JP3687708B2 - 転動装置用グリース組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は各種産業機械や車両等の回転部材や摺動部材に適用される転動装置用グリース組成物に関し、特に高荷重が加わる箇所や滑り率の高い箇所のように耐荷重性や極圧性が要求される箇所、あるいは摩耗し易い箇所に好適な転動装置用グリース組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
潤滑剤組成物の一つであるグリースは、ころ軸受や4点接触球軸受、クロスローラ軸受、直動案内装置(リニアガイド、ボールネジ等)、等速ジョイント、歯車等の各種産業機械や車両等の回転部材や摺動部材に広く適用されている。
これら回転部材や摺動部材において、高荷重下で使用される軸受、例えば鉄鋼設備の圧延機ロールネック用円すいころ軸受等では、高荷重下での極圧性に優れるだけでなく、耐摩耗性にも優れるグリースを封入することが望ましい。耐荷重性や極圧性を付与するためには、グリースに極圧剤を添加する方法が一般的であり、従来よりMoS2 等の固体潤滑剤、硫黄系、リン系、硫黄−リン系有機化合物、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)やジアルキルジチオリン酸モリブデン(MoDTP)等の有機モリブデン化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)等の有機亜鉛化合物、有機アンチモン化合物等の極圧剤が知られている。例えば、特公平4−34590号公報、特公平3−78920号公報、特開昭60−47099号公報には、MoDTCやMoDTP、ZnDTP等の有機モリブデン化合物や有機亜鉛化合物を含む極圧剤が特に有効である旨記載されている。また、無灰ジアルキルジチオカルバミン酸も有効であることも知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一方において、最近ではメンテナンスコストも考慮され、潤滑剤組成物には一度適用された後、長期に渡り継続して使用できることも望まれている。また、上記に挙げた各種機械部材の小型化や高性能化に伴って使用条件がより厳しくなる傾向にあり、それに伴って潤滑剤組成物にも更なる潤滑性能と潤滑寿命が要求されている。
しかしながら、従来好ましいとされていた有機モリブデン系化合物や有機亜鉛化合物、有機アンチモン化合物等を含む潤滑剤組成物では、このような要求に十分応え得ることができず、また適用できない潤滑箇所も増えている。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、従来以上に優れた耐荷重性及び極圧性を有するとともに、適用箇所の潤滑寿命の長寿命化をもたらす転動装置用グリース組成物を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意検討を行った結果、転動装置用グリース組成物に特定の無灰硫黄化合物を含有させることにより、その耐荷重性及び極圧性を大幅に向上できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記の目的は、本発明に係る、増ちょう剤がウレア化合物であり、かつジベンゾチアジルジスルフィドまたはペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジンをグリース全量の0.3〜12重量%含有することを特徴とする転動装置用グリース組成物により達成される。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の転動装置用グリース組成物に関して詳細に説明する。
本発明の転動装置用グリース組成物には、ジベンゾチアジルジスルフィドまたはペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジンが、グリース全量の0.3〜12重量%配合される。
配合量がこれより少ないと十分な効果が得られず、またこれより多くしても更なる効果の向上は期待できないばかりか、逆に化学的作用等による摩耗が進行して軸受等の潤滑部品の耐久性が低下する可能性がある。
【0006】
上記の無灰硫黄化合物は極圧剤として作用するが、更に従来公知の極圧剤を併用することも好ましく、それにより耐荷重性や極圧性をより向上させることができる。
また、公知の固体潤滑剤を併用してもよい。
【0007】
本発明の転動装置用グリース組成物は、耐荷重性や極圧性に優れるために、特に高荷重が加えられ、高温、高速回転で使用される各種軸受に封入されるグリースに好適である。
【0008】
グリースとする時に使用される基油は、通常グリースに使用される鉱油、合成油あるいはこれらの混合油を使用できる。具体的には、鉱油としてはパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油を挙げることができ、合成炭化水素油としてはポリ−α−オレフィン油等を、エーテル油としてはジアルキルジフェニルエーテル油、アルキルトリフェニルエーテル油、アルキルテトラフェニルエーテル油等を、エステル油としてはジエステル油、ポリオールエステル油またはこれらのコンプレックスエステル油、芳香族エステル油等を挙げることができる。
中でも、高温、高速での潤滑性能並びに潤滑寿命を考慮すると、合成油が含有されることが望ましく、特にエステル油、エーテル油の含有が望ましい。
【0009】
増ちょう剤としては、ジウレア、トリウレア、テトラウレア、ポリウレア等のウレア化合物を適宜使用できる。
尚、酸化安定性に優れるウレア化合物を用いることにより、高温、高速回転での潤滑性能並びに潤滑寿命をより向上させることができる。
また、増ちょう剤の配合量は通常5〜35重量%である。
【0010】
また、グリースには、従来より公知の下記添加剤を配合することができる。
〔酸化防止剤〕
酸化防止剤としてゴム、プラスチック、潤滑油等に添加する老化防止剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤から適宜選択して使用する。例えば、以下の化合物を使用することができる。
即ち、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、ジピリジルアミン、フェノチアジン、N−メチルフェノチアジン、N−エチルフェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、p,p′−ジオクチルジフェニルアミン、N,N′−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン等のアミン系化合物、2,6−ジ−tert−ジブチルフェノール等のフェノール系化合物等を使用することができる。
【0011】
〔防錆剤・金属不活性化剤〕
防錆剤として、例えば以下の化合物を使用することができる。
即ち、有機スルホン酸のアンモニウム塩、バリウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム等アルカリ金属、アルカリ土類金属の有機スルホン酸塩、有機カルボン酸塩、フェネート、ホスホネート、アルキルもしくはアルケニルこはく酸エステル等のアルキル、アルケニルこはく酸誘導体、ソルビタンモノオレエート等の多価アルコールの部分エステル、オレオイルザルコシン等のヒドロキシ脂肪酸類、1−メルカプトステアリン酸等のメルカプト脂肪酸類あるいはその金属塩、ステアリン酸等の高級脂肪酸類、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、高級アルコールと高級脂肪酸とのエステル、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプトチアジアゾール等のチアゾール類、2−(デシルジチオ)−ベンゾイミダゾール、ベンズイミダゾール等のイミダゾール系化合物、あるいは、2,5−ビス(ドデシルジチオ)ベンズイミダゾール等のジスルフィド系化合物、あるいは、トリスノニルフェニルフォスファイト等のリン酸エステル類、ジラウリルチオプロピオネート等のチオカルボン酸エステル系化合物等を使用することができる。
また、亜硝酸塩等も使用することができる。
金属不活性化剤として、例えばベンゾトリアゾールやトリルトリアゾール等のトリアゾール系化合物を使用することができる。
【0012】
〔油性剤〕
油性剤として、例えば以下の化合物を使用することができる。
即ち、オレイン酸やステアリン酸等の脂肪酸、オレイルアルコール等の脂肪酸アルコール、ポリオキシエチレンステアリン酸エステルやポリグリセリルオレイン酸エステル等の脂肪酸エステル、リン酸、トリクレジルホスフェート、ラウリル酸エステルまたはポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸等のリン酸エステル等を使用することができる。
【0013】
以下に本発明を実施例並びに比較例により更に詳細に説明する。
尚、実施例及び比較例で用いたグリースは、下記の如く調製したウレアグリースである。
即ち、基油に40℃での動粘度が150cSt の鉱油を用い、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネートとオクチルアミンを反応させたジウレア化合物を増ちょう剤とするグリースである。
また、増ちょう剤量は最終的にグリース中に10重量%含まれるようにした。
【0014】
そして、上記グリースに表1に示す如く各化合物を添加して試験グリースを調製し、焼付き試験並びに軸受耐久試験を行った。尚、焼付き試験は全てについて行い、軸受耐久試験については代表的なものについてのみ行った。
各試験方法は、以下の通りである。
1.焼付き試験
この焼付き試験はグリースの極圧性の評価のために行うものであり、ASTMに規定された試験装置を用いて四球試験法によって行った。即ち、3つの試験球(玉軸受用鋼球 SUJ2 1/2")を互いに接するように正三角形状に配置して固定し、その中心に形成された窪み上に1つの試験球を載置する。そして、試験グリースを充填した状態で、載置した試験球を一定の回転数(4000rpm)で回転させながら、当初1分間は6kgfの荷重、その後50kgf/minの割合で荷重を徐々に増加させて加え、回転トルクが急激に上昇した時点の荷重を焼付き荷重として求めた。
評価基準は、焼付き荷重が60kgf以上を合格とした。
【0015】
2.軸受耐久試験
この軸受耐久試験はグリースの高温での耐久性能を評価するためのものであり、以下の方法によって行った。即ち、転がり軸受(呼び番号:HR30205J)に各試験グリースを3g封入し、温度120℃、ラジアル荷重50kgf、アキシアル荷重150kgfの下で10000rpmの回転数で高速回転させ、焼き付きに至るまでの時間を測定した。
評価基準は、上記の条件で1000時間以上を合格とした。
【0016】
上記の焼付き試験並びに軸受耐久試験の結果を、表1に併記する。
【0017】
【表1】
【0018】
表1から、実施例のグリースは比較例のグリースに比べて、焼付き荷重及び耐久時間ともに優れていることが判る。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の転動装置用グリース組成物は、特定の無灰硫黄化合物を含有することで、適用箇所に従来に比べて格段に優れた耐荷重性及び極圧性を付与することができる。
Claims (2)
- 増ちょう剤がウレア化合物であり、かつジベンゾチアジルジスルフィドをグリース全量の0.3〜12重量%含有することを特徴とする転動装置用グリース組成物。
- 増ちょう剤がウレア化合物であり、かつペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジンをグリース全量の0.3〜12重量%含有することを特徴とする転動装置用グリース組成物。
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