JP3539281B2 - 段ボール用中芯原紙の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は低グレード古紙(雑誌古紙)を30重量%以上配合しても強度が優れており、またコルゲーターでの段割れを防止しうる段ボール用中芯原紙の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
段ボールケースは、作業性向上・輸送コスト削減のため、構成の見直しと軽量化が行われ、ライナーの米坪の低下に伴い、段ボールケースの強度維持のため中芯原紙については強度アップが要求されている。
【0003】
一方、資源有効利用の観点から、原料古紙は、低グレード古紙といわれる雑誌古紙を多配合することが必要であるが、強度が低く、多配合できていない。また、段古紙についてもリサイクル使用が進んだ結果、強度は低下してきている。
【0004】
中芯原紙は、段繰り工程でプレヒーターや、各ロール間の摩擦による張力、段繰りに際しての曲げ応力、せん断応力等を受け、また中芯原紙の厚さ方向に、段成形の際の曲げにより外側は引張り応力、内側は圧縮力を受け、せん断応力も働く。従って、段割れの発生を防止するには、主として、中芯原紙の強度特に引張り強さ、および摩擦抵抗が低いことが必要である。
【0005】
このような状況の中で、中芯原紙に低グレード古紙を多配合しながら、軽量で強度の優れた段ボールシートを提供する技術について、十分な検討がなされていないのが現状である。言い換えると、現状では低グレード古紙を配合しても強度面で影響の少ない範囲の使用量になっている。
【0006】
また、近年のコルゲーターの高速化に伴い、300m/minの貼合速度を有するコルゲーターが出現してきており、中芯原紙の段割れという現象が生産性の阻害要因となっている。
【0007】
従って、中芯原紙では、コルゲーターで機械的に過度のストレスを受けるので、生産性向上のためには、引張り強さ等の強度を一定レベル以上に保持することが重要であり、さらに、段割れ防止のためには表面の滑り性を付与することが不可欠となる。
【0008】
中芯原紙の強度アップ法としては、水溶性樹脂と多価金属塩の含浸塗布、アニオン系樹脂とカチオン系樹脂の含浸塗布等が知られているが、強度が優れていると同時に、表面の滑り性を改善する方策については十分検討されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低グレード古紙を多配合しても強度を維持するとともに、表面滑り性を確保し、コルゲーターでの段割れを防止することのできる中芯原紙の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は低グレード古紙を30重量%以上配合した中芯原紙にオンマシンコーターで水溶性高分子およびまたは水分散性高分子を塗布することで強度をアップし、低グレード古紙の多配合を可能とすると同時に、塗工液に滑剤を添加塗布することにより、表面に滑剤を均一に塗布でき、中芯原紙の表面滑り性を確保して、コルゲーターでの段割れを防止し、強度の優れた段ボールシートを得られるようにするものである。
【0011】
水溶性高分子およびまたは水分散性高分子は、酸化澱粉、変性澱粉、PVA、SBR、MBR等の溶液或いは分散液を単独または混合液として、2本ロールサイズプレス、ゲートロールコーター、ロッドメタリングコーター、バーコーター、各種ブレードコーター等通常使用されるオンマシン塗工装置を使用して、水溶性高分子およびまたは水分散性高分子を固型分塗布量で両面合計0.5〜10g/m2、好ましくは2〜5g/m2塗布することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、滑剤がポリエチレンワックス、ステアリン酸亜鉛、ポリエチレンワックス乳化物、および酸化ポリエチレン系ワックス類の溶液または分散液から選ばれる少なくとも1種であり、塗工液に0.005〜0.5重量%、好ましくは0.01〜0.2重量%添加することを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
中芯原紙に雑誌古紙等低グレード古紙を30重量%以上多配合した場合に強度が著しく低下し、強度対策が必要となる。具体的には内添紙力増強剤の添加やバインダー成分による表面処理が有効であるが、一方では紙が剛直になり伸度が損なわれることになり、貼合時の段割れを引き起こす原因になる。
【0014】
段ボールシートにおける中芯原紙の段割れ現象に関しては、引っ張り試験による破断部分の地合との対比を観察すると、表面粗さおよび摩擦係数が大きな紙質において、紙の坪量が小さいところ(地合ムラ)から裂けることが観察された。結論的には段割れは、摩擦係数が大きな紙の坪量が部分的に小さい個所で発生すると考えられ、また摩擦係数が増加するのは抄造温度が高い夏場に古紙パルプ中の成分が白水に溶出(または分散)し、中芯原紙表面の摩擦係数を下げる成分(脂肪酸など)が減少することが原因と考えられる。
【0015】
本発明は、中芯原紙に水溶性高分子およびまたは水分散性高分子をオンマシン塗布することにより、低グレード古紙を多配合しても強度を維持すると同時に、塗工液に滑剤を添加することにより中芯原紙の表面に滑剤を均一に塗布することにより表面滑り性を確保し、コルゲーターでの段割れ防止を達成するものである。
【0016】
オンマシンコートは通常洋紙等で行われているように、前段乾燥後に酸化澱粉、変性澱粉、PVA、高分子エマルジョン等の溶液或いは分散液を単独または混合液として、2本ロールサイズプレス、ゲートロールコーター、ロッドメタリングコーター、バーコーター、各種ブレードコーター等の装置を使用して固型分塗布量で両面合計0.5〜10g/m2、好ましくは2〜5g/m2塗布し、その後後段乾燥する。
【0017】
この塗工液の調製時に、滑剤を有効成分で溶液に対し0.005〜0.5重量%、好ましくは0.01〜0.2重量%添加することにより、滑剤も表面に均一に塗布され、塗布量を正確にコントロールでき、しかも低コストに加工することができる。上記下限を下回ると水溶性高分子およびまたは水分散性高分子もしくは滑剤の効果が発現せず、上限を超えても効果は飽和し、経済的に不利となる。
【0018】
滑剤としては、ポリエチレンワックス(淡褐色液体、カチオン)、ステアリン酸亜鉛(白色液体、アニオン)、ポリエチレンワックス乳化物(黄褐色半透明、カチオン)、酸化ポリエチレン系ワックス(黄褐色液体、ノニオン)等から選ばれたワックス類で、ワックス類の名称の後に括弧内に示した性状の溶液または分散液が用いられる。
【0019】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、文中の組成、配合量、添加量、濃度などを示す数値は、固型分または有効成分の重量基準の数値である。また、実験の条件や測定条件などは以下の手順で行っている。
【0020】
雑誌古紙、段古紙の処理条件
雑誌古紙:雑誌古紙からなる濃度3〜4%のパルプスラリーをスクリーンにて精選後、ダブルディスクレファイナーでカナダ標準濾水度(JIS−P−8121に準ずる、以下同じ)が320±20mlとなるよう叩解する。
段古紙:段ボール古紙からなる濃度3〜4%のパルプスラリーをスクリーンにて精選後、ダブルディスクレファイナーでカナダ標準濾水度が400±20mlとなるよう叩解する。
これら2つの原料をマシン前ミキサーにて、後述の配合比で配合する。
【0021】
中芯原紙の抄造条件
抄紙機の形式:長網、ハイドリック型ヘッドボックス(住友重機シムフローT)。
ワイヤー幅:3680mm。
抄速:500m/min。
オンマシン塗工機:2本ロールサイズプレス。
枠先水分:8.0±0.5%となるように乾燥条件を設定。
【0022】
サイズプレス塗工液の製造手順、濃度など澱粉(王子エースA、王子コーンスターチ社製)を溶解タンクにて25%スラリーに調整し、クッカーにて蒸気により95℃まで昇温した後90℃以上で30分保持し澱粉を糊化させる。この時点での最終澱粉濃度は20%である。これをストレージタンクへ移し温度65〜75℃に保持しながら、ラインミキサーにて濃度5〜7%になるよう温水と混合しサイズプレス塗工液を調整する。また、中芯原紙の表面滑り性を確保するための滑剤(主成分ポリエチレン、メイカテックスHP−70、明成化学工業社製)は、ラインミキサーで澱粉量、温水量により所定量添加される。
【0023】
評価項目の測定方法は以下に準ずる。
試験用紙の前処理(調湿条件):JIS−P−8111
坪量:JIS−P−8124
厚さ:JIS−P−8118
密度:JIS−P−8118
比破裂:JIS−P−8131
裂断長:JIS−P−8113
比圧縮:JIS−P−8126
滑り角度:JIS−P−8147
動摩擦係数:JIS−P−8147
フラットクラッシュ:JIS−Z−0401
エンドクラッシュ:JIS−Z−0401
【0024】
貼合シートの作り方
【0025】
参考例1〜5
表1に示す原料パルプ配合で雑誌古紙の増量による中芯原紙の紙質変化を評価した。中芯原紙120g/m2において、雑誌古紙を増配していくと、強度は低下していき、特に30%以上配合すると、原紙の裂断長が著しく低下した。また、貼合後の段ボールシートもフラットクラッシュがブランクよりも低下した。
【0026】
【表1】
【0027】
参考例6、実施例1〜2、比較例1〜2
表2に示す原料パルプ配合、サイズプレス塗工条件で中芯原紙を作成し、紙質評価と平行して貼合時の段割れについても目視評価した。雑誌古紙を30、50%配合した中芯原紙120g/m2において、サイズプレス液にポリエチレンを0.05重量%添加し、王子エースAを2.5g/m2塗布した結果、原紙の強度、特に裂断長はブランクよりも向上し、摩擦係数もブランクと同レベルが得られた。この中芯原紙を用いて貼合した結果、雑誌古紙を50%配合しても段割れは発生せず、貼合後の段ボールシートのフラットクラッシュは、通常品質的に問題がないとみなしている雑誌古紙10%配合(参考例6)よりも大幅に向上した。
【0028】
【表2】
【0029】
【発明の効果】
本発明は、中芯原紙に水溶性高分子およびまたは水分散性高分子をオンマシン塗工を行うことにより、低グレード古紙の30重量%以上の高配合を可能とし、さらに塗工液中に滑剤を添加することにより、滑剤の表面処理効果のため、中芯原紙の表面滑り性を確保して、コルゲーターでの段割れを防止し、結果として強度の優れた段ボールシートを得られるようにするものである。特に、水溶性高分子およびまたは水分散性高分子を固型分塗布量で両面合計0.5〜10g/m2塗布する際に、その溶液中に滑剤を0.005〜0.5重量%添加することにより、表面滑り性を確保しながら、低グレード古紙の増配ができる効果を有する。
Claims (3)
- 雑誌古紙を30重量%以上配合した中芯原紙に、ポリエチレンワックス、ステアリン酸亜鉛、ポリエチレンワックス乳化物、及び酸化ポリエチレン系ワックスから選ばれたワックス類の溶液又は分散液である滑剤を0.005〜0.5重量%含み、水溶性高分子及び/又は水分散性高分子を主成分とする塗工液を、前記水溶性高分子及び/又は水分散性高分子が固型分塗布量で0.5〜10 g/m 2 となるようにオンマシン塗布したことを特徴とする段ボール用中芯原紙の製造方法。
- 水溶性高分子及び/又は水分散性高分子の固型分塗布量が2〜5 g/m 2 であることを特徴とする請求項1記載の段ボール用中芯原紙の製造方法。
- 塗工液が滑剤を0.01〜0.2重量%含むことを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の段ボール用中芯原紙の製造方法。
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