JP3498768B2 - ポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリカーボネート
樹脂の製造法に関し、詳しくは界面重合反応によりポリ
カーボネート樹脂を得るに際して、ポリカーボネート樹
脂溶液を中和するために使用する鉱酸の使用量を削減
し、また、得られるポリカーボネート樹脂の成形時の耐
熱性、色相を低下させない方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリカーボネート樹脂の製法には、溶液
重合法と溶融法(エステル交換法)の2種類に大別され
る。溶液重合法には、ピリジン法と界面重合法があり、
従来よりポリカーボネート樹脂の製造法は、界面重合法
が主流となっている。
【0003】界面重合法では、芳香族ビスフェノールを
苛性アルカリ溶液に溶解し、有機溶媒の存在下でホスゲ
ンと反応させ、必要に応じて重縮合触媒を加えて攪拌を
行い重合反応を完結させる。この重合方法により得られ
るポリカーボネート樹脂は、有機溶媒に溶解した樹脂溶
液として得られるが、アルカリ性雰囲気下で重合反応を
進行させるため、樹脂溶液中には副生成物である塩化物
や炭酸塩の他、苛性アルカリが残存している。苛性アル
カリなどのアルカリ性物質がポリカーボネートに残存す
ると耐熱性や色相に悪影響を及ぼすため、通常ポリカー
ボネート樹脂溶液に鉱酸を加えることによって、苛性ア
ルカリを中和する工程が必要となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】鉱酸としては燐酸、塩
酸、硫酸などが使用されるが、苛性アルカリの中和を完
全に行うことを目的として、理論上以上の鉱酸を過剰に
添加することが通常行われる。鉱酸によって中和したの
ち、遠心分離などの操作によって樹脂溶液は分離され、
過剰の鉱酸を含む水層は除去され、排水される。しかし
ながら、未反応の鉱酸を含む水層は酸性度が高いため、
そのまま系外へ排水することは環境上問題があるので、
排水のpH値を調整するための排水処理設備が必要とな
る。
【0005】さらに近年においては、湖沼や内海などの
富栄養化対策などにより、排水中の燐濃度についてその
管理が厳しく制限されるようになってきている。特に、
ポリカーボネート樹脂の製造プラントにあっては、中和
用の鉱酸として、燐酸や亜燐酸など燐原子を含んだ鉱酸
を用いる際には、その鉱酸使用量を最小限に抑えること
が必要となる。
【0006】そこで、本発明者らは、中和反応後分離さ
れた水層の酸排水中には、未反応の鉱酸が残存している
ことに着目し、鋭意検討した結果、本発明に至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、芳香
族ビスフェノール化合物を苛性アルカリ水溶液に溶解
し、有機溶媒の存在下でホスゲン化反応させることによ
り重合反応を行うポリカーボネート樹脂の界面重合反応
において、重合反応により得られた苛性アルカリを含む
ポリカーボネート樹脂溶液に、鉱酸を加えて該樹脂溶液
を中和したのち樹脂溶液と水層を分離し、分離された水
層の20〜80%(容量)を回収して、再度中和反応に
使用することを特徴とする、ポリカーボネート樹脂の製
造方法である。好ましくは、中和に使用する鉱酸が燐酸
および/または燐酸である上記の方法であり、さらに
は、中和後の水層のpH値が4以下になるように、鉱酸
を添加する上記の方法である。本発明の方法により、鉱
酸の使用量が低減できるので、排水処理設備の負荷が軽
減できる。また、本発明の方法により得られるポリカー
ボネート樹脂は、耐熱性、色相共に、従来の方法のポリ
カーボネート樹脂と遜色ないことが分かった。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明について説明する。
本発明でいうポリカーボネート樹脂は、従来のポリカー
ボネート樹脂の製法、すなわち界面重合法、ピリジン法
等の溶液法により製造されたものであり、2価フェノー
ル系化合物を主成分とし、少量の分子量調節剤あるいは
末端停止剤および所望により分岐化剤を用いてホスゲン
と反応させることにより製造されたものである。ビスフ
ェノール類を使用してなる、芳香族のホモ或いはコポリ
カーボネート樹脂、更に分岐化されたもの、末端に長鎖
アルキル基を導入したものなどの、粘度平均分子量とし
て、13000〜100000の範囲のものが適用可能
である。さらには、末端停止剤やコモノマーとして、炭
素−炭素二重結合を有する化合物を反応させた二重結合
を有するポリカーボネート樹脂を製造し、これにスチレ
ンなどをグラフト反応したポリカーボネート樹脂、また
はポリスチレン等にフェノール系水酸基、その他の反応
性モノマーをグラフト重合したポリカーボネート樹脂な
ど、何れも適用可能である。これらの中で、芳香族ポリ
カーボネート樹脂としては、特に、ビスフェノールAを
主原料とするポリカーボネートが挙げられ、これに例え
ばビスフェノールZやテトラブロムビスフェノールA
(TBA)などを併用して得られるポリカーボネート共
重合体、これらの分岐化物や末端長鎖アルキル変性した
ものが好ましい。
【0009】本発明のポリカーボネート樹脂の製造法に
使用するビスフェノール系化合物として好ましいもの
は、具体的にはビス(4−ヒドロキシフェニル)メタ
ン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス
(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒド
ロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシ
フェニル)スルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニ
ル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)
エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロ
パン(ビスフェノ−ルA;BPA)、2,2−ビス
(3,5−ジブロム−4−ヒドロキシフェニル)プロパ
ン2(TBA)、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)
ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シク
ロヘキサン(ビスフェノ−ルZ;BPZ)、2,2−ビ
ス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロ
パン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロ
ロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ
−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−
ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、2,2−
ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパ
ン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル
フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフ
ェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシ
フェニル)ジフェニルメタン、α,ω−ビス[3−(O
−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキ
サン(PDS)、ビフェノールなどが例示される。これ
らは、2種類以上併用して用いてもよい。中でもビスフ
ェノ−ルA、ビスフェノ−ルZ、TBA、PDSから選
ばれるものが望ましい。
【0010】本発明において、末端停止剤あるいは分子
量調節剤を使用することができる。末端停止剤あるいは
分子量調節剤としては、1価のフェノール性水酸基を有
する化合物が挙げられ、通常のフェノール、p−t−ブ
チルフェノール、トリブロモフェノール等の他、長鎖ア
ルキルフェノール、脂肪族カルボン酸クロライド、脂肪
族カルボン酸、芳香族カルボン酸、芳香族酸クロライ
ド、ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル、アルキルエ
ーテルフェノールなどが挙げられる。また、反応性二重
結合を有する末端停止剤として用いてもよく、その場合
の例として、アクリル酸、ビニル酢酸、2−ペンテン
酸、3−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、9−ウンデセン
酸などルコ−ルクロロホーメート、イソプロペニルフェ
ノールクロロホルメートまたはヒドロキシスチレンクロ
ロホーメート等の酸クロライドまたはクロロホーメー
ト;イソプロペニルフェノール、ヒドロキシスチレン、
ヒドロキシフェニルマレイミド、ヒドロキシ安息香酸ア
リルエステルまたはヒドロキシ安息香酸メチルアリルエ
ステルなどの不飽和基を有するフェノール類等が挙げら
れる。これらの中で、フェノール、p−t−ブチルフェ
ノールが好ましい。
【0011】末端停止剤あるいは分子量調節剤の使用量
としては、上記した2価フェノール系化合物1モルに対
して、通常、1〜25モル%、好ましくは1.5〜10
モル%の範囲で使用される。また、末端停止剤は有機溶
媒溶液あるいは苛性アルカリの水溶液の状態で添加する
ことができるが、アルカリ水溶液の状態で放置すると、
赤く変色してポリカーボネート樹脂の成形品の色相に影
響を与えるため、有機溶媒溶液として添加することが好
ましく、通常10〜30重量%の溶液として添加され
る。
【0012】本発明において、用いられる有機溶媒とし
ては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロ
ロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、四塩化炭
素、等の塩素化炭化水素類;ベンゼン等の芳香族炭化水
素;ジエチルエーテル等のエーテル系化合物を挙げるこ
とができ、これらの有機溶媒は二種以上を混合して使用
することもできる。また、所望により前記以外のエーテ
ル類、ケトン類、エステル類、ニトリル類などの水と親
和性のある溶媒を混合溶媒系が水と完全に相溶しない限
度内で使用してもよい。
【0013】更に、分岐化剤を上記の二価フェノール系
化合物に対して、0.01〜3モル%、特に0.1〜
1.0モル%の範囲で併用して、分岐化ポリカーボネー
トとすることができる。分岐化剤としては、フロログル
シン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒド
ロキシフェニル)ヘプテン−3、4,6−ジメチル−
2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン
−2、1,3,5−トリ(2−ヒドロキシフェニル)ベ
ンゾール、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニ
ル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチ
ルベンジル)−4−メチルフェノール、α,α′,α″
−トリ(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリ
イソプロピルベンゼンなどで例示されるポリヒドロキシ
化合物、及び3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)
オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−
クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサ
チンビスフェノール、5ーブロムイサチンビスフェノー
ルなどが例示される。
【0014】通常、界面重合反応では、芳香族ビスフェ
ノール化合物を苛性アルカリ水溶液に溶解し、有機溶媒
の存在下でホスゲン化反応させ、必要に応じて重縮合触
媒を添加し、攪拌することにより重合反応を行う。重合
反応が終了すると、有機層のポリカーボネートの樹脂溶
液と、副生成物の塩化物、炭酸塩、苛性アルカリなどを
含む水層の2層に分離する。分離が不十分な場合は、静
置分離や遠心分離などの手段を用いて分離させる。
【0015】通常、重合反応後のポリカーボネート樹脂
溶液は、4〜27w/w%の濃度として得られるが、鉱
酸を用いた中和反応を効率よく行うために、あらかじめ
19w/w%以下になるまで希釈しておくことが好まし
い。該樹脂溶液中には、副生成物の塩を含んだ水分の
他、未反応のビスフェノールモノマーが含まれているた
め、鉱酸で中和する前に、苛性アルカリなどを加えて攪
拌し、未反応ビスフェノールモノマーを水層側に抽出さ
せ、遠心分離して水層を除去しておくことが好ましい。
【0016】苛性アルカリ水溶液を含むポリカーボネー
ト樹脂溶液に対し、鉱酸を加えて中和反応を行う。樹脂
溶液中にはアルカリ性の微細な水滴が含まれているた
め、各微細水滴が中和されるように、強力な剪断力を与
えて攪拌を行うことが好ましい。鉱酸の濃度としては、
樹脂溶液への分散性を効率良く行うために、水で希釈し
て、0.1〜30w/v%の濃度として加えることが好
ましく、より好ましくは、0.1〜10w/v%の濃度
範囲である。
【0017】鉱酸の使用量は、鉱酸の濃度により異な
り、樹脂溶液中の苛性アルカリを完全に中和させるため
に、理論値よりも若干過剰量添加して、中和後の水層の
pH値が4以下になるように添加することが好ましく、
より好ましくは、0.5〜3.5の範囲になるように鉱
酸添加量を定める。
【0018】ポリカーボネート樹脂溶液と鉱酸との混合
液を、静置分離、好ましくは遠心分離を行うことによっ
て、ポリカーボネート樹脂溶液と水層とに分離する。水
層中には鉱酸と苛性アルカリの中和反応によって生成し
た塩の他、未反応のフリーの鉱酸が溶解している。本発
明では、水層を回収して再度中和反応に使用するが、回
収する水層の量は、その割合が高すぎると回収水中に不
純物が濃縮して、樹脂溶液中へ不純物が残存するので好
ましくない。遠心分離等により分離される水層の20〜
80%(容量)に相当する量にすることが好ましい。回
収率を上げて鉱酸の使用量を極力抑えることを目的とし
て、回収する水層の量としては、通常は30〜80%の
範囲で行われる。
【0019】回収した水層は、そのまま中和反応用に再
使用することも可能であるが、中和反応で消費された量
に相当する鉱酸を新たに補給して、再使用に供すること
が好ましい。補給する鉱酸の量は、中和反応後の水層の
pH値が4以下になるように添加することが好ましい。
【0020】上記の方法により得られたポリカーボネー
ト樹脂溶液は、必要に応じて純水を添加して攪拌混合す
ることにより洗浄を行い、遠心分離することにより精製
ポリカーボネート樹脂溶液が得られる。精製樹脂溶液
は、攪拌下の温水に滴下したり、ニーダーなどに投入す
るなど従来の方法によって粒状化することが可能であ
る。溶媒や水分を含むポリカーボネート樹脂粒状体を、
乾燥機により乾燥させることにより、押出加工や成形加
工に適した粒状物が得られる。
【0021】
【実施例】次に本発明を実施例により詳しく説明する
が、本発明はその要旨をこえない限り以下の実施例に限
定されるものではない。
【0022】(1)ポリカーボネート樹脂溶液の調整;
アジター型攪拌機(島崎製作所製、三角型2枚翼、反転
数135cpm)が設置された、内容積100Lの攪拌
槽に、ビスフェノールA7kg、8.8w/w%の水酸
化ナトリウム水溶液31L、ハイドロサルファイト(H
D)30gを添加してビスフェノールAを溶解し、メチ
レンクロライド11Lを加えて、アジター型攪拌機で攪
拌しつつ、ホスゲン3.4kgを30分かけて吹き込み
ホスゲン化反応を行った。ホスゲン化反応終了後、攪拌
を停止し、5分間静置分離後、反応溶液に末端停止剤と
して、p−t−ブチルフェノール295gを2Lのメチ
レンクロライドに溶解したものと、8.8%水酸化ナト
リウム水溶液4L、メチレンクロライド9Lを加えて攪
拌を行った。5分後、攪拌下の反応溶液へ重合触媒とし
て、トリエチルアミンを50mL添加して、さらに60
分攪拌を行い重合反応を完結させた。重合樹脂液はアル
カリ性の水層と、ポリカーボネート樹脂溶液の2層に分
離した。上液を除去し、樹脂溶液にメチレンクロライド
5Lと純水10Lを添加してアジターで攪拌し、混合液
を遠心分離機で苛性アルカリを含むポリカーボネート樹
脂溶液を分離した。この樹脂溶液を加熱濃縮することに
よって濃度を求めたところ、19w/w%であった。
【0023】(2)酸中和後の水層の調整;得られた苛
性アルカリを含むポリカーボネート樹脂溶液70Lに対
して、1.0w/w%の燐酸10Lを添加して、ホモミ
キサー(特殊機化工)を用いて30分攪拌後、遠心分離
して酸性のポリカーボネート樹脂溶液と酸性の排水に分
離した。排水の量は9.98Lであり、pH値を測定し
たところ1.7であった。
【0024】(3)乾燥粉末の押出;乾燥機で乾燥した
粉末を2軸ベント付押出機(スクリュー径65mm、全長
L/D=30、ベント部 Lv /D=4)へ供給した。押
出とともに溶媒を留去し、ペレット化した。押出条件
は、樹脂の最高温度280℃、ベント圧力9Torrと
した。
【0025】(4)色相評価方法;射出成形機を用いて
各ペレットを、射出成形機(住友重機械工業(株)製ネ
オマット350/120)で樹脂温度320℃、金型温
度80℃、保持圧1000kg/cm2 で50mm×60
mm、厚さ3mmのプレート片を連続的に5枚成形し、成形
片を日本電色(株)色差計で測色し、YI値(黄色味を
示す指標)を求めた。
【0026】(5)溶融試験;試験管にペレット4gを
入れ、乾燥機で120℃、4時間乾燥後、試験管を34
0℃に保持したブロックバスへ挿入し、窒素気流下で1
時間溶融させ、GPC測定によって溶融前後の粘度平均
分子量を求め、分子量低下を調べた。
【0027】実施例1 上記した(1)と同様の方法で得られたアルカリ性のポ
リカーボネート樹脂溶液70Lに、上記(2)で得られ
た酸排水3L(30%回収)と1.0v/v%燐酸7L
を加えて、ホモミキサーで30分攪拌後、遠心分離し
て、精製ポリカーボネート樹脂溶液を得た。このとき水
層のpH値は2.2であった。精製ポリカーボネート樹
脂溶液50Lにn−ヘプタン10Lを加えて混合し、混
合溶液を攪拌下の45℃の温水に滴下して、ポリカーボ
ネート樹脂粒状体の水スラリー液を得、温水の温度を1
00℃に昇温して溶媒を留去し、濾過することによって
湿潤粉末を得た。湿潤粉末を145℃、3時間乾燥する
ことによって乾燥ポリカーボネート粉末を得た。
【0028】得られた粉末をペレット化した後、プレー
ト片を成形したところ、色相YI値は1.3であった。
さらにシリンダー内で溶融樹脂を20分間保持させてプ
レート片を成形(滞留成形試験)したところ、そのプレ
ートのYI値は1.4(△YI=0.1)であった。ま
た、ペレットの溶融試験を行ったところ、溶融前の粘度
分子量が21400であり、溶融試験後の粘度分子量が
21200(△Mv=200)であった。
【0029】実施例2 実施例1において、上記(2)で得られた酸排水を8L
(80%回収)と1.0v/v%燐酸3Lを加えた以外
は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0030】比較例1 実施例1において、酸排水の回収率を9L(90%回
収)にし、1.0v/v%燐酸3Lを加えた以外は実施
例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0031】比較例2 実施例1において、酸排水の回収を行わないで、1.0
v/v%燐酸10Lのみを加えた以外は、実施例1と同
様に行った。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【発明の効果】界面重合反応により得られる、苛性アル
カリを含むポリカーボネート樹脂溶液を鉱酸を用いて中
和し、分離された水層の一部を回収して、中和反応に再
利用することにより、使用する鉱酸の使用量を削減する
ことができる。さらに、この方法により製造されたポリ
カーボネート樹脂は耐熱性、色相ともに従来法と変わら
ない品質を維持することができるため、プロセスの大幅
な改造の必要がなく、排水処理設備への負荷も軽減でき
るためその工業的意義は大きい。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 芳香族ビスフェノール化合物を苛性アル
    カリ水溶液に溶解し、有機溶媒の存在下でホスゲン化反
    応させることにより、重合反応を行うポリカーボネート
    樹脂の界面重合反応において、重合反応により得られた
    苛性アルカリを含むポリカーボネート樹脂溶液に、鉱酸
    を加えて該樹脂溶液を中和した後、樹脂溶液と水層を分
    離し、分離された水層の20〜80%(容量)を回収し
    て、再度中和反応に使用することを特徴とする、ポリカ
    ーボネート樹脂の製造方法。
  2. 【請求項2】 中和に使用する鉱酸が燐酸および/また
    は亜燐酸である請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 中和後の水層のpH値が4以下になるよ
    うに、鉱酸を添加する請求項2記載の方法。
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