JP3503132B2 - 穴かがりミシン及び穴かがり形成方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】 本発明は穴かがりミシン及
び穴かがり縫目形成方法に関し、特に、加工布にジグザ
グ縫目を下縫いしてから、そのジグザグ縫目上に穴かが
り縫目を形成するようにした技術に関する。

【０００２】

【従来の技術】 従来、穴かがりミシンは、加工布を布
送りする布送り機構と、加工布に縫目を形成する縫製機
構と、加工布にボタン穴を形成するカッタを含むボタン
穴形成機構と、布送り機構と縫製機構を制御して穴かが
り縫目を形成させるとともにボタン穴形成機構を制御し
て穴かがり縫目の内側にボタン穴を形成させる制御装置
等を備えている。前記縫製機構は、針棒と、針棒の下端
に装着されて上糸供給源から延びる上糸が装着される縫
針と、針棒を上下に駆動する針棒上下動機構及び左右に
揺動駆動する針棒揺動機構と、針板（送り台）の下側に
装着され下糸が巻付けられるボビンと、針板の下側にて
上下動する縫針付近における上糸を捕捉しボビンから延
びる下糸と交絡させる糸輪捕捉器等を有する。

【０００３】ところで、従来の穴かがりミシンにおいて
は、制御装置により縫製データに基づいて布送り機構と
縫製機構が制御されて穴かがり縫目を形成し、穴かがり
縫目の形成後、又は、穴かがり縫目の形成途中におい
て、カッタ駆動位置データに基づいてボタン穴形成機構
が制御され、穴かがり縫目の内側（穴かがり縫目の左右
の千鳥縫目の間）にカッタを落としてボタン穴を形成す
る。しかし、穴かがり縫目の形成途中に下糸が消費され
た場合等、加工布に欠陥のある穴かがり縫目を形成した
状態でボタン穴形成機構によりボタン穴が形成される場
合がある。

【０００４】尚、本願出願人は、穴かがり縫目の形状と
サイズを規定する複数のパラメータ等を設定することに
より、制御装置により、布送り機構と縫製機構を駆動制
御して穴かがり縫目を形成する縫製データを演算処理す
るとともに、ボタン穴形成機構を駆動制御してカッタを
落とすカッタ駆動位置データを演算処理する技術を記載
した穴かがりミシンを出願している（特願平１１−１２
４３０２号参照）。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】 従来の穴かがりミシ
ンにおいて、加工布に欠陥のある穴かがり縫目を形成し
た状態でボタン穴形成機構によりボタン穴が形成された
場合、その後、加工布に何ら手当てを行わずに、穴かが
り縫目の形成をやり直すと、特に、ボタン穴の両側部位
に穴かがり縫目の千鳥縫目を形成する際、加工布がバタ
ツキ易いこともあり、加工布が糸で引張られて縮み皺に
なり易く、ボタン穴も幅方向に拡張し易いため、綺麗な
穴かがり縫目を形成することができないという問題があ
る。

【０００６】他方、種々の素材の加工布が実用に供され
ているが、ミシンを用いて、ニット等の起毛素材からな
る加工布に穴かがり縫目を形成する場合、穴かがり縫目
が加工布の起毛部の下側に入り込み易く、穴かがり縫目
の見栄えが悪くなるという問題がある。この課題を解決
するために、穴かがり縫目の形成予定部位に布や紙等を
重合わせてから穴かがり縫目を形成するという対策は考
えられるが、作業負荷が大きくなり作業能率も低下し見
栄えも悪くなる虞がある。

【０００７】本発明の目的は、加工布に欠陥のある穴か
がり縫目を形成した状態でボタン穴が形成された場合で
も、その後、綺麗な穴かがり縫目を簡単に且つ確実に形
成することができ、起毛素材からなる加工布に形成する
穴かがり縫目の見栄えを良くすることができる穴かがり
ミシン及び穴かがり縫目形成方法を提供することであ
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】 請求項１の穴かがりミ
シンは、加工布を布送りする布送り手段と、加工布に縫
目を形成する縫製手段と、加工布にボタン穴を形成する
カッタを含むボタン穴形成手段と、布送り手段と縫製手
段を制御して穴かがり縫目を形成させるとともにボタン
穴形成手段を制御して穴かがり縫目の内側にボタン穴を
形成させる制御手段とを備えた穴かがりミシンにおい
て、前記制御手段は、欠陥のある穴かがり縫目を形成し
た状態でボタン穴形成手段によりボタン穴が形成された
場合に、ボタン穴の両側部位に亙るジグザグ縫目を形成
してから、穴かがり縫目の形成をやり直すように、布送
り手段と縫製手段を制御することを特徴とするものであ
る。

【０００９】この穴かがりミシンでは、制御手段により
布送り手段と縫製手段が制御されて穴かがり縫目を形成
するとともに、ボタン穴形成手段が制御されて穴かがり
縫目の内側にカッタを落としてボタン穴を形成する。穴
かがり縫目の形成途中に下糸が消費された場合等、加工
布に欠陥のある穴かがり縫目を形成した状態でボタン穴
形成手段によりボタン穴が形成されることがあり、この
場合、制御手段により布送り手段と縫製手段が制御さ
れ、ボタン穴の両側部位に亙るジグザグ縫目を形成して
から、穴かがり縫目の形成をやり直すことができる。

【００１０】つまり、加工布に欠陥のある穴かがり縫目
を形成した状態でボタン穴が形成された場合でも、加工
布に穴かがり縫目（特に、穴かがり縫目のうちボタン穴
の両側部位に形成される千鳥縫目）の形成をやり直す
際、前記ジグザグ縫目を形成してから行うことにより、
加工布のバタツキを防止し、加工布が糸で引張られて縮
み皺になるのを防止できる。それ故、ボタン穴も幅方向
に拡張しにくくなり、綺麗な穴かがり縫目を簡単に且つ
確実に形成することができる。

【００１１】更に、加工布がニット等の起毛素材からな
る加工布の場合には、ジグザグ縫目により加工布の起毛
部をある程度倒すことができるため、その部分において
は、穴かがり縫目が加工布の起毛部の下側に入り込みに
くくなり、やり直された穴かがり縫目の見栄えが一層良
くなる。また、やり直された穴かがり縫目の形成後、制
御手段によりボタン穴形成手段が制御され、穴かがり縫
目の内側にカッタを落とすことで、ジグザグ縫目のうち
のボタン穴を横断する部位を切断することができる。
尚、穴かがり縫目の縫製領域内にジグザグ縫目を形成す
ることが望ましく、穴かがり縫目でジグザグ縫目を覆い
隠すことができる。

【００１２】請求項２の穴かがりミシンは、請求項１の
発明において、前記制御手段は、前記ジグザグ縫目を形
成する際に、穴かがり縫目の縫製開始点付近からジグザ
グ縫目の形成を開始し、ボタン穴に沿って往復状にジグ
ザグ縫目を形成して前記縫製開始点で終了するように、
布送り手段と縫製手段を制御することを特徴とするもの
である。従って、ボタン穴の長さ方向略全域を亙るジグ
ザグ縫目を形成することができ、しかも、ジグザグ縫目
の形成後、連続的に穴かがり縫目を形成することができ
る。

【００１３】請求項３の穴かがりミシンは、請求項２の
発明において、前記制御手段は、やり直された穴かがり
縫目の形成後、ジグザグ縫目のうちのボタン穴を横断す
る部位を切断する為に、ボタン穴形成手段を制御するこ
とを特徴とするものである。つまり、ボタン穴形成手段
を有効利用して、ジグザグ縫目のうちのボタン穴を横断
する部位を確実に切断することができる。

【００１４】請求項４の穴かがりミシンは、請求項１〜
３の何れか１項の発明において、前記制御手段に対し
て、前記ジグザグ縫目の形状とサイズを規定する複数の
第１パラメータを設定する為の第１パラメータ設定手段
を設けたことを特徴とするものである。つまり、第１パ
ラメータ設定手段により複数の第１パラメータを設定し
て、穴かがり縫目に対応する形状とサイズのジグザグ縫
目を形成することが可能になる。

【００１５】請求項５の穴かがりミシンは、請求項４の
発明において、前記制御手段に対して、前記穴かがり縫
目の形状とサイズを規定する複数の第２パラメータを設
定する為の第２パラメータ設定手段を設け、これら第２
パラメータの一部を前記第１パラメータとして活用する
ことを特徴とするものである。

【００１６】つまり、第２パラメータ設定手段により複
数の第２パラメータを設定して、所望の形状とサイズの
穴かがり縫目を形成することができる。そして、複数の
第２パラメータの一部を前記第１パラメータとして活用
するので、第１パラメータを新たに設定する設定数を低
減して設定作業を簡単に行うことができ、穴かがり縫目
に対応するジグザグ縫目の形状とサイズを容易に設定す
ることが可能になる。

【００１７】請求項６の穴かがりミシンは、加工布を布
送りする布送り手段と、加工布に縫目を形成する縫製手
段と、加工布にボタン穴を形成するカッタを含むボタン
穴形成手段と、布送り手段と縫製手段を制御して穴かが
り縫目を形成させるとともにボタン穴形成手段を制御し
て穴かがり縫目の内側にボタン穴を形成させる制御手段
とを備えた穴かがりミシンにおいて、前記制御手段は、
穴かがり縫目の縫製を開始する前に、ボタン穴の形成予
定部の両側部位に亙るジグザグ縫目を形成するように、
布送り手段と縫製手段を制御することを特徴とするもの
である。

【００１８】この穴かがりミシンでは、制御手段によ
り、布送り手段と縫製手段が制御されて穴かがり縫目を
形成するとともに、ボタン穴形成手段が制御されて穴か
がり縫目の内側にカッタを落としてボタン穴を形成する
が、穴かがり縫目の縫製を開始する前に、制御手段によ
り布送り手段と縫製手段が制御され、ボタン穴の形成予
定部の両側部位に亙るジグザグ縫目を形成することがで
きる。従って、加工布がニット等の起毛素材からなる加
工布の場合、ジグザグ縫目により加工布の起毛部をある
程度倒すことができるため、その部分においては、穴か
がり縫目が加工布の起毛部の下側に入り込みにくくな
り、穴かがり縫目の見栄えが良くなる。

【００１９】また、ジグザグ縫目により加工布を補強で
きるため、布縮み等を防止して、綺麗な穴かがり縫目を
形成するうえでも有利になる。穴かがり縫目の形成後、
制御手段によりボタン穴形成手段が制御され、穴かがり
縫目の内側（ボタン穴の形成予定部）にカッタを落とす
ことで、ジグザグ縫目のうちのボタン穴の形成予定部を
横断する部位を切断するとともにボタン穴を形成するこ
とがきる。尚、穴かがり縫目の縫製領域内にジグザグ縫
目を形成することが望ましく、穴かがり縫目でジグザグ
縫目を覆い隠すことができる。

【００２０】請求項７の穴かがり縫目形成方法は、加工
布を布送りする布送り手段と、加工布に縫目を形成する
縫製手段とを制御して穴かがり縫目を形成する穴かがり
縫目形成方法において、ボタン穴の形成予定部の両側部
位に亙るジグザグ縫目を形成する第１ステップと、その
ジグザグ縫目上に穴かがり縫目を形成する第２ステップ
とを備えたことを特徴とするものである。この穴かがり
縫目形成方法は、穴かがり縫目の内側にボタン穴を形成
するか否かに関係なく、制御手段により布送り手段と縫
製手段を制御して行う穴かがり縫目形成方法に適用する
ことができる。

【００２１】この穴かがり縫目形成方法では、第１ステ
ップにおいて、ボタン穴の形成予定部の両側部位に亙る
ジグザグ縫目を形成するので、特に、加工布がニット等
の起毛素材からなる加工布の場合に、ジグザグ縫目によ
り加工布の起毛部をある程度倒すことができる。それ
故、第２ステップにおいて、そのジグザグ縫目上に穴か
がり縫目を形成しても、その穴かがり縫目が加工布の起
毛部の下側に入り込みにくくなり、穴かがり縫目の見栄
えを良くすることができる。

【００２２】更に、請求項１と同様に、加工布に欠陥の
ある穴かがり縫目を形成した状態でボタン穴が形成され
た場合でも、第１ステップにおいて、ボタン穴の両側部
位に亙るジグザグ縫目を形成してから、第２ステップに
おいて、そのジグザグ縫目上に穴かがり縫目の形成をや
り直すことができるため、請求項１と同様に、綺麗な穴
かがり縫目を簡単に且つ確実に形成することが可能にな
る。

【００２３】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図面を参照して説明する。本実施形態は、加工布に、
例えば、図１４の角形の穴かがり縫目７０を形成すると
ともに、その穴かがり縫目７０の内側にボタン穴８０を
形成する所謂ボタン穴用の穴かがりミシンに、本発明を
適用した場合の例である。但し、図１の前方と左方を基
準として説明する。尚、以下、穴かがり縫目やボタン穴
等の符号については、図１４の穴かがり縫目７０とボタ
ン穴８０等の符号を引用する。

【００２４】図１に示すように、穴かがりミシンＭに
は、ミシンテーブル１に、ミシンモータ２と、そのミシ
ンモータ２を含む各駆動部（後で詳述する）を起動又は
停止させる為のペダル３と、穴かがり縫目７０の形状と
サイズ等を規定する複数のパラメータ等を入力設定する
為の操作パネル４と、前記各駆動部を駆動制御する制御
装置５等が設けられている。

【００２５】穴かがりミシンＭは、ベッド部６と脚柱部
７とアーム部８とを有するミシン本体を有し、そのミシ
ン本体に、図２〜図５に示すように、加工布を前後に布
送りする布送り機構１０と、加工布に縫目を形成する縫
製機構３０と、加工布にボタン穴８０を形成するカッタ
６１を含むボタン穴形成機構６０が設けられ、制御装置
５により、布送り機構１０と縫製機構３０が制御されて
穴かがり縫目７０を形成するとともに、ボタン穴形成機
構６０が制御されて穴かがり縫目７０の内側にボタン穴
８０を形成する。

【００２６】前記布送り機構１０は、図３に示すよう
に、送り台１１と、押え足１２と、ステッピングモータ
１３等を有し、加工布を押え足１２で送り台１１に押え
た状態で、ステッピングモータ１３により送り台１１と
押え足１２を一体的に前後に駆動することで、加工布も
一体的に前後に布送りされる。送り台１１は前後に長い
板状に形成され、その前端部に穴かがり縫目７０及びボ
タン穴８０を形成する為の長孔１１ａが形成されてい
る。ベッド部６の上面部分に左右１対の案内板１４が嵌
込まれており、これらの案内板１４の間に送り台１１が
前後に移動可能にガイド支持されている。

【００２７】送り台１１の後端部下面側に可動部材１５
が固定され、その可動部材１５の後側に前後に長い連結
ロッド１６を介して可動部材１７が連結され、この可動
部材１７に、前端部に布押え１２を取り付けた押え腕１
８の後端部が左右軸心回りに枢支されている。押え足１
２は、付勢部材（図示略）により押え腕１８を介して下
方へ付勢されており、例えば、ペダル３の操作により、
布押え１２の高さ調節を行うことができる。

【００２８】連結ロッド１６は、可動部材１５，１７の
左端部に挿通状に固定されて延び、可動部材１５，１７
の前後両側において１対の軸受１９を介してミシン機枠
に前後に移動可能にガイド支持されている。また、連結
ロッド１６の右側に、前後に長いロッド２０がミシン機
枠に固定的に設けられ、このロッド２０に可動部材１７
の右端部が軸受１７ａを介して前後に移動自在にガイド
支持されている。

【００２９】ステッピングモータ１３の出力軸に駆動プ
ーリ１３ａが固着され、駆動プーリ１３ａの後方に従動
プーリ（図示略）がミシン機枠に枢支され、これら両プ
ーリに無端状のベルト２１が掛け渡されている。このベ
ルト２１の一部に可動部材１７が固定され、ステッピン
グモータ１３が駆動されると、ベルト２１を介して可動
部材１５，１７と送り台１１と押え足１２が前後に一体
的に駆動される。

【００３０】前記縫製機構３０は、図２、図４に示すよ
うに、針棒３１と、針棒３１の下端に装着されて糸駒等
の上糸供給源（図示略）から延びる上糸が装着される縫
針３２と、針棒３１を上下に往復駆動する針棒上下動機
構３３及び左右に揺動駆動する針棒揺動機構３４と、送
り台１１の下側に装着され下糸が巻付けられるボビン
（図示略）と、送り台１１の下側にて上下動する縫針３
２付近における上糸を捕捉しボビンから伸びる下糸と交
絡させる糸輪捕捉器（図示略）等を有する。

【００３１】図４に示すように、針棒上下動機構３３に
おいては、アーム部８に揺動自在に設けられた仮想線で
示す針棒台３５に、針棒３１が上下に摺動可能に支持さ
れ、針棒３１に針棒抱き３６が固定されている。針棒３
１の後側に針棒連竿３７が設けられ、その上端部３７ａ
が鉛直面内の円Ｃに沿って円運動するようにミシンモー
タ２で回動される上軸３８に連結され、針棒連竿３７の
下端部３７ｂの前側と後側に、角コマ３９，４０が夫々
回動自在に連結されている。針棒抱き３６の後部に左右
方向に断面矩形の案内溝３６ａが形成され、この案内溝
３６ａに前側の角コマ３９が左右方向に移動自在に係合
している。

【００３２】針棒抱き３６の後部には針棒連竿案内４１
が設けられ、この針棒連竿案内４１に形成された垂直溝
４１ａに、後側の角コマ４０が係合し垂直方向にのみ移
動可能に案内されている。更に、針棒台３５の側面に平
板状の針棒案内４２が固定され、この針棒案内４２に形
成され針棒３１に沿って伸びる長穴４２ａに、針棒抱き
３６の左側部から突出した突起３６ｂが係合している。
このように構成された針棒上下動機構３３では、ミシン
モータ２によって回転駆動される上軸３８から針棒連竿
３７に加わる力を、角コマ３９と針棒抱き３６を介して
針棒３１に伝達し、それによって針棒３１を上下動させ
ることができる。

【００３３】針棒揺動駆動機構３４においては、針棒台
３５の後側に揺動レバー４５が設けられ、この揺動レバ
ー４５の下端前側に回動可能に装着された角駒４６が針
棒台３５の下端前部に係合している。揺動レバー４５の
上端部にステッピングモータ４７の出力軸４７ａが内嵌
固着され、ステッピングモータ４７から揺動レバー４５
に加わる力を、角コマ４６と針棒台３５を介して針棒３
１に伝達し、それによって針棒３１を左右に揺動させる
ことができる。

【００３４】ここで、図１４の角形の穴かがり縫目７０
について説明する。この穴かがり縫目７０は、左千鳥縫
目７１と右千鳥縫目７２とを有し、更に、その前端部に
前閂止め縫目７３を有し、後端部に奥閂止め縫目７４を
有する。尚、通常、穴かがり縫目７０の縫製時には、前
閂止め縫目７３の一部、左千鳥縫目７１、奥閂止め縫目
７４、右千鳥縫目７２、前閂止め縫目７３の残りの部分
の順で縫目が形成される。また、図１４に示す長さａ〜
ｅ等を操作パネル４にて設定することができる。

【００３５】前記ボタン穴形成機構６０は、図５に示す
ように、カッタ６１、カッタホルダ６２、カッタ取付軸
６３、カッタ作動腕６４、カッタ駆動用ソレノイド６５
等を有する。カッタ取付軸６３の下端にカッタホルダ６
２が設けられ、そのカッタホルダ６２にカッタ６１がビ
ス６２ａで固定されている。カッタ作動腕６４は後端側
が上方に屈曲した略Ｌ字形に形成され、その前後方向中
央部が枢支軸６４ａを介してミシン機枠に左右軸心回り
に揺動可能に支持されている。

【００３６】カッタ作動腕６４の前端部分はバネ部材６
６により上方へ付勢され、カッタ作動腕６４の前端部が
カッタ取付軸６３の上部に連結され、カッタ作動腕６４
の後上端部が、カッタ駆動用ソレノイド６５から後方へ
突出したプランジャ６５ａにリンク６７を介して連結さ
れている。カッタ駆動用ソレノイド６５のプランジャ６
５ａを突出／退避させることによって、カッタ作動腕６
４とカッタ取付軸６３を介してカッタ６１を上下動させ
ることができる。尚、カッタ駆動用ソレノイド６５はプ
ランジャ６５ａを突出方向へも退避方向へも駆動可能な
双方向ソレノイドであるため、バネ部材６６はカッタ取
付軸６３からカッタ６１に至る機構の重量を補償する程
度のものであればよく、省略することも可能である。

【００３７】次に、穴かがりミシンＭの制御系について
説明する。図６に示すように、制御装置５は、ＣＰＵ５
ａとＲＯＭ５ｂとＲＡＭ５ｃを主要部とするマイクロコ
ンピュータと、ペダル３の操作状態に応じた起動スイッ
チ３ａからの信号や操作パネル４からの信号等が入力さ
れる入力インタフェース５ｄと、ミシンモータ２、ステ
ッピングモータ１３，４７、カッタ駆動用ソレノイド６
７に図示しない駆動回路を介して駆動信号を出力すると
ともに、操作パネル４へも表示状態等の制御信号を出力
する出力インタフェース５ｅとを備え、それらをバス５
ｆにて接続して構成されている。

【００３８】ＲＯＭ５ｂには、操作パネル４を用いて穴
かがり縫目７０の形状とサイズを規定する複数のパラメ
ータ等の縫製に関する各種設定を行う為の設定処理プロ
グラムと、複数のパラメータに基づいて穴かがり縫目７
０の縫製データとカッタ駆動位置データとを演算するデ
ータ演算処理プログラムと、縫製データとカッタ駆動位
置データに基づいて前記布送り機構１０、縫製機構３
０、ボタン穴形成機構６０を駆動制御する制御プログラ
ム等が格納されている。

【００３９】特に、制御装置５は、例えば、図１５の欠
陥のある穴かがり縫目７０ａを形成した状態でボタン穴
形成機構６０によりボタン穴８０が形成された場合に、
図１６に示すように、ボタン穴８０の両側部位に亙るジ
グザグ縫目８５を形成してから、図１７に示すように、
穴かがり縫目７０の形成をやり直すように、布送り機構
１０と縫製機構３０を制御可能に構成されている。その
ため、前記設定処理プログラムは、操作パネル４を用い
て、ジグザグ縫目８５の形状とサイズを規定する複数の
パラメータ等を設定処理可能に構成され、前記データ演
算処理プログラムは、これらパラメータに基づいてジグ
ザグ縫目８５の縫製データを作成するように構成されて
いる。

【００４０】尚、この穴かがりミシンＭでは、加工布に
穴かがり縫目７０を縫製する前に、穴かがり縫目７０の
閂止め縫目７３，７４の形成予定部位に山形縫目を下縫
いでき、また、穴かがり縫目７０の形成予定部位に矩形
縫目を下縫いできるようになっており、山形縫目と矩形
縫目の形状とサイズを規定するパラメータ等の設定につ
いては、前記同様、操作パネル４を用いて行えるように
なっている。

【００４１】操作パネル４について図７を参照して説明
すると、操作パネル４の中央に、穴かがりミシンＭの現
在の制御モードを表す４つのＬＥＤ９０と「SELECT」キ
ー９１が設けられ、操作パネル４の左端付近に、異常に
対する対処後に穴かがりミシンＭをリセットする為の
「RESET 」キー９２、カッタ６１をプログラムに依らず
に駆動する為の「CUTTER ON 」キー９３、２桁の７セグ
メントディスプレイからなる表示部９４、「PROGRAM N
O」キー９５が設けられ、操作パネル４の右部に、電源
がＯＮになっていることを示すＬＥＤ９６、何らかの異
常が生じたことを示すＬＥＤ９７、４桁の７セグメント
ディスプレイからなる表示部９８、アップダウンキー９
９、「ENTER 」キー100 が設けられている。

【００４２】「SELECT」キー９１により、通常の縫製を
行う為のオートモード（ＡＵＴＯ）と、実際に縫針３２
を落として縫製を行うことなく単に針落ち点の変化のみ
を確認するためのテストフィードモード（ＴＥＳＴＦＥ
ＥＤ）と、使用者が図示しないプーリを回して手動で縫
製を行う為のマニュアルモード（ＭＡＮＵＡＬ）と、各
種設定を行う為のプログラムモード（ＰＲＯＧＲＡＭ）
とに択一的に切換えることができ、このモードの切り換
えに応じて、現在設定されているモードに対応するＬＥ
Ｄ９０が点灯する。

【００４３】プログラムモードが設定されると、図８〜
図１１の複数のパラメータ（千鳥部の回転数、穴かがり
縫目形状、カッタ寸法、・・・）のうちの１つに対応す
る番号が表示部９４に表示され、そのパラメータの現在
の設定値が表示部９８に表示される。表示部９４に表示
される番号は、「PROGRAM NO」キー９５により循環的に
変更することができる。任意の番号を表示部９４に表示
させた状態で、アップダウンキー９９により、表示部９
８に表示されるパラメータの設定値を増減して変更し、
「ENTER 」キー100 により（確定）設定し直すことがで
きる。

【００４４】各パラメータの設定値について、例えば、
電源投入後パラメータの増減がなされていない場合に
は、ＲＯＭ５ｂに記憶されている初期値（デフォルト
値）が有効である。尚、アップダウンキー９９の１回の
押圧操作により、パラメータ毎に設定されている増減量
（ステップ）だけ増減する。尚、プログラムモード以外
のモードが設定されているときは、表示部９８に各種メ
ッセージが表示され、表示部９４には現在選択されてい
るパラメータの番号が表示される。

【００４５】図８〜図１１に示すように、前記複数のパ
ラメータとして、内容の欄に記載されているように、千
鳥部の回転数、穴かがり縫目形状、カッタ寸法、カッタ
多落し時の千鳥縫い長さ、千鳥ピッチ、・・・等があ
り、各パラメータに対応付けた番号が、操作パネル４の
表示部９４に表示される番号である。各パラメータ（例
えば、番号「０４」の千鳥ピッチ）については、設定範
囲（0.20〜2.00mm）内で設定することができ、その設定
の際、操作パネル４のアップダウンキー９９の１回の押
圧操作で１ステップ（0.05(mm)）分だけ増減する。ま
た、各パラメータの初期値（番号「０４」の千鳥ピッチ
には0.35(mm)）が設けられている。そして、制御装置５
のＲＯＭ５ｂに、複数のパラメータの番号に対応付けて
設定範囲データとステップデータと初期値データとが格
納されている。

【００４６】ここで、番号「０１」の穴かがり縫目形状
については、図１２に示すように、（ａ）角形と、
（ｂ）放射形と、（ｃ）丸形と、図示していないが、複
数の任意形とがあり、穴かがり縫目形状を設定する場
合、図８に示すように、操作パネル４を用いて、プログ
ラムモードに切り換えてから、表示部９４に「０１」を
表示させた状態で、例えば、表示部９８に「０」を表示
させると（ａ）の角形に設定することが可能になる。
尚、図１４のａは番号「０２」のカッタ寸法、ｂは番号
「０４」の千鳥ピッチ、ｃは番号「０５」の千鳥幅、ｄ
は図９の番号「２０」の前閂止め長さ、ｅは番号「３
０」の奥閂止め長さを表している。

【００４７】特に、下縫いする為の複数のパラメータと
して、図１０に示すように、番号「４５」の縫い合せ下
縫い回数、番号「４６」の山形下縫い回数、番号「４
７」の矩形下縫い回数、・・・、番号「５４」の下縫い
閂止めＹ針数（山形下縫いの時のみ有効）があり、これ
らパラメータの番号に対応付けて設定範囲データとステ
ップデータと初期値データが、制御装置５のＲＯＭ５ｂ
に格納されている。

【００４８】図８〜図１１の複数のパラメータのうち、
図１０の番号「４５」〜「５４」のパラメータ以外のパ
ラメータの大部分が、制御装置５に対して穴かがり縫目
の形状とサイズを規定する複数のパラメータ（これが、
第２パラメータに相当する）であり、それらの一部のパ
ラメータと図１０の番号「４９」〜「５２」のパラメー
タが、制御装置５に対してジグザグ縫目８５の形状とサ
イズを規定する複数のパラメータ（これが、第１パラメ
ータに相当する）である。このように、第２パラメータ
の一部を第１パラメータとして活用している。

【００４９】加工布に穴かがり縫目を縫製する前に、ジ
グザグ縫目８５の縫製を行う場合には番号「４５」の縫
い合せ下縫い回数を（１）に設定し、行わない場合には
（０）を設定する。尚、加工布に穴かがり縫目を縫製す
る前に、前記山形縫目の縫製を行う場合には番号「４
６」の山形下縫い回数を（１）に設定し、行わない場合
には（０）に設定し、前記矩形縫目の縫製を行う場合に
は番号「４７」の矩形下縫い回数を（１〜５）に設定
し、行わない場合には（０）に設定する。

【００５０】次に、前記制御装置５により実行される制
御について、図１３のフローチャートを参照して説明す
る。但し、先ず、角形の穴かがり縫目７０を縫製するよ
うにし、その縫製途中に下糸が消費された場合等、欠陥
のある穴かがり縫目７０ａを形成した状態でボタン穴８
０が形成された場合に、ボタン穴８０の両側部位に亙る
ジグザグ縫目８５を形成（下縫い）してから、穴かがり
縫目７０の形成をやり直す場合を例にして説明する。

【００５１】穴かがりミシンＭの電源投入とともにこの
制御が開始され、先ず、初期設定（Ｓ１）が行われた
後、パラメータ設定処理（Ｓ２）が行われる。このパラ
メータ設定処理では、例えば、電源投入直後には、図８
〜図１１の複数のパラメータにＲＯＭ５ｂに記憶されて
いる初期値が設定されるが、前述したように、操作パネ
ル４を用いて、複数のパラメータの設定値を変更して設
定し直すことができる。最初は、ジグザグ縫目８５を形
成しないように、図１０の番号「４５」の縫い合せ下縫
い回数を（０）に設定するとともに、その他の下縫いを
行わないためにも、番号「４６」の山形下縫い回数及び
番号「４７」の矩形下縫い回数を（０）に設定すること
になる。

【００５２】次に、「ENTER 」キー100 が操作されてパ
ラメータの設定が終了すると（Ｓ３;Yes）、複数のパラ
メータの設定値が読込まれ（Ｓ４）、これら設定値に基
づいて、穴かがり縫目７０の縫製データ（針落ちデー
タ）が演算され（Ｓ５）、カッタ６１を落とすカッタ駆
動位置データが演算され（Ｓ６）、これらのデータはＲ
ＡＭ５ｃに書込まれる。尚、複数のパラメータを用いて
縫製データとカッタ駆動位置データを演算する具体的な
方法については、本出願人が出願した特願平１１−１２
４３０２号に記載した演算方法と略同様であるので説明
を省略する。

【００５３】続いて、ペダル３が踏込み操作されると
（Ｓ７;Yes）、ＲＡＭ５ｃに記憶している縫製データに
基づいて、布送り機構１０と縫製機構３０が駆動制御さ
れて縫製処理（Ｓ８）が実行される。尚、何針目か先ま
での縫製データを演算しながら縫製処理を実行するよう
にしてもよいし、縫製データを全て演算してから縫製処
理を開始するようにしてもよい。

【００５４】その後、ＲＡＭ５ｃに記憶しているカッタ
駆動位置データに基づいて、布送りされる加工布に対し
てカッタ６１が、両側に千鳥縫目７１，７２を形成した
段階でカッタ落とし位置に達すると、縫製が一時的に中
断されてから（Ｓ１０）、ボタン穴形成機構６０により
カッタ６１が下降駆動され（Ｓ１１）ボタン穴８０が形
成される。尚、カッタ６１の駆動位置とは、右千鳥縫目
７２の形成中または形成終了直後の所定位置となる。

【００５５】その後、縫製終了でないときには（Ｓ１
２;No ）Ｓ７へリターンし、ペダル３が踏込み操作され
ているときには（Ｓ７;Yes）、Ｓ８の縫製処理において
縫製が再開され、穴かがり縫目７０の縫製が終了すると
（Ｓ１２;Yes）Ｓ２へリターンする。

【００５６】さて、本来なら、上記の動作を行うこと
で、図１４の正常な穴かがり縫目７０が形成されるが、
穴かがり縫目７０の形成途中に下糸が消費された場合
等、例えば、図１５に示すように、加工布に欠陥のある
穴かがり縫目７０ａが形成される。この場合、縫製が終
了しているため、或いは、強制終了させることで、Ｓ２
のパラメータ設定処理へ移行し、そこで、ボタン穴８０
の両側部位に亙るジグザグ縫目８５を形成してから、穴
かがり縫目７０の形成をやり直すようにするために、パ
ラメータの設定処理をやり直す。

【００５７】即ち、今回のパラメータの設定処理（Ｓ
２）では、操作パネル４を用いて、図１０の番号「４
５」の縫い合せ下縫い回数を（１）に変更し設定し直
す。また、番号「４６」〜「５２」のパラメータを設定
値を初期値から設定範囲内で所望の値に変更し設定し直
してもよい。尚、この際、番号「４５」〜「５４」以外
のパラメータの設定値を変更し設定し直すことはできる
が、ボタン穴８０は既に形成されているため、穴かがり
縫目７０の特に大きさに関するパラメータの設定値を変
更しないことが望ましく、本実施形態でもそうするもの
とする。

【００５８】次に、パラメータの設定処理（Ｓ２）後、
「ENTER 」キー100 が操作されてパラメータの設定が終
了すると（Ｓ３;Yes）、番号「４５」〜「５２」の複数
のパラメータの設定値が読込まれ（Ｓ４）、次に、Ｓ５
では、ジグザグ縫目８５の形状とサイズを規定する複数
のパラメータ（第１パラメータに相当し、番号「４５」
〜「５２」の複数のパラメータと穴かがり縫目７０の形
状とサイズを規定する複数の第２パラメータの一部を含
む）の設定値に基づいて、ジグザグ縫目８５の縫製デー
タが演算される。尚、穴かがり縫目７０の縫製データに
ついては、前記演算された縫製データが使用され、Ｓ６
では、前記演算されたカッタ駆動位置データが使用され
るため省略される。

【００５９】ここで、ジグザグ縫目８５の縫製データに
ついては、穴かがり縫目７０の縫製開始点付近の前閂止
め縫目７３の形成予定部からジグザグ縫目８５の形成を
開始し、ボタン穴８０に沿って奥閂止め縫目７４の形成
予定部位を折返して往復状にジグザグ縫目８５を形成し
て前記縫製開始点で終了する縫製データに演算される。
即ち、続いて、ペダル３が踏込み操作されると（Ｓ７;Y
es）、Ｓ８の縫製処理では、先ず、ＲＡＭ５ｃに記憶し
ているジグザグ縫目８５の縫製データに基づいて、穴か
がり縫目７０の縫製開始点付近からジグザグ縫目８５の
形成を開始し、ボタン穴８０に沿って往復状にジグザグ
縫目８５を形成して前記縫製開始点で終了するように、
布送り機構１０と縫製機構３０を駆動制御し、図１６の
ジグザグ縫目８５を形成する。

【００６０】ジグザグ縫目８５の形成後、ペダル３が踏
込み操作されると（Ｓ７;Yes）、ＲＡＭ５ｃに記憶して
いる穴かがり縫目７０の縫製データに基づいて、布送り
機構１０と縫製機構３０が駆動制御されて縫製処理（Ｓ
８）が実行され、穴かがり縫目７０の形成がやり直され
る。やり直された穴かがり縫目７０の形成後、ジグザグ
縫目８５のうちのボタン穴８０を横断する部位を切断す
る為に、カッタ駆動位置データに基づいて、ボタン穴形
機構６０のカッタ６１を駆動制御する。

【００６１】前記穴かがりミシンＭの作用・効果につい
て説明する。上記のように、穴かがり縫目７０の形成途
中に下糸が消費された場合等、加工布に欠陥のある穴か
がり縫目７０ａを形成した状態でボタン穴形成機構６０
によりボタン穴８０が形成された場合に、制御装置５に
より布送り機構１０と縫製機構３０が制御され、ボタン
穴８０の両側部位に亙るジグザグ縫目８５を形成してか
ら、穴かがり縫目７０の形成をやり直すことができる。

【００６２】つまり、加工布に欠陥のある穴かがり縫目
７０ａを形成した状態でボタン穴８０が形成された場合
でも、加工布に穴かがり縫目７０（特に、穴かがり縫目
７０のうちボタン穴８０の両側部位に形成される千鳥縫
目７１，７２）の形成をやり直す際、ジグザグ縫目８５
を形成してから行うことにより、加工布のバタツキを防
止し、加工布が糸で引張られて縮み皺になるのを防止で
きる。それ故、ボタン穴８０も幅方向に拡張しにくくな
り、最終的に綺麗な穴かがり縫目７０を簡単に且つ確実
に形成することができる。

【００６３】更に、加工布がニット等の起毛素材からな
る加工布の場合には、ジグザグ縫目８５により加工布の
起毛部をある程度倒すことができるため、その部分にお
いては、穴かがり縫目７０が加工布の起毛部の下側に入
り込みにくくなり、やり直された穴かがり縫目７０の見
栄えが一層良くなる。

【００６４】やり直された穴かがり縫目７０の形成後、
制御装置５によりボタン穴形成機構６０が制御され、穴
かがり縫目７０の内側にカッタを落とすことで、ジグザ
グ縫目８５のうちのボタン穴８０を横断する部位を切断
することができる。つまり、ボタン穴形成機構６０を有
効利用して、ジグザグ縫目８５のうちのボタン穴８０を
横断する部位を確実に切断することができ、最終的にボ
タン穴８０を確実にあけることが可能になる。

【００６５】制御装置５は布送り機構１０と縫製機構３
０を制御して、ジグザグ縫目８５を形成する際に、穴か
がり縫目７０の縫製開始点付近の前閂止め縫目７３の形
成予定部からジグザグ縫目８５の形成を開始し、ボタン
穴８０に沿って奥閂止め縫目７４の形成予定部位を折返
して往復状にジグザグ縫目８５を形成して前記縫製開始
点で終了するようにしたので、ボタン穴８０の長さ方向
略全域を亙るジグザグ縫目８５を形成することができ、
しかも、ジグザグ縫目８５の形成後も、連続的に穴かが
り縫目７０を形成することができる。

【００６６】操作パネル４を用いて、ジグザグ縫目８５
の形状とサイズを規定する複数のパラメータ（第１パラ
メータ；「図１０の番号「４９」〜「５２」のパラメー
タ）を設定することができるが、穴かがり縫目７０の形
状とサイズを規定する前記複数の第２パラメータを前記
第１パラメータとして活用するので、第１パラメータの
新たに設定する設定数を低減して設定作業を簡単に行う
ことができ、穴かがり縫目７０に対応するジグザグ縫目
８５の形状とサイズを容易に設定することが可能にな
る。

【００６７】次に、変形例について説明する。 １〕前記穴かがりミシンＭにおいて、制御装置５により
布送り機構１０と縫製機構３０を制御して、穴かがり縫
目７０の縫製を開始する前に、ボタン穴８０の形成予定
部の両側部位に亙るジグザグ縫目８５を形成するように
してもよい。この場合、操作パネル４を用いて、最初か
ら、図１０の番号「４５」の縫い合せ下縫い回数を
（１）に設定するとともに、穴かがり縫目７０及びジグ
ザグ縫目８５の形状とサイズを規定するパラメータを設
定し、ペダル３を踏込み操作することで行うことができ
る。

【００６８】尚、ボタン穴８０の形成予定部の両側部位
に亙るジグザグ縫目８５を形成するステップが第１ステ
ップに相当し、そのジグザグ縫目８５上に穴かがり縫目
７０を形成するステップが第２ステップに相当する。

【００６９】これにより、ジグザグ縫目８５により加工
布を補強できるため、布縮み等を防止して、綺麗な穴か
がり縫目７０を形成するうえでも有利になるし、加工布
がニット等の起毛素材からなる加工布の場合、ジグザグ
縫目８５により加工布の起毛部をある程度倒すことがで
きるため、その部分においては、穴かがり縫目７０が加
工布の起毛部の下側に入り込みにくくなり、穴かがり縫
目７０の見栄えを良くすることができる。

【００７０】２〕前記実施形態では、ペダル３を踏込み
続けると、ボタン穴８０の両側部位に亙るジグザグ縫目
８５を形成してから、穴かがり縫目７０の形成を連続的
にやり直すように構成しているが、穴かがり縫目７０と
ジグザグ縫目８５の選択と縫製を、独立に行うように構
成してもよい。また、加工布にボタン穴８０を形成する
カッタ６１を含むボタン穴形成機構６０を備えないミシ
ンでも本発明を適用できる。

【００７１】３〕予め記憶された種々の穴かがり縫目の
縫製データと、ジグザグ縫目の縫製データ、更には、種
々のカッタ駆動位置データから、所望の穴かがり縫目の
縫製データとジグザグ縫目の縫製データとカッタ駆動位
置データを選択設定して、布送り機構、縫製機構、ボタ
ン穴形成機構を駆動制御するようにしてもよい。

【００７２】４〕ジグザグ縫目８５は左右交互に縫目を
形成する２点ジグザグ縫目に限定されることなく、公知
の３点ジグザグ縫目や４点ジグザグ縫目等、各種のジグ
ザグ縫目を適用できるし、この場合、それら複数のジグ
ザグ縫目を用意しておいて、パラメータ決定により所望
のジグザグ縫目を設定できるようにしてもよい。

【００７３】尚、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前
記実施形態や変形例に種々の変更を付加した形態で実施
することも可能であるし、穴かがりミシンに関わらず、
少なくとも、布送り機構と縫製機構と制御装置を備えた
ミシンに本発明を適用可能である。

【００７４】

【発明の効果】 請求項１の穴かがりミシンによれば、
加工布に欠陥のある穴かがり縫目を形成した状態でボタ
ン穴が形成された場合でも、制御手段により布送り手段
と縫製手段が制御され、ボタン穴の両側部位に亙るジグ
ザグ縫目を形成してから、穴かがり縫目の形成をやり直
すことができる。つまり、加工布に穴かがり縫目の形成
をやり直す際、前記ジグザグ縫目を形成してから行うこ
とにより、加工布のバタツキを防止し、加工布が糸で引
張られて縮み皺になるのを防止でき、それ故、ボタン穴
も幅方向に拡張しにくくなり、綺麗な穴かがり縫目を簡
単に且つ確実に形成することができる。更に、加工布が
ニット等の起毛素材からなる加工布の場合には、ジグザ
グ縫目により加工布の起毛部をある程度倒すことができ
るため、その部分においては、穴かがり縫目が加工布の
起毛部の下側に入り込みにくくなり、やり直された穴か
がり縫目の見栄えが一層良くなる。

【００７５】請求項２の穴かがりミシンによれば、制御
手段は、ジグザグ縫目を形成する際に、穴かがり縫目の
縫製開始点付近からジグザグ縫目の形成を開始し、ボタ
ン穴に沿って往復状にジグザグ縫目を形成して前記縫製
開始点で終了するように、布送り手段と縫製手段を制御
するので、ボタン穴の長さ方向略全域を亙るジグザグ縫
目を形成することができ、しかも、ジグザグ縫目の形成
後、連続的に穴かがり縫目を形成することができる。

【００７６】請求項３の穴かがりミシンによれば、制御
手段は、やり直された穴かがり縫目の形成後、ジグザグ
縫目のうちのボタン穴を横断する部位を切断する為に、
ボタン穴形成手段を制御するので、ボタン穴形成手段を
有効利用して、最終的にボタン穴を確実にあけることが
可能になる。

【００７７】請求項４の穴かがりミシンによれば、制御
手段に対して、ジグザグ縫目の形状とサイズを規定する
複数の第１パラメータを設定する為の第１パラメータ設
定手段を設けたので、穴かがり縫目に対応する形状とサ
イズのジグザグ縫目を形成することが可能になる。

【００７８】請求項５の穴かがりミシンによれば、制御
手段に対して、穴かがり縫目の形状とサイズを規定する
複数の第２パラメータを設定する為の第２パラメータ設
定手段を設けたので、所望の形状とサイズの穴かがり縫
目を形成することができ、これら第２パラメータの一部
を前記第１パラメータとして活用するので、第１パラメ
ータの新たに設定する設定数を低減して設定作業を簡単
に行うことができ、穴かがり縫目に対応するジグザグ縫
目の形状とサイズを容易に設定することが可能になる。

【００７９】請求項６の穴かがりミシンによれば、制御
手段は、穴かがり縫目の縫製を開始する前に、ボタン穴
の形成予定部の両側部位に亙るジグザグ縫目を形成する
ように、布送り手段と縫製手段を制御するので、加工布
がニット等の起毛素材からなる加工布の場合、ジグザグ
縫目により加工布の起毛部をある程度倒すことができる
ため、その部分においては、穴かがり縫目が加工布の起
毛部の下側に入り込みにくくなり、穴かがり縫目の見栄
えを良くすることができる。また、ジグザグ縫目により
加工布を補強できるため、布縮み等を防止して、綺麗な
穴かがり縫目を形成するうえでも有利になる。

【００８０】請求項７の穴かがり縫目形成方法によれ
ば、第１ステップにおいて、ボタン穴の形成予定部の両
側部位に亙るジグザグ縫目を形成するので、特に、加工
布がニット等の起毛素材からなる加工布の場合に、ジグ
ザグ縫目により加工布の起毛部をある程度倒すことがで
きる。それ故、第２ステップにおいて、そのジグザグ縫
目上に穴かがり縫目を形成しても、その穴かがり縫目が
加工布の起毛部の下側に入り込みにくくなり、穴かがり
縫目の見栄えを良くすることができる。それ故、請求項
１と同様に、加工布に欠陥のある穴かがり縫目を形成し
た状態でボタン穴が形成された場合でも、第１ステップ
において、ボタン穴の両側部位に亙るジグザグ縫目を形
成してから、第２ステップにおいて、そのジグザグ縫目
上に穴かがり縫目を形成し、穴かがり縫目の形成をやり
直すことができるため、綺麗な穴かがり縫目を簡単に且
つ確実に形成することが可能になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施形態に係る穴かがりミシンの斜視
図である。

【図２】穴かがりミシン要部の右側面図である。

【図３】布送り機構の斜視図である。

【図４】縫製機構の斜視図である。

【図５】ボタン穴形成機構の斜視図である。

【図６】制御装置を含む制御系のブロック図である。

【図７】操作パネルの正面図である。

【図８】複数のパラメータを表す図表（１／４）であ
る。

【図９】複数のパラメータを表す図表（２／４）であ
る。

【図１０】複数のパラメータを表す図表（３／４）であ
る。

【図１１】複数のパラメータを表す図表（４／４）であ
る。

【図１２】穴かがり縫目形状を示し、（ａ）は角形
（ｂ）は放射形（ｃ）は円形の穴かがり縫目である。

【図１３】制御装置で実行される制御のフローチャート
である。

【図１４】穴かがり縫目の平面図である。

【図１５】欠陥のある穴かがり縫目の平面図である。

【図１６】欠陥のある穴かがり縫目とジグザグ縫目の平
面図である。

【図１７】ジグザグ縫目と穴かがり縫目の平面図であ
る。

【符号の説明】

Ｍ 穴かがりミシン ４ 操作パネル ５ 制御装置 １０ 布送り機構 ３０ 縫製機構 ６０ ボタン穴形成機構 ６１ カッタ ７０ 穴かがり縫目 ８０ ボタン穴 ８５ ジグザグ縫目

フロントページの続き (72)発明者 柴田 到 名古屋市瑞穂区苗代町15番１号 ブラザ ー工業株式会社内 (72)発明者 近藤 隆 名古屋市瑞穂区苗代町15番１号 ブラザ ー工業株式会社内 (72)発明者 蒲野 淳 名古屋市瑞穂区苗代町15番１号 ブラザ ー工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平10−328454（ＪＰ，Ａ) 特開 平９−294884（ＪＰ，Ａ) 特開2000−312785（ＪＰ，Ａ) 特開 昭52−12060（ＪＰ，Ａ) 特公 昭61−49990（ＪＰ，Ｂ２) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) D05B 3/06

Claims (7)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 加工布を布送りする布送り手段と、加工
   布に縫目を形成する縫製手段と、加工布にボタン穴を形
   成するカッタを含むボタン穴形成手段と、布送り手段と
   縫製手段を制御して穴かがり縫目を形成させるとともに
   ボタン穴形成手段を制御して穴かがり縫目の内側にボタ
   ン穴を形成させる制御手段とを備えた穴かがりミシンに
   おいて、 前記制御手段は、欠陥のある穴かがり縫目を形成した状
   態でボタン穴形成手段によりボタン穴が形成された場合
   に、ボタン穴の両側部位に亙るジグザグ縫目を形成して
   から、穴かがり縫目の形成をやり直すように、布送り手
   段と縫製手段を制御することを特徴とする穴かがりミシ
   ン。
2. 【請求項２】 前記制御手段は、前記ジグザグ縫目を形
   成する際に、穴かがり縫目の縫製開始点付近からジグザ
   グ縫目の形成を開始し、ボタン穴に沿って往復状にジグ
   ザグ縫目を形成して前記縫製開始点で終了するように、
   布送り手段と縫製手段を制御することを特徴とする請求
   項１に記載の穴かがりミシン。
3. 【請求項３】 前記制御手段は、やり直された穴かがり
   縫目の形成後、ジグザグ縫目のうちのボタン穴を横断す
   る部位を切断する為に、ボタン穴形成手段を制御するこ
   とを特徴とする請求項２に記載の穴かがりミシン。
4. 【請求項４】 前記制御手段に対して、前記ジグザグ縫
   目の形状とサイズを規定する複数の第１パラメータを設
   定する為の第１パラメータ設定手段を設けたことを特徴
   とする請求項１〜３の何れか１項に記載の穴かがりミシ
   ン。
5. 【請求項５】 前記制御手段に対して、前記穴かがり縫
   目の形状とサイズを規定する複数の第２パラメータを設
   定する為の第２パラメータ設定手段を設け、これら第２
   パラメータの一部を前記第１パラメータとして活用する
   ことを特徴とする請求項４に記載の穴かがりミシン。
6. 【請求項６】 加工布を布送りする布送り手段と、加工
   布に縫目を形成する縫製手段と、加工布にボタン穴を形
   成するカッタを含むボタン穴形成手段と、布送り手段と
   縫製手段を制御して穴かがり縫目を形成させるとともに
   ボタン穴形成手段を制御して穴かがり縫目の内側にボタ
   ン穴を形成させる制御手段とを備えた穴かがりミシンに
   おいて、 前記制御手段は、穴かがり縫目の縫製を開始する前に、
   ボタン穴の形成予定部の両側部位に亙るジグザグ縫目を
   形成するように、布送り手段と縫製手段を制御すること
   を特徴とする穴かがりミシン。
7. 【請求項７】 加工布を布送りする布送り手段と、加工
   布に縫目を形成する縫製手段とを制御して穴かがり縫目
   を形成する穴かがり縫目形成方法において、 ボタン穴の形成予定部の両側部位に亙るジグザグ縫目を
   形成する第１ステップと、そのジグザグ縫目上に穴かが
   り縫目を形成する第２ステップとを備えたことを特徴と
   する穴かがり縫目形成方法。