては風合い、耐毛倒れ性が重要な要求特性となる。
【0027】
一般的にパイル部構成繊維の側面がパイル表面に現れやすいため、光がパイル面に当たると鏡面反射しやすく、見る方向によって鏡面反射光つまり白色光が高くなる傾向があり白ボケと呼ばれる現象を生じ易い。そうした白ボケを防止する観点から、本発明においてパイル部を構成する繊維Aは酸化チタンなどの艶消剤を0.01重量%以上含有させるものである。また、繊維Bの艶消剤の上限はその要求に応じて適宜設定すれば良いが、紡糸工程における工程安定性の観点からは、高々7重量%以下である。
【0028】
杢調パイル布帛のパイル部を構成する繊維Aおよび繊維Bとしては車両用として特に耐光性が要求されるポリエステル繊維を用いる。
【0029】
本発明の杢調パイル布帛は無地染めであってもプリントでもあってもソフトな風合いを有し、耐毛倒れ性が良好で、パイル面のカバリング性が高く、パイル表面に明度差の杢感を有する効果を発揮するが、特にパイル部を構成する繊維Aおよび繊維Bが綿染め、糸染め、または布帛液中染色等により地染めされてなり、プリント抜染または抜染後着色プリントまたは抜染剤入りプリントされたものがより効果的である。これらプリントパイル布帛では、上記ソフトな風合いを有し、耐毛倒れ性が良好で、パイル面のカバリング性が高く、パイル表面に明度差の杢感を有する効果に加えて優れたプリント発色性を発揮する。
【0030】
杢調パイル布帛のパイル糸は紡績糸の形態でも良いし、フィラメント糸形態、タスラン等のエァー加工フィラメント糸形態や仮ヨリ等の、フィラメント加工糸形態、さらには、それら紡績糸とフィラメント糸の複合糸や交織・交編などの混用形態でも良い。また、パイル布帛としては、特に限定されず、モケットと呼ばれるパイル織物、トリコット・ダブルラッセル等の編物の形態でも良い。
【0031】
【実施例】
次に本発明を実施例、比較例によりさらに詳細に説明する。実施例中に記載した諸特性の測定法を次に示す。
【0032】
[プリント発色性]
地染めのアルカリ抜染性、オーバープリントや着抜染時のプリントの鮮明性と柄のシャープさを目視判定し、優から不可までの7段階で評価した。
【0033】
[耐毛倒れ性]
パイル布帛の上に8cmφ、2kgの重りをのせた状態で80℃の熱風乾燥機の中に2時間放置した後、熱風乾燥機からパイル布帛を取り出し、重りを除いて重りをのせた部分とのせない部分の状態を目視判定し、優から不可まで7段階で評価した。
【0034】
[カバリング性]
パイル布帛の表面地割れや虫食いの状態を目視判定し、優から不可まで7段階で評価した。
【0035】
[ソフト風合い]
パイル布帛の表面の触感を判定し、ソフトから粗剛まで7段階で評価した。
【0036】
[耐白ボケ性]
パイル布帛を10×10cmの方形に4枚カットし上段左に正タテ方向が上下方向になるように置き、上段右に正ヨコ方向が左右方向になるように置き、下段左に逆ヨコ方向が左右方向になるように置き、下段右に逆タテ方向が上下方向になるように置いて、種々の角度から目視判定し、優から不可まで7段階で評価した。
【0037】
[杢感]
パイル布帛の杢感あるいは霜降り感を目視判定し、優から不可まで7段階で評価した。
【0038】
[実施例1]
酸化チタンを2.3重量%含有した通常のポリエチレンテレフタレートを用いて溶融紡糸、延伸して、3デニール、51mmのH型断面形状ステープルを製造した。このステープルのb/a=1.20、(b−c)/2=8.7μmであった。このステープルを用いて撚係数=3.2の20番手(綿番手)の紡績糸とした。これとは別に、酸化チタンを0.04重量%含有した通常のポリエチレンテレフタレートを用いて溶融紡糸、延伸して、2.5デニール、51mmの丸断面形状ステープルを製造した。このステープルを用いて撚係数=3.2の20番手(綿番手)の紡績糸とした。これら2種類の紡績糸を用いて上撚係数=3.4の双糸とし、通常のチーズ染色方法でベージュ色に染色してパイル糸とした。また、地糸はポリエステル65%、レーヨン35%の30/2(綿番手)の紡績糸を使用し、パイル経糸密度=42本/in、地経糸密度=42本/in、地緯糸密度=42本/in、パイル長=2.5mmの条件で二重織モケットを製織した後、毛さばき、剪毛してパイル布帛を得た。得られたパイル布帛を通常のアルカリ抜染、プリント、乾燥、蒸し、洗浄、乾燥して6色の幾何学模様がプリントされたパイル布帛を得た。得られたプリントパイル布帛は、チーズ染めの染料が抜染時に良く抜け、その上にプリントした柄部分の色が鮮やかに着色し、かつ地色とプリント部の境界がシャープないわゆるプリント発色性が良好で、かつH型断面形状ステープルによるパイル繊維が丸断面形状ステープルによるパイル繊維に比べて明度が高い明度差杢感を有する杢調パイル布帛が得られた。また、このプリントパイル布帛はカバリング性良好で(パイル表面に虫食い状の未パイル部分がない)、耐毛倒れ性や耐白ボケ性が高く、ソフトな風合いが得られた。
【0039】
パイル布帛に使用した原綿特性とプリントパイル布帛特性を表1に示す。
【0040】
[実施例2]
H型断面形状ステープル製造時に紡糸口金のみを変更し、ステープルのb/a=0.66、(b−c)/2=5μmとする他は実施例1と同様にしてプリントされたパイル布帛を得た。得られたプリントパイル布帛は、チーズ染めの染料が抜染時に良く抜け、その上にプリントした柄部分の色が鮮やかに着色し、かつ地色とプリント部の境界がシャープないわゆるプリント発色性が良好で、かつH型断面形状ステープルによるパイル繊維が丸断面形状ステープルによるパイル繊維に比べて明度が高い明度差杢感を有する杢調パイル布帛が得られた。また、このプリントパイル布帛はカバリング性良好で、耐毛倒れ性や耐白ボケ性が高く、ソフトな風合いが得られた。
【0041】
パイル布帛に使用した原綿特性とプリントパイル布帛特性を表1に示す。
【0042】
[実施例3]
H型断面形状ステープル製造時に紡糸口金のみを変更し、ステープルのb/a=0.32、(b−c)/2=2.1μmとする他は実施例1と同様にしてプリントされたパイル布帛を得た。得られたプリントパイル布帛は、チーズ染めの染料が抜染時に良く抜け、その上にプリントした柄部分の色が鮮やかに着色し、かつ地色とプリント部の境界がシャープないわゆるプリント発色性が良好で、かつH型断面形状ステープルによるパイル繊維が丸断面形状ステープルによるパイル繊維に比べて明度が高い明度差杢感を有する杢調パイル布帛が得られた。また、このプリントパイル布帛はカバリング性良好で、耐毛倒れ性や耐白ボケ性が高く、ソフトな風合いが得られた。
【0043】
パイル布帛に使用した原綿特性とプリントパイル布帛特性を表1に示す。
【0044】
[実施例4]
H型断面形状ステープル製造時に酸化チタンを1.5重量%含有した通常のポリエチレンテレフタレートチップを用いること、および丸断面形状ステープルを製造時に酸化チタンを0.7重量%含有した通常のポリエチレンテレフタレートチップを用いること以外は、実施例2と同様にしてプリントされたパイル布帛を得た。得られたプリントパイル布帛は、チーズ染めの染料が抜染時に良く抜け、その上にプリントした柄部分の色が鮮やかに着色し、かつ地色とプリント部の境界がシャープないわゆるプリント発色性が良好で、かつH型断面形状ステープルによるパイル繊維が丸断面形状ステープルによるパイル繊維に比べて明度が高い明度差杢感を有する杢調パイル布帛が得られた。また、このプリントパイル布帛はカバリング性良好で、耐毛倒れ性や耐白ボケ性が高く、ソフトな風合いが得られた。
【0045】
パイル布帛に使用した原綿特性とプリントパイル布帛特性を表1に示す。
【0046】
[実施例5]
H型断面形状ステープル製造時に酸化チタンを2重量%含有した通常のポリエチレンテレフタレートチップを用いること、および丸断面形状ステープルを製造時に酸化チタンを0.7重量%含有した通常のポリエチレンテレフタレートチップを用いること以外は、実施例2と同様にしてプリントされたパイル布帛を得た。
【0047】
得られたプリントパイル布帛は、チーズ染めの染料が抜染時に良く抜け、その上にプリントした柄部分の色が鮮やかに着色し、かつ地色とプリント部の境界がシャープないわゆるプリント発色性が良好で、かつH型断面形状ステープルによるパイル繊維が丸断面形状ステープルによるパイル繊維に比べて明度が高い明度差杢感を有する杢調パイル布帛が得られた。また、このプリントパイル布帛はカバリング性良好で、耐毛倒れ性や耐白ボケ性が高く、ソフトな風合いが得られた。
【0048】
パイル布帛に使用した原綿特性とプリントパイル布帛特性を表1に示す。
【0049】
[実施例6]
実施例2で製造したH型断面形状ステープルおよび丸断面形状ステープルを使用し、H型断面形状ステープル21重量%、丸断面形状ステープル79重量%の20番手(綿番手)混紡糸とする他は、実施例2と同様にしてプリントされたパイル布帛を得た。得られたプリントパイル布帛は、チーズ染めの染料が抜染時に良く抜け、その上にプリントした柄部分の色が鮮やかに着色し、かつ地色とプリント部の境界がシャープないわゆるプリント発色性が良好で、かつH型断面形状ステープルによるパイル繊維が丸断面形状ステープルによるパイル繊維に比べて明度が高い明度差杢感(霜降り感)を有する杢調パイル布帛が得られた。また、このプリントパイル布帛はカバリング性良好で、耐毛倒れ性や耐白ボケ性が高く、ソフトな風合いが得られた。
【0050】
パイル布帛に使用した原綿特性とプリントパイル布帛特性を表1に示す。
【0051】
[実施例7]
H型断面形状ステープル製造時および丸断面形状ステープル製造時に口金のみを変更し、1.6デニールのH型断面形状ステープルおよび1.6デニールの丸断面形状ステープルを製造する他は、実施例2と同様にしてプリントされたパイル布帛を得た。得られたプリントパイル布帛は、チーズ染めの染料が抜染時に良く抜け、その上にプリントした柄部分の色が鮮やかに着色し、かつ地色とプリント部の境界がシャープないわゆるプリント発色性が良好で、かつH型断面形状ステープルによるパイル繊維が丸断面形状ステープルによるパイル繊維に比べて明度が高い明度差杢感を有する杢調パイル布帛が得られた。また、このプリントパイル布帛はカバリング性良好で、耐毛倒れ性や耐白ボケ性が高く、ソフトな風合いが得られた。
【0052】
パイル布帛に使用した原綿特性とプリントパイル布帛特性を表1に示す。
【0053】
[実施例8]
H型断面形状ステープル製造時および丸断面形状ステープル製造時に口金のみを変更し、5.9デニールのH型断面形状ステープルおよび6デニールの丸断面形状ステープルを製造する他は、実施例2と同様にしてプリントされたパイル布帛を得た。得られたプリントパイル布帛は、チーズ染めの染料が抜染時に良く抜け、その上にプリントした柄部分の色が鮮やかに着色し、かつ地色とプリント部の境界がシャープないわゆるプリント発色性が良好で、かつH型断面形状ステープルによるパイル繊維が丸断面形状ステープルによるパイル繊維に比べて明度が高い明度差杢感を有する杢調パイル布帛が得られた。また、このプリントパイル布帛はカバリング性良好で、耐毛倒れ性や耐白ボケ性が高く、ソフトな風合いが得られた。
【0054】
パイル布帛に使用した原綿特性とプリントパイル布帛特性を表1に示す。
【0055】
[実施例9]
H型断面形状ステープル製造時に酸化チタンを2.3重量%含有した通常のポリエチレンテレフタレートチップおよび酸化チタンを0.04重量%含有した通常のポリエチレンテレフタレートチップを用いて、それぞれ溶融紡糸、延伸して、3デニール、51mmのH型断面形状ステープルを製造し、それぞれ20番手 (綿番手)の紡績糸として、これら2種類の紡績子を双糸化する他は、実施例2と同様にしてプリントされたパイル布帛を得た。得られたプリントパイル布帛は、チーズ染めの染料が抜染時に良く抜け、その上にプリントした柄部分の色が鮮やかに着色し、かつ地色とプリント部の境界がシャープないわゆるプリント発色性が良好で、かつ酸化チタンを2.30重量%含有H型断面形状ステープルによるパイル繊維が酸化チタンを0.04重量%含有したH型断面形状ステープルによるパイル繊維に比べて明度が高い明度差杢感を有する杢調パイル布帛が得られた。また、このプリントパイル布帛はカバリング性良好で、耐毛倒れ性や耐白ボケ性が高く、ソフトな風合いが得られた。
【0056】
[比較例1]
H型断面形状ステープル製造時に紡糸口金のみを変更し、ステープルのb/a=1.29、(b−c)/2=12.1μmとする他は実施例2と同様にしてプリントされたパイル布帛を得た。得られたプリントパイル布帛は、チーズ染めの染料が抜染時に良く抜け、その上にプリントした柄部分の色が鮮やかに着色し、かつ地色とプリント部の境界がシャープないわゆるプリント発色性が良好で、かつH型断面形状ステープルによるパイル繊維が丸断面形状ステープルによるパイル繊維に比べて明度が高い明度差杢感を有する杢調パイル布帛が得られた。また、このプリントパイル布帛はカバリング性良好で、ソフトな風合いが得られた。しかし、H型断面形状の両足の長さが長くなり、両足をつないでいる柱が短くなって、両足外側面の面積が大きくなって、いわゆる扁平断面に近くなっているため耐毛倒れ性や耐白ボケ性が低く、車両用パイル布帛としては品質的に劣るものであった。
【0057】
パイル布帛に使用した原綿特性とプリントパイル布帛特性を表1に示す。
【0058】
[比較例2]
H型断面形状ステープル製造時に紡糸口金のみを変更し、ステープルのb/a=0.29、(b−c)/2=1.8μmとする他は実施例2と同様にしてプリントされたパイル布帛を得た。得られたプリントパイル布帛は、チーズ染めの染料が抜染時に良く抜け、その上にプリントした柄部分の色が鮮やかに着色し、かつ地色とプリント部の境界がシャープないわゆるプリント発色性が良好で、かつH型断面形状ステープルによるパイル繊維が丸断面形状ステープルによるパイル繊維に比べて明度が高い明度差杢感を有する杢調パイル布帛が得られた。また、このプリントパイル布帛はカバリング性良好で、ソフトな風合いが得られた。しかし、H型断面形状両足をつないでいる柱が長く、耐毛倒れ性や耐白ボケ性が低く、かつH型断面形状両足をつないでいる柱が薄く、抗フィブリル性がやや低い車両用パイル布帛としては品質的に劣るものであった。
【0059】
パイル布帛に使用した原綿特性とプリントパイル布帛特性を表1に示す。
【0060】
[比較例3]
H型断面形状ステープル製造時に酸化チタンを1.5重量%含有した通常のポリエチレンテレフタレートチップを用いること、および丸断面形状ステープルを製造時に酸化チタンを0.8重量%含有した通常のポリエチレンテレフタレートチップを用いること以外は、実施例2と同様にしてプリントされたパイル布帛を得た。得られたプリントパイル布帛は、チーズ染めの染料が抜染時に良く抜け、その上にプリントした柄部分の色が鮮やかに着色し、かつ地色とプリント部の境界がシャープないわゆるプリント発色性が良好で、かつカバリング性良好で、耐毛倒れ性や耐白ボケ性が高く、ソフトな風合いが得られた。しかし、H型断面形状ステープルによるパイル繊維と丸断面形状ステープルによるパイル繊維の明度差が少なく杢感の劣るものであった。
【0061】
パイル布帛に使用した原綿特性とプリントパイル布帛特性を表1に示す。
【0062】
[比較例4]
H型断面形状ステープル製造時に酸化チタンを1.4重量%含有した通常のポリエチレンテレフタレートチップを用いること、および丸断面形状ステープルを製造時に酸化チタンを0.7重量%含有した通常のポリエチレンテレフタレートチップを用いること以外は、実施例2と同様にしてプリントされたパイル布帛を得た。得られたプリントパイル布帛は、チーズ染めの染料が抜染時に良く抜け、その上にプリントした柄部分の色が鮮やかに着色し、かつ地色とプリント部の境界がシャープないわゆるプリント発色性が良好で、かつカバリング性良好で、耐毛倒れ性や耐白ボケ性が高く、ソフトな風合いが得られた。しかし、H型断面形状ステープルによるパイル繊維と丸断面形状ステープルによるパイル繊維の明度差が少なく杢感の劣るものであった。
【0063】
パイル布帛に使用した原綿特性とプリントパイル布帛特性を表1に示す。
【0064】
[比較例5]
酸化チタンを0.04重量%含有量した通常のポリエチレンテレフタレートチップを用いて溶融紡糸、延伸して、2.5デニール、51mmの丸断面形状ステープルを製造し、この丸断面形状ステープルのみを使用する他は実施例2と同様にしてプリントされたパイル布帛を得た。得られたプリントパイル布帛は、耐毛倒れ性は良好であるが、チーズ染めの染料が抜染時に抜け難く、くすんだ色のプリントで、杢感、カバリング性、耐白ボケ性も低く、風合い的にやや粗剛感がありパイル布帛としては品質的に劣るものであった。
【0065】
パイル布帛に使用した原綿特性とプリントパイル布帛特性を表1に示す。
【0066】
[比較例6]
実施例2で製造したH型断面形状ステープルおよび丸断面形状ステープルを使用し、H型断面形状ステープル18重量%、丸断面形状ステープル82重量%の20番手(綿番手)混紡糸とする他は、実施例6と同様にしてプリントされたパイル布帛を得た。得られたプリントパイル布帛は、耐毛倒れ性、カバリング性、ソフト風合いは良好であるが、チーズ染めの染料が抜染時に抜け難く、くすんだ色のプリントで、杢感(霜降り感)、耐白ボケ性も低く、パイル布帛としては品質的に劣るものであった。
【0067】
パイル布帛に使用した原綿特性とプリントパイル布帛特性を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【発明の効果】
本発明により、プリント発色性が良好で杢感を有し、耐毛倒れ性が良好で、パイル面のカバリング性、耐白ボケ性が高く、ソフトな風合いを有する良好な杢調パイル布帛を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のH型断面繊維の一例を示す模式的断面図である。
【図2】H型断面繊維における縦および横の長さを説明する説明図である。
【符号の説明】
a:H型断面繊維の横の長さ
b:H型断面繊維の縦の長さ
c:H型断面繊維の両足をつなぐ連結部の厚み
Claims (1)
- パイル布帛のパイル部構成繊維が単繊維繊度が1.5〜6デニールであるポリエステルからなり、該パイル部構成繊維がH型断面繊維を含み、該H型断面繊維の縦横の長さ比b/aが1.2以下であり、かつ縦の長さbと連結部の幅cとの関係が(b−c)/2≧2μmであって、さらに該パイル部構成繊維が艶消剤0.7重量%以下を含む丸断面形状を有する繊維Aが20〜80重量%と、艶消剤1.5重量%以上を含む上記H型断面繊維である繊維Bが80〜20重量%からなるとともに、パイル部構成繊維が綿染め、糸染め、または地染めされてなり、着色プリント、プリント抜染、抜染後着色プリント、または抜染剤入り着色プリントされてなることを特徴とする杢調パイル布帛。
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