JP3473444B2 - クロム酸化物含有物質の処理方法 - Google Patents
クロム酸化物含有物質の処理方法Info
- Publication number
- JP3473444B2 JP3473444B2 JP27212998A JP27212998A JP3473444B2 JP 3473444 B2 JP3473444 B2 JP 3473444B2 JP 27212998 A JP27212998 A JP 27212998A JP 27212998 A JP27212998 A JP 27212998A JP 3473444 B2 JP3473444 B2 JP 3473444B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- slag
- water
- blast furnace
- elution
- chromium oxide
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ステンレス鋼の精
錬の際に発生するステンレス鋼スラグ、重クロム酸ナト
リウムなどのクロム化合物の製造の際に発生するクロム
鉱滓、廃棄物溶融スラグなどのクロム酸化物含有物質中
のCr6+を無害化するクロム酸化物含有物質の処理方法に
関するものである。 【0002】 【従来の技術】ステンレス鋼精錬の際に発生するステン
レス鋼スラグ、および重クロム酸ナトリウムなどのクロ
ム化合物の製造の際に発生するクロム鉱滓は、数%のク
ロム酸化物を含有し、操業条件によっては、その一部は
過酸化クロムにまで酸化し、Cr 6+が溶出する場合があ
る。 【0003】このため、ステンレス鋼スラグ、クロム鉱
滓などを路盤材、仮設材、土木埋立材などとして使用す
る場合、スラグからCr6+が溶出しないことが絶対条件で
ある。また、近年、ゴミ焼却灰、汚泥などを溶融処理す
ることによってスラグ化し、生成したスラグを路盤材、
タイルなどとして有効利用することが検討されている
が、ゴミ焼却灰、汚泥などの種類によっては、生成した
スラグからCr6+が溶出する場合があり、有効利用を困難
にしている。 【0004】ステンレス鋼スラグからのCr6+の溶出防止
方法として、アルミ灰およびマグネシア系産業廃棄物を
受滓鍋内に敷き詰めておき、該受滓鍋内に溶融状態のス
ラグを排滓する方法が提案されている(特開平6−1719
93号公報参照)。しかし、上記したステンレス鋼スラグ
からのCr6+の溶出防止方法は、上記した添加剤を精錬炉
外で添加しているため、撹拌することができず、混合が
不十分となり、完全にCr6+の溶出を防止することができ
ない場合がある。 【0005】また、混合を十分に行うために、精錬炉内
で添加すれば、添加物による溶鋼の汚染が問題となる。
一方、重クロム酸ナトリウムなどのクロム化合物の製造
の際に発生するクロム鉱滓に関しては、Cr6+の溶出防止
方法として、一般に、スラグを還元焙焼して、Cr6+をCr
3+に還元して無害化する方法が採用されている。 【0006】しかし、上記したクロム鉱滓からのCr6+の
溶出防止方法は、焙焼法のため多量のエネルギーを必要
とし、経済性の面で問題があった。また、下水汚泥など
の場合、埋立処分前に減容化のために焼却処分が行われ
るが、この焼却灰からのCr6+の溶出防止方法として、焼
却時の空気比を1未満に制御する方法が採用されている
〔下水道協会誌、vol.38、No.378、p29-32(1994)参
照〕。 【0007】しかし、当該文献に示されるように、出処
などの異なる様々な性状の汚泥に対応して最適な運転を
行うことは非常に難しい課題であり、これは産業廃棄物
などの焼却処分においても同様であると考えられる。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記した従
来技術の問題点を解決し、ステンレス鋼スラグ、クロム
鉱滓、ゴミ焼却灰、汚泥などを溶融処理して得られる廃
棄物溶融スラグなどのスラグ、焼却灰などのクロム酸化
物含有物質からのCr6+の溶出を完全に防止すると共に、
添加剤による処理後の体積の増加を抑制し、経済性に優
れた方法で処理することが可能なクロム酸化物含有物質
の処理方法を提供することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記した
従来技術の問題点を解決するため種々の実験、検討を行
った。その結果、前記したスラグなどのクロム酸化物含
有物質を水に浸漬し、Cr6+の一部または多くを水へ溶出
するか、もしくはクロム酸化物含有物質を高炉スラグの
散水時に発生する高炉スラグ溶出水に浸漬し、Cr6+の一
部または多くを水へ溶出すると共に還元した後、酸化数
が+5価以下の硫黄含有物質と混合し、得られた混合物
に水蒸気を吹き込むことによって、経済性に優れた方法
で、被処理物の体積の増加を抑制し、無害化できること
を新規に見い出し、本発明に到った。 【0010】すなわち、本発明は、環境庁告示46号法
による溶出試験において50mg/l以上のCr6+が
溶出するクロム酸化物含有物質を、水および/または高
炉スラグへの散水時に発生する高炉スラグ溶出水に浸漬
した後、該クロム酸化物含有物質に未エージング高炉徐
冷スラグおよび/または溶銑予備処理スラグを接触させ
ると共に、水蒸気を吹き込むことを特徴とするクロム酸
化物含有物質の処理方法である。 【0011】前記した本発明においては、クロム酸化物
含有物質浸漬時の水または高炉スラグの散水時に発生す
る高炉スラグ溶出水または水および上記高炉スラグ溶出
水両者の混合水の温度を、40℃以上、100℃以下に
保持することが好ましい。 【0012】また、前記した本発明において、クロム酸
化物含有物質浸漬時に、水または高炉スラグへの散水時
に発生する高炉スラグ溶出水または水および前記高炉ス
ラグ溶出水両者の混合水を攪拌することが好ましい。さ
らに、前記した本発明において、前記した水および/ま
たは高炉スラグへの散水時に発生する高炉スラグ溶出水
に浸漬後のクロム酸化物含有物質に未エージング高炉徐
冷スラグおよび/または溶銑予備処理スラグを接触させ
ると共に、水蒸気を吹き込む方法として、水および/ま
たは高炉スラグへの散水時に発生する高炉スラグ溶出水
に浸漬後のクロム酸化物含有物質と未エージング高炉徐
冷スラグおよび/または溶銑予備処理スラグとを混合
し、得られた混合物に水蒸気を吹き込む方法を用いるこ
とがより好ましい。 【0013】 【発明の実施の形態】以下、本発明をさらに詳細に説明
する。本発明者らは、前記した従来技術の問題点を解決
するため種々の実験、検討を行った結果、ステンレス鋼
スラグ、クロム鉱滓などのクロム酸化物含有物質からの
Cr6+の溶出防止方法として、クロム酸化物含有物質と未
エージング高炉徐冷スラグとを混合し、得られた混合物
に水蒸気を吹き込む方法が有効であることを見出した。 【0014】ただし、上記した方法の場合、環境庁告示
46号法による溶出試験において50mg/l以上のCr6+が溶出
するスラグの場合、完全に無害化するためには、未エー
ジング高炉徐冷スラグを多量添加する必要があり、被処
理物の体積が増加し、取扱上、経済性の面での問題が残
され、改善すべき余地があった。このため、本発明者ら
は、被処理物の体積の増加を抑制し、経済性に優れた方
法で、Cr6+溶出量が50mg/l以上のクロム酸化物含有物質
からのCr6+の溶出を完全に防止することが可能なクロム
酸化物含有物質の処理方法について実験、検討を重ね
た。 【0015】この結果、スラグを、水または高炉スラグ
の散水時に発生する高炉スラグ溶出水(以下単に高炉ス
ラグ溶出水とも記す)に浸漬し、水中にCr6+を溶出する
か、または高炉スラグ溶出水中にCr6+を溶出すると共に
Cr6+を還元し、スラグからのCr6+の溶出量を低減した
後、これに酸化数が+5価以下の硫黄含有物質を接触さ
せると共に、水蒸気を吹き込むことによって、被処理物
の体積の増加を大幅に抑制し、経済性に優れた方法で、
Cr6+を還元し、完全に無害化することが可能であること
を見出した。 【0016】図1に、Cr6+が溶出するステンレス鋼スラ
グを水に浸漬した場合の、浸漬日数と、所定日数浸漬後
に取り出したスラグの環境庁告示46号法によるCr6+溶出
量との関係を示す。なお、図1に示す実験で用いたステ
ンレス鋼スラグの粒径は、26.5〜13.2mmであり、溶出試
験を行う際は−2mmに破砕処理して試験を行った。 【0017】図1に示すように、所定日数浸漬後に取り
出したスラグのCr6+溶出量は、水への浸漬時間が長くな
るにしたがい低下すると共に、日数経過後はほぼ一定の
Cr6+溶出量で推移する。すなわち、ステンレス鋼スラグ
は水に浸漬処理することによってCr6+溶出量を低下する
ことができるが、Cr6+溶出量が50mg/l以上のクロム酸化
物含有物質の場合、水への浸漬のみではCr6+溶出量を環
境基準値である0.05mg/l以下とすることは困難である。 【0018】なお、上記した実験において、水の代わり
に高炉スラグへの散水時に発生する高炉スラグ溶出水を
用いて浸漬実験を行った場合においても、図1と同様の
結果が得られた。次に、Cr6+が溶出するステンレス鋼ス
ラグを水に所定日数浸漬後、取り出したスラグと未エー
ジング高炉徐冷スラグとを混合することによって接触さ
せ、得られた混合物に水蒸気吹き込みを3日間行った。 【0019】上記した実験は、取り出したスラグに対す
る未エージング高炉徐冷スラグの添加量を変えて行っ
た。図2に、浸漬後取り出したスラグの環境庁告示46号
法によるCr6+の溶出量と、Cr6+の溶出量を環境基準値で
ある0.05mg/l以下にするために必要な未エージング高炉
徐冷スラグの添加量との関係を示す。 【0020】図2の縦軸の未エージング高炉徐冷スラグ
の添加量は、浸漬後取り出したスラグ〔100 重量部〕に
対する未エージング高炉徐冷スラグの必要添加量〔重量
部〕を示す。なお、図2におけるCr6+の溶出量が1mg/l
のステンレス鋼スラグは、攪拌している大量の高炉スラ
グ溶出水中に2個月間浸漬することによって得られたス
ラグである。 【0021】図2に示すように、ステンレス鋼スラグを
水に所定日数浸漬し、予めCr6+の溶出量を低減し、浸漬
後取り出したスラグと高炉徐冷スラグとを混合し、得ら
れた混合物に水蒸気を添加することによって、高炉徐冷
スラグの必要添加量を少なくすることができる。特に、
ステンレス鋼スラグを水に浸漬し、予めCr6+の溶出量を
50mg/l以下に低減することによって、高炉徐冷スラグの
必要添加量を著しく少なくすることができる。 【0022】なお、上記した実験において、水に代えて
高炉スラグへの散水時に発生する高炉スラグ溶出水に浸
漬して得られたステンレス鋼スラグを用いた場合におい
ても、図2と同様の結果が得られた。すなわち、本発明
によれば、クロム酸化物含有物質を、水、または高炉ス
ラグへの散水時に発生する高炉スラグ溶出水、または水
および前記高炉スラグ溶出水両者の混合水へ浸漬し、浸
漬後に取り出したスラグに、未エージング高炉徐冷スラ
グなどの酸化数が+5価以下の硫黄含有物質を接触させ
ると共に、水蒸気を吹き込むことによって、酸化数が+
5価以下の硫黄含有物質の添加量を大幅に削減した条件
下においても、Cr6+を完全に還元し、無害化することが
可能となった。 【0023】以下、本発明における[I] 水、高炉スラグ
への散水時に発生する高炉スラグ溶出水、[II]酸化数が
+5価以下の硫黄含有物質、[III] 水蒸気、[IV]処理条
件について説明する。 [I] 水、高炉スラグへの散水時に発生する高炉スラグ溶
出水: 〔水:〕本発明における水は、クロム酸化物含有物質か
らCr6+を溶出させることができれば特にその水質を問う
ものではなく、工業用水、雨水、河川水、湖沼水、再処
理水などを用いることが経済性の面から好ましい。 〔高炉スラグへの散水時に発生する高炉スラグ溶出
水:〕本発明における高炉スラグへの散水時に発生する
高炉スラグ溶出水(:高炉スラグ溶出水)とは、未エー
ジング高炉徐冷スラグ、すなわちJIS A 5015付属書1の
呈色判定試験方法において呈色があるスラグに水を散水
して得られた溶出水を示す。 【0024】上記した高炉スラグ溶出水としては、概
ね、自然エージング3個月未満の高炉徐冷スラグに水を
散水して得られた溶出水を用いることが好ましく、例え
ば、高温状態の高炉スラグに水を散水して生じた溶出水
が適する。高炉スラグ溶出水は、還元性の硫黄を含有す
るため、Cr6+が溶出した水中のCr 6+を還元する作用を有
し、Cr6+溶出水の後処理を容易にする利点がある。 【0025】また、本発明においては、水および/また
は高炉スラグ溶出水と、Cr6+を還元する作用を有す
る他の還元剤とを併用してもよい。すなわち、例えば、
硫酸第一鉄、亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を、水また
は高炉スラグ溶出水または水と高炉スラグ溶出水との混
合水に溶解して使用してもよい。 [II]酸化数が+5価以下の硫黄含有物質: 本発明における酸化数が+5価以下の硫黄含有物質とし
ては、下記の物質を用いる。 【0026】 【0027】(1)酸化数が+5価以下の硫黄含有スラ
グ; 酸化数が+5価以下の硫黄含有スラグとしては、酸化数
が+5価以下の硫黄を0.1wt%以上含むスラグが好
ましく、例えば、未エージング高炉徐冷スラグ、溶銑予
備処理スラグを用いる。 【0028】なお、上記した未エージング高炉徐冷スラ
グとしては、JIS A 5015付属書1の呈色判定試験方法に
おいて呈色があるスラグが好ましく、概ね、自然エージ
ング3個月未満の高炉徐冷スラグが好ましい。また、溶
銑予備処理スラグとしては、高炉において溶銑の脱硫、
脱燐を行う際に得られるスラグを用いることが好まし
い。 【0029】本発明においては、前記した酸化数が+5
価以下の硫黄含有物質を用いることによって、経済性に
優れた方法で、Cr6+を還元し、完全に無害化すると共
に、添加剤のクロム酸化物含有物質に対する添加率を低
くすることができ、体積の増加を最小限にすることがで
きる。 [III] 水蒸気: (水蒸気の吹き込み方式:)本発明において混合物に水
蒸気を吹き込む際の方式は特に制限されず、混合物の
表層に水蒸気を吹き付ける方式、混合物の内部に水蒸
気を吹き込む方式、混合物の下部から水蒸気を吹き込
む方式、これら〜を組み合わせた方式のいずれを
も用いることができる。 (水蒸気の吹き込み温度:)本発明において混合物に吹
き込む水蒸気の温度は特に限定されるものではない。 【0030】これは、大気中で水蒸気を吹き込む場合、
水蒸気の温度は通常100 ℃であるが、密閉容器中に高圧
力の水蒸気を吹き込む場合、内部が高圧となることか
ら、水の沸点が100 ℃よりも高くなり、水蒸気の温度も
圧力に応じて高くなるためである。なお、本発明におけ
る水蒸気を吹き込む方法としては、水蒸気を単独で吹き
込む方法に限定されず、空気、N2などの他のガスを含有
する水蒸気を吹き込んでもよい。 【0031】また、本発明においては、水蒸気を吹き込
む時間は特に限定しない。これは、スラグなど対象とす
るクロム酸化物含有物質の粒度、結晶性などによりCr6+
が溶出し易い形態となる時間が異なるためである。 [IV]処理条件: (クロム酸化物含有物質浸漬時の水温:)本発明におい
ては、クロム酸化物含有物質浸漬時の水または高炉スラ
グの散水時に発生する高炉スラグ溶出水または水および
上記高炉スラグ溶出水両者の混合水の温度を40℃以上、
100 ℃以下に保持することが好ましい。 【0032】これは、水温を40℃以上に保持することに
よって、スラグなどのクロム酸化物含有物質中のCr6+の
水中への溶出速度が速くなり、水または高炉スラグ溶出
水またはこれらの混合水への浸漬時間を短縮することが
出来るためである。すなわち、例えば、水温が常温の場
合と80℃の場合を比較すると、80℃の場合、常温の約3
倍の溶出速度となる。 【0033】水温が40℃未満の場合、水温上昇によるCr
6+の水への溶出速度の向上効果がほとんど得られない。
また、水または高炉スラグの散水時に発生する高炉スラ
グ溶出水またはこれらの混合水の温度を100 ℃よりも高
温にするためには加圧する必要があり、設備面および経
済性の面から好ましくない。 (クロム酸化物含有物質浸漬時の攪拌:)本発明におい
ては、クロム酸化物含有物質浸漬時に、水または高炉ス
ラグの散水時に発生する高炉スラグ溶出水またはこれら
の混合水を攪拌することが好ましい。 【0034】これは、上記した攪拌操作によって、スラ
グなどのクロム酸化物含有物質中のCr6+の水への溶出速
度が速くなるためである。すなわち、例えば、撹拌を行
わない場合と水平回転型攪拌翼の回転数:100rpmの条件
で攪拌を行った場合を比較すると、攪拌を行った場合、
撹拌を行わない場合の約3倍の溶出速度となる。 【0035】攪拌を行う場合の攪拌の方式は、攪拌翼
(羽根)を用いる方式、浸漬処理に用いる容器自体を
回転もしくは震盪する方式、浸漬処理に用いる容器内
の液をポンプなどによって循環する方式、浸漬処理に
用いる容器内の液中にガスを吹き込む方式などを用いる
ことができ、前記したまたはの方式を用いることが
より好ましいが、液を攪拌状態とすることができればそ
の方式は特に制限されるものではない。 (酸化数が+5価以下の硫黄含有物質の添加量:)水ま
たは高炉スラグ溶出水またはこれらの混合水に浸漬後の
クロム酸化物含有物質に接触させる酸化数が+5価以下
の硫黄含有物質の添加量は特に限定はされない。 【0036】これは、クロム酸化物含有物質のCr6+含有
量、酸化数が+5価以下の硫黄含有物質中の+5価以下
の硫黄含有量によって好適な添加量が異なるためであ
る。なお、ステンレス鋼スラグを未エージング高炉徐冷
スラグを用いて処理した場合の、水に浸漬後のステンレ
ス鋼スラグのCr6+溶出量と、ステンレス鋼スラグ100 重
量部に対する未エージング高炉徐冷スラグの必要添加量
との関係は、図2に示したとおりである。 【0037】未エージング高炉徐冷スラグの酸化数が+
5価以下の硫黄含有量は約0.5wt %であり、他の酸化数
が+5価以下の硫黄含有物質を用いる場合の添加量は、
+5価以下の硫黄の含有量に応じて設定することもでき
る。また、前記したように、浸漬処理において水に代え
て高炉スラグ溶出水を用いた場合も、図2と同様の結果
が得られ、この場合も上記と同様に酸化数が+5価以下
の硫黄含有物質の添加量を設定することができる。 【0038】前記したように、クロム酸化物含有物質を
浸漬した水、高炉スラグ溶出水もしくはこれらの混合水
中にはCr6+が溶出する。高炉スラグ溶出水を用いる場
合、溶出したCr6+は高炉スラグ溶出水中の還元性の硫黄
によって還元されCr3+となる。浸漬時に水を用いた場合
の水溶液中のCr6+または高炉スラグ溶出水を用いた場合
に高炉スラグ溶出水中に残存するCr6+は、例えば下記の
方法(1) 、(2) などの処理方法によってCr3+に還元、無
害化処理することができる。 【0039】(1)酸性条件下での還元、中和法:pH:2
〜3の酸性領域において亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナ
トリウム、硫酸第一鉄、亜硫酸ガスなどの還元剤を用い
て還元し、その後、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム
などによってpH:8〜9に中和し、Cr(OH)3 とし、沈
澱、分離する。 【0040】(2)アルカリ性条件下での還元法:アルカ
リ金属の硫化物または硫化水素化物を用い、60℃以上の
条件下で還元する。以上本発明について述べたが、本発
明は、Cr6+を含有するステンレス鋼スラグ、クロム鉱
滓、廃棄物溶融スラグなどのスラグだけでなく、Cr6+を
溶出する可能性のある他の物質に適用することにより、
これらの物質からのCr6+の溶出を防止することが可能で
ある。 【0041】 【実施例】以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体
的に説明する。なお、本実施例におけるCr6+溶出量は、
環境庁告示46号法による溶出試験方法に基づいて測定
した。還元処理対象材、すなわちクロム酸化物含有物質
として、ステンレス鋼スラグ、重クロム酸ナトリウム製
造の際に発生したクロム鉱滓を用いた。 【0042】実験に供したステンレス鋼スラグおよびク
ロム鉱滓のCr6+溶出量は、ステンレス鋼スラグが157mg/
l 、クロム鉱滓が205mg/l である。なお、ステンレス鋼
スラグは、転炉において還元処理後に排滓するが、本実
施例においては、上記した未還元のスラグのサンプルを
実験に供した。これらの還元処理対象スラグを、表1に
示す条件で処理した。 【0043】浸漬時に攪拌を行う場合、攪拌翼の回転
数:50rpm の条件下で行った。 (1) 酸化数が+5価以下の硫黄含有物質、(2) 高炉スラ
グ溶出水としては、下記の硫黄含有物質〜、高炉ス
ラグ溶出水を用いた。 (1)酸化数が+5価以下の硫黄含有物質: 未エージング高炉徐冷スラグ:冷却、破砕後、1週間
以内の高炉スラグ、酸化数が+5価以下の硫黄含有量;
0.5wt %、JIS A 5015付属書1の呈色判定試験結果;呈
色有り 溶銑予備処理スラグ:高炉における溶銑の脱硫、脱燐
で得られたスラグ 水硫化ナトリウム (2)高炉スラグ溶出水:高温状態の高炉スラグに水を散
水して得られた溶出水、全硫黄含有量:1.0wt% また、水蒸気の吹き込み温度は100 ℃で、スラグの底部
から吹き込んだ。 【0044】実験結果を、処理条件と併せて表1に示
す。実施例1〜9に示すように、還元処理対象スラグ
を、水または高炉スラグ溶出水へ浸漬し、浸漬後のスラ
グを取り出し、得られたスラグ100 重量部に、酸化数が
+5価以下の硫黄含有物質を10〜50重量部添加混合した
後、水蒸気を吹き込むことによって、還元処理対象スラ
グのCr6+の溶出量を0.05mg/l以下とし、無害化すること
ができる。 【0045】一方、比較例1〜4に示すように、ステン
レス鋼スラグまたはクロム鉱滓それぞれ100 重量部に未
エージング高炉徐冷スラグを50〜100 重量部添加し、水
蒸気吹き込みを3日間行ってもCr6+の溶出量は、0.05mg
/l以下にはならない。また、比較例5、6に示すよう
に、ステンレス鋼スラグまたはクロム鉱滓を高炉スラグ
溶出水中に6〜10日間浸漬してもCr6+の溶出量は0.05mg
/l以下にはならない。 【0046】なお、実施例1〜9のステンレス鋼スラグ
およびクロム鉱滓は、無害化処理後、大気中に1年間放
置してもCr6+の溶出は認められなかった。 【0047】 【表1】【0048】 【表2】【0049】 【発明の効果】本発明によれば、処理後の体積の増加を
大幅に抑制し、経済性に優れた方法で、ステンレス鋼ス
ラグ、クロム鉱滓、ゴミ焼却灰、汚泥などを溶融処理し
て得られる廃棄物溶融スラグなどのスラグ、焼却灰など
のクロム酸化物含有物質からのCr6+の溶出を完全に防止
することが可能となった。 【0050】この結果、クロム酸化物含有物質の路盤
材、仮設材、土木埋立材などへの再利用を容易に行うこ
とが可能となった。
錬の際に発生するステンレス鋼スラグ、重クロム酸ナト
リウムなどのクロム化合物の製造の際に発生するクロム
鉱滓、廃棄物溶融スラグなどのクロム酸化物含有物質中
のCr6+を無害化するクロム酸化物含有物質の処理方法に
関するものである。 【0002】 【従来の技術】ステンレス鋼精錬の際に発生するステン
レス鋼スラグ、および重クロム酸ナトリウムなどのクロ
ム化合物の製造の際に発生するクロム鉱滓は、数%のク
ロム酸化物を含有し、操業条件によっては、その一部は
過酸化クロムにまで酸化し、Cr 6+が溶出する場合があ
る。 【0003】このため、ステンレス鋼スラグ、クロム鉱
滓などを路盤材、仮設材、土木埋立材などとして使用す
る場合、スラグからCr6+が溶出しないことが絶対条件で
ある。また、近年、ゴミ焼却灰、汚泥などを溶融処理す
ることによってスラグ化し、生成したスラグを路盤材、
タイルなどとして有効利用することが検討されている
が、ゴミ焼却灰、汚泥などの種類によっては、生成した
スラグからCr6+が溶出する場合があり、有効利用を困難
にしている。 【0004】ステンレス鋼スラグからのCr6+の溶出防止
方法として、アルミ灰およびマグネシア系産業廃棄物を
受滓鍋内に敷き詰めておき、該受滓鍋内に溶融状態のス
ラグを排滓する方法が提案されている(特開平6−1719
93号公報参照)。しかし、上記したステンレス鋼スラグ
からのCr6+の溶出防止方法は、上記した添加剤を精錬炉
外で添加しているため、撹拌することができず、混合が
不十分となり、完全にCr6+の溶出を防止することができ
ない場合がある。 【0005】また、混合を十分に行うために、精錬炉内
で添加すれば、添加物による溶鋼の汚染が問題となる。
一方、重クロム酸ナトリウムなどのクロム化合物の製造
の際に発生するクロム鉱滓に関しては、Cr6+の溶出防止
方法として、一般に、スラグを還元焙焼して、Cr6+をCr
3+に還元して無害化する方法が採用されている。 【0006】しかし、上記したクロム鉱滓からのCr6+の
溶出防止方法は、焙焼法のため多量のエネルギーを必要
とし、経済性の面で問題があった。また、下水汚泥など
の場合、埋立処分前に減容化のために焼却処分が行われ
るが、この焼却灰からのCr6+の溶出防止方法として、焼
却時の空気比を1未満に制御する方法が採用されている
〔下水道協会誌、vol.38、No.378、p29-32(1994)参
照〕。 【0007】しかし、当該文献に示されるように、出処
などの異なる様々な性状の汚泥に対応して最適な運転を
行うことは非常に難しい課題であり、これは産業廃棄物
などの焼却処分においても同様であると考えられる。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記した従
来技術の問題点を解決し、ステンレス鋼スラグ、クロム
鉱滓、ゴミ焼却灰、汚泥などを溶融処理して得られる廃
棄物溶融スラグなどのスラグ、焼却灰などのクロム酸化
物含有物質からのCr6+の溶出を完全に防止すると共に、
添加剤による処理後の体積の増加を抑制し、経済性に優
れた方法で処理することが可能なクロム酸化物含有物質
の処理方法を提供することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記した
従来技術の問題点を解決するため種々の実験、検討を行
った。その結果、前記したスラグなどのクロム酸化物含
有物質を水に浸漬し、Cr6+の一部または多くを水へ溶出
するか、もしくはクロム酸化物含有物質を高炉スラグの
散水時に発生する高炉スラグ溶出水に浸漬し、Cr6+の一
部または多くを水へ溶出すると共に還元した後、酸化数
が+5価以下の硫黄含有物質と混合し、得られた混合物
に水蒸気を吹き込むことによって、経済性に優れた方法
で、被処理物の体積の増加を抑制し、無害化できること
を新規に見い出し、本発明に到った。 【0010】すなわち、本発明は、環境庁告示46号法
による溶出試験において50mg/l以上のCr6+が
溶出するクロム酸化物含有物質を、水および/または高
炉スラグへの散水時に発生する高炉スラグ溶出水に浸漬
した後、該クロム酸化物含有物質に未エージング高炉徐
冷スラグおよび/または溶銑予備処理スラグを接触させ
ると共に、水蒸気を吹き込むことを特徴とするクロム酸
化物含有物質の処理方法である。 【0011】前記した本発明においては、クロム酸化物
含有物質浸漬時の水または高炉スラグの散水時に発生す
る高炉スラグ溶出水または水および上記高炉スラグ溶出
水両者の混合水の温度を、40℃以上、100℃以下に
保持することが好ましい。 【0012】また、前記した本発明において、クロム酸
化物含有物質浸漬時に、水または高炉スラグへの散水時
に発生する高炉スラグ溶出水または水および前記高炉ス
ラグ溶出水両者の混合水を攪拌することが好ましい。さ
らに、前記した本発明において、前記した水および/ま
たは高炉スラグへの散水時に発生する高炉スラグ溶出水
に浸漬後のクロム酸化物含有物質に未エージング高炉徐
冷スラグおよび/または溶銑予備処理スラグを接触させ
ると共に、水蒸気を吹き込む方法として、水および/ま
たは高炉スラグへの散水時に発生する高炉スラグ溶出水
に浸漬後のクロム酸化物含有物質と未エージング高炉徐
冷スラグおよび/または溶銑予備処理スラグとを混合
し、得られた混合物に水蒸気を吹き込む方法を用いるこ
とがより好ましい。 【0013】 【発明の実施の形態】以下、本発明をさらに詳細に説明
する。本発明者らは、前記した従来技術の問題点を解決
するため種々の実験、検討を行った結果、ステンレス鋼
スラグ、クロム鉱滓などのクロム酸化物含有物質からの
Cr6+の溶出防止方法として、クロム酸化物含有物質と未
エージング高炉徐冷スラグとを混合し、得られた混合物
に水蒸気を吹き込む方法が有効であることを見出した。 【0014】ただし、上記した方法の場合、環境庁告示
46号法による溶出試験において50mg/l以上のCr6+が溶出
するスラグの場合、完全に無害化するためには、未エー
ジング高炉徐冷スラグを多量添加する必要があり、被処
理物の体積が増加し、取扱上、経済性の面での問題が残
され、改善すべき余地があった。このため、本発明者ら
は、被処理物の体積の増加を抑制し、経済性に優れた方
法で、Cr6+溶出量が50mg/l以上のクロム酸化物含有物質
からのCr6+の溶出を完全に防止することが可能なクロム
酸化物含有物質の処理方法について実験、検討を重ね
た。 【0015】この結果、スラグを、水または高炉スラグ
の散水時に発生する高炉スラグ溶出水(以下単に高炉ス
ラグ溶出水とも記す)に浸漬し、水中にCr6+を溶出する
か、または高炉スラグ溶出水中にCr6+を溶出すると共に
Cr6+を還元し、スラグからのCr6+の溶出量を低減した
後、これに酸化数が+5価以下の硫黄含有物質を接触さ
せると共に、水蒸気を吹き込むことによって、被処理物
の体積の増加を大幅に抑制し、経済性に優れた方法で、
Cr6+を還元し、完全に無害化することが可能であること
を見出した。 【0016】図1に、Cr6+が溶出するステンレス鋼スラ
グを水に浸漬した場合の、浸漬日数と、所定日数浸漬後
に取り出したスラグの環境庁告示46号法によるCr6+溶出
量との関係を示す。なお、図1に示す実験で用いたステ
ンレス鋼スラグの粒径は、26.5〜13.2mmであり、溶出試
験を行う際は−2mmに破砕処理して試験を行った。 【0017】図1に示すように、所定日数浸漬後に取り
出したスラグのCr6+溶出量は、水への浸漬時間が長くな
るにしたがい低下すると共に、日数経過後はほぼ一定の
Cr6+溶出量で推移する。すなわち、ステンレス鋼スラグ
は水に浸漬処理することによってCr6+溶出量を低下する
ことができるが、Cr6+溶出量が50mg/l以上のクロム酸化
物含有物質の場合、水への浸漬のみではCr6+溶出量を環
境基準値である0.05mg/l以下とすることは困難である。 【0018】なお、上記した実験において、水の代わり
に高炉スラグへの散水時に発生する高炉スラグ溶出水を
用いて浸漬実験を行った場合においても、図1と同様の
結果が得られた。次に、Cr6+が溶出するステンレス鋼ス
ラグを水に所定日数浸漬後、取り出したスラグと未エー
ジング高炉徐冷スラグとを混合することによって接触さ
せ、得られた混合物に水蒸気吹き込みを3日間行った。 【0019】上記した実験は、取り出したスラグに対す
る未エージング高炉徐冷スラグの添加量を変えて行っ
た。図2に、浸漬後取り出したスラグの環境庁告示46号
法によるCr6+の溶出量と、Cr6+の溶出量を環境基準値で
ある0.05mg/l以下にするために必要な未エージング高炉
徐冷スラグの添加量との関係を示す。 【0020】図2の縦軸の未エージング高炉徐冷スラグ
の添加量は、浸漬後取り出したスラグ〔100 重量部〕に
対する未エージング高炉徐冷スラグの必要添加量〔重量
部〕を示す。なお、図2におけるCr6+の溶出量が1mg/l
のステンレス鋼スラグは、攪拌している大量の高炉スラ
グ溶出水中に2個月間浸漬することによって得られたス
ラグである。 【0021】図2に示すように、ステンレス鋼スラグを
水に所定日数浸漬し、予めCr6+の溶出量を低減し、浸漬
後取り出したスラグと高炉徐冷スラグとを混合し、得ら
れた混合物に水蒸気を添加することによって、高炉徐冷
スラグの必要添加量を少なくすることができる。特に、
ステンレス鋼スラグを水に浸漬し、予めCr6+の溶出量を
50mg/l以下に低減することによって、高炉徐冷スラグの
必要添加量を著しく少なくすることができる。 【0022】なお、上記した実験において、水に代えて
高炉スラグへの散水時に発生する高炉スラグ溶出水に浸
漬して得られたステンレス鋼スラグを用いた場合におい
ても、図2と同様の結果が得られた。すなわち、本発明
によれば、クロム酸化物含有物質を、水、または高炉ス
ラグへの散水時に発生する高炉スラグ溶出水、または水
および前記高炉スラグ溶出水両者の混合水へ浸漬し、浸
漬後に取り出したスラグに、未エージング高炉徐冷スラ
グなどの酸化数が+5価以下の硫黄含有物質を接触させ
ると共に、水蒸気を吹き込むことによって、酸化数が+
5価以下の硫黄含有物質の添加量を大幅に削減した条件
下においても、Cr6+を完全に還元し、無害化することが
可能となった。 【0023】以下、本発明における[I] 水、高炉スラグ
への散水時に発生する高炉スラグ溶出水、[II]酸化数が
+5価以下の硫黄含有物質、[III] 水蒸気、[IV]処理条
件について説明する。 [I] 水、高炉スラグへの散水時に発生する高炉スラグ溶
出水: 〔水:〕本発明における水は、クロム酸化物含有物質か
らCr6+を溶出させることができれば特にその水質を問う
ものではなく、工業用水、雨水、河川水、湖沼水、再処
理水などを用いることが経済性の面から好ましい。 〔高炉スラグへの散水時に発生する高炉スラグ溶出
水:〕本発明における高炉スラグへの散水時に発生する
高炉スラグ溶出水(:高炉スラグ溶出水)とは、未エー
ジング高炉徐冷スラグ、すなわちJIS A 5015付属書1の
呈色判定試験方法において呈色があるスラグに水を散水
して得られた溶出水を示す。 【0024】上記した高炉スラグ溶出水としては、概
ね、自然エージング3個月未満の高炉徐冷スラグに水を
散水して得られた溶出水を用いることが好ましく、例え
ば、高温状態の高炉スラグに水を散水して生じた溶出水
が適する。高炉スラグ溶出水は、還元性の硫黄を含有す
るため、Cr6+が溶出した水中のCr 6+を還元する作用を有
し、Cr6+溶出水の後処理を容易にする利点がある。 【0025】また、本発明においては、水および/また
は高炉スラグ溶出水と、Cr6+を還元する作用を有す
る他の還元剤とを併用してもよい。すなわち、例えば、
硫酸第一鉄、亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を、水また
は高炉スラグ溶出水または水と高炉スラグ溶出水との混
合水に溶解して使用してもよい。 [II]酸化数が+5価以下の硫黄含有物質: 本発明における酸化数が+5価以下の硫黄含有物質とし
ては、下記の物質を用いる。 【0026】 【0027】(1)酸化数が+5価以下の硫黄含有スラ
グ; 酸化数が+5価以下の硫黄含有スラグとしては、酸化数
が+5価以下の硫黄を0.1wt%以上含むスラグが好
ましく、例えば、未エージング高炉徐冷スラグ、溶銑予
備処理スラグを用いる。 【0028】なお、上記した未エージング高炉徐冷スラ
グとしては、JIS A 5015付属書1の呈色判定試験方法に
おいて呈色があるスラグが好ましく、概ね、自然エージ
ング3個月未満の高炉徐冷スラグが好ましい。また、溶
銑予備処理スラグとしては、高炉において溶銑の脱硫、
脱燐を行う際に得られるスラグを用いることが好まし
い。 【0029】本発明においては、前記した酸化数が+5
価以下の硫黄含有物質を用いることによって、経済性に
優れた方法で、Cr6+を還元し、完全に無害化すると共
に、添加剤のクロム酸化物含有物質に対する添加率を低
くすることができ、体積の増加を最小限にすることがで
きる。 [III] 水蒸気: (水蒸気の吹き込み方式:)本発明において混合物に水
蒸気を吹き込む際の方式は特に制限されず、混合物の
表層に水蒸気を吹き付ける方式、混合物の内部に水蒸
気を吹き込む方式、混合物の下部から水蒸気を吹き込
む方式、これら〜を組み合わせた方式のいずれを
も用いることができる。 (水蒸気の吹き込み温度:)本発明において混合物に吹
き込む水蒸気の温度は特に限定されるものではない。 【0030】これは、大気中で水蒸気を吹き込む場合、
水蒸気の温度は通常100 ℃であるが、密閉容器中に高圧
力の水蒸気を吹き込む場合、内部が高圧となることか
ら、水の沸点が100 ℃よりも高くなり、水蒸気の温度も
圧力に応じて高くなるためである。なお、本発明におけ
る水蒸気を吹き込む方法としては、水蒸気を単独で吹き
込む方法に限定されず、空気、N2などの他のガスを含有
する水蒸気を吹き込んでもよい。 【0031】また、本発明においては、水蒸気を吹き込
む時間は特に限定しない。これは、スラグなど対象とす
るクロム酸化物含有物質の粒度、結晶性などによりCr6+
が溶出し易い形態となる時間が異なるためである。 [IV]処理条件: (クロム酸化物含有物質浸漬時の水温:)本発明におい
ては、クロム酸化物含有物質浸漬時の水または高炉スラ
グの散水時に発生する高炉スラグ溶出水または水および
上記高炉スラグ溶出水両者の混合水の温度を40℃以上、
100 ℃以下に保持することが好ましい。 【0032】これは、水温を40℃以上に保持することに
よって、スラグなどのクロム酸化物含有物質中のCr6+の
水中への溶出速度が速くなり、水または高炉スラグ溶出
水またはこれらの混合水への浸漬時間を短縮することが
出来るためである。すなわち、例えば、水温が常温の場
合と80℃の場合を比較すると、80℃の場合、常温の約3
倍の溶出速度となる。 【0033】水温が40℃未満の場合、水温上昇によるCr
6+の水への溶出速度の向上効果がほとんど得られない。
また、水または高炉スラグの散水時に発生する高炉スラ
グ溶出水またはこれらの混合水の温度を100 ℃よりも高
温にするためには加圧する必要があり、設備面および経
済性の面から好ましくない。 (クロム酸化物含有物質浸漬時の攪拌:)本発明におい
ては、クロム酸化物含有物質浸漬時に、水または高炉ス
ラグの散水時に発生する高炉スラグ溶出水またはこれら
の混合水を攪拌することが好ましい。 【0034】これは、上記した攪拌操作によって、スラ
グなどのクロム酸化物含有物質中のCr6+の水への溶出速
度が速くなるためである。すなわち、例えば、撹拌を行
わない場合と水平回転型攪拌翼の回転数:100rpmの条件
で攪拌を行った場合を比較すると、攪拌を行った場合、
撹拌を行わない場合の約3倍の溶出速度となる。 【0035】攪拌を行う場合の攪拌の方式は、攪拌翼
(羽根)を用いる方式、浸漬処理に用いる容器自体を
回転もしくは震盪する方式、浸漬処理に用いる容器内
の液をポンプなどによって循環する方式、浸漬処理に
用いる容器内の液中にガスを吹き込む方式などを用いる
ことができ、前記したまたはの方式を用いることが
より好ましいが、液を攪拌状態とすることができればそ
の方式は特に制限されるものではない。 (酸化数が+5価以下の硫黄含有物質の添加量:)水ま
たは高炉スラグ溶出水またはこれらの混合水に浸漬後の
クロム酸化物含有物質に接触させる酸化数が+5価以下
の硫黄含有物質の添加量は特に限定はされない。 【0036】これは、クロム酸化物含有物質のCr6+含有
量、酸化数が+5価以下の硫黄含有物質中の+5価以下
の硫黄含有量によって好適な添加量が異なるためであ
る。なお、ステンレス鋼スラグを未エージング高炉徐冷
スラグを用いて処理した場合の、水に浸漬後のステンレ
ス鋼スラグのCr6+溶出量と、ステンレス鋼スラグ100 重
量部に対する未エージング高炉徐冷スラグの必要添加量
との関係は、図2に示したとおりである。 【0037】未エージング高炉徐冷スラグの酸化数が+
5価以下の硫黄含有量は約0.5wt %であり、他の酸化数
が+5価以下の硫黄含有物質を用いる場合の添加量は、
+5価以下の硫黄の含有量に応じて設定することもでき
る。また、前記したように、浸漬処理において水に代え
て高炉スラグ溶出水を用いた場合も、図2と同様の結果
が得られ、この場合も上記と同様に酸化数が+5価以下
の硫黄含有物質の添加量を設定することができる。 【0038】前記したように、クロム酸化物含有物質を
浸漬した水、高炉スラグ溶出水もしくはこれらの混合水
中にはCr6+が溶出する。高炉スラグ溶出水を用いる場
合、溶出したCr6+は高炉スラグ溶出水中の還元性の硫黄
によって還元されCr3+となる。浸漬時に水を用いた場合
の水溶液中のCr6+または高炉スラグ溶出水を用いた場合
に高炉スラグ溶出水中に残存するCr6+は、例えば下記の
方法(1) 、(2) などの処理方法によってCr3+に還元、無
害化処理することができる。 【0039】(1)酸性条件下での還元、中和法:pH:2
〜3の酸性領域において亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナ
トリウム、硫酸第一鉄、亜硫酸ガスなどの還元剤を用い
て還元し、その後、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム
などによってpH:8〜9に中和し、Cr(OH)3 とし、沈
澱、分離する。 【0040】(2)アルカリ性条件下での還元法:アルカ
リ金属の硫化物または硫化水素化物を用い、60℃以上の
条件下で還元する。以上本発明について述べたが、本発
明は、Cr6+を含有するステンレス鋼スラグ、クロム鉱
滓、廃棄物溶融スラグなどのスラグだけでなく、Cr6+を
溶出する可能性のある他の物質に適用することにより、
これらの物質からのCr6+の溶出を防止することが可能で
ある。 【0041】 【実施例】以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体
的に説明する。なお、本実施例におけるCr6+溶出量は、
環境庁告示46号法による溶出試験方法に基づいて測定
した。還元処理対象材、すなわちクロム酸化物含有物質
として、ステンレス鋼スラグ、重クロム酸ナトリウム製
造の際に発生したクロム鉱滓を用いた。 【0042】実験に供したステンレス鋼スラグおよびク
ロム鉱滓のCr6+溶出量は、ステンレス鋼スラグが157mg/
l 、クロム鉱滓が205mg/l である。なお、ステンレス鋼
スラグは、転炉において還元処理後に排滓するが、本実
施例においては、上記した未還元のスラグのサンプルを
実験に供した。これらの還元処理対象スラグを、表1に
示す条件で処理した。 【0043】浸漬時に攪拌を行う場合、攪拌翼の回転
数:50rpm の条件下で行った。 (1) 酸化数が+5価以下の硫黄含有物質、(2) 高炉スラ
グ溶出水としては、下記の硫黄含有物質〜、高炉ス
ラグ溶出水を用いた。 (1)酸化数が+5価以下の硫黄含有物質: 未エージング高炉徐冷スラグ:冷却、破砕後、1週間
以内の高炉スラグ、酸化数が+5価以下の硫黄含有量;
0.5wt %、JIS A 5015付属書1の呈色判定試験結果;呈
色有り 溶銑予備処理スラグ:高炉における溶銑の脱硫、脱燐
で得られたスラグ 水硫化ナトリウム (2)高炉スラグ溶出水:高温状態の高炉スラグに水を散
水して得られた溶出水、全硫黄含有量:1.0wt% また、水蒸気の吹き込み温度は100 ℃で、スラグの底部
から吹き込んだ。 【0044】実験結果を、処理条件と併せて表1に示
す。実施例1〜9に示すように、還元処理対象スラグ
を、水または高炉スラグ溶出水へ浸漬し、浸漬後のスラ
グを取り出し、得られたスラグ100 重量部に、酸化数が
+5価以下の硫黄含有物質を10〜50重量部添加混合した
後、水蒸気を吹き込むことによって、還元処理対象スラ
グのCr6+の溶出量を0.05mg/l以下とし、無害化すること
ができる。 【0045】一方、比較例1〜4に示すように、ステン
レス鋼スラグまたはクロム鉱滓それぞれ100 重量部に未
エージング高炉徐冷スラグを50〜100 重量部添加し、水
蒸気吹き込みを3日間行ってもCr6+の溶出量は、0.05mg
/l以下にはならない。また、比較例5、6に示すよう
に、ステンレス鋼スラグまたはクロム鉱滓を高炉スラグ
溶出水中に6〜10日間浸漬してもCr6+の溶出量は0.05mg
/l以下にはならない。 【0046】なお、実施例1〜9のステンレス鋼スラグ
およびクロム鉱滓は、無害化処理後、大気中に1年間放
置してもCr6+の溶出は認められなかった。 【0047】 【表1】【0048】 【表2】【0049】 【発明の効果】本発明によれば、処理後の体積の増加を
大幅に抑制し、経済性に優れた方法で、ステンレス鋼ス
ラグ、クロム鉱滓、ゴミ焼却灰、汚泥などを溶融処理し
て得られる廃棄物溶融スラグなどのスラグ、焼却灰など
のクロム酸化物含有物質からのCr6+の溶出を完全に防止
することが可能となった。 【0050】この結果、クロム酸化物含有物質の路盤
材、仮設材、土木埋立材などへの再利用を容易に行うこ
とが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】ステンレス鋼スラグの水への浸漬実験におけ
る、浸漬日数と浸漬後に取り出したスラグのCr6+溶出量
との関係を示すグラフである。 【図2】水へ浸漬後、取り出したステンレス鋼スラグか
らのCr6+溶出量と、該スラグのCr6+溶出量を0.05mg/l以
下にするために必要な未エージング高炉徐冷スラグの添
加量との関係を示すグラフである。
る、浸漬日数と浸漬後に取り出したスラグのCr6+溶出量
との関係を示すグラフである。 【図2】水へ浸漬後、取り出したステンレス鋼スラグか
らのCr6+溶出量と、該スラグのCr6+溶出量を0.05mg/l以
下にするために必要な未エージング高炉徐冷スラグの添
加量との関係を示すグラフである。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(56)参考文献 特開 平1−231981(JP,A)
特開 平6−279817(JP,A)
特開 平9−174019(JP,A)
特開 平10−76239(JP,A)
特開 昭49−121780(JP,A)
特開 昭52−151672(JP,A)
特開 昭54−118304(JP,A)
特開 昭56−15882(JP,A)
特開 昭58−156399(JP,A)
特開 昭59−73091(JP,A)
特開 昭59−95984(JP,A)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
B09B 3/00
A62D 3/00 ZAB
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 環境庁告示46号法による溶出試験にお
いて50mg/l以上のCr6+が溶出するクロム酸化
物含有物質を、水および/または高炉スラグへの散水時
に発生する高炉スラグ溶出水に浸漬した後、該クロム酸
化物含有物質に未エージング高炉徐冷スラグおよび/ま
たは溶銑予備処理スラグを接触させると共に、水蒸気を
吹き込むことを特徴とするクロム酸化物含有物質の処理
方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27212998A JP3473444B2 (ja) | 1998-09-25 | 1998-09-25 | クロム酸化物含有物質の処理方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27212998A JP3473444B2 (ja) | 1998-09-25 | 1998-09-25 | クロム酸化物含有物質の処理方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000093923A JP2000093923A (ja) | 2000-04-04 |
JP3473444B2 true JP3473444B2 (ja) | 2003-12-02 |
Family
ID=17509504
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP27212998A Expired - Fee Related JP3473444B2 (ja) | 1998-09-25 | 1998-09-25 | クロム酸化物含有物質の処理方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3473444B2 (ja) |
Families Citing this family (10)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4540350B2 (ja) * | 2004-01-13 | 2010-09-08 | 新日本製鐵株式会社 | クロム酸化物含有スラグの処理方法 |
JP4155579B2 (ja) * | 2004-08-05 | 2008-09-24 | 株式会社神鋼環境ソリューション | 埋立てごみの処理方法および処理装置 |
JP4373951B2 (ja) * | 2005-03-31 | 2009-11-25 | 太平洋セメント株式会社 | クロム酸化物含有焼成物の処理方法 |
JP5407337B2 (ja) * | 2009-01-06 | 2014-02-05 | 大同特殊鋼株式会社 | 還元スラグの処理方法 |
JP5337956B2 (ja) * | 2009-08-18 | 2013-11-06 | Jfeスチール株式会社 | クロム酸化物含有物質の処理方法 |
CN101906500B (zh) * | 2010-02-05 | 2017-06-09 | 甘肃锦世化工有限责任公司 | 一种综合利用无钙铬渣直接生产铬基合金钢的方法 |
JP2013144292A (ja) * | 2011-12-12 | 2013-07-25 | Jfe Steel Corp | クロム酸化物含有物質の還元処理方法 |
CN103978006B (zh) * | 2013-10-28 | 2016-08-17 | 青岛理工大学 | 一种高效低耗低污染的铬渣热解处理方法 |
CN103691727B (zh) * | 2013-12-06 | 2015-08-19 | 广东省生态环境与土壤研究所 | 一种用于铬渣干法固定解毒的解毒方法 |
CN114058861B (zh) * | 2021-11-27 | 2023-03-31 | 王强 | 一种利用喷吹脱硫工艺协同铬渣无害化的方法 |
-
1998
- 1998-09-25 JP JP27212998A patent/JP3473444B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2000093923A (ja) | 2000-04-04 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CA1280558C (en) | Composition to encapsulate toxic metal and/or organic pollutants from wastes | |
JP3473444B2 (ja) | クロム酸化物含有物質の処理方法 | |
JP2008231388A (ja) | 六価クロムを含有する特定廃棄物の無害化処理剤 | |
KR100318792B1 (ko) | 크롬산화물함유물질의대량처리방법및그처리물의이용방법과이용물 | |
JP3299174B2 (ja) | クロム酸化物含有物質の処理方法 | |
JP4692064B2 (ja) | 還元処理剤および還元処理方法 | |
JP3965542B2 (ja) | クロム酸化物含有土壌の処理方法 | |
JP3221564B2 (ja) | クロム酸化物含有物質の処理方法 | |
EP2016201B1 (en) | Method in connection with steel production | |
JP2002248444A (ja) | クロム酸化物含有物質の処理方法 | |
JP3687014B2 (ja) | 含クロム鉱滓の処理方法 | |
JP3221565B2 (ja) | クロム酸化物含有物質の処理方法およびそれを用いた路盤材、土木埋立用材、仮設材 | |
JP2002192125A (ja) | クロム酸化物含有物質の還元処理方法 | |
JP5337956B2 (ja) | クロム酸化物含有物質の処理方法 | |
JP3966508B2 (ja) | 重金属不溶化方法 | |
JP4083086B2 (ja) | 重金属類含有灰の不溶化方法および装置 | |
CN114381271A (zh) | 一种土壤稳铬药剂及土壤稳铬的方法 | |
JP3756904B2 (ja) | クロム含有廃棄物の処理方法 | |
JP6686982B2 (ja) | クロム酸化物含有物質の還元処理方法および土木工事用材料の製造方法 | |
JPS581637B2 (ja) | 製鋼ダストの処理方法 | |
JP5407337B2 (ja) | 還元スラグの処理方法 | |
JPH06238259A (ja) | 重金属を含む固形物の処理方法 | |
JPH07328585A (ja) | アルカリ金属成分含有使用済れんがの再生方法 | |
KR20050031236A (ko) | 전로슬래그중의 불소 용출 저감방법 | |
JP2001123213A (ja) | 利材化に適した溶銑予備処理スラグの製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |