JP3422772B2 - Fe−Ni合金冷延板 - Google Patents

Fe−Ni合金冷延板

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JP3422772B2
JP3422772B2 JP2000400659A JP2000400659A JP3422772B2 JP 3422772 B2 JP3422772 B2 JP 3422772B2 JP 2000400659 A JP2000400659 A JP 2000400659A JP 2000400659 A JP2000400659 A JP 2000400659A JP 3422772 B2 JP3422772 B2 JP 3422772B2
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  • Treatment Of Steel In Its Molten State (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子部品材料とし
て多用されるFe−Ni合金冷延板に係り、特に、エッ
チング性および表面性状に優れたFe−Ni合金冷延
関する。
【0002】
【従来の技術】Niを20〜50wt%含有するFe−
Ni合金は、その特性から電子部品材料に多く用いられ
ている。例えば、Niを36wt%含有するFe−Ni
合金は、熱膨張率がきわめて低いことから、シャドウマ
スク材やバイメタル材に用いられている。また、Niを
42wt%含有するFe−Ni合金は、熱膨張率が低
く、かつ、電気伝導性に優れていることから、リードフ
レーム材として用いられている。これらFe−Ni合金
は、数百μm以下の冷延板に圧延され、エッチングが施
されて製品化される。
【0003】ところで、このようなFe−Ni合金冷延
板の溶製時には、通常、脱酸剤としてAlが添加されて
いたが、このAlによって冷延板にはAl系の非
金属介在物が存在していた。そして、このAl
の非金属介在物がクラスター化して硬質なものになる
と、表面のすじ状の欠陥や、エッチング孔の不均一ある
いは乱れといった不具合を招いていた。Alの添加量が
微量であってもAl 系の非金属介在物は生成しや
すく、しかもその非金属介在物はクラスター化して粗大
化しやすいので、表面性状やエッチング性を向上させる
ためには、除去することが望まれる。しかしながら、ク
ラスター化した非金属介在物は見かけの比重が溶鋼の比
重と近くなるため、取鍋、タンディッシュあるいはモー
ルド内で浮上した非金属介在物を除去することは困難で
あることが知られている。
【0004】そこで、この問題の解決策として、次の技
術が公知である。まず、特開平6−41687号公報で
は、Mn:0.1〜0.4wt%、Si:0.05〜
0.2wt%、酸可溶性Al:0.001〜0.003
wt%に規定して非金属介在物の組成をMnO−SiO
−Al系に制御している。また、特開平8−
25881号公報では、Al:0.003wt%以下
で、かつ、Si(wt%)/Al(wt%)≧10とし
て非金属介在物の組成をMn−シリケート系に制御して
いる。
【0005】また、特開平9−87813号公報では、
Si:0.02〜0.3wt%、Al:0.003wt
%に規定する一方、溶湯との接触部分がCrの含
有量2wt%以下の耐火物でライニングされ、かつ、前
チャージでAlの含有量が0.010wt%以下の溶鋼
の精錬に使用された容器によって溶製することにより、
非金属介在物のCrの含有量を5wt%以下、A
の含有量を40wt%以下に規定している。さ
らに、特開平9−125210号公報では、精錬工程に
おいて生成するスラグの組成の(%CaO)/(%Si
)を、重量比で2.5〜3.9に制御している。上
記いずれの公報にあっても、表面傷等の欠陥が生じない
表面性状に優れたFe−Ni合金冷延板が得られるとさ
れている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記の各従
来技術では、合金および非金属介在物の組成についての
規定はなされているものの、その量や分布についての規
定はなされていない。表面傷の発生状況やエッチングの
特性は、非金属介在物の組成のみならず、量や分布にも
大きく左右され、例えば、量が多かったり密度が高かっ
たりすれば表面性状に悪影響を及ぼす。また、非金属介
在物の組成、量あるいは分布は、精錬方法、とりわけ脱
酸時に用いる脱酸剤や生成するスラグの組成に大きく影
響されるが、これらのファクターに関する規定も、上記
各公報では規定されていない。脱酸時にスラグ組成が適
正に制御されていないと、Al(アルミナ)やM
gO・Al(スピネル)等の非金属介在物がクラ
スター化し、表面に欠陥が生じたりエッチング性が阻害
されたりする不具合を招く。
【0007】よって本発明は、エッチング性および表面
性状のより優れたFe−Ni合金冷延板を提供すること
を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、圧延時や
成形時に表面傷が生じたFe−Ni合金冷延板の傷部分
を詳細に調査することにより、表面傷の原因はクラスタ
ー状のAlおよびMgO・Al系の非金属
介在物であることを見い出した。この種の非金属介在物
は高融点であり、クラスター化しやすいことに加え硬質
であるため、傷や割れの基点となっていた。また、クラ
スター化していない単独の非金属介在物でも、長さが1
0μmを超える硬質な非金属介在物は、パンチング加工
やエッチング加工時に欠陥の原因となっていた。本発明
者らは、このような調査結果をもとに非金属介在物の組
成について種々検討したところ、非金属介在物の組成が
基本的にMnO−S−Al系で、かつ、M
nOが5〜50wt%、SiOが30〜60wt%、
Alが5〜30wt%であり、さらに、その中に
含有される不可避的不純物であるCaOおよびMgOが
合計で30wt%以下のシリケート系非金属介在物であ
る場合に、その非金属介在物はクラスター化しにくく表
面傷の発生原因になりにくいことを見い出した。また、
そのような非金属介在物は、熱間および冷間圧延で微細
に分断され、清浄性に優れることも判った。
【0009】よって本発明のFe−Ni合金冷延板は上
記知見になされたものであり、Si:0.01〜0.0
wt%、Mn:0.001〜0.60wt%、Ni:
20〜50wt%、Al:0.0001〜0.020w
t%、残部はFeおよびC、P、S、Cu等の不可避的
不純物からなり、非金属介在物の組成が基本的にMnO
−S−Al系で、かつ、MnOが5〜50
wt%、SiOが30〜60wt%、Alが5
〜30wt%であり、さらに、その他の不可避的不純物
として含まれるCaOおよびMgOが合計で30wt%
以下であることを特徴としている。さらに本発明は、必
要に応じてNb:0.001〜2.0wt%、Co:1
〜8wt%を含有することを特徴としている。
【0010】以下、上記数値限定の根拠を本発明の作用
とともに説明する。(1)基本元素 Si:0.01〜0.03wt% Siは熱膨張率を上げる元素であり、0.30wt%を
超えると熱膨張率が大きくなり過ぎて電子部品材料とし
て適当でない。また、0.001wt%未満では脱酸力
が弱くなって清浄度が低下する。したがって、Siの含
有量は0.001〜0.30wt%が良いが、この範囲
では、好ましくは0.005〜0.05wt%であり、
より好ましくは0.01〜0.03wt%である。
【0011】Mn:0.001〜0.60wt% Mnは熱膨張率を上げる元素であり、できるだけ低濃度
であることが望まれるものの、精錬時において0.00
1wt%未満まで濃度を下げるには時間がかかり過ぎ、
コスト面で適切ではない。そこで、熱膨張率に与える影
響を考慮し、Mnの含有量を0.001〜0.60wt
%と定めた。この範囲では、好ましくは0.001〜
0.05wt%である。
【0012】Ni:20〜50wt% Niは熱膨張率に大きく影響を及ぼす元素であり、20
0℃では36wt%付近、500℃では42wt%付近
で熱膨張率が極小となることが知られている。20wt
%未満または50wt%を超えると熱膨張率が大き過
ぎ、用途的にシャドウマスク材やリードフレーム材には
適さない。したがって、Niの含有量を20〜50wt
%と定めた。
【0013】Al:0.0001〜0.020wt% Alは熱膨張率を上げる元素であり、しかも、有害なA
系の非金属介在物を生成する元素であることか
ら、極力低濃度であることが望まれる。しかしながら、
非金属介在物を低融点のMnO−S−Al
系に制御する上で有用な元素である。これらの観点に加
えて、コストを著しく上げない範囲で原料や副原料を選
択する必要性を考慮した結果、Alの含有量を0.00
01〜0.020wt%と定めた。この範囲では、好ま
しくは0.0005〜0.015wt%、より好ましく
は0.0008〜0.008wt%である。
【0014】Nb:0.001〜2.0wt% Nbは、シャドウマスク材等の材料の強度を向上させる
ために有用な元素であり、強度の向上を図りながら熱膨
張率を大きくさせない観点から、含有量を0.001〜
2.0wt%の範囲に定めた。
【0015】Co:1〜8wt% Coはシャドウマスク材等の材料の強度を向上させる元
素であるとともに、Niと最適な含有率で組み合わせる
と、熱膨張率をNiを36wt%含有するFe−Ni合
金よりも小さくすることができる。Coの含有量が1〜
8wt%を逸脱すると熱膨張率が大きくなってシャドウ
マスク材等の材料に適さなくなるので、含有量を1〜8
wt%とした。
【0016】(2)非金属介在物 前述の如く、クラスター化しにくく、かつ、熱間および
冷間圧延で微細に分断されて清浄性の向上が図られる観
点から、本発明のFe−Ni合金冷延板に含有される非
金属介在物の組成および種類は、基本的にMnO−S
−Al 系で、かつ、MnOが5〜50wt
%、SiOが30〜60wt%、Alが5〜3
0wt%であり、さらに、その中に含有される不可避的
不純物であるCaOおよびMgOが合計で30wt%以
下のシリケート系非金属介在物であることを特徴として
いる。
【0017】さて、本発明者らは、上記本発明のFe−
Ni合金冷延板につき、厚さ0.3mm以下に圧延した
薄板における圧延方向に平行な断面の「JIS G05
55」による清浄度と、同様の薄板における圧延方向に
垂直な断面(光学顕微鏡で400倍、60視野)に存在
する非金属介在物の粒径およびエッチング加工時の不良
品発生の有無を詳細に調査した。その結果、本発明のF
e−Ni合金冷延板は、次に挙げる限定要素を好ましい
態様としている。
【0018】厚さ0.3mm以下に圧延した薄板におけ
る圧延方向に平行な断面の「JISG0555」による
清浄度が0.05を超えると、加工時にエッチング孔の
乱れが生じることが判った。そこで、その清浄度が0.
05以下であることを好ましい態様とし、0.02以下
であればより好ましいものとする。
【0019】「JIS G0555」で分類されるA系
の非金属介在物が存在すると、エッチング性に悪影響を
及ぼすことが判った。したがって、存在する非金属介在
物の全てが、「JIS G0555」で分類されたB系
およびC系に制御されていることを好ましい態様とす
る。
【0020】長さ10μmを超える非金属介在物の10
0mmの断面に存在する個数が10個を超えている
と、加工時にエッチング孔の乱れが生じることが判っ
た。したがって、その個数が10個以下であることを好
ましい態様とし、5個以下であればより好ましいものと
する。
【0021】B系の非金属介在物の一連の最大長さが3
00μmを超えていると、加工時にエッチング孔の乱れ
が生じることが判った。したがって、B系の非金属介在
物の一連の最大長さが300μm以下であることを好ま
しい態様とし、150μm以下であればより好ましいも
のとする。
【0022】次に、本発明のFe−Ni合金の好ましい
精錬方法について説明する。上記の如く基本元素や清浄
度、さらには非金属介在物の組成、種類、大きさ等を規
定した本発明のFe−Ni合金冷延板を製造する場合に
おいては、特に精錬工程、とりわけ脱酸工程で、Siや
Alの含有量、スラグの塩基度および不純物成分に配慮
して精錬する必要がある。本発明者らが脱酸工程に関し
種々の実験を行って検討したところ、まず、Alを脱酸
剤として用いた場合には、スピネルやアルミナ系介在物
が生成されることが判った。そして、これらはクラスタ
ー化して表面欠陥を招いたりエッチング性を阻害したり
することが判明した。
【0023】この問題点を根本的に解決するには、脱酸
剤としてSiまたはSi合金鉄を用いることが有効であ
る。ただし、Si系の脱酸剤によって生成するスラグの
塩基度(CaO/SiOの濃度比)やMgO、Al
等の不純物成分によっては、Alによる脱酸時と同
様にアルミナやスピネル介在物が生成する。そのメカニ
ズムは、次の通りである。まず、以下の反応によってス
ラグ中のMgOおよびAlが還元される。
【0024】 Si+2(MgO)=(SiO)+2Mg …(1) (Siがスラグ中のMgOを還元する反応) 3Si+2(Al)=3(SiO)+4Al …(2) (Siがスラグ中のAlを還元する反応)
【0025】還元されたMgおよびAlは、その濃度の
バランスによって、MgO・Alスピネルを生成
したりAlアルミナ介在物を生成したりする。こ
の反応に強く関わる因子は、スラグ中の塩基度、MgO
濃度、Al濃度および溶鋼中のSi濃度である。
以下、これら因子について検証する。
【0026】まず、スラグ中のMgOの量が多いと、上
記(1)式が右に進み、スピネルが生成しやすくなる。
MgOは、例えば、AOD(Argon Oxygen Decarburiza
tion)炉、VOD(Vacuum Oxygen Decarburization)
炉あるいは取鍋等の内張り煉瓦として用いられるMgO
系ドロマイト(MgO−CaO)から、溶損によって混
入する。また、MgOは、場合によっては溶損防止の目
的で積極的に添加される。そこで、精錬温度が必要以上
に上がらないようにするために、MgO濃度を20wt
%以下に制御することが好ましかった。
【0027】次に、スラグ中のAlは、石灰石、
蛍石あるいは珪砂といったフラックスに微量含まれてい
ること、そして、脱酸剤として用いるSiもしくはSi
合金鉄にAlとして含まれるものが酸化して混入するこ
とが判った。そこで、スラグ中のAl濃度を15
wt%以下に制御すれば、Alの混入量を有効に下げる
ことができることが判った。なお、フラックスやSiも
しくはSi合金鉄を添加するにあたっては、コストを著
しく上げない範囲で高純度のものを選択することが好ま
しい。
【0028】次に、本発明者らは、スラグの塩基度とS
i濃度の相関関係を調べたところ、図1に示すa,b,
c,dで囲まれる範囲にスラグの塩基度とSi濃度を制
御すれば、非金属介在物の生成が抑えられるとともに清
浄度が向上した高品質のFe−Ni合金冷延板を得られ
ることを見い出した。まず、Siに関しては、前述した
ようにSi濃度が高いほど熱膨張率はそれにつれて大き
くなる。また、スラグの塩基度が高いとアルミナやスピ
ネル介在物の生成率が高くなる一方、塩基度が低いと清
浄度が低下する。ここで、Siは、前述したように熱膨
張率の観点から0.001〜0.30wt%が適切であ
る。また、塩基度が1.2未満の場合には、Si濃度に
関わらず、「JIS G0555」による清浄度を0.
05以下とすることができなかった。また、スラグの塩
基度が図1のa(Si濃度:0.001,塩基度5),
b(Si濃度:0.3,塩基度3)の2点を結ぶ直線よ
りも高い範囲ではスラグ中のSiOの活量が下がり、
上記(1)式および(2)式がともに右に進行してアル
ミナやスピネル介在物が生成することが判った。
【0029】以上の結果から、本発明のFe−Ni合金
を得るための精錬方法は、溶解した原料の酸化精錬後、
SiまたはSi合金鉄を添加する脱酸工程において、生
成するスラグの塩基度(C/S)とSi濃度を、図1の
a,b,c,dで囲まれる範囲に制御することを特徴と
している。そして、本方法においては、スラグ中のAl
濃度を15wt%以下、かつ、MgO濃度を20
wt%以下に制御することを好ましい態様とする。
【0030】上記精錬方法を実施するにあたって用いら
れる原料は、例えば、精錬時に発生するスクラップにN
i等の他の元素を適宜に添加したものが適用され、この
原料は、通常の電気炉等で溶解される。酸化精錬工程で
は、前述のAODとVODの両方か、またはいずれか一
方の工程により、脱炭、脱りん、脱クロム等が行われ
る。その後の脱酸工程では、SiまたはSi合金鉄を添
加する前に、フラックスとして石灰石、蛍石、珪砂等を
添加することが好ましい。
【0031】ここで、Fe−Ni合金冷延板を製造する
にあたって冷延板の素材となる鋼塊の製造工程を説明す
る。鋼塊の製造工程は、主に表1(a),(b),
(c)に示すように、AOD工程、VOD工程およびA
OD→VOD工程の3通りに分けられる。
【0032】
【表1】
【0033】表1(a)に示すAOD工程は、原料を電
気炉で溶解して成分調整を行い、次いで、AODで脱
炭、除滓した後、フラックス添加、仕上げ脱酸、成分調
整を行う。続いて、取鍋精錬装置で成分および温度の微
調整を行い、次いで、連続鋳造機(CC)または普通造
塊で溶鋼を鋳造し、鋼塊を得る。
【0034】表1(b)に示すVOD工程は、原料を電
気炉で溶解して成分調整を行い、次いで、VODで脱炭
後、フラックス添加、仕上げ脱酸、ガス成分除去を行
う。続いて、取鍋精錬装置で成分および温度の微調整を
行い、次いで、連続鋳造機(CC)または普通造塊で溶
鋼を鋳造し、鋼塊を得る。
【0035】表1(c)に示すAOD→VOD工程は、
原料を電気炉で溶解して成分調整を行い、次いで、AO
Dで脱炭、除滓した後、フラックス添加、仕上げ脱酸、
成分調整を行う。続いて、取鍋精錬装置で成分および温
度の微調整を行い、次いで、VODでガス成分除去を行
う。この後、連続鋳造機(CC)または普通造塊で溶鋼
を鋳造し、鋼塊を得る。
【0036】
【実施例】次に、実施例を提示して本発明の効果をより
明らかにする。(1)冷延板の製造 表2に示す金属組成を有する実施例1〜9(本発明例は
実施例1,5,9)のFe−Ni合金冷延板(実施例8
はFe−36wt%Ni−0.2wt%Nb合金、Fe
−32wt%Ni−5wt%Co合金)と、本発明から
逸脱する比較例1〜9のFe−Ni合金冷延板とを、以
下のようにして製造した。これら冷延板は、実施例9以
外はFe−36wt%を基本組成とし、残部は不可避的
不純物である。
【0037】
【表2】
【0038】精錬時に発生するスクラップやNi等から
なる原料60tを電気炉で溶解しながら、Fe−36w
t%の組成に調整し、次いでこの溶鋼を、上記3種類の
工程(AOD工程、VOD工程、AOD→VOD工程)
のうちのいずれかの工程により酸化精錬(脱炭、脱り
ん、脱クロム等)を行った。続いて、AODあるいはV
ODにおいて、酸化期のスラグを除去し、石灰石、蛍石
および珪砂のうちの1種または2種以上をフラックスと
して添加し所定の塩基度に調整した。次に、Si合金鉄
を添加して溶鋼を脱酸し、取鍋精錬装置で微量成分調整
および温度制御を行った後、普通造塊に鋳造するか、ま
たは連続鋳造機によって鋳造した。この後、普通造塊の
場合は鍛造工程をはさんでから、鋳塊に熱間圧延を経て
冷間圧延を施し、0.25mm厚のFe−Ni合金の薄
板(冷延板)を得た。なお、表2には、精錬工程の種別
を併記している。
【0039】(2)調査および評価 実施例1〜9および比較例1〜9の冷延板につき、以下
の調査および評価を行った。それらの結果を、表3に示
す。
【表3】
【0040】A.非金属介在物の組成 EDS(エネルギー分散型分光分析装置)により、10
箇所ずつ定量分析して非金属介在物の組成を調査した。
【0041】B.清浄度 「JIS G0555」にしたがい、光学顕微鏡によっ
て圧延方向に平行な断面を400倍/60視野の条件で
測定した。
【0042】C.非金属介在物の個数 光学顕微鏡によって、100mmの断面に長さ10μ
mを超える非金属介在物がいくつ存在するかを数えた。
光学顕微鏡の倍数は400倍、断面は圧延方向に平行な
断面とした。
【0043】D.非金属介在物の最大長さ 光学顕微鏡によって、一連のB系の非金属介在物の最大
長さを測定した。光学顕微鏡の倍数は400倍、断面は
圧延方向に平行な断面とした。
【0044】E.スラグの塩基度および組成 蛍光X線分析装置により、精錬時に生成したスラグの組
成を調べるとともに、そのスラグの塩基度を求めた。な
お、図1で○は各実施例を、また、×は各比較例を示し
ている。
【0045】F.表面欠陥数 表面の任意の20m部分に傷等の表面欠陥がいくつ存
在するかを目視で観察した。
【0046】G.エッチング性 エッチングを施した後の表面に形成されるエッチング孔
の乱れを、真円度により評価した。真円度に優れる場合
を○、真円度に劣る場合を×と評価した。
【0047】表3から明らかなように、スラグ中のMg
O濃度が20wt%以下、Al 濃度が15wt%
以下で、なおかつスラグ塩基度とSi濃度が図1のa,
b,c,dで囲まれる範囲にあり、さらにAl濃度が
0.0001〜0.02wt%の各実施例の場合、いず
れも非金属介在物はシリケート系に制御され、表面欠陥
がなくエッチング性に優れた冷延板であった。
【0048】これに対し、比較例では、塩基度が高い場
合(比較例2,3,9)にはSiによる脱酸でもアルミ
ナやスピネル介在物が生成して表面欠陥を生じ、エッチ
ング性も劣っていた。逆に塩基度が1.2未満と低い場
合(比較例4,6,7)には非金属介在物はシリケート
系であるものの、清浄度が0.05を超え、さらに非金
属介在物の個数が多くなる。比較例5,8はAlによる
脱酸の結果であるが、いずれもスピネル介在物が生成さ
れ、表面欠陥が顕著に生じた。比較例1はSi濃度が
0.3wt%を超える0.35wt%であり、非金属介
在物に関しては問題なかったものの、熱膨張率が品質要
求を満足する範囲を外れており、実用的でなかった。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のFe−N
i合金冷延板によれば、含有元素および非金属介在物の
組成が適宜に規定されることから、優れたエッチング性
および表面性状を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】 スラグの塩基度とSi濃度の相関関係を示す
図である。
フロントページの続き (72)発明者 田中 秀毅 神奈川県川崎市川崎区小島町4番2号 日本冶金工業株式会社 川崎製造所内 (56)参考文献 特開 平11−315354(JP,A) 特開 平6−41687(JP,A) 特開 昭62−161936(JP,A) 特開 昭59−59861(JP,A) 特開 平11−269609(JP,A) 特開 平7−207415(JP,A) 特開 平9−118963(JP,A) 特開 昭63−231844(JP,A) 特開 昭61−179849(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Si:0.01〜0.03wt%、M
    n:0.001〜0.60wt%、Ni:20〜50w
    t%、Al:0.0001〜0.020wt%、残部は
    FeおよびC、P、S、Cu等の不可避的不純物からな
    り、 非金属介在物の組成が基本的にMnO−SiO−Al
    系で、かつ、MnOが5〜50wt%、SiO
    が30〜60wt%、Alが5〜30wt%であ
    り、さらに、その他の不可避的不純物として含まれるC
    aOおよびMgOが合計で30wt%以下であり、しか
    も、厚さ0.3mm以下に圧延した薄板における圧延方
    向に平行な断面の「JIS G0555」による清浄度
    が0.05以下であることを特徴とするFe−Ni合金
    冷延板。
  2. 【請求項2】 Nb:0.001〜2.0wt%を含有
    することを特徴とする請求項1に記載のFe−Ni合金
    冷延板。
  3. 【請求項3】 Co:1〜8wt%を含有することを特
    徴とする請求項1または2に記載のFe−Ni合金冷延
    板。
  4. 【請求項4】 前記非金属介在物の全てが、「JIS
    G0555」で分類されたB系およびC系に制御されて
    いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の
    Fe−Ni合金冷延板。
  5. 【請求項5】 長さ10μmを超える前記非金属介在物
    の100mm の断面に存在する個数が10個以下であ
    ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の
    e−Ni合金冷延板。
  6. 【請求項6】 前記B系の非金属介在物の一連の最大長
    さが300μm以下であることを特徴とする請求項4ま
    たは5に記載のFe−Ni合金冷延板。
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