JPH06213299A - ナットの取付部材固定構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】手間のかかるねじ孔加工を必要としない簡単な
構造で、かつ良好な固定機能を具えたナットへの取付部
材の固定構造を提供する。 【構成】ねじ軸１に螺合されるナット２の少なくとも一
方の端部に、取付部材取付用段部３を設け、その段部３
の周面に半径方向の貫通孔１１を形成すると共に取付部
材５の周面にはその貫通孔１１に対応して半径方向のピ
ン挿入穴１３を設け、また貫通孔１１とピン挿入穴１３
とが接続される箇所に係合凹部Ａを設けた。一方、ピン
部材１０には胴部に突部１０ｃを設けた。ピン部材１０
を弾性変形させて貫通孔１１内に挿入し、その先端をピ
ン挿入穴１３に係合せしめて取付部材５を固定すると共
に、突部１０ｃを係合凹部Ａに係合させてピンを抜け止
めした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ボールねじ等のナット
に取り付けられる例えば防塵用シールのような取付部材
の固定構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】例えば工作機械などに多用されるボール
ねじの場合、作動時に切削くず，切削油等の異物がねじ
軸に付着してナット内に侵入すると、ボールや、その転
動面である螺旋溝面の摩耗が異常に増大したり作動不良
になってボールねじの寿命を低下せしめることになり、
ひいては破損を招くことがある。これを防止するには、
ボールねじナットに防塵用のシールを固定して取り付け
ることが一般に行われている。従来のボールねじナット
へのシールの固定構造としては、例えば図１５に示すよ
うなものが知られている。このものは、ボールねじ軸１
にボールＢを介して螺合されるボールねじナット２の両
端部に、シール取付用の大径の段部３を有するととも
に、この段部３の円周面にねじ孔４が開口されている。
すなわちボールねじナット２の外周面２ｂ（図１５の右
方）及びフランジ周面２ｆ（図１５の左方）からそれぞ
れの段部３に貫通する半径方向のねじ孔４が一個ないし
二個設けられている。段部３の奥行き寸法はシール５の
幅寸法Ｌと同寸法とされ、これにシール５を嵌合した
後、ねじ孔４に螺合したセットビス６を締め付けること
によりシール５を円周方向および軸方向に固定する構造
である。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図１５
に示した従来のナットのシール固定構造にあっては、ね
じ孔４に螺合したセットビス６でシール５を固定する構
造であるから、ボールねじナット２にねじ孔４を加工す
ることが必要で、タップ下孔加工，タップ加工等の作業
工程を要し、更にシール５の固定を確実に行うにはねじ
孔を円周方向の二カ所に設けることから、一層加工に手
間がかかり生産性向上が難しいという問題点があった。

【０００４】そこで、本発明は、このような従来の問題
点に着目してなされたものであり、セットビスの代わり
に特殊なピンを用いることにより、従来のような手間の
かかるねじ孔加工を必要とせず、ナットの加工が簡単
で、取り付け，取り外しも容易にでき、かつ良好な固定
機能を具えたナットの取付部材固定構造を提供すること
を目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成する本
発明は、ねじ軸の外周面に形成されたねじ溝に対応する
ねじ溝を内周面に有してねじ軸に螺合されるナットの少
なくとも一方の端部に、ナット内周面の径寸法より大径
の取付部材取付用段部が設けられ、該段部には前記ねじ
軸のねじ溝に螺合する螺旋状の凸条を内面に有する取付
部材が嵌着されているナットの取付部材固定構造に係
り、取付部材取付用段部の周面に形成された半径方向の
貫通孔と、その貫通孔に対応して前記取付部材の周面に
形成された半径方向のピン挿入穴と、長さ方向の中間に
外方へ膨出した突部を有するピン部材と、前記貫通孔と
前記ピン挿入穴とを結ぶ軸線に交差する方向に広がり前
記ピン部材の突部が係合する係合凹部とを備え、前記ピ
ン部材を前記貫通孔に通して一端側を前記ピン挿入穴に
係止させると共にピン部材の突部を前記係合凹部に係合
せしめて抜け止めすることを特徴とする。

【０００６】

【作用】本発明によると、ナット端部の大径の取付部材
取付用の段部に取付部材を嵌め込み、ピン部材により円
周方向と軸方向とに固定する。ピン部材は、ナットの外
径側から前記取付用段部周面に貫通する貫通孔に差し込
まれ、ピン部材の先端部が取付部材側面に設けられた半
径方向の穴に係合して、取付部材を固定する。同時に、
ピン部材の中間の突部が係合用の凹所に係合して抜け止
めされる。これにより、振動や衝撃を受けてもピン部材
が外に抜け落ちることは防止される。

【０００７】ナットに対する取付部材固定関係の機械加
工は、取付部材一個について、その取付用段部に貫通す
る半径方向の孔を最少一個と、ピン部材の突部との係合
部だけでよい。しかも、係合部の加工は、例えば取付部
材取付用段部の加工時に同時に行えるから、加工が簡単
でナットの生産性には殆ど負担にならない。また、セッ
トビスによる固定方式のようなネジのタップ加工は不要
で加工時間は大幅に短縮される。その結果、大幅な生産
性の向上が達成できる。

【０００８】

【実施例】以下、この考案の実施例を図面を参照して説
明する。なお、従来と同一または相当部分には同一の符
号を付してある。図１は、この考案の一実施例の組立断
面図である。外周面に断面半円弧状（ゴシックアーク状
でもよい）のねじ溝１ａを有するボールねじ軸（以下、
ねじ軸という）１が、ボールねじナット（以下、ナット
という）２に螺合されている。ナット２の内径面には、
ねじ軸１のねじ溝１ａに対向する断面半円弧状（ゴシッ
クアーク状でもよい）のねじ溝２ａが形成されている。
対向する両ねじ溝１ａ，２ａの間には多数の鋼球（ボー
ル）Ｂが転動自在に配されている。なお、ナット２に
は、図示されないが両ねじ溝１ａ，２ａを２回半巻きし
た後斜めに跨いでボールを循環させるボール循環チュー
ブが取付けてあり、ねじ軸１とナット２との相対螺旋運
動時に、ボールＢは、両ねじ溝１ａ，２ａに沿い転動し
つつねじ軸１の回りを２回半回ると、ボール循環チュー
ブの先端ですくい上げられてそのチューブ内を通り、両
ねじ溝１ａ，２ａのもとの箇所に戻る循環運動を繰り返
すようになっている。ボールＢの循環方式については、
上記チューブ式に限らずコマ式とかエンドキャップ式で
も良い。

【０００９】ナット２の両端部には、取付部材としての
ねじ軸１をシールするリング状のボールねじ用防塵シー
ル（以下、シールという）５が装着され、ピン部材１０
で軸方向及び周方向に固定されている。そのシール５の
内周面には螺旋状の凸条５Ｄが設けられており、ボール
ねじ軸１の螺旋溝１ａに摺接可能に係合している。以下
に、シール５の固定構造の詳細を説明する。

【００１０】前記ナット２には、その端部に、ナット内
径より大径で、シール５の幅寸法Ｌとほぼ同寸法の奥行
きを有するシール取付用段部３がナット２の端部に開口
する状態で設けられている。また、ボールねじナット２
の外径面２ｂから前記のシール取付用段部３の内径面３
ａに連通する半径方向の貫通孔１１が、各シール取付用
段部３に一個づつ形成されている。

【００１１】シール５が嵌合されるシール取付用段部３
の内径面３ａはハメアイ面とされ、そこには逃げ溝１２
が全周にわたり形成されている。この逃げ溝１２は、後
述するピン部材１０の突部１０ｃが係合する係合凹部Ａ
を兼ねており、内径面３ａと同時加工で形成されてい
る。一方、シール５の外周面には半径方向のピン挿入穴
１３が形成されている。このピン挿入穴１３は、前記シ
ール取付用段部３に形成された貫通孔１１に対応させて
形成され、ピン部材１０の先端部が係合するようにして
いる。また、シール５の外側端面５ａに、上記ピン挿入
穴１３の位置を示すべく、凹状（凸状でも良い）の穴位
置マーク１４が形成してある。

【００１２】この実施例のピン部材１０を図２，図３に
示す。このピン部材１０は合成樹脂材の成形品で、軸方
向にすり割り１０ａを有するスプリングピンである。そ
のピン胴部１０ｂの長さ方向の中間には、径方向の外方
へ膨出させて抜け止め用の凸部１０ｃが形成されてい
る。また、ピン挿入側の先端はテーパ面１０ｄとし、貫
通孔１１及びピン挿入穴１３への挿入を容易にしてい
る。

【００１３】なお、この実施例では、ナット２の両端部
にそれぞれシール５を取付けるものを示しているがその
固定構造は実質的に同一である。ただ加工上の問題か
ら、フランジ部２ｆにあってはフランジ側面からに半径
方向に深く大径の座ぐり穴７を形成してから小径の貫通
孔１１を形成してある。フランジ部２ｆを端面としない
で、その先にシール５の幅Ｌに相当する分ナットの外径
面２ｂを突出させた場合は、座ぐり穴７の加工も不要で
ある。

【００１４】また、この実施例ではボールＢがねじ軸を
2.5 巻きする例を示したが、ボールの巻数はこれに限ら
ず1.5 巻又は3.5 巻等でも良い。次に作用を述べる。上
記のナット２のシール取付用段部３に嵌合したシール５
の固定は、ピン部材１０により行う。すなわち、シール
５は外側端面５ａの穴位置マーク１４をナット２の貫通
孔１１の位置に合わせてシール取付用段部３の奥まで一
杯に嵌合させる。これにより貫通孔１１とピン挿入穴１
３とがほぼ同心に連通する。その状態で貫通孔１１にピ
ン１０を先端のテーパ面１０ｄから挿入する。ピン部材
１０は、挿入時に弾性変形してすり割り１０ａの部分で
縮径されるから、突部１０ｃも容易に貫通孔１１内を通
過できる。ピン部材１０の先端部がシール５のピン挿入
穴１３内に挿入され、やがて中間の突部１０ｃが係合凹
部Ａである逃げ溝１２に達して係合する。同時に、弾性
復元力によってピン部材１０の径は拡張され、図のよう
にピン胴部１０ｂが貫通孔１１とピン挿入穴１３とに圧
着される。これにより、ピン部材１０は抜け止めにな
り、シール５を円周方向及び軸方向に固定する。

【００１５】ピン部材１０を取り外す場合には、予め準
備したＬ形のかぎ棒をピン部材１０のすり割り１０ａを
利用してピン部材１０内部に差し入れ、先端を引っかけ
て引き抜く。すると逃げ溝１２に係合していたピン部材
１０の突部１０ｃが溝コーナに押されて、ピン部材１０
の径が弾性的に縮小するから容易に取り外すことができ
る。

【００１６】ナット２に対するシール固定のための機械
加工は、シール一個について、貫通孔１１と、係合凹部
Ａだけである。しかも、その係合凹部Ａの加工は、シー
ル取付用段部３のハメアイ面の逃げ溝１２としてシール
取付用段部３と同時加工で行えるから、実質的にナット
の生産には殆ど負担にならず、従来のセットビス方式の
固定構造の場合に比べて大幅な工程省略が実現できる。

【００１７】なお、ナット２の貫通孔１１は、ナット２
のねじ溝２ａの旋削加工，研削加工時の基準として利用
することができる。また、チューブ式ナットの場合のチ
ューブ孔加工時の基準ともすることができる。その貫通
孔１１の数はナット一個につき一か所に限らず、複数箇
所としても良い。いま、ナット２が非回転状態で且つ軸
方向移動可能に支持されているとすると、ねじ軸１の回
転で、ボールＢが対向する両ねじ溝１ａ，２ａ内を転動
して、ナット２はねじ軸１の回転方向に応じて前進また
は後退方向に直進運動をする。ボールＢはねじ軸１が回
転を続ける限り、図外のボール循環チューブを経て無限
循環を繰り返す。

【００１８】ナット２の移動に際して、その進行方向側
の端部のシール５がねじ軸１の外面に付着した異物を払
拭してナット２内部への異物侵入を阻止する。したがっ
て、ナット２の内部には異物が全く侵入せず、ボールＢ
の転動と無限循環運動が極めて円滑に行われる。図５，
図６に、シール固定構造の他の実施例を示す。

【００１９】これはピン部材１０の突部１０ｃが係合す
る係合凹部Ａとしての逃げ溝１２を、シール５の外周面
５ｂの方に設けた点が、上記の第１実施例と異なってい
る。ナット２に対するシール固定のための機械加工は、
貫通孔１１のみで足り、工程が一層簡単になる。図７，
図８は、シール固定構造の更に他の実施例を示してい
る。

【００２０】この実施例は、ピン部材１０の突部１０ｃ
が係合する係合凹部Ａとして、ハメアイ面の逃げ溝では
なく、ピン挿入穴１３と同心の座ぐり穴１６をシール５
の方に設けている。この場合も、ナット２に対するシー
ル固定のための機械加工は、貫通孔１１のみで足りる。
図９，図１０に、シール固定構造の更に他の実施例を示
す。

【００２１】この実施例は、ピン部材１０の突部１０ｃ
が係合する係合凹部Ａとして、シール５の外周面５ｂの
ピン挿入穴１３の位置に、軸方向の溝１７を設けてい
る。この場合にも、ナット２に対するシール固定のため
の機械加工は、貫通孔１１のみで足りる。続いて、ピン
部材１０に関する他の実施例を説明する。

【００２２】図１１，図１２に示すピン部材１０は、鋼
材をプレス成形したもので、先の図２，図３に示すもの
と同様の外形を有しているが、内径面に雌ねじ１８が形
成されている点が異なっている。このピン部材１０を貫
通孔１１とピン挿入穴１３とに挿入してから、その雌ね
じ１８に雄ねじを螺合させて突部１０ｃのところまでね
じ込む。これによりピン部材１０の突部１０ｃが内径方
向に弾性変形して縮径されることが防止できるから、ピ
ン部材１０が一層確実に抜け止めされる。また、雄ねじ
の先端部のみを雌ねじ１８の後端に螺合させれば、装着
されているピン部材１０を抜く作業が容易になる。

【００２３】図１４に示すピン部材１０は、金属ワイヤ
を密着してコイルばね状に巻いて形成したものである。
その突部１０ｃは、巻き径をワイヤの太さ分大きくして
形成してあり、スプリングの弾性を利用して脱着するこ
とができる。なお、本発明が適用されるナットは、ボー
ルねじナットに限定されるものではなく、一般的な角ね
じ台形ねじ等に螺合されるナットに対しても好適に用い
得るものである。

【００２４】また、上記各実施例では、ナットへの取付
部材として防塵用のシールを取付ける場合についてのみ
説明したが、必ずしもシールでなくても良い。また、取
付部材は必ずしもナットの両端部に取付けるとは限ら
ず、一端側にのみ取付けるようにすることもできる。ま
た、ピン部材の突部が係合する係合凹部として、ナット
のシール取付用段部３の内径面３ａに形成した逃げ溝と
か、シールの外周面に設けた逃げ溝や座ぐり穴や軸方向
溝の例を示したが、これらはいずれもナットとシールと
の両部材の合わせ目に形成している。それは実施の容易
さを考慮したものであって、係合凹部は必ずしも両部材
の合わせ目に形成するとは限らず、ナットのピン部材挿
入用の貫通孔のどの位置にあっても良い。

【００２５】また、上記実施例で、取付部材であるシー
ルの端面にピン挿入穴の位置マークを設けたものを示し
たが、このマークは必須のものではなく、省いてもピン
挿入穴をナットに設けた貫通孔に合わせることは可能で
ある。

【００２６】

【発明の効果】本発明のナットの取付部材固定構造は、
ナットに螺合するねじ軸のねじ溝に螺合する螺旋状の凸
条を内面に有する取付部材をナットの端部に設けた取付
用段部に嵌合して固定するもので、その取付用段部の周
面に貫通孔を、これに対応して取付材の周面にはピン挿
入穴を設けると共に、その貫通孔又はピン挿入穴とに交
差させて係合凹部を設けて、この係合凹部に係合する突
部を設けたピン部材を貫通孔とピン挿入穴とに抜け止め
に挿入して取付部材をナットに固定する構成としたた
め、従来ナットに対して行われていた取付部材固定用の
セットビスのねじ孔加工が不要でナットに対する機械加
工の大幅な工程の省略が可能となり、生産性が顕著に向
上するという効果を奏する。

【００２７】また、取付部材の固定と取り外しも、ピン
部材の脱着だけで容易にできるという効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例の縦断面図である。

【図２】本発明のピン部材の一実施例の正面図である。

【図３】図２のピン部材の端面図である。

【図４】図１のIV部の拡大図である。

【図５】本発明の取付部材固定構造の他の実施例の要部
縦断面図である。

【図６】図５の取付部材の正面図である。

【図７】本発明の取付部材固定構造の他の実施例の要部
縦断面図である。

【図８】図７の取付部材の正面図である。

【図９】本発明の取付部材固定構造の他の実施例の要部
縦断面図である。

【図１０】図９の取付部材の正面図である。

【図１１】本発明のピン部材の他の実施例の正面図であ
る。

【図１２】図１１のピン部材の端面図である。

【図１３】図１２のXIII−XIII線断面図である。

【図１４】本発明のピン部材の他の実施例の正面図であ
る。

【図１５】従来のボールねじナットのシール固定構造を
示す縦断面図である。

【符号の説明】

１ ねじ軸 １ａ ねじ溝 ２ ナット ２ａ ねじ溝 ３ 取付部材取付用段部 ５ 取付部材 ５Ｄ 凸条 １０ ピン部材 １０ｃ 突部 １１ 貫通孔 １２ 逃げ溝 １３ ピン挿入穴 Ａ 係合凹部

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ねじ軸の外周面に形成されたねじ溝に対
   応するねじ溝を内周面に有してねじ軸に螺合されるナッ
   トの少なくとも一方の端部に、ナット内周面の径寸法よ
   り大径の取付部材取付用段部が設けられ、該段部には前
   記ねじ軸のねじ溝に螺合する螺旋状の凸条を内面に有す
   る取付部材が嵌着されているナットの取付部材固定構造
   において、 前記段部の周面に形成された半径方向の貫通孔と、該貫
   通孔に対応して前記取付部材の周面に形成された半径方
   向のピン挿入穴と、長さ方向の中間に外方へ膨出した突
   部を有するピン部材と、前記貫通孔と前記ピン挿入穴と
   を結ぶ軸線に交差する方向に広がり前記ピン部材の突部
   が係合する係合凹部とを備え、前記ピン部材を前記貫通
   孔に通して一端側を前記ピン挿入穴に係止させると共に
   ピン部材の突部を前記係合凹部に係合せしめて抜け止め
   することを特徴とするナットの取付部材固定構造。