JP3986153B2 - インストルメントパネルのエアバッグドアの構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、インストルメントパネルのエアバッグドアの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の自動車には、エアバッグ装置が設けられている。例えば図7およびその8−8断面図である図8、9−9断面図である図9に示すインストルメントパネル70のように、助手席側にエアバッグドア71が設けられ、その裏側にエアバッグ装置50が設けられる。
【0003】
エアバッグ装置50は、エアバッグ収容ケース51内にインフレータ53と折り畳まれたエアバッグ52とが収容されたものからなり、そのエアバッグ収容ケース51の上部はエアバッグ52が車室内に展開するために開口しており、その開口部分51aが、インストルメントパネル70に形成されたエアバッグドア71によって覆われている。そして、自動車に衝撃が加わるとインフレータ53が作動し、図8の鎖線のようにエアバッグ52が膨張し、エアバッグドア71を裏側から車室内側へ押し開いてエアバッグ52が車室内に展開する。
【0004】
エアバッグドア71としては、別部品をはめこむ構造のものも存在するが、その場合にはエアバッグドア71の組み付け作業等が面倒であるのみならず、エアバッグドア71の周縁に隙間を生じ易く、外観を損ねる問題がある。そのため、図示の例のように、インストルメントパネル70の所定部にエアバッグドア71を一体に形成したものが、好ましいとされている。
【0005】
前記エアバッグドア71を一体に有するインストルメントパネル70は、図9からも理解されるように、硬質プラスチックや金属からなるコア75の上面にポリウレタン等からなる発泡層72が積層され、その発泡層72の上面に塩化ビニル樹脂等からなる表皮材73が積層された構成からなって、エアバッグドア71部分を画定する破断用脆弱部77がエアバッグドア71の周囲に形成されている。この破断用脆弱部77は、エアバッグ52の膨張によってエアバッグドア用コア76が押圧された際に、速やかに破断してエアバッグドア71のスムーズな開きを実現させるためのもので、エアバッグドア用コア76側から発泡層72を通って表皮材73の表面近くまで、表皮材73表面と直角に形成した切り込みによって構成されている。なお、その切り込みの形成は、熱刃やレーザーなどによってエアバッグドア用コア76側から行う。
【0006】
しかし、前記破断用脆弱部77は、インストルメントパネル70の強度を局部的に低下させるため、図10および図11に示すように、平常時に何らかの理由でエアバッグドア71部を車室内側から強く押すようなことがあると、破断してエアバッグドア71が陥没する恐れがある。特に、エアバッグ装置50の取付用フランジ54と近接して破断用脆弱部77が存在する場合には、取付用フランジ54と破断用脆弱部77間の厚みの差が極めて大きくなるため、前記車室内側からの押圧力が破断用脆弱部77に集中し易く、破断する恐れが高くなる。なお、車室内側からの押圧による破断用脆弱部77の破断を防ぐにはエアバッグドア用コア76側からの切り込み量を浅くすればよいが、今度はエアバッグ52膨張時に破断用脆弱部77がスムーズに破断しなくなる問題が発生する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、前記の点に鑑みなされたもので、エアバッグ膨張時にスムーズに開くのみならず、平常時の車室内側からの押圧に対しても陥没の恐れのないエアバッグドアの構造を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、この発明は、コアに発泡層と表皮材が積層され、前記コアから発泡層を通って表皮材の表面近くまで形成された切り込みからなる破断用脆弱部によってエアバッグドアの境界が画定されたインストルメントパネルにおいて、前記コアは前記インストルメントパネルの裏面形状に形成されたコア本体とエアバッグドア用コアとよりなって、前記コア本体に形成されたエアバッグ開口部を塞ぐように前記コア本体の表面側に前記エアバッグドア用コアが配置され、前記エアバッグドア用コアは、前記エアバッグ開口部より大きな外形からなって、周縁裏面にエアバッグ装置取付用フランジが立設されると共に、前記エアバッグドア用コアの周縁部が前記エアバッグ装置取付用フランジ部よりも外側で前記エアバッグ開口部の周囲表面に重なり、前記切り込みが前記エアバッグドア用コア側から表皮材側に向かってエアバッグドアの外方へ傾斜し、前記切り込みからなる前記破断用脆弱部が前記エアバッグ装置取付用フランジの真上を通るように形成されていることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下添付の図面に基づきこの発明を詳細に説明する。図1はこの発明に係るエアバッグドアを有するインストルメントパネルの一実施例の概略を示す斜視図、図2は図1の2−2断面図、図3は同じく図1の3−3断面図、図4は図2における車室内側から押圧力がかかった状態を示す断面図、図5は同じく図3における車室内側から押圧力がかかった状態を示す断面図、図6はこの発明におけるエアバッグドアのエアバッグ展開時の一実施例の要部を示す断面図である。
【0010】
図1に示すこの発明の一実施例のインストルメントパネル10は、図2および図3から理解されるように、コア11の表面に発泡層21が設けられ、その発泡層21の上面が表皮材31で覆われている。このインストルメントパネル10の助手席側にはエアバッグドア40を一体に有し、そのエアバッグドア40の裏側にエアバッグ装置50が設けられる。エアバッグ装置50は従来と同様のもので、エアバッグ収容ケース51内にインフレータ(図示せず)と折り畳まれたエアバッグ52が収容されている。
【0011】
コア11は、インストルメントパネル10の裏面形状に形成されたコア本体12と、エアバッグドア用コア16とよりなり、いずれも射出成形等によって形成された硬質プラスチックや金属等で構成される。前記コア本体12の助手席側には、前記エアバッグドア40の位置に、エアバッグ開口部13が車幅方向に長い略長方形に形成され、そのエアバッグ開口部13を塞ぐようにコア本体12の表面側にエアバッグドア用コア16が配置されている。
【0012】
エアバッグドア用コア16は、平常時においては前記エアバッグ開口部13にコア11表面側から蓋をし、また衝突時にはエアバッグ開口部13を開いてエアバッグ52の車室内への膨出を可能とするものである。このエアバッグドア用コア16は、前記エアバッグ開口部13より所定量大きな外形からなって、周縁部がコア本体12のエアバッグ開口部13の周囲表面に重なっている。また、エアバッグドア用コア16の周縁裏面には、エアバッグ装置取付用フランジ17が立設され、そのフランジ17の所定位置に形成された取付孔(図示せず)を介して、ボルト等でエアバッグ収容ケース51が固定されるようになっている。
【0013】
発泡層21は、このインストルメントパネル10に対して主として緩衝性および表面感触を良好にするためのもので、前記コア11およびエアバッグドア用コア16と表皮材31との間で発泡成形されたポリウレタン等の合成樹脂発泡体からなる。
【0014】
また、表皮材31は、前記発泡層21の表面を保護してインストルメントパネル10の外観を良好にするためのもので、軟質塩化ビニル樹脂等のプラスチック皮膜よりなり、公知のパウダースラッシュ成形によって所定のインストルメントパネルの表面形状に形成されている。
【0015】
前記エアバッグドア用コア16と発泡層21と表皮材31には、エアバッグドア40を周囲の一般部から画定する破断用脆弱部45が形成されている。この破断用脆弱部45は、エアバッグ52膨張時にエアバッグドア40の周囲を破断し易くして、スムーズにエアバッグドア40が開くことができるようにするためのもので、前記エアバッグドア用コア16側から発泡層21を通って、表皮材31の表面近くに至る切り込み(スリット)46で構成されている。その切り込み46は熱刃やレーザーなどで形成される。本発明では、切り込み46をエアバッグドア用コア16側から表皮材31に向かってエアバッグドア40の外方へ傾斜させることによって、エアバッグドア40が車室内側から押圧された際の陥没を防止し、かつエアバッグ膨張時におけるエアバッグドア40のスムーズな開きおよびエアバッグ52の迅速な展開を実現している。前記インストルメントパネル10の垂直線に対する切り込み46の傾斜角度aは、前記エアバッグドア40の陥没を防止し、しかもエアバッグドア40が極端に大きくなるのを防ぎ、加えてエアバッグ開口部13の十分な大きさを確保できるようにするため、30〜60度の範囲にするのが特に好ましい。
【0016】
前記構造からなるインストルメントパネル10にあっては、平常時において、何らかの理由でエアバッグドア40が車室内側から強く押圧された場合、図4および図5に示すように、エアバッグドア40の表皮材31および発泡層21が、傾斜した破断用脆弱部45によって支持されるため、該エアバッグドア40がインストルメントパネル10の内側に陥没するのを阻止することができる。
【0017】
また、前記エアバッグドア40の陥没をより効果的に阻止するには、破断用脆弱部45を、前記エアバッグ装置取付用フランジ17にできるだけ近接して、特にはこの例のように、フランジ17の真上を通るように設けるのが好ましい。そうすれば、車室内側からのエアバッグドア40の押圧時、破断用脆弱部45に加わる過重が、剛性の高い取付用フランジ17部分で効率よく支持されるため、前記した陥没防止をより確実に行うことができる。
【0018】
また、自動車衝突時には、図6に示すように、エアバッグ装置50のインフレータ(図示せず)が作動してエアバッグ52が膨張し、前記エアバッグドア40裏面側、すなわちエアバッグ開口部13のエアバッグドア用コア16がその裏面側からインストルメントパネル10の表面側へ向けて押され、エアバッグドア40が破断用脆弱部45で破断して車室内に開き、エアバッグ52が車室内に展開する。その際、エアバッグドア40の境界端部が、前記破断用脆弱部45によってコア11側から表皮材31側、すなわち車室内に向かって広がるように傾斜した面になっているため、エアバッグドア40が引っ掛かることなくスムーズに車室内に開き、またエアバッグ52も速やかに展開する。加えて、前記引っ掛かりによるエアバッグドア40の飛散も防止することができる。
【0019】
また、このようなエアバッグドアの構造によれば、前記破断用脆弱部45を傾斜させて形成したことにより、車室内側からの押圧に耐え、エアバッグドア40の陥没を防ぐことができるため、従来のように、エアバッグ52の膨出時に破断しやすく、かつ平常時は陥没し難いというシビアな破断強度を表皮材31の厚さ精度で調節する必要がなくなり、該表皮材31の成形やレーザー等による薄肉脆弱加工も容易になる。
【0020】
【発明の効果】
以上図示し説明したように、この発明のインストルメントパネルのエアバッグドアの構造によれば、コア側から表皮材側に向かってエアバッグドアの外方へ広がるように傾斜させて切り込んだ破断用脆弱部を形成したため,エアバッグ膨張時にエアバッグドアがスムーズに開くのみならず、平常時の車室内側からの押圧に対しても陥没の恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に係るエアバッグドアを有するインストルメントパネルの一実施例の概略を示す斜視図である。
【図2】 この発明におけるエアバッグドアの一実施例の2−2断面図である。
【図3】 図1の3−3断面図である。
【図4】 図2におけるエアバッグドアに車室内側から押圧力がかかった状態を示す断面図である。
【図5】 同じく図3におけるエアバッグドアに車室内側から押圧力がかかった状態を示す断面図である。
【図6】 この発明におけるエアバッグドアのエアバッグ展開時の一実施例の要部を示す断面図である
【図7】 エアバッグドアを有する従来のインストルメントパネルの斜視図である。
【図8】 図7の8−8断面図である。
【図9】 図7の9−9断面図である。
【図10】 そのエアバッグドアに車室内側から押圧力がかかった状態を示す断面図である。
【図11】 そのエアバッグドアが陥没した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
10 インストルメントパネル
11 コア
16 エアバッグドア用コア
17 取付用フランジ
21 発泡層
31 表皮材
40 エアバッグドア
45 破断用脆弱部
50 エアバッグ装置
52 エアバッグ
Claims (1)
- コアに発泡層と表皮材が積層され、前記コアから発泡層を通って表皮材の表面近くまで形成された切り込みからなる破断用脆弱部によってエアバッグドアの境界が画定されたインストルメントパネルにおいて、
前記コア(11)は前記インストルメントパネルの裏面形状に形成されたコア本体(12)とエアバッグドア用コア(16)とよりなって、前記コア本体(12)に形成されたエアバッグ開口部(13)を塞ぐように前記コア本体(12)の表面側に前記エアバッグドア用コア(16)が配置され、
前記エアバッグドア用コア(16)は、前記エアバッグ開口部(13)より大きな外形からなって、周縁裏面にエアバッグ装置取付用フランジ(17)が立設されると共に、前記エアバッグドア用コア(16)の周縁部が前記エアバッグ装置取付用フランジ部(17)よりも外側で前記エアバッグ開口部(13)の周囲表面に重なり、
前記切り込みが前記エアバッグドア用コア(16)側から表皮材(31)側に向かってエアバッグドア(40)の外方へ傾斜し、前記切り込みからなる前記破断用脆弱部(45)が前記エアバッグ装置取付用フランジ(17)の真上を通るように形成されていることを特徴とするインストルメントパネルのエアバッグドアの構造。
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- 1998-02-27 JP JP06416498A patent/JP3986153B2/ja not_active Expired - Lifetime
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