JP3435856B2 - ボールねじ装置 - Google Patents

ボールねじ装置

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明はボールねじ装置に係り、
特に、ボールねじナットに取り付けられる防塵用の環状
シール体の改良に関する。 【0002】 【従来の技術】例えば工作機械などに多用されるボール
ねじの場合、作動時に切削くず,切削油等の異物がねじ
軸に付着してナット内に侵入すると、ボールやその転動
面であるねじ溝面の摩耗が異常に増大したり、ねじが作
動不良になったりして、ボールねじの寿命を低下させひ
いては破損を招くことがある。これを防止するには、ボ
ールねじナットに防塵用のシールを取り付けることが
一般に行われている。従来のボールねじナットのシール
としては、例えば図24,25に示すようなものが知
られている。このシール10は、外周面に螺旋状のね
じ溝1bを有するねじ軸1に、そのねじ軸のねじ溝1b
に対応するねじ溝2bを内周面に有するボールねじナッ
ト2が、両ねじ溝1b,2b間の螺旋状空間内を転動す
る多数のボール3を介して螺合しているボールねじ装置
に装着する環状体であり、ボールねじナット2の両開口
端部にそれぞれ形成された大径部5に嵌合される。その
内周面にはねじ軸1のねじ溝1bに係合する螺旋状の凸
条11が形成されている。大径部5の円周面には半径方
向のねじ孔6が一個ないし二個設けられてナット外周面
に開口している。その大径部5に環状体であるシール体
10を嵌合した後、ねじ孔6に螺合したセットビス8を
締め付けることにより、シール10を円周方向および
軸方向に固定して取り付ける構造である。 【0003】この従来のシール10をねじ軸1に予め
ボール3を介して螺合されているボールねじナット2に
装着するに際して、ねじ軸1が図23(a),(b)に
示すように両端又は片端に切り通し形状を有する場合
は、そのねじ軸の切り通し9A端においてねじ軸のねじ
溝1bに凸条11を係合させてシール10を螺合す
る。その後、シール10を螺旋状に回しながらボール
ねじナット2の位置迄運び、ナット端部の大径部5内に
嵌合させてセットビス8で固定する。 【0004】これに対して、ねじ軸1が図23(b),
(c)に示すように片端又は両端に切り上がり9Bを有
する場合は、そのままではねじ軸のねじ溝1bに凸条1
1を係合させることはできない。そこで先ず、環状のシ
ール10の一か所を、図24に示すように斜めにすり
割り12を入れて切断する。次いで、シール10の弾
性を利用してそのすり割り12をねじり開いて拡径し、
その状態でナット2の近傍のねじ軸のねじ溝1bに凸条
11を係合させてボールねじナット2の大径部5にシー
10を嵌合させてセットビス8で固定する。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
シール体10にあっては、ねじ軸の切り通し端部から螺
合して組み付ける場合は、ねじ軸が長くなるとボールね
じナット2の位置迄回しながら運ぶのにかなりの時間が
かかるので、組付け作業が手間取るという問題点があ
る。 【0006】一方、ねじ軸の切り上げ端部側から組み付
ける場合は、シール10の切断作業に手間と費用がか
かり、且つシールの材料は弾性体でなければならず固
いプラスチック材等は使用できないなどの制約があると
いう問題点がある。そこで、本発明は、このような従来
の問題点に着目してなされたものであり、ねじ軸の長短
や端部の形状に関係なく環状シール体をボールねじナッ
トの大径部に短時間で且つ切断などの手間も要すること
なく装着することのできるボールねじ装置を提供するこ
とを目的としている。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成する本
発明は、外周面に螺旋状のねじ溝を有するねじ軸と、前
記ねじ軸のねじ溝に対応するねじ溝を内周面に有するボ
ールねじナットと、前記両ねじ溝間の螺旋状空間内を転
動する多数のボールと、前記ボールねじナットの開口端
部に形成された大径部に嵌合固定される環状シール体と
を具えたボールねじ装置において、前記ねじ軸のねじ溝
に係合する凸条を内周側に有する複数の円弧状シール部
材で前記環状シール体を構成し、前記各円弧状シール部
材の端面に該シール部材の円周方向に突出する連結凸部
又は該連結凸部と嵌合する連結凹部を設けるとともに、
前記円弧状シール部材の両端面をそれぞれ幅方向に勝手
違いに傾斜した斜面としたことを特徴とする。 【0008】 【作用】本発明のシールは、環状体を円周方向に多分
割した形状の複数個の円弧状シール部材を環状に連結し
て形成される。各シール部材は、ねじ軸に螺合している
ボールねじナットの近傍にばらばらのままで直接に運び
込む。そして、複数個のシール部材でねじ軸を挟みつけ
るようにして、それぞれの内周面の螺旋状の凸条をねじ
軸のねじ溝に係合させるとともに、一の部材の連結凸部
を隣接の他のシール部材の連結凹部に嵌めこんで抜け止
め手段で止めるという方法で一個の環状シール体にす
る。 【0009】その後、この環状とされたシールをねじ
軸回りに若干回転させながらボールねじナットの端部の
大径部に嵌合させて固定する。したがって、ねじ軸の端
部の形状が切り通しでも切り上りでも関係なく、またね
じ軸の長さにも無関係で、極めて短時間で装着可能であ
る。また、装着に際して従来のように、すり割りを加工
したり、弾性を利用して拡径させる必要がない。 【0010】 【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明
する。なお、従来と同一または相当部分には同一の符号
を付してある。図1ないし図10は、この発明のシール
の一実施例を示すもので、図1〜図4は半環状の一方
シール部材、図5〜図7は半環状の他方のシール
材、図8〜図10は両シール部材を連結したものを表し
ている。 【0011】先ず構成を説明すると、本発明の環状のシ
ール20を構成する一方の円弧状シール部材20A
は、図1,図2に示すように半環状で、ボールねじナッ
ト2の開口端部の大径部5に嵌合する外径面21と、ね
じ軸1のねじ溝1bに係合する凸条11を有する内周面
22とを備えている。その両端面23Aは、図3に示す
ように、それぞれ幅方向に勝手違いに傾斜した斜面に形
成されている。その各端面23Aの中央部には、円周方
向に突出する連結凸部24が一本づつ突設されている。
この連結凸部24は、図4に示すように、先端に一方の
抜け止め手段としての鉤状の突起25を備えている。 【0012】本発明のシール20を構成する他方の
弧状シール部材20Bは、上記一方のシール部材20A
とほぼ同様の形状・寸法に形成されているが、ただし両
端面23Bには連結凸部24に対応させて連結凹部28
が設けられている。その連結凹部28は端面23Bから
部材内部へ向けて円周方向へ前記連結凸部24の突出長
とほぼ同じ深さの横孔に形成されている。そして、連結
凹部28の行き当たりには、外周方向へ直角に延びて外
径面の開口29に連通する他方の抜け止め手段としての
縦孔30が設けられている。 【0013】ここで、一方のシール部材20Aの両端面
23Aに設けた連結凸部24と他方の部材20Bの両端
面23Bに設けた連結凹部28との寸法関係について説
明する。両連結凸部24の外面同士の距離である最大面
間距離XA (図1参照)は、両連結凹部28の内面同士
の最大面間距離XB (図6参照)より若干大きくしてあ
る(XA >XB )。更に、連結凸部24の幅寸法Z
A (図3参照)は、連結凹部28の幅寸法ZB (図7参
照)より若干大きくしてある(ZA >ZB )。これは、
連結凸部24を連結凹部28に差し込んで組み付けたと
きのガタ付きを防止するためである。 【0014】一方、両連結凸部24の内面同士の距離で
ある最小面間距離YA (図1参照)は、両連結凹部28
の内径面同士の距離である最小面間距離YB (図6参
照)より若干大きくしてある(YA >YB )。これは、
連結凹部28に差し込んだ連結凸部24を弾性変形させ
て外すための逃げ代を確保するためである。半環状の両
シール部材20A,20Bの端面23A,23Bを合わ
せて接合することにより、図8〜図10に示すような一
個の環状シール20が形成される。 【0015】次に作用を述べる。半環状の二個のシール
部材20A,20Bをねじ軸1に螺合しているボールね
じナット2の近傍に運び、両部材20A,20Bでねじ
軸1を挟みつけるようにして、それぞれの凸条11をね
じ軸のねじ溝1bに係合させるとともに、一方のシール
部材20Aの端面の連結凸部24を他方のシール部材2
0bの連結凹部28に差しこみ、端面同士23A,23
Bを密着して接合させる。その連結凸部24の差し込み
の際は、シール部材20Aの端部の鉤状の突起25の先
端の斜面26(図4参照)をシール部材20Bの端部の
連結凹部28に当てて強く押し込む。すると斜面26の
作用で鉤状の突起25が内径方向に圧迫される。その結
果、連結凸部24が弾性変形して幾らか内側に撓んで縮
径し、鉤状の突起25は完全に連結凹部28内に滑り込
み係合される。鉤状の突起25が連結凹部28に完全に
滑りこんだ状態で、一方の抜け止め手段である連結凸部
の鉤状の突起25の先端と他方の抜け止め手段である縦
穴30とが図11に示すように係合して両シール部材2
0A,20Bは抜け止めされ、一個の環状シール体20
になる。 【0016】その後、この環状とされたシール20を
ねじ軸1の回りに回転させながらボールねじナット2の
端部の大径部5に嵌合させる。最後に、セットビス8で
シール20をボールねじナット2に固定する。本実施
例によれば、ねじ軸1の端部の形状が切り通し9Aでも
切り上り9Bでも関係なく、またねじ軸1の長さにも無
関係に、極めて短時間でシール20をボールねじナッ
ト2に装着することができる。装着に際して、従来のよ
うにシール20にすり割りを加工する手間は不要であ
り、そのすり割部を弾性を利用して無理にひねって拡径
させる必要もなく、材料も自由に選定できて低コストの
ボールねじ装置用シールを提供できるという効果が得
られる。 【0017】環状に結合して装着したシール20をね
じ軸1から取り外すには、図11に示すように、外径面
21に開口している縦穴30に棒を差し込んで、係合し
ている鉤状の突起25に押圧力Fを加える。これによ
り、シール部材20Aの端部が幾らか内側へ弾性変形し
て、抜け止め手段である鉤状の突起25と縦孔30との
ひっかかりが解除され、連結凸部24を連結凹部28か
ら簡単に引き抜くことができる。 【0018】図12〜17に他の実施例を示す。この実
施例は、一方の半環状のシール部材20Aの一方の端面
(図12で上端面)23A1 に連結凸部24、他方の端
面(図12で下端面)23A2 に連結凹部28を設ける
と共に、一方の抜け止め手段として連結凸部24の側面
を貫通するピン通し孔32及び連結凹部28と交叉して
シール部材20Aの他方の端面23A2 近くの側面を貫
通するピン通し孔33を設け、これらのピン通し孔3
2,33にそれぞれ他方の抜け止め手段であるピン34
(図15)を挿通するようにしてある。上記連結凸部2
4及び連結凹部28は角形で、第1の実施例のものとは
形状・寸法が若干異なっている。 【0019】他方の半環状のシール部材20Bの方は、
図16,17に示すように、上記シール部材20Aに対
して天地を逆にした関係になるように、連結凸部24,
連結凹部28,ピン通し孔32,ピン通し孔33をそれ
ぞれに設けてある。組み立ては、一方のシール部材20
Aの一方の端面23A1 の連結凸部24を、他方の半環
状のシール部材20Bの一方の端面23B1 の連結凹部
28に差し込み、両端面23A1 ,23B1 を密着させ
る。その後、ピン34をピン通し孔32,33に挿通す
ることにより抜け止めする。また、シール部材20Aの
他方の端面23A2 シール部材20Bの他方の端面2
3B2 Aも同様にして密着させた後、ピン34を通して
抜け止めする。なお、両シール部材20Aと20Bとの
組付け後のガタを防止するため、抜け止め手段のピン通
し孔32,33とピン34との間に締め代を設けてい
る。 【0020】この第2の実施例によれば、各シール部材
20A,20Bの材料として、全く弾性を有しないもの
でも使用できる利点がある。その他の構成及び作用・効
果は上記第1の実施例と同様である。図18〜22に他
の実施例を示す。この実施例は、上記第1,第2の各実
施例における連結凸部24及び連結凹部28が角形であ
るのにたいして断面円形とした点、及び抜け止め手段と
してピン及びピン通し孔を用いる代わりに、連結凸部2
4を連結凹部28に圧入して係合する大きさにした点が
異なっている。なお、連結凹部28の奥には空気抜き穴
35を設けて、連結凸部24の圧入作業が円滑に行われ
るようにしている。 【0021】その他の構成および作用・効果は上記第2
の実施例と同様である。なお、上記の各実施例では、二
分割のシールについて説明したが、本発明にあっては三
分割以上とすることもできる。但し、シールの組立のし
やすさの点では二分割とすることが望ましい。 【0022】 【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
じ軸の長短や端部の形状に関係なく環状シール体をボ
ールねじナットの大径部に短時間で且つ環状シール体の
一部を切り開くなどの面倒な作業を要することなく装着
することができる。 【0023】また、本発明の第2及び第3の実施例によ
れば、抜け止め手段としてピン結合または圧入結合の方
式を用いたため、分割された各構成部材の着脱に当たっ
て弾性を利用する必要がなく、その結果、弾性の小さい
材料でも使用できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の第1の実施例に係る環状シール体を構
成する一方の円弧状シール部材の正面図である。 【図2】図1に示すシール部材の側面図である。 【図3】図2のIII矢視で示す部分図である。 【図4】図1に示す連結凸部の端部の斜視図である。 【図5】本発明の第1の実施例に係る環状シール体を構
成する他方の円弧状シール部材の正面図である。 【図6】図5に示すシール部材の側面図である。 【図7】図6のVII 矢視で示す部分図である。 【図8】本発明の第1の実施例の組み立て正面図であ
る。 【図9】図8に示す環状シール体の上面図である。 【図10】図8のX−X線断面図である。 【図11】図9のXI−XI線断面図である。 【図12】本発明の第2の実施例に係る環状シール体を
構成する一方の円弧状シール部材の正面図である。 【図13】図12に示すシール部材の側面図である。 【図14】図13のXIV 矢視で示す部分図である。 【図15】抜け止めピンの側面図である。 【図16】本発明の第2の実施例に係る環状シール体を
構成する他方の円弧状シール部材の正面図である。 【図17】図16に示すシール部材の側面図である。 【図18】本発明の第3の実施例に係る環状シール体を
構成する一方の円弧状シール部材の正面図である。 【図19】図18に示すシール部材の側面図である。 【図20】図19のXX矢視で示す部分図である。 【図21】本発明の第3の実施例に係る環状シール体を
構成する他方の円弧状シール部材の正面図である。 【図22】図21に示すシール部材の側面図である。 【図23】ボールねじのねじ軸の端部形状を示す側面図
で、(a)は両端切り通し形状、(b)は一端切り通し
他端切り上がり形状、(c)は両端切り上がり形状であ
る。 【図24】(a)従来のボールねじ装置用シールの正
面図、(b)その側面図である。 【図25】従来のシールの装着状態を説明する断面図
である。 【符号の説明】 1 ねじ軸 1b ねじ溝 2 ボールねじナット 2b ねじ溝 3 ボール 5 大径部 11 凸条 20 環状シール 20A 円弧状シール部材 20B 円弧状シール部材 23A 端面 23B 端面 24 連結凸部 25 鉤状の突起 28 連結凹部 30 縦孔 32 ピン通し孔 33 ピン通し孔 34 ピン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16H 19/00 - 31/00 F16J 15/00 - 15/32 F16J 15/46 - 15/52

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 外周面に螺旋状のねじ溝を有するねじ軸
    と、前記ねじ軸のねじ溝に対応するねじ溝を内周面に有
    するボールねじナットと、前記両ねじ溝間の螺旋状空間
    内を転動する多数のボールと、前記ボールねじナットの
    開口端部に形成された大径部に嵌合固定される環状シー
    ル体とを具えたボールねじ装置において、 前記ねじ軸のねじ溝に係合する凸条を内周側に有する複
    数の円弧状シール部材で前記環状シール体を構成し、前
    記各円弧状シール部材の端面に該シール部材の円周方向
    に突出する連結凸部又は該連結凸部と嵌合する連結凹部
    を設けるとともに、前記円弧状シール部材の両端面をそ
    れぞれ幅方向に勝手違いに傾斜した斜面としたことを特
    徴とするボールねじ装置。
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