JP3529100B2 - ミクロン以下の大きさをもつ遷移金属の炭窒化物の製造法 - Google Patents

ミクロン以下の大きさをもつ遷移金属の炭窒化物の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 本発明は遷移金属の炭窒化物の製造法に関する。
遷移金属の窒化物または炭窒化物、例えばTiNおよび
炭窒化チタンタングステンは、高強度、高い硬度、良好
な耐摩耗性、高い融点または分解温度、および腐食耐性
を含む性質を有している。これらの性質のために、これ
らの材料は多くの用途、例えばダイス型、切削工具、耐
摩耗性部材、金属補強材、電気抵抗および研磨用材料と
して使用される。
遷移金属の窒化物または炭窒化物の製造には3通りの
一般的方法が知られている。第1の方法は遷移金属また
は水素化物を直接炭化/窒素化する方法である。この方
法は完結するのに長い反応時間を要し、強く凝集した粉
末を生じる。細かい粉末を得るためには一般に長期間に
亙る粉砕が必要である。従って、典型的には粉砕の際に
導入される不純物を粉末から化学的に(例えば酸で洗滌
して)除去する。
第2の方法は、窒素、および随時炭素を含む雰囲気中
においてハロゲン化物、例えばTiCl4をガス状で熱分解
する方法である。この方法は、コストおよびその操作性
のために、これまで工業的には使用されていない。
第3の方法は、窒素含有雰囲気中において高温(1700
〜2100℃)で炭素を存在させ遷移金属の酸化物を炭素を
用いて加熱還元する方法である。典型的に反応時間は長
く(1〜20時間)、生じる粉末は一般に不均一で大きな
粒径をもっている。従ってもっと均一で小さい粒子を得
るためには、この粉末もまた典型的には上記のように粉
砕および精製を必要とする。
最近細かい遷移金属の窒化物および炭窒化物がつくら
れたが、これは上記のように遷移金属の窒化物を製造す
る上で幾つかの問題を提起している。R.Koc等(米国特
許5,417,952号)は炭化チタン、窒化チタン、または炭
窒化チタンを合成する炭素加熱法を記載している。この
方法では、原料の粒径が極めて細かいチタン塩またはチ
タン酸化物の存在下において、熱的に分解可能な炭化水
素ガスをクラッキングさせ、該粒子の上に炭素の均一な
被膜をつくる。次いで被膜された粒子を窒素を含むまた
は不活性雰囲気中において反応させ、細かい粒子の窒化
チタン、炭化チタンまたは炭窒化チタンをつくる。この
反応は温度1200〜1600℃において1〜2時間で行われ
る。
同様にGries等(米国特許5,476,530号)は、表面積12
m2/g(即ち等価な球の直径が0.095μm)の酸化チタン
を窒素/アルゴン雰囲気を流しながら炭素原料と反応さ
せる方法を記載している。炭素−炭化チタン混合物を湿
った条件下でつくり、反応成分が極めて激しく接触し均
一に分布するようにする。水溶液中で混合すると、酸化
物の粒子は細かい炭素の粒状物(45m2/g)で被覆され、
乾燥すると蔗糖のような可溶化された有機炭素性材料に
なる。次にこの混合物を乾燥し、粘稠なペーストにした
後さらに乾燥し、次いでこのなお湿った混合物をグラフ
ァイトの炉の中で1500〜1700℃において30〜180分の間
反応させる。この炭窒化物を乾燥状態で4時間ボールミ
ルで処理し、平均粒径が直径で0.7μmの炭窒化物粉末
を得る。
望ましいことは、(1)酸化物の粒子を炭素含有材料
で被覆せずに、或いは(2)極めて細かい遷移金属酸化
物の反応原料粉末を使わずに、細かい粒径をもった遷移
金属の炭窒化物を製造する方法が提供されることであ
る。
本発明によれば、上記のような用途に使用されるミク
ロン以下の粒径をもった遷移金属の炭窒化物を製造する
経済的で迅速且つ効率的な方法が提供される。
本発明の目的は、(a)遷移金属がタングステン、チ
タン、タンタル、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウ
ム、バナジン、ニオブおよびクロムから成る群から選ば
れる遷移金属酸化物原料、および(b)炭素原料を混合
して粒状混合物をつくり、 該粒状混合物を、窒素を含む非酸化性のガス中にい
て、該粒状混合物の炭素加熱還元に有利になるような高
温まで毎秒100K〜100,000,000Kの速度で加熱することに
より遷移金属酸化物原料の炭素加熱還元を行い、 該遷移金属酸化物原料が(i)遷移金属の炭窒化物お
よび(ii)遷移金属炭窒化物前駆体から成る群より選ば
れる少なくとも1種の生成物に変わるのに十分な滞在時
間の間該粒状混合物を該高温に保つことを特徴とする粒
状セラミックスの製造法を提供することである。
本発明を実施する場合、或る種の遷移金属炭窒化物は
二工程法で製造することができる。工程1においては、
金属酸化物に対し炭素による迅速加熱還元を行い、上記
のような生成物または前駆体をつくる。工程2において
は、工程1で得られた生成物について非酸化性雰囲気中
で低温において2回目の加熱を行い(仕上げ工程)、ミ
クロン以下の遷移金属の炭窒化物をつくる。二工程法は
すべての場合で必要ではないが、必要なまたは望ましい
場合には使用することができる。
遷移金属の炭窒化物 遷移金属の炭窒化物は単一の遷移金属の炭窒化物かま
たは固溶体になった遷移金属の炭窒化物である。遷移金
属の炭窒化物は式 MaM'bM"(1-a-b)(C(1-x)Nx で与えることができる。ここでMはTi、ZrまたはHf;M'
はV、NbまたはTa;M"はCr、MoまたはWであり、aの範
囲は0〜1、bの範囲は0から1であって、(a+b)
は1より小さいか1に等しく、xは0.02〜0.95の範囲に
あり、zは0.9〜2の範囲にある。Mは好ましくはTiで
ある。M'は好ましくはTaである。M"は好ましくはWであ
る。好ましくはxは少なくとも0.2、さらに好ましくは
少なくとも0.4、最も好ましくは少なくとも0.6である。
zは好ましくは最高1.9、さらに好ましくは最高1.7であ
る。
遷移金属の炭窒化物は粉末の全重量の少なくとも90重
量%の純度をもち、好ましくは遷移金属の炭窒化物の純
度は少なくとも98重量%(ここではこれを「純粋な遷移
金属の炭窒化物」という)、最も好ましくは少なくとも
99重量%(ここではこれを「極めて純粋な遷移金属の炭
窒化物」という)である。本明細書においては、純度が
90%より低いが少なくとも50%である迅速炭素加熱還元
法(rapid carbothermal reduction)でつくられた材
料は「遷移金属の炭窒化物前駆体」と呼ぶことにする。
炭窒化物の中に存在し得る不純物には、未反応の遷移金
属酸化物、1種またはそれ以上の上記遷移金属、遊離炭
素および上記の遷移金属を含まない他の化合物が含まれ
る。このような他の化合物は一般に反応原料(例えば炭
素原料および遷移金属酸化物)中に含まれる不純物であ
る。一般にこれらの他の化合物は前駆体または炭窒化物
の最高3重量%の量で存在している。
遷移金属炭窒化物材料の製造 本発明の遷移金属の炭窒化物は遷移金属酸化物原料を
迅速炭素加熱還元法で処理して製造することが好まし
い。炭窒化物を製造する場合、粒状混合物がつくられ
る。この粒状混合物は炭素原料および遷移金属酸化物原
料の混合物である。この混合物はV−配合、撹拌、超音
波撹拌および摩砕のような公知方法でつくることができ
る。この粒状混合物は乾燥状態または液中で混合するこ
とができる。この粒状混合物は乾式混合法で製造するこ
とが好ましい。好ましくはこの混合物は炭素および酸化
物源を互いに摩砕してつくられる。代表的な摩砕法には
ジェットミル法、または摩砕媒体を用いる摩砕法(例え
ばボールミル法、撹拌ミル法、および遊星ミル法)が含
まれる。媒体を用いて摩砕を行う場合、摩砕媒体は好ま
しくは接合した炭化タングステン−コバルト摩砕媒体
(即ちボール)である。摩砕は乾式で行うことが好まし
い。媒体を用いて摩砕する場合、ボールミル法が好適で
ある。
遷移金属酸化物原料の遷移金属はタングステン、チタ
ン、タンタル、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウ
ム、バナジン、ニオブおよびクロムから成る群から選ば
れる少なくとも1種の遷移金属である。これらの金属酸
化物源は金属酸化物かまたは分解して金属酸化物になる
化合物、例えばメタタングステン酸またはパラタングス
テン酸アンモニウムである。好ましくはこれらの金属酸
化物源はモノ−遷移金属酸化物、例えばタングステン、
チタン、タンタル、モリブデン、ジルコニウム、ハフニ
ウム、バナジン、ニオブおよびクロムの酸化物である。
遷移金属の固溶体炭窒化物を製造する場合には、酸化物
の混合物または2種またはそれ以上の遷移金属を含む単
一の冶金学的合金酸化物を使用することができる。固溶
体の炭窒化物を製造する場合、モノ−遷移金属酸化物の
混合物を使用することが好ましい。
固溶体の炭窒化物の生成を抑制する低温共熔酸化物が
生じる可能性を避けるためには、実質的に非酸化物性の
反応原料の遷移金属化合物を使用することが有利であ
る。低温共熔酸化物は、ゆっくりとしか反応しない酸化
物の大きな凝集物を生成することにより反応を抑制す
る。遷移金属化合物は、低温共熔酸化物相の生成を実質
的に避けながら、粒状混合物の遷移金属酸化物と固溶体
の遷移金属炭窒化物をつくり得る化合物である。実質的
に非酸化物性の遷移金属化合物の代表的な例としては、
炭化物、窒化物、炭窒化物、および上記の遷移金属の金
属が含まれる。この化合物にはまた上記の炭窒化物前駆
体が含まれる。例えば固溶体のタングステン−チタン炭
窒化物をつくる場合、先ず迅速炭素加熱還元法によりTi
O2を炭素と反応させて炭化物または炭窒化物の生成物を
つくり、次いでこの生成物をWO3および炭素と混合して
粒状混合物をつくり、次いでこれを本明細書記載の方法
で反応させて遷移金属の固溶体炭窒化物をつくる。
金属酸化物原料は好ましくは金属の単純酸化物、例え
ばWO3、二酸化チタン(TiO2)および五酸化タンタル(T
a2O5)を含んでいる。これらの酸化物は好ましくは平均
粒径が直径として最高25μmである。さらに好ましくは
平均粒径は最高20μmであり、それよりも好ましくは平
均粒径が最高15μmであり、最も好ましくは平均粒径は
最高10μmであり、その下限は好ましくは少なくとも0.
25μm、さらに好ましくは少なくとも0.5μm、それよ
りも好ましくは少なくとも1.0μm、最も好ましくは少
なくとも1.5μmである。直径は等価な球の直径であ
る。粒子の99重量%以上の直径が44μmよりも小さい
(即ち粒子の99%が325メッシュを通過する)ことが好
ましい。
金属酸化物は無定形または結晶性であることができ、
純度は好ましくは少なくとも95重量%である。純度はさ
らに好ましくは少なくとも98重量%、最も好ましくは少
なくとも99重量%である。
炭素原料は粒子状の炭素、有機材料またはその組み合
わせである。好ましくは炭素原料は粒子状の炭素、例え
ばカーボンブラック、グラファイト、または室温で固体
粉末である有機材料である。有機材料は分解すると好ま
しくは炭素を生じる。特に好適な炭素原料はアセチレン
・カーボンブラック、例えばSHAWINIANの商品名でChevr
on Chemical社から市販されているアセチレン・カーボ
ンブラックである。有機材料の中にはフェノール−フォ
ルムアルデヒド樹脂、硬化したエポキシ、メラミン、交
叉結合したポリスチレン、セルロース性重合体および炭
水化物(例えば蔗糖および澱粉)が含まれる。炭素原料
が粒子状の炭素の場合、粒子の大きさは遷移金属酸化物
の粒径よりも小さいことが好ましい。
粒状混合物は、遷移金属酸化物原料の実質的にすべて
の酸素と反応して一酸化炭素になり得る量の炭素を少な
くとも含んでいるべきであり、最高の量としては過剰の
遊離炭素を有する炭窒化物、炭化物生成物またはそれら
の組み合わせを生じない量の炭素を含んでいることこと
が望ましい。例えば、粒子状混合物の量は、好ましくは
金属酸化物の酸素を還元して「CO」にする(例えばWO3
+3C=W+CO)の少なくとも必要な量から、最高値とし
ては好ましくは不活性雰囲気中で最も安定な遷移金属の
炭化物を生じる(例えばWO3+4C=WC+3CO)のに必要な
理論量の炭素に亙る範囲の量である。例えば摩砕の際の
汚染による炭素の損失を補うために僅かに過剰な量の炭
素を用いることができる。炭素の量は好ましくは不活性
雰囲気中で(即ち窒素または水素のような反応性化学種
が存在しない場合に)最も安定な遷移金属の炭化物を生
じるのに必要な量である。この場合遷移金属の最も安定
な炭化物は、炭化一タングステン(WC)、炭化一チタン
(TiC)、炭化一タンタル(TaC)、炭化一バナジン(V
C)、炭化一ハフニウム(HfC)、炭化一ニオブ(Nb
C)、炭化一ジルコニウム(ZrC)、炭化二モリブデン
(Mo2C)および二炭化三クロム(Cr3C2)である。
粒状混合物をつくった後、この粒状混合物の粒子を、
窒素を含む非酸化性ガスの存在下において迅速に且つ好
ましくは個別的に、粒状混合物の遷移金属の炭素加熱還
元が熱力学的に有利になる高温まで炭素を加えて急速に
加熱する。
この高温は十分に高く、炭素加熱還元反応が熱力学的
に有利になるような温度でなければならない。この温度
はまた意図する反応生成物の融点よりも低い温度でなけ
ればならない。迅速な炭素加熱工程の高温の最低値は、
遷移金属酸化物の炭素加熱還元反応のギッブスの自由エ
ネルギーが上記の最も安定な遷移金属炭化物に対して負
である温度に対応する温度である。例えばタングステン
を含む炭窒化物を生成する場合、反応温度は、水素また
は窒素のようなガス状の反応種が存在しない時、炭化一
タングステンが熱力学的に有利であるような温度であ
る。少なくとも1673Kの温度が有利であると考えられ、1
823K〜2673Kの温度が好適である。加熱速度を毎秒10,00
0K〜100,000,000Kにした場合、1873K〜2423Kの反応温度
が満足すべき結果を与える。遷移金属の炭窒化物を生成
する熱力学的に計算された最低の反応温度は次のとおり
である。炭窒化タングステン 950K;炭窒化チタン 155
5;炭窒化タンタル 1381K;炭窒化バナジン 932K;炭窒
化ハフニウム 1934K;炭窒化ニオブ 1228K;炭窒化ジル
コニウム 1930K;炭窒化モリブデン 742K;および炭窒
化クロム 1383K。
窒素を含んだ非酸化性のガスは、上記の熱力学的に有
利な温度またはそれ以上において遷移金属の炭窒化物ま
たは炭窒化物前駆体を実質的に酸化することができない
ガスであり、またこのガスは上記の反応条件下において
遷移金属の炭窒化物または炭窒化物前駆体を生じるのに
十分な量の窒素を含んでいる。窒素を含んだ非酸化性の
ガスは窒素、または不活性ガスと混合した窒素であり、
ここで不活性ガスは例えばHe、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnまた
はそれらの混合物である。窒素の量は窒素を含む非酸化
性ガスの容積の好ましくは少なくとも5%、さらに好ま
しくは少なくとも10%、もっと好ましくは少なくとも50
%であり、窒素を含む非酸化性ガスは窒素であることが
最も好ましい。窒素を含む非酸化性ガスはまた水素また
は炭素を含む還元性のガスと混合することができる。炭
素を含む還元性ガスは上記の熱力学的に有利な温度また
はそれ以上において遷移金属酸化物を還元するか、また
は遷移金属酸化物を炭化し得るガスである。炭素を含む
還元性ガスの例にはメタン、エタンおよび一酸化炭素が
含まれる。
上記の高温、滞在時間および加熱速度は、それらの条
件が組み合わされて遷移金属の炭窒化物または炭窒化物
前駆体を生じるように選ばなければならない。
粒状混合物の温度を室温から高温までに上昇させる加
熱速度は毎秒少なくとも100〜10,000Kの程度であること
が好ましく、毎秒10,000〜100,000,000Kの程度の範囲で
あることが最適である。
部分的には、迅速炭素加熱還元工程中での粒状混合物
の高温における滞在時間は加熱速度およびその高温に依
存している。温度および加熱速度に無関係に、滞在時間
は粒状混合物の遷移金属酸化物の少なくとも大部分(即
ち50重量%より多く)を還元するのに十分な長さでなけ
ればならない。滞在時間は加熱方法、加熱速度、反応温
度、および所望の最終的な粒径に依存して0.1秒〜10分
であることが好適である。反応温度が1823Kまたはそれ
以上の場合、加熱速度を10,000〜100,000,000Kとした
時、滞在時間は0.2〜10秒であることが好ましい。加熱
速度がこれよりも速い場合、滞在時間が実質的に10秒よ
りも長いと、粒状生成物ではなくて望ましくない焼結し
た凝集物が生じる。しかし反応温度、反応時間および加
熱速度の組み合わせをどのように選んでも、粒状混合物
を少なくとも1種の遷移金属の炭窒化物から主として成
る生成物に変えることが適切である。
高温、滞在時間および加熱速度の三つの因子によっ
て、得られる粒子の大きさも制御される。これらの因子
は金属炭窒化物を生じる造核速度、および生成した後の
これらの粒子の成長速度に影響を及ぼすことによって上
記の制御を行う。例えば粒子は形がほぼ球形であり、原
料から生成物への変化が比較的一定の容積比で起こると
仮定すると、粒子の成長速度は滞在時間の三乗根に比例
するであろう。得られる金属炭窒化物粉末の粒径を最低
にするためには、粒子の造核速度が粒子の成長速度より
も速く、好ましくは著しく速くなるように、高温、加熱
速度および滞在時間を選ばなければならない。
粒状混合物の酸化物に対し迅速炭素加熱還元を行う好適
な方法 遷移金属酸化物原料および炭素原料の粒状混合物を迅
速に加熱するには二つの好適な方法がある。「落下」法
として知られている一つの方法では、粒状混合物を既に
加熱した坩堝の中に落下させ、粒状混合物を毎秒100K〜
10,000Kの速度で加熱する。「飛沫捕捉」法と呼ばれる
第2の方法では、粒状混合物を非酸化性雰囲気の中に飛
沫にして浮遊させ反応温度に保たれた垂直の反応炉の中
に捕捉して導入する。この方法は米国特許5,110,565号
に記載されており、この特許は参考のために添付されて
いる。飛沫捕捉法における加熱速度は毎秒10,000K〜10
0,000,000Kである。A.W.Weimer等はAIChE Journal、39
巻、3号(1993年3月)の493〜503頁の「Kinetics of
Carbothermal reduction Synthesis of Beta Si
licon Carbide」と題する論文中で加熱速度の決定法を
報告している。
落下法においては、誘導炉を所望の温度に加熱し、上
記の窒素を含む非酸化性ガスを流しながら30分間熱的な
平衡に保つ。粒状混合物の試料を炉の加熱区域のグラフ
ァイトの坩堝の中に落下させる。反応副生物である一酸
化炭素(CO)の坩堝の中における濃度を時間の関数とし
て測定して反応の程度を監視する。CO濃度が反応前の値
まで低下して戻ったら、反応は終了したと考える。
炭窒化物に変わった後、粒子の凝集と粒子の成長を最
低限度に抑制するのに十分低い温度までできるだけ速く
試料を冷却する。落下法は飛沫捕捉法の結果を予測する
試験として使用することができる。
飛沫捕捉法においては、垂直の反応管状炉の中におけ
る混合物の平均滞在時間は0.2秒〜1分、好ましくは0.2
〜10秒である。加熱速度は落下法の方が遅いから、落下
法における典型的な滞在時間は、飛沫捕捉法の場合のよ
うに秒単位ではなく、0.5〜10分、好ましくは0.5〜5
分、さらに好ましくは0.5〜3分である。
飛沫捕捉法では上記の米国特許5,110,565号に記載さ
れたグラファイトの垂直管状炉を使用する。粒状混合物
を供給ホッパーに入れ、窒素を含む非酸化性ガスまたは
次節に記載するような非酸化性ガスを流し、粉末の混合
物を飛沫にして捕捉浮遊させ、塵状の雲霧として炉の反
応室に送り込む。この粉末または粒状混合物は反応室の
中で毎秒10,000K〜100,000,000Kの速度で直接加熱され
る。この場合炉の中における粉末の滞在時間は秒の単位
である。炉の中を流れるガスにより粉末は反応室の高温
区域から水冷式のステンレス鋼製のジャケットへ運ばれ
る。反応した粉末はこのジャケットにより283Kよりも低
い温度に冷却される。飛沫捕捉法は落下法に比べ粒径の
小さい粒子を生じるから落下法よりも好適であり、実用
的な大量生産法である。
非酸化性のガスは、遷移金属の炭窒化物または炭窒化
物前駆体の生成に熱力学的に有利な温度において遷移金
属の炭窒化物または炭窒化物前駆体を実質的に酸化でき
ないガスであり、このようなガスは実質的に窒素を含ん
でいない。代表的な例は不活性ガス(例えばHe、Ne、A
r、Kr、Xe、Rn)であり、これらは上記のような水素ま
たは炭素を含む還元性のガスと混合することができる。
米国特許5,110,565号記載の反応器は主要な四つの構
成部分から成っている。即ち冷却された反応原料輸送部
材、該輸送部材により供給を受ける反応室、反応室を加
熱する加熱装置、および反応室により供給を受ける冷却
室である。
輸送部材は好ましくは環状のガス流の空間の内部に配
置された導管であり、粒状混合物を反応室へ輸送する役
目をする。輸送部材は、粒状混合物が輸送部材の内部ま
たはその出口の近くのいずれかで凝集しないように、金
属酸化物の融点より低い温度に適切に保たれる。従って
輸送部材の温度は実質的にすべての粒状混合物が分離し
た粒子として反応室の中に入るのに十分な温度でなけれ
ばならない。
粒状混合物は粉末供給機構によって適切な方法で輸送
部材の中に供給される。粒状粉末供給機構は、それが粒
状混合物の計量されたまたは制御された流れを輸送部材
へと流す限り、厳密な規定はない。この供給機構は単一
スクリュー供給器、二重スクリュー供給器、振動供給
器、回転バルブ供給器、または通常の構成をもった他の
供給器であることができる。
反応器の設計および反応器の容積が許容される最大粒
子供給速度を決定する。例えば、単に例示のためである
が、反応区域の容積が2.16立方フィーと(0.06m3)の場
合、最大供給速度は毎分0.02〜0.5kg(kgm)である。反
応区域の容積が異なった反応器に対する許容供給速度
は、余分な実験を行うことなく容易に決定することがで
きる。
窒素を含む非酸化性のガスは幾つかの方法で供給する
ことができる。即ち大部分は輸送部材を通して直接供給
し、少量部分は反応原料の輸送部材の周辺にあるガス流
の空間を介して反応室に間接的に供給するか、または冷
却区域またはその組み合わせを含む反応室の中に注入す
ることができる。上記方法のどれか一つの方法で供給さ
れたガスは、ガス流の一つが窒素を含む非酸化性のガス
である限り、上記の非酸化性ガスであることができる。
非酸性性のガスまたは窒素を含む非酸化性のガスは、
粒状混合物を捕捉し粒状混合物を反応室の中に運び込む
のに十分な圧力と流速で輸送部材の中に供給される。即
ち流速は反応室における粒状混合物の滞在時間を決定す
る。例示のために輸送部材の中のガス流および輸送部材
のに周辺部の周りを通って流れるガス流は、反応区域の
容積が2.16立方フィート(0.06m3)の反応器に対しては
それぞれ少なくとも85および28標準リットル/分(si
m)であることが好ましい。使用される流速も反応温度
と反応原料の供給速度に依存する。ガス流空間から反応
室に流れ込むガスは、粒状混合物が輸送部材の出口との
接合部付近で反応室の表面に接触するのを最低限度に抑
制するかまたは実質的に防止する。これらの表面は混合
物の融合を促進するような温度にあるから、このような
接触が起こることは望ましくない。このような接触が起
こると反応器が詰まり操作を終らせなければならない可
能性がある。
粒状混合物の飛沫が捕捉された流れは十分に分散した
塵埃の煙霧に似た形で反応区域に入る。この混合物の粒
子はガスの対流および伝導による熱伝導並びに加熱され
た反応区域を規定する壁からの放射によって瞬間的に加
熱される。しかし粒径が1000μmよりも小さい粒子に対
しては、粒子に対する加熱は放射に比べ、ガス/粒子の
伝導/対流過程の方が優勢である。粒子内部の熱伝導は
表面の加熱に比べ極端に速いから、粒子は表面加熱特性
によって質量に対し適切に記述される加熱速度と等温的
は関係をもっている。この根拠のために、好適な加熱速
度として毎秒10,000Kまたはそれ以上の値が計算され
る。反応区域の内部の実際の温度は光学的温度測定法ま
たは他の適当な方法によって決定することができる。
粒状混合物の飛沫を捕捉してこれを反応区域の中に流
し込むガス流は、また混合した粒子前駆体反応区域から
を運び出す。捕捉された塵埃状の煙霧は反応区域を出た
後殆ど同時に冷却区域に入ることが有利である。冷却区
域は混合した前駆体をその反応温度よりも低い温度に急
冷する、即ち迅速に冷却する。冷却区域内部の冷却速度
は反応区域内部の加熱速度にほぼ等しいことが有利であ
る。冷却区域の壁は捕捉用のガスを冷却し、迅速炭素加
熱還元法の生成物によって保持されている熱量を急速に
除去する。この急速な冷却がない場合には粒子との反応
は時間がかかり、生成物中に望ましくない凝集物または
大きな粒子を生成するであろう。使用される実際の冷却
時間は粒子の大きさ、冷却区域の物理的な形および出口
ガス流の速度のような因子に依存する。
冷却された粒子は適当な方法で捕捉され、通常の技術
により処理される。遷移金属の炭窒化物前駆体の粒子を
つくる場合には、これらの粒子は直径が0μm以上、1.
0μm以下であることが有利であり、典型的には直径が
0.5μm以下、好ましくは0.01〜0.3μmであり、0.05〜
0.2μmが最適値である。
これら二つの粒子加熱法は、試験の結果粒状混合物を
炭素とともに迅速に加熱する方法に対して有効であるこ
とが判っているが、1μm以下の適当な遷移金属炭窒化
物および1μm以下の固溶体の遷移金属炭窒化物を製造
するのに使用されるどのような迅速加熱法でも、加熱の
迅速性が維持される限り使用することができる。
炭窒化物を製造するための炭化および窒化の可能な第2
段階 迅速炭素加熱還元法を用い、タングステンを含むのの
ような或る種の遷移金属の炭窒化物を直接製造すること
は困難である。そのため、タングステンの炭窒化物をつ
く場合には、炭化および/または窒化の第2段階(即ち
仕上げ段階)を用いることが好ましい。これとは対照的
に、チタンを含む炭窒化物は、タングステンが存在しな
い場合、単一の迅速炭素加熱還元法だけで製造できる
が、この場合も必要に応じ仕上げ段階を用いて炭窒化
物、純粋な炭窒化物、極めて純粋な炭窒化物、および異
なった化学量論的組成をもった炭窒化物から成る群から
選ばれる所望の遷移金属の炭窒化物を製造することがで
きる。
二段階工程(迅速炭素加熱還元法の後に仕上げ段階を
行う工程)を実施する場合、工程1で飛沫捕捉法を、工
程2で落下法を容易に使用することができる。工程2に
おける落下法の代わりの好適な方法は、回転炉を使用し
て遷移金属の炭窒化物、純粋な遷移金属炭窒化物または
極めて純粋な遷移金属炭窒化物をつくるのに十分な加熱
を行い滞在時間をとる方法である。
本発明の迅速炭素加熱還元工程からの生成物を捕集し
た後、この生成物を炭素加熱還元法、水素還元法、炭
化、窒化またはこれらの組み合わせを含む仕上げ段階に
おいて、最初の反応(即ち迅速炭素加熱還元法)の高温
よりも低い温度でさらに反応させることにより、所望の
化学量論的組成をもつ炭窒化物、純粋な炭窒化物または
極めて純粋な遷移金属の炭窒化物を得ることができる。
最初の反応の生成物は反応が実質的に完了した生成物で
あるが、純粋なまたは極めて純粋な炭窒化物、または化
学量論的組成の異なった炭窒化物が望ましいこともあ
る。
仕上げ段階においては、粒状混合物の遷移金属酸化物
原料に対し炭素加熱還元を行って得られる生成物を、仕
上げ雰囲気において所望の1μm以下の炭窒化物が生成
するのに十分な時間の間、迅速炭素加熱還元工程の温度
よりも低い仕上げ温度に加熱する。仕上げ雰囲気は窒
素、水素、前記の炭素を含む還元性ガス、前記の不活性
ガス、またはこれらの混合物であることができる。この
雰囲気は所望の生成物に基づいて選ばれる。
仕上げ段階は迅速炭素加熱還元工程により前駆体を生
成させるのに使用した温度よりも低い仕上げ温度で行わ
れるが、この前駆体を所望の1μm以下の炭窒化物に変
えるのに十分な温度で行われる。好ましくは仕上げ温度
は少なくとも1073K、さらに好ましくは少なくとも1173
K、もっと好ましくは少なくとも1273K、最も好ましくは
少なくとも1373Kであり、上限は好ましくは最高1873K、
さらに好ましくは最高1773K、もっと好ましくは最高167
3K、最も好ましくは最高1573Kである。
仕上げ段階は前駆体を所望の遷移金属炭窒化物に変え
るのに十分な時間の間、それに十分な仕上げ温度におい
て行われる。この時間は炭窒化物を適切に生成する短い
時間であることが望ましい。好ましくはこの時間は少な
くとも5分、さらに好ましくは少なくとも15分、最も好
ましくは少なくとも30分であり、上限は好ましくは最高
120分、さらに好ましくは最高90分、最も好ましくは最
高60分である。
補助的な量の固体の炭素を余分に第1段階の生成物に
加え、残留した化学的に結合している酸素を、炭素を加
えて加熱して還元し、或いは第1段階の生成物中に残留
している金属を炭化することができる。前駆体および補
助的な炭素は通常の混合装置を用いて混合することがで
きる。装置の例としてはリボン配合機、ローラミル、垂
直スクリュー混合機、V型は配合機、およびFORBERGの
登録商標で市販されているような流動化区域混合機が含
まれる。
例として、第1段階の生成物がタングステンを含む前
駆体、タングステン−モリブデンを含む前駆体、タング
ステン−チタンを含む前駆体またはタングステン−バナ
ジンを含む前駆体である場合、1473K〜1673Kの仕上げ温
度で加熱または仕上げを行うことができる。この温度を
15〜180分間保つことが望ましい。
余分な量の固体の炭素を加える際には、その量は経験
的な決定される。添加すべき固体炭素の量は仕上げ段階
の条件、例えば前駆体の特性(例えば酸素および金属の
濃度)、加熱装置、使用する非酸化性雰囲気の種類と
量、および仕上げ時間に依存する。
仕上げ段階は、前駆体または第1段階からの生成物を
動かして、或いは動かさないで(静止させて)行うこと
ができる。例えば第1段階からの生成物をグラファイト
のボートの中に入れ、上記の非酸化性雰囲気中で加熱す
る。第1段階からの生成物は該生成物または前駆体を動
かしながら加熱することが好ましい。
補助的な炭素を加えまたは加えずに前駆体を動かすに
は種々の方法を用いることができるが、前駆体をグラフ
ァイトの回転坩堝の中に入れこれを回転させた後前駆体
を振盪することが最も好適である。例えば直径20cmの坩
堝を毎分1〜10回転させ、これを用いて個別的に500gの
ロットの前駆体を、随時補助的な炭素を加えて処理す
る。加熱中前駆体を撹拌するのに適した他の装置には、
回転式カ焼機、流動化ベッド、および振動流動化ベッド
が含まれる。
下記実施例により本発明を例示する。これらの実施例
は単に例示のためのものであり、本発明の範囲を限定す
るものではない。
実施例 下記実施例において、多量とは各実施例の生成物の少
なくとも20重量%を占める量であり、次位の量とは各実
施例の生成物の20〜5重量%の範囲の量であり、少量と
は各実施例の生成物の最高5重量%の量を意味するもの
とする。
実施例 1 14.78kgのWO3、1.79kgのTa2O3、2.08kgのTiO2、およ
び3.95kgのCを、6%のCoを含む直径0.5インチ(12.7m
m)のWCの摩砕媒体400ポンドを入れた40ガロンのボール
ミルの中で1時間摩砕した。三酸化タングステン(W
O3)の平均粒径は5.2μであり、表面積は5.0m2/gであっ
て、米国デラウエア州HockessinのTACOW Trade Consu
ltants,LtdからScopino Yellow Oxideの商品名で市販
されているものである。五酸化タンタル(Ta2O5)は平
均粒径が19μmであり、表面積は0.08m2/gであって、米
国デラウエア州HockessinのTACOW Trade Consultant
s,LtdからZhuzhou−Grade−F Ta2O5の商品名で市販さ
れているものである。二酸化チタン(TiO2)は平均粒径
が13μmであり、表面積は1.4m2/gであって、Matteson
−Ridolfi社(米国ミシガン州Riverview)からKoronos
K3020の商品名で市販されているものである。カーボ
ンブラック(C)はChevelon Shawiniganのアセチレン
ブラックである。これらの粉末の表面積はQuantacrome
Autosorb 1(米国ニューヨーク州SyossetのQuantac
rome社製)を用い窒素ガス吸着法で決定した。ボールミ
ル処理を行った後、この混合物を粗い篩(8メッシュ、
2.36mm)に通して摩砕媒体を取り除いた。
反応原料粒状混合物22.0kgを米国特許5,110,565号お
よび同5,380,688号記載の型のグラファイトの垂直管式
反応炉の供給ホッパーに装荷する。この炉の管は長さが
3.35m、内径が15.2cmであった。供給ホッパーを二重ス
クリュー・ロス・イン・ウエイト供給機(twin screw
loss−in−weight feeder)により冷却された反応原
料の輸送部材に連結する。反応原料の輸送部材は内径が
1.3cmであり、反応原料の輸送部材を取巻く冷却用ジャ
ケットに水を流して約283Kの温度に保たれている。粒状
混合物を装荷した後、供給機のホッパーにアルゴンガス
を30分間流して空気を追い出し、この間反応室の外壁を
見得る位置に置かれた光学的高温計で測定して2083Kの
温度に炉を加熱する。アルゴンガスは毎分3標準立方フ
ィート(scfm)の割合で反応原料の輸送部材の中に流し
た。
次いで粒状混合物を二重スクリュー供給機により供給
機のホッパーから冷却された反応原料の輸送部材へ毎時
10kg(毎時22ポンド)の割合で供給した。アルゴンのガ
ス流は粒状混合物の飛沫を捕捉し、これを塵状の雲霧と
して反応室へ送る。粒状混合物は反応室の州で直ちに毎
秒約10,000K〜100,000,000Kの速度で加熱される。炉の
中における粒状混合物の平均滞在時間は3〜4秒であっ
た。
反応室の区域から出た後、アルゴンと一酸化炭素(炭
素加熱還元反応の際に生成)との混合ガスの流れによ
り、生成物(前駆体と呼ばれる)は水冷式のステンレス
鋼のジャケットの中に運び込まれ、生成物は急速に283K
より低い温度に冷却される。反応器の冷却区域に窒素ガ
スを約1scfmの速度で流し込み、アルゴン、一酸化炭素
および窒素の雰囲気をつくり、この中で前駆体を冷却す
る。反応器を出た後、ステンレス鋼のドラムの中に挿入
されたプラスティックスの袋の中に前駆体を捕集する。
前駆体に対して第2段階(即ち仕上げ段階)を行う。
WC/6%Coの直径12.7mmの摩砕媒体9.0kgを用い、1.6ガロ
ンのボールミル中において500gの前駆体のボールミルに
より2時間均質化する。均質化を行った後、酸素と炭素
の含量はLECO熔融燃焼装置(米国ミシガン州、St.Josep
h,Leco Corporation)で測定してそれぞれ2.36重量%
および6.71重量%であった。次に12.3gのC(Cheveron
Shawiniganのアセチレンブラック)を均質化した前駆
体に加え、この混合物をさらに2時間ボールミルで摩砕
する。前駆体/一酸化炭素の混合物を次にグラファイト
の炉の中で30分間1773Kで加熱処理する。この仕上げ処
理は95%のアルゴンおよび5%のH2の雰囲気を流しなが
ら(15cfh)行った。
仕上げ段階後、最終生成物の酸素、炭素および窒素の
含量をLECO分析で測定した。酸素の濃度は0.26重量%、
炭素は7.53重量%、窒素は0.45重量%であった。X線回
折法によって決定して、最終生成物は立方晶形の(Ti,T
a,W)固溶体の炭窒化物を含み、次位の量はWCであっ
た。走査型電子顕微鏡(SEM)を使用し112個の不規則に
選んだ粒子の測定に基づく最終生成物の結晶の大きさは
0.060±0.024μmであった。最終生成物の表面積はQuan
tacrome Autosorb 1(Quantacrome、米国ニューヨー
ク州、Syosset)を用いる窒素吸着法によって決定して
2.95m2/gであった。
実施例 2 実施例1を繰り返したが、粒状混合物の組成は5.72kg
のWO3、6.44kgのTiO2(Degussa P25)、5.53kgのTa2O5
および4.99kgのCであった。1055gの前駆体を実施例1
と同様に均質化した。本実施例のTiO2は平均粒径が0.7
μmで表面積が2.8m2/gであった。均質化した前駆体の
酸素および炭素の含量はそれぞれ4.88重量%および12.0
4重量%であった。前駆体に14.11gのCを加え、この混
合物をさらに2時間ボールミルで処理した。この前駆体
/Cの混合物を次に実施例1と同じ方法で仕上を行なった
が、仕上げ温度は1873K、仕上げ時間は15分であった。
仕上げ段階後、最終生成物の酸素、炭素および窒素の
含量はそれぞれ0.33重量%、10.89重量%および0.95重
量%であった。粉末X線回折法で決定して最終生成物は
立方晶形の(Ti,Ta,W)固溶体の炭窒化物から成り、次
位の量の成分はWCであった。最終生成物の結晶の平均の
大きさは走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて102個の不規
則に選んだ粒子を測定した結果0.063±0.017μmであっ
た。この生成物の表面積は5.78m2/gであった。
実施例 3 実施例1を繰り返したが、粒状混合物は8.05kgのW
O3、9.07kgのTiO2(Kronos K3020ではなくてDegussa
P25)および5.55kgのCであった。前記実施例と同様に
して粒状混合物をボールミルで処理し、反応させて前駆
体をつくった。500gの前駆体を均質化した。均質化した
前駆体の酸素および炭素の含量はそれぞれ4.96重量%お
よび13.33重量%と測定された。前駆体にCを加えず、
均質化した前駆体をさらに2時間ボールミルで処理し
た。次に炭素を加えない前駆体を実施例1と同じ方法で
仕上げを行なったが、仕上げ温度は1773K、仕上げ時間6
0分であり、仕上げガスは95%Ar/5%H2ではなく窒素で
あった。仕上げ条件を表1に示す。
仕上げ段階後、最終生成物の酸素、炭素および窒素の
含量はそれぞれ0.62重量%、10.62重量%および7.86重
量%であった。この最終生成物は立方晶形の(Ti,W)固
溶体の炭窒化物相と少量成分のWCから成っていた。この
生成物の特性を表2に示す。
実施例 4 実施例3の前駆体500gを均質化した。酸素および炭素
の含量はそれぞれ4.96重量%および13.33重量%であっ
た。前駆体に4.15gのCを加え、この混合物をさらに2
時間ボールミルで処理した。次に前駆体/Cの混合物を実
施例3と同じ方法でさらに2時間仕上げを行なった。仕
上げ条件を表1に示す。
仕上げ段階後、最終生成物の酸素、炭素および窒素の
含量はそれぞれ0.66重量%、11.41重量%および7.89重
量%であった。この最終生成物は立方晶形の(Ti,W)固
溶体の炭窒化物相と少量成分のWCから成っていた。この
生成物の特性を表2に示す。
実施例 5 実施例3と同様にして前駆体500gを合成し、均質化し
た。均質化した前駆体の酸素および炭素の含量はそれぞ
れ4.96重量%および13.33重量%であった。均質化した
前駆体に8.80gのCを加え、この混合物をさらに2時間
ボールミルで処理した。次に前駆体/Cの混合物を実施例
3と同じ方法で仕上げを行なった。仕上げ段階に使用し
た条件を表1に示す。
仕上げ段階後、最終生成物の酸素、炭素および窒素の
含量はそれぞれ0.72重量%、12.39重量%および7.69重
量%であった。この最終生成物は立方晶形の(Ti,W)固
溶体の炭窒化物相と少量成分のWCから成っていた。この
生成物の特性を表2に示す。
実施例 6 実施例3と同様にして前駆体500gを合成し、均質化し
た。均質化した前駆体の酸素および炭素の含量はそれぞ
れ4.96重量%および13.33重量%であった。この前駆体
に13.45gのCを加え、この混合物をさらに2時間ボール
ミルで処理した。次に前駆体/Cの混合物を実施例10と同
じ方法で仕上げした。仕上げ段階に使用した条件を表1
に示す。
仕上げ段階後、最終生成物の酸素、炭素および窒素の
含量はそれぞれ0.81重量%、13.41重量%および7.55重
量%であった。この最終生成物は立方晶形の(Ti,W)固
溶体の炭窒化物相と少量成分のWCから成っていた。その
生成物の特性を表2に示す。
実施例 7〜26 実施例7〜26では実施例3記載の前駆体を使用した。
これらの実施例では実施例3〜6記載と同じ方法を使用
したが、表1に示すように使用した仕上げの時間、温度
および雰囲気は異なっている。
仕上げ処理後、最終生成物の酸素、炭素および窒素の
含量をLECOにより測定した。すべての場合X線回折の結
果立方晶形の(Ti,W)の固溶体炭窒化物および少量のWC
の存在が示された。すべての生成物の特性を表2に示
す。
実施例3〜26に記載された炭窒化タングステン材料は
すべて若干量の遊離炭素を含んでいる。この遊離炭素の
存在は粒状前駆体の中に過剰の炭素が存在するためであ
る。必要とされる炭素の量は繰り返し実験で容易に決定
することができ、例えば所望の炭窒化物および使用する
合成条件、例えば窒素の量、温度、滞在時間および仕上
げ条件に依存する。
実施例3〜26はまた、酸化物反応原料がミクロン以下
の粉末である場合でも、1μm以下の炭窒化物を二段階
工程で製造し得ることを示している。
実施例27 実施例11を繰り返したが、実施例10の均質化した前駆
体1250gを27.9gのCと混合した。生成物の酸素、炭素お
よび窒素の含量は0.37重量%、12.98重量%おおび3.75
重量%であった。X線回折法で測定して最終生成物は立
方晶形の(Ti,W)固溶体の炭窒化物および少量の残留し
たWCから成っていた。最終生成物の表面積は11.7m2/gで
あった。最終生成物の結晶の平均の大きさは、104個の
不規則に選んだ粒子を測定した結果0.097±0.020μm
(0.06〜0.14μmの範囲)であった。
最終生成物をTEMで分析し、試料中の全窒素は固溶体
の炭窒化物(Ti−W)C−Nの形をしていることが示さ
れた。TiNは検出されなかった。TEM分析の結果この試料
はまた次に多い量として(Ti−W)CおよびWCを含んで
いることが示された。
実施例28 実施例7を繰り返したが、実施例10の均質化した前駆
体1252gを26.2gのCと混合した。生成物の酸素、炭素お
よび窒素の含量は0.65重量%、13.02重量%および5.06
重量%であった。X線回折法で測定して最終生成物は立
方晶形の(W−Ti)固溶体の炭窒化物および少量の残留
したWCから成っていた。最終生成物の表面積は14.9m2/g
であった。最終生成物の結晶の平均の大きさは、103個
の不規則に選んだ粒子をSEMにより測定した結果0.098±
0.022μm(0.06〜0.14μmの範囲)であった。
最終生成物をTEMで分析した結果、これは実施例27の
最終生成物に非常に似ていることが示された。この場合
も試料は多量成分として(Ti−W)Cを、次位の量の成
分としてWCを含んでいることが示された。
実施例29〜39 それぞれ前述した38.1重量部(pbw)のWO3、42.9pbw
のTiO2(Kronos)および10pbwのC(Cheveron Shawini
ganのアセチレンブラック)を、3ガロンのウレタンを
ライニングしたボールミル中で7.5kgのWC−Co摩砕媒体
を用いて摩砕し、5.0kgの粒状混合物をつくった。ボー
ルミル処理後、粒状混合物を粗い篩(8メッシュ、2.36
mm)に通し摩砕媒体を取り除いた。
この粒状混合物を下記のようにして落下法を用いて反
応させた。実施例29〜31の各々に対し、粒状混合物の10
gの試料を、誘導加熱した炉の内部の反応温度(表3参
照)に保ったグラファイトの坩堝の中に落下させた。こ
の混合物を5分間反応させ(窒素を流しながら)、炉の
加熱を止めてできるだけ速く室温に冷却する。生成した
生成物の特性を表3にまとめる。
表3に示した各前駆体(実施例29〜31)に対し実施例
1記載の方法を用いて仕上げを行ったが、1クォートの
ボールミルを用い炭素を加えずに実施例29〜31の各生成
物をさらに摩砕した。仕上げの熱処理は窒素を流しなが
ら1873Kにおいて15分間グラファイトの炉の中で行っ
た。最終的な炭窒化物の生成物の特性を下記表4に示
す。
実施例32〜34の生成物のXRDによれば、これらの生成
物はすべて多量成分の(Ti,W)の固溶体炭窒化物と少量
のWCから成っていることが示された。実施例29〜31は窒
素含量が高い炭窒化物を迅速炭素加熱還元工程によって
つくり得ることを示している。実施例32〜34は、これら
の炭窒化物に対しさらに仕上げを行い酸素含量を減らす
ことができることを示している。
実施例35〜37 39重量部(pbw)のWO3、44pbwのTiO2(Kronos)およ
び17pbwのC(Cheveron Snawiniganのアセチレンブラ
ック)を、3ガロンのウレタンをライニングしたボール
ミル中で7.5kgのWC−Co摩砕媒体を用いてボールミルに
かけ5.0kgの粒状混合物をつくった。ボールミル処理
後、粒状混合物を粗い篩(8メッシュ、2.36mm)に通し
摩砕媒体を取り除いた。
実施例35〜37の各々に対し実施例29〜31と同じ方法で
粒状混合物を反応させた。各実施例35〜37に対する合成
条件および特性を下記表5に示す。
表5に示した各前駆体(実施例35〜37)に対し実施例
1記載と同様な方法で仕上げを行った(1クォートのボ
ールミルを使用し炭素を加えなかったことを除く)。仕
上げの熱処理はグラファイトの炉の中で窒素を流しなが
ら1873Kにおいて15分間行った。最終的な炭窒化物の生
成物の特性を表6に示す。
これらの最終生成物のXRDによれば、これらの生成物
はすべて多量成分の(Ti,W)の固溶体の炭窒化物と少量
のWCとから成っていることが示される。実施例35〜40は
実施例29〜34と同様な結果を示し、また粒状混合物の酸
素含量が低いと最終の炭窒化物生成物の窒素含量が高く
なることを示している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−280805(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01G 25/00 - 47/00 C04B 35/56 - 35/58

Claims (31)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1)(a)遷移金属酸化物原料の遷移金属
    がタングステン、チタン、タンタル、モリブデン、ジル
    コニウム、ハフニウム、バナジン、ニオブおよびクロム
    から成る群から選ばれる少なくとも1つの遷移金属酸化
    物原料、および(b)炭素原料を混合して粒状混合物を
    つくり、 2)該粒状混合物を、窒素を含む非酸化性のガス中にお
    いて、該粒状混合物の炭素加熱還元に熱力学的に有利に
    なるような高温まで毎秒100K〜100,000,000Kの速度で加
    熱することにより遷移金属酸化物原料の炭素加熱還元を
    行い、 3)該遷移金属酸化物原料が(i)遷移金属の炭窒化物
    および(ii)遷移金属炭窒化物前駆体から成る群から選
    ばれる少なくとも1種の生成物に変わるのに十分な滞在
    時間の間、段階2)で得られた粒状混合物を該高温に保
    つ、 段階を含むことを特徴とする粒状セラミックスの製造方
    法。
  2. 【請求項2】該高温は1673K〜2673Kであり、生成物はタ
    ングステンを含む遷移金属炭窒化物前駆体であることを
    特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】該遷移金属炭窒化物前駆体の粒子は大きさ
    が直径として0.01〜0.2μmであることを特徴とする請
    求項2記載の方法。
  4. 【請求項4】滞在時間は0.1秒〜10分であることを特徴
    とする請求項1記載の方法。
  5. 【請求項5】滞在時間は0.1秒〜5分であることを特徴
    とする請求項1記載の方法。
  6. 【請求項6】滞在時間は0.1秒〜30秒であることを特徴
    とする請求項1記載の方法。
  7. 【請求項7】滞在時間は0.1秒〜10秒であることを特徴
    とする請求項1記載の方法。
  8. 【請求項8】該加熱速度は毎秒100〜100,000,000Kであ
    ることを特徴とする請求項1記載の方法。
  9. 【請求項9】該加熱速度は毎秒1,000〜1,000,000Kであ
    ることを特徴とする請求項1記載の方法。
  10. 【請求項10】該加熱速度は毎秒10,000〜100,000Kであ
    ることを特徴とする請求項1記載の方法。
  11. 【請求項11】該生成物は炭窒化チタン、炭窒化ジルコ
    ニウム、炭窒化ハフニウム、炭窒化タンタル、および炭
    窒化モリブデンから成る群から選ばれる少なくとも1種
    の遷移金属の炭窒化物であることを特徴とする請求項1
    記載の方法。
  12. 【請求項12】該生成物は炭窒化チタン、炭窒化モリブ
    デン−タンタル、炭窒化チタン−タンタル、炭窒化ハフ
    ニウム−タンタル、炭窒化チタン−ハフニウム、炭窒化
    タンタル、および炭窒化チタン−タンタル−ハフニウム
    から成る群から選ばれる遷移金属の炭窒化物であること
    を特徴とする請求項1記載の方法。
  13. 【請求項13】該生成物は炭窒化タングステン−モリブ
    デン前駆体、炭窒化タングステン−バナジン前駆体、炭
    窒化タングステン−チタン−タンタル前駆体、炭窒化タ
    ングステン−チタン前駆体、炭窒化タングステン前駆
    体、炭窒化タングステン−タンタル前駆体から成る群か
    ら選ばれる少なくとも1種の遷移金属の炭窒化物である
    ことを特徴とする請求項1記載の方法。
  14. 【請求項14】混合は乾燥状態で行われることを特徴と
    する請求項1記載の方法。
  15. 【請求項15】混合は乾式ボールミルにより行われるこ
    とを特徴とする請求項1記載の方法。
  16. 【請求項16】乾式ボールミル処理は接合したWC−Co摩
    砕媒体を用いて行われることを特徴とする請求項15記載
    の方法。
  17. 【請求項17】該炭素原料は粒状炭素であることを特徴
    とする請求項1記載の方法。
  18. 【請求項18】該炭素原料はカーボンブラックであるこ
    とを特徴とする請求項17記載の方法。
  19. 【請求項19】請求項1の方法により得られた遷移金属
    の炭窒化物または遷移金属の炭窒化物の前駆体を、仕上
    げ雰囲気中において該高温よりも低い仕上げ温度まで、
    前駆体または炭窒化物を所望の遷移金属炭窒化物に変え
    るのに十分な仕上げ時間の間、加熱する仕上げ段階を含
    むことを特徴とする粒状セラミックスの製造方法。
  20. 【請求項20】前駆体はタングステンを含む前駆体であ
    り、仕上げ温度は1473K〜1673Kであり、仕上げ時間は15
    〜60分であることを特徴とする請求項19記載の方法。
  21. 【請求項21】加熱中遷移金属の炭窒化物または遷移金
    属の窒化物をさらに撹拌することを特徴とする請求項19
    記載の方法。
  22. 【請求項22】仕上げ雰囲気は不活性ガス、水素、窒素
    またはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求
    項19記載の方法。
  23. 【請求項23】不活性ガスはアルゴンであることを特徴
    とする請求項22記載の方法。
  24. 【請求項24】加熱前に前駆体の炭窒化物を補助的な量
    の炭素と混合することを特徴とする請求項19記載の方
    法。
  25. 【請求項25】タングステンを含む前駆体は炭窒化タン
    グステン、炭窒化チタン−タングステン、炭窒化タンタ
    ル−タングステンおよび炭窒化チタン−タンタル−タン
    グステンから成る群から選ばれる純粋な遷移金属の炭窒
    化物であることを特徴とする請求項20記載の方法。
  26. 【請求項26】請求項1の段階1)で得られた粒状混合
    物は窒化物、炭窒化物、炭化物、炭窒化物前駆体または
    それらの組み合わせから成る群から選ばれる実質的に非
    酸化物性の遷移金属化合物を含み、該遷移金属化合物の
    遷移金属はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、MoおよびWか
    ら選ばれることを特徴とする請求項1記載の方法。
  27. 【請求項27】遷移金属酸化物原料は平均粒径が少なく
    とも0.25μmから最高25μmであることを特徴とする請
    求項1記載の方法。
  28. 【請求項28】該平均粒径は少なくとも0.5μmである
    ことを特徴とする請求項27記載の方法。
  29. 【請求項29】該平均粒径は少なくとも1μmであるこ
    とを特徴とする請求項27記載の方法。
  30. 【請求項30】該平均粒径は少なくとも1.5μmである
    ことを特徴とする請求項27記載の方法。
  31. 【請求項31】請求項1の方法により得られた遷移金属
    の炭窒化物または遷移金属の炭窒化物の前駆体を、還元
    性ガス、不活性ガス及びそれらの混合物からなる群から
    選択される雰囲気において少なくとも1073Kの温度、し
    かし該高温よりも低い温度まで、前駆体又は炭窒化物を
    所望の遷移金属炭窒化物に変えるのに十分な時間の間、
    加熱する仕上げ段階を含むことを特徴とする請求項19に
    記載の方法。
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