保護収納ケースとして使用されている段ボールは、その中芯の波形状の段高及び30cm当たりの段山数によって、A段、B段、C段等に分類される。また、いわゆる通常の段ボール箱の材料として用いられるA段、B段、C段の中芯の段高は、JISにより規格が定められており、各々約5mm、3mm、3.6mmである。これらはテレビ等の電化製品や野菜等の生鮮食料品といった比較的重量のある物の輸送箱として広く使用されている。
これらに対し、より薄型の段ボールとして、JIS等では特に規格は決められていないが、段高が1.1〜1.4mmのE段や、それよりさらに低い段高が1.0mm以下のF段、G段、ミニ段、マイクロフルート段ボール等と呼ばれるものが存在する。これら薄型の段ボール箱は個装や内装用箱、美粧用ギフト箱など、比較的軽量で通常はカートンとするものの代用として使用されている。
また、通常の中芯原紙は、JISで坪量別にその要求される強度によりA級、B級、C級に分類される。例えば坪量120g/m2のものであれば、横方向の圧縮強さが、A級は144N・m2/g以上、B級は120N・m2/g以上、C級は96N・m2/g以上で、縦方向の列断長が、A級は4.0km(引張強度で4.7kN/m)以上、B級は3.5km(引張強度で4.1kN/m)以上、C級は3.0km(引張強度で3.5kN/m)以上と定められている。
現在、A段〜C段の段ボールに使用されている中芯原紙の坪量としては、120〜200g/m2が主体である。
近年の環境保護と物流・資材負担費用低減策として、中芯原紙への低グレードの古紙の使用、古紙の多用化、さらに中芯原紙の軽量化はさらに進展すると考えられる。
このように中芯原紙に低グレード古紙を使用したり、中芯原紙を軽量化した場合には、中芯原紙の引張強度が低下するとともに、坪量の低下に伴って紙厚が低下し、コルゲータで段形成を行う際に、段割れ・段飛び・段切れが発生し、操業性が低下してしまうとともに、中芯原紙にライナー等を貼着して段ボールケースを形成した場合において、ケースの圧縮強度が低下してしまう。
中芯原紙は、歯車状に加工された2本のロールの間を通過することにより一定の周期と段高を持つ波状に加工され、中芯原紙に段が形成される。これが段ボールシートのフルートとなる。このように中芯原紙が2本の歯車状のロールにより挟まれると、中芯原紙が引張られることになる。このとき引張強度が不足していると、紙が張力に耐えられず加工紙の全巾で断紙が発生する。このため、中芯原紙に引張強度が要求されている。
また低グレード古紙を多用すると、短繊維量が増加してしまい、加工工程や、裁断時において発塵が問題となる。なお、紙粉の発生(発塵)は、繰り返し再利用され劣化し、低グレード化した古紙パルプを用いることにより発生量が増加すること、及び、主として段ボール加工工程における裁断時や、製函時、さらに運送時に、段ボールケースの裁断面の特に中芯原紙から発生していることを本発明者等は知見している。
特に食品包装向けの包装箱として使用される段ボールケースにおいて、紙粉が発生すると、発生した紙粉が食品に付着し商品価値が低下するとともに、商品の見栄えが低下してしまうため、早急な改善が求められている。
さらに、中芯原紙には滑り性が要求されることが経験的に知られている。すなわち、段形成時に紙は段ロールの凸部分と接触するが、この際紙には張力が加わっているため、紙が滑らないと、凸部分を基点に部分的に著しい張力が加わり、紙が裂けてしまう。この現象を段割れという。この段割れが中芯の全巾に発生する場合は前述の断紙に至るが、部分的に発生する場合は断紙には至らない。すなわち、滑り性が不足している原紙においては、仮に中芯の引張り強度が十分であっても、段割れが発生する場合がある。
また、段割れが発生した中芯原紙をフルートとして用い、外装紙(外装ライナー)と貼合することは可能である。しかしながら、平面圧縮強度(押し潰しに対する抵抗)に劣る段ボールシートしか得られない。すなわち、段ボールシートの平面圧縮強度はフルートのアーチ形状により維持されるのであって、段割れが発生したフルートは、アーチの一部分が切れているため十分な強度を持たない。このため不良品となる。
そこで、段割れを防止する方法として、例えば特許文献1に示されるように、ワックス類を含む水溶性高分子を主成分とする塗工液をオンマシン塗工設備により塗工する方法が提案されている。
しかしながら、ワックス類の塗工は抄紙機を汚し、この汚れが紙の欠陥となって現われ、さらにこの欠陥が断紙という新たな問題を引き起こしていた。また、本発明者らはこの方法を試してみたが、ワックス類の塗工により、紙と紙同士の摩擦性が低下するため、製品の巻取りの巻きズレが発生するという新たな問題が発生していた。
すなわち、上記処方は、原紙の表面に潤滑剤としての性質を有するワックスを付与することで、段ロールと紙との間の摩擦性を低下させるという形態であるが、ワックスが付与されることにより、紙と紙同士であっても摩擦性が低下する。このため製品の巻きズレが発生する。
抄紙機では、通常製品を巻取りの形で仕上げ、保管し、ユーザーへ提供するが、巻きズレが発生すると製品の外観が悪くなるだけでなく、製品荷役時での落下トラブルの要因となる。巻きズレ部分を除去して使用する場合は、製品歩留りを低下させるとともに、除去する作業自体が生産性を低下させる。
なお、その他公知の非ワックス系滑り剤を付与する処方であっても、紙と段ロールとの間に潤滑剤を用いるという形態であることに変わりはないため、同様に巻きズレの問題を発生させる。
また、この方法で低グレードの古紙を使用し、低米坪の中芯を抄造した場合には段ボールケースに用いることができる中芯原紙を得ることができなかった。すなわち、段割れは発生しなかったものの、中芯原紙に必要とされる圧縮強度を得ることができず、十分なケース強度を有する段ボールシートを得ることができなかった。
圧縮強度の低下を防ぐためには、カレンダー処理を施さなければ良い。実際に中芯を抄造する場合においてはカレンダー処理を施さないのが通例である。しかしながら、カレンダー処理を施さないと、中芯原紙の坪量のバラツキにより、地合が悪く(厚薄差が大きく)なり、厚薄ムラが生じてしまい、この厚薄ムラにより結局段割れが発生してしまう。
厚薄ムラは、貼合速度250m/min未満の中・低速コルゲータでは特に問題とならない場合が多いが、最新の250m/min以上の貼合速度で運転される高速コルゲータでは、紙が幅方向にバタツキ、シワが入り、甚だしい場合には紙切れや段割れが発生してしまう。
また、圧縮強度の向上を図るために、従来公知の方法であるポリアクリルアミドなどの紙力増強剤を添加して抄紙すると、紙の柔軟性が損なわれてしまうため、軽量中芯では段割れが生じてしまう。
また、段ボール外装用ライナーの強度を上げることによって、中芯原紙の圧縮強度を補うこともできる。しかしながら、この場合は、段ボール外装用ライナーの製造コストが高くなってしまうことに加え、外装用ライナーが厚物化してしまうため、コルゲータでの貼合スピードが低下し生産性が低下してしまう。さらに、段ボールケースの軽量化を図ることもできない。
また、特許文献2には、水溶性高分子の1種または2種以上を中芯原紙に塗布する技術が開示されている。中芯原紙の表裏面に水溶性高分子を塗布する技術思想は類似するものの、この特許文献2に記載された技術は、中芯原紙の強化に留まり、近年の原料の低グレード化や、例えば低坪量である軽量中芯原紙における、コルゲータでの貼合適性、段ロールでの段成形性、段形成時の段割れ、また加工時等における紙粉の発生を改善するものではない。すなわち、特許文献2は、単に中芯原紙の強度アップに偏った技術であり、原料の低グレード化、例えば中芯原紙の軽量化に伴い発現する引張強度不足、コルゲータでの貼合適性、段ロールでの段成形性、特に段形成時の段割れ、加工時等における紙粉の発生の抑制方策ではないので、問題の解決には至らなかった。
また、近年、生産性を向上させるため、抄紙機の抄速は高速化しつつある。抄速の高速化に伴い、ワイヤー上でのパルプ繊維の分散が不十分となり、紙の地合が悪くなり、
厚薄差が大きくなる傾向がある。優れた印刷適性が要求される印刷用紙などについては、この
厚薄差を是正するため、これまでに幅方向に原料の濃度調整が可能な機構を備えたヘッドボックスが導入されてきた。しかしながら、原料価格が安く、坪量を高くすることによって容易に強度が得られる中芯原紙の分野においては、これまで導入されたことがなかった。
特許第3539281号
特開昭59−106951号公報
以下、本発明に係る中芯原紙について、詳細に説明する。
本発明に係る中芯原紙は、古紙パルプを主体とする原料パルプを用い、原紙の少なくとも片面に水溶性高分子及び無機微粒子を含有させて抄紙し、坪量が80〜185g/m2、特に昨今の市場における中芯原紙の軽量化への要望に応答するために80〜110g/m2、密度が0.50〜0.70g/cm3となるように製造されて、主として段ボール用の中芯原紙として用いられる。
本発明の中芯原紙は、このように従来の中芯原紙に比べて、好適には80〜110g/m2の低坪量でそれ以上坪量の品と遜色のない紙質を有し、さらに低密度であるので、省資源化及びコストダウンを図ることができる。また、中芯原紙の軽量化を図ることができるので、運送費を低減することができる。
なお、密度が0.50g/cm3未満では、水溶性高分子の中芯原紙中への浸透が過度に進み、ステキヒトサイズ度が2秒以下になる場合が生じ、中芯原紙に貼合されるライナーとの接着性が悪化し、貼合不良が発生しやすい。そこで、このような貼合不良を防止するために、貼合するための糊の量を増加させると、生産性が低下するという問題が生じやすい。
一方、密度が0.70g/cm3を超えると、中芯原紙中への水溶性高分子の適度な浸透が損なわれ、水溶性高分子の所定量の塗布が難しくなるため、圧縮強度やコルゲータにおける加工適性の低下、紙粉の発生が問題となりやすい。
本発明の中芯原紙は、比較的安価な原料・材料を組み合わせたとしても、通常の段ボールケース用の中芯として使用できる従来の中芯原紙と遜色のない強度と段繰り性を有し、紙粉の発生を抑制する坪量80〜185g/m2、特に80〜110g/m2の中芯原紙である。
本発明の中芯原紙の原料となるパルプスラリーは、パルプの全乾燥重量を基準として、古紙パルプを少なくとも50重量%以上含むものであれば良い。すなわち、実質的に古紙パルプのみからなるパルプスラリーであってもよく、あるいは古紙パルプ以外に他のパルプを配合したものであっても良い。
古紙パルプとしては、段ボール古紙、雑誌古紙、製本、印刷工場、裁断所等において発生する裁落、損紙、幅落としした古紙である上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙を解離した古紙パルプ、上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙、更紙等に平版、凸版、凹版印刷等、電子写真方式、感熱方式、熱転写方式、感圧記録方式、インクジェット記録方式、カーボン紙などにより印字された古紙、及び水性、油性インクや、鉛筆などで筆記した古紙、新聞古紙を離解後脱墨したパルプ(以下、DIPと略記する)、製紙スラッジ、製紙工場排水スカム等を用いることができる。
本発明の中芯原紙の原料パルプには、上記古紙パルプ以外に、バージンのケミカルパルプ(CP:広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹晒亜硫酸パルプ、針葉樹晒亜硫酸パルプ、広葉樹未晒亜硫酸パルプ、針葉樹未晒亜硫酸パルプ等の木材及びその他の繊維原料を化学的に処理して作製されたパルプ)や、木材またはチップを機械的にパルプ化したグランドパルプ、木材またはチップに薬液を滲み込ませた後、機械的にパルプ化したケミグランドパルプ、ケミメカニカルパルプ及びチップをやや柔らかくなるまで蒸解した後、リファイナーでパルプ化したセミケミカルパルプ等のバージンパルプを含有させても良い。しかしながら、省資源及び原料コストの観点から現実的ではない。
本発明は、特に坪量が80〜185g/m2、中でも80〜110g/m2の軽量の中芯原紙において、古紙パルプを50質量%以上含有させた場合に生じる、引張強度、圧縮強度の低下を防止し、段繰り時の加工適性が良好となるとともに、紙紛の発生を顕著に抑制することができるものである。
また、本発明の中芯原紙に好適に用いられる原料パルプは、JIS P 8220に準拠して中芯原紙を離解した離解パルプにおける、JAPAN TAPPI No.52に準拠して測定した重量平均繊維長(以下、単に「重量平均繊維長」と言う。)が0.80〜1.20mm、より好ましくは0.90〜1.10mmである。これにより、古紙パルプの配合量に関わらず、圧縮強度等の強度を一定に保つことができる。また、短繊維量が多くなることを防止することができるので、紙粉の発生を抑制することができる。さらにまた、後続のヘッドボックス及びプレスパートにおける紙厚低下がより少なくなり、地合の良い、すなわち厚薄ムラのより少ない紙層形成を行うことが可能となる。
なお、重量平均繊維長が0.80mm未満であると、圧縮強度の向上効果が小さくなるとともに、短繊維量が多くなるため、紙粉が発生しやすくなる。一方、重量平均繊維長が1.20mmを超えると、製造工程での分級処理で歩留りが低下し、省資源やコスト面で問題が発生したり、さらには地合が悪くなり、厚薄ムラが発生しやすくなるため、段繰り性が悪化する。
本発明の中芯原紙は、少なくとも片面に水溶性高分子が付与される。これにより、原料パルプに低グレードの古紙パルプを多用し、坪量を80〜185g/m2、特に80〜110g/m2、密度を0.50〜0.70g/cm3と、従来の中芯原紙よりも低くしても、従来の中芯原紙と同程度の強度、及び貼合適性を維持することができる。すなわち、低グレードの古紙を使用した場合に発生する紙厚の低下、引張強度の低下、圧縮強度の低下などの問題を解決することができる。また、低グレードの古紙を多量に使用することにより発生する発塵の問題を解決することができる。すなわち、紙粉の発生を抑制することができる。
印刷用紙では、その表面に水溶性高分子を塗布するものがあるが、これは印刷時のインクの滲みを防止する目的で塗布されるものである。これに対し、本発明の中芯原紙の少なくとも片面に水溶性高分子を付与するのは、中芯原紙に要求される強度、特に圧縮強度を高めるとともに、紙粉の発生を抑制するためであり、印刷用紙とは、水溶性高分子を塗布する目的が異なる。
また、本発明には、後述するように、生産性に優れるフィルムトランスファー方式の塗工設備を用いるが、ゲートロールで水溶性高分子を塗布できる塗布量は、通常0.5〜2g/m2程度である。しかしながら、本発明の中芯原紙を、坪量が80〜185g/m2、特に80〜110g/m2であっても強度に優れる中芯とするためには、水溶性高分子の塗布量を多くすることが望ましい。従って、好ましくは、以下に詳述する特定の水溶性高分子、特に水溶性高分子の主成分として、特定の澱粉を主成分とする水性組成物を用いることにより、生産性に優れるフィルムトランスファー方式の塗工設備を用いながらも、強度に優れ、なおかつ発塵の少ない、坪量が80〜185g/m2、特に80〜110g/m2の中芯原紙を得ることができる。
本発明の中芯原紙の少なくとも片面に塗布され、乾燥される水溶性高分子は、澱粉を主成分とする水性組成物である。澱粉としては、分子量が300万未満、好ましくは230〜290万で、かつ塗工液(澱粉糊液)の濃度が35%、温度40℃での粘度が85cp以下、好ましくは10〜80cp、より好ましくは30〜75cpの化工澱粉が用いられる。
澱粉が紙製造業者に提供される際の形態は固体材料であり、一般に、澱粉の分子量が高いほど、固体の澱粉が水系に溶解する速度が遅くなる。加えて、特に分子量の高い澱粉は、せん断に非常に高い敏感性を示すため、取り扱い及び品質管理が難しくなるという問題も生じてくる。
すなわち、本発明の中芯原紙に澱粉を用いる際には、澱粉を予め水溶液に溶解させておく必要があるが、分子量が300万以上の澱粉であると、完全な溶解を確保するためには、強力な混合を行う必要がある。
しかしながら、このような強力な混合操作を行うと、高分子量の澱粉は、せん断に対して高い敏感性を示すため、高分子量特性を得ることができないとともに、最終的に得られる澱粉分散液において、澱粉を均一に分散させることができない。
このため、本発明に用いられる澱粉には、分子量が300万未満のものを用いることが好ましい。しかしながら、澱粉の分子量が300万未満であっても、分子量が低すぎると、水溶性高分子は澱粉を主成分とするため、水溶性高分子を中芯原紙の少なくとも片面に塗布する効果を得難い。従って、分子量が200万以上である澱粉を用いることが、より好ましい。
また、本発明に用いられる澱粉は、塗工液(澱粉糊液)の濃度が35%、温度40℃での粘度が85cp以下、好ましくは10〜80cp、より好ましくは30〜75cpの化工澱粉である。
すなわち、700m/分以上の高速抄紙において、澱粉糊液の濃度が35%で、温度40℃での粘度が85cpを超えると、粘性が高くなるため、澱粉塗工時に紙が取られ断紙が生じたり、走行トラブルが発生するため、操業性を低下させるという問題がある。一方、澱粉糊液の粘度が低いと、特にゲートロールにおいて、澱粉糊液のミストが発生してしまい、周辺設備の汚損が生じる場合がある。
このような澱粉としては、例えば酸化澱粉、カチオン化澱粉、カルボキシメチル化澱粉、α化澱粉(例えば未糊化澱粉を、ドラムドライヤー法、エスクトルーダー法、煮沸乾燥法等でα化することにより得られるものを用いることができる)、リン酸エステル化澱粉、尿素リン酸変性澱粉、未変性澱粉等、公知の種々のものを単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
しかしながら、カルボキシメチルデンプン(アニオン性)、ヒドロキシアルキルデンプン(ノニオン性)、リン酸デンプン(アニオン性)等の変性澱粉は、紙中に浸透しながら、引張強度や表面強度を向上させる効果を有するものの、中性またはアニオン性を示すため、アニオン性を呈するパルプ繊維表面への定着性に劣り、被膜性が低いという問題がある。
従って、公知の種々の澱粉の中でも特に、アニオン性を呈するパルプ繊維表面への定着性が高いカチオン性の澱粉を用いることが好ましい。また、カチオン性の澱粉を用いると、パルプ繊維表面への定着性が向上し、被膜性に優れるとともに、後述する無機微粒子の定着性も向上させることができる。
また、澱粉は、エステル化澱粉を用いることがより好ましい。エステル化澱粉であると、無機微粒子の定着性をより向上させることができるとともに、コルゲータで中芯原紙の段繰りを行う際、段ロールとの摩擦係数を下げることができるので、中芯原紙の軽量化に伴い紙の引張強度や、伸び率の絶対値が低くなっても、段割れが発生しない。
エステル化澱粉において、そのエステル化の度合は特に制約されないが、導入されるエステル結合の平均数で、グルコース単位当り1〜3、好ましくは1〜2のものが好適である。このようなエステル化澱粉の中でも、ヒドロキシエステル化澱粉が、原料澱粉に酸化処理を施し、カルボキシメチル基をヒドロキシエチル基へ還元反応させることにより容易にかつ安価に得ることができるので好ましく、置換度(グルコース単位中の水酸基がカルボキシメチル基で置換される平均数)が0.3〜2であるものが好ましく、0.6〜2であるものが特に好ましく、0.7〜1.5であるものがさらに好ましい。
より好適には、エステル変性された澱粉の末端基に疎水性基を導入した、疎水性基含有エステル変性タピオカ澱粉が好適に用いられる。
さらに好適には、チキソトロピカルな挙動を示すエステル変性澱粉が用いられる。すなわち、このようなチキソトロピック性を有するエステル化澱粉は、末端基にカルボン酸(−COOH)構造を有し、中性領域において、−COO−のようにイオン化することで水素結合による繋がりを確保できず、反発性を示す。従って、塗工において流動性を示し、原紙中に浸透しにくいため、原紙の表面に高い被膜性を呈するので好ましい。
このようなエステル化澱粉の原料についても特に限定されるものではないので、例えば、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、甘薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、モチトウモロコシ粉、高アミロース含量、トウモロコシ澱粉などの未処理澱粉、小麦粉、タピオカ澱粉、コーンフラワー、米粉等の澱粉含有物、あるいはこのような未処理澱粉及び澱粉含有物の酸化、酸処理化等を行った処理澱粉等、種々の澱粉含有物を用いることができる。
これらの中でも特に、タピオカ澱粉を主原料としてエステル化変性させた1−オクテニルコハク酸エステル化澱粉が、粘性、被覆性、被膜弾力性、伸展性の面でほかの澱粉よりも秀でているので好ましい。さらに、ポリビニルアルコールと組み合わせて用いることで、コルゲータ成型時における段割れの発生をさらに防止することができる。
澱粉が、比色定量により分析した値で、中芯原紙中に2.5〜10g/m2、好適には3.0〜10g/m2、さらに好適には4.0〜10g/m2含有されるように、澱粉を主成分とする水溶性高分子の塗工液が中芯原紙の少なくとも片面に塗布設備にて塗布される。これにより、本発明の中芯原紙を、古紙パルプを主体とする原料パルプを用い、原紙の少なくとも片面に水溶性高分子及び無機微粒子を含有させて抄紙し、坪量が80〜185g/m2、特に80〜110g/m2、密度が0.50〜0.70g/cm3となるように製造しても、圧縮強度を維持し、紙紛の発生を抑制することができる。
すなわち、上述したように、ゲートロールにより塗布される水溶性高分子の塗布量は、中芯原紙中の澱粉含有量が0.5〜2g/m2程度であった。しかしながら、本発明では、中芯原紙の少なくとも片面に塗布される水溶性高分子の主成分として、上述したように澱粉糊液の濃度が35%、温度40℃での粘度が85cp以下である澱粉を用いることにより、中芯原紙中の澱粉含有量が2.5g/m2以上となるように塗布することが可能となる。これにより、生産性に優れるフィルムトランスファー方式の塗工設備を用いながら、軽量であっても強度に優れ、かつ発塵の少ない中芯原紙を得ることができる。
なお、中芯原紙中の澱粉含有量が2.5g/m2未満では、圧縮強度の維持や紙粉の発生を抑制することが困難となる。一方、中芯原紙中の塗布含有量が10g/m2を超えると、既存のフィルムトランスファー方式に代表される塗布設備での塗布が困難となり、操業性を大きく低下させるとともに、抄紙機の毀損、コスト負担が大きくなる。
また、通常ゲートロールコータで水溶性高分子を塗布できる塗布量は0.5〜2g/m2程度である。本発明においては、水溶性高分子として、濃度が35%で温度40℃における粘度が85cp以下を示す澱粉を主成分に用いることにより、2.5g/m2以上の塗布を可能にし、生産性に優れるフィルムトランスファー方式を用いながらも、強度に優れ、なおかつ発塵の少ない軽量な中芯原紙を得ることができる。一方、中芯原紙中の澱粉含有量が10g/m2を超えると、既存のフィルムトランスファー方式に代表される塗布設備での塗布が困難となり、操業性を大きく低下させるとともに、抄紙機の毀損、コスト負担が大きくなる。
水溶性高分子には、本発明の効果に影響のない範囲内で、澱粉のほか、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAM)等を用いることができる。さらに、例えばサイズ剤、填料分散剤、pH調整剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、蛍光消去剤等の公知の種々の添加剤を、単独で、あるいは2種以上を混合して添加しても良い。
また、本発明の中芯原紙は、原紙の少なくとも片面に無機微粒子を水溶性高分子とともに又は単独で、塗布・塗工・噴霧等の手段で付与する。なお、この無機微粒子は、アスペクト比が5以上、体積平均粒子径が3〜20μmの平板状顔料である。これにより、中芯原紙の滑性を向上させることができ、製品の巻きズレを防止することができる。
このように無機微粒子を、中芯原紙の少なくとも片面に塗布・塗工・噴霧等の手段で付与することにより、中芯原紙の表面に微視的な凹凸を意図的に付与することができる。これにより、滑らかな段ロール金属表面と接した場合には摩擦を低下させて滑り性をさらに向上させることができ、また、紙同士が接した場合においては微視的な凹凸または凹凸同士により、滑りを抑制することができる。
中芯原紙は、コルゲータで、歯車状に加工された2本の段ロール間を通過させて、波状に段が形成される。この段ロールは、基材が合金鋼で形成されており、またロール表面に耐磨耗性に優れるクロムやタングステンを溶射して構成されている。さらに、ロール表面は、低摩擦性及び高耐久性を両立させるために、A段ではRa0.3以下、B段ではRa0.5以下と、非常に滑らかになるまで加工されている。このため、段ロールの表面は、微視的には非常に滑らかな金属である。
このため、中芯原紙の表面を滑らかに加工する工程であるカレンダー処理が施されると、中芯原紙と段ロール表面との間に微視的な接触面積が多くなるため、中芯原紙及びロール間の摩擦が増加し、段割れが発生しやすくなると予見される。すなわち、カレンダー処理を行っていない中芯原紙の表面には微細な凹凸が存在し、これにより滑らかなロール表面(金属表面)との微視的な接触面積が減ることで、段ロールとの摩擦が減少し、この結果、段割れが発生し難くなると考えられる。なお、本発明者らは、これを確認するために、同一原料、同一条件で抄造した中芯原紙で、カレンダー処理を施したものと、施さないものを作製し、この両方を実際にコルゲータで段形成し、外装ライナーを貼合したサンプルを作製した。この結果、明らかにカレンダー未処理のサンプルの方が段割れの発生が少ないことを確認している。
従って、本発明のように中芯原紙の表面に無機微粒子を付与して微視的な凹凸を意図的に作り出すことで、滑らかな段ロール表面(金属表面)と接した場合には摩擦を低下させて滑り性をさらに向上させて段割れの発生を防止することができる。また、紙同士が接した場合においては、中芯原紙に付与された微視的な凹凸または凹凸同士により滑りを抑制することができる。これにより、中芯原紙が段ボールに成型された場合の加工適性を向上させることができる。
本発明に用いられる無機微粒子は、アスペクト比が5以上、好ましくは10以上の平板状顔料である。アスペクト比が大きいものほど、水溶性高分子の塗布面での重なりが大きくなるため、高い滑性能を発揮する。アスペクト比が5以下の無機微粒子は、水溶性高分子の塗布面に対して平行に配向できなくなるため滑性が劣ってしまう。
本発明でいうアスペクト比とは、平板状顔料の厚さを電子顕微鏡観察により測定し、平板状顔料の体積平均粒子径をその厚さで除したものである。なお、無機微粒子である平板状顔料の厚みは、顔料の種類、粉砕方法、体積平均粒子径によって異なる。しかしながら、顔料の種類と粉砕方法が同じであれば、顔料の体積平均粒子径が大きくなると、厚さも大きくなり、結果としてアスペクト比の大きさはほとんど変化しない。
また、本発明に用いられる無機微粒子は、体積平均粒子径が3〜20μm、好ましくは5〜10μmである。このような無機微粒子を、中芯原紙の少なくとも片面に塗布・塗工・噴霧等の手段で付与させると、特に滑性を向上させることができ、製品の巻きズレの発生の防止に効果的である。
体積平均粒子径が3μm未満のものは、無機微粒子の体積平均粒子径が小さくなりすぎるため、水溶性高分子の塗布面に対して、平板状顔料を平行に配向するものが少なくなり、滑性の効果を得難い。また、滑性効果を向上させようとすると、水溶性高分子の塗布量を増加させなければならず、製造コストが高くなるという問題がある。
一方、体積平均粒子径が20μmを超えると、平板状顔料の一部が、水溶性高分子の塗布面から突き出たり、平板状顔料の厚みが数百μm程度になってしまうため、水溶性高分子の塗布面での重なりが少なくなってしまい、滑りが阻害され、滑性が低下してしまう。また、中芯原紙をコルゲータで波形に成型するときに、水溶性高分子の塗布面に空隙(亀裂)が形成されてしまう場合があるという問題もある。
なお、無機微粒子の体積平均粒子径は、測定のしやすさ、及び再現性の高さなどの観点からマイクロトラックレーザ回折法により測定した。
平板状顔料としては、フィロケイ酸塩鉱物、天然燐片状黒鉛などが挙げられる。フィロケイ酸塩鉱物に属するものは板状または薄片状であって明瞭なへき開性を有し、雲母族、パイロフィライト、タルク(滑石)、緑泥石、セプテ緑石、蛇紋石、スチルプノメレーン、粘土鉱物がある。このようなカオリンの中でも意識的に結晶層を剥離し平板になるように切り出したデラミカオリンなどで、体積平均粒子径が3μm以上のものは、本発明に好適に用いることができる。なお、カオリンなどの粘土鉱物や水酸化アルミニウムも一般的には平板結晶と言われている。確かに結晶一個をとれば平板の部分はあるが、全体としては粒状であるので、本発明の使用には好適ではない。
上記平板状顔料の中でも特に、雲母族鉱石またはタルクを用いることが、産出されるときの粒子が大きく産出量が多いとともに、アスペクト比、体積平均粒子径、及びコストなどの観点から好ましい。
雲母族鉱石としては、白雲母(マスコバイト)、絹雲母(セリサイト)、金雲母(フロコパイト)、黒雲母(バイオタイト)、フッ素金雲母(人造雲母)、紅マイカ、ソーダマイカ、バナジンマイカ、イライト、チンマイカ、パラゴナイト、ブリトル雲母などが挙げられる。
タルクはろう石ともよばれケイ酸マグネシウムの水和物であり、一般に箔片板状の粒子ではある。本発明で好適に使用できるタルクは、絹雲母と同様な粉砕分級の操作を施して、体積平均粒子径が3〜20μmのものを得る必要がある。また、タルクのアスペクト比は、白雲母や絹雲母に比べて小さく、5〜10程度である。しかしながら、タルクは粒子径、アスペクト比があまり大きくないが、コスト的に有利なため多量に使用できるという利点がある。これに対し、白雲母は原石の大きさが絹雲母、タルクと比較して非常に大きいため、粉砕分級して粒度分布を自由に選ぶことができる。また、絹雲母は原石は小さいが、へき開性が大きいため、粉砕物は、白雲母と同様に平板状を呈する。
従って、省資源及び原料コストの観点、普及の面から、タルクの使用が最も好適で現実的である。
このような無機微粒子は、水溶性高分子と併用した水性組成物においては、水溶性高分子の塗工液比で配合率が1〜25質量%、好適には1〜10質量%となるように配合される。無機微粒子の配合率が1質量%未満であると、無機微粒子の添加による滑性の効果が得難い。一方、配合率が25質量%を超えると、水溶性高分子中における無機微粒子の定着性が低下し、塗工適性が低下するとともに、水溶性高分子の塗布面からの無機微粒子(平板状顔料)の突き出しが顕著になるため好ましくない。
なお、無機微粒子は、水溶性高分子とともに水性組成物として付与することで、無機微粒子を中芯原紙の表面に定着させるためのバインダを必要とせず、効率的に中芯原紙を製造することが可能となる。また、水溶性高分子を塗布等の手段で付与すると同時に、あるいは、塗布直後の水溶性高分子の塗工液が乾燥する前に、中芯原紙の少なくとも片面に必要に応じ水等に分散させて付与することも可能である。
本発明の中芯原紙は、幅方向に原料パルプの濃度調整が可能な機構を備えたヘッドボックスにて湿紙を形成し、フィルムトランスファー方式による塗布設備で、上述した澱粉を主成分とする水溶性高分子及び無機微粒子の水溶性組成物を、湿紙の少なくとも片面に塗布し、乾燥して製造される。
すなわち、図1に、本発明の中芯原紙を形成する実施設備の一例の概要図で示すように、幅方向に原料パルプの濃度調整が可能な機構を備えたヘッドボックス1により紙料を噴出させ、ワイヤーパート2においてパルプ繊維の分散を図りながら紙層を形成し、シュープレス3を備えるプレスパート4により脱水し、その後プレドライヤーパート5により湿紙の乾燥を図る。次いでサイズプレス6を使用して、上述した水溶性高分子の塗工液を湿紙の少なくとも片面に塗布する。なお、水溶性高分子の塗工液に上述した無機微粒子を混合して同時に塗布しても良い。また、塗布後にアフタードライヤーパート7に入る前の段階で、無機微粒子を単独で噴霧しても良い。アフタードライヤーパート7において、少なくとも片面に水溶性高分子が塗布され、また少なくとも片面に無機微粒子が付与された湿紙を乾燥し、巻取機9により巻取り、坪量が80〜185g/m2、特に坪量が80〜110g/m2の中芯原紙を得る。
このような幅方向に原料パルプの濃度調整が可能な機構を備えたヘッドボックスとしては、モジュールジェットヘッドボックス(VOITH社製)、コンセプトIV−MHヘッドボックス(三菱重工業社製)、オプチフローヘッドボックス(METSO社製)、BTF−ダイリューションシステム(川之江造機社製)などが使用できる。
ヘッドボックスでの原料濃度は0.8〜1.2%である。原料濃度が低い方がパルプ繊維の分散性が良好である。なお、印刷用紙を抄紙する場合の原料濃度は、紙の品質と設備費との兼ね合いから、通常0.6〜0.7%である。しかしながら、中芯原紙の場合は、印刷用紙とは異なり、印刷適性は要求されないため、印刷用紙と比べて、原料濃度が少し高く設定されている。
なお、ヘッドボックスに、幅方向に原料パルプの濃度調整が可能な機構が備えられていない場合は、ワイヤーパートでの紙の地合による厚薄差が大きくなり、後述するプレスパートのシュープレスでは、この厚薄差を是正することができない。従って、この厚薄差に起因する段割れを防止するために、カレンダー処理により厚薄差の是正を行わざるをえず、この結果、圧縮強度が低下する。また、厚薄ムラが多く、厚薄差が大きいと、低速コルゲータでは問題が生じないが、現在主流である300m/分を超える高速コルゲータでは、紙の走行安定性が問題となり、またこの問題が甚だしい場合には、シワや断紙が発生する原因となる。
本発明の中芯原紙の抄紙工程におけるプレスパートには、シュープレスが備えられている。すなわち、プレスパートにおいても、抄紙機の高速化に伴い、より高い脱水能力が求められるようになってきている。このため、従来の2ロールニップ方式から、より脱水能力のあるシュープレスを備えることが好ましい。
また、本発明者の鋭意検討の結果、シュープレスを備えることにより、2ロールニッププレスを備えた場合に比べて、脱水能力が高いということ以外に、紙厚の低下を抑制しながら脱水できることが分かった。
このように、上述したヘッドボックスと、シュープレスとを組み合わせることにより、坪量が80〜185g/m2、特に坪量が80〜110g/m2である中芯原紙であっても、厚薄ムラを少なくし、圧縮強度を向上させることができるとともに、発塵を抑えることができる。また、中芯原紙をコルゲータで波形に成型する際における段割れの発生の防止に効果がある。
このようなシュープレスとしては、シムベルトSプレス(METSO社製)、ニプコフレックスプレス(VOITH社製)、エクステンディドニッププレス(三菱重工業社製)などが使用できる。
なお、シュープレスを用いない場合は、ヘッドボックスにより紙の厚薄差を小さくできても、プレスでの紙厚の低下が大きくなるため、圧縮強度等の強度を得ることはできない。
このように上述したヘッドボックスと、シュープレスとを組み合わせて用いることにより、800m/分以上の高速で抄紙しても、紙厚を維持し、紙厚の低下を少なくすることができるとともに、厚薄ムラを少なくすることができる。この結果、坪量が80〜185g/m2、特に80〜110g/m2の中芯原紙であっても、圧縮強度等の強度を確保することができる。
ドライヤーパートで乾燥された中芯原紙の湿紙は、上述したように湿紙が形成された後、さらにゲートロールコータまたはサイズプレスに代表されるフィルムトランスファー方式による塗布設備で、上述した水溶性高分子が中芯原紙の湿紙の少なくとも片面に塗布される。このように、フィルムトランスファー方式による塗布設備で水溶性高分子を塗布することにより、強度、特に圧縮強度をより高めることができる。
サイズプレスの方式としては、2ロールのポンド式、ゲートロールやロッドメータリングなどの転写式、あるいはこれらの組合せによるビルブレードコーターなど、種々の方式を使用することができるが、均一な水溶性高分子層を少ない塗工量で形成することができるという観点から、転写式のものがより好ましい。
また、上述の水性組成物を塗布する際、前述の無機微粒子を水溶性高分子の塗工液に混合して塗布することができる。また水溶性高分子の単独塗布直後に、前述無機微粒子を例えば水等に分散させて単独噴霧、または塗布しても、段ロールでの滑り性を確保し、かつ紙同士の摩擦を維持できる。
従来の中芯原紙は、紙厚の低下を防止するため、通常、カレンダー処理は施されないが、これでは厚薄ムラを少なくすることができない。
また、CP制御(幅方向に多数並んだバルブを開閉して、インレットのパルプ濃度を局部的に調整する制御方法)ではカレンダー処理を施すことによる紙厚の低下を招かないうえ、厚薄ムラが解消されるため、高速コルゲータには好適である。
本発明における、好適な構成は、原料パルプの重量平均繊維長を0.80〜1.20mm、より好ましくは0.90〜1.10mmに調整すること、原紙の少なくとも片面に水溶性高分子の塗工液を付与すること、さらに原紙の少なくとも片面に無機微粒子を塗布・塗工・噴霧等の手段で付与すること、幅方向に原料パルプの濃度調整が可能な機構を備えたヘッドボックスにて湿紙を形成することであり、さらに好適な構成は、シュープレスとを組み合わせることである。このように構成することにより、所望の品質を確保することが可能になる。
特に密度、引張強度、圧縮強度を維持しながら、所定の摩擦力を確保することが必要であり、本発明においては、金属/紙の動摩擦力を0.04〜0.65gfに調整することが好ましく、より好適には0.06〜0.15gf、特に好適には0.07〜0.14gfに調整することが好ましい。また、紙/紙の静摩擦力において、0.32〜0.49gf、より好適には0.39〜0.47gf、特に好適には0.41〜0.46gfに調整することで、段形成時に段割れし難く、また巻きズレによる操業トラブルが発生しにくく、かつ、加工時などに紙粉の発生を抑制できる中芯原紙を得ることができる。
上述したようにして形成された本発明の中芯原紙は、SEMI G97−0996 2001の日本語訳に準拠して測定した縦・横裁断面における30〜50μmのさばき発塵紙粉量(以下、単に「さばき発塵紙粉量」という。)が2000個/m3以下である。すなわち、従来の中芯原紙に比べて、紙粉の発生を顕著に抑制することができる。
なお、さばき発塵紙粉量とは、流れ方向に5cm×幅方向に20cmの大きさに押し切りカッターで断裁した試料を5枚重ね、グローブボックス内で端面を10回ずつさばき、SEMI G67−0996に順じて、100L吸引時の発塵量(発生した紙粉個数)をパーティクルカウンターにて計測し、1m3に換算した値である。
従来の中芯原紙は、さばき発塵量が2000個/m3を超え、時には3000個/m3以上となることがあった。このように、さばき発塵紙粉量が2000個/m3を超えると、紙紛の散見が顕著になるため、特に、中芯原紙が食品包装向けの段ボールに使用される場合において、紙粉が食品に付着してしまい、商品価値の低下を招くとともに、見栄えの悪化を招いてしまう。
また、本発明の中芯原紙は、坪量が140g/m2未満の場合、引張強度が3.0kN/m以上、圧縮強度が95N・m2/g以上であり、また坪量が140g/m2以上の場合、引張強度が5.0kN/m以上、圧縮強度が155N・m2/g以上である。すなわち、引張強度は、JIS P 3904のC級の表示米坪120g/m2で規定する3.5kN/m(裂断長3.0km)以上で、かつ圧縮強度も同欄で規定する96N・m2/g以上を目標とした。これにより、坪量が80〜185g/m2、特に80〜110g/m2であっても、従来の中芯原紙と同等の強度、すなわちA〜C級の強度を有することが分かる。
なお、縦方向の強度の指標として引張強度を用いたのは、中芯原紙をコルゲータで波形に成型する際の段繰り時における段割れの発生がないことを確かめるためである。また、横方向の強度の指標として圧縮強度を用いたのは、中芯原紙の表面にライナー等を貼着して段ボールケースを形成し、この段ボールケースを積み上げた場合にケースつぶれなどの問題が発生しないことを確かめるためである。
以上、本発明に係る中芯原紙について、その紙層が単層からなる場合について説明したが、本発明に係る中芯原紙は、抄紙工程のワイヤーパートにおいて多層抄きとし2層以上の複数層としても良い。これにより、生産性を高くしやすくなるという効果を得ることができる。
本発明に係る中芯原紙の効果を確認するため、以下のような各種の試料を作製し、これらの各試料に対する品質を評価する試験を行った。なお、本実施例は、本発明を限定するものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲において、適宜その構成を変更することができることはいうまでもない。
本発明に係る24種類の中芯原紙(これを「実施例1」ないし「実施例24」とする)を表1に示すような構成で作製し、またこれらの実施例1ないし実施例24と比較検討するための8種類の中芯原紙(これを「比較例1」ないし「比較例4」及び「比較例6」ないし「比較例9」とする)を表2に示すような構成で作製した。
なお、各実施例及び比較例の各要因の全てについて、個々のラインを新設したものではなく、テストプラントによるテスト例が主たるものであることを断っておく。
次に、表1に記載のとおり、水溶性高分子及び無機微粒子の水性組成物を作製した。なお、水溶性高分子としては、主成分として分子量が285万であるナショナルスターチ社製のエステル化澱粉(型番:Filumukoto370)を用い、無機微粒子としてはタルクを用いて水性組成物を作製した。
このように作製した原料パルプスラリーを、モジュールジェットヘッドボックス(VOITH社製)に入れて、原料パルプの濃度が1.0%になるように濃度調整を行い、単層の湿紙を形成する。その後、シュープレス方式で湿紙を脱水し、プレドライヤーで乾燥させる。なお、抄速は800m/分である。
次いで、サイズプレスにより、上述した水溶性高分子及び無機微粒子の水性組成物を、中芯原紙中の澱粉含有量が8.0g/m2となるように、湿紙の表裏面に塗布し、乾燥させて、仕上がり水分がJIS P 3904で規定する8.0±1.5%の範囲内であって、単層からなり、坪量が110g/m2である中芯原紙を得る(実施例1)。
[実施例2〜4]
原料パルプの重量平均繊維長、及び無機微粒子の種類、粒子径、アスペクト比を表1に示すように変更したことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得た中芯原紙。なお、表1中、「炭カル」とは「炭酸カルシウム」を表し、「水酸化アルミ」とは「水酸化アルミニウム」を表す。
[実施例5〜6]
原料パルプの重量平均繊維長、無機微粒子の粒子径、アスペクト比、及び水溶性高分子の種類、分子量を表1に示すように変更したことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得た中芯原紙。
[実施例7〜8]
原料パルプの重量平均繊維長、無機微粒子のアスペクト比、配合率、及び水溶性高分子の種類、分子量を表1に示すように変更したことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得た中芯原紙。
[実施例9〜10]
原料パルプの重量平均繊維長、無機微粒子のアスペクト比、及び水溶性高分子の種類、分子量、塗布量を表1に示すように変更したことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得た中芯原紙。
[実施例11〜12]
原料パルプの原料配合、重量平均繊維長、無機微粒子のアスペクト比、及び水溶性高分子の種類、分子量、塗布量を表1に示すように変更したことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得た中芯原紙。
[実施例13〜14]
原料パルプの重量平均繊維長、無機微粒子の種類、アスペクト比、及び水溶性高分子の種類、分子量、塗布量を表1に示すように変更したことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得た中芯原紙。
[実施例15]
原料パルプの重量平均繊維長、無機微粒子のアスペクト比、配合率、及び水溶性高分子の種類、分子量、塗布量を表1に示すように変更したことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得た中芯原紙。
[実施例16]
原料パルプの重量平均繊維長、無機微粒子のアスペクト比、及び水溶性高分子の塗布量を表1に示すように変更したことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得た中芯原紙。
[実施例17〜19]
原料パルプの重量平均繊維長、無機微粒子の粒子径、アスペクト比、及び水溶性高分子の塗布量を表1に示すように変更したことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得た中芯原紙。
[実施例20〜24]
原料パルプの重量平均繊維長、及び無機微粒子のアスペクト比を表1に、製品の坪量を表3に示すように変更したことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得た中芯原紙。
[比較例1]
水溶性高分子を添加せず、また、原料パルプの原料配合、重量平均繊維長、及び無機微粒子の粒子径、アスペクト比、配合率を表2に示すように、製品の坪量を表4に示すように変更したことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得た中芯原紙。
[比較例2]
無機微粒子の代わりに有機顔料を用い、また原料パルプの重量平均繊維長、及び水溶性高分子の種類、分子量、塗布量を表2に示すように変更したことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得た中芯原紙。
[比較例3]
無機微粒子及び水溶性高分子を添加せず、また原料パルプの原料配合、重量平均繊維長を表2に示すように変更したことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得た中芯原紙。
[比較例4]
無機微粒子を添加せず、また水溶性高分子のワックスを0.2g/m2塗工し、さらに原料パルプの重量平均繊維長を表2に示すように、また製品の坪量を表4に示すように変更したことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得た中芯原紙。
[比較例6]
原料パルプの重量平均繊維長、無機微粒子の粒子径、及び水溶性高分子の種類、分子量、塗布量を表2に示すように、また製品の坪量を表4に示すように変更したことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得た中芯原紙。
[比較例7]
原料パルプの原料配合、重量平均繊維長、無機微粒子の粒子径、及び水溶性高分子の種類、塗布量を表2に示すように変更したことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得た中芯原紙。
[比較例8]
無機微粒子を配合せず、原料パルプの原料配合、重量平均繊維長、及び水溶性高分子の種類、塗布量を表2に示すように変更したことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得た中芯原紙。
[比較例9]
無機微粒子を配合せず、また原料パルプの重量平均繊維長、及び水溶性高分子の種類、分子量、塗布量を表2に示すように変更したことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得た中芯原紙。
なお、表1及び表2中の「重量平均繊維長(mm)」とは、各試料から約10cm2に裁断した試験片を、約25gを1リットルの水中に24時間浸漬した後、TAPPI標準離解機で、15分間離解処理し、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.52 繊維長試験方法に基づいて測定した値である。
また、「粒子径(μm)」とは無機微粒子の体積平均粒子径であり、その測定方法は以下のとおりである。すなわち、まず、各試料に用いた無機微粒子のサンプル10mgをメタノール溶液8mlに添加し、超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた。その後、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計:日機装株式会社製)を用いて、この溶液に添加された無機微粒子の体積平均粒子径を測定した。
また、「アスペクト比」とは、A4サイズの各試料から無作為に50箇所を走査型電子顕微鏡(島津製)にて写真撮影し、視認できる無機微粒子の測定数100個の平均値である。
また、「配合率(質量%)」とは、水溶性高分子の塗工液比に対する無機微粒子の含有量である。
水溶性高分子の「種類」とは、水溶性高分子の主成分となる澱粉の種類であり、表中の「エ」とは「エステル化澱粉」を、「カル」とはカルボキシメチル化澱粉を、「α」とはα化澱粉を、「リ」とは「リン酸エステル化澱粉」を、「尿」とは「尿素リン酸エステル化澱粉」を、「酸」とは「酸化澱粉」を、「カチ」とは「カチオン化澱粉」を、「ワ」とは「ワックス」を、「PVA」とは「ポリビニルアルコール」を、「PAM」とは「ポリアクリルアミド」を示す。
なお、本実施例では、エステル化澱粉として、ナショナルスターチ社製のFilumukoto370のエステル変性化澱粉を用い、カルボキシメチル化澱粉として、置換度(グルコース単位中の水酸基がカルボキシメチル基で置換される平均数)が1.0であるものを用い、α化澱粉として、未糊化澱粉をドラムドライヤー法でα化したものを用い、リン酸エステル化澱粉として、日本コーンスターチ社製のSK−3000を用い、尿素リン酸エステル化澱粉として、AVEBE社製のリン結合量が0.6質量%であるもの(商標名ニールガムA−85)を用い、酸化澱粉として、日本コーンスターチ社製の、固形分濃度5.0%、30℃で測定したときのB型粘度が10cpsであるもの(SK−20)を用い、カチオン化澱粉として日本食品加工社製のカチオン化度が0.030〜0.050であるカチオン化澱粉を用いた。
また、「塗布量(g/m2)」とは、水溶性幸便氏の主成分となる澱粉の塗布量であり、フェノール硫酸法を用いた比色分析にて、酸化澱粉で作成した検量線を用い、定量した値である。
これらの全実施例及び比較例について、品質評価を行った結果は、表3及び表4に示すとおりであった。なお、この品質評価は、JIS P 8111に準拠して温度23±2℃、湿度50±2%の環境条件で行った。
なお、表3及び表4中の「坪量(g/m 2 )」とは、各試料全層、すなわち中芯原紙全体の坪量で、JIS P 8124に記載の「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した値である。
「密度(g/cm3)」とは、各試料の坪量及び厚さを測定して算出した値である。また、測定誤差をなくすため、各試料からサンプルを10枚採取して測定した平均値である。
「引張強度(kN/m)」とは、JIS P 8113に準じて測定した値である。
「圧縮強度(N・m2/g)」とは、JIS P 8126に準じて測定した値である。
「摩擦力」とは、JIS P 8147に基づく摩擦係数試験方法の定速伸張引張試験機により、各試料の測定面に垂直に掛かる引張りに抵抗する力を測定した値で、具体的には以下のような試験を行った。すなわち、本体及びおもりからなり、おもりとして長方形の平らな底面をもつ金属製のブロックを用いた。このような測定装置の本体水平板及びおもりに、それぞれ測定面を外側にして試験片と取り付け、一定速度でおもりを引張り、おもりが滑り始める瞬間の最大の張力から静摩擦力(gf)を、滑り始めた後の平均張力から動摩擦力を得た値である。
本実施例では特別に、紙と金属との動摩擦力を測定するために、本体水平板にRaが0.4±0.02の滑らかな金属を取り付け、おもりにのみ試験片を設置して測定する試験を行い、その測定結果が「動摩擦力 金属/紙(gf)」である。
また「動摩擦力 金属/紙(gf)」については無機・有機に関わらず滑性向上のために薬品または微粒子を塗布した面を測定した値である。また、滑性向上のための薬品または微粒子を塗布していない面の「動摩擦力 金属/紙(gf)」の測定値、及び「静摩擦力 紙/紙(gf)」の測定値は、表裏面の平均値である。
「発塵量(個/m3)」とは、SEMI G67−0996に順じ、100L吸引時の発塵量(発生した紙粉個数)をパーティクルカウンター(RION株式会社製、KC−20型)にて計測し、1m3に換算した値である。
「段ロール割れ」の評価基準は、
◎:「割れが全く発生しない」
○:「加工巾の3割未満にひび割れが発生するが、中芯の材破には至らず、完成シートは使用できる」
△:「加工巾の3割以上にひび割れが発生するが、中芯の材破には至らず、完成シートは使用できる」
×:「加工巾の5割以上にひび割れが確認され、また一部中芯は材破し、完成シートは使用できない」
の4段階とした。
「巻きズレ」の評価基準は、
◎:「巻取り製品をサイドクランプで2回荷役しても、巻取りの最外部のズレが5mm以内である」
○:「巻取り製品をサイドクランプで2回荷役しても、巻取りの最外部のズレが10mm以内である」
△:「巻取り製品をサイドクランプで2回荷役しても、巻取り最外部のズレが15mm以内である」
×:「巻取り製品をサイドクランプで2回荷役すると、巻取り災害部のズレが16mm以上である」
の4段階とした。
なお、サイドクランプでの1回荷役とは、鏡面が下になるように垂直に立てた巾1.5m、重量約1トンの製品巻取りをトラック荷台への積込みを想定し、サイドクランプで水平に掴み、垂直に1m上下させたことを言う。
また「発塵性」とは上述した発塵量のうち、特に30〜50μmの塵の発生量を測定し評価したもので、その評価基準は、
◎:「30〜50μmの塵の発生量が1300個/m3未満である」
○:「30〜50μmの塵の発生量が1300個/m3以上1500個/m3未満である」
△:「30〜50μmの塵の発生量が1500個/m3以上2000個/m3未満である」
×:「30〜50μmの塵の発生量が2000個/m3以上である」
の4段階とした。