JP3539269B2 - 冷間圧延ワークロール冷却液の液切り装置および液切り方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は冷間圧延機ワークロールの冷却液の液切り装置および液切り方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に冷間圧延機で鋼板を冷間圧延する際に、ワークロールに冷却液を噴射しながら圧延している。冷却液が鋼板に付着したまま残存すると鋼板表面に錆が発生する等の問題が生じる。その解決策として種々の液切り装置が開発されている。非接触式の液切り装置としては従来からエアー噴射を利用した装置が用いられている。しかし従来のエアーの噴射による液切り装置では液切り用エアー噴射ノズルの位置が固定されているため、液切り用エアー噴射ノズルとワークロール表面との距離が調整できない。したがってワークロールの交換等によってワークロールの直径が変化すると、液切り用エアー噴射ノズルとワークロール表面との距離も変化する。つまり直径の小さいワークロールを使用する時は、液切り用エアー噴射ノズルとワークロール表面との距離は大きくなる。そこで液切り用エアー噴射ノズルとワークロール表面との距離が最大であっても液切りが可能な圧力で液切り用エアーを常時噴射している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
冷間圧延機で鋼板1を冷間圧延する際にワークロール2に冷却液を噴射しながら、同時に液切り用エアーを噴射するにあたって、液切り用エアー噴射ノズル6とワークロール2表面との距離が最大であっても液切りが可能な圧力で液切り用エアーを常時噴射すると、液切り用エアー噴射ノズル6とワークロール2表面との距離が小さい場合に、ワークロール2表面への液切り用エアーの衝突速度が大きすぎるため、冷却液の噴射形状が乱れ、さらにワークロール2表面における冷却液の流れが乱れる。その結果、ワークロール2の冷却が不均一あるいは不十分になるばかりでなく、冷却液が鋼板1へ飛散して鋼板表面に錆を生じるという問題があった。
【0004】
本発明は上記のような問題を解決するべく、冷間圧延機のワークロール2表面の冷却液の流れを乱すことなく液切りを行なうことによって、鋼板1への冷却液の飛散を防止し、しかもワークロール2を均一かつ十分に冷却する冷却液の液切り装置および液切り方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、冷間圧延機で鋼板を冷間圧延する際に用いるワークロールの冷却液の液切り装置において、鋼板の上側に配設されたワークロールの出側に配設された液切り用エアー噴射ノズルと、その液切り用エアー噴射ノズルとワークロールとの距離を調整するノズル位置調整装置と、液切り用エアー噴射ノズルから噴射するエアーの圧力を調整する圧力調整装置とを有する冷間圧延ワークロール冷却液の液切り装置である。
【0006】
本発明は、鋼板の上側のワークロールの出側に配設された液切り用エアー噴射ノズルがスリットノズルであり、かつスリットの開口部の長さが鋼板の板幅より長い冷間圧延ワークロール冷却液の液切り装置である。
また本発明は、鋼板の上側のワークロールの出側に配設された液切り用エアー噴射ノズルが、ワークロールの出側に配設された冷却液噴射ノズルと鋼板との間に配設され、液切り用エアー噴射ノズルがその液切り用エアー噴射ノズルからワークロール表面に下ろした垂線より上方へ液切り用エアーを噴射し、かつ冷却液噴射ノズルがその冷却液噴射ノズルからワークロール表面に下ろした垂線より上方へ冷却液を噴射する冷間圧延ワークロール冷却液の液切り装置である。
【0007】
さらに本発明は、冷間圧延機で鋼板を冷間圧延する際に用いるワークロールの冷却液の液切り方法において、鋼板の上側に配設されたワークロールの出側に配設された液切り用エアー噴射ノズルのノズル開口部とワークロール表面との距離Yと、液切り用エアー噴射ノズル内部のエアー圧力Xとの関係を、
0.1 kg/cm2≦X(kg/cm2)<0.2 kg/cm2 の場合は
Y(mm)≦5mm、
0.2 kg/cm2≦X(kg/cm2)<0.4 kg/cm2 の場合は
Y(mm)≦25×X、
0.4 kg/cm2≦X(kg/cm2)<0.6 kg/cm2 の場合は
Y(mm)≦ 100×X−30、
0.6 kg/cm2≦X(kg/cm2)<0.7 kg/cm2 の場合は
62.5×X−32.5≦Y(mm)≦ 100×X−30、
0.7 kg/cm2≦X(kg/cm2)≦1.0 kg/cm2 の場合は
62.5×X−32.5≦Y(mm)≦40mm
とする冷間圧延ワークロール冷却液の液切り方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について図を用いて説明する。
図1は本発明の構成の例を示す概略図である。バックアップロール3とワークロール2を有する冷間圧延機で鋼板1を冷間圧延する状態を示している。図中の矢印は圧延方向である。冷却液噴射ノズル4,5から冷却液をワークロール2へ噴射する。
【0009】
液切り用エアー噴射ノズル6は、鋼板1の上側かつワークロール2の出側に配設される。液切り用エアー噴射ノズル6の形態は特定の構成に限定されないが、スリットノズルを使用するのが望ましい。さらにそのスリット開口部の長さが鋼板1の板幅より長いスリットノズルを使用するのが望ましい。液切り用エアー噴射ノズル6は、ワークロール2の出側の冷却液噴射ノズル5と鋼板1との間に配設され、液切り用エアーの噴射方向は液切り用エアー噴射ノズル6からワークロール2表面に下ろした垂線より上方へ噴射するのが望ましい。また鋼板1の上側に配設され、かつワークロール2の出側に配設された冷却液噴射ノズル5から冷却液を噴射する方向は、冷却液噴射ノズル5からワークロール2表面に下ろした垂線より上方へ噴射するのが望ましい。図2は、鋼板1の上側に配設され、かつワークロール2の出側に配設された冷却液噴射ノズル5が冷却液を噴射する方向と、液切り用エアー噴射ノズル6が液切り用エアーを噴射する方向を模式的に示した図である。
【0010】
液切り用エアー噴射ノズル6からワークロール2表面に下ろした垂線より上方へ50°を越える角度で液切り用エアーを噴射すると、冷却液噴射ノズル5から噴射された冷却液中へ液切り用エアーが噴射されるので、冷却液が飛散する。また液切り用エアー噴射ノズル6からワークロール2表面に下ろした垂線より上方へへ40°未満の角度で液切り用エアーを噴射すると、液切りの効果が弱められ、十分に液切りを行なうためには液切り用エアーの噴射圧は過大な圧力が必要である。液切り用エアー噴射ノズル6とワークロール2表面との距離が5mmの場合の、液切り用エアー噴射角と液切り用エアー噴射ノズル内の圧力の関係は図6に示す通りである。したがって液切り用エアーの噴射角度は、液切り用エアー噴射ノズル6からワークロール2表面に下ろした垂線より上方へ40〜50°の範囲に限定した。
【0011】
液切り用エアー噴射ノズル6とワークロール2表面との距離は、ノズル位置調整装置7で調整する。ノズル位置調整装置7の形態は特定の構成に限定されないが、歯車またはシリンダーを使用するのが望ましい。
液切り用エアー噴射ノズル6の噴射圧は圧力調整装置8で調整する。圧力調整装置8の形態は特定の構成に限定されないが、液切り用エアー噴射ノズル6内の圧力を検出する圧力検出装置10と、その圧力検出装置10で検出したデータを処理する演算装置11を用いて自動的に適正圧力に調整する構成が望ましい。図3は、液切り用エアー噴射ノズル6内の圧力を自動的に調整する構成の例を示す模式図である。
【0012】
液切り用エアー噴射ノズル内のノズル開口部とワークロール表面との距離Y、および液切り用エアー噴射ノズル内部のエアー圧力Xの関係は図5に示す通りである。図5中の線aおよび線bで囲まれた範囲(すなわちハッチング部)が液切り用エアーの最適噴射条件である。以下に液切り用エアーの噴射条件の限定理由を説明する。
【0013】
0.1 kg/cm2≦X(kg/cm2)<0.2 kg/cm2の場合は、Yが5mmを越えると距離が遠すぎるため液切りが十分に行われない。したがって
Y(mm)≦5mm
の範囲に限定した。
0.2 kg/cm2≦X(kg/cm2)<0.4 kg/cm2の場合は、Y(mm)が25×Xを越えると距離が遠すぎるため液切りが十分に行われない。したがって
Y(mm)≦25×X
の範囲に限定した。
【0014】
0.4 kg/cm2≦X(kg/cm2)<0.6 kg/cm2の場合は、Y(mm)が 100×X−30を越えると距離が遠すぎるため液切りが十分に行われない。したがって
Y(mm)≦ 100×X−30
の範囲に限定した。
0.6 kg/cm2≦X(kg/cm2)<0.7 kg/cm2の場合は、Y(mm)が 100×X−30を越えると距離が遠すぎるため液切りが十分に行われない。またY(mm)が 62.5×X−32.5未満の場合はワークロールの冷却が十分に行われない。したがって
62.5×X−32.5≦Y(mm)≦ 100×X−30
の範囲に限定した。
【0015】
0.7 kg/cm2≦X(kg/cm2)≦1.0 kg/cm2の場合は、Y(mm)が40mmを越えると距離が遠すぎるため液切りが十分に行われない。またY(mm)が62.5×X−32.5未満の場合はワークロールの冷却が十分に行われない。したがって
62.5×X−32.5≦Y(mm)≦40mm
の範囲に限定した。
【0016】
【実施例】
直径 800mmのバックアップロール3および直径 350mmのワークロール2を有する冷間圧延機を用いて鋼板1を冷間圧延した。ワークロール2の出側の冷却液噴射ノズル5から冷却液を噴射する方向は、冷却液噴射ノズル5からワークロール2表面に下ろした垂線より10°上方である。液切り用エアー噴射ノズル6はスリットノズルを使用した。スリットの開口部の隙間は 0.5mm、開口部の長さは鋼板1の板幅+ 200mmである。また液切り用エアー噴射ノズル6から液切り用エアーを噴射する方向は、液切り用エアー噴射ノズル6からワークロール2表面に下ろした垂線より45°上方である。冷間圧延機出側の鋼板1の速度は 150m/分である。図4は実施例を模式的に示した図である。
【0017】
図4に示した冷間圧延機を用いて鋼板1を冷間圧延するにあたって、液切り用エアー噴射ノズル6とワークロール3表面との距離および液切り用エアー噴射ノズル6内の圧力を変化させ、冷間圧延機出側の鋼板1の表面の濡れ具合およびワークロール2の表面温度を測定して、液切り用エアーの最適噴射条件を求めた。ワークロール2の表面温度は放射温度計で測定した。その結果を図5に示す。
【0018】
図5中の線aは、冷間圧延機出側の鋼板1の表面の濡れ具合から得られた液切りが可能な分岐線であり、線aより下側が液切りが良好に行なわれる領域である。図5中の線bは、ワークロール2の表面温度の変化から得られた冷却状態が良好な分岐線であり、線bより上側が冷却が良好に行なわれる領域である。これらの線で囲まれた範囲(すなわち図5中のハッチング部)が液切り用エアーの最適噴射条件である。
【0019】
【発明の効果】
本発明によると、ワークロールを交換することによってワークロール表面と液切り用エアー噴射ノズルとの距離が変化しても、常に最適の条件で液切り用エアーを噴射できるので、ワークロール冷却液の飛散を防止し、ワークロールを均一かつ十分に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成の例を示す概略図である。
【図2】冷却液噴射ノズルの噴射方向と液切り用エアー噴射ノズルの噴射方向を示した模式図である。
【図3】液切り用エアーの噴射圧を自動的に調整する構成の例を示す概略図である。
【図4】本発明の実施例を示した模式図である。
【図5】液切り用エアーの最適噴射条件を示すグラフである。
【図6】液切り用エアー噴射角と液切り用エアー噴射ノズル内の圧力の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 鋼板
2 ワークロール
3 バックアップロール
4 ワークロール入側の冷却液噴射ノズル
5 ワークロール出側の冷却液噴射ノズル
6 液切り用エアー噴射ノズル
7 ノズル位置調整装置
8 圧力調整装置
9 液切り用エアー供給ホース
10 圧力検出装置
11 演算装置
a 液切りが可能な分岐線
b 冷却状態が良好な分岐線

Claims (6)

  1. 冷間圧延機で鋼板を冷間圧延する際に用いるワークロールの冷却液の液切り装置であって、前記鋼板の上側に配設されたワークロールの出側に配設された液切り用エアー噴射ノズルと、前記液切り用エアー噴射ノズルと前記ワークロールとの距離を調整するノズル位置調整装置と、前記液切り用エアー噴射ノズルから噴射するエアーの圧力を調整する圧力調整装置とを有することを特徴とする冷間圧延ワークロール冷却液の液切り装置。
  2. 鋼板の上側に配設されたワークロールの出側に配設された液切り用エアー噴射ノズルがスリットノズルであり、前記スリットノズルのスリット開口部の長さが前記鋼板の板幅より長いことを特徴とする請求項1に記載の冷間圧延ワークロール冷却液の液切り装置。
  3. 鋼板の上側に配設されたワークロールの出側に配設された液切り用エアー噴射ノズルが、前記ワークロールの出側に配設された冷却液噴射ノズルと前記鋼板との間に配設されることを特徴とする請求項2に記載の冷間圧延ワークロール冷却液の液切り装置。
  4. 鋼板の上側に配設されたワークロールの出側に配設された液切り用エアー噴射ノズルが前記液切り用エアー噴射ノズルから前記ワークロール表面に下ろした垂線より上方へ液切り用エアーを噴射し、かつ前記ワークロールの出側に配設された冷却液噴射ノズルが前記冷却液噴射ノズルから前記ワークロール表面に下ろした垂線より上方へ冷却液を噴射することを特徴とする請求項3に記載の冷間圧延ワークロール冷却液の液切り装置。
  5. 鋼板の上側に配設されたワークロールの出側に配設された液切り用エアー噴射ノズルが前記液切り用エアー噴射ノズルから前記ワークロール表面に下ろした垂線に対して40〜50°上方へ液切り用エアーを噴射することを特徴とする請求項4に記載の冷間圧延ワークロール冷却液の液切り装置。
  6. 冷間圧延機で鋼板を冷間圧延する際に用いるワークロールの冷却液の液切り方法において、前記鋼板の上側に配設されたワークロールの出側に配設された液切り用エアー噴射ノズルのノズル開口部と前記ワークロール表面との距離Yと、前記液切り用エアー噴射ノズル内部のエアー圧力Xとの関係を
    0.1 kg/cm2≦X(kg/cm2)<0.2 kg/cm2 の場合は
    Y(mm)≦5mm、
    0.2 kg/cm2≦X(kg/cm2)<0.4 kg/cm2 の場合は
    Y(mm)≦25×X、
    0.4 kg/cm2≦X(kg/cm2)<0.6 kg/cm2 の場合は
    Y(mm)≦ 100×X−30、
    0.6 kg/cm2≦X(kg/cm2)<0.7 kg/cm2 の場合は
    62.5×X−32.5≦Y(mm)≦ 100×X−30、
    0.7 kg/cm2≦X(kg/cm2)≦1.0 kg/cm2 の場合は
    62.5×X−32.5≦Y(mm)≦40mm
    とすることを特徴とする冷間圧延ワークロール冷却液の液切り方法。
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