JP4095873B2 - 自動車のエアバッグ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車のエアバッグ装置、特に助手席側のエアバッグ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フロントウィンドウパネルの下方に位置するインストルメントパネルの内部には、エアバッグとインフレータとを収納したエアバッグモジュールが設置されている。エアバッグモジュールの下部は、インストルメントパネルの内部で車幅方向に沿って配設されたステアリングメンバに固定されている。エアバッグモジュールの上部は、インストルメントパネルの裏面に一体形成された前後一対の取付片に係止されている。
【0003】
インストルメントパネルのエアバッグに対応する部分で、前記一対の取付片の間には、裏面に形成した閉ループ状の開裂溝により、インストルメントパネル自体に区画形成された扉部が設けられている(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
扉部の裏側には、開裂溝を越えて扉部の外側まで延びる熱可塑性のポリウレタンフォーム製の裏当部材が形成されている。そして、エアバッグの膨張時には、エアバッグの膨張力により、裏当部材を介して扉部の全面が押し上げられ、扉部が開裂溝より破断されて切り離される。切り離された扉部は、裏当部材の開裂溝に対応する部分をヒンジ部として外側へ開成し、扉部が取り除かれた後の開口部から、エアバッグを車内側へ展開させることができる。
【0005】
【特許文献1】
特表2002−507172号公報参照(第3頁右上欄第8行目乃至同頁右下欄第9行目、図3)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、インストルメントパネルの扉部の裏側に結合されている裏当部材が断面U字状のヒンジ部(蝶番部材)により取付片(支持構造部)と扉部(ドアフラップ)とを繋いでいるため、ヒンジ部が取付片から離れた内側に位置し、エアバッグの通路を遮るように外側リムが張出してしまい、エアバッグモジュールのリアクションカンの形状に比べてエアバッグ膨出用開口が狭くなる。そこで、ヒンジ部を取付片側に寄せると、ヒンジ部の基部と取付片と外周リムとが局所に集まり、エアバッグの膨張応力が加わった際に不利となる。この傾向は、低温時に特に顕著となる。
【0007】
この発明は、このような従来の技術の課題に着目してなされたものであり、通常のインストルメントパネルを用いても広い温度領域で好ましい膨張用通路形成性能が得られる自動車のエアバッグ装置を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、硬質合成樹脂製のインストルメントパネルの裏側にエアバッグとインフレータとを収納したエアバッグモジュールを設置すると共に、エアバッグに対応するインストルメントパネルの裏面に閉ループ状の開裂溝を形成して扉部を区画し、該扉部の裏側に、該扉部よりも大きい軟質合成樹脂製の裏当部材を、扉部の内側及び外側に対して結合してなり、該裏当部材に、前記インストルメントパネルの開裂溝の一部に対応して前記開裂溝に沿ったヒンジ部を中心に、エアバッグの膨張力によりインストルメントパネルから切り離された扉部の開成を可能とする切断部を形成した自動車のエアバッグ装置であって、前記ヒンジ部が、断面L字状に形成されてなると共に前記開裂溝に沿って断続的に形成されてなり、該ヒンジ部間には、扉補強部が延出してなり、該ヒンジ部の基部を、前記裏当部材の取付片の高さ方向における中間部に形成されてなることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、ヒンジ部を扉部を支持した裏当部材の取付片の直近に設けてなるので、エアバッグ膨出用通路を極大にできる。また、ヒンジ部に撓みがヒンジ部全体に分担させることができるので、通常のインストルメントパネルを用いても広い温度領域、特に低温域において好ましい扉部の展開が可能となる。また、前記ヒンジ部が、断面L字状に形成されてなるため、扉部が開く際によく撓むことができる。また、開裂溝に沿って断続的に形成されてなるヒンジ部の間に扉補強部が配されてなるため、扉部が開く際に扉補強部の自由端部同士がぶつかり、扉部が落ち込まず、そこから曲がることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動車のエアバッグ装置であって、前記ヒンジ部の中心と前記開裂溝の中心とが、前記インストルメントパネルの面方向でずれた位置に形成されてなることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、扉部が開く際に扉補強部の自由端部同士がぶつかり、扉部が落ち込まず、そこから曲がることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1〜図4は、この発明の第1実施形態を示す図である。符号1は自動車のインストルメントパネルで、その上方にはフロントウィンドウパネル2が位置している。このインストルメントパネル1は、曲げ弾性率30300kgf/cm2の硬質ポリプロピレン樹脂による成形品で、表面にはフロントウィンドウパネル2への映り込みを防止するための艶消しシボ加工が施されている。尚、インストルメントパネル1としては、曲げ弾性率11000kgf/cm2以上(好ましくは、19000kgf/cm2以上)の硬質合成樹脂が好適である。
【0016】
前記インストルメントパネル1の内部には、エアバッグモジュール3が設置されている。該エアバッグモジュール3は、インフレータ4を内蔵したリアクションカン5をブラケット6にてステアリングメンバ7に固定し、リアクションカン5のガス噴出口5aにケース8を固定して、該ケース8内にエアバッグ9を折りたたんで収納した構造をしている。ケース8の前面及び後面には、フック10が取付けられている。この実施形態で使用されているインフレータ4は、通常の出力のものである。
【0017】
このエアバッグモジュール3の上方に対応するインストルメントパネル1には、左右に長手の長方形状の扉部11が形成されている。この扉部11は、インストルメントパネル1の裏面に形成した左右に長手の長方形状の閉ループ状の「開裂溝」である第1開裂溝12により区画形成されたものである。この第1開裂溝12の前後中央には、左右に架橋された直線状の第2開裂溝21が形成されている。前記第1,第2開裂溝12,21は、インストルメントパネル1の成形後に、回転刃(フライス刃など)により後加工した切削溝であって、インストルメントパネル1の表面との板厚は、0.1〜1.5ミリメートル、望ましくは、0.3ミリメートルである。従って、インストルメントパネル1の表面には艶ムラなどが生じない。該第1,第2開裂溝12,21について後加工する、と説明したが、これに限定される物ではなく、インストルメントパネル1の成形時に同時に形成しても良い。この場合は、インストルメントパネル1の原価が低減できるという効果がある。
【0018】
インストルメントパネル1の裏面における扉部11に対応する部分には、軟質合成樹脂製の裏当部材13が結合されている。この裏当部材13は、曲げ弾性率2800kgf/cm2のTPO樹脂の射出成形品である。尚、裏当部材13の材質としては、TPO樹脂の他にも、TPU、TPE、SES、SEBS等の略称で呼ばれる軟質の各種エラストマー樹脂が好適で、曲げ弾性率としては6000kgf/cm2以下(好ましくは、4500kgf/cm2以下)が好適である。
【0019】
この裏当部材13は、扉部11よりもサイズが大きく、第1開裂溝12の内側及び外側に複数の結合点14が設定されている。この結合点14は、図示しない超音波溶着ホーンによるもので、裏当部材13からインストルメントパネル1内に没入して、その境界面を波形にして合成樹脂同士としての結合力を高めている。従って、インストルメントパネル1の表面の艶消しシボ加工には影響を及ぼさない。しかも、裏当部材13の自由な箇所に多くの結合点14を設定できるため、両者の結合力を十分に高めることができる。
【0020】
そして、この裏当部材13における第1開裂溝12の外側近接位置には、各筒状の筒状体16が形成され、その前後の対向面が前後一対の取付片17、18になっている。裏当部材13が合成樹脂製のため、このような取付片17、18の一体形成が容易である。この取付片17、18には、それぞれ取付孔19が複数形成され、そこに前記エアバッグモジュール3の前記フック10が係止されている。
【0021】
この取付片17、18は、インストルメントパネル1に対して所定の角度θ1で形成されている。この角度θ1は、インストルメントパネル1の金型成形時における型抜き角度θ2(約25度)と相違しており、エアバッグモジュール3の保持と、エアバッグ9の展開方向のガイドにとって、最適な角度に設定されている。
【0022】
裏当部材13がインストルメントパネル1と別体のため、取付片17、18の角度θ1は、インストルメントパネル1の型抜き角度θ2と関係なく、自由に設定することができる。また、取付片17、18を筒状体16の前後対向面部として形成したため、取付片17、18の強度が高くなり、エアバッグモジュール3の支持強度が向上すると共に、筒状体16によりエアバッグ9の膨張方向をガイドする機能も向上する。更に、取付片17、18が裏当部材13と一体で形成されているため、部品点数の増加を招くこともない。
【0023】
第1開裂溝12に対応する裏当部材13の部位には、前辺部及び後辺部を残して、上面視H字形の切断部20が形成されている。この切断部20、20は、小さい幅のスリット状に形成されている。裏当部材13における第1開裂溝12の前辺部及び後辺部に対応する部位は、該第1開裂溝12を跨ぐ断面L字状のヒンジ部22が形成されてなる。前記ヒンジ部22の基部22aを、前記裏当部材13の取付片17,18の高さ方向における中間部に形成されてなる。該基部22aと裏当部材13の外周縁部13aとの間には、隙間24が形成されている。
【0024】
前記ヒンジ部22は、断面がL字状に形成されてなると共に前記第1開裂溝12に沿って左右に断続的に形成されてなり、該ヒンジ部22、22間の対向した縁部の一方から、取付片17,18に向けて裏当部材13から扉補強部23が延出してなり、該扉補強部23の自由端部23aが裏当部材13の外周縁部13aに近接してなる。前記扉補強部23は、前記ヒンジ部22,22間の対向した縁部双方からそれぞれ延出してなり、該扉補強部23の自由端部23a同士が近接してなるものでも良い。
【0025】
第1開裂溝12に沿って左右方向に断続的に形成されてなるヒンジ部22,22の間に扉補強部23,23が配され且つヒンジ部22,22間の対向した縁部の一方から取付片17,18側へ向けて扉補強部23,23が延出してなるため、扉部11が開く際に扉補強部23,23の自由端部23aが縁部にぶつかり、扉部11が落ち込まず、そこから曲がることができる。
【0026】
次に、エアバッグ9の膨張展開挙動を説明する。自動車が衝突すると、インフレータ4からエアバッグ9内へガスが噴出される。エアバッグ9はケース8内で膨張して、その膨張力Fにより、裏当部材13及び扉部11が上側に押される。この時、左右両側の第1開裂溝12間を架橋した第2開裂溝21は、裏当部材13にて覆われていないため、エアバッグ9の膨張力Fが直接作用して破断し易い。また、裏当部材13が軟質合成樹脂のため、エアバッグ9の膨張力Fにより柔軟に変形して、対応する第1開裂溝12に対して膨張力Fを及ぼす。従って、この部分の第1開裂溝12も破断し易い。従って、通常の出力のインフレータ4でも、第1,第2開裂溝12、21を確実に破断して、扉部11をインストルメントパネル1から切り離すことができる。
【0027】
しかも、この実施形態では、取付片17、18が第1開裂溝12に近接した位置にあるため、取付片17、18で第1開裂溝12の近接位置の上側への移動が抑えられ、エアバッグ9の膨張力が第1開裂溝12に集中する。そのため、扉部11が更に破断し易くなっている。
【0028】
つまり、通常のインストルメントパネル1を用いても広い温度領域で好ましい膨張用通路が形成される裏当部材13で覆われた第1,第2開裂溝12,21を確実に破断することができるため、第1,第2開裂溝12,21が破断し易い。また、通常のインストルメントパネル1に要求されない高い耐衝撃特性を有することを求められないので、原価低減が図れる。
【0029】
前記ヒンジ部22,22が、断面L字状に形成されてなると共に前記ヒンジ部22,22の基部22aを、前記裏当部材13の取付片17,18の高さ方向における中間部に形成されてなるため、扉部11が開く際によく撓むことができる。また、ヒンジ部22,22を扉部11を支持した裏当部材13の取付片17,18の直近に設けてなるので、エアバッグ9の膨出用通路を極大にできる。また、ヒンジ部22,22に撓みがヒンジ部22,22全体に分担させることができるので、通常のインストルメントパネル1を用いても広い温度領域、特に低温域において好ましい扉部11の展開が可能となる。
【0030】
また、第1開裂溝12に沿って断続的に形成されてなるヒンジ部22,22の間に扉補強部23,23が配され且つヒンジ部22,22間の対向した縁部の一方から扉補強部23,23が延出してなるため、扉部11が開く際に扉補強部23,23の自由端部23aが縁部にぶつかり、扉部11が落ち込まず、そこから曲がることができる。また、扉補強部23,23がヒンジ部22,22間の対向した縁部から延出して形成され、扉補強部23,23の自由端部23a同士が近接してなるように形成された場合も、扉部11が開く際に扉補強部23,23の自由端部23a同士がぶつかり、扉部11が落ち込まず、そこから曲がることができる。
【0031】
インストルメントパネル1から切り離された扉部11は、裏当部材13のヒンジ部22を中心に前後へ回転して開き、扉部11が取り除かれた部分の開口から、エアバッグ9が車室内側に膨張展開して、乗員を保護することができる。
【0032】
図5は、この発明の第2実施形態を示す図である。この実施形態の裏当部材25は、ヒンジ部26の基部26aは、取付片17,18(図5は代表して取付片18のみ図示する)の中間部から突出するように形成されて、該取付片17,18は、そのまま上側で裏当部材25の外周縁部25aに一体に形成されてなるもので、このようにしても前記したような効果を有する。
【0033】
図6は、この発明の第3実施形態を示す図である。この実施形態の裏当部材27には、前記ヒンジ部22,22が形成されているのみならず、切断部20の代わりに第2薄肉部28が連続形成されてなる。また、扉補強部30の外側、即ち、取付片17,18(図6は代表して取付片18のみ図示する)との間を薄肉部29で連続形成するものである。裏当部材27の扉補強部30の薄肉部29は、対応する第1開裂溝12を下側から覆っているが、この薄肉部29も柔軟に変形するため、対応する第1開裂溝12を確実に破断させることができる。また、前記第2開裂部21を下側から覆っている裏当部材27に連続形成する第2薄肉部28は、対応する第2開裂溝21を下側から覆っているが、この第2薄肉部28も柔軟に変形するため、対応する第2開裂溝21を確実に破断させることができる。
【0034】
図7は、この発明の第4実施形態を示す図である。この実施形態の裏当部材31は、扉補強部32の外側、即ち、取付片17,18(図7は代表して取付片18のみ図示する)との間を薄肉部33で連続形成するものである。裏当部材31の扉補強部32の薄肉部33は、対応する第1開裂溝12を下側から覆っているが、この薄肉部33も柔軟に変形するため、対応する第1開裂溝12を確実に破断させることができる。
【0035】
【発明の効果】
この発明によれば、通常のインストルメントパネルを用いても広い温度領域、特に低温時のエアバッグ膨張展開時に大きな膨張用通路が形成されるため、エアバッグの膨張展開がスムーズとなる。また、通常のインストルメントパネルに要求される高い耐衝撃特性を求められないので、原価低減が図れる。更に耐熱変形性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態に係るエアバッグ装置を示すインストルメントパネルの断面図。
【図2】第1実施形態に係る開閉扉及び裏当部材の構造を示す一部破断の斜視図。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図。
【図4】図2のB−B線に沿った断面図。
【図5】この発明の第2実施形態に係る図3相当断面図。
【図6】この発明の第3実施形態に係る図3相当断面図。
【図7】この発明の第4実施形態に係る図3相当断面図。
【符号の説明】
1 インストルメントパネル
3 エアバッグモジュール
4 インフレータ
9 エアバッグ
11 扉部
12 開裂溝(第1開裂溝)
13、25、27,31 裏当部材
16 筒状体
17、18 取付片
20 切断部
22、26 ヒンジ部
22a,26a ヒンジ部の基部
23、30,32 扉補強部
Claims (2)
- 硬質合成樹脂製のインストルメントパネルの裏側にエアバッグとインフレータとを収納したエアバッグモジュールを設置すると共に、エアバッグに対応するインストルメントパネルの裏面に閉ループ状の開裂溝を形成して扉部を区画し、
該扉部の裏側に、該扉部よりも大きい軟質合成樹脂製の裏当部材を、扉部の内側及び外側に対して結合してなり、
該裏当部材に、前記インストルメントパネルの開裂溝の一部に対応して前記開裂溝に沿ったヒンジ部を中心に、エアバッグの膨張力によりインストルメントパネルから切り離された扉部の開成を可能とする切断部を形成した自動車のエアバッグ装置であって、
前記ヒンジ部が、断面L字状に形成されてなると共に前記開裂溝に沿って断続的に形成されてなり、
該ヒンジ部間には、扉補強部が延出してなり、該ヒンジ部の基部を、前記裏当部材の取付片の高さ方向における中間部に形成されてなることを特徴とする自動車のエアバッグ装置。 - 請求項1に記載の自動車のエアバッグ装置であって、
前記ヒンジ部の中心と前記開裂溝の中心とが、前記インストルメントパネルの面方向でずれた位置に形成されてなることを特徴とする自動車のエアバッグ装置。
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