JP3903816B2 - 熱間圧延における幅圧下方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱間圧延におけるエッジャーによる幅圧下方法に関し、とくにエッジャーロールへの潤滑油や冷却水の供給方法等に特徴をもつ技術についての提案である。
【0002】
【従来の技術】
鋼の熱間圧延は、加熱炉より抽出したスラブを、表面に生成したスケールを粗スケールブレーカーなどにより取り除き、粗圧延機に送って所定の厚み(約25〜30mm)のシートバーとし、その後さらに6〜8機の連続式の仕上圧延機にて所定の厚さの鋼帯(ストリップ)にするのが一般的である。そして、上記粗圧延機の前面には、エッジャーが備えられており、幅精度を得るため、必要な幅圧下を行っている。
【0003】
上記エッジャーには、通常、材料先端部がロール下に潜り込むのを防止するため、円柱状ロールの下部につばが付いたつば付きロールを用いる。このつば付きロールで幅圧下を行う場合、つば部と圧延材料の下面が接触する時には、つば部の半径方向周速差により、材料とつば部との間に速度差が生じ、つば部に焼付きを起こすおそれがある。そして、この焼付きは、さらに材料下面部に引掻き疵等を発生させる。しかも、この疵は、下流の水平圧延によりさらに圧下されて倒れ込みを起こし、ひいては疵長を拡大する。その結果、製品コイルの裏面両エッジ(エッジから30〜40mm)には、コイル全長にわたっていわゆるエッジヘゲと称する欠陥が発生することとなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来、つば部の焼付きを防止し、エッジヘゲを低減するために、エッジャーロールの冷却に用いられている冷却水を、潤滑剤として利用する方法が採用されている。しかし、単なる冷却水のみでは、潤滑が不十分なため焼付を完全に防止することはできない。一方、製品に対する品質要求は一段と厳しくなってきており、板クラウン、エッジドロップの改善と相俟って、コイル全幅が製品として使用されるようになりつつある。このため、エッジ部の欠陥低減への要求が一段と強まってきている。
【0005】
本発明の目的は、エッジヘゲの原因となるつば付きロールの焼付きを防止するのに有効なエッジャーロールによる幅圧下方法を提案することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、エッジャーロールのつば部の焼付き防止に潤滑圧延を適用することを検討した。ところで、水平圧延などの分野で採用されている潤滑圧延は、水切りワイパーなどでロール表面に付着した冷却水を除去したのち、潤滑油を塗布するのが普通である。しかし、一般に、エッジャーロール近傍には、水切りワイパーを設置するようなスペースがないことから、水切りワイパーなしで、潤滑圧延できる方法について検討した。その結果、前記水切りワイパーに代えて、潤滑油や冷却水を吹き付ける位置を、さらには潤滑油や冷却水を吹き付けるヘッダーの向きを適正化することにより、上記目的を達成し得ることを知見し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、熱間圧延においてエッジャーロールにより幅圧下するにあたり、該エッジャーロールを冷却水で冷却する際のエッジャーロールへの冷却水の吹き付け位置は、エッジャーロール軸心を通りかつ圧延方向に平行な面よりも反圧延材側とすると共に、該エッジャーロールのつば部に潤滑油を吹き付けて潤滑圧延する際のエッジャーロールのつば部への潤滑油の吹き付け位置は、エッジャーロール入側でかつエッジャーロール軸心を通り圧延方向に平行な面よりも圧延材側とすることを特徴とする熱間圧延における幅圧下方法である。
【0010】
さらに、本発明の方法は、上記潤滑油の吹き付け方向を、エッジャーロール軸心を通り圧延方向に平行な面に対し平面視で10〜20°圧延材側とし、かつ、上記冷却水の吹き付け方向を、エッジャーロール軸心を通り圧延方向に平行な面に対し平面視で10°以上反圧延材側とすることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施態様について具体的に説明する。
上述したように、エッジャーは熱間粗圧延機の前面に設ける必要があるため、その部分には冷却ノズルヘッダーから噴射された冷却水を水切りするためのワイパー設備を設置する余裕がないのが普通である。だからと言って、そのワイパー設備を設けることなしに、単に潤滑油を塗布するというだけでは、潤滑油が冷却水によって洗い流され、焼付き防止に有効に寄与し得ないことになる。この問題を解決するためには、エッジャーロールへの冷却水の噴射位置をできるだけロール噛み込み部から遠ざけるとともに、潤滑油の塗布位置をできるだけロール噛み込み部に近づけ、油の流失を防ぐことが望ましいと考えられる。
【0012】
しかし、冷却水の噴射位置をロール噛み込み部から遠ざけるということは、冷却水のノズル位置をエッジャーの出側に配置することが望ましい。しかし、粗圧延機の前方に配置されたエッジャーにおいては、このような配置は実質上困難である。したがって、冷却水のノズル位置は、エッジャーの入側に配置することを前提とした潤滑圧延技術が必要とされる。
【0013】
(実験1)
そこで、発明者らは、エッジャーに潤滑圧延の実験設備を取り付け、潤滑油のノズルヘッダーを、エッジャー入側でかつロール軸心を通り圧延方向に平行な面上に配置し、ヘッダーとロール表面との間の距離を200mm、噴射圧力を0.3MPaとし、ヘッダーからの噴射角αを0〜30度に種々に変化して圧延を行い、エッジャーロールつば部への潤滑油の付着状況を比較する実験を行った。一方、冷却水は、ノズルヘッダーとロール表面との間の距離を200mm、冷却水の噴射角βを0〜40度に変化させた。ここで、上記噴射角αとは、図1に示すように、平面視した場合、ヘッダーから噴射される流体が圧延方向と平行な面となす角度をいい、圧延方向からロールの回転の方向を+(プラス)と定義する。また入射角βとは、平面視した場合、ヘッダーから噴射される流体が圧延方向と平行な面となす角度をいい、圧延方向からロールの回転と反対の方向を+(プラス)と定義する。
【0014】
この実験の結果を図2に示す。なお、潤滑油の付着状況は、ロールつば面を目視観察し、下記の基準で評価を行った。
<潤滑油付着状況の評価基準>
○:ロールに焼付き無し、つば面に油膜ありかつロール地肌見えず
△:ロールに焼付き無し、つば面の油膜薄く、部分的にロール地肌露出
×:ロールに焼付き有り、つば面に油膜無し
【0015】
図2より、潤滑油の噴射角αが10〜20度かつ冷却水の噴射角βが10度以上の範囲で最も、潤滑油の付着効率が良好であることが判明した。この理由は次のように考えられる。すなわち、潤滑油の噴射角αが小さ過ぎる場合、ノズルから噴射される潤滑油はある程度の広がり角をもっているため、一部は冷却水が完全に水切りされていない部分まで噴射され、洗い流されて付着効率が低下する。逆に、噴射角αが大きすぎると、ロール表面に当たる角度(図1中のγ)が大きくり、エマルジョン中の潤滑油のロール表面への付着効率が低下するためと考えられる。一方、冷却水は、噴射角βの角度が小さい場合は、水切れ性が悪化して、潤滑油の噴射域まで冷却水が残る結果、潤滑油が洗い流されるために付着効率が劣化するためと考えられる。しかし、β角が大きすぎると冷却水がロール表面に当たる角度(図1中のδ)が大きくなり、ロールの冷却効率が劣化する。このため、噴射角βは30度以内に制限するのが好ましい。
【0016】
(実験2)
次に、発明者らは、ノズルヘッダーとロール表面間距離およびヘッダー圧力が潤滑油の付着効率に及ぼすの影響についての実験も行った。この実験では、上記実験1で、付着効率が良好であった、潤滑油の噴射角α=15度、冷却水の噴射角β=15度の条件において、ヘッダー圧力およびヘッダーとロールとのロール表面との距離を変化させて、つば面への潤滑油の付着状況を観察した。
【0017】
この実験の結果を図3に示した。潤滑圧延の評価は、上記実験と同じ方法で行った。この図から、ヘッダー圧力すなわちヘッダーから潤滑油を噴射する圧力は高いほど、またヘッダー−ロール間距離は近いほど、ロールへの潤滑油の付着効率が上がることがわかった。そして良好な付着効率を得るためには、ヘッダー−ロール間距離は300mm以下、ヘッダー圧力は0.2MPa以上とすることが好ましく、より好ましくは、ヘッダー−ロール間距離は200mm以下、ヘッダー圧力は0.3MPa以上とするのがよい。
【0018】
なお、上記実験では、潤滑油のノズルヘッダーの設置位置は、エッジャー入側でかつエッジャーロールの軸心を通り、圧延方向に平行な面上に設置した。しかし、本発明では、ノズルの設置位置は、特にこの面上に限定する必要はなく、潤滑油のノズルヘッダーと冷却水のノズルヘッダーが重なることにより設置が困難となるような場合には、上記面から圧延材側にロール径の25%、反圧延材側にロール径の75%の範囲内であれば移動することが可能である。また、冷却水のノズルヘッダーの場合も同様であり、上記面から反圧延材側にロール径の25%、圧延材側にロール径の75%の範囲内であれば移動可能である。
【0019】
また、潤滑油の付着効率に及ぼすヘッダー−ロール間距離やヘッダー圧力の影響は、上記の実験で調べた以外の因子、例えば、潤滑油の噴射流量や潤滑油の濃度、エマルジョンの粒度分布のほか、潤滑油の特性(成分、ケン化価)等によっても変化するため、一概に規定することはできないが、上記の条件は、ほとんどの条件に適用できる。
【0020】
また、上記実験では、冷却水のノズルの設置する位置は、エッジャー入側を前提として検討を行った。しかし、前述したように、冷却水のノズルは、水切り性の点からはできるだけロール噛み込み部から遠ざけることが望ましい。したがって、設置スペースがあれば、エッジャー入側より出側に設置することが望ましい。この場合も、スペースが許す限り、上記噴射角βは10〜30度の範囲に収めることが望ましい。また、設置スペースがあれば、水切りワイパーを併用することはもちろん拒むものではない。
【0021】
【実施例】
(実施例)
実機の熱間圧延機の粗圧延機前面に設置されたエッジャーに、潤滑圧延設備を設置し、潤滑圧延導入前後のエッジヘゲの発生状況を調査した。潤滑圧延の実験は、表1に示した2条件で行った。なお、潤滑油を噴射するノズルヘッダーは、エッジャーのロール軸心を通りかつ圧延方向に平行な面上に、ヘッダー−ロール間距離が200mmとなるように設置した。また、潤滑油はHB-19KCA(クェーカーケミカル社製合成エステル油、ケン化価:170)を用い、濃度0.5〜2%のエマルジョンとしてロールつば部に噴射した。一方、冷却水は、ノズルヘッダーを、潤滑油と同じ面上に、高さを変えて、ヘッダー−ロール間距離を200mm位置に、噴射角βを一定の15度として設置した。
【0022】
【表1】
【0023】
圧延した熱延鋼帯について、酸洗設備出側で裏面点検を実施し、コイルエッジに1箇所以上のヘゲが確認されたコイルの発生率(発生コイル数/調査コイル数×100%)を調査し、結果を図4に示した。潤滑圧延の導入により、裏面エッジヘゲが確認されたコイルの発生率が低減している。さらに、潤滑圧延条件の適正化により、不良率は大幅に低下している。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、エッジャーロールへの潤滑油の供給が効率的に行われるので、ロールつば部との焼付きを有効に防止することができる。その結果、熱延鋼帯の裏面エッジヘゲを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 エッジャーロールへの潤滑油、冷却水の噴射状況を示した模式図である。
【図2】 潤滑油の噴射角αおよび冷却水の噴射角βが潤滑油の付着状態に及ぼす影響を示した図である。
【図3】 潤滑油ノズルのヘッダー−ロール間距離およびヘッダー圧力が潤滑油の付着状態に及ぼす影響を示した図である。
【図4】 ヘゲ発生コイル率に及ぼす潤滑圧延の効果を示した図である。
Claims (2)
- 熱間圧延においてエッジャーロールにより幅圧下するにあたり、該エッジャーロールを冷却水で冷却する際のエッジャーロールへの冷却水の吹き付け位置は、エッジャーロール軸心を通りかつ圧延方向に平行な面よりも反圧延材側とすると共に、該エッジャーロールのつば部に潤滑油を吹き付けて潤滑圧延する際のエッジャーロールのつば部への潤滑油の吹き付け位置は、エッジャーロール入側でかつエッジャーロール軸心を通り圧延方向に平行な面よりも圧延材側とすることを特徴とする熱間圧延における幅圧下方法。
- 上記潤滑油の吹き付け方向は、エッジャーロール軸心を通り圧延方向に平行な面に対し平面視で10〜20°圧延材側とし、かつ、上記冷却水の吹き付け方向は、エッジャーロール軸心を通り圧延方向に平行な面に対し平面視で10°以上反圧延材側とすることを特徴とする請求項1に記載の熱間圧延における幅圧下方法。
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