JP3541114B2 - エアバッグ用インストルメントパネル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用エアバッグのうち特に助手席用エアバッグを折り畳み状態で内側に収納しており、緊急時のエアバッグの膨張に伴って該エアバッグを乗員の前方に展開させるように開裂するエアバッグ用インストルメントパネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の従来のエアバッグ用インストルメントパネルは、図5に示すように、表皮層20の裏面に発泡樹脂製の緩衝層21および軟質樹脂製のバリア層22を重合化してなる表皮材23とエアバッグドアとなる熱可塑性樹脂製の基材24とを一体成形して製造されるものであり、エアバッグ(図示省略)の膨張作動に伴い、そのエアバッグの内圧で上記基材24が押し開かれて、それに対応する上記表皮材23部分が破断されることにより膨張したエアバッグがインストルメントパネルの前方に確実に展開されるようにするために、上記の一体成形後、つまりインストルメントパネルの製造後に、超音波や高周波レーザ等によって基材24及び表皮材23のエアバッグ展開部に対応する箇所を、例えば図5に示すような形状にカット加工して脆弱部25を形成する手段が採用されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来のエアバッグ用インストルメントパネルにおいては、該インストルメントパネルの製造後に脆弱部25を形成するといった煩わしい後加工を要するのはもとより、その脆弱部25を形成するカット深さを一定に保つ技術や脆弱部25に対応する箇所のパネル厚さの管理に高度な技術が必要となり、そのことが製造コストの上昇原因の一つになっていた。また、上記のような脆弱部25の形成によって上記基材24が分断されるために、インストルメントパネルのうちエアバッグ展開時の開裂部となる上記脆弱部25に対応する薄肉の表皮材23部分の通常時における剛性が低く、例えばインストルメントパネルに手を触れるなどして力を加えたとき、剛性の低い薄肉表皮材23部分に応力が集中して表皮層20が局部的に凹んだり、皺状になったりして外観を損ないやすいという問題があった。
【0004】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、脆弱部の加工に煩わしさや高度な技術を必要とせず、製造コストの低減を図ることができるとともに、脆弱部に対応する部分の剛性をアップして外観意匠を良好に保ちつつ、エアバッグの膨張時には所定箇所を開裂させることができるエアバッグ用インストルメントパネルを提供することを主たる目的としている。
【0005】
本発明の他の目的は、エアバッグの膨張時における開裂性能を向上することができるようにすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記主たる目的を達成するために、請求項1の発明に係るエアバッグ用インストルメントパネルは、表皮層の裏面に少なくとも発泡樹脂製の緩衝層を重合化してなり、エアバッグの展開部に対応する箇所に表皮層に達しない深さの線状もしくはスリット状カットラインから形成されている脆弱部を形成した表皮材と、上記エアバッグの展開部に対応する箇所に薄肉による脆弱部を形成してなる合成樹脂製の基材とを有し、上記表皮材と基材とをそれらの脆弱部が互いに対向する状態で合成樹脂材料の射出成形により接着一体化させていることを特徴とするものである。
【0007】
上記のような構成の請求項1に記載の発明によれば、表皮材側のエアバッグ展開部に対応する箇所及び基材側のエアバッグ展開部に対応する箇所に別々に脆弱部を形成しておいて、両者(表皮材と基材)を射出成形手段により接着一体化するものであるから、両者の一体成形後に超音波や高周波等によって脆弱部をカット形成するといった煩わしく、かつ厚さ管理に高度な技術を要する後加工が不要となり、インストルメントパネル全体の製造コストの低減が図れる。また、基材側の脆弱部は薄肉によるものであって、脆弱部の存在にかかわらず基材全体は連続し、エアバッグ展開時の開裂部となる部分の剛性がアップされるために、通常時にインストルメントパネルに力が加わったとしても、表皮材側の脆弱部への応力集中に伴って表皮層が局部的に凹んだり、皺状になったりして外観意匠が損なわれることを抑制することが可能である。その上、エアバックの膨張時には基材の脆弱部及びこれに対向する表皮材の脆弱部に応力を集中させて所定の開裂性能及びエアバッグの展開性能を発揮させることが可能である。
【0008】
しかも、上記表皮材側の脆弱部が、上記表皮材の表皮層に達しない深さの線状もしくはスリット状カットラインから形成されているので、通常時、すなわちエアバックの非膨張作動時におけるインストルメントパネルの剛性及び外観意匠を良好に保持することが可能である。
【0009】
上記請求項1に記載の発明に係るエアバッグ用インストルメントパネルにおいて、上記上記表皮材側の脆弱部を形成する線状もしくはスリット状カットラインを請求項2に記載のように、インストルメントパネルの肉厚方向に対して傾斜させて形成するときは、上記基材を射出成形により表皮材に接着一体化する際、そのカットラインの傾斜方向を射出される樹脂がカットラインに流れ込まない向きに設定することによって、表皮材に形成しているカットラインからなる脆弱部内に樹脂が侵入して脆弱部本来の機能が射出成形時に損なわれてしまうことを防ぐことができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明に係るエアバッグ用インストルメントパネルは、表皮層の裏面に少なくとも発泡樹脂製の緩衝層を重合化してなる表皮材と、エアバッグの展開部に対応する箇所に薄肉による脆弱部を形成してなる合成樹脂製の基材とを有し、上記表皮材と基材とを合成樹脂材料の射出成形により接着一体化させて全域が一様な厚さに形成されてなるエアバッグ用インストルメントパネルであって、上記基材における上記脆弱部の周辺部分の厚みを他の部分の厚みよりも小さく、かつ、表皮材は上記脆弱部の周辺部分の厚みを他の部分の厚みよりも大きく設定していることを特徴とするものである。
【0011】
上記のような構成の請求項3に記載の発明によれば、表皮材とエアバッグ展開部に対応する箇所に脆弱部を形成してなる基材とを射出成型により接着一体化するものであるから、両者の一体成形後に超音波や高周波等によって脆弱部をカット形成するといった煩わしく、かつ厚さ管理に高度な技術を要する後加工が不要となり、インストルメントパネル全体の製造コストの低減が図れるのはもとより、基材側の脆弱部の周辺部分の厚みが他の部分の厚みよりも小さく、かつ表皮材は上記脆弱部の周辺部分の厚みが他の部分の厚みよりも大きいので、エアバックの膨張時には基材および表皮材の脆弱部に応力集中させて該脆弱部で開裂させエアバッグの展開性能を高めることが可能である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
図1は本発明の第1の実施形態によるエアバッグ用インストルメントパネルの要部の縦断面図であり、このインストルメントパネル1は、下部に助手席用エアバッグ(図示省略)を折り畳み状態に収納しているエアバッグケース2を内蔵し、このエアバッグケース2の前面開口部を被覆するものであって、該インストルメントパネル1は、上記エアバッグの展開部に対応する箇所に平面視H型形状やWY形状などの開裂部3を有し、表皮材4とこれに対向させて端縁部が取付け用芯材5に固定された熱可塑性樹脂製の基材(ドア材)6とを重合させてなる。
【0013】
上記のような基本構成をもつインストルメントパネル1において、上記表皮材4は、図2に示すように、PVC(ポリ塩化ビニル)やTPO(スチレン系またはオレフィン系熱可塑性エストラマー)で成形される表皮層4Aとその裏面においてポリウレタン樹脂などの発泡原料を注入し発泡させて形成される緩衝層4Bと軟質樹脂製のバリア層4Cとの3層を重合一体化してなるものであり、このような表皮材4の裏面側で上記エアバッグの展開部に対応する箇所には、上記表皮層4Aに達せず、バリア層4Cと緩衝層4Bのほぼ下半部分にまで達する深さの線状もしくはスリット状カットラインからなる脆弱部7が形成されている。
【0014】
上記表皮材4側の脆弱部7となる線状もしくはスリット状カットラインは、上記表皮層4A、緩衝層4Bおよびバリア層4Cの3層を重合一体成形した後に、超音波や高周波レーザ等によりバリア層4Cおよび緩衝層4Bのほぼ下半部分にまで達する深さに挿入加工してもよいし、また、表皮層4Aと緩衝層4Bを予め一体成形した後に、その裏面に線状もしくはスリット状カットラインを挿入加工しているバリア層4Cを重合接着してもよい。
【0015】
一方、上記基材6は、上記表皮材4を金型(図示省略)にセットした上、比較的硬質の熱可塑性樹脂材料を射出成形することにより上記表皮材4の裏面側に接着一体化されるものであり、その射出成形時に上記エアバッグの展開部に対応する箇所、つまり上記表皮材4の脆弱部7に対向する箇所には表皮材4側に向かう凹部8を成形して薄肉による脆弱部9が形成されている。
【0016】
上記のエアバッグ用インスルメントパネル1は、別体の表皮材4及び基材6それぞれに脆弱部7,9が形成されており、両材4,6を接着一体化することで両脆弱部7,9をもって開裂部3を形成させるようにしているので、両材4,6の一体成形後に超音波や高周波等によって脆弱部(開裂部)をカット形成するといった煩わしく、かつ厚さ管理に高度な技術を要する後加工が全く不要となり、また、基材6の成形に射出成形手段を採用しやすいので、インストルメントパネル1全体の製造コストの低減が図れる。また、基材6側の脆弱部9は薄肉によるものであって、基材6全体は分断のない連続一体品となるために、エアバッグ展開時の開裂部となる部分の剛性がアップされることになり、通常時にインストルメントパネル1に手を触れるなどして力をかけたとしても、表皮材4側の脆弱部7への応力集中はなく、表皮層4Aが局部的に凹むとか、皺状になるとかいった外観意匠の低下を発生することがない。それでいて、エアバッグの膨張作動時にはエアバッグの内圧により基材6側の薄肉脆弱部9に応力が集中して破断されるとともに、この破断された基材6によって表皮材4側の脆弱部7に応力が集中作用して表皮材4側が基材6に接着固定されたまま開裂部3に沿って開裂され、エアバッグを所定どおりに展開させることが可能である。
【0017】
なお、上記第1の実施形態の場合は、表皮材4側の脆弱部7が、表皮層4Aにまで達しない深さに挿入加工された線状もしくはスリット状カットラインから形成されているので、通常時、すなわちエアバッグの非膨張作動時におけるインストルメントパネル1の剛性及び外観意匠を良好に保持することが可能である。特に、基材6が射出成形されるものであることを考慮して、図3に示すように、そのカットラインの傾斜方向を射出される樹脂がカットラインに流れ込まない向きに設定することにより、表皮材4に形成されている脆弱部7内に樹脂が侵入してしまうことを防ぐことができる。
【0018】
図4は本発明の第2の実施形態によるエアバッグ用インストルメントパネルの要部の断面図、図5はその要部の拡大断面図であり、この第2の実施形態では、上記表皮材4と薄肉による脆弱部9を形成した基材6とを基材構成用樹脂材料の射出成形により接着一体化させて全域の厚さTが一様に構成されたイスストルメントパネル1において、上記基材6における脆弱部9の周辺部6aの厚みT1を他の部分6bの厚みT2よりも小さく、具体的には、T2=2〜3・T1程度に設定したものである。これを表皮材4におけるバリア層4Cの厚みに換言すると、上記脆弱部9の周辺部6aに対応する表皮材4におけるバリア層部分4Caの厚みt1を他のバリア層部分4Cbの厚みt2よりも2〜3倍程度大きく設定したものである。なお、厚みT1が他の部分6bの厚みT2よりも小さい脆弱部9の周辺部6aの水平方向の範囲Lは、エアバッグの膨張作動に伴う基材6側の破断時のほぼ両ヒンジ点付近を結ぶ範囲に設定されている。また、この第2の実施形態では、表皮材4側の脆弱部7を無くしたもので示しているが、この脆弱部7を形成してもよい。その他の構成は上記第1の実施形態と同一であるため、該当部分に同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0019】
この第2の実施形態によるエアバッグ用インストルメントパネル1においても上記第1の実施形態の場合と同様に、製造後に超音波や高周波等によって脆弱部(開裂部)をカット形成するといった煩わしく、かつ厚さ管理に高度な技術を要する後加工が全く不要であるとともに、基材6の成形に射出成形手段を採用しやすくてインストルメントパネル1全体の製造コストの低減が図れ、また、基材6全体を分断のない連続一体品として、エアバッグ展開時の開裂部となる部分の剛性をアップさせて外観意匠の低下が発生しないことに加えて、基材6側の脆弱部9の周辺部分6aと他の部分6bとの厚みおよび上記脆弱部9の周辺部6aに対応する表皮材4におけるバリア層部分4Caと他のバリア層部分4Cbとの厚みに差をつけたことにより、エアバックの膨張時には基材6および表皮材4におけるバリア層4Cの脆弱部9に応力を集中させて該脆弱部9で開裂させエアバッグの展開性能を高めることが可能となる。
【0020】
なお、上記の各実施形態では、表皮材4を3層構造としたものについて説明したが、バリア層4Cのない2層構造としてもよい。ただし、この場合でも、脆弱部7の深さは緩衝層4Bの厚みの範囲内に止めることが必要である。
【0021】
【発明の効果】
以上のように、請求項1、2に記載の発明によれば、表皮材と基材との一体成形後に超音波や高周波等によって脆弱部をカット形成するといった煩わしく、かつ厚さ管理に高度な技術を要する後加工が不要で、インストルメントパネル全体の製造コストの低減を図ることができるとともに、基材を分断せず、全体を連続一体品として脆弱部に対応する部分の剛性をアップすることが可能で、通常時にインストルメントパネルに加わる力によって表皮材側の脆弱部へ応力が集中して表皮層が局部的に凹んだり、皺状になったりする外観意匠の低下を抑制することができる。それでいて、エアバックの膨張時には基材の脆弱部及びこれに対向する表皮材の脆弱部に応力を集中させて所定の開裂性能及びエアバッグの展開性能を発揮させることができるという効果を奏する。
【0022】
しかも、表皮材側の脆弱部を、表皮層に達しない深さの線状もしくはスリット状カットラインから形成するので、開裂部に対応する箇所の剛性を一層高めて通常時における外観意匠の保持性能を高めることができる。
【0023】
また、上記表皮材側の脆弱部を形成する線状もしくはスリット状カットラインを請求項2に記載のように、インストルメントパネルの肉厚方向に対して傾斜させて形成する場合は、上記基材を射出成形により表皮材に接着一体化する際、そのカットラインの傾斜方向を射出される樹脂がカットラインに流れ込まない向きに設定することで、射出成形時に樹脂がカットラインからなる表皮材側の脆弱部内に侵入することを防ぎ、脆弱部本来の機能を維持することができる。
【0024】
また、請求項3に記載の発明によれば、製造後に超音波や高周波等によって脆弱部(開裂部)をカット形成するといった煩わしく、かつ厚さ管理に高度な技術を要する後加工が全く不要で、インストルメントパネル全体の製造コストの低減を図ることができるとともに、エアバッグ展開時の開裂部となる部分の剛性をアップさせて外観意匠の低下を防止できることに加えて、基材側の脆弱部の周辺部分と他の部分との厚みの差により、エアバックの膨張時に基材の脆弱部に応力を集中的に作用させて開裂性能およびエアバッグの展開性能を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態によるエアバッグ用インストルメントパネルの縦断面図である。
【図2】図1の要部の拡大縦断面図である。
【図3】第1の実施形態の変形例を示す要部の拡大縦断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態によるエアバッグ用インストルメントパネルの要部の拡大縦断面図である。
【図5】従来のエアバッグ用インストルメントパネルの要部の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
1 インストルメントパネル
3 開裂部
4 表皮材
4A 表皮層
4B 緩衝層
6 基材
7 線状もしくはスリット状カットラインからなる脆弱部
9 薄肉による脆弱部
Claims (3)
- 表皮層の裏面に少なくとも発泡樹脂製の緩衝層を重合化してなり、エアバッグの展開部に対応する箇所に表皮層に達しない深さの線状もしくはスリット状カットラインから形成されている脆弱部を形成した表皮材と、
上記エアバッグの展開部に対応する箇所に薄肉による脆弱部を形成してなる合成樹脂製の基材とを有し、
上記表皮材と基材とをそれらの脆弱部が互いに対向する状態で合成樹脂材料の射出成形により接着一体化させていることを特徴とするエアバッグ用インストルメントパネル。 - 上記線状もしくはスリット状カットラインが、インストルメントパネルの肉厚方向に対して傾斜させて形成されている請求項1に記載のエアバッグ用インストルメントパネル。
- 表皮層の裏面に少なくとも発泡樹脂製の緩衝層を重合化してなる表皮材と、
エアバッグの展開部に対応する箇所に薄肉による脆弱部を形成してなる合成樹脂製の基材とを有し、
上記表皮材と基材とを合成樹脂材料の射出成形により接着一体化させて全域が一様な厚さに形成されてなるエアバッグ用インストルメントパネルであって、
上記基材における上記脆弱部の周辺部分の厚みを他の部分の厚みよりも小さく、かつ、表皮材は上記脆弱部の周辺部分の厚みを他の部分の厚みよりも大きく設定していることを特徴とするエアバッグ用インストルメントパネル。
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