JP3482652B2 - 大粒径テトラブロモビスフェノールa及びその製造方法 - Google Patents

大粒径テトラブロモビスフェノールa及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、大粒径の単結晶である
ことによる、粉体物性が優れ、さらに不純物を低減し
た、高品質テトラブロモビスフェノールA(以下TBA
と略記する)及び、その製造方法に関するものである。
【0002】TBAは、エポキシ樹脂およびABS樹脂
等の難燃剤として、有用な化合物である。
【0003】
【従来の技術】TBAは、各種樹脂の難燃剤として多量
に使用されている。添加型難燃剤としてはABS樹脂等
に、反応型難燃剤としてはエポキシ樹脂等に使用されて
いる。添加型としての使用は、ペレットまたは粉状の樹
脂とTBAの粉体を混合し、練り込んだ後成型される。
しかし、従来のTBAは、付着性,凝集性,流動性等の
粉体物性に問題の多い、取扱い難い粉体である。特に近
年は、粉塵による作業環境の悪化が問題となっている。
また、熱安定性が悪いため、樹脂への練り込み、成型加
工での着色等の問題、さらには生産性が悪いという問題
がある。
【0004】TBAは通常、アルコール,ハロゲン化炭
化水素等の有機溶媒を用いて、ビスフェノールA(以
下、BPAと略記する)を臭素により臭素化し、反応液
に水等のTBAの溶解度の小さい溶媒を添加してTBA
の結晶を析出させ、ろ過、乾燥して製造される。
【0005】上記の従来法で製造されたTBAは、微細
粒子を多く含んだ、平均粒径50〜150ミクロンの凝
集粒子である。微細粒子を多く含んだ幅広い粒度分布の
ため、付着性,凝集性が強く、流動性が悪い、取扱い難
い粉体となっている。また、加水分解性臭素等不純物を
多く含んでいる。
【0006】しかしながら、従来、粉体物性の改善とい
う課題にたいしては何等提案されていない。TBAの製
造方法としては、特公昭41−3376号,特公昭41
−15293号,特開昭47−13418号などが、ま
た精製方法としては、特公昭52−5508号,特公昭
61−25009号,特開昭64−3139号などが提
案されているが、いずれも色,不純物等に対するもので
あり、TBAの結晶形状,粉体物性について何等開示す
るものでない。
【0007】反応型難燃剤として多量に使用されている
エポキシ樹脂用途では、TBA中に含まれる加水分解性
臭素が、樹脂の硬化反応や硬化後の樹脂特性に悪影響を
及ぼすため問題となっている。従って、これらの用途に
使用するTBAは、加水分解性臭素含有量低減のため精
製が必要である。特開昭64−3139号では、特に有
効な精製方法として、TBAを芳香族炭化水素に加熱溶
解させ、アルカリ金属水溶液を滴下しながら処理し、中
和、水洗、冷却して結晶を析出する方法が提案されてい
る。また、特開昭49−110653号ではTBAをア
ルカリ水溶液と懸濁した状態で接触させる精製方法が提
案されている。
【0008】しかしながら、これらの精製方法を実施し
ても、得られるTBAは50〜100ppm程度の加水
分解性臭素を含有しており、必ずしも満足できるもので
はなかった。更に、これらの方法は熱安定性及び粉体物
性の改善という課題に対しては何等提案していない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来
の粉体及びその製造方法では満足されなかった、結晶形
状、粉体物性を改善し加水分解性臭素含有量を低減さ
せ、熱安定性の良い大粒径で高品質なTBA及びその製
造方法を提供することにある。
【0010】本発明に於いて言う加水分解性臭素とは、
TBAを水酸化カリウム−メタノール溶液に溶解させた
後、15分間加熱還流した時に脱離する臭素イオン量を
TBAの重量比で表したものである。
【0011】尚、この臭素イオン量の定量は、硝酸銀水
溶液による電位差滴定法や、イオンクロマトグラフィー
等で実施できる。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の事
情に鑑み、不純物の低減及び粉体物性を改善すべく鋭意
検討を行った結果、微細粒子を多く含んだ凝集粒子を大
粒径で多面体の単結晶とすることで、不純物を低減させ
粉体物性が改善されることを見出した。
【0013】TBAは本来八面体の結晶である。また、
真比重は2という粉体である。しかし、従来のTBAは
微細粒子の多い凝集体、幅広い粒度分布をもつ粉体であ
るため、付着性や凝集性が強く、しかも流動性が悪かっ
た。
【0014】そして、BPAをアルコール系溶媒中で臭
素化し、水を添加して晶析、ろ過により得たTBAの結
晶をアルコール系溶媒に溶解した後、加熱撹拌してアル
コール系溶媒を蒸発溜出させ、結晶を析出させることに
より大粒の単結晶となり、粉体物性が改善されたTBA
が得られた。さらに水を添加して晶析、ろ過により得た
TBAの結晶をアルコール系溶媒に溶解しアルカリ水溶
液を添加した後、溶媒を蒸発溜出させることにより加水
分解性臭素量を低減した高品質TBAが得られることを
見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】TBAの結晶を析出させる方法に於いて、
水等、TBAの溶解度の小さい溶媒を添加して晶析する
従来法では、結晶を成長させることは困難であり、微細
粒子が多く凝集結晶となる。このため、母液中の不純物
の結晶への取込みは避けられなかった。本発明の方法で
ある、TBAを溶解したアルコール系溶媒を蒸発溜出さ
せ、濃縮して結晶化させる蒸発晶析によって、TBAの
結晶を大きく成長させ大粒径の単結晶とすることが可能
になった。さらに単結晶とすることで、母液中の熱に不
安定な不純物等の結晶への取込みはきわめて少なくな
り、高品質のTBAが得られることが可能になった。
【0016】加水分解性臭素は、BPA中の不純物及び
/又はTBAの側鎖アルキル基が臭素化された比較的弱
い炭素−臭素結合を持つアルキルブロマイド類から生じ
ると考えられる。従って、アルカリを添加して、アルキ
ルブロマイド類を加水分解し、臭素を脱離させた後、蒸
発晶析し、母液中の不純物の結晶への取込みの少ない、
大粒径の単結晶に成長させることにより、加水分解性臭
素の低減されたTBAを得ることができる。
【0017】本発明の要旨は、付着性,凝集性,流動性
等の粉体物性が改善された、高品質で熱安定性の良い、
大粒径で多面体の単結晶TBA及びその製造方法にあ
る。
【0018】以下その詳細について説明する。
【0019】従来のTBAは、45ミクロン以下の微細
粒子を多く含んだ凝集体であり、平均粒径50〜150
ミクロンの幅広い粒度分布をもつ粉体である。さらにこ
れらの微細粒子は、不定形である。このため粒子間の結
合力が強く、付着性、凝集性の強い粉体となっている。
このことは、従来のTBAの粉体物性は安息角45〜5
5度、圧縮度35〜50%であることからも明らかであ
り、流動性が悪く、取扱い難い粉体である。
【0020】一方、本発明のTBAは、本来の八面体で
定形の単結晶であるが、製造する条件によっては、角が
取れた四方両垂台、あるいは一部変形し多面体の単結晶
となる。微細粒子は少なく、平均粒径150〜500ミ
クロンでシャープな粒度分布である。このため、粒子間
の結合力が弱く、付着性、凝集性は極めて弱くなり、安
息角は35〜45度、圧縮度は15〜30%という流動
性の良い粉体である。本発明においては、まずBPAを
アルコール系溶媒中、臭素により臭素化し、反応後、反
応液に水を添加しTBAの結晶を析出させ、ろ過により
湿結晶を得る。この反応工程は、公知の方法、例えば、
特公昭41−3376号公報等に記載の方法に従って行
なわれる。この結晶をアルコール系溶媒に再溶解した
後、加熱、撹拌しながら、結晶が析出するまでアルコー
ル系溶媒を蒸発溜出させる。しかる後、ろ過、乾燥して
大粒の単結晶TBAを得る。
【0021】本発明の方法に於いていうアルコール系溶
媒としては、炭素数4以下のアルキルアルコールが適当
であり、特にメタノール、エタノール、プロパノール等
が適している。臭素化反応に使用するアルコール系溶媒
と、再溶解するアルコール系溶媒は同一である必要はな
い。
【0022】アルコール系溶媒に再溶解する際のTBA
の濃度は、格別の限定はないが5〜50重量%程度であ
る。
【0023】アルコール系溶媒に再溶解した後の加熱温
度は、使用したアルコール系溶媒を常圧もしくは減圧下
蒸発留出させるに必要な温度以上である。さらに、アル
コール系溶媒を蒸発留出させる速度および留出量によっ
て、結晶の大きさが調節される。また溶媒の蒸発留出量
についての格別の限定はないが、次のろ過工程の作業性
及び回収されるTBAの品質を考慮すると、スラリー中
の結晶の量が70重量%以下となることが好ましい。
【0024】蒸発晶析後のろ過は、蒸発晶析時の温度で
ろ過をすることも可能であり、また冷却をして、結晶を
さらに成長させた後にろ過をすることも可能である。さ
らに好ましくは、ろ過の後、水等で洗浄し、アルコール
系溶媒を除去する。
【0025】工業的な製品とするには乾燥することが必
要だが、その乾燥条件は、180℃以下、好ましくは1
00〜150℃であり、常圧、減圧のいずれでも可能で
ある。これらの一連の操作は、工業的には連続法で実施
することが可能である。
【0026】さらに、TBAの結晶をアルコール系溶媒
に再溶解した後、アルカリ水溶液を添加する操作を加え
ることにより、加水分解性臭素量を低減することができ
る。添加するアルカリ水溶液とは、アルカリ金属水酸化
物またはアルカリ金属炭酸化物の水溶液であり、ナトリ
ウム、カリウム、リチウム、マグネシウム等の水酸化物
または炭酸化物である。アルカリ水溶液の濃度の限定は
ない。添加するアルカリの量は、TBAに対して5重量
%以下好ましくは0.01〜1.0重量%である。
【0027】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
の製造方法により、TBAを平均粒径150〜500ミ
クロンの大粒径で多面体の単結晶とすることができ、大
粒径の結晶としたことにより、粉体物性即ち付着性,凝
集性,流動性が改善され、各種樹脂の難燃剤として使用
する際の作業性が大きく改善される。
【0028】さらに、結晶中の熱に不安定な不純物等の
量が少なく、加水分解性臭素値が5〜30ppmの耐熱
性の良い高品質なTBAを製造することが出来る。
【0029】本発明の高品質TBAを各種樹脂の難燃剤
として使用することにより、多くの改善が可能である。
添加型難燃剤として使用して得られたABS樹脂組成物
等は、成型加工時の熱による着色は極めて少なく、さら
に、加工温度を上げることが可能であることからも生産
性が改善される。一方、反応型難燃剤として使用して得
られたエポキシ樹脂組成物等では、加水分解性臭素に影
響される樹脂の硬化反応や、熱安定性等の樹脂特性が大
きく改善される。
【0030】
【実施例】以下に本発明の方法を実施例により具体的に
説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるも
のではない。
【0031】製造例1 温度計、攪拌翼及び冷却管を有する容量300mlのフ
ラスコに、メタノール136mlを仕込み、これにBP
A:18.3gを加えて溶解した。次に、20〜30℃
で、臭素:54.3gを3時間かけて滴下し、更に同温
度で2時間熟成を行った。熟成後、残存する臭素をヒド
ラジン水溶液を加えて還元した後、反応液に水:80m
lを加えて溶解するTBAを晶析させた。続いて、析出
した結晶を濾過し、水洗して湿結晶:42.5gを得
た。
【0032】実施例1 製造例1で得られた湿結晶:42.5gをフラスコに仕
込み、メタノール:150mlを加えて溶解した。続い
て、攪拌下、該反応液を65℃以上に加熱してメタノー
ルを留出させながらTBA結晶を析出させた。メタノー
ル:120mlを1時間かけて留出させたところで加熱
攪拌を停止した。析出した結晶を濾過し、これを水洗し
た後、120℃で乾燥して、39.5gの大粒の単結晶
TBAを得た。
【0033】この結晶をふるいを用い粒度分布を測定し
たところ、45μ以下は0.5重量%、45〜125μ
は2.5重量%、125〜300μが80.5重量%、
300μ以上が16.5重量%であった。更に、パウダ
ーテスターで測定したところ、安息角38度、圧縮度2
0%であった。
【0034】粉体物性の結果を表1にまとめた。
【0035】比較例1〜3 市販されているTBAの粉体物性を表1にまとめた。
【0036】
【表1】
【0037】実施例2 製造例1と同様の操作により得た湿結晶:42.5gを
フラスコに仕込み、メタノール:150mlを加えて溶
解した後、2%水酸化ナトリウム水溶液:0.5gを添
加した。続いて、攪拌下、該反応液を65℃以上に加熱
してメタノールを留出させながらTBA結晶を析出させ
た。メタノール:100mlを1時間かけて留出させた
ところで加熱攪拌を停止した。析出した結晶を濾過し、
これを水洗した後、120℃で乾燥して、38.0gの
大粒の単結晶TBAを得た。
【0038】この結晶をふるいを用い粒度分布を測定し
たところ、45μ以下は0.5重量%、45〜125μ
は2重量%、125〜300μが80重量%、300μ
以上が17.5重量%であった。
【0039】更に、硝酸銀水溶液による電位差滴定を行
ったところ10ppmの加水分解性臭素を含有してい
た。
【0040】実施例3 メタノールの代りにエタノールを用いた以外は、製造例
1と同様の操作を行い湿結晶:43.0gを得た。次
に、この湿結晶をフラスコに仕込み、エタノール:15
0mlを加えて溶解した後、2%水酸化カリウム水溶
液:1.0gを添加した。続いて、攪拌下、該反応液を
80℃以上に加熱してエタノールを留出させながらTB
A結晶を析出させた。エタノール:100mlを1時間
かけて留出させたところで加熱攪拌を停止した。析出し
た結晶を濾過し、これを水洗した後、120℃で乾燥し
て、39.5gの大粒の単結晶TBAを得た。
【0041】この結晶をふるいを用い粒度分布を測定し
たところ、45μ以下は0.5重量%、45〜125μ
は6重量%、125〜300μが78重量%、300μ
以上が15.5重量%であった。また、加水分解性臭素
量は15ppmであった。
【0042】比較例4 製造例1と同様の操作により得られた湿結晶を、120
℃で乾燥してTBAの結晶を得た。得られた結晶は、凝
集結晶であった。この結晶をふるいを用い粒度分布を測
定したところ、45μ以下は15重量%、45〜125
μは65重量%、125〜300μが20重量%であっ
た。また、加水分解性臭素量は80ppmであった。
【0043】比較例5 メタノールの代りにエタノールを用いた以外は、製造例
1と同様の操作を行い湿結晶を得た。これを120℃で
乾燥してTBAの結晶を得た。得られた結晶は、凝集結
晶であった。この結晶をふるいを用い粒度分布を測定し
たところ、45μ以下は20重量%、45〜125μは
60重量%、125〜300μが15重量%、300μ
以上が5重量%であった。また、加水分解性臭素量は1
20ppmであった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−221646(JP,A) 特開 昭64−3139(JP,A) 特開 昭52−5745(JP,A) 特開 昭49−110653(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 37/68 - 37/88 C07C 37/62 C07C 39/367

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】平均粒径が150〜500ミクロンで、か
    安息角が35〜45度、圧縮度が15〜30%である
    ことを特徴とする、テトラブロモビスフェノールA単結
    晶。
  2. 【請求項2】ビスフェノールAをアルコール系溶媒中で
    臭素化し、水を添加して晶析、濾過により得られたテト
    ラブロモビスフェノールAの結晶を析出させた後、アル
    コール系溶媒に溶解し、アルコール系溶媒をスラリー中
    の結晶の量が70重量%以下となるまで蒸発溜出させて
    結晶を析出させることを特徴とする、平均粒径が15
    0〜500ミクロンで、かつ安息角が35〜45度、圧
    縮度が15〜30%のテトラブロモビスフェノールAの
    製造方法。
  3. 【請求項3】ビスフェノールAをアルコール系溶媒中で
    臭素化し、水を添加して晶析、濾過により得られたテト
    ラブロモビスフェノールAの結晶を、アルコール系溶媒
    に溶解し、テトラブロモビスフェノールAに対して0.
    01〜1.0重量%のアルカリ量のアルカリ水溶液を添
    加した後、アルコール系溶媒をスラリー中の結晶の量が
    70重量%以下となるまで蒸発溜出させて結晶を析出
    せることを特徴とする、平均粒径が150〜500ミク
    ロンで、かつ安息角が35〜45度、圧縮度が15〜3
    0%、加水分解性臭素が5〜30ppmのテトラブロモ
    ビスフェノールAの製造方法。
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