JP3787517B2 - エアバッグドア付車両用内装品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エアバッグドア付車両用内装品に関し、特に、そのエアバッグドアの展開を容易にするための技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種のエアバッグドア付車両用内装品として、表面に表皮が積層された基材に、破断予定部と、この破断予定部の少なくとも一部に略平行に沿うように延びるヒンジ部とを形成して、この破断予定部及びヒンジ部によりエアバッグドアを設け、このエアバッグドア裏側のエアバッグの膨張により上記破断予定部を破断させてエアバッグドアをヒンジ部を支軸として回動させながら開き、このエアバッグドアの展開により開口されたエアバッグ膨出口からエアバッグを膨出させるようにしたものが知られている。そして、その表皮にはソフト感のある触感をもたせるために、ポリウレタン発泡層を有するものが多く用いられている。
【0003】
このようなポリウレタン発泡層を表皮に有するエアバッグドア付車両用内装品の一例として、従来、例えば特開平10−35395号公報に示すように、エアバッグドアをエアバッグ展開時にスムーズに破断するために、一側が表皮のポリウレタン発泡層に対して非接着性の部材からなる一方、反対側の面が発泡成形時のポリウレタン発泡層に対して接着性の部材からなる細長い部材を基材の表面側に表皮の破断予定部に沿って設けることが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記提案のもののように、特に、表皮がポリウレタン発泡層を含んでいて、その表皮の肉厚が大きくなっていると、エアバッグドアの破断予定部がスムーズに破断したとしても、その後の展開時にヒンジ部が大きな角度で折れ曲がらないでヒンジの機能を十分に果たし難くなり、エアバッグドアの開度が小さくなってエアバッグのスムーズな膨出を妨げるという問題があった。
【0005】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エアバッグドアの構造に工夫をすることにより、エアバッグドアが大きな開度で開くようにしてエアバッグの膨出をスムーズにしようとすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明では、エアバッグドアのヒンジ部の構造を2段に折れ曲がるようにした。
【0007】
具体的には、請求項1の発明では、表面に表皮が積層された基材に、破断予定部と、この破断予定部の少なくとも一部に沿うように延びる第1ヒンジ部とが形成されていて、この破断予定部及び第1ヒンジ部によりエアバッグドアが構成されており、このエアバッグドアの裏側に配設されたエアバッグの膨張により上記破断予定部が破断してエアバッグドアが上記第1ヒンジ部を支軸として回動しながら開き、このエアバッグドアの展開により開口されたエアバッグ膨出口からエアバッグが膨出するように構成されたエアバッグドア付車両用内装品が対象である。
【0008】
そして、上記表皮は、表面層と、該表面層の裏面に積層された発泡層とからなり、上記エアバッグドアの基材において上記第1ヒンジ部よりもエアバッグ膨出口内側には、第1ヒンジ部と所定間隔をあけた位置に、第1ヒンジ部に沿って延びる第2ヒンジ部が形成され、上記第1ヒンジ部の肉厚は、上記第2ヒンジ部の肉厚よりも薄く設定されている。
【0009】
上記の構成によると、エアバッグドアの基材において第1ヒンジ部よりもエアバッグ膨出口内側には、第1ヒンジ部と所定間隔をあけた位置に、第1ヒンジ部に沿って延びる第2ヒンジ部が形成されているため、エアバッグの膨張によりエアバッグドアにおける破断予定部が破断してエアバッグドアが開くときに、上記第1ヒンジ部及び第2ヒンジ部がほぼ同時に折れ曲がることによって、エアバッグドアが第2ヒンジ部及び第1ヒンジ部を支軸として回動しながら開き、この開いたドアによりエアバッグ膨出口が開口してエアバッグが膨出する。このエアバッグドアの開き状態では、基材における第2ヒンジ部と第1ヒンジ部とがいずれも折れ曲がって2段階の折曲状態となるために、両ヒンジ間の基材が略直線状となってエアバッグ膨出口に対して略直角に起立した状態となり、表皮にソフト感のある触感をもたせるために発泡層を設けたことでエアバッグドアの厚さが大であっても、従来のように、その第1ヒンジ部に相当する部分が滑らかに折れ曲がらずに突張ってエアバッグドアが大きく開くのを妨げるようなことはない。このため、エアバッグドアがエアバッグ膨出口に対し直角以上開いて、その開度が増大し、エアバッグをエアバッグ膨出口からスムーズに膨出させることができる。
【0010】
さらに、第1ヒンジ部の肉厚を、第2ヒンジ部の肉厚よりも薄く設定しているので、第1ヒンジ部においてエアバッグドアがより開きやすくなるので、エアバッグドアの開度がより大きくなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1及び図3において、1は自動車の車室前部に設けられた車両用内装品としてのインストルメントパネルで、このインストルメントパネル1はポリプロピレン(PP)等からなる基材5と、表面層3と、この表面層3及び基材5の間に発泡ウレタン樹脂原料等を注入して発泡硬化させて一体成形したウレタンフォーム等からなる発泡層7とで構成され、表面層3と発泡層7とは表皮9をなしている。この表面層3及び基材5間に発泡層7を積層介在させることより、インストルメントパネル1にソフト感のある触感をもたせるようにしている。
【0012】
上記インストルメントパネル1において助手席側の裏側にはエアバッグ装置15が装着されている。すなわち、このエアバッグ装置15の装着箇所に対応する矩形状領域におけるインストルメントパネル1の基材5裏面には車両左右方向に互いに平行に延びる脚状の前後の支持部13,13が一体的に突設され、これら支持部13,13間にエアバッグ装置15が取り付けられている。
【0013】
上記エアバッグ装置15は、折り畳んだ状態のエアバッグ19と、このエアバッグ19にガスを充満させてエアバッグ19を膨張させるインフレータ20とが収納されたエアバッグケース21を備え、このエアバッグケース21の前後には、係止爪23aを有する係止プレート23,23が設けられており、この係止プレート23,23の係止爪23a,23aを上記前後の支持部13,13の係合孔13a,13aに係合させることで、エアバッグケース21が支持部13,13に取り付けられ、この状態でエアバッグ装置15がインストルメントパネル1の裏側に配置されている。
【0014】
上記インストルメントパネル1の基材5裏面において、上記エアバッグ装置15の装着箇所に対応する部分には、図3で破線にて示すように、インストルメントパネル1の表側つまり車室内側から見て略U字状の破断予定部33がそのU字の上部を前側に向けるように形成され、この破断予定部33の前端部間には、図3で一点鎖線に示す如く車幅方向(左右方向)に延びる第1ヒンジ部34が形成されている。
【0015】
具体的には、上記基材5には、略U字状を描く断面V字形の破断用凹溝25が上記後側支持部13の直前近傍位置を通るように設けられ、この破断用凹溝25は、車幅方向に延びる横溝部25aと、この横溝部25aの両端から車両前後方向に略平行に延びる2つの縦溝部25b,25bとからなる。そして、この破断用凹溝25によって薄肉となった部分(基材5)により上記破断予定部33が構成されている。尚、表面層3の裏面には上記基材5の破断用凹溝25と対応する位置に断面V字形の破断用表面層凹溝30が設けられている。
【0016】
また、上記基材5の裏面には、上記前側支持部13の直後近傍位置を通り上記破断用凹溝25の縦溝部25b,25bの前端部間に亘り、上記横溝部25aに沿うように車幅方向に延びる断面V字形の第1ヒンジ用凹溝27が設けられ、この凹溝27の深さは上記破断用凹溝25よりも浅く設定されており、このヒンジ用凹溝27により薄肉となった部分(基材5)によって上記第1ヒンジ部34が構成されている。
【0017】
そして、インストルメントパネル1において上記基材5の破断予定部33及び第1ヒンジ部34により囲まれる矩形領域の部分によってエアバッグドア35が構成されており、図2に示すように、このエアバッグドア35裏側に配設された上記エアバッグ19の膨張により破断予定部33が破断してエアバッグドア35が上記第1ヒンジ部34を支軸として前回りに回動しながら開き、このエアバッグドア35の展開により開口されたエアバッグ膨出口36からエアバッグ19が膨出するようになっている。
【0018】
本発明の特徴として、図1に示すように、上記エアバッグドア35の基材5裏面において上記第1ヒンジ部34をなす第1ヒンジ用凹溝27よりもエアバッグ膨出口36内側(車両前後方向後側)には、その第1ヒンジ用凹溝27と所定間隔d1をあけた位置に、第2ヒンジ用凹溝38が第1ヒンジ用凹溝27と略平行に延びるようにすなわち第1ヒンジ用凹溝27に沿うように形成されており、この第2ヒンジ用凹溝38により薄肉となった部分(基材5)によって第2ヒンジ部40が形成されている。そして、これら第1ヒンジ部34と第2ヒンジ部40との間隔d1は上記表皮9の肉厚d2と略同じに設定されている(d1≒d2)。尚、この第2ヒンジ用凹溝38の深さは、第1ヒンジ用凹溝27と同等に設定されている。
【0019】
従って、上記実施形態においては、図2に示すように、自動車が衝突すると、インストルメントパネル1裏側のエアバッグ装置15のエアバッグ19がインフレータ20の作動によって膨張展開し、その展開圧力でインストルメントパネル1におけるエアバッグドア35の基材5の破断予定部33が破断し、その亀裂が発泡層7を介して表面層3の表面層凹溝30に伝わり、表面層3も破断する。このことにより、基材5裏面の2つのヒンジ部34,40がそれぞれほぼ同時に折れ曲がって、エアバッグドア35が全体として前回りに回動しながら開き、この開いたエアバッグドア35によりエアバッグ膨出口36が開口され、このエアバッグ膨出口36からエアバッグ19が車室内後方に向かって膨出して乗員が保護される。
【0020】
このようにエアバッグドア35が開いた状態では、基材5における第2ヒンジ部40と第1ヒンジ部34とがいずれも折れ曲がるために、両ヒンジ部34,40間の基材5が車幅方向に略直線状となってエアバッグ膨出口36に対して略直角に起立した状態となり、たとえ基材5の表面に厚肉の表皮があっても、その第1ヒンジ部34に相当する部分が折れ曲がらずに突張ってエアバッグドア35が大きく開くのを妨げるようになることはない。つまり、エアバッグドア35の開度がエアバッグ膨出口36に対し直角以上に大きくなってエアバッグ19をスムーズに車室内に膨出させることができる。
【0021】
また、第1ヒンジ部34と第2ヒンジ部40との間隔d1は表皮9の肉厚d2と略同じに設定されているため、エアバッグ19膨出時に間隔d1が小さすぎてエアバッグドア35の開度を大きくする効果が低減されることはなく、反対に間隔d1が大きすぎて第1ヒンジ部34と第2ヒンジ部40との間の起立した状態となった表皮9がエアバッグ19の膨出を妨げることもない。従って、エアバッグ19をより一層スムーズに信頼性よく展開することができる。
【0022】
尚、上記実施形態では、表皮9は表面層3及び発泡層7からなるものとしているが、発泡層7のない表面層3のみを表皮とする場合でも同様の作用効果が得られる。この場合、第1ヒンジ部34と第2ヒンジ部40との間隔d1は表面層3のみの肉厚と略同じに設定すればよい。
【0023】
また、上記実施形態では、第1ヒンジ用凹溝27と第2ヒンジ用凹溝38との溝の深さは同等に設定したが、エアバッグドア35の開度をより大きくするために、第1ヒンジ用凹溝27の深さを第2ヒンジ用凹溝38より深く設定することが好ましい。このことで、第1ヒンジ部34の肉厚が第2ヒンジ部40の肉厚よりも薄くなる。
【0024】
また、上記実施形態では、エアバッグドア35をU字状の片開きドアとしているが、本発明は、エアバッグドアが車両前後方向に2分割されていわゆる観音開き状に開くH字状のエアバッグドアに対しても適用でき、同様の作用効果が得られる。
【0025】
また、上記実施形態では、エアバッグドア35近傍の基材5及び支持部13,13をインストルメントパネル1の基材5と一体的に形成しているが、これらをインストルメントパネルの基材と別体に設けて、インストルメントパネルの基材に開口した開口部に取り付ける構造としてもよく、同様の作用効果が得られる。
【0026】
また、上記実施形態では、車両用内装品をインストルメントパネル1としているが、これ以外例えば、ステアリングハンドル等のエアバッグドア付車両用内装品にも本発明を適用できるのは勿論のことである。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のエアバッグドア付車両用内装品によると、エアバッグドアの基材において通常のヒンジ部よりもエアバッグ膨出口内側に、もう一つのヒンジ部を通常のヒンジ部と所定間隔をあけかつ該通常のヒンジ部に沿って延びるように形成したことにより、エアバッグの展開を妨げることなく、エアバッグドアの開度が大きくなってエアバッグをエアバッグ膨出口からスムーズに膨出させることができる。
【0028】
また、基材表面の表皮を、表面層と、この表面層の裏面に積層された発泡層とからなるものとしたことにより、表皮にソフト感のある触感をもたせることができるとともに、エアバッグをスムーズに膨出させることができる効果が有効に得られる。
【0029】
さらに、第1ヒンジ部の肉厚を、第2ヒンジ部の肉厚よりも薄く設定して第1ヒンジ部においてエアバッグドアをより開きやすくしたことにより、エアバッグドアの開度が確実に大きくなり、エアバッグをより一層スムーズに膨出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図3におけるI−I線断面拡大図である。
【図2】 エアバッグが膨出している様子を示す図1相当図である。
【図3】 本発明の実施形態に係るインストルメントパネルの斜視図である。
【符号の説明】
1 インストルメントパネル
3 表面層
5 基材
7 発泡層
9 表皮
19 エアバッグ
33 破断予定部
34 第1ヒンジ部
35 エアバッグドア
36 エアバッグ膨出口
40 第2ヒンジ部
Claims (1)
- 表面に表皮が積層された基材に、破断予定部と、該破断予定部の少なくとも一部に沿うように延びる第1ヒンジ部とが形成されていて、上記破断予定部及び第1ヒンジ部によりエアバッグドアが構成されており、
上記エアバッグドアの裏側に配設されたエアバッグの膨張により上記破断予定部が破断してエアバッグドアが上記第1ヒンジ部を支軸として回動しながら開き、該エアバッグドアの展開により開口されたエアバッグ膨出口からエアバッグが膨出するように構成されたエアバッグドア付車両用内装品であって、
上記表皮は、表面層と、該表面層の裏面に積層された発泡層とからなり、
上記エアバッグドアの基材において上記第1ヒンジ部よりもエアバッグ膨出口内側には、第1ヒンジ部と所定間隔をあけた位置に、第1ヒンジ部に沿って延びる第2ヒンジ部が形成され、
上記第1ヒンジ部の肉厚は、上記第2ヒンジ部の肉厚よりも薄く設定されていることを特徴とするエアバッグドア付車両用内装品。
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