JP3444086B2 - 塗料とそれを用いたランプの遮光膜およびその製造方法 - Google Patents

塗料とそれを用いたランプの遮光膜およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動車用の高輝度放
電型ランプの遮光膜に用いられる塗料およびその製造方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車の前照灯用の高輝度放電型ランプ
には、光の投射領域の明暗コントラストを得るために、
ランプのガラス表面に任意の形状の黒色遮光膜を形成す
る必要がある。
【0003】従来のランプ用の遮光膜はFe3O4やC
uOを顔料として用い、ケイ酸ナトリウムや燐酸アルミ
ニウムを結合剤として用いて、顔料と結合剤を混合して
塗料を作製し、この塗料をランプのガラス表面に塗布し
て100℃から250℃の温度下で焼成して遮光膜を形
成していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ランプを点灯するとラ
ンプのガラス表面の温度が上昇するため、ガラス表面に
形成されている遮光膜の温度も上昇する。特に自動車用
の高輝度放電型ランプの場合、点灯時にはランプのガラ
ス表面が約700℃まで上昇するために、ガラス表面の
遮光膜も700℃の温度下にさらされることになる。
【0005】前記したように従来の技術で形成された遮
光膜は、Fe3O4などを顔料として用いている。Fe
3O4粉末は室温では黒色であるが、大気中で加熱する
と約350℃で酸化が進み赤色の粉末になることが知ら
れている。
【0006】このため、従来の技術で自動車用の高輝度
放電型ランプに遮光膜を形成した場合には、ランプ点灯
時の昇温で遮光膜の色が黒色から赤色に変化するという
現象が起こっていた。遮光膜の色が黒色から赤色に変化
すると光の吸収率が変化し、その結果遮光膜としての遮
光性能が低下してしまい、問題であった。
【0007】また従来の技術で自動車用の高輝度放電型
ランプに遮光膜を形成した場合、ランプの点灯と消灯の
繰り返しによる温度の上昇と低下のサイクルにより、遮
光膜がひび割れたり剥離してしまい、問題であった。
【0008】
【0009】
【0010】
【課題を解決するための手段】MnO 2 ,SiO 2 ,Ti
2 ,Al 2 3 のうちの少なくとも一種類の酸化物と、
Mnを5モル%から30モル%含有する酸化鉄を顔料と
し、かつ前記顔料中に酸化リチウムとSiO 2 を主成分
とする融点が800℃以下のガラスを全顔料中の1重量
%から50重量%含有し、かつ結合剤としてケイ酸ナト
リウムもしくはケイ酸リチウムもしくはケイ酸カリウム
を用い、かつ前記顔料と前記結合剤を混合して塗料を作
製したものである。
【0011】また、MnO2,SiO2,TiO2,A
l2O3のうちの少なくとも一種類の酸化物と、Mnを
5モル%から30モル%含有する酸化鉄を顔料とし、か
つ前記顔料中に酸化リチウムとSiO2を主成分とする
融点が800℃以下のガラスを全顔料中の1重量%から
50重量%含有し、かつ結合剤としてケイ酸エチルもし
くはケイ酸メチルを用い、かつ前記顔料と前記結合剤を
混合して塗料を作製したものである。
【0012】また、MnO2,SiO2,TiO2,A
l2O3のうちの少なくとも一種類の酸化物と、Mnを
5モル%から30モル%含有する酸化鉄を顔料とし、か
つ前記顔料中に酸化リチウムとSiO2を主成分とする
融点が800℃以下のガラスを全顔料中の1重量%から
50重量%含有し、かつ結合剤としてケイ酸ナトリウム
もしくはケイ酸リチウムもしくはケイ酸カリウムを用
い、かつ前記顔料と前記結合剤を混合して塗料を作製
し、かつ前記塗料をランプのガラス表面に塗布して10
0℃から900℃の温度下で焼成してランプに遮光膜を
形成したものである。
【0013】また、MnO2,SiO2,TiO2,A
l2O3のうちの少なくとも一種類の酸化物と、Mnを
5モル%から30モル%含有する酸化鉄を顔料とし、か
つ前記顔料中に酸化リチウムとSiO2を主成分とする
融点が800℃以下のガラスを全顔料中の1重量%から
50重量%含有し、かつ結合剤としてケイ酸エチルもし
くはケイ酸メチルを用い、かつ前記顔料と前記結合剤を
混合して塗料を作製し、かつ前記塗料をランプのガラス
表面に塗布して100℃から900℃の温度下で焼成し
てランプに遮光膜を形成したものである。
【0014】
【0015】
【発明の実施の形態】MnO2,SiO2,TiO2,
Al2O3のうちの少なくとも一種類の酸化物と、Mn
を5モル%から30モル%含有する酸化鉄の粉末と酸化
リチウムとSiO2を主成分とする融点が800℃以下
のガラス粉末を混合して顔料とする。
【0016】Mnを5モル%から30モル%含有する酸
化鉄は、黒色粉末であり、大気中で800℃まで昇温し
ても色が変化しないため、この酸化鉄を配合することに
より遮光膜全体を黒くすることができる。
【0017】また、より好ましくはMnO2,TiO2
のうちの少なくとも一種類の酸化物と、Mnを5モル%
から30モル%含有する酸化鉄の合計が遮光膜中の5重
量%から90重量%とすることにより、遮光膜を黒色に
することができる。
【0018】TiO2は紫外線を遮蔽する機能を有する
ため、添加することが遮光膜の機能向上の上で好まし
い。
【0019】融点が800℃以下のガラス粉末の顔料中
の重量%は1重量%であれば、遮光膜形成後の温度上昇
によりガラスと遮光膜の接合や遮光膜の膜強度向上に有
効である。より好ましくは1重量%から50重量%の範
囲である。
【0020】結合剤としてケイ酸ナトリウムもしくはケ
イ酸リチウムもしくはケイ酸カリウムを水で希釈したも
のを用い、前記顔料と混合して塗料を作製する。この結
合剤は乾燥させると、ナトリウムとシリカ間の結合によ
り固化するものである。
【0021】顔料と結合剤の配合比率は結合剤の固形分
率が50%の場合、顔料と結合剤の重量比率が1対1か
ら12対1の範囲が好ましい。
【0022】塗料中の固形分率は60重量%から90重
量%であれば昇温後の遮光膜にピンホ−ルやひび割れが
発生しにくい。
【0023】また、結合剤としてケイ酸エチルもしくは
ケイ酸メチルを用いた場合には乾燥させるとエタノール
が揮発し、かつアルコキシドが加水分解してゲル状にな
り、完全に乾燥すると固化するものである。
【0024】また、この塗料に一次粒子の粒子径が50
nm以下であるSiO2を全塗料重量の1重量%から5
0重量%になるように添加することにより、塗料の粘度
を上昇させる効果があり、なおかつ塗料にチキソトロピ
ックな特性を付与することができ、安定した塗布が可能
な塗料になる。
【0025】この塗料をランプのガラス表面に塗布して
100℃から900℃の温度下で焼成して遮光膜を形成
する。この焼成温度は100℃から900℃の温度範囲
で、できるだけ高温でかつ長時間焼成することにより、
より膜強度が強く、かつガラスに対する付着強度の高い
遮光膜が得られる。
【0026】焼成時の焼成雰囲気は、窒素雰囲気下もし
くは不活性雰囲気下、もしくは10−2Torr以下の
真空度の真空雰囲気下にすることにより、ランプ本体の
モリブデン製の電極を酸化させることがないため、ラン
プの性能を劣化することなく遮光膜を形成することがで
きる。
【0027】
【実施例】次に本発明の具体例を説明する。 (実施例1)粒径分布が5μmから70μmであるMnO
2粉末を20gと粒径分布が5μmから70μmである粉
末TiO2を20gと、ゲ−サイトから水溶液中で酸化
鉄を合成する際にMnを約20重量%添加して850℃
で焼成した、粒径分布が0.3μmから3μmの酸化鉄粉
末10gと、酸化リチウムとSiO2を主成分とする融
点が800℃以下のガラス粉末5gとめのう乳鉢にて1
時間乾式混合し、顔料混合物とした。
【0028】次に固形分率50%で、かつナトリウムと
ケイ素のモル比が1:1のケイ酸ナトリウム水溶液15
gと固形分率20%で、かつ一次粒子の平均粒径が30
nmのコロイダルシリカ水溶液を15gを混合し、この
混合液と前記顔料混合物を混ぜて、振動式シェ−カ−で
3時間分散させ、塗料を作製した。シェ−カ−中には直
径3mmの鉄製の玉を塗料と同じ重量分加え、塗料にせ
ん断応力を加えさせた。
【0029】このようにして作製した塗料をランプの石
英製のガラス表面に塗布し、100℃で仮乾燥した後に
800℃で3時間焼成した。焼成時の雰囲気は窒素雰囲
気下で、窒素は10l/minの流量でフロ−させて焼
成した。
【0030】こうして高輝度放電型ランプのガラス表面
に形成した遮光膜は、ランプに対する付着強度が高く、
かつ膜全体の色が黒色であり、ランプを200時間点灯
しても遮光膜の剥離や色の変色が起こらなかった。
【0031】この遮光膜はランプを200時間の点灯後
した後、JIS規格のJIS K5400の6.14の
鉛筆引っかき試験でも、損傷が認められなかった。
【0032】また、JIS Z 1522によるごばん
目試験法でも遮光膜の剥離は認められなかった。
【0033】(実施例2)粒径分布が5μmから70μm
であるMnO2粉末を20gと粒径分布が5μmから7
0μmである粉末TiO2を20gと、ゲ−サイトから
水溶液中で酸化鉄を合成する際にMnを約20重量%添
加して850℃で焼成した、粒径分布が0.3μmから
3μmの酸化鉄粉末10gと、酸化リチウムとSiO2
を主成分とする融点が800℃以下のガラス粉末5gと
めのう乳鉢にて1時間乾式混合し、顔料混合物とした。
【0034】次に固形分率25%のエチルシリケートの
エタノール溶液10gと固形分率20%で、かつ一次粒
子の平均粒径が30nmのコロイダルシリカのエタノー
ル溶液を15gを混合し、この混合液と前記顔料混合物
を混ぜて、振動式シェ−カ−で3時間分散させ、塗料を
作製した。シェ−カ−中には直径3mmの鉄製の玉を塗
料と同じ重量分加え、塗料にせん断応力を加えさせた。
【0035】このようにして作製した塗料をランプの石
英製のガラス表面に塗布し、100℃で仮乾燥した後に
800℃で3時間焼成した。焼成時の雰囲気は窒素雰囲
気下で、窒素は10l/minの流量でフロ−させて焼
成した。
【0036】こうして高輝度放電型ランプのガラス表面
に形成した遮光膜は、ランプに対する付着強度が高く、
かつ膜全体の色が黒色であり、ランプを200時間点灯
しても遮光膜の剥離や色の変色が起こらなかった。
【0037】この遮光膜はランプを200時間の点灯後
した後、JIS規格のJIS K5400の6.14の
鉛筆引っかき試験でも、損傷が認められなかった。
【0038】また、JIS Z 1522によるごばん
目試験法でも遮光膜の剥離は認められなかった。
【0039】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、高輝度放
電型ランプのガラス表面に形成した遮光膜は、ランプに
対する付着強度が高く、かつ膜全体の色が黒色であり、
ランプを200時間点灯しても遮光膜の剥離や色の変色
が起こらないという有利な効果が得られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 勝 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭60−188476(JP,A) 特公 昭48−19193(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09D 7/12,1/02,5/00

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 MnO2,SiO2,TiO2,Al23
    のうちの少なくとも一種類の酸化物と、Mnを5モル%
    から30モル%含有する酸化鉄を顔料とし、かつ前記顔
    料中に酸化リチウムとSiO2を主成分とする融点が8
    00℃以下のガラスを全顔料中の1重量%から50重量
    %含有し、かつ結合剤としてケイ酸ナトリウムもしくは
    ケイ酸リチウムもしくはケイ酸カリウムを用い、かつ前
    記顔料と前記結合剤を混合することを特徴とする塗料。
  2. 【請求項2】 MnO2,SiO2,TiO2,Al23
    のうちの少なくとも一種類の酸化物と、Mnを5モル%
    から30モル%含有する酸化鉄を顔料とし、かつ前記顔
    料中に酸化リチウムとSiO2を主成分とする融点が8
    00℃以下のガラスを全顔料中の1重量%から50重量
    %含有し、かつ結合剤としてケイ酸エチルもしくはケイ
    酸メチルを用い、かつ前記顔料と前記結合剤を混合する
    ことを特徴とする塗料。
  3. 【請求項3】 MnO2,SiO2,TiO2,Al23
    のうちの少なくとも一種類の酸化物と、Mnを5モル%
    から30モル%含有する酸化鉄を顔料とし、かつ前記顔
    料中に酸化リチウムとSiO2を主成分とする融点が8
    00℃以下のガラスを全顔料中の1重量%から50重量
    %含有し、かつ結合剤としてケイ酸ナトリウムもしくは
    ケイ酸リチウムもしくはケイ酸カリウムを用い、かつ前
    記顔料と前記結合剤を混合して塗料を作製し、かつ前記
    塗料をランプのガラス表面に塗布して100℃から90
    0℃の温度下で焼成して遮光膜を形成することを特徴と
    するランプの遮光膜の製造方法。
  4. 【請求項4】 MnO2,SiO2,TiO2,Al23
    のうちの少なくとも一種類の酸化物と、Mnを5モル%
    から30モル%含有する酸化鉄を顔料とし、かつ前記顔
    料中に酸化リチウムとSiO2を主成分とする融点が8
    00℃以下のガラスを全顔料中の1重量%から50重量
    %含有し、かつ結合剤としてケイ酸エチルもしくはケイ
    酸メチルを用い、かつ前記顔料と前記結合剤を混合して
    塗料を作製し、かつ前記塗料をランプのガラス表面に塗
    布して100℃から900℃の温度下で焼成して遮光膜
    を形成することを特徴とするランプの遮光膜の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 一次粒子の粒子径が50nm以下である
    SiO2が全塗料重量の1重量%から50重量%含有す
    ることを特徴とする請求項または記載の塗料。
  6. 【請求項6】 一次粒子の粒子径が50nm以下である
    SiO2が全塗料重量の1重量%から50重量%含有し
    た塗料を用いることを特徴とする請求または記載の
    ランプの遮光膜の製造方法。
  7. 【請求項7】 塗料中の固形分率が60重量%から90
    重量%であることを特徴とする請求項または記載の
    塗料。
  8. 【請求項8】 塗料中の固形分率が60重量%から90
    重量%である塗料を用いることを特徴とする請求項
    たは記載のランプの遮光膜の製造方法。
  9. 【請求項9】 塗料の焼成時の焼成雰囲気が、窒素雰囲
    気下もしくは不活性雰囲気下であることを特徴とする請
    求項または記載のランプの遮光膜の製造方法。
  10. 【請求項10】 塗料の焼成時の雰囲気が10−2To
    rr以下の真空度の真空雰囲気下であることを特徴とす
    る請求項または記載のランプの遮光膜の製造方法。
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