以下、本発明に係る段ボールシート用の表裏面用紙について、詳細に説明する。
本発明に係る段ボールシート用の表裏面用紙(以下、「本表裏面用紙」と言う。)は、本表裏面用紙の原紙の表裏面に水溶性高分子の塗工液を塗布・乾燥して、坪量が80〜185g/m2、特に、昨今の市場における表裏面用紙の軽量化への要望に応答するために80〜112g/m2、密度が0.50〜0.70g/cm3となるように抄紙され、形成される。
本表裏面用紙は、このように低坪量及び低密度であるので、省資源化及び製造コストの低減を図ることがでるとともに、本表裏面用紙を軽量なものとすることができるので運送費を低減することができる。また、本表裏面用紙は、JIS−P8129(1997)に規定されるデニソンワックス値を13A以上、好適には14〜18Aの表面強度を確保することができるので、内容物の搬送に必要な強度、中芯原紙との貼合適性、及び印刷適性を保持することができる。
なお、表裏面用紙の密度が0.50g/cm3未満であると、表裏面用紙の表裏面に塗布される水溶性高分子が表裏面用紙中に過度に浸透してしまい、デニソンワックス値が13A未満となるとともに、ステキヒトサイズ度が2秒未満になってしまう場合が生じる。この結果、印刷適性が低下するとともに、中芯原紙との接着性が悪化し、貼合適性が低下してしまう。なお、中芯原紙と表裏面用紙とを貼合する接着剤の量を増加させると、貼合適性の低下を防止することができるが、これにより表裏面用紙の生産性が低下するという問題が生じてしまう。一方、表裏面用紙の密度が0.70g/cm3を超えると、表裏面用紙への水溶性高分子の適度な浸透が損なわれ、水溶性高分子を所定量塗布することが難しくなるため、内容物の搬送に必要な強度を確保することが難しくなると共に、中芯原紙との貼合適性及び印刷適性が低下し、さらに多くの紙粉が発生し、発塵の問題も生じる。
本表裏面用紙の原紙は、幾度もの再生処理を経た安価な古紙パルプを原料パルプに用いて形成されている。なお、本表裏面用紙に用いられる原料パルプは、原料パルプの全乾燥重量を基準として、古紙パルプを少なくとも50重量%以上含むものであれば良い。すなわち、実質的に古紙パルプのみからなるパルプスラリーであってもよく、あるいは古紙パルプ以外に他のパルプを配合したものであっても良い。なお、古紙パルプの配合量が50重量%未満では、内容物の搬送に耐え得る強度を保持することができ、また発塵の問題も少ないが、表裏面用紙の製造コストが高くなり、さらに省資源化に逆行することになる。
古紙パルプとしては、段ボール古紙、製本、印刷工場、裁断所等において発生する裁落、損紙、幅落としした古紙である上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙を解離した古紙パルプ、上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙、更紙等に平版、凸版、凹版印刷等、電子写真方式、感熱方式、熱転写方式、感圧記録方式、インクジェット記録方式、カーボン紙などにより印字された古紙、及び水性、油性インクや、鉛筆などで筆記した古紙、新聞古紙を離解後脱墨したパルプ(DIP)、製紙スラッジ、製紙工場排水スカム等を用いることができる。
また、本表裏面用紙に用いられる原料パルプには、上記古紙パルプ以外に、バージンのケミカルパルプ(CP:広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹晒亜硫酸パルプ、針葉樹晒亜硫酸パルプ、広葉樹未晒亜硫酸パルプ、針葉樹未晒亜硫酸パルプ等の木材及びその他の繊維原料を化学的に処理して作成されたパルプ)や、木材またはチップを機械的にパルプ化したグランドパルプ、木材またはチップに薬液を滲み込ませた後、機械的にパルプ化したケミグランドパルプ、ケミメカニカルパルプ及びチップをやや柔らかくなるまで蒸解した後、リファイナーでパルプ化したセミケミカルパルプ等のバージンパルプを含有させてもよい。
本表裏面用紙は、その原紙の表裏面に水溶性高分子を塗布・乾燥して形成したので、上記のように、特に古紙パルプを50重量%以上含有させ、坪量及び密度を、従来の段ボールシートに用いられる板紙よりも低くして軽量としても、表面強度をデニソンワックス値で13A以上とすることができ、印刷適性と、貼合適性と、内容物の搬送に必要な強度とを保持しつつ、紙粉の発生を抑制することができる。
なお、印刷用紙では、その表面に水溶性高分子を塗布するものがあるが、これは印刷時のインクの滲みを防止する目的で塗布されるものである。これに対し、本表裏面用紙の原紙の表裏面に水溶性高分子を塗布するのは、強度を高め、内容物の搬送に必要な強度を保持し、かつ貼合適性及び印刷適性を維持するとともに、発塵の問題を低減するためであり、印刷用紙とは、水溶性高分子を塗布する目的が異なる。
また、本表裏面用紙を、軽量であっても強度に優れるものとするためには、水溶性高分子の塗布量を多くすることが望ましい。従って、ゲートロールで水溶性高分子を塗布できる塗布量は、通常0.5〜2g/m2程度であるため、本表裏面用紙は、以下に詳述する特定の水溶性高分子、特に特定の澱粉を用いることにより、生産性に優れるフィルムトランスファー方式の塗工設備を用いながらも、軽量で、強度に優れ、なおかつ発塵の少ない表裏面用紙とすることができた。
本表裏面用紙の原紙の表裏面に塗布され、乾燥される水溶性高分子は、澱粉を主成分とする水性組成物である。また、本表裏面用紙に用いられる澱粉として、分子量が300万未満、好ましくは230万〜290万である化工澱粉が用いられる。
澱粉が紙製造業者に提供される際の形態は固体材料であり、一般に、澱粉の分子量が高いほど、固体の澱粉が水系に溶解する速度が遅くなる。加えて、特に分子量の高い澱粉は、せん断に非常に高い敏感性を示すため、取り扱い及び品質管理が難しくなるという問題も生じてくる。従って、本表裏面用紙に澱粉を用いる際には、澱粉を予め水溶液に溶解させておく必要があるが、分子量が300万以上である澱粉であると、完全な溶解を確保するためには、強力な混合を行う必要がある。しかしながら、このような強力な混合操作を行うと、高分子量の澱粉は、せん断に対して高い敏感性を示すため、高分子量特性を得ることができないと共に、最終的に得られる澱粉分散液において、澱粉を均一に分散させることができない。このため、本表裏面用紙に用いられる澱粉には、分子量が300万未満のものが用いられる。しかしながら、澱粉の分子量が300万未満であっても、分子量が低すぎると、水溶性高分子は澱粉を主成分とするため、水溶性高分子を段ボールシート用表裏面用紙の原紙の表裏面に塗布する効果を得難い。従って、分子量が200万以上である澱粉を用いることが、より好ましい。
このような澱粉としては、例えば酸化澱粉、カチオン化澱粉、カルボキシメチル化澱粉、α化澱粉、リン酸エステル化澱粉、尿素リン酸変性澱粉、未変性澱粉等、公知の種々のものを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。なお、これらの澱粉の原料についても特に限定されるものではないので、例えばタピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、トウモロコシ澱粉等、公知の種々の原料澱粉を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本表裏面用紙には、これらの澱粉の中でもリン酸変性された澱粉、特にリン酸エステル化澱粉及び/又は尿素リン酸変性澱粉の使用が好ましい。また、リン酸エステル化澱粉の場合は、リン酸の結合率が、リン酸エステル化澱粉の固形分当たりリン酸H3PO4として0.1〜10重量%であるリン酸変性された澱粉の使用が好ましい。リン酸変性された澱粉は、高濃度であっても粘性の上昇が低く、塗布性にも優れている。また、表裏面用紙中への適度な浸透性を有するため、内容物の搬送に必要な強度と、貼合適性と、印刷適性とを保持しながら、発塵を極めて顕著に抑えることができる。
また、本表裏面用紙に用いられる水溶性高分子は、フェノール硫酸法による澱粉の比色定量により分析した値で、本表裏面用紙中に、澱粉が2.5〜10g/m2、好適には3.0〜10g/m2、更に好適には4.0〜10g/m2含有されるように、本表裏面用紙の原紙の表裏面に塗布設備にて塗布される。これにより、本表裏面用紙を、坪量が80〜185g/m2、特に80〜112g/m2、密度が0.50〜0.70g/cm3と軽量になるように抄紙しても、内容物の搬送に必要な強度と、貼合適性と、印刷適性とを保持しながら、紙紛の発生を抑制することができる。
なお、水溶性高分子の主成分である澱粉を、塗工液(澱粉糊液)の濃度が35%以上、温度40℃での粘度が85cp以下、好ましくは10〜80cp、より好ましくは30〜75cpのものとすることにより、表裏面用紙中の澱粉含有量が2.5g/m2以上となるように水溶性高分子を塗布することがより容易になる。これにより、生産性に優れるフィルムトランスファー方式の塗工設備を用いながらも、軽量であっても内容物の搬送に必要な強度と、フルート加工が施された中芯原紙との貼合適性とを保持し、また軽度な印刷を可能としながら、さらに発塵の少ない段ボールシート用表裏面用紙を得ることができる。
なお、表裏面用紙中の澱粉含有量が2.5g/m2未満では、内容物の搬送に必要な強度と、貼合適性と、印刷適性とを保持しながら、紙粉の発生を抑制することが困難となる。一方、表裏面用紙中の澱粉含有量が10g/m2を超えると、既存のフィルムトランスファー方式に代表される塗布設備での塗布が困難となり、操業性を大きく低下させると共に、抄紙機の毀損、コスト負担が大きくなる。
また、水溶性高分子には、本発明の効果に影響のない範囲内で、澱粉のほか、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAM)等を用いることができる。さらに、例えば滑剤、サイズ剤、填料分散剤、pH調整剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、蛍光消去剤等の公知の種々の添加剤を、単独で、あるいは2種以上を混合して添加しても良い。
しかしながら、水溶性高分子の塗布量が増加し、表裏面用紙中の澱粉の含有量が増加すると、柔軟性が低下する傾向となるため紙が剛直となり、紙粉の発生が多くなるという問題がある。従って、水溶性高分子の塗布面上(水溶性高分子の塗工層上)に、非ワックス系の滑剤を塗布することが好ましい。滑剤としては、フッ素系樹脂(固形物、粉末、繊維状など)を主とするものが使用される。他に液状タイプの滑剤としてはシリコーンオイル、フッ素系のオイル等の合成油、スクワランオイルなどの動物性のオイル、菜種油、紅花油、ゴマ油、椿油などの植物性のオイル、鉱物油等を併用でき、潤滑性を得る手段としてはいずれも有効であるが、長期安定性を考慮した場合、シリコーンオイル、フッ素系のオイル等の合成オイルを使用するのが望ましい。シリコーンオイルにはメチルフェニルオイル、フロロシリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、ポリエーテル、フッ素、エポキシ、アルコール等の変性シリコーンオイルなどがあり、多少の効果の違いはあるが、滑剤としてはほぼ使用可能である。フッ素系のオイルとしてはフルオロカーボン油、パーフルオロエーテル油などがある。また、本発明において、好適にはステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸金属塩、低分子量ポリエチレンの水性分散液を好適に用いることができる。これらの中でも特に、液状炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、高級脂肪酸硫酸化油、脂肪族リン酸エステル、ポリアルキレングリコールまたはその誘導体、あるいはこれらの水性分散液や、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックスなどを使用することができる。しかしながら、石油ワックスは、紙粉の発生(発塵)の抑制効果が低いため、坪量が80〜185g/m2、特に80〜112g/m2と軽量である本表裏面用紙においては、非ワックス系の滑剤を用いることが好ましい。
本表裏面用紙は、幅方向に原料パルプの濃度調整が可能な機構を備えたヘッドボックスにて湿紙を形成し、フィルムトランスファー方式による塗布設備で、上述した澱粉を主成分とする水溶性高分子の塗工液を、表裏面用紙の原紙(湿紙)の表裏面に塗布し、乾燥して製造される。
また、700m/分以上の高速抄紙において、水溶性高分子の水性組成物は1.0〜2.5%の濃度で原紙に付与される。水性組成物の濃度が1.0%未満では、特にゲートロールにおいて、澱粉糊液のミストが発生してしまい、周辺設備の汚損が生じる場合がある。また、必用量の水溶性高分子の澱粉を塗布することが困難な上に、過大な乾燥能力が必要になり操業性を落とす問題が生じる。一方、水性組成物の濃度が2.5%を超えると、粘性が高くなるため、澱粉塗工時に紙が取られ断紙が生じたり、走行トラブルが発生するため、操業性を低下させるという問題がある。
また、本表裏面用紙は、JIS−P8220に準拠して段ボールシート用表裏面用紙を離解した離解パルプにおける、JAPAN TAPPI No.52に準拠して測定した重量平均繊維長(以下、単に「重量平均繊維長」と言う。)が1.20〜1.50mm、より好ましくは1.30〜1.40mmである。これにより、古紙パルプの配合量にかかわらず、内容物の搬送に必要な強度と、貼合適性と、印刷適性とを一定に保持ことができる。また、短繊維量が多くなることを防止することができるので、紙粉の発生を抑制することができる。さらにまた、後続のヘッドボックス及びプレスパートにおける紙厚低下がより少なくなり、地合の良い、すなわち厚薄ムラのより少ない紙層形成を行うことが可能となる。
なお、重量平均繊維長が1.20mm未満であると、内容物の搬送に必要な強度と、貼合適性と、印刷適性とを一定に保持することが難しくなるとともに、短繊維量が多くなるため、紙粉が発生しやすくなる。一方、重量平均繊維長が1.50mmを超えると、製造工程での分級処理で歩留りが低下し、省資源やコスト面で問題が発生したり、さらには地合が悪くなる。
すなわち、図1に、本表裏面用紙を形成する実施設備の一例の概要図で示すように、幅方向に原料パルプの濃度調整が可能な機構を備えたヘッドボックス1により紙料を噴出させ、ワイヤーパート2においてパルプ繊維の分散を図りながら紙層を形成し、シュープレス3を備えるプレスパート4により脱水し、その後プレドライヤーパート5により湿紙の乾燥を図る。次いでサイズプレス6を使用して、上述した水溶性高分子の塗工液を湿紙の表裏面に塗布する。塗布後にアフタードライヤーパート7において、表裏面に水溶性高分子が塗布された湿紙を乾燥し、カレンダー装置8によりカンレダー処理を施し、巻取機9により巻取り、坪量が80〜185g/m2、特に坪量が80〜112g/m2の本表裏面用紙を得る。
このような幅方向に原料パルプの濃度調整が可能な機構を備えたヘッドボックスとしては、モジュールジェットヘッドボックス(VOITH社製)、コンセプトIV−MHヘッドボックス(三菱重工業社製)、オプチフローヘッドボックス(METSO社製)、BTF−ダイリューションシステム(川之江造機社製)などが使用できる。
なお、ヘッドボックスに、幅方向に原料パルプの濃度調整が可能な機構が備えられていない場合は、ワイヤーパートでの紙の地合による厚薄差が大きくなり、後述するプレスパートのシュープレスでは、この厚薄差を是正することができない。
本表裏面用紙の抄紙工程におけるプレスパートには、シュープレスが備えられている。すなわち、プレスパートにおいても、抄紙機の高速化に伴い、より高い脱水能力が求められるようになってきている。このため、従来の2ロールニップ方式から、より脱水能力のあるシュープレスを備えることが好ましい。
また、本発明者の鋭意検討の結果、シュープレスを備えることにより、2ロールニッププレスを備えた場合に比べて、脱水能力が高いということ以外に、紙厚の低下を抑制しながら脱水できることが分かった。
このように、上述したヘッドボックスと、シュープレスとを組み合わせることにより、坪量が80〜185g/m2、特に坪量が80〜112g/m2と軽量な段ボールシート用表裏面用紙であっても、内容物の搬送に必要な強度と、貼合適性と、印刷適性とを保持しながら、発塵を抑えることができる。
このようなシュープレスとしては、シムベルトSプレス(METSO社製)、ニプコフレックスプレス(VOITH社製)、エクステンディドニッププレス(三菱重工業社製)などが使用できる。なお、シュープレスを用いない場合は、ヘッドボックスにより紙の厚薄差を小さくできても、プレスでの紙厚の低下が大きくなるため、内容物の搬送に必要な強度と、貼合適性と、印刷適性とを保持することができない。
このように上述したヘッドボックスと、シュープレスとを組み合わせて用いることにより、800m/分以上の高速で抄紙しても、紙厚を維持し、紙厚の低下を少なくすることができるとともに、厚簿ムラを少なくすることができる。この結果、坪量が80〜185g/m2、特に80〜112g/m2と軽量の段ボールシート用の表裏面用紙であっても、内容物の搬送に必要な強度と、貼合適性と、印刷適性とを保持することができる。
ドライヤーパートで乾燥された本表裏面用紙の湿紙は、上述したように湿紙が形成された後、サイズプレス工程の塗布設備で、本表裏面用紙の湿紙の表裏面に上述した水溶性高分子が塗布される。
水溶性高分子を本表裏面用紙の湿紙の表裏面に塗布する方法として、2ロールのポンド式、ゲートロールサイズプレスやロッドメタリングサイズプレス等のフィルムトランスファー方式等の塗工方法を用いることができるが、均一な水溶性高分子層を少ない塗工量で形成することができるという観点から、フィルムトランスファー方式(転写式)の中でもゲートロールサイズプレスがより好ましい。このように、フィルムトランスファー方式による塗布設備で、水溶性高分子を塗布することにより、内容物の搬送に必要な強度、貼合適性、及び印刷適性を高めることができる。
表裏面に水溶性高分子が塗布された本表裏面用紙は、その後、カレンダー処理を施さないことが好ましい。これにより、プレスによる紙厚の低下をより少なくすることができ、低坪量であっても、内容物の搬送に必要な強度と、貼合適性と、印刷適性とを保持することができる。
すなわち、従来の段ボール用の表裏面用紙である板紙は、カレンダー処理を施し、厚簿ムラを少なくすることで印刷適性を向上させるが、低級品レベルの軽度な印刷では差は認識できないレベルであるため、紙厚を確保するために、カレンダー処理をしない方が好ましい。
また、上述したようにして形成された本表裏面用紙は、SEMI G97−0996 2001の日本語訳に準拠して測定した縦・横裁断面における30〜50μmのさばき発塵紙粉量(以下、単に「さばき発塵紙粉量」という。)が2000個/m3以下である。
本表裏面用紙と近似の構成を有する中芯原紙においては、さばき発塵紙粉量が2000個/m3を超え、時には3000個/m3以上となることがあった。このように、さばき発塵紙粉量が2000個/m3を超えると、紙紛の散見が顕著になるため、特に段ボールシートが、食品包装向けの段ボールケースに使用される場合において、紙粉が食品に付着してしまい、商品価値の低下を招くとともに、見栄えの悪化を招いてしまう。
なお、さばき発塵紙粉量とは、流れ方向に5cm×幅方向に20cmの大きさに押し切りカッターで断裁した試料を5枚重ね、グローブボックス内で端面を10回ずつさばき、SEMI G67−0996に順じて、100L吸引時の発塵量(発生した紙粉個数)をパーティクルカウンターにて計測し、1m3に換算した値である。
また、本表裏面用紙は、坪量が140g/m2未満の場合、引張強度(縦)が3.0kN/m以上、圧縮強度(横)が95N・m2/g以上であり、また坪量が140g/m2以上の場合、引張強度(縦)が5.0kN/m以上、圧縮強度(横)が155N・m2/g以上である。すなわち、引張強度は、JIS−P3904のC級の表示米坪120g/m2で規定する3.5kN/m(裂断長3.0km)以上で、かつ圧縮強度も同欄で規定する96N・m2/g以上を目標とした。これにより、坪量が80〜185g/m2、特に80〜112g/m2と軽量であっても、内容物の搬送に必要な強度を有し、また貼合適性と、印刷適性とを保持することが分かる。
上述したように形成された本表裏面用紙は、JIS−P3904規格にて定められた従来の板紙に比べて、省資源で安価であるので、段ボールシートの製造コストをより低減させることができる。
以上、本発明に係る段ボールシート用表裏面用紙について、その紙層が単層から成る場合について説明したが、本発明に係る段ボールシート用表裏面用紙は、抄紙工程のワイヤーパートにおいて多層抄きとし2層以上の複数層としても良い。これにより、低級グレード古紙由来の夾雑物を低減し見栄えをよくするという効果を得ることができると共に、内容物の搬送に必要な強度、貼合適性、及び印刷適性をより得易くなる。
本発明に係る段ボール用表裏面用紙の効果を確認するため、以下のような各種の試料を作製し、これらの各試料に対する品質を評価する試験を行った。なお、本実施例は、本発明を限定するものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲において、適宜その構成を変更することができることはいうまでもない。
本発明に係る32種類の段ボール用表裏面用紙(これを「実施例1」ないし「実施例32」とする)を表1に示すような構成で作製し、また、これらの実施例1ないし実施例32と比較検討するための10種類の段ボール用表裏面用紙(ライナー)(これを「比較例1」ないし「比較例10」とする)を表2に示すような構成で作製した。
なお、各実施例及び比較例の各要因の全てについて、個々のラインを新設したものではなく、テストプラントによるテスト例が主たるものであることを断っておく。
[実施例1]
段ボール古紙80重量%と、茶古紙20重量%とを配合した後に、ダブルディスクリファイナーでカナダ標準濾水度(JIS−P8121に準ずる)が400ccとなるように原料パルプを調整し、原料パルプスラリーを作製した。
次に、水溶性高分子の水性組成物を作製した。この水溶性高分子は、主成分として、分子量が290万である酸化澱粉(日本コーンスターチ株式会社製 SK−20)を用い、塗布される水性組成物の濃度が2.0%となるように調整して水溶性高分子の水性組成物を作成した。
上述したように作製した原料パルプスラリーを、モジュールジェットヘッドボックス(VOITH社製)に入れて、原料パルプの濃度が1.0%になるように濃度調整を行い、単層の湿紙を形成する。その後、シュープレス方式で湿紙を脱水し、プレドライヤーで乾燥させる。なお、抄速は800m/分である。
次いで、サイズプレスにより、上述した水溶性高分子の水性組成物を、表裏面用紙中の澱粉含有量が2.7g/m2となるように、湿紙の表裏面に塗布し、乾燥させて、仕上がり水分がJIS−P3904で規定する8.0±1.5%の範囲内であって、単層から成り、坪量が100g/m2で、密度が0.57g/cm3で、紙厚が175μmである段ボールシート用表裏面用紙を得る(実施例1)。
また、実施例2〜32を表1に示す条件以外は実施例1と同様に作製し、さらに比較例1〜7を表2に示す条件以外は実施例1と同様に作製し、本発明の評価を行った。なお、本実施例における滑剤には、ステアリン酸カルシウム(ノプコートC−104:サンノプコ社製、固形分濃度50%)を用い、アフタードライヤーに噴霧器にて塗布し、転写して用いた。また、比較例8〜10は、他社の坪量120g/m2の段ボールシート用表裏面用紙(板紙)を用い、評価したものである。
なお、表1及び表2中の「プレス方式」とは、プレスパートにおける形式であり、表中の「S」とは、シュープレス(搬送フェルトにより搬送される湿紙を環状ベルトを介してプレスロールとプレスシューとでニップする抄紙機のプレス機構)を、「R」とは、ロールプレス(ロールとロールとの間に形成される隙間でプレスする機構)を示す。
また、「塗布形式」とは、水溶性高分子を、段ボールシート用表裏面用紙の湿紙の表裏面に塗布する際の塗布形式を示す。なお、「P」とは、ポンド式(ロール間に液溜めを設け、用紙をドブ付けする方法)を、「B」とは、ビルブレード(ゴム被覆バッキングロールとブレードとの間で用紙に塗布する方法)を、「G」とは、ゲートロール(6本のロールで構成されるロール転写塗布方法)を示す。
「種類」とは、水溶性高分子の主成分となる澱粉の種類であり、表中の「酸」とは「酸化澱粉」を、「尿」とは「尿素リン酸変性澱粉」を、「エ」とは「リン酸エステル化澱粉」を示す。なお、本実施例では、酸化澱粉として、日本コーンスターチ社製のSK−20を用い、尿素リン酸エステル化澱粉として、日本食品化工社製のスターコート#16を用い、リン酸エステル化澱粉として、日本コーンスターチ社製のSK−3000を用いた。
「粘度(cp)」とは、水溶性高分子の水性組成物の塗工液の濃度を35%で、温度が40℃であるときのB型粘度である。
「坪量(g/m2)」とは、各試料全層、すなわち段ボールシート用表裏面用紙全体の坪量で、JIS−P8124に記載の「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した値である。
「密度(g/cm3)」とは、各試料の坪量及び厚さを測定して算出した値である。また、測定誤差をなくすため、各試料からサンプルを10枚採取して測定した平均値である。
「紙厚(μm)」とは、JIS−P8118(2006)「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に基づいて測定した値である。
「澱粉含有量(g/m2)」とは、フェノール硫酸法を用いた比色分析にて、酸化澱粉で作成した検量線を用い、定量した値である。
「重量平均繊維長(mm)」とは、各試料から約10cm2に裁断した試験片の約25gを1リットルの水中に24時間浸漬した後、TAPPI標準離解機で、15分間離解処理し、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.52 繊維長試験方法に基づいて測定した値である。
これらの全実施例及び比較例について、品質評価を行った結果は、表3に示すとおりであった。なお、この品質評価試験は、JIS−P8111に準拠して温度23±2℃、湿度50±2%の環境条件で行った。
表3中の「引張強度(kN/m)」とは、JIS−P8113に準じて測定した縦方向の値である。
また、「圧縮強度(N・m2/g)」とは、JIS−P8126に準じて測定した横方向の値である。
「強度の評価」とは、各実施例及び比較例の各試料の引張強度(縦)及び圧縮強度(横)のそれぞれの評価値を、各試料の坪量で除した後、坪量120g/m2に換算した値で、引張強度(縦)が4.0kN/m以上、圧縮強度(横)が90N・m2/g以上であるか否かを評価したものである。その評価基準は、◎印の「引張強度及び圧縮強度の両者を十分満足している」、○印の「引張強度及び圧縮強度の両者を満足している」、×印の「引張強度及び/又は圧縮強度を充足していない」の3段階とした。
「ワックスピック(A)」とは、JIS−P8129(1997)に準じて測定したデニソンワックス値である。
「発塵量(個/m3)」とは、SEMI G67−0996に順じ、100L吸引時の発塵量(発生した紙粉個数)をパーティクルカウンター(RION株式会社製、KC−20型)にて計測し、1m3に換算した値である。
「サイズ度(秒)」とは、JIS−P8122に準じて測定したステキヒトサイズ度の値である。
「製造コスト」は、比較例1における、原料コスト、使用薬品コスト、操業コストを基準に、コスト低減割合が大きいもの上位4つの実施例を◎、他のものを○、コストアップになったものを×とした。
表3から分かるように、本発明に係る段ボールシート用表裏面用紙、すなわち実施例1ないし実施例32に係る段ボールシート用表裏面用紙は、坪量が80〜185g/m2、特に80〜112g/m2と軽量であっても内容物の搬送に耐え得る強度と、中芯原紙との貼合適性とを有し、簡便な印刷を施すことができると共に、さらに発塵が少ない段ボールシート用表裏面用紙とすることができることが分かる。
また、本発明の表裏面用紙は、段ボールシートを構成する中芯原紙としても用いることができるので、段ボールシートを同一の材料で低廉化に簡便に製造することが可能であり、段ボールシートの製造コストをより低減することができるが、比較例8〜10として列挙した従来の市販品の表裏面用紙(板紙)は特に中芯原紙として用いることができないので、表面用紙、中芯原紙、裏面用紙と異なる品種を準備する必要があり、煩雑であると共にコストアップになる。