JP3539465B2 - グリース組成物 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は各種産業機械や車両等の回転部材や摺動部材に適用される潤滑グリース組成物に関し、特に高荷重が加わる箇所や滑り率の高い箇所のように耐荷重性や極圧性が要求される箇所、あるいは摩耗し易い箇所に好適な軸受用のグリース組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
潤滑剤の一つであるグリース組成物は、ころ軸受や4点接触球軸受、クロスローラ軸受、直動案内装置(リニアガイド、ボールネジ等)、等速ジョイント、歯車等の各種産業機械や車両等の回転部材や摺動部材に広く適用されている。
これら回転部材や摺動部材において、高荷重下で使用される軸受、例えば鉄鋼設備の圧延機ロールネック用円すいころ軸受等では、高荷重下での極圧性に優れるだけでなく、耐摩耗性にも優れるグリースを封入することが望ましい。
【0003】
耐荷重性や極圧性を付与するためには、グリースに極圧剤を添加する方法が一般的であり、従来よりMoS2 等の固体潤滑剤、硫黄系、リン系、硫黄−リン系有機化合物、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)やジアルキルジチオリン酸モリブデン(MoDTP)等の有機モリブデン化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)等の有機亜鉛化合物、有機アンチモン化合物等の極圧剤が知られている。例えば、特公平4−34590号公報、特公平3−78920号公報、特開昭60−47099号公報には、MoDTCやMoDTP、ZnDTP等の有機モリブデン化合物や有機亜鉛化合物を含む極圧剤が特に有効である旨記載されている。
また、ナフテン酸鉛やジチオカルバミン酸鉛等の有機鉛化合物、無灰ジアルキルジチオカルバミン酸も有効であることも知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一方において、最近ではメンテナンスコストも考慮され、グーリス組成物には一度適用された後、長期に渡り継続して使用できることも望まれている。また、上記に挙げた各種機械部材の小型化や高性能化に伴って使用条件がより厳しくなる傾向にあり、それに伴ってグリース組成物にも更なる潤滑性能と潤滑寿命が要求されている。
【0005】
しかしながら、従来好ましいとされていた有機モリブデン系化合物や有機亜鉛化合物、有機アンチモン化合物等を含むグリース組成物では、このような要求に十分応え得ることができず、また適用できない潤滑箇所も増えている。
また、有機鉛化合物も優れた極圧性能を有するが、鉛を含むことによる毒性の問題がある。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、従来以上に優れた耐荷重性及び極圧性を有するとともに、適用箇所の潤滑寿命の長寿命化をもたらす潤滑剤組成物を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意検討を行った結果、グリース組成物中に特定の有機亜鉛化合物を含有させることにより、その耐荷重性及び極圧性を大幅に向上できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記本発明の目的は、基油および増ちょう剤を含有するグリース組成物において、下記一般式〔I〕〜 [III]で表される有機亜鉛化合物の少なくとも1つを含有することを特徴とするグリース組成物により達成される。
【0008】
【化2】
【0009】
式中、R、R´は、それぞれ炭素数1〜18の炭化水素基もしくは水素原子を表し、また同一でも、異なっていてもよい。
本発明のグリース組成物は一般式〔I〕〜[III] で表される有機亜鉛化合物を含有することにより、極圧性、酸化安定性が格段に向上する。このグリース組成物は、特に高温、高速回転での使用や高荷重が加えられる軸受に好適である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のグリース組成物に関して詳細に説明する。
本発明のグリース組成物は、一般のグリース組成物と同様に、基油と増ちょう剤とを含有する、
本発明で使用される基油としては、特に制限されるものではなく、通常グリースに使用される鉱油、合成炭化水素油、エーテル油等の合成油を単独もしくは混合して適宜使用できる。
具体的には、鉱油としてはパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油を挙げることができ、合成炭化水素油としてはポリ−α−オレフィン油等を、エーテル油としてはジアルキルジフェニルエーテル油、アルキルトリフェニルエーテル油、アルキルテトラフェニルエーテル油等を、エステル油としてはジエステル油、ポリオールエステル油またはこれらのコンプレックスエステル油、芳香族エステル油等を挙げることができる。
中でも、高温、高速での潤滑性能並びに潤滑寿命を考慮すると、合成油が含有されることが望ましく、特にエステル油、エーテル油の含有が望ましい。
【0011】
増ちょう剤も特に制限されることはなく、例えばアルミニウム、バリウム、カルシウム、リチウム、ナトリウム等の金属石鹸、リチウムコンプレックス、カルシウムコンプレックス、アルミニウムコンプレックス等の複合金属石鹸、ジウレア、トリウレア、テトラウレア、ポリウレア等のウレア化合物、あるいは、シリカゲル、ベントナイト等の無機系化合物、ウレタン化合物、ウレア・ウレタン化合物、ナトリウムテレフタラメート化合物等を適宜使用できる。
尚、酸化安定性に優れるウレア化合物を用いることにより、高温、高速回転での潤滑性能並びに潤滑寿命をより向上させることができる。
また、増ちょう剤の配合量は通常5〜35重量%である。
【0012】
本発明のグリース組成物は、上記一般式〔I〕〜 [III]で表される有機亜鉛化合物の少なくとも1つを含有することを特徴とする。上記一般式〔I〕〜 [III]において、特にR、R’ともに水素原子であるメルカプトベンゾチアゾール亜鉛(一般式〔I〕)、ベンズアミドチオフェノール亜鉛(一般式〔II〕)、及びメルカプトベンズイミダゾール亜鉛(一般式 [III])を好適に使用できる。
これら有機亜鉛化合物は、それぞれ単独もしくは2種以上混合してグリース組成物に添加される。尚、混合して添加する時の組み合わせは特に制限されない。その時の添加量は、グリース組成物の種類や適用箇所等により異なるが、グリース組成物全量の0.3〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の範囲である。上記の有機亜鉛化合物は極圧剤としての作用を有しており、これより少ないと十分な極圧性能が得られず、またこれより多くしても更なる効果の向上が期待できないばかりか、逆にこれら有機亜鉛化合物が凝集してトルクの上昇を招いたり、化学的作用等による摩耗が進行して軸受の潤滑部位の耐久性が低下する可能性がある。
【0013】
また、必要に応じて他の極圧剤を併用することもできる。併用される極圧剤は特に制限されるものではないが、特に好ましい極圧剤としてジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンやジアリールジチオカルバミン酸モリブデン等のジチオカルバミン酸モリブデン系化合物(MoDTC)、ジアルキルジチオリン酸モリブデンやジアリールジチオリン酸モリブデン等のジチオリン酸モリブデン系化合化合物(MoDTP)、ジアルキルジチオリン酸亜鉛やジアリールジチオリン酸亜鉛等のジチオリン酸亜鉛系化合物(ZnDTP)を使用することができる。
【0014】
また、以下に挙げる極圧剤も使用することができる。
有機金属系のものとしては、ジチオカルバミン酸アンチモン、ジチオリン酸アンチモン等の有機アンチモン化合物、ジチオカルバミン酸セレン等の有機セレン化合物、ナフテン酸ビスマス、ジチオカルバミン酸ビスマス等の有機ビスマス化合物、ジチオカルバミン酸鉄、オクチル酸鉄等の有機鉄化合物、ジチオカルバミン酸銅、ナフテン酸銅等の有機銅化合物、ナフテン酸鉛、ジチオカルバミン酸鉛等の有機鉛化合物、マレイン酸スズ、ジブチルスズスルファイド等の有機スズ化合物、あるいは、アルカリ金属、アルカリ土類金属の有機スルホネート、フェネート、ホスホネート、金、銀、チタン、カドミウム等の有機金属化合物も必要なら使用できる。硫黄系化合物としては、ジベンジルジスルフィド等のスルフィドあるいはポリスルフィド化合物、硫化油脂類、無灰系カルバミン酸化合物類、チオウレア系化合物、もしくはチオカーボネート類等を使用ことができる。
リン酸系極圧剤としては、トリオクチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート等のリン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル等のリン酸エステル系化合物を使用することができる。
また、その他、塩素化パラフィン等のハロゲン系の極圧剤、あるいは、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、PTFE、硫化アンチモン、窒化硼素などの硼素化合物等の固体潤滑剤を使用することができる。
【0015】
以上に挙げたその他の極圧剤の添加量は、本発明の有機亜鉛化合物との合計量でグリース組成物全量に対して20重量%を越えない量である。特に、MoDTCやMoDTP、ZnDTPを併用する場合、20重量%を越える場合に腐食性が強くなりすぎ好ましくない。
【0016】
また、グリースには、従来より公知の下記添加剤を配合することができる。
〔酸化防止剤〕
酸化防止剤としてゴム、プラスチック、潤滑油等に添加する老化防止剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤から適宜選択して使用する。例えば、以下の化合物を使用することができる。
即ち、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、ジピリジルアミン、フェノチアジン、N−メチルフェノチアジン、N−エチルフェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、p,p′−ジオクチルジフェニルアミン、N,N′−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン等のアミン系化合物、2,6−ジ−tert−ジブチルフェノール等のフェノール系化合物等を使用することができる。
【0017】
〔防錆剤・金属不活性化剤〕
防錆剤として、例えば以下の化合物を使用することができる。
即ち、有機スルホン酸のアンモニウム塩、バリウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム等アルカリ金属、アルカリ土類金属の有機スルホン酸塩、有機カルボン酸塩、フェネート、ホスホネート、アルキルもしくはアルケニルこはく酸エステル等のアルキル、アルケニルこはく酸誘導体、ソルビタンモノオレエート等の多価アルコールの部分エステル、オレオイルザルコシン等のヒドロキシ脂肪酸類、1−メルカプトステアリン酸等のメルカプト脂肪酸類あるいはその金属塩、ステアリン酸等の高級脂肪酸類、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、高級アルコールと高級脂肪酸とのエステル、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプトチアジアゾール等のチアゾール類、2−(デシルジチオ)−ベンゾイミダゾール、ベンズイミダゾール等のイミダゾール系化合物、あるいは、2,5−ビス(ドデシルジチオ)ベンズイミダゾール等のジスルフィド系化合物、あるいは、トリスノニルフェニルフォスファイト等のリン酸エステル類、ジラウリルチオプロピオネート等のチオカルボン酸エステル系化合物等を使用することができる。
また、亜硝酸塩等も使用することができる。
金属不活性化剤として、例えばベンゾトリアゾールやトリルトリアゾール等のトリアゾール系化合物を使用することができる。
【0018】
〔油性剤〕
油性剤として、例えば以下の化合物を使用することができる。
即ち、オレイン酸やステアリン酸等の脂肪酸、オレイルアルコール等の脂肪酸アルコール、ポリオキシエチレンステアリン酸エステルやポリグリセリルオレイン酸エステル等の脂肪酸エステル、リン酸、トリクレジルホスフェート、ラウリル酸エステルまたはポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸等のリン酸エステル等を使用することができる。
【0019】
本発明のグリース組成物は、常法に従って、基油に増ちょう剤とともに上記一般式〔I〕〜[III] で表される有機亜鉛化合物、その他の極圧剤、更に必要に応じて上記各種添加剤の所定量を添加し、混練機により混練することにより得られる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例によつて更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜10及び比較例1〜7)
基油に40℃での動粘度が80cstの鉱油を用い、リチウムステアレートを増ちょう剤として最終的に10重量%含まれるようにして、ベースグリースを調製した。
このベースグリースに、表1〜表3に示すように、一般式〔I〕〜[III] で表される有機亜鉛化合物、MoDTC、MoDTP、ZnDTP、その他の極圧剤を添加して試験グリースを調製した。表中、化合物Aとはメルカプトベンゾチアゾール亜鉛(一般式〔I〕)であり、化合物Bとはベンズアミドチオフェノール亜鉛(一般式[II])であり、化合物Cとはメルカプトベンズイミダゾール亜鉛(一般式[III] )である。
【0021】
得られた試験グリースを焼付き試験(四球試験)並びに軸受耐久試験に供し、評価した。尚、焼付き試験は全てについて行い、軸受耐久試験については代表的なものについてのみ行った。
各試験方法は、以下の通りである。
1.焼付き試験(四球試験)
この焼付き試験はグリース組成物の極圧性の評価のために行うものであり、ASTMに規定された試験装置を用いて四球試験法によって行った。即ち、3つの試験球(玉軸受用鋼球 SUJ2 1/2”)を互いに接するように正三角形状に配置して固定し、その中心に形成された窪み上に1つの試験球を載置する。そして、試験グリースを充填した状態で、載置した試験球を一定の回転数(200rpm)で回転させながら、当初30秒間は50kgfの荷重、その後50kgf/minの割合で荷重を徐々に増加させて加え、回転球を駆動するモーターが過負荷にて停止した時の荷重を焼付き荷重として求めた。
【0022】
2.軸受耐久試験
この軸受耐久試験はグリース組成物の高温での耐久性能を評価するためのものであり、ASTM D 1741の軸受寿命試験機に類似した試験機を用い、以下の方法によって行った。転がり軸受(呼び番号:6306VV)に各試験グリースを5g封入し、温度80℃、ラジアル荷重10kgf、アキシアル荷重300kgfの下で1000rpmの回転数で回転させ、モーターが過負荷にて停止するか、軸受温度が100℃を超えた時を耐久時間とした。
【0023】
上記の焼付き試験並びに軸受耐久試験の結果を、表1〜表3に併記する。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
表1〜表3から、実施例のグリース組成物は比較例のグリース組成物に比べて、焼付き荷重は同等以上であり、また軸受耐久時間にも優れていることが判る。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のグリース組成物は、一般式〔I〕〜〔III]で表される有機亜鉛化合物を含有することで、耐荷重性及び極圧性が格段に向上し、更に高温での潤滑寿命を大幅に改善できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は各種産業機械や車両等の回転部材や摺動部材に適用される潤滑グリース組成物に関し、特に高荷重が加わる箇所や滑り率の高い箇所のように耐荷重性や極圧性が要求される箇所、あるいは摩耗し易い箇所に好適な軸受用のグリース組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
潤滑剤の一つであるグリース組成物は、ころ軸受や4点接触球軸受、クロスローラ軸受、直動案内装置(リニアガイド、ボールネジ等)、等速ジョイント、歯車等の各種産業機械や車両等の回転部材や摺動部材に広く適用されている。
これら回転部材や摺動部材において、高荷重下で使用される軸受、例えば鉄鋼設備の圧延機ロールネック用円すいころ軸受等では、高荷重下での極圧性に優れるだけでなく、耐摩耗性にも優れるグリースを封入することが望ましい。
【0003】
耐荷重性や極圧性を付与するためには、グリースに極圧剤を添加する方法が一般的であり、従来よりMoS2 等の固体潤滑剤、硫黄系、リン系、硫黄−リン系有機化合物、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)やジアルキルジチオリン酸モリブデン(MoDTP)等の有機モリブデン化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)等の有機亜鉛化合物、有機アンチモン化合物等の極圧剤が知られている。例えば、特公平4−34590号公報、特公平3−78920号公報、特開昭60−47099号公報には、MoDTCやMoDTP、ZnDTP等の有機モリブデン化合物や有機亜鉛化合物を含む極圧剤が特に有効である旨記載されている。
また、ナフテン酸鉛やジチオカルバミン酸鉛等の有機鉛化合物、無灰ジアルキルジチオカルバミン酸も有効であることも知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一方において、最近ではメンテナンスコストも考慮され、グーリス組成物には一度適用された後、長期に渡り継続して使用できることも望まれている。また、上記に挙げた各種機械部材の小型化や高性能化に伴って使用条件がより厳しくなる傾向にあり、それに伴ってグリース組成物にも更なる潤滑性能と潤滑寿命が要求されている。
【0005】
しかしながら、従来好ましいとされていた有機モリブデン系化合物や有機亜鉛化合物、有機アンチモン化合物等を含むグリース組成物では、このような要求に十分応え得ることができず、また適用できない潤滑箇所も増えている。
また、有機鉛化合物も優れた極圧性能を有するが、鉛を含むことによる毒性の問題がある。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、従来以上に優れた耐荷重性及び極圧性を有するとともに、適用箇所の潤滑寿命の長寿命化をもたらす潤滑剤組成物を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意検討を行った結果、グリース組成物中に特定の有機亜鉛化合物を含有させることにより、その耐荷重性及び極圧性を大幅に向上できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記本発明の目的は、基油および増ちょう剤を含有するグリース組成物において、下記一般式〔I〕〜 [III]で表される有機亜鉛化合物の少なくとも1つを含有することを特徴とするグリース組成物により達成される。
【0008】
【化2】
【0009】
式中、R、R´は、それぞれ炭素数1〜18の炭化水素基もしくは水素原子を表し、また同一でも、異なっていてもよい。
本発明のグリース組成物は一般式〔I〕〜[III] で表される有機亜鉛化合物を含有することにより、極圧性、酸化安定性が格段に向上する。このグリース組成物は、特に高温、高速回転での使用や高荷重が加えられる軸受に好適である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のグリース組成物に関して詳細に説明する。
本発明のグリース組成物は、一般のグリース組成物と同様に、基油と増ちょう剤とを含有する、
本発明で使用される基油としては、特に制限されるものではなく、通常グリースに使用される鉱油、合成炭化水素油、エーテル油等の合成油を単独もしくは混合して適宜使用できる。
具体的には、鉱油としてはパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油を挙げることができ、合成炭化水素油としてはポリ−α−オレフィン油等を、エーテル油としてはジアルキルジフェニルエーテル油、アルキルトリフェニルエーテル油、アルキルテトラフェニルエーテル油等を、エステル油としてはジエステル油、ポリオールエステル油またはこれらのコンプレックスエステル油、芳香族エステル油等を挙げることができる。
中でも、高温、高速での潤滑性能並びに潤滑寿命を考慮すると、合成油が含有されることが望ましく、特にエステル油、エーテル油の含有が望ましい。
【0011】
増ちょう剤も特に制限されることはなく、例えばアルミニウム、バリウム、カルシウム、リチウム、ナトリウム等の金属石鹸、リチウムコンプレックス、カルシウムコンプレックス、アルミニウムコンプレックス等の複合金属石鹸、ジウレア、トリウレア、テトラウレア、ポリウレア等のウレア化合物、あるいは、シリカゲル、ベントナイト等の無機系化合物、ウレタン化合物、ウレア・ウレタン化合物、ナトリウムテレフタラメート化合物等を適宜使用できる。
尚、酸化安定性に優れるウレア化合物を用いることにより、高温、高速回転での潤滑性能並びに潤滑寿命をより向上させることができる。
また、増ちょう剤の配合量は通常5〜35重量%である。
【0012】
本発明のグリース組成物は、上記一般式〔I〕〜 [III]で表される有機亜鉛化合物の少なくとも1つを含有することを特徴とする。上記一般式〔I〕〜 [III]において、特にR、R’ともに水素原子であるメルカプトベンゾチアゾール亜鉛(一般式〔I〕)、ベンズアミドチオフェノール亜鉛(一般式〔II〕)、及びメルカプトベンズイミダゾール亜鉛(一般式 [III])を好適に使用できる。
これら有機亜鉛化合物は、それぞれ単独もしくは2種以上混合してグリース組成物に添加される。尚、混合して添加する時の組み合わせは特に制限されない。その時の添加量は、グリース組成物の種類や適用箇所等により異なるが、グリース組成物全量の0.3〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の範囲である。上記の有機亜鉛化合物は極圧剤としての作用を有しており、これより少ないと十分な極圧性能が得られず、またこれより多くしても更なる効果の向上が期待できないばかりか、逆にこれら有機亜鉛化合物が凝集してトルクの上昇を招いたり、化学的作用等による摩耗が進行して軸受の潤滑部位の耐久性が低下する可能性がある。
【0013】
また、必要に応じて他の極圧剤を併用することもできる。併用される極圧剤は特に制限されるものではないが、特に好ましい極圧剤としてジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンやジアリールジチオカルバミン酸モリブデン等のジチオカルバミン酸モリブデン系化合物(MoDTC)、ジアルキルジチオリン酸モリブデンやジアリールジチオリン酸モリブデン等のジチオリン酸モリブデン系化合化合物(MoDTP)、ジアルキルジチオリン酸亜鉛やジアリールジチオリン酸亜鉛等のジチオリン酸亜鉛系化合物(ZnDTP)を使用することができる。
【0014】
また、以下に挙げる極圧剤も使用することができる。
有機金属系のものとしては、ジチオカルバミン酸アンチモン、ジチオリン酸アンチモン等の有機アンチモン化合物、ジチオカルバミン酸セレン等の有機セレン化合物、ナフテン酸ビスマス、ジチオカルバミン酸ビスマス等の有機ビスマス化合物、ジチオカルバミン酸鉄、オクチル酸鉄等の有機鉄化合物、ジチオカルバミン酸銅、ナフテン酸銅等の有機銅化合物、ナフテン酸鉛、ジチオカルバミン酸鉛等の有機鉛化合物、マレイン酸スズ、ジブチルスズスルファイド等の有機スズ化合物、あるいは、アルカリ金属、アルカリ土類金属の有機スルホネート、フェネート、ホスホネート、金、銀、チタン、カドミウム等の有機金属化合物も必要なら使用できる。硫黄系化合物としては、ジベンジルジスルフィド等のスルフィドあるいはポリスルフィド化合物、硫化油脂類、無灰系カルバミン酸化合物類、チオウレア系化合物、もしくはチオカーボネート類等を使用ことができる。
リン酸系極圧剤としては、トリオクチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート等のリン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル等のリン酸エステル系化合物を使用することができる。
また、その他、塩素化パラフィン等のハロゲン系の極圧剤、あるいは、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、PTFE、硫化アンチモン、窒化硼素などの硼素化合物等の固体潤滑剤を使用することができる。
【0015】
以上に挙げたその他の極圧剤の添加量は、本発明の有機亜鉛化合物との合計量でグリース組成物全量に対して20重量%を越えない量である。特に、MoDTCやMoDTP、ZnDTPを併用する場合、20重量%を越える場合に腐食性が強くなりすぎ好ましくない。
【0016】
また、グリースには、従来より公知の下記添加剤を配合することができる。
〔酸化防止剤〕
酸化防止剤としてゴム、プラスチック、潤滑油等に添加する老化防止剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤から適宜選択して使用する。例えば、以下の化合物を使用することができる。
即ち、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、ジピリジルアミン、フェノチアジン、N−メチルフェノチアジン、N−エチルフェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、p,p′−ジオクチルジフェニルアミン、N,N′−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン等のアミン系化合物、2,6−ジ−tert−ジブチルフェノール等のフェノール系化合物等を使用することができる。
【0017】
〔防錆剤・金属不活性化剤〕
防錆剤として、例えば以下の化合物を使用することができる。
即ち、有機スルホン酸のアンモニウム塩、バリウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム等アルカリ金属、アルカリ土類金属の有機スルホン酸塩、有機カルボン酸塩、フェネート、ホスホネート、アルキルもしくはアルケニルこはく酸エステル等のアルキル、アルケニルこはく酸誘導体、ソルビタンモノオレエート等の多価アルコールの部分エステル、オレオイルザルコシン等のヒドロキシ脂肪酸類、1−メルカプトステアリン酸等のメルカプト脂肪酸類あるいはその金属塩、ステアリン酸等の高級脂肪酸類、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、高級アルコールと高級脂肪酸とのエステル、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプトチアジアゾール等のチアゾール類、2−(デシルジチオ)−ベンゾイミダゾール、ベンズイミダゾール等のイミダゾール系化合物、あるいは、2,5−ビス(ドデシルジチオ)ベンズイミダゾール等のジスルフィド系化合物、あるいは、トリスノニルフェニルフォスファイト等のリン酸エステル類、ジラウリルチオプロピオネート等のチオカルボン酸エステル系化合物等を使用することができる。
また、亜硝酸塩等も使用することができる。
金属不活性化剤として、例えばベンゾトリアゾールやトリルトリアゾール等のトリアゾール系化合物を使用することができる。
【0018】
〔油性剤〕
油性剤として、例えば以下の化合物を使用することができる。
即ち、オレイン酸やステアリン酸等の脂肪酸、オレイルアルコール等の脂肪酸アルコール、ポリオキシエチレンステアリン酸エステルやポリグリセリルオレイン酸エステル等の脂肪酸エステル、リン酸、トリクレジルホスフェート、ラウリル酸エステルまたはポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸等のリン酸エステル等を使用することができる。
【0019】
本発明のグリース組成物は、常法に従って、基油に増ちょう剤とともに上記一般式〔I〕〜[III] で表される有機亜鉛化合物、その他の極圧剤、更に必要に応じて上記各種添加剤の所定量を添加し、混練機により混練することにより得られる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例によつて更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜10及び比較例1〜7)
基油に40℃での動粘度が80cstの鉱油を用い、リチウムステアレートを増ちょう剤として最終的に10重量%含まれるようにして、ベースグリースを調製した。
このベースグリースに、表1〜表3に示すように、一般式〔I〕〜[III] で表される有機亜鉛化合物、MoDTC、MoDTP、ZnDTP、その他の極圧剤を添加して試験グリースを調製した。表中、化合物Aとはメルカプトベンゾチアゾール亜鉛(一般式〔I〕)であり、化合物Bとはベンズアミドチオフェノール亜鉛(一般式[II])であり、化合物Cとはメルカプトベンズイミダゾール亜鉛(一般式[III] )である。
【0021】
得られた試験グリースを焼付き試験(四球試験)並びに軸受耐久試験に供し、評価した。尚、焼付き試験は全てについて行い、軸受耐久試験については代表的なものについてのみ行った。
各試験方法は、以下の通りである。
1.焼付き試験(四球試験)
この焼付き試験はグリース組成物の極圧性の評価のために行うものであり、ASTMに規定された試験装置を用いて四球試験法によって行った。即ち、3つの試験球(玉軸受用鋼球 SUJ2 1/2”)を互いに接するように正三角形状に配置して固定し、その中心に形成された窪み上に1つの試験球を載置する。そして、試験グリースを充填した状態で、載置した試験球を一定の回転数(200rpm)で回転させながら、当初30秒間は50kgfの荷重、その後50kgf/minの割合で荷重を徐々に増加させて加え、回転球を駆動するモーターが過負荷にて停止した時の荷重を焼付き荷重として求めた。
【0022】
2.軸受耐久試験
この軸受耐久試験はグリース組成物の高温での耐久性能を評価するためのものであり、ASTM D 1741の軸受寿命試験機に類似した試験機を用い、以下の方法によって行った。転がり軸受(呼び番号:6306VV)に各試験グリースを5g封入し、温度80℃、ラジアル荷重10kgf、アキシアル荷重300kgfの下で1000rpmの回転数で回転させ、モーターが過負荷にて停止するか、軸受温度が100℃を超えた時を耐久時間とした。
【0023】
上記の焼付き試験並びに軸受耐久試験の結果を、表1〜表3に併記する。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
表1〜表3から、実施例のグリース組成物は比較例のグリース組成物に比べて、焼付き荷重は同等以上であり、また軸受耐久時間にも優れていることが判る。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のグリース組成物は、一般式〔I〕〜〔III]で表される有機亜鉛化合物を含有することで、耐荷重性及び極圧性が格段に向上し、更に高温での潤滑寿命を大幅に改善できる。
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