JP3428690B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録装置

Info

Publication number
JP3428690B2
JP3428690B2 JP20669093A JP20669093A JP3428690B2 JP 3428690 B2 JP3428690 B2 JP 3428690B2 JP 20669093 A JP20669093 A JP 20669093A JP 20669093 A JP20669093 A JP 20669093A JP 3428690 B2 JP3428690 B2 JP 3428690B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
head
temperature
recording
recording head
characteristic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP20669093A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH0752409A (ja
Inventor
規文 小板橋
弘光 平林
重泰 名越
仁 杉本
雅哉 植月
均 錦織
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority to JP20669093A priority Critical patent/JP3428690B2/ja
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to EP99200441A priority patent/EP0924084B1/en
Priority to DE69422219T priority patent/DE69422219T2/de
Priority to DE69434655T priority patent/DE69434655T2/de
Priority to AT94303828T priority patent/ATE187933T1/de
Priority to AT99200441T priority patent/ATE319574T1/de
Priority to EP94303828A priority patent/EP0626265B1/en
Priority to US08/250,160 priority patent/US6086180A/en
Publication of JPH0752409A publication Critical patent/JPH0752409A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3428690B2 publication Critical patent/JP3428690B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Ink Jet (AREA)
  • Accessory Devices And Overall Control Thereof (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インクジェット記録装
置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】プリンタ、複写機、ファクシミリ等の記
録装置は、画像情報に基づいて、紙やプラスチック薄板
等の被記録材上にドットパターンからなる画像を記録し
ていくように構成されている。
【0003】記録装置は、記録方式によりインクジェッ
ト式、ワイヤドット式、サーマル式、レーザービーム式
等に分けることができ、そのうちのインクジェット式
(インクジェット記録装置)は、記録ヘッドの吐出口か
らインク(記録液)滴を吐出飛翔させ、これを被記録材
に付着させて記録するように構成されている。
【0004】近年、数多くの記録装置が使用されるよう
になり、これらの記録装置に対して、高速記録、高解像
度、高画像品質、低騒音などが要求されている。このよ
うな要求に応える記録装置として、前記インクジェット
記録装置を挙げることができる。このインクジェット記
録装置では、ノズル内のインク中に熱エネルギーを印加
して発泡を生起し、該発泡力によって記録ヘッドからイ
ンクを吐出させて記録を行うため、上記要求を満たすの
に必要なインクの吐出の安定化、インク吐出量の安定化
は記録ヘッドの温度管理が非常に重要になっている。
【0005】このため、従来のインクジェット記録装置
にあっては、記録ヘッド部に、温度検知手段を設けてヘ
ッドの温度を検出するいわゆるクローズドループ方式
や、ヘッドへの投入エネルギーからヘッド温度の推移を
演算推定する温度演算方式によってヘッド温度を検出
し、該記録ヘッドの検出温度に基づいて該記録ヘッドの
温度を所望範囲に制御する方法、あるいは上記2つを併
用する方法が採られていた。
【0006】例として、特開平5−31906号公報で
は、熱的に安定な状態で記録ヘッド上の温度検知手段か
らの検知温度と、演算推定された演算温度との差を用い
て演算時に使用する値(テーブル等)を補正して高精度
化を達成している。また、特開平5−31918号公報
では、記録ヘッド上の温度検知手段を非記録時、あるい
は温度変化の無いタイミングに記録装置本体内蔵の環境
温度検知手段によって上記記録ヘッドの温度検知手段の
補正を行っている。さらに、特開平5−64890号公
報では、上記温度検知手段による検知温度と上記演算温
度との比を演算温度補正に用いている。これらの例は、
交換方式の記録ヘッドの問題点である上記温度検知手段
のバラツキや記録ヘッド個々の熱時定数の差や吐出時の
熱効率の差などのヘッド特性を補正する方法である。
【0007】上記温度演算方式の手段の概略は、対象物
の温度の挙動(昇温温度)を、単位時間あたりに投入し
たエネルギーによって昇温した対象物の温度が単位時間
経過後毎に何度に降温していくかを予め設定しておき、
現在の対象物の温度を過去の各単位時間あたりに昇温し
た温度が現時点において何度に降温しているかの総和を
演算することにより推定するものである。
【0008】上記温度制御用のヒータとしては、記録ヘ
ッド部に接合した加熱用のヒータ部材や、熱エネルギー
を利用して飛翔液滴を形成し、記録を行うインクジェッ
ト方式の記録装置、すなわち、インクの膜沸騰による気
泡成長によりインク液滴を吐出させるものにおいては吐
出用ヒータが用いられる。また、上記吐出用ヒータを用
いる場合には、発泡しない程度に通電する必要がある。
【0009】また、インクジェット記録装置の記録ヘッ
ドでは、吐出を行わない状態で長時間放置された場合な
ど、特に吐出口近傍のインク液路内においてインクが増
粘し正常な吐出が行われなくなることがある。また、比
較的印字デューティーが高い記録を行う場合などに吐出
が連続的に行われると、吐出に伴って上記液路内のイン
ク中に生じる微細な気泡が成長し、この成長した気泡が
液路内に残留して吐出に影響を及ぼし、同様に正常な吐
出が行われなくなることがある。この気泡については、
上述のように吐出に伴って生ずるもの以外に、インク供
給路の接続部等、インク供給系においてインク中に混入
するものもある。
【0010】これら種々の原因による吐出不良に対して
は、インクジェット記録装置では、例えば、吐出を行わ
ないときに記録ヘッドの吐出口面を被覆してインクの増
粘を防止するキャッピング処理、このキャッピング状態
で吐出口からインクを吸引して増粘インクを排出させる
インク吸引、あるいはインク吸収体等で構成される所定
のインク受けに通常の記録時と同様にインクを吐出し同
様に増粘インクを排出する空吐出(予備吐出)等の吐出
回復処理が行われる。
【0011】上記処理のうち、吐出回復処理について
は、従来、例えば、装置の電源投入時や記録動作中に、
所定の時間間隔で自動的に行われたり、あるいは操作者
が必要に応じて回復ボタン等を押下することによって行
われていた。
【0012】上述した従来のインクジェット記録装置の
うち、装置の電源投入時に必ず吐出回復処理を行う構成
のものにおいては、記録ヘッドの吐出に関する信頼性は
向上するものの、例えは、頻繁に電源のオン,オフを繰
り返すような装置の使われ方をする場合などには放置時
間が比較的短くなるため、必ずしも電源投入時毎に吐出
回復処理を行わなくてもよいことも多く、このような場
合、吐出回復処理に伴って不必要にインクを消費してい
ることになるという問題がある。
【0013】同時に、電源投入時毎に頻繁に吐出回復処
理が行われることによってインクの消費量が増大し、ラ
ンニングコストを上昇させることになる。これは、特に
記録ヘッドとインクタンクとを一体とし、インク切れの
場合にはこれら一体の記録ヘッドとインクタンクとを共
に交換するようなディスポーザブルヘッド等の場合、従
来の吐出回復処理によるインク消費量の増加によって、
ヘッド交換の回数が増加し、ランニングコストが上昇す
ることになる。また、以上のようなことは、複数の記録
ヘッドを用いるフルカラーのインクジェット記録装置に
おいても同様にいえる。
【0014】一方、操作者がその判断に応じ回復ボタン
等を操作して回復処理を行う構成のものにあっては、回
復処理が自動的に行われないために、上述のような回復
のための無駄なインク消費が比較的少なくて済むもの
の、逆に必要なときに回復処理が行われないことがあ
り、信頼性に欠けるという問題点がある。特に、ファク
シミリのように、その動作が操作者等によって監視され
ない時間を生じる可能性のある装置に用いられるインク
ジェット記録装置では、必要なときに回復処理が行われ
ず、良好な記録が行えない可能性が大となる。
【0015】これらの問題を解決する方法としては、例
えば、特開平4−255361号(タイマー回復)や特
願平4−99269号(不吐出検知方法)が本出願人に
よって提案されている。
【0016】また、近年になってラップトップパソコン
に代表される可搬型のOA機器の登場により、可搬型の
プリンター等においても、高品位なものが求められるよ
うになってきた。このような可搬型のものについては、
構造上、小型化設計のため、特にヘッドやインクタンク
が交換可能タイプのものが今後さらに主流になっていく
と考えられる。また、ホームパーソナルユースのワープ
ロ、パソコン、ファクシミリの増大によるメンテナンス
性の面からも、ますます交換可能なカートリッジタイプ
のものが主流になっていくと考えられる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】以上説明したように、
交換可能な記録ヘッドの各特性(温度検知手段の特性バ
ラツキ等)を記録装置本体が測定すると、カラープリン
タの場合、複数ヘッドを測定する必要があり、パワーO
N時のプリンタの立ち上げ動作のたびに非常に時間がか
かってしまう。あるいは、ヘッド特性を記録ヘッド自体
に記憶させる場合、記憶させる手間と記憶手段(例え
ば、ROM等)を記録ヘッド毎に持つので非常にコスト
がかかる。また、記録ヘッドにヘッド特性用接点を持た
せてその組み合わせで各種特性を検知する方式は、情報
量の分だけ上記接点と読み取り用の配線が必要であり、
装置の大型化、コストアップが問題になっていた。
【0018】また、上記特開平4−255361号にお
ける提案のような方法では、パワーOFF時に計時手段
が働いている必要があり、多少のコストアップを要す
る。一方、特願平4−99269号における提案のよう
な方法では、不吐出を検知するのに多少時間がかかる
し、また精度を上げるためには、それなりのインク消費
が必要であった。また、電源投入後、不吐出検知処理を
行うといっても、もし記録ヘッドが何らかの原因により
印字中に不吐出の状態になり、ユーザーがそれに気付か
ない場合、記録装置はそのまま印字操作を続け、記録ヘ
ッドの過昇温のためのダメージを同装置に与えてしまう
場合が起こり得る。
【0019】特に、例えば、記録ヘッドにインクカート
リッジからインクを供給し、インクカートリッジ内のイ
ンクがなくなればユーザーが新たなインクカートリッジ
に交換して使用する構成のインクジェット記録装置にお
いて、インクカートリッジやインク供給系にインクカー
トリッジのインクがなくなったことを検知する機能を設
けていなければ、インクカートリッジのインクがなくな
る度に、記録ヘッドはインクが供給されない状態にな
り、不吐出の状態になる。その度に、記録ヘッドは過昇
温の危険にさらされる。
【0020】本発明の目的は、上記課題を解決したイン
クジェット記録装置を提供することにある。
【0021】本装置では、特に、各種記録ヘッドの特性
等の情報を正確に測定し、精度の高い制御を行えるよう
にしていながら、パワーON時の立ち上げ時間をなるべ
く早くできるようにすることを目的としている。
【0022】また、パワーON時の回復動作を最適なも
のとすることで無駄なインクの消費を防止し、かつ信頼
性を保つことも目的としている。
【0023】また、常時、記録ヘッドが正常に吐出して
いるか否かを精度高く検知することで、インクなし状態
で吐出されることを極力防ぐことを目的としている。
【0024】そのために、本発明では、コンセントON
(ハードパワーON)とソフトパワーONの2種類のパ
ワーON機構を設け、ハードパワーON時に、各種ヘッ
ド特性の測定を行い、また、ハードパワーONに引き続
くソフトパワーON後に、不吐出検知動作を行うように
している。詳しくは、本発明は、吐出ヒータを有する記
録ヘッドを搭載して記録を行うインクジェット記録装置
であって、コンセントに接続することにより装置本体に
電力を供給可能な状態とする第1手段(ハードパワーO
N機構)と、前記第1手段のONによって電力が供給さ
れた状態となっている前記装置本体を動作可能な状態に
する第2手段(ソフトパワーON機構)と、前記第1手
段のON(ハードパワーON)に伴って前記吐出ヒータ
の特性を含むヘッド特性を測定するためのヘッド特性測
定手段とを有し、前記ヘッド特性測定手段による測定
は、前記第1手段のON(ハードパワーON)に引き続
く前記第2手段のON(ソフトパワーON)の前に開始
され、前記第1手段だけがON(ハードパワーだけがO
N)で前記第2手段がOFF(ソフトパワーがOFF)
の場合、前記装置本体による記録動作は可能な状態とな
らず、前記第1手段がON(ハードパワーがON)で前
記第2手段もON(ソフトパワーもON)の場合、前記
装置本体による記録動作は可能な状態となることを特徴
とする。特に、前記第1手段のONに引き続く前記第2
手段のONに伴って前記記録ヘッドが正常にインクを吐
出しているかどうかを検知する不吐出検知動作を行うこ
とが好ましい。
【0025】
【0026】
【作用】本発明によれは、ハードパワーON時に各種記
録ヘッドの特性を測定するようにしたので、精度の高い
制御を行うことができるとともに、パワーON時の立ち
上げ時間を早くすることができる。
【0027】また、ハードパワーONに引き続くソフト
パワーON時に、不吐出検知動作を行うので、無駄なイ
ンクの消費を防ぐことができる。
【0028】また、上述のように、各種手段を設けたの
で、記録ヘッドの吐出が正常か否かを精度高く検知する
ことができるとともに、記録ヘッドがインクなしで駆動
されるのを防止することができる。
【0029】
【実施例】
(第1実施例)図23は、本実施例のシリアル方式イン
クジェットカラープリンターを示す。記録ヘッド1は複
数のノズル列を有しインク滴を吐出することにより記録
媒体上にドット形成により画像記録を行うデバイスであ
る。( 本図では、記録ヘッド固定レバーに被われて直接
図中には示されていない。)また、後述のように本例で
は複数色のインク滴を吐出可能なように、複数の印字ヘ
ッドが一体となって記録ヘッド1を形成している。異な
る印字ヘッドからは異なる色インクが吐出され、これら
のインク滴の混色により記録媒体12上に色画像が形成
される。印字データはフレキシブルケーブル10により
プリンタ本体の電気回路から印字ヘッドに伝達される。
印字ヘッド列1K(黒)、1C(シアン)、1M(マゼ
ンタ)、1Y(イエロー)は、本図では4色分の記録ヘ
ッドが一体となって構成されている。そして記録ヘッド
1はキャリッジ3に着脱自在になっている。往走査では
この順番でインクを吐出する。例えば、レッド(以下
R)を作る場合、まずマゼンタ(以下M)が記録媒体1
2上に着弾され、そのあとMのドット上にイエロー(以
下Y)が着弾されてレッドのドットとして見えるように
なる。以下同様にグリーン(以下G)の場合はC、Yの
順番に、ブルー(以下B)の場合はC、Mの順番にそれ
ぞれ着弾し色を形成する。ただし、各印字ヘッドは一定
間隔(P1)をもって配置されているため、例えば、G
のベタ印字をするときCを印字した後2*P1分遅れて
Yの印字が行われる。即ち、Cベタの上にYベタを印字
することになる。
【0030】このキャリッジ3は、不図示の位置検知手
段によりキャリッジの走査速度及び印字位置を検出して
主走査方向の移動制御を行う。この動力源はキャリジ駆
動モータであり、タイミングベルト8により伝達されて
ガイド軸6、7上を矢印a,b方向に移動する。この主
走査動作中に印字が行われる。桁方向の印字動作には片
方向印字と両方向印字がある。通常、片方向印字はキャ
リッジがホームポジション(以下HP)から反対方向に
移動する時(往方向)のみ印字し、HPに戻る方向(復
方向)は印字動作を行わない。即ち、高精度の印字が可
能となる。それに対して両方向印字は、往、復両方向と
も印字動作を行う。よって高速度の印字が可能になる。
【0031】副走査方向の送りは不図示の紙送りモータ
ーにより駆動されたプラテンローラ11により記録媒体
12が送られる。同図矢印c方向に給紙され、印字位置
に到達したら上記印字ヘッド列により印字動作が行われ
る。
【0032】次に、キャリッジ上の記録ヘッドについて
述べる。図26および図27に示すようにキャリッジ3
内には、K、C、M、Yのインクを各々吐出する4つの
印字ヘッド(図24)とインクを貯蔵、供給するインク
タンク2bk、2c、2m、2yとが搭載されている。
これら4つのインクタンクは各々キャリッジ3に着脱可
能な構成で、インクが無くなった時点で新たなインクタ
ンクを色別に交換することができる。
【0033】記録ヘッド固定レバー4は、記録ヘッド1
をキャリッジ3に位置ぎめ固定するためのものであり、
キャリッジ3のボス3bと記録ヘッド固定レバー4の穴
4aが回転自在に嵌合しており、記録ヘッド1は上記レ
バーの開閉によって交換可能になる。また、記録ヘッド
固定レバー4とキャリッジ3のストッパ3dが噛み合う
ことによって上記記録ヘッド1をキャリッジ3上に正確
に固定することができる。さらに、記録ヘッド1上部の
接点群111は不図示の記録ヘッド固定レバーにある対
応接点群と接合する。これら接点群が接合することによ
り4色分の印字ヘッドの吐出ヒータ及びサブヒータ駆動
の駆動信号、前述のヘッド特性、ダイオードセンサ値等
が記録装置本体から送信あるいは検知可能となる。
【0034】記録ヘッド1の詳細について説明する。図
24、図25に示すように、印字ヘッドは列状に設けら
れた複数個の吐出口Aよりインク滴を吐出させるため
に、印加電圧が供給され熱エネルギーを発生させる電気
熱変換体(以下吐出ヒータB)が各吐出口毎にヒータボ
ード20G上に配設されている。そして、駆動信号の印
加によって、前記吐出ヒータBを加熱しインク滴を吐出
させる。ヒータボード20Gには、吐出ヒータBが複数
個並んで配置された吐出ヒータ列20Dが配設され、そ
の近傍にインク滴を吐出しないダミー抵抗20Eが配設
されている。前記ダミー抵抗20Eは、吐出ヒータBと
同様の条件で作成されたものであるため、この抵抗値を
測定することにより一定電圧を印加した場合の吐出ヒー
タBの生成エネルギー(Watt/時)が検知できる。吐出
ヒータBの発生エネルギーは、印加電圧をV(Volt)、
吐出ヒータ抵抗値をR(Ω)としたときV2 /Rで算出
できるので、上記抵抗体のバラツキによって吐出ヒータ
Bの特性が変ることになる。これら抵抗体は、製作時の
バラツキとして、例えば±15%のバラツキを有する場
合がある。この吐出ヒータ特性のバラツキを検知して各
記録ヘッド毎に最適な駆動条件を設定することにより記
録ヘッドの高寿命化、高画質化が可能となる。
【0035】また、本方式のインクジェットプリンタ
は、インクに熱エネルギーを投入しインク吐出をさせて
いるため、記録ヘッドの温度管理が必要となる。そのた
めヒータボード上にはダイオードセンサ20Cが配設さ
れ、これによって吐出ヒータ近傍の温度を測定しインク
吐出あるいは温度調節用の投入エネルギーを制御してい
る。
【0036】また、インクの物性として低温時の高粘度
化等による吐出不良を防止するため、インク吐出とは別
にヒータボード上に電気熱変換体(以下サブヒータ20
F)が設けられている。サブヒータ20Fに投入される
エネルギーもダイオードセンサ20Cによる温度管理が
なされる。サブヒータ20Fも吐出ヒータ1Bと同様の
条件で作成されたため、前記ダミー抵抗20Eの抵抗値
を測定することによりそれらの抵抗値のバラツキを検知
できる。
【0037】(記録ヘッド温度の検出)本実施例に用い
ることが可能な記録ヘッドのヒータボードを図25に示
す。ヒータボード上には温度センサ,温調ヒータ,吐出
ヒータ等が配置される。同図はヒータボードの概略上面
図であり、温調用(サブ)ヒータ20F,吐出用(メイ
ン)ヒータ20Hが配された吐出部列20D,温度セン
サ20Cが同図で示されるような位置関係で同一基板上
に形成されている。温度センサ20CはSi基板853
上において複数の吐出ヒータ20Hの配列の左右にそれ
ぞれ配設される。なお、本例では、2つの温度センサ2
0Cが検出する温度の平均値を検知温度としている。こ
のように各素子を同一基板上に配することでヘッド温度
の検出,制御が効率よく行え、さらにヘッドのコンパク
ト化、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0038】ここで、ヘッド温度演算アルゴリズムにつ
いて説明する。
【0039】(制御全体の流れの概要)前述の通り、イ
ンクジェット記録装置にあっては、記録ヘッドの温度を
一定領域内に制御することによって吐出及び吐出量の安
定化が図られ、高画像品位の記録が可能になる。該安定
した高画像品位の記録を実現するための、記録ヘッドの
温度の演算検出手段、該温度に応じた最適駆動制御方法
等の概要を以下に説明する。
【0040】(1)目標温度の設定 以下に説明する吐出量安定化のためのヘッド駆動制御
は、ヘッドのチップ温度の制御の基準とする。即ちヘッ
ドのチップ温度を、その時点で吐出している1ドットあ
たりの吐出量を検出する代用特性としている。しかし、
チップ温度が一定であってもタンク内のインク温度は環
境温度に依存するので吐出量は異なる。この差異を解消
する目的で、環境温度別に(即ちインク温度別に)吐出
量が同等になるヘッドのチップ温度を定めた値が目標温
度である。目標温度は目標温度テーブルとして予め設定
しておく。本実施例で使用する目標温度テーブルを図3
4に示す。
【0041】(2)記録ヘッド温度の演算手段 記録ヘッド温度を過去の投入エネルギーから推定演算す
る。演算手段は、記録ヘッドの温度推移を単位時間当た
りの離散値の積み重ねとして扱う離散値積み重ね演算手
段と、該離散値に応じた記録ヘッドの温度の温度推移を
投入可能なエネルギーの範囲内で予め演算しておきテー
ブル化した既演算テーブル手段と、該テーブルが単位時
間当たりの投入エネルギーと経過時間の2次元のマトリ
ックスで構成されている2次元テーブル構成手段とを有
する。
【0042】本発明における温度演算アルゴリズム手段
においてはさらに、複数の熱伝導時間の異なる部材を組
み合わせて構成されている記録ヘッドをモデル的に実際
よりも少い数の熱時定数で代用するモデル化手段と、該
モデル単位(熱時定数)毎に必要演算間隔と必要データ
保持時間を分けて個々に演算を行う演算アルゴリズム手
段と、熱源を複数設定し個々の熱源毎に上記モデル化単
位で昇温幅を演算し後に加え合わせてヘッド温度を演算
する複数熱源演算アルゴリズム手段が設けられている。
【0043】(3)PWM制御 各環境下でヘッドが上記目標温度テーブルに記されてい
るチップ温度で駆動さされれば、吐出量の安定化は図ら
れる。しかし、チップ温度は印字duty等に応じて時
々変動しており一定ではない。吐出量の安定化を図る目
的で、ヘッドの駆動をマルチパルスPWM駆動にし、温
度に依存させずに吐出量の制御を行う手段がPWM制御
である。本実施例では、ヘッド温度とその環境下での目
標温度との差により、その時点で最適な波形/幅のパル
スを規定したPWMテーブルを予め設定しておき、吐出
駆動条件を定める。
【0044】(4)サブヒータ駆動制御 PWM駆動を行っても所望の吐出量が得られない場合
に、サブヒータを駆動することによってヘッド温度を目
標温度に近づける制御がサブヒータ制御である。ヘッド
温度を所定の温調温度に制御する。
【0045】(温度予測制御)本装置において記録ヘッ
ドの温度を推定する基本式は、以下の熱伝導の一般式に
準じる。
【0046】 加熱時 △temp=a{1−exp[−m*T]} ……(1) 加熱の途中から冷却 △temp=a{exp[−m(T−T1 )]−exp[−m*T]}……(2) 但し、 temp;物体の昇温温度 a;熱源による物体の平衡温度 T;経過時間 m;物体の熱時定数 T1 ;熱源を取り去った時間 記録ヘッドを集中定数系として扱えば、熱時定数毎に印
字Dutyに応じて上記(1),(2)式を計算するこ
とにより、理論上は記録ヘッドのチップ温度は推定でき
る。
【0047】しかし、一般には処理速度の問題から上記
演算をそのまま行うことは困難である。
【0048】厳密には、全ての構成部材が異なる時定数
を持っており、また部材間で時定数が生じるので、演算
回数が膨大になる。
【0049】一般的にMPUでは直接指数演算は行えな
いので、近似計算を行うか換算表から求めるなどしなく
てはならず演算時間が短縮できない。
【0050】そこで、上記問題は、次にあげるモデル
化、及び演算アルゴリズムで解決している。
【0051】(1)モデル化 前記構成よりなる記録ヘッドにエネルギーを投入し、該
記録ヘッドの昇温過程のデータをサンプリングしたとこ
ろ、図35のような結果を得た。図中、縦軸は、Ln
(1ー△t/a)(a;平衡温度)横軸は、経過時間で
ある。
【0052】上記構成よりなる記録ヘッドは、厳密には
多くの熱伝導時間の異なる部材の組み合わせで構成され
ているが、上記ログ変換を行った昇温データと経過時間
の関数の微分値が一定である範囲に於いては(即ち、上
表に於ける傾きが一定であるA、B,Cの範囲に於いて
は)、実用上、単一部材の熱伝導として扱えることを示
している。
【0053】以上の結果から本実施例では、熱伝導に関
するモデルに於いては記録ヘッドを2つの熱時定数で取
り扱うこととする。(上記結果では、3つの熱時定数を
持つモデル化を行う方がより正確に回帰が行えることを
示しているが、上表のBとCのエリアに於ける傾きがほ
ぼ等しいと判断し、演算効率を優先して、本実施例で
は、2つの熱時定数で記録ヘッドをモデル化するもので
ある。)具体的には、一方の熱伝導は0.8秒で平衡温
度まで昇温する時定数を有するもののモデル化であり
(上表ではAの領域に相当)、もう一方は512秒で平
衡温度まで昇温する時定数を有するもののモデル化であ
る(上表ではB及びCの領域のモデル化である)。
【0054】さらに、本実施例では、記録ヘッドを以下
のように扱いモデル化する。
【0055】熱伝導中の温度分布は無視できるものと
し全て集中定数系で扱う。
【0056】熱源は、印字のためのヒートと、サブヒ
ータのヒートの2つを想定する。
【0057】図36にモデル化した熱伝導の等価回路を
記す。
【0058】(2)演算アルゴリズム 本実施例でのヘッド温度の演算は、前記の熱伝導の一般
式を以下のように展開して用いる。
【0059】<EX.熱源ON後nt時間経過後の温度
の推定手段>
【0060】
【数1】
【0061】以上のように展開したことにより、<1> 式
が<2ー1>+<2-2>+<2-3>+----+<2-n>と一致する。ここで、 <2ーn> 式;時刻0からtまで加熱し、時刻tからntま
で加熱をOFFした場合の、時刻ntに於ける対象物の
温度に等しい。
【0062】<2ー3> 式;時刻(n-3) から(n-2) まで加熱
し、時刻(n-2) からntまで加熱をOFFした場合の、
時刻ntに於ける対象物の温度に等しい。
【0063】<2ー2> 式;時刻(n-2) から(n-1) まで加熱
し、時刻(n-1) からntまで加熱をOFFした場合の、
時刻ntに於ける対象物の温度に等しい。
【0064】<2ー1> 式;時刻(n-1) からn まで加熱した
場合の時刻ntに於ける対象物の温度に等しい。
【0065】上記式の合計が<1> 式に等しいということ
は、即ち対象物1の温度の挙動(昇温温度)を、単位時
間あたりに投入されたエネルギーによって昇温した対象
物1の温度が、単位時間経過後毎に何度に降温していく
かを求め(各々の<2-1> 式、<2-2> 式---<2-n>式に相
当)、現在の対象物1の温度は過去の各単位時間あたり
に昇温した温度が現時点に於いて何度に降温しているか
の総和を求める(<2-1>+<2-1>+-----<2-n>)ことにより
演算推定することが可能であることを示す。
【0066】本実施例では、前記のモデル化により記録
ヘッドのチップ温度の演算は4回(熱源2*熱時定数
2)行った。
【0067】4回の演算のための夫々の、必要演算間
隔、データ保持時間を図37に示す。また、前記ヘッド
温度を演算する、投入エネルギーと経過時間の2次元の
マトリックスからなる演算表を図38から図41に示
す。
【0068】図38は、熱源;吐出ヒータ、時定数;シ
ョートレンジの部材群、の演算表、図39は、熱源;吐
出ヒータ、時定数;ロングレンジの部材群、の演算表、
図40は、熱源;サブヒータ、時定数;ショートレンジ
の部材群、の演算表、図41は、熱源;サブヒータ、時
定数;ロングレンジの部材群、の演算表、である。
【0069】図に示す通り、0.05秒間隔で、(1)
ショートレンジで代表される熱時定数の部材が、吐出の
ためのヒータの駆動で何度昇温しているか(△Tm
h)、(2)ショートレンジで代表される熱時定数の部
材が、サブヒータの駆動で何度昇温しているか(△Ts
h)、1.0秒間隔で、(3)ロングレンジで代表され
る熱時定数の部材が、吐出の為のヒータの駆動で何度昇
温しているか(△Tmb)、(4)ロングレンジで代表
される熱時定数の部材が、サブヒータの駆動で何度昇温
しているか(△Tsb)、以上の演算を適時行い、△T
mh、△Tsh、△Tmb、△Tsbを加え合わせるこ
とによって(=△Tmh+△Tsh+△Tmb+△Ts
b)、その時点でのヘッド温度を演算することが出来
る。
【0070】上記のように、複数の熱伝導時間の異なる
部材を組み合わせて構成されている記録ヘッドをモデル
的に実際よりも少い数の熱時定数で代用するモデル化手
段を用いたことにより、 忠実に全ての熱伝導時間の異なる部材及び部材間の熱
時定数別に演算処理を行うのと比較して、演算精度をさ
ほど落とすことなく格段に演算処理量を減少することが
できる。
【0071】また、時定数を判断基準としてモデル化
したことにより、少ない処理回数で且つ演算精度を落と
さずに演算処理することが可能となる。(例えば上記の
例で説明すれば、時定数毎にモデル化をしなかった場
合、必要演算処理間隔は時定数の小さいA領域で定まり
50msecが必要演算間隔になり、離散化データのデ
ータ保持時間は時定数の大きいB,C領域で定まり51
2secが必要データ保持時間となる。即ち、50ms
ec間隔で過去512秒分の10240データを積み上
げ演算処理することとなり、本実施例の場合と比較して
数百倍の演算処理回数となる。) 以上のように、記録ヘッドの温度推移を単位時間当たり
の離散値の積み重ねとして扱う離散値積み重ね演算手段
と、該離散値に応じた記録ヘッドの温度の温度推移を投
入可能なエネルギーの範囲内で予め演算しておきテーブ
ル化した既演算テーブル手段と、該テーブルが単位時間
当たりの投入エネルギーと経過時間の2次元のマトリッ
クスで構成されている2次元テーブル構成手段とを有す
る従来の温度演算アルゴリズムに加え、複数の熱伝導時
間の異なる部材を組み合わせて構成されている記録ヘッ
ドをモデル的に実際よりも少い数の熱時定数で代用する
モデル化手段と、該モデル単位(熱時定数)毎に必要演
算間隔と必要データ保持時間を分けて個々に演算を行う
演算アルゴリズム手段と、熱源を複数設定し個々の熱源
毎に上記モデル化単位で昇温幅を演算し後に加え合わせ
てヘッド温度を演算する複数熱源演算アルゴリズム手段
を設けたことにより、記録ヘッドの温度の推移を全て演
算処理にて演算処理することが可能となる。
【0072】さらには、後述する記録ヘッドの温度を一
定量域内に制御するPWM駆動制御、サブヒータ制御が
適切に行え、吐出、吐出量の安定化が図られ、高画像品
位の記録が可能になる。
【0073】なお、前記説明した構成の記録ヘッドを用
い、本項で説明したヘッド温度演算手段で推定した記録
ヘッド温度と、実測した記録ヘッド温度の比較を図49
に示す。図49において、 横 軸 ;経過時間(sec) 縦 軸 ;昇温温度(Δtemp) 印字パターン;(25%Duty*5Line+50%Duty*5Line+100%Dut
y*5Line)*5回 (延べ75Line印字) 図49(A);ヘッド温度演算手段で推定した記録ヘッ
ド温度の推移 図49(B);実測した記録ヘッド温度の推移 であり、同図から、該演算手段によりヘッド温度が正確
に推定できることが証明できる。
【0074】(演算温度の補正)しかしながら、前にも
述べたように、記録ヘッドの熱特性のバラツキが問題に
なる。というのは、記録ヘッドの製造上のバラツキによ
り吐出量が異なったり、部材(接着層など)などのバラ
ツキにより放熱特性や熱の伝わり方の異なるヘッドなど
様々なヘッドができてしまう。また、上述したように、
演算の処理速度を早めるために実際よりも少ない数の熱
時定数でモデル化しているため誤差を生じることもあ
る。演算によるヘッドの温度はすべてのヘッドに対応す
ることは非常に困難であるため、結果としてあるヘッド
を用いた場合には実際のヘッド温度と演算によるヘッド
温度との間に誤差が生じてしまう場合がある。しかも、
これらの誤差は記録枚数が増えれば累積されていくため
かなりの誤差が生じる。
【0075】そこで、この誤差が累積しないように所定
のタイミングで補正してやる。
【0076】演算によるヘッド温度をEnとすると次式
で表せる。
【0077】 En=EBASE+Δtemp EBASE:採用基
準温度 Δtemp:演算による昇温温度 また、記録ヘッド内の温度センサの検出温度をSnとす
ると、Sn−Enが演算ヘッド温度の実温度とのズレ
(誤差)となる。
【0078】但し、前にも述べたように温度センサは、
静電対策を施さなければ吐出ヒータや温調ヒータ等を駆
動しているときには、ノイズによって検出が難しい。そ
こで、比較的ノイズの少ない吐出ヒータや温調ヒータの
駆動していないときに、温度センサにて記録ヘッドの温
度を検出し、演算温度の誤差の補正を行う。
【0079】演算温度の誤差の補正は、次式のように、
記録ヘッドの採用基準温度(EBASE)に誤差分(Sn−
En)を加えることで採用基準温度を更新していくよう
にした。
【0080】 EBASE(新)=EBASE(旧)+(Sn−En) 図48は、補正を行ったときのヘッド検出温度と演算温
度との関係を示す。演算温度を誤差分(Sn−En)だ
けシフトして補正される。
【0081】なお、本実施例においては、電源ON時に
得られた温度センサの値を最初の記録ヘッドの採用基準
温度値としてメモリーに格納し、これを印字開始前に更
新して用いるようにしている。
【0082】(不吐出判定手段)本実施例では、記録ヘ
ッド温度と、推定演算による記録ヘッドの推定温度よ
り、記録ヘッドが不吐出の状態にあるか否かの判定を行
う。タイミング判定の条件を次に示す。
【0083】 (記録ヘッド温度)−(推定温度)>ΔTth ΔTthは、ノイズの信号により誤判定しない程度に大き
く、不吐出が発生すれば直ちに判定できる程度に小さく
設定する。
【0084】図7は印字中に不吐出になった場合の、モ
ニターされた記録ヘッド温度(4回平均済み)、記録ヘ
ッドの温度の推定演算値、記録ヘッド温度から推定演算
値を引いた値をそれぞれ示す模式図である。(以下、記
録ヘッド温度から推定演算値を引いた値をΔTと呼
ぶ。)ΔTは不吐出が起こるとすぐにΔTthを越えてお
り、その時点で吐出不良が発生したと判定される。不吐
出かどうかの判定は一定時間間隔ごとに行う。
【0085】吐出不良と判定された場合は、直ちに吐出
回復処理などを行っても良いが、本実施例では、希に記
録装置の外部より入る突発的なノイズなどにより吐出不
良と判定してしまう可能性を考慮して、空吐出に伴う記
録ヘッドの昇降温の温度変化量による記録ヘッドの不吐
出の判定を行い、記録ヘッドが不吐出の状態であるか否
か確実に判定する。
【0086】図8を用いてさらに詳しく説明する。所定
時間(t1 −t0 )の吐出時における記録ヘッドの温度
上昇(T1 −T0 )と、その後の所定時間(t2 −t
1 )の非吐出時における記録ヘッドの温度降温(T1
2 )を検出し、これらの温度の和(T1 −T0 )+
(T1 −T2 )=(2T1 −T0 −T2 )が所定値Tth
以上であれば、記録ヘッドは不吐出の状態にあると判定
する。不吐出判定のフローチャートを図9と図10に示
す。本実施例では、上記のように昇温の温度差と降温の
温度差の両方を用いて不吐出の判定を行う。それによ
り、記録ヘッドが少々降温中の状態であっても、正確に
不吐出を検出できる。記録ヘッドの温度変化が少ないと
きにのみ、記録ヘッドの不吐出の判定を行うのなら、昇
温の温度差、降温の温度差のどちらか片方だけで判定し
ても良い。
【0087】(吐出回復処理)記録ヘッドが不吐出の状
態であると判定されると、吸引回復処理を行う。その
後、再度、空吐出を伴う記録ヘッドの昇降温の温度変化
量による記録ヘッドの不吐出の判定を行い、記録ヘッド
が正常の状態に復帰したか否かを調べる。正常であれ
ば、吐出回復処理を終了する。吸引回復処理を行ったに
も関わらず、不吐出の状態であればエラー表示を行いユ
ーザーに警告する。
【0088】本実施例の不吐出検知方法は、印字デュー
ティーが低い場合は印字による記録ヘッドの昇温も当然
小さくなり、不吐出がある場合でも検知できない場合が
考えられるが、本発明の目的の一つである不吐出による
過昇温からの記録ヘッドの保護は達成できる。
【0089】(PWM制御)次に、図面を参照して本実
施例の吐出量制御方法を詳細に説明する。
【0090】図30は分割パルスを説明するための図で
ある。同図において、VOPは駆動電圧、P1 は複数の分
割されたヒートパルスの最初のパルス(以下、プレヒー
トパルスという)のパルス幅、P2 はインターバルタイ
ム、P3 は2番目のパルス(以下、メインヒートパルス
という)のパルス幅である。T1 ,T2 ,T3 はP1
2 ,P3 を決めるための時間を示している。駆動電圧
OPは、この電圧を印加される電気熱変換体がヒータボ
ードと天板とによって構成されるインク液路内のインク
に熱エネルギーを発生させるために必要な電気エネルギ
ーを示すものの一つである。その値は電気熱変換体の面
積,抵抗値,膜構造や記録ヘッドの液路構造によって決
まる。分割パルス幅変調駆動法は、P1 ,P2 ,P3
幅で順次パルスを与えるものであり、プレヒートパルス
は、主に液路内のインク温度を制御するためのパルスで
あり、本発明の吐出量制御の重要な役割を荷っている。
このプレヒートパルス幅はその印加によって電気熱変換
体が発生する熱エネルギーによってインク中に発泡現象
が生じないような値に設定される。
【0091】インターバルタイムは、プレヒートパルス
とメインヒートパルスが相互干渉しないように一定時間
の間隔を設けるため、およびインク液路内インクの温度
分布を均一化するために設けられる。メインヒートパル
スは液路内のインク中に発泡を生ぜしめ、吐出口よりイ
ンクを吐出させるためのものであり、その幅P3 は電気
熱変換体の面積,抵抗値,膜構造や記録ヘッドのインク
液路の構造によって決まる。
【0092】例えば、図31(A)及び(B)に示すよ
うな構造の記録ヘッドにおけるプレヒートパルスの作用
について説明する。同図(A)及び(B)は、実施例の
記録ヘッドのインク液路に沿った概略縦断面図及び概略
正面図である。同図において、電気熱変換体(吐出ヒー
タ)は上記分割パルスの印加によって熱を発生する。こ
の電気熱変換体は、これに分割パルスを印加するための
電極配線等とともにヒータボード上に配設される。ヒー
タボードは、シリコンにより形成され、記録ヘッドの基
板をなすアルミ板によって支持される。天板には、イン
ク液路等を構成するための溝が形成されており、天板と
ヒータボード(アルミ板)とが接合することによりイン
ク液路や、これにインクを供給する共通液室が構成され
る。また、天板には吐出口が形成され、それぞれの吐出
口にはインク液路が連通している。
【0093】図32は吐出量のプレヒートパルス依存性
を示す線図である。図において、V 0 はP1 =0[μs
ec]のときの吐出量を示し、この値は図31に示すヘ
ッド構造によって定まる。図32の曲線aに示されるよ
うに、プレヒートパルスのパルス幅P1 の増加に応じ
て、吐出量Vd はパスル幅P1 が0からP1LMTまで線形
性を有して増加し、パルス幅P1 がP1LMTより大きい範
囲ではその変化が線形性を失い、パルス幅P1MAXで飽和
し最大となる。
【0094】このように、パルス幅P1 の変化に対する
吐出量Vd の変化が線形性を示すパルス幅P1LMTまでの
範囲は、パルス幅P1 を変化させることによる吐出量の
制御を容易に行える範囲として有効である。
【0095】パルス幅がP1MAXより大きい場合、吐出量
d はVMAX より小さくなる。この現象は上記範囲のパ
ルス幅を有するプレヒートパルスが印加されると電気熱
変換体上に微小な発泡(膜沸騰の直前状態)を生じ、こ
の気泡が消泡する前に次のメインヒートパルスが印加さ
れ、上記微小気泡がメインヒートパルスによる発泡を乱
すことによって吐出量が小さくなるために生じる。この
領域をプレ発泡領域と呼び、この領域ではプレヒートパ
ルスを媒介にした吐出量制御は困難なものとなる。
【0096】図32に示すP1 =0〜P1LMT[μs]の
範囲の吐出量とパルス幅との関係を示す直線の傾きをプ
レヒートパルス依存係数と定義すると、プレヒートパル
ス依存係数KP は、 KP =ΔVdP/ΔP1 [ng/μsec・dot] となる。この係数KP は温度によらずヘッド構造・駆動
条件・インク物性等によって定まる。すなわち、図32
中曲線b,cは他の記録ヘッドの場合を示しており、記
録ヘッドが異なると、その吐出特性が変化することが分
かる。このように、記録ヘッドが異なるとプレヒートパ
ルスの上限値P1LMTが異なるため、後述するように記録
ヘッド毎の上限値P1LMTを定めて吐出量制御を行う。す
なわち、インクジェット記録ヘッドの吐出量を決定する
別の要因として、記録ヘッドの温度(インク温度)があ
る。
【0097】図33は吐出量の温度依存性を示す線図で
ある。同図の曲線aに示すように、記録ヘッドの環境温
度TR (=ヘッド温度TH )の増加に対して吐出量Vd
は直線的に増加する。この直線の傾きを温度依存係数と
定義すると、温度依存係数KT は、 KT =ΔVdT/ΔTH [ng/℃・dot] となる。この係数KT は駆動条件にはよらず、ヘッドの
構造・インク物性等によって定まる。図33においても
他の記録ヘッドの場合を曲線b,cに示す。
【0098】上述の図32及び図33に示す関係を用い
ることによって実施例における吐出量制御を行うことが
できる。
【0099】本実施例では、前記目標温度と、ヘッド温
度(ヘッド演算温度)の温度差(△T)から一元的にP
WM値が設定されるよう制御する。該△TとPWM値の
関係を図42に記す。
【0100】図中、「温度差」とは上記△TH を現し、
「プレヒート」とは上記P1 を現し、「インターバル」
とは上記P2 を現し、「メイン」とは上記P3 を現す。
また「セットアップタイム」とは記録命令が入力されて
から実際に上記P1 が立ち上がるまでの時間を現す。
(主にはドライバーの立ち上がりまでの余裕時間であり
本発明の要部をなす値ではない)。また「重み」とは、
ヘッド温度を演算するために検出する印字ドット数に掛
け合わせる重み係数である。同じドット数を印字してい
ても、例えば7μsのパルス幅で印字しているのと4.
5μsのパルス幅で印字しているのとではヘッド温度の
昇温に差が生じてしまう。このパルス幅変調に伴う昇温
の差を、どのPWMテーブルが選択されているかによっ
て補正する手段として該「重み」を用いる。
【0101】(スタンバイ後の全体フロー制御)次に図
43〜図45を用いて制御系全体の流れを説明する。
【0102】図45は、吐出のためのPWM駆動値、及
びサブヒータ駆動時間を設定するための割り込みルーチ
ンである。本割り込みルーチンは、50msec毎に発
生する。よって印字中なのか休止中なのか、またサブヒ
ータの駆動が必要な環境なのか、不要な環境なのかには
関係なく、常に50msec毎にPWM値が更新され
る。まず、50msecの割り込みがかかると、直前ま
での50msec間の印字duytが参照される(S2
010)。但し、この時参照される印字dutyとは、
(PWM制御)の項で説明したように、実際に吐出した
ドット数にPWM値毎の重み係数が掛け合わされた値で
ある。該50msec間のdutyと過去0.8秒間の
印字履歴から熱源が吐出ヒータで、時定数がショートレ
ンジの部材群の昇温温度(ΔTmh)を演算する(S2
020)。次に、同様に、50msec間のサブヒータ
の駆動dutyが参照され(S2030)、該50ms
ec間のサブヒータの駆動dutyと過去0.8秒間の
サブヒータの駆動履歴から熱源がサブヒータで、時定数
がショートレンジの部材群の昇温温度(ΔTsh)を演
算する(S2040)。そして、後述するロングレンジ
昇温温度演算ルーチンで計算されている、熱源が吐出ヒ
ータで、時定数がロングレンジの部材群の昇温温度(Δ
Tmb)と、熱源がサブヒータで、時定数がロングレン
ジの部材群の昇温温度(ΔTsb)を参照し、それらを
加え合わせることによって(=ΔTmh+ΔTsh+Δ
Tmb+ΔTsb)、ヘッドの昇温温度Δtempを演算す
る(S2050)。
【0103】次に、ヘッドの採用基準温度Ebaseと昇温
温度Δtempとを加算することでヘッドの演算温度を得る
(S2060)。このときのヘッドの採用基準温度Eba
seは後述するメインルーチンで更新されたものを用い
る。
【0104】この後、目標温度を目標温度テーブルから
設定し(S2070)、ヘッド温度と目標温度との温度
差(ΔT)を求める(S2080)。該温度差ΔTとP
WMテーブルから、ΔTに応じた最適ヘッド駆動条件で
あるWPM値が設定され(S2090)、また、ヘッド
温度が温調温度を保つようにサブヒータが駆動される。
【0105】図44はロングレンジ昇温温度演算ルーチ
ンである。これは1秒毎に実行される割り込みルーチン
であり、過去1秒間の印字dutyを参照する(S30
10)。但し、この時参照される印字dutyとは、
(PWM制御)の項で説明したように、実際に吐出した
ドット数にPWM値毎の重み係数が掛け合わされた値で
ある。該1秒間のdutyと下記512秒間の印字履歴
から熱源が吐出ヒータで、時定数がロングレンジの部材
群の昇温温度(ΔTmb)を演算し、50msec毎の
割り込み時に容易に参照できるように定められたメモリ
ー位置に格納更新する(S3020)。次に、同様に、
1秒間のサブヒータの駆動dutyが参照され(S30
30)、該1秒間のサブヒータの駆動dutyと過去5
12秒間のサブヒータの駆動履歴から熱源がサブヒータ
で、時定数がロングレンジの部材群の昇温温度(ΔTs
b)を演算する。ΔTmbを格納更新した場合と同様、
50msec毎の割り込み時に容易に参照できるように
定められたメモリー位置に格納更新する(S304
0)。
【0106】図45は本実施例における記録ヘッド演算
温度の実温度との誤差を補正するための処理フローであ
る。印字信号が入力されるとプリントシーケンスが実行
され、先ず紙があるかどうかをチェックし(S401
0)、紙がなければ給紙する(S4020)。次に、記
録ヘッド内に設けた温度センサでヘッド温度Snを読み
取る(S4030)。このとき、吐出ヒータもサブヒー
タも駆動していないので安定して温度センサを読み取る
ことができる。この読み取ってきたセンサ温度と演算温
度を比較してその誤差を演算する(S4040)。この
ズレ(誤差)を補正するために、ヘッドのこれまでの採
用基準温度にこのズレを加えて採用基準温度を更新して
やることにより、センサ温度と演算温度を一致させる。
以後、更新された採用基準温度を用いて演算温度を算出
していく。この後、ヘッド演算温度が温調温度以下であ
ればヘッド保温を行い(S4060)、図43のPWM
駆動条件設定ルーチンに従って吐出量制御をしながら印
字を実行していく(S4070)。印字終了後、ヘッド
の保温をストップし(S4080)、記録媒体(紙)を
排紙し(S4090)、スタンバイ状態になる。
【0107】これまで述べてきたような演算温度とセン
サ温度とのズレの補正は、温度センサが安定して読み取
りのできる吐出ヒータやサブ(保温)ヒータの非駆動時
に行えば良いが、吐出ヒータやサブヒータの駆動を停止
した直後はまだ温度変動が大きいため、複数回の移動平
均で得られるレスポンスの遅いセンサ温度とレスポンス
の良い演算温度とのズレを測定して補正を行っても収束
しないばかりか、かえって誤差を大きくする場合もあ
る。そこで、吐出ヒータやサブヒータの駆動を停止して
から少なくとも時定数の小さいショートレンジの熱履歴
が無くなるまでの時間(本実施例では0.8秒)以上、
より好ましくは数秒経た後にセンサ温度と演算温度との
ズレ比較を行い補正するのが好ましい。
【0108】本実施例において、補正のタイミングを印
字開始前としたのは、 記録用紙の給排紙には数秒を必要としているため、処
理時間に影響を与えない、 記録開始前のヘッド温度は比較的変動が少ない状態で
あり、センサ温度も複数回の移動平均をとってレスポン
スが遅くてもほとんど影響がない、 熱エネルギーの投入を停止してから数秒以上経過して
いるため、熱時定数の小さい温度変動は無視でき、比較
的温度変動が少ない状態であるため、補正し易い、 ヘッド演算温度データの精度は吐出ヒータ及びサブヒ
ータ駆動時に特に重要であるため、その直前に補正する
方が良い、 といった利点があるからである。
【0109】別に記録開始前と限定せずに熱エネルギー
の投入停止してから所定時間経過後にズレを補正すると
いったシーケンスにしても良いし、1回だけでなく複数
回繰り返してより精度を上げるのも良い。
【0110】図46に本実施例の記録制御フローを実行
するための制御構成を示した。同図において、60はC
PU、61はCPU60が実行する制御プログラムを格
納するプログラムROM、62は各種データを保存して
おくバックアップRAMである。
【0111】この実施例では、完璧な静電対策を必要と
せずに温度センサを用いることにより、どのような熱特
性の記録ヘッドが来た場合にでも演算温度のずれを蓄積
することなく適宜補正することができる。そのため、コ
ストをかけずにより正確で応答性の良い温度検出ができ
るので、実際の印字前に種々のヘッド制御を行うことが
可能となり、より適切な記録を行うことができる。ま
た、モデルが簡素化されており、かつ演算アルゴリズム
が容易な計算の積み重ねによるものであるので、予測制
御も簡易となる。本実施例内で用いている温度予測のサ
イクル(50msec間隔と1sec間隔)等の定数は
一例であり、本発明を拘束するものではない。
【0112】本実施例では、記録ヘッド採用基準温度
(EBESE)に誤差分(Sn−En)を加えることで記録
ヘッド採用基準温度を更新していくようにしたが、次式
のように、誤差分にある経験的な係数α(<1)を乗じ
て、過剰に補正し過ぎないようにしても良い。
【0113】 EBASE(新)=EBASE(旧)+α(Sn−En) また、本実施例においては、1つの記録ヘッドを用いた
場合について説明をしてきたが、特にこれに限定される
ものではなく、複数の記録ヘッドを備えたカラーインク
ジェット記録装置においてはさらに効果を発揮する。と
いうのは、複数の記録ヘッドを持つインクジェット記録
装置の場合、他の記録ヘッドからの熱が伝わってきて演
算ヘッド温度よりも実際のヘッド温度の方が高くなって
しまう。記録ヘッドの数が多くなるほど、この熱の伝わ
り方は様々であり演算することが困難であり、誤差の蓄
積も大きい。従って、印字記録前に上述の方法で補正す
れば、誤差が少なく、より精度の高いヘッド制御が可能
となる。
【0114】(吸引回復動作後の補正)ヘッド演算温度
の誤差を生じる場合として、吸引ポンプを用いた吸引回
復時がある。吸引ポンプで記録ヘッドのノズルから吸い
出されるインクが記録ヘッドの熱を奪っていくため記録
ヘッドの温度が変動してしまう。その変化量は、インク
の温度の違い、吸い出されるインクの量によって異なっ
てしまうため、その変化を予測するのは難しい。
【0115】図47に本実施例の演算温度の補正フロー
を示した。吸引回復命令が入るとキャリッジをホームポ
ジションに移動してキャッピングし、キャップに連通し
た吸引手段(ポンプ)にて記録ヘッドの吸引を行う(S
4510)。この後、クリーニングブレードにて記録ヘ
ッドの吐出口面をワイピングし(S4520)、予備吐
出を行う(S4530)。次に、記録ヘッド内に設けた
温度センサでヘッド温度Snを読み取る(S454
0)。吸引回復動作には数秒以上を要するし、吐出ヒー
タもサブヒータも駆動していないので、安定して温度セ
ンサを読み取ることができる。この読み取ってきたセン
サ温度と演算温度を比較してその誤差を演算する(S4
550)。このズレ(誤差)を補正するために採用基準
温度にこれを加えて採用基準温度を更新してやることに
よりセンサ温度と演算温度を一致させる(S456
0)。以後、更新された採用基準温度を用いて演算温度
を算出していく。これにより印字記録の途中で吸引回復
を実行してもインクを吸引したことによる温度変動を補
正してから再度印字記録を実行できるので、より精度の
高い演算温度によるヘッドの駆動制御が可能となる。
【0116】本実施例のシーケンスは、ほんの一例であ
って、これに限定されるものではなく、本シーケンスに
ヘッド保温や記録ヘッドの液室内にインクがあるかどう
かの不吐出検知動作などが途中に入っていても良い。
【0117】上記したように、本実施例のインクジェッ
ト記録装置は、ヘッド温度測定手段と、ヘッド温度推定
演算手段と、適当なタイミングで前記2つの測定値と演
算値の差を補正する手段とを持ち、かつ、測定値と演算
値の2つの情報を用いて記録ヘッドの不吐出の状態の有
無を判定する手段を持つことで、精度の高い、不吐出状
態の有無の判定を行うことができる。特に、熱特性の測
定を行い、精度の高い演算をすることで、更に、その検
知精度を高いものにすることができる。
【0118】これらの手段の関係を図6に示した。
【0119】(ヘッド特性測定)前述のように、最適な
ヘッド駆動を行うには、記録ヘッドの各種特性を記録装
置本体が認識しなくてはならない。さらに、本例では、
記録ヘッド1は交換可能な構成になっているため、ヘッ
ド交換時には必ず上記ヘッド特性を測定する。測定項目
は 吐出ヒータ特性(ダミーヒータ抵抗値) ダイオードセンサ特性(ダイオードセンサ出力) サブヒータ熱特性 吐出ヒータ熱特性 の4種類である。
【0120】ヘッド特性測定の全体構成のブロック図を
図29に示す。本体側が測定するヘッド特性の項目は上
記4種類である。図29中、aは吐出ヒータ特性、bは
Diセンサ特性、cは吐出ヒータ特性、dはサブヒータ
熱特性の測定を表す。各々本体側とヘッドとの間にエネ
ルギー投入及び温度測定等の入出力がありその測定結果
を受けて各ヘッド特性の認定を行う。その後、第2実施
例で示すような暫定あるいは確定の定義付けを行っても
良い。ヘッド特性の認定が終了すれば、記録モードに入
り記録可能な状態になる。あるいは、ヘッド特性結果が
異常値を示す場合にはエラーモードに入り本体はエラー
表示を行う。また、各ヘッド特性値は記憶装置に格納さ
る。この記憶値を用いてヘッドが交換されたかあるいは
同一ヘッドであるかの判別を行う。
【0121】以下、各ヘッド特性及びそれに応じた駆動
パルス波形等の詳細を述べる。
【0122】第1に、吐出ヒータ特性は、ダミー抵抗2
0E(図25)の抵抗値を測定する。印字ヘッドの駆動
に定電圧駆動を用いる場合、吐出ヒータの抵抗値が判れ
ばどの程度エネルギーを投入すればよいか判る。本例で
は吐出ヒータ抵抗値のバラツキに対応して駆動電圧波形
を可変にし最適駆動を行っている。即ち、吐出ヒータ特
性(ヘッドランク)毎に図42に示すような基本波形及
びPWMテーブルを別々に有している。
【0123】ここで、ヘッドランクに対応した、駆動パ
ルスの基本波形について説明する。(以下、本実施例に
おける、ヘッドランクに対応した駆動パルスの基本波形
を単に“基本波形”と呼ぶ)この駆動パルスの基本波形
は重要であり、これをもとに各種の記録ヘッドの駆動を
行う。
【0124】まず、1つに、印字時の駆動は上記基本波
形を基本として行う。ヘッドランクに応じ、記録ヘッド
の吐出状態が安定であり、かつ吐出ヒータの高寿命化が
達成できるよう、駆動波形を設定している。よって、通
常の環境下においては、記録ヘッドが特に高いデューテ
ィーな印字により自己昇温していなければ、基本波形の
ままで印字を行っても良い。本実施例では、基本波形と
してダブルパルス波形を用いている。記録ヘッド温度が
所定の温度より小さい場合は、上記サブヒータによる温
度調節を行い吐出量を補償する。逆に、記録ヘッドの温
度が所定の温度以上の場合、相対的に先のパルス(プレ
ヒートパルス)のパルス幅を短い方向に変調すること
(PWM制御)により吐出量の調節を行う。
【0125】2つ目には、予備吐出の駆動を上記基本波
形に基づいて行う。予備吐出は記録ヘッドの吐出ノズル
内のリフレッシュを目的に行うものであり、記録ヘッド
が高温となり吐出量が増大しても、吐出量を調節する必
要はない。プレヒートパルスのパルス幅は、最大のもの
(すなわち、基本形のパルス波形そのもの)を用い、回
復性を良くする。
【0126】前述のPWM制御を行う場合、基本波形の
プレヒートパルスのパルス幅が十分に長いことが要求さ
れる。すなわちPWM制御では、記録ヘッドの温度が高
温になるに従いプレヒートパルスを短くするため、基本
波形におけるプレヒートパルスの幅が短ければ、PWM
制御における制御可能温度範囲が狭くなってしまう。よ
って上記基本波形のプレヒートパルスの幅をあまり小さ
く設定することは好ましくない。
【0127】しかしながら、吐出ヒータの抵抗値(つま
り、ヘッドランク)が小さくなると、それに従いプレヒ
ートパルスのパルス幅も短くしないと、プレヒートパル
スによるインクの発泡(以下、プレ発泡)が起こってし
まい安定な吐出ができなくなってしまう。
【0128】よって、上記の弊害が発生しない範囲で基
本波形のプレヒートパルスを設定する必要があり、吐出
ヒータの抵抗値に比例したプレパルス幅の設定にはなっ
ていない。
【0129】一方、基本波形の相対的に後のパルス(以
下、メインヒートパルスと呼ぶ)もヘッドランクに応じ
て変更しないと安定な吐出状態を得ることができないた
め、図17のようにヘッドランクが大きくなるに従い、
パルス幅が長くなるように設定している。
【0130】以上の理由により、図17に示すように基
本波形が構成される。
【0131】そして、印字の際には、駆動パルスのPW
M制御が行われプレパルスが図42のように変調され
る。その際、T1 だけを変調すれば良いため、ランクに
応じたT1 だけのテーブルだけを持てば良い。
【0132】また、吐出ヒータの熱特性を行う場合は、
発泡しない程度のパルスを印加させるのだが、本実施例
では、プレパルスのみを用いて駆動させる。よって、熱
特性を測定する際の別の駆動パルスのテーブルを持つ必
要がなくなる。
【0133】以上説明した内容を図14のブロック図に
まとめた。同図に示すように、まず、ヘッド上のダミー
抵抗を測定し、ヘッドランクを決定し、そのヘッドラン
クに基づいた基本パルス波形が設定される。その基本パ
ルス波形に基づいて、プレパルスを変調する印字のため
のPWM制御,予備吐出,及びプレパルスによる熱特性
の測定、プレパルスによる短パルス温調が行われてい
る。インク落ち(不吐出)検知を行う際の駆動パルスも
予備吐出のパルスと同じに設定される。
【0134】第2に、ダイオードセンサ特性の測定を行
う。記録装置本体に内蔵されているサーミスタによる測
定温度から環境温度を測定する。基準温度(例えば25
℃)でのダイオードセンサ基準出力電圧及び温度- 出力
電圧特性(傾き値)は予め判っているため、上記環境温
度下でのダイオードセンサ出力電圧を上記傾き値を用い
て基準温度(25℃)条件に換算し、ダイオードセンサ
基準出力電圧との比較によってダイオードセンサの特性
を測定する。ダイオードセンサーの出力はヘッド温度に
よって左右されるため記録ヘッドが本体温度と異なった
り、急激な温度変化が有る時にはダイオードセンサの特
性は測定出来ず、熱的に安定するまで待つ必要がある。
【0135】しかしながら、新しいヘッドと認識された
場合は、それまでの記録ヘッドが本体の置かれた環境に
対して温度差のある環境に放置されているケースが考え
られるので、ダイオードランクを測定するためには、記
録ヘッドを本体に装着後かなりの時間を待つ必要があ
る。
【0136】これは、新しいヘッドが全体として、前の
放置環境の温度になじんでいるため、本体の置かれた環
境温度になじむまでの熱時定数が大きいためであり、特
に記録ヘッド全体としての熱容量の大きいものは顕著で
ある。例えば、インクタンクと記録ヘッドが一体となっ
たものは、インク及びインクタンクが熱容量が大きいた
め、なかなかヘッド温度が安定しない。また、本実施例
のように複数の記録ヘッドが一体となって1つのヘッド
を構成しているものでは、複数の記録ヘッドを包む枠内
の空気が大きな熱容量として作用するため、更にヘッド
温度が安定し難くなり、安定するまでに1時間近くかか
る場合もある。
【0137】よって、あまり時間を待たないでダイオー
ドランクを測定すれば、そのランク値の測定誤差が大き
くなり、精度良く記録ヘッドの温度を求めることができ
ない場合がある。その結果、記録ヘッドからのインクの
吐出の安定化や、吐出量の安定化が達成できない場合が
ある。よって記録ヘッドのダイオードセンサーの値の時
間的な変化とそのときの本体内サーミスタ温度とによっ
て、記録ヘッドの温度を推定することで、ダイオードラ
ンクを推定する。
【0138】第3に、サブヒータの熱特性測定を行う。
サブヒータは低温時にインクの吐出特性が低下しないよ
うに一定温度(例えば25℃)にヘッド温度を保つ働き
をする。前述のヘッド温度演算アルゴリズムで述べたよ
うに温度演算用にサブヒータの演算表を予め記録装置本
体が有している。この演算表の中身は印字ヘッドの温度
変化を一定時間毎に記述したもの(Diセンサからみた
熱の伝わり方)であるが印字ヘッドの部材間の接合具合
や、吐出量の大小、ヒータ駆動用本体電源のバラツキ等
で実際は各印字ヘッド毎に異なっている。
【0139】一例として、蓄熱し易い印字ヘッドから蓄
熱しにくい印字ヘッドまでの温度変化を3つに分割し前
述の演算用テーブルを3つ持たせた。テーブルの中身と
しては、蓄熱し易いヘッドは、同じエネルギー(デュー
ティ)を投入しても温度上昇が高いため、数値は大きく
なる。逆に、蓄熱しにくい印字ヘッドはすぐに放熱して
しまうため、テーブル中の数値は小さめの値となる。こ
こでは中心的な熱伝導を示す印字ヘッドのテーブルを中
心テーブル2とし、それをはさむように温度変化大テー
ブル3(蓄熱しやすい)と温度変化小テーブル1(蓄熱
しにくい)を有している。
【0140】このテーブル選択を行うのがサブヒータ熱
特性測定である。同一エネルギー投入時の熱特性毎の昇
降温を図28に示す。中心的な昇降温を線図aに、蓄熱
分が多く昇温が高い場合を線図bに、蓄熱分が低く昇温
が低い場合を線図cに各々示す。まず、エネルギー投入
前にタイミングT1 で温度を測定する。次に、エネルギ
ー投入終了前後のタイミングT2 での温度を測定する。
最後に降温後のタイミングT3 で温度測定を行う。この
ときテーブル選択のための測定値として 測定値=2×(T2 での温度)- (T1 での温度)-
(T1 での温度) を算出する。もしターゲットの印字ヘッドが蓄熱しやす
ければ、しきい値2よりもおおきな値を示すので演算テ
ーブルは温度変化大テーブル3を選択する。逆に、しき
い値1よりも小さければ、蓄熱しにくいヘッドとして温
度変化小テーブル1を選択する。また上記測定値がしき
い値1としきい値2の間なら標準的な印字ヘッドとして
中心テーブル2を選択する。すなわち、 テーブル1:測定値<しきい値1 テーブル2:しきい値1=<測定値=<しきい値2 テーブル3:しきい値2<測定値 となる。
【0141】本例では、T2 - T1 =T3 - T2 とした
が、しきい値のとり方によってはこの限りではない。
【0142】このように演算テーブルを個々の印字ヘッ
ド熱特性毎に設定することにより、一律に演算値に熱特
性測定から得られた係数の積算による方式よりも、印字
デューティー毎に上記係数が別に設定でき、かつ演算負
荷が低い等の有益な効果が得られる。
【0143】第4に、吐出ヒータの熱特性測定を行う。
測定動作は上記サブヒータ熱特性測定方法と同じである
が駆動するのは吐出ヒータになる。
【0144】(吐出ヒータの熱特性の測定)記録ヘッド
の不吐出の検知に用いる、空吐出による記録ヘッドの温
度上昇と空吐出終了後の温度降下の温度変化は、記録ヘ
ッドの発熱特性や蓄熱特性などに大きく影響される。本
実施例では、ヘッドランクに応じた上記基本波形のプレ
パルスにより吐出ヒータを駆動し、それによる記録ヘッ
ドの温度上昇の温度差と、パルス印加終了から所定の時
間後までの温度降下の温度差より、吐出ヒータの熱特性
を測定する。
【0145】記録ヘッドの蓄熱特性は部材間の接合具合
や、吐出量の大小、ヒータ駆動用本体電源のばらつき等
で、記録ヘッドごと、あるいは記録装置の本体ごとにも
異なっている。吐出ヒータに同じエネルギーを投入して
も蓄熱しやすい記録ヘッドは高温まで昇温するが、蓄熱
しにくい記録ヘッドは熱エネルギーが発生するとすぐに
放熱してしまうのであまり昇温しない。
【0146】本実施例では、ヘッドランクに応じた上記
基本波形のプレパルス幅のパルスを15KHzで1秒間
の吐出ヒータへの印加を行い、その前後の温度変化より
記録ヘッドの熱特性を測定する。
【0147】図11を用いて熱特性の測定方法を具体的
に説明する。まず、パルス印加前の記録ヘッドの温度
(図中、T1 )を測定する。前述のように上記基本波形
のプレヒートパルス幅のパルスを15KHz、1秒間印
加し、印加終了直前の記録ヘッドの温度(図中、T2
を測定する。ヘッド温度は20msecごとに常時、取
得し、ノイズを抑えるため4回の移動平均を取ってい
る。
【0148】以上のようにして得られた測定結果より、
記録ヘッドの熱特性を示す値ΔTsを次のように演算す
る。
【0149】ΔTs=(T2 −T1 )+(T2 −T3 ) なお、温度上昇と温度降下の温度差を加えるのは、例え
ば、高デューティー印字の後など、記録ヘッドの温度が
変化している場合の影響を極力避けるためである。
【0150】なお、上記基本波形のプレパルス幅は十分
に短く、熱特性測定のためのパルス印加によりインクの
発泡は生じない。また、この記録ヘッドの熱特性の測定
に基本波形のテーブルを用いることにより、用意するテ
ーブルが少なくてすむというメリットがある。
【0151】本実施例は、ヘッド特性測定項目に対して 優先順位を設定する、 一回測定した特性値を数値化し記憶する。(ランク分
け) 記憶した特性値と新たに測定した特性値とを比較す
る, ことにより、記録ヘッド自体の識別(ID)が設定可能
になりヘッド特性測定時間の短縮化・効率化を図ること
ができる。
【0152】まず、吐出ヒータ、ダイオードセンサの測
定値をランク分けして管理する。この方式だと過去の測
定値と比較したり、記録装置本体に記憶・保存する場合
に簡単に取り扱いができ、非常に有用である。
【0153】(吐出ヒータ特性)吐出ヒータ特性は、前
述のように、ダミー抵抗20Eの値で表される。本実施
例では、上記ダミー抵抗20Eのバラツキが272. 1
Ω±約15%の例を場合を説明する。図16に示すよう
に抵抗値のバラツキを13ランクに分割する。中心値を
ランク7とし、1ランク中の抵抗値幅は約8Ωで、全体
バラツキの約2.3%となっている。このランク数は細
かく分割した方が高精度のヘッドランク設定が可能であ
るが、その分記録装置本体側のランク読み取り回路も高
精度化が必要である。記録装置がヘッドランクを読み取
った後、記録装置本体中の記憶部材(EEPROM、NVRAM
等)に書き込む場合上記1〜13の数字を4ヘッド分各
々記憶することになる。
【0154】(ダイオードセンサ特性)前述のヘッドラ
ンクと同様に、ダイオードセンサ(以下Diセンサ)もそ
の特性を同様の理由からランク分けする。Diセンサ
は、温度- 出力電圧の比例係数(以下傾き)はセンサ個
々でそれほどバラツキが無いが(本例のヘッド温度管理
に用いる場合)、オフセット(同一温度下での出力値バ
ラツキ)がセンサ個々にかなりバラツキを有している。
そのため同一出力電圧を得てもDiセンサの特性(ラン
ク)が判らないと絶対値としてのヘッド温度が判らな
い。
【0155】Diセンサランクの説明図を図19に示
す。横軸が温度、縦軸がDiセンサの出力電圧であり、
各ランクの中心値を線図にしてある。実際は各ランク毎
に電圧値は幅を有して隣のランクに接している。あるヘ
ッドのDiセンサが20℃(サーミスタ温度とヘッド温
度が同一と見なされる時にサーミスタ温度とDiセンサ
温度を一致させる)の時に1. 125Vの出力であった
とする。前述のように傾きはほぼ一定値で本例の場合、 −5. 0[mV/℃] である。よって、25℃時に換算すると出力電圧は1.
1Vになる。このように、Diセンサの出力電圧値を傾
き値を用いて25℃環境に換算し、その換算値を予め用
意してある換算表と比較してランクを決定する。本例の
Diセンサは、25℃での出力電圧のバラツキが、 1. 1±0. 05[V] であるため、前述の傾き値- 5. 0mV/℃から同一出
力電圧で±10℃のバラツキが生ずる。よって、総ラン
ク数を10ランクに設定すれば1ランク中の温度バラツ
キは2℃に、20ランクに設定すれば、1℃になり、ヘ
ッド温度管理に必要な精度で上記ランク数が決定する。
ただし、分割ランク数が多くなれば、その分電圧検出幅
が狭くなるため、検出回路の精度も必要になる。このよ
うに、ランク分けされたDiセンサのランクを各色ヘッ
ド毎に記憶する。
【0156】(ダイオードセンサーランク推定)図18
にダイオードセンサーランク推定の全体の構成を示す。
記録ヘッドが新しく装着されたと認識された場合に、ダ
イオードセンサー特性の直接の測定を行わず、推定を行
う。具体的には、まず、ダイオードセンサーランクを標
準値とした場合の記録ヘッドの温度Ts を測定して記憶
し、その後、所定時間tの後に、再び記録ヘッドの温度
Tを測定する。同時に本体内の室温T0 をサーミスタに
より測定する。
【0157】上述したところ図20で説明すると、記録
ヘッドはある時定数で環境温度(〜室温)に指数関数的
に集束する(式1となる)ため、その集束する温度を計
算によって求めると(式2)となる。
【0158】(式1) T=(Ts −T0 )・exp
(−t1 /tj )+T0 (式2) T0 =(T−Ts )/(1−A)+Ts = ΔT/(1−A)+Ts ( ΔT=T−Ts 、 A=exp(−t1 /tj )、
tj : 時定数 ) この式により求めたT0 がサーミスタ温度と一致するよ
うに、ダイオードランクを決定する。新ヘッドの場合、
印字直後等の場合に比べ、時定数 tj が大きく、本実
施例ではt1 =30秒とし、A=0. 94と設定した。
【0159】(サブヒータ・吐出ヒータ特性)サブヒー
タ・吐出ヒータの特性値として、前述の演算テーブル番
号を各ヒータのランク値として記憶する。
【0160】(ヘッド特性側シーケンスのフロー)図2
1に本実施例におけるヘッド特性測定シーケンスのフロ
ーを示す。まず、ヘッドランクが同一でない場合は、別
ヘッドが搭載されたとして、Diセンサ近傍に温度変化
が有る無しにかかわらずヘッド特性測定を全て行わなく
てはならない。よって、ダイオードセンサーランクの推
定を行い、暫定値として記憶する。もし、ヘッドランク
が同一とみななされれば、次にDiセンサの温度変化を調
べる。Diセンサは、ランク値が決定していなくても温
度変化は認識できるので、一定時間内の温度バラツキを
調べてDiセンサ近傍の温度が安定しているか判断す
る。
【0161】一例として、本実施例では、10秒間に
0. 2℃以上の変化を温度変化有りと定義している。こ
れは、ダイオードランク確定の時と違い、印字直後では
熱時定数が小さいため温度変化が大きく、10秒間の変
化で十分確認できる。温度変化有りと判断されたら、D
iセンサのランク測定には不適当なので、この条件下で
はランク測定(出力電圧測定)を行わず、前回のDiセ
ンサランク値を利用する。この時、暫定・確定の区別を
用いる。前回記憶のDiセンサランクが確定値であれ
ば、記録ヘッドは前回特性測定時と同一のものが搭載さ
れているとして前回記憶した特性値を用いる。また、前
回記憶のDiセンサランクが暫定値であったならば、上
記暫定値を用いる。サブヒータ・吐出ヒータ熱特性は本
例では再測定を行ったが、Diセンサランクが暫定値で
あるためサブヒータ・吐出ヒータ熱特性も前回の値、あ
るいは前述の中心テーブルを暫定値として用いても構わ
ない。この場合、前記印字ヘッド近傍の温度変化の影響
をサブヒータ・吐出ヒータ熱特性測定時に受けずにす
む。ただし、あくまで暫定値の使用であるため、可能な
限り早急に各ヘッド特性の再測定を行う必要がある。
【0162】上記温度変化が無いと判断された時は、D
iセンサランクの測定が短時間で可能であるので測定を
行い、測定結果と前回記憶値と比較して同一であれば、
Diセンサランク確定とし同一ヘッドと見なしてサブヒ
ータ・吐出ヒータ熱特性は前回記憶値を用いる。また、
上記比較の結果同一でなかったらば、Diセンサランク
を暫定値、別ヘッドと見なしてサブヒータ・吐出ヒータ
熱特性を再測定する。
【0163】以上説明したように、新しい記録ヘッドと
認識された場合、本実施例のように、ダイオードランク
を推定することで、その記録ヘッドが本体の置かれた環
境に対して温度差のある環境から持ってこられ、装着さ
れたとしても、比較的短時間で精度良く、ダイオードラ
ンクを設定することができる。よって、たとえ、このラ
ンク値が暫定値だとしても、記録ヘッドの温度は信頼性
にある値となり、単なる暫定値とは違うものとなる。よ
って、その後に得られたヘッド温度によって駆動条件を
変更することで、記録ヘッドからのインクの吐出状態、
及び吐出量を安定なものとすることができる。
【0164】以上説明したように、Diセンサランク測
定前にDiセンサの温度変化によって上記ランク測定を
行うか行わないかの区別をすることにより、正確なラン
ク測定が達成され、特性値の暫定・確定と組み合わせる
ことにより、上記温度変化が有ってDiセンサランク測
定が不適切な時でも精度の高いランク運用が可能となっ
た。また、ヘッドランクが同一でDiセンサランクが確
定値であったなら、温度変化に無関係に各ヘッド特性を
前回の記憶値を用いるようにしても構わない。
【0165】本例では、前記のヘッド特性測定終了後、
再ヘッド特性測定を行う。通常の記録装置立ち上げ時
(前述のヘッド特性測定を必ず行う場合)には、暫定値
等の中心的な特性値を用いて上記立ち上げ時間を短縮し
記録装置を使用可能にする。その後、上記再ヘッド特性
測定(以下ヘッド特性補正)を記録装置をユーザが使用
してない時に行うことによって、暫定値としてのヘッド
特性値からより正確な確定値を認識してヘッド制御の精
度を高める。
【0166】この時のフローを図22に示す。本例の場
合Diセンサ測定タイミングとして記録装置が記録ヘッ
ドが熱発生しない時間が60分したら行う。この熱発生
は吐出ヒータ駆動およびサブヒータ駆動の時に発生す
る。従って過去60分の間に吐出ヒータ及びサブヒータ
のどちらも駆動されなかったら熱発生無しと判断し、記
録ヘッド近傍の温度変化が無いとしてDiセンサランク
測定を実行する。本例での熱発生無し時間を60分とし
たのは、図26,図27に示すように、記録ヘッドが複
数個(4つ)一体となっていること、及び位置ぎめ固定
されているキャリッジ3部に放熱用の肉抜きを行うスペ
ースが十分でなかったためであり、ヘッド、キャリッジ
形態あるいは必要としているDiセンサランクの精度に
よって上記時間の長短が決定する。
【0167】次に、測定されたDiセンサランク値を前
回記憶値と比較し、同一だったら確定値として記憶す
る。この確定値を用いて再度サブヒータ・吐出ヒータ熱
特性測定を行い最終的な記録ヘッド特性値とする。また
上記Diセンサランクが同一でない場合、この測定結果
は暫定値として記憶し、再び熱発生無し連続60分待ち
シーケンスに入る。
【0168】図22では、一回Diセンサランクが確定
してサブヒータ・吐出ヒータ熱特性を測定したら、上記
ヘッド特性補正が終了するが、Diセンサランク確定・
サブヒータ・吐出ヒータ熱特性測定終了後に最初の熱発
生無し連続60分シーケンスに戻って常に補正動作を繰
り返すルーチンにしても構わない。
【0169】さらに、本例は、前述のヘッド特性値であ
るランクに許容範囲を設定して同一ランク、同一ヘッド
の判断を行う。例えば、前述のヘッド特性測定時は、と
りあえず記録装置を使用可能にするために立ち上げ時間
短縮を第一優先として同一ヘッド・同一ランク(Diセ
ンサ・サブヒータ・吐出ヒータ)の判断を±2ランク以
内の場合とする。このように、判断基準をある程度幅を
持たせて設定することによって測定等のバラツキ分を含
んでも同一ヘッドと認識可能となり、過去の記憶値を使
用するため立ち上げ時間の短縮が可能となる。ヘッド特
性補正時には正確さを第一優先として同一ランク許容範
囲を±1ランク以内に設定する。このように許容範囲を
狭くしたことで各特性のランク値が確定になった時は、
正確なランク値設定が可能となった。このような許容精
度範囲は必要に応じて上記の値に限定されることなは
い。
【0170】(不吐出検知)本実施例では、上記ヘッド
ランクに応じた基本波形の駆動パルスを吐出ヒータに印
加し、それによる記録ヘッドの温度上昇とその後の温度
降下の温度差を測定し、温度変化の大きさを示す値ΔT
iを算出する。そのΔTiと、上記吐出ヒータの熱特性
ΔTsにより決まる判定のしきい値ΔTthを比較し、
記録ヘッドの不吐出の判定を行う。
【0171】図12を用いて不吐出検知のための、空吐
出による温度変化の大きさを示す値ΔTiを測定する方
法を具体的に説明する。まず、駆動パルス印加前の記録
ヘッドの温度(図中、T4 )を測定する。続いて、ヘッ
ドランクに応じた上記基本波形の駆動パルスを6.12
5KHzで5000発(約0.8秒)印加するととも
に、印加終了直前の記録ヘッドの温度(図中、T5 )を
測定する。その後、駆動パルス印加終了から0.8秒経
過後の記録ヘッド温度(図中、T6 )を測定する。記録
ヘッド温度は20msecごとに常時、取得し、ノイズ
を抑えるため4回移動平均を取っている。
【0172】以上のようにして得られた測定結果より、
空吐出による記録ヘッドの昇降温の大きさを示す値ΔT
iを次のようにして算出する。
【0173】ΔTi=(T5 −T4 )+(T5 −T6 ) 複数の記録ヘッドについて、記録ヘッドが不吐出の状態
である場合と、正常な吐出状態である場合について、Δ
TiをΔTsに対してプロットしたものが図13であ
る。記録ヘッドが不吐出の状態である場合は、ΔTiは
ΔTsにほぼ比例している。また、記録ヘッドが正常な
吐出状態である場合は、ΔTiのΔTsに対する変化率
は小さく、厳密には比例の関係ではない。この原因はΔ
Tsにより吐出量が変わっているためと考えられる。す
なわち、ΔTsが大きいと、不吐出検知の空吐出による
昇温が大きく、ヒータ近傍のインク温度が上がり、吐出
量が増加することにより、吐出されたインク滴により記
録ヘッド外部に持ち出される熱エネルギーが増え、ΔT
iは(ΔTiがΔTsに比例している場合より)やや小
さくなる。
【0174】上記のことや、記録ヘッドのΔTsのばら
つきを考慮し、ΔTsより不吐出判定のしきい値ΔTt
hを次のように算出する。(図13では破線で示されて
いる) ΔTth=0.571・ΔTs+17 この判定のしきい値ΔTthと、測定されたΔTiの関
係より、 ΔTi≧ΔTth ……→ 不吐出 ΔTi<ΔTth ……→ 正常吐出 と、判定する。図13からわかるように不吐出判定のマ
ージンは十分にある。
【0175】本実施例では、不吐出検知で行う空吐出
を、ヘッドランクに応じた基本波形の駆動パルスで行う
ことにより、記録ヘッドの耐久性の向上、過昇温の防止
による記録ヘッドの保護を達成する。
【0176】ヘッドランクに対応した駆動パルスの変更
を行わず固定の駆動パルスで不吐出の検出、熱特性の補
正を行う場合には、シート抵抗の大きな記録ヘッドにつ
いては、不吐出検知の空吐出により発生する熱量が小さ
いため、不吐出判定のマージンが小さくなるという問題
が発生する可能性がある。本実施例では、上述のよう
に、記録ヘッドのランクに応じた駆動パルスによる不吐
出検知の空吐出の駆動および記録ヘッドの熱特性の測定
を行うので、例えば、シート抵抗の大きい記録ヘッドに
は大きめのエネルギーを投入する。その結果、十分に大
きな判定のマージンを得ることができる。
【0177】前述したように、本実施例では基本波形の
設定のため、不吐出検知の空吐出により発生する熱エネ
ルギーや、記録ヘッドの熱特性の測定のためのパルス印
加により発生する熱エネルギーは、ヘッドランクによら
ず一定にはなっていない。しかし、不吐出検知の空吐出
や、熱特性の測定のためのパルス印加をヘッドランクに
よらず固定の駆動で行った場合と比較すると、本実施例
の駆動では発生する熱エネルギーのヘッドランクによる
違いははるかに小さく、ΔTs、ΔTiの測定によるば
らつき以下である。
【0178】また、各ヘッドランクの記録ヘッドに、対
応する上記基本波形の駆動パルスを印加した場合に発生
する熱エネルギーのヘッドランク間の比と、それと同様
に基本波形のプレパルスを印加した場合に発生する熱エ
ネルギーのヘッドランク間の比は、できる限り一定にな
るように(本実施例では5%以下)基本波形は設計され
ている。仮に、ヘッドランクの大きい記録ヘッドとヘッ
ドランクの小さいものがあり、測定誤差やヘッドランク
以外の特性の違いが全くないとすると、そのヘッドにつ
いて測定したΔTs、ΔTiは、ヘッドランクの大きい
記録ヘッドについて測定したものが、他方と比べ、いく
らか大きめになるはずである。しかし、ヘッドランクの
違いにより発生する熱エネルギーの違いによる上記のΔ
TsとΔTiの大きさの違いは、図13における記録ヘ
ッドの熱特性(ΔTs)によるΔTsとΔTiの大きさ
の違いと、ほぼ同じ方向のばらつきを持つ。それは、例
えば、正常吐出の場合には、発生する熱エネルギーが大
きければ吐出量も増加する。つまり発生する熱エネルギ
ー量の違いは、記録ヘッドの熱特性の違いと、現象的に
はほぼ同じ記録ヘッドの昇温への影響を持つからであ
る。よって、発生する熱エネルギーのヘッドランクによ
る違いによっては、不吐出判定のマージンが小さくなり
にくいことがわかる。
【0179】なお、本実施例では、基本波形のプレヒー
トパルスを用いて記録ヘッドの熱特性ΔTsの測定を、
また基本波形を用いた駆動で空吐出による昇降温の大き
さΔTiの測定を行ったが、本発明はこの構成に限るも
のではなく、ΔTsとΔTiの測定用の駆動パルス波形
のヘッドランクによるテーブルを用意しても良い(ΔT
sの測定はそのテーブルのプレヒートパルスを用い
る)。また、ΔTsの測定とΔTiの測定のそれぞれに
テーブルを用意しても良い、また、計算式を用意し、そ
れにより駆動パルス波形を算出しても良い。
【0180】本実施例では、ヘッドランクにより駆動パ
ルス波形を変更したが、本発明はこの構成に限るもので
はなく、記録ヘッドの耐久性の許す範囲で駆動パルス
の、駆動電圧や、パルス数を変更しても良い。本実施例
はヘッドランクにより、不吐出検知による記録ヘッドの
発熱量、または記録ヘッドに投入するエネルギーをコン
トロールし、記録ヘッドの保護を図りつつ、高精度の不
吐出の検知を行うものである。
【0181】本実施例では、不吐出判定のしきい値ΔT
hを、ΔTsの一次の関数として算出したが、本発明は
この構成に限るものではなく、より高次の曲線でΔTt
hを求めても良いし、ΔTsによりテーブルから適当な
しきい値を選ぶ構成にしても良い。
【0182】本実施例においては、ΔTs、ΔTiの測
定は吐出ヒータの駆動による昇温と、その後の降温の両
方の温度差を用いて行ったが、本発明はその構成に限る
ものではない。例えば、ヘッドの温度が安定した状態に
おいてのみ、ΔTs、ΔTiの測定を行う場合には、昇
温、または降温の片方だけでも十分な精度で測定を行う
ことができる。
【0183】なお、不吐出検知のシーケンスを図10に
示す。
【0184】(本体の全体のシーケンス)ここで、本実
施例における装置全体のシーケンスについて、図1〜図
5を用いて説明する。図1に全体シーケンスの概要を示
したので、これを基に説明する。
【0185】本装置には、プラグを入れる、いわゆる
「ハードパワーON」と装置本体のパワースイッチを押
す、いわゆる「ソフトパワーON」の2つのパワーON
・OFFがある。ハードパワーONだけでソフトパワー
ONしないと、LED等の表示も行われず、装置本体の
機械的な動作も行われない。しかしながら、まず、ハー
ドパワーONすると、ヘッド特性測定シーケンスが行わ
れ(S1)、それが終了すると、ソフトパワーONされ
るのを待つ状態となる。
【0186】次に、ソフトパワーONされると(あるい
は、ハードパワーON後、ヘッド特性測定シーケンスが
終了する前にソフトパワーONされ、ヘッド特性測定シ
ーケンスが終了すると)、不吐出検知シーケンスを実行
する(S2)。不吐出検知シーケンスが終了すると、タ
イマーがスタートして(S3)、待機状態1となる(S
4)。
【0187】タイマーは、吸引タイマーと予備吐出タイ
マー等があり、ハードパワーOFFにしない限り、動作
を続け、ソフトパワーOFF後再びソフトパワーONし
た際、あるいは印字命令が入った際に行われる回復シー
ケンスのためのパラメータとなる。
【0188】待機状態1から印字命令が入力されると
(S5)、回復シーケンス2を行い(S6)、印字をス
タートする(S7)。印字が終了すると再び待機状態と
なる(S4)。待機状態1からソフトパワーOFFする
と(S8)、回復シーケンス3を行い(S9)、待機状
態2となる(S10)。この状態では、ハートパワーO
N状態なので、各種タイマーは動作中であり、次のソフ
トパワーON時に(S11)、回復シーケンス1を行い
(S12)、待機状態1となる(S4)。
【0189】以上説明したように、ハードパワーON
だけで、ソフトパワーONしないと、視覚的には何も行
われていないように見えるが、実際には、ヘッド特性の
測定を行っているため、例えば、毎朝、外部タイマー等
によって無人で自動的にハードパワーONするような場
合、その後ユーザーがソフトパワーONする時には、す
でに、ヘッド特性の測定が終了しているため、時間の短
縮が図れる。
【0190】また、ハードパワーON状態で、ソフト
パワーON・OFFが繰り返されるような通常使用の場
合、ソフトパワーON時に、吸引タイマーや予備吐出タ
イマー等の各種タイマーの組み合わせで、最適な回復動
作を行うため、無駄なインクの消費もなく、印字画像の
信頼性も保つことが可能となる。また、このときには、
ヘッド特性の測定をする必要はないため、立上げの時間
も短縮することが可能となる。
【0191】一方、ハードパワーON後にソフトパワ
ーONするユーザーの場合は、毎回、ヘッド特性の測定
を行うことになるが、本ヘッド特性の測定シーケンスに
より、各種特性の測定値が確定になれば、測定時間はほ
とんどかからなくなる。また、必ず不吐出検知シーケン
スを行うため、記録ヘッドの吐出信頼性は保たれる。
【0192】また、ハードパワーONだけで、ソフト
パワーONしなければ、不吐出検知を行わないため、例
えば、本体を使用しないで、ハードパワーON・OFF
を繰り返すような場合でも、不吐出検知動作の際のイン
クの消費が無為に行われることがない、このため、ラン
ニングコスト,廃インク量が増えることはない。
【0193】上記したように、ハードパワーON直後
のソフトパワーON時には、不吐出検知シーケンスを行
い、それ以外のソフトパワーON時には、タイマー回復
シーケンス(回復シーケンス1)を行うことにより、無
駄なインクの消費を極力減らしながら記録ヘッドの吐出
信頼性を保ち、かつ電源OFF状態(ハードパワーOF
F)で、タイマーを働かす必要がない。そのため、タイ
マーを働かすためのバックアップ電源も必要なくなり、
コストダウンが可能となる。
【0194】(回復シーケンス1)回復シーケンス1を
図2を用いて説明する。このシーケンスは、装置本体を
一度、立ち上げた後、ソフトパワーOFFされた状態で
待機状態2となっているところで、再びソフトパワーO
Nされたときに行う回復シーケンスである。
【0195】まず、吸引タイマーが5日以上かどうかを
判断して(S21)、5日以上であれば、強制的に吸引
回復動作を行う(S22)。その後、吸引タイマー,予
備吐出タイマーのリセットを行い、不吐出検知シーケン
スを行い(S23)、復帰する。吸引タイマーが5日以
上でなければ、3日以上かどうかを判断して(S2
4)、3日以上であれば、不吐出検知シーケンスを行い
(S25)、復帰する。吸引タイマーが3日以上でなけ
れば復帰する。
【0196】このようなシーケンスとすることで、無駄
なインクを消費することなく最適な回復動作を行うこと
が可能となり、印字画像の信頼性も確保できる。
【0197】(回復シーケンス2)回復シーケンス2を
図3を用いて説明する。これは、待機状態1の状態で、
印字命令が入力されたときに行う回復シーケンスであ
る。すなわち、待機状態1で長い間放置された場合に行
う回復シーケンスであり、印字中の予備吐出とは違う。
【0198】まず、吸引タイマーが5日以上かどうかを
判定して(S31)、5日以上であれば、強制的に吸引
回復動作を行う(S32)。その後、吸引タイマー,予
備吐出タイマーのリセットを行い、不吐出検知シーケン
スを行い(S33)、復帰する。吸引タイマーが5日以
上でなければ、3日以上かどうかを判断して(S3
4)、3日以上であれば、不吐出検知シーケンスを行い
(S35)、復帰する。吸引タイマーが3日以上でなけ
れば、図4に示す予備吐出タイマーの時間に従った予備
吐出を行い(S36)、復帰し印字中シーケンスに入
る。
【0199】このようなシーケンスとすることで、無駄
なインクを消費することなく、最適な回復動作を行うこ
とが可能となり、印字画像の信頼性も確保できる。
【0200】(回復シーケンス3)回復シーケンス3
は、待機状態1からソフトパワーOFFされると行う回
復シーケンスである。ここでは、図5に示すように、記
録ヘッドのワイピング及びその後予備吐出を行ってキャ
ッピングすることで、放置状態であるところの待機状態
2へと移る。
【0201】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
ハードパワーONとソフトパワーONの2種類のパワー
ON機構を設け、ハードパワーON時に各種記録ヘッド
の特性の測定を行うようにしたので、精度の高い制御を
行うことが可能であり、かつパワーON時の立ち上げ時
間を早くできる。
【0202】また、ハードパワーONに引き続くソフト
パワーON時に、不吐出検知動作を行うようにしたの
で、無駄なインクの消費を防ぎ、かつ信頼性を保つこと
が可能となる。
【0203】また、前記記録ヘッドの温度を測定する
度測定手段と、前記記録ヘッドに投入されるエネルギー
から前記記録ヘッドの温度を推定演算する温度演算手段
と、前記温度測定手段によって測定された前記記録ヘッ
ドの温度測定値と前記温度演算手段によって演算された
前記記録ヘッドの温度演算値とから前記記録ヘッドの不
吐出状態の有無を判定する不吐出判定手段と記録ヘッド
の吐出が正常か否かを精度高く検出することが可能とな
り、記録ヘッドがインクなしで駆動されることを極力防
ぐことが可能となる。
【0204】また、ハードパワーON時のみ、タイマー
を作動させるので、タイマーを作動させるためのバック
アップ電源が不要となる。
【0205】また、上記以外のいろいろな効果があるこ
とは、前記実施例の内容より明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 記録装置全体のシーケンスを示すフローチャ
ート
【図2】 図1における回復シーケンス1のフローチャ
ート
【図3】 図1における回復シーケンス2のフローチャ
ート
【図4】 図3における予備吐出1のフローチャート
【図5】 図1における回復シーケンス3のフローチャ
ート
【図6】 記録装置の構成を示すブロック図
【図7】 印字中に不吐出になった場合の、モニターさ
れた記録ヘッド温度(4回平均済み)、記録ヘッドの温
度の推定演算値、記録ヘッド温度から推定演算値を引い
た値をそれぞれ示す模式図
【図8】 空吐出に伴う記録ヘッドの昇降温の温度変化
量による記録ヘッドの不吐出の状態を示すグラフ
【図9】 不吐出判定のフローチャート
【図10】 不吐出検知のシーケンス
【図11】 記録ヘッドの熱特性の測定方法を説明する
ためのグラフ
【図12】 空吐出による温度変化の大きさを示す値の
測定方法を説明するためのグラフ
【図13】 記録ヘッドが不吐出の状態と正常な吐出状
態にある場合の記録ヘッドの温度変化ΔTiと吐出ヒー
タの熱特性ΔTsの関係を示すグラフ
【図14】 実施例における記録ヘッドの駆動を説明す
るためのブロック図
【図15】 実施例における記録ヘッドの駆動を説明す
るためのブロック図
【図16】 ダミー抵抗の抵抗値とヘッドランクの対応
を示す図
【図17】 ヘッドランクに応じた基本波形を示すテー
ブル
【図18】 ダイオードセンサーランクの測定全体構成
を示すブロック図
【図19】 ダイオードセンサーランクの測定を説明す
るための模式図
【図20】 ダイオードセンサーランクの測定を説明す
るための模式図
【図21】 記録ヘッドの特性を測定するシーケンスを
示すフローチャート
【図22】 記録ヘッドの特性を測定するシーケンスを
示すフローチャート
【図23】 記録装置全体を示す斜視図
【図24】 記録ヘッドの構造を示す斜視図
【図25】 記録ヘッドのヒータボード内を示す図
【図26】 キャリッジを示す斜視図
【図27】 記録ヘッドをキャリッジ上に搭載した図
【図28】 サブヒータの熱特性の測定を説明するため
の模式図
【図29】 記録ヘッド特性の測定全体を説明するため
のブロック図
【図30】 分割パルスを示す模式図
【図31】 印字ヘッドの構造を示す断面図
【図32】 吐出量のDi特性を示す模式図
【図33】 吐出量の温度依存性を示す模式図
【図34】 環境温度−目標温度変換テーブル
【図35】 記録ヘッドの昇温過程を示す模式図
【図36】 モデル化した熱伝導等価回路
【図37】 温度演算用時間区分一覧表
【図38】 吐出ヒータ・ショートレンジ演算テーブル
【図39】 吐出ヒータ・ロングレンジ演算テーブル
【図40】 サブヒータ・ショートレンジ演算テーブル
【図41】 サブヒータ・ロングレンジ演算テーブル
【図42】 PWM駆動のパルス幅を決めるためのテー
ブル
【図43】 制御系全体のフローチャート
【図44】 制御系全体のフローチャート
【図45】 制御系全体のフローチャート
【図46】 実施例の記録制御フローを実行するための
制御系の構成を示す図
【図47】 実施例の演算温度の補正のフローチャート
【図48】 補正を行ったときのヘッド検出温度と演算
温度との関係を示すグラフ
【図49】 推定した記録ヘッド温度と実測した記録ヘ
ッド温度を比較して示すグラフ
【符号の説明】
1 記録ヘッド 2 インクタンク 3 キャリッジ 4 記録ヘッド固定レバー 6 ガイド軸 7 ガイド軸 8 タイミングベルト 9 プーリ 10 フレキシブルケーブル 11 プラテンローラ 12 記録媒体 A 吐出口 B 吐出ヒータ 20C Diセンサ 20D 吐出ヒータ列 20E ダミー抵抗 20F サブヒータ 20G ヒータボード
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉本 仁 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 植月 雅哉 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 錦織 均 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−133749(JP,A) 特開 平2−165961(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/01

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 吐出ヒータを有する記録ヘッドを搭載し
    て記録を行うインクジェット記録装置において、 コンセントに接続することにより装置本体に電力を供給
    可能な状態とする第1手段と、 前記第1手段のONによって電力が供給された状態とな
    っている前記装置本体を動作可能な状態にする第2手段
    と、 前記第1手段のONに伴って前記吐出ヒータの特性を含
    むヘッド特性を測定するためのヘッド特性測定手段とを
    有し、 前記ヘッド特性測定手段による測定は、前記第1手段の
    ONに引き続く前記第2手段のONの前に開始され、 前記第1手段だけがONで前記第2手段がOFFの場
    合、前記装置本体による記録動作は可能な状態となら
    ず、前記第1手段がONで前記第2手段もONの場合、
    前記装置本体による記録動作は可能な状態となることを
    特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 【請求項2】 前記第1手段のONに引き続く前記第2
    手段のONに伴って前記記録ヘッドが正常にインクを吐
    出しているかどうかを検知する手段をさらに有すること
    を特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
  3. 【請求項3】 前記記録ヘッドの温度を測定する温度測
    定手段と、前記記録ヘッドに投入されるエネルギーから
    前記記録ヘッドの温度を推定演算する温度演算手段とを
    さらに有し、 前記温度測定手段によって測定された前記記録ヘッドの
    温度測定値と前記温度演算手段によって演算された前記
    記録ヘッドの温度演算値とから前記記録ヘッドの不吐出
    状態の有無を判定することを特徴とする請求項1記載の
    インクジェット記録装置。
  4. 【請求項4】 前記記録ヘッドは温度センサを更に有
    し、 前記ヘッド特性測定手段は、前記吐出ヒータの特性およ
    び前記温度センサの特性を測定することを特徴とする請
    求項1記載のインクジェット記録装置。
  5. 【請求項5】 前記ヘッド特性測定手段によって測定さ
    れた前記吐出ヒータの特性を含むヘッド特性を特性値と
    して記憶し、前回記憶した特定値と新たに測定された特
    性値とを比較する比較手段を有することを特徴とする請
    求項1記載のインクジェット記録装置。
  6. 【請求項6】 前記ヘッド特性測定手段によって測定さ
    れた前記吐出ヒータの特性、温度センサの特性を含むヘ
    ッド特性を数値化し、記録ヘッド自体の判別用情報とす
    る記録ヘッド認識手段を有することを特徴とする請求項
    4記載のインクジェット記録装置。
  7. 【請求項7】 前記記録ヘッド認識手段は、前記ヘッド
    特性測定手段によって測定された前記吐出ヒータの特
    性、温度センサの特性を含むヘッド特性に優先順位を設
    定し、優先順位の高い方から同一ヘッドかどうかの判断
    を行うことを特徴とする請求項記載のインクジェット
    記録装置。
  8. 【請求項8】 前記記録ヘッド認識手段は、前記ヘッド
    特性測定手段によって測定された前記吐出ヒータの特
    性、温度センサの特性を含むヘッド特性に優先順位を設
    定し、前記優先順位のあるレベルで、それ以下の前記ヘ
    ッド特性項目は測定せずに、同一ヘッド、別ヘッドの判
    定を行うことを特徴とする請求項記載のインクジェッ
    ト記録装置。
  9. 【請求項9】 前記ヘッド特性測定手段によって測定さ
    れた前記吐出ヒータの特性、温度センサの特性を含むヘ
    ッド特性に暫定または確定の定義付けを行い、確定値に
    なるまで、前記ヘッド特性の測定を行う手段を有するこ
    とを特徴とする請求項または記載のインクジェ
    ット記録装置。
  10. 【請求項10】 前記第1手段のONに伴って、前記記
    録ヘッドのある状態を計時する計時手段と、 前記第1手段のONに引き続く前記第2手段のONの時
    以外の、前記第2手段のONの時に、前記計時手段によ
    り得られた時間に応じて前記記録ヘッドに対して実行す
    べき回復処理を異ならせる手段とをさらに有することを
    特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
  11. 【請求項11】 前記記録ヘッドは熱エネルギーによっ
    てインクを吐出することを特徴とする請求項1乃至10
    のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
JP20669093A 1993-05-27 1993-08-20 インクジェット記録装置 Expired - Fee Related JP3428690B2 (ja)

Priority Applications (8)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP20669093A JP3428690B2 (ja) 1993-08-20 1993-08-20 インクジェット記録装置
DE69422219T DE69422219T2 (de) 1993-05-27 1994-05-26 Vorrichtung und Verfahren zur Steuerung der Tintenstrahlaufzeichnungsgeräte in Abhängigkeit von der Erwartungstemperatur
DE69434655T DE69434655T2 (de) 1993-05-27 1994-05-26 Vorrichtung und Verfahren zur Steuerung eines Tintenstrahlaufzeichnungsgerätes in Abhängigkeit von der vermuteten Temperatur
AT94303828T ATE187933T1 (de) 1993-05-27 1994-05-26 Vorrichtung und verfahren zur steuerung der tintenstrahlaufzeichnungsgeräte in abhängigkeit von der erwartungstemperatur
EP99200441A EP0924084B1 (en) 1993-05-27 1994-05-26 Ink jet recording apparatus controlled by presumed temperature and method therefor
AT99200441T ATE319574T1 (de) 1993-05-27 1994-05-26 Vorrichtung und verfahren zur steuerung eines tintenstrahlaufzeichnungsgerätes in abhängigkeit von der vermuteten temperatur
EP94303828A EP0626265B1 (en) 1993-05-27 1994-05-26 Ink jet recording apparatus controlled by presumed temperature and method therefor
US08/250,160 US6086180A (en) 1993-05-27 1994-05-27 Ink jet recording apparatus controlled by presumed temperature and method therefor

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP20669093A JP3428690B2 (ja) 1993-08-20 1993-08-20 インクジェット記録装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0752409A JPH0752409A (ja) 1995-02-28
JP3428690B2 true JP3428690B2 (ja) 2003-07-22

Family

ID=16527505

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP20669093A Expired - Fee Related JP3428690B2 (ja) 1993-05-27 1993-08-20 インクジェット記録装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3428690B2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001232820A (ja) 2000-02-24 2001-08-28 Canon Inc プリント装置
JP4717342B2 (ja) 2003-12-02 2011-07-06 キヤノン株式会社 インクジェット記録装置及び方法
JP4836266B2 (ja) * 2007-02-15 2011-12-14 キヤノン株式会社 インクジェット記録装置及びその記録方法
JP2008254312A (ja) 2007-04-04 2008-10-23 Seiko Epson Corp 液体吐出装置、液体吐出方法、及び、プログラム
JP5251375B2 (ja) * 2008-09-05 2013-07-31 セイコーエプソン株式会社 吐出検査装置、それを備えた流体吐出装置及び吐出検査方法
JP6004897B2 (ja) * 2012-01-10 2016-10-12 キヤノン株式会社 記録装置および記録方法
JP5948905B2 (ja) * 2012-01-31 2016-07-06 ブラザー工業株式会社 液滴吐出装置
JP6197475B2 (ja) 2013-08-20 2017-09-20 セイコーエプソン株式会社 液体噴射方法及び液体噴射装置
CN114987047B (zh) * 2022-05-24 2023-03-14 东方合智数据科技(广东)有限责任公司 一种印刷机的油墨耗量处理方法、系统、终端及存储介质

Also Published As

Publication number Publication date
JPH0752409A (ja) 1995-02-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3397371B2 (ja) 記録装置および記録方法
JP2974487B2 (ja) 記録装置
EP0924084B1 (en) Ink jet recording apparatus controlled by presumed temperature and method therefor
US6193344B1 (en) Ink jet recording apparatus having temperature control function
US6631969B2 (en) Recording apparatus controlled with head characteristics and recording method
JP3235753B2 (ja) インクジェット記録装置及び同装置における温度センサからの出力に応じた信号を補正する補正方法
US20030142159A1 (en) Estimating local ejection chamber temperature to improve printhead performance
JP3372821B2 (ja) インクジェット装置、該装置用インクジェットヘッドの温度推定方法および制御方法
JP3337912B2 (ja) インクジェットヘッドの駆動方法及びこれを実行するインクジェット装置
JP3244724B2 (ja) インクジェット記録装置
EP0876917B1 (en) Control method for ink jet recording apparatus and ink jet recording apparatus
JP3428690B2 (ja) インクジェット記録装置
JP3278682B2 (ja) インクジェット記録装置
JPH0752408A (ja) インクジェット記録装置
JP2974484B2 (ja) 温度演算方法及び該方法を用いた記録装置
JP2952083B2 (ja) インクジェット記録装置
JPH0531918A (ja) インクジエツト記録装置
JP3313751B2 (ja) インクジェット記録ヘッドの吐出制御方法
JP3262384B2 (ja) 記録装置
JP3244736B2 (ja) インクジェット記録装置及びインク記録方法
EP0925927B1 (en) Ink jet recording apparatus and method of driving the same
JP3323583B2 (ja) 記録装置および記録ヘッド認識方法
JPH06336023A (ja) インクジェット記録装置
JP4510259B2 (ja) 記録装置及び温度推定方法
KR20080114018A (ko) 잉크젯 화상형성장치 및 그 제어방법

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20030415

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090516

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100516

Year of fee payment: 7

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees