JP2008069282A - 等速ジョイント用グリース組成物および等速ジョイント - Google Patents
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Description
近年、自動車の高性能化がますます進み、高出力車が増加していることから、等速ジョイントにかかる負荷も増大し、その潤滑条件がより過酷になる傾向がある。一方で、自動車の乗り心地の向上もさらに高度なレベルを要求される傾向にある。その乗り心地の向上は、厳暑地から厳寒地に至るまで、あらゆる気候の地域において必要とされる。
従来、潤滑剤としては基油として鉱物油、添加剤としてモリブデン化合物を含有する等速ジョイント用グリース組成物が開示されている(例えば特許文献1および2参照)。しかし、極低温時に種々の要因が重なりあった際には、これらの等速ジョイント用グリース組成物では回転抵抗変動を低減する性能が不十分となる場合があり、より安定した性能への改善が望まれる。
なお、ポリ(メタ)アクリレートとは、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、またはポリメタクリレートおよびポリアクリレートの混合物をいう。
また、上記転動体が球体であることを特徴とする。
また、上記等速ジョイントが固定型等速ジョイントであることを特徴とする。
また、上記等速ジョイントがスライド型等速ジョイントであることを特徴とする。
近年の経済発展に伴い、等速ジョイントの使用環境が拡大し、要求性能も多様化してきている中、厳寒地における等速ジョイントの円滑な作動も重要視される。しかし、低温時の回転抵抗変動を十分低減することが可能な等速ジョイント用グリース組成物は未だに提案されていない。このような状況下において、本発明の低温時の回転抵抗変動を低減する等速ジョイント用グリース組成物は極めて有用な発明といえる。
本発明の等速ジョイント用グリース組成物とは、等速ジョイントに用いるためのグリース状組成物をいう。ここで、等速ジョイントとは、交差する二軸間で交差角が種々変化しても回転運動を等速度で伝達する部品をいう。また、グリースとは基油中に増ちょう剤を分散させて半固体または固体状にしたものをいう。
モノアミンとしては、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂環式アミン、またはこれらの混合物が挙げられる。脂肪族アミンの具体例としては、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、およびオレイルアミンが挙げられる。芳香族アミンの具体例としては、アニリンおよびp-トルイジンが挙げられる。脂環式アミンの具体例としては、シクロヘキシルアミンが挙げられる。
上述したモノアミンのうち、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、またはこれらの混合物を用いて得られるジウレア系増ちょう剤が好ましい。
グリース組成物全体に占めるジウレア系増ちょう剤の含有量は、例えば、1〜20 重量%とすることができ、2〜20 重量%とするのが好ましいが、これらに限定されるわけではない。
具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、テトラコシル(メタ)アクリレート、オクタコシル(メタ)アクリレート及びトリアコンチル(メタ)アクリレートの重合体または共重合体などが挙げられる。これらの化合物を単独で、またはいずれか 2 種類以上を混合して用いてもよい。
具体的には、エーテル油としてはジアルキルジフェニルエーテル油、アルキルトリフェニルエーテル油、アルキルテトラフェニルエーテル油等を、エステル油としてはジエステル油、ポリオールエステル油またはこれらのコンプレックスエステル油、芳香族エステル油等を挙げることができる。合成炭化水素油としてはポリ-α-オレフィン(以下、PAOと記す)油等を挙げることができる。中でも、潤滑性能並びに潤滑寿命を考慮すると、アルキルジフェニルエーテル油、エステル油、PAO油の合成油が含有されることが望ましい。
また、低温性能および潤滑性能が低下しないためには、流動点が−40℃以下であるもの、40℃における動粘度が 40 mm2/sec 以上のものが好ましい。
グリース組成物全体に占めるジチオリン酸亜鉛化合物の含有量は、好ましくは 0.1〜10 重量%であり、さらに好ましくは 0.5〜5 重量%である。
[極圧剤]
従来公知の極圧剤を併用することにより、耐荷重性や極圧性を向上させることができる。例えば以下の化合物を使用することができる。有機金属系のものとしては、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン等の有機モリブデン化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛、亜鉛フェネート等の有機亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸アンチモン、ジチオリン酸アンチモン等の有機アンチモン化合物、ジチオカルバミン酸セレン等の有機セレン化合物、ナフテン酸ビスマス、ジチオカルバミン酸ビスマス等の有機ビスマス化合物、ジチオカルバミン酸鉄、オクチル酸鉄等の有機鉄化合物、ジチオカルバミン酸銅、ナフテン酸銅等の有機銅化合物、ナフテン酸鉛、ジチオカルバミン酸鉛等の有機鉛化合物、マレイン酸スズ、ジブチルスズスルファイド等の有機スズ化合物、あるいは、アルカリ金属、アルカリ土類金属の有機スルホネート、フェネート、ホスホネート、金、銀、チタン、カドミウム等の有機金属化合物も必要なら使用できる。硫黄系化合物としては、ジベンジルジスルフィド等のスルフィドあるいはポリスルフィド化合物、硫化油脂類、無灰系カルバミン酸化合物類、チオウレア系化合物、もしくはチオカーボネート類等を使用ことができる。リン酸系極圧剤としては、トリオクチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート等のリン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル等のリン酸エステル系化合物を使用することができる。また、その他、塩素化パラフィン等のハロゲン系の極圧剤、あるいは、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、PTFE、硫化アンチモン、窒化硼素などの硼素化合物等の固体潤滑剤を使用することができる。これらの極圧剤の中で、ジチオカルバミン酸系化合物やジチオリン酸系化合物を好適に使用できる。
酸化防止剤としてゴム、プラスチック、潤滑油等に添加する老化防止剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤から適宜選択して使用することができる。例えば、以下の化合物を使用することができる。即ち、フェニル-1-ナフチルアミン、フェニル-2-ナフチルアミン、ジフェニル-p-フェニレンジアミン、ジピリジルアミン、フェノチアジン、N-メチルフェノチアジン、N-エチルフェノチアジン、3,7-ジオクチルフェノチアジン、p,p′-ジオクチルジフェニルアミン、N,N′-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン等のアミン系化合物、2,6-ジ-tert-ジブチルフェノール等のフェノール系化合物等を使用することができる。
防錆剤として、例えば以下の化合物を使用することができる。即ち、有機スルホン酸のアンモニウム塩、バリウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム等アルカリ金属、アルカリ土類金属の有機スルホン酸塩、有機カルボン酸塩、フェネート、ホスホネート、アルキルもしくはアルケニルこはく酸エステル等のアルキル、アルケニルこはく酸誘導体、ソルビタンモノオレエート等の多価アルコールの部分エステル、オレオイルザルコシン等のヒドロキシ脂肪酸類、1-メルカプトステアリン酸等のメルカプト脂肪酸類あるいはその金属塩、ステアリン酸等の高級脂肪酸類、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、高級アルコールと高級脂肪酸とのエステル、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプトチアジアゾール等のチアゾール類、2-(デシルジチオ)-ベンゾイミダゾール、ベンズイミダゾール等のイミダゾール系化合物、あるいは、2,5-ビス(ドデシルジチオ)ベンズイミダゾール等のジスルフィド系化合物、あるいは、トリスノニルフェニルフォスファイト等のリン酸エステル類、ジラウリルチオプロピオネート等のチオカルボン酸エステル系化合物等を使用することができる。また、金属表面を不動態化させる、亜硝酸塩、硝酸塩、クロム酸塩、リン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩等の腐食抑制剤も使用することができる。金属不活性化剤として、例えばベンゾトリアゾールやトリルトリアゾール等のトリアゾール系化合物を使用することができる。
油性剤として、例えば以下の化合物を使用することができる。即ち、オレイン酸やステアリン酸等の脂肪酸、オレイルアルコール等の脂肪酸アルコール、ポリオキシエチレンステアリン酸エステルやポリグリセリルオレイン酸エステル等の脂肪酸エステル、リン酸、トリクレジルホスフェート、ラウリル酸エステルまたはポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸等のリン酸エステル等を使用することができる。
また、トルク伝達部材が球面ローラであるスライド型等速ジョイントとしてトリポード型等速ジョイントを挙げることができる。
図1に示すように、ツェッパ型等速ジョイント1は外輪2の内面および球形内輪3の外面に軸方向の六本のトラック溝4、5を等角度に形成し、そのトラック溝4、5間に組み込んだボール6をケージ7で支持し、このケージ7の外周を球面7aとし、かつ内周を内輪3の外周に適合する球面7bとしている。
また、外輪2の外周とシャフト8の外周とをブーツ9で覆い、外輪2と、球形内輪3と、トラック溝4、5と、ボール6と、ケージ7と、シャフト8とに囲まれた空間に等速ジョイント用グリース組成物10が封入されている。
また、外輪12の外周とシャフト18の外周とをブーツ19で覆い、外輪12と、球形内輪13と、トラック溝14、15と、ボール16と、ケージ17と、シャフト18とに囲まれた空間に等速ジョイント用グリース組成物20が封入されている。
また、外輪22の外周とシャフト28の外周とをブーツ29で覆い、外輪22と、トラック溝23と、トリポード部材24と、シャフト28とに囲まれた空間に等速ジョイント用グリース組成物30が封入されている。
鉱油中で、ジフェニルメタン‐4,4‐ジイソシアナート(1モル)、オクチルアミン(2モル)を反応させ、生成したジウレア系化合物を均一に分散させてベースグリースを得た。このベースグリースに、表1に示す配合となるように基油と添加剤を加え、三段ロールミルにて混練し、JIS K 2220 混和ちょう度グレードNO.2に調整した。
得られたグリースについて低温時(−15℃)の摩擦係数を測定するため、以下に示すSRV摩擦摩耗試験を行なった。結果を表1に併記する。
テストピース: ボール 直径 10 mm(SUJ2)
円筒プレート 直径 24 mm×7.85 mm(S53C)
評価条件: 点接触面圧 2GPa
周波数 15 Hz
振幅 0.8 mm
時間 30 min.
試験温度 −15℃
測定項目: 摩擦係数(測定時間内で一定となった値)の平均値
2、12、22 外輪
3、13、 内輪
4、5、14、15、23 トラック溝
6、16、 ボール(転動体)
7、17、 ケージ
7a、17a 球面
7b、17b 球面
8、18、28 シャフト
9、19、29 ブーツ
10、20、30 等速ジョイント用グリース組成物
24 トリポード部材
25 脚軸
26 球面ローラ
27 ニードル
Claims (9)
- 前記等速ジョイント用グリース組成物中に占める前記ポリ(メタ)アクリレートの配合割合が 3〜10 重量%であることを特徴とする請求項1記載の等速ジョイント用グリース組成物。
- 前記添加剤が、ジチオリン酸亜鉛化合物を含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の等速ジョイント用グリース組成物。
- 前記基油に 40℃における動粘度が 40 mm2/sec 以上でかつ、流動点が−40℃以下の合成油を配合したことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の等速ジョイント用グリース組成物。
- 前記合成油は、合成炭化水素油、エーテル油またはエステル油であることを特徴とする請求項4記載の等速ジョイント用グリース組成物。
- 外輪および内輪に設けられたトラック溝と転動体との係り合いによって回転トルクが伝達され、前記転動体が前記トラック溝に沿って転動することによって軸方向移動がなされ、前記転動体の周囲にグリース組成物が封入されてなる等速ジョイントであって、
前記グリース組成物が、請求項1ないし請求項5のいずれか一項記載の等速ジョイント用グリース組成物であることを特徴とする等速ジョイント。 - 前記転動体が、球体であることを特徴とする請求項6記載の等速ジョイント。
- 前記等速ジョイントが、固定型等速ジョイントであることを特徴とする請求項6または請求項7記載の等速ジョイント。
- 前記等速ジョイントが、スライド型等速ジョイントであることを特徴とする請求項6または請求項7記載の等速ジョイント。
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