JP3422772B2 - Fe−Ni合金冷延板 - Google Patents

Fe−Ni合金冷延板

Info

Publication number
JP3422772B2
JP3422772B2 JP2000400659A JP2000400659A JP3422772B2 JP 3422772 B2 JP3422772 B2 JP 3422772B2 JP 2000400659 A JP2000400659 A JP 2000400659A JP 2000400659 A JP2000400659 A JP 2000400659A JP 3422772 B2 JP3422772 B2 JP 3422772B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
rolled sheet
less
alloy cold
inclusions
alloy
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2000400659A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2002004006A (ja
Inventor
秀和 轟
健次 水野
武志 中村
秀毅 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Yakin Kogyo Co Ltd
Original Assignee
Nippon Yakin Kogyo Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Yakin Kogyo Co Ltd filed Critical Nippon Yakin Kogyo Co Ltd
Priority to JP2000400659A priority Critical patent/JP3422772B2/ja
Publication of JP2002004006A publication Critical patent/JP2002004006A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3422772B2 publication Critical patent/JP3422772B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Treatment Of Steel In Its Molten State (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子部品材料とし
て多用されるFe−Ni合金冷延板に係り、特に、エッ
チング性および表面性状に優れたFe−Ni合金冷延
関する。
【0002】
【従来の技術】Niを20〜50wt%含有するFe−
Ni合金は、その特性から電子部品材料に多く用いられ
ている。例えば、Niを36wt%含有するFe−Ni
合金は、熱膨張率がきわめて低いことから、シャドウマ
スク材やバイメタル材に用いられている。また、Niを
42wt%含有するFe−Ni合金は、熱膨張率が低
く、かつ、電気伝導性に優れていることから、リードフ
レーム材として用いられている。これらFe−Ni合金
は、数百μm以下の冷延板に圧延され、エッチングが施
されて製品化される。
【0003】ところで、このようなFe−Ni合金冷延
板の溶製時には、通常、脱酸剤としてAlが添加されて
いたが、このAlによって冷延板にはAl系の非
金属介在物が存在していた。そして、このAl
の非金属介在物がクラスター化して硬質なものになる
と、表面のすじ状の欠陥や、エッチング孔の不均一ある
いは乱れといった不具合を招いていた。Alの添加量が
微量であってもAl 系の非金属介在物は生成しや
すく、しかもその非金属介在物はクラスター化して粗大
化しやすいので、表面性状やエッチング性を向上させる
ためには、除去することが望まれる。しかしながら、ク
ラスター化した非金属介在物は見かけの比重が溶鋼の比
重と近くなるため、取鍋、タンディッシュあるいはモー
ルド内で浮上した非金属介在物を除去することは困難で
あることが知られている。
【0004】そこで、この問題の解決策として、次の技
術が公知である。まず、特開平6−41687号公報で
は、Mn:0.1〜0.4wt%、Si:0.05〜
0.2wt%、酸可溶性Al:0.001〜0.003
wt%に規定して非金属介在物の組成をMnO−SiO
−Al系に制御している。また、特開平8−
25881号公報では、Al:0.003wt%以下
で、かつ、Si(wt%)/Al(wt%)≧10とし
て非金属介在物の組成をMn−シリケート系に制御して
いる。
【0005】また、特開平9−87813号公報では、
Si:0.02〜0.3wt%、Al:0.003wt
%に規定する一方、溶湯との接触部分がCrの含
有量2wt%以下の耐火物でライニングされ、かつ、前
チャージでAlの含有量が0.010wt%以下の溶鋼
の精錬に使用された容器によって溶製することにより、
非金属介在物のCrの含有量を5wt%以下、A
の含有量を40wt%以下に規定している。さ
らに、特開平9−125210号公報では、精錬工程に
おいて生成するスラグの組成の(%CaO)/(%Si
)を、重量比で2.5〜3.9に制御している。上
記いずれの公報にあっても、表面傷等の欠陥が生じない
表面性状に優れたFe−Ni合金冷延板が得られるとさ
れている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記の各従
来技術では、合金および非金属介在物の組成についての
規定はなされているものの、その量や分布についての規
定はなされていない。表面傷の発生状況やエッチングの
特性は、非金属介在物の組成のみならず、量や分布にも
大きく左右され、例えば、量が多かったり密度が高かっ
たりすれば表面性状に悪影響を及ぼす。また、非金属介
在物の組成、量あるいは分布は、精錬方法、とりわけ脱
酸時に用いる脱酸剤や生成するスラグの組成に大きく影
響されるが、これらのファクターに関する規定も、上記
各公報では規定されていない。脱酸時にスラグ組成が適
正に制御されていないと、Al(アルミナ)やM
gO・Al(スピネル)等の非金属介在物がクラ
スター化し、表面に欠陥が生じたりエッチング性が阻害
されたりする不具合を招く。
【0007】よって本発明は、エッチング性および表面
性状のより優れたFe−Ni合金冷延板を提供すること
を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、圧延時や
成形時に表面傷が生じたFe−Ni合金冷延板の傷部分
を詳細に調査することにより、表面傷の原因はクラスタ
ー状のAlおよびMgO・Al系の非金属
介在物であることを見い出した。この種の非金属介在物
は高融点であり、クラスター化しやすいことに加え硬質
であるため、傷や割れの基点となっていた。また、クラ
スター化していない単独の非金属介在物でも、長さが1
0μmを超える硬質な非金属介在物は、パンチング加工
やエッチング加工時に欠陥の原因となっていた。本発明
者らは、このような調査結果をもとに非金属介在物の組
成について種々検討したところ、非金属介在物の組成が
基本的にMnO−S−Al系で、かつ、M
nOが5〜50wt%、SiOが30〜60wt%、
Alが5〜30wt%であり、さらに、その中に
含有される不可避的不純物であるCaOおよびMgOが
合計で30wt%以下のシリケート系非金属介在物であ
る場合に、その非金属介在物はクラスター化しにくく表
面傷の発生原因になりにくいことを見い出した。また、
そのような非金属介在物は、熱間および冷間圧延で微細
に分断され、清浄性に優れることも判った。
【0009】よって本発明のFe−Ni合金冷延板は上
記知見になされたものであり、Si:0.01〜0.0
wt%、Mn:0.001〜0.60wt%、Ni:
20〜50wt%、Al:0.0001〜0.020w
t%、残部はFeおよびC、P、S、Cu等の不可避的
不純物からなり、非金属介在物の組成が基本的にMnO
−S−Al系で、かつ、MnOが5〜50
wt%、SiOが30〜60wt%、Alが5
〜30wt%であり、さらに、その他の不可避的不純物
として含まれるCaOおよびMgOが合計で30wt%
以下であることを特徴としている。さらに本発明は、必
要に応じてNb:0.001〜2.0wt%、Co:1
〜8wt%を含有することを特徴としている。
【0010】以下、上記数値限定の根拠を本発明の作用
とともに説明する。(1)基本元素 Si:0.01〜0.03wt% Siは熱膨張率を上げる元素であり、0.30wt%を
超えると熱膨張率が大きくなり過ぎて電子部品材料とし
て適当でない。また、0.001wt%未満では脱酸力
が弱くなって清浄度が低下する。したがって、Siの含
有量は0.001〜0.30wt%が良いが、この範囲
では、好ましくは0.005〜0.05wt%であり、
より好ましくは0.01〜0.03wt%である。
【0011】Mn:0.001〜0.60wt% Mnは熱膨張率を上げる元素であり、できるだけ低濃度
であることが望まれるものの、精錬時において0.00
1wt%未満まで濃度を下げるには時間がかかり過ぎ、
コスト面で適切ではない。そこで、熱膨張率に与える影
響を考慮し、Mnの含有量を0.001〜0.60wt
%と定めた。この範囲では、好ましくは0.001〜
0.05wt%である。
【0012】Ni:20〜50wt% Niは熱膨張率に大きく影響を及ぼす元素であり、20
0℃では36wt%付近、500℃では42wt%付近
で熱膨張率が極小となることが知られている。20wt
%未満または50wt%を超えると熱膨張率が大き過
ぎ、用途的にシャドウマスク材やリードフレーム材には
適さない。したがって、Niの含有量を20〜50wt
%と定めた。
【0013】Al:0.0001〜0.020wt% Alは熱膨張率を上げる元素であり、しかも、有害なA
系の非金属介在物を生成する元素であることか
ら、極力低濃度であることが望まれる。しかしながら、
非金属介在物を低融点のMnO−S−Al
系に制御する上で有用な元素である。これらの観点に加
えて、コストを著しく上げない範囲で原料や副原料を選
択する必要性を考慮した結果、Alの含有量を0.00
01〜0.020wt%と定めた。この範囲では、好ま
しくは0.0005〜0.015wt%、より好ましく
は0.0008〜0.008wt%である。
【0014】Nb:0.001〜2.0wt% Nbは、シャドウマスク材等の材料の強度を向上させる
ために有用な元素であり、強度の向上を図りながら熱膨
張率を大きくさせない観点から、含有量を0.001〜
2.0wt%の範囲に定めた。
【0015】Co:1〜8wt% Coはシャドウマスク材等の材料の強度を向上させる元
素であるとともに、Niと最適な含有率で組み合わせる
と、熱膨張率をNiを36wt%含有するFe−Ni合
金よりも小さくすることができる。Coの含有量が1〜
8wt%を逸脱すると熱膨張率が大きくなってシャドウ
マスク材等の材料に適さなくなるので、含有量を1〜8
wt%とした。
【0016】(2)非金属介在物 前述の如く、クラスター化しにくく、かつ、熱間および
冷間圧延で微細に分断されて清浄性の向上が図られる観
点から、本発明のFe−Ni合金冷延板に含有される非
金属介在物の組成および種類は、基本的にMnO−S
−Al 系で、かつ、MnOが5〜50wt
%、SiOが30〜60wt%、Alが5〜3
0wt%であり、さらに、その中に含有される不可避的
不純物であるCaOおよびMgOが合計で30wt%以
下のシリケート系非金属介在物であることを特徴として
いる。
【0017】さて、本発明者らは、上記本発明のFe−
Ni合金冷延板につき、厚さ0.3mm以下に圧延した
薄板における圧延方向に平行な断面の「JIS G05
55」による清浄度と、同様の薄板における圧延方向に
垂直な断面(光学顕微鏡で400倍、60視野)に存在
する非金属介在物の粒径およびエッチング加工時の不良
品発生の有無を詳細に調査した。その結果、本発明のF
e−Ni合金冷延板は、次に挙げる限定要素を好ましい
態様としている。
【0018】厚さ0.3mm以下に圧延した薄板におけ
る圧延方向に平行な断面の「JISG0555」による
清浄度が0.05を超えると、加工時にエッチング孔の
乱れが生じることが判った。そこで、その清浄度が0.
05以下であることを好ましい態様とし、0.02以下
であればより好ましいものとする。
【0019】「JIS G0555」で分類されるA系
の非金属介在物が存在すると、エッチング性に悪影響を
及ぼすことが判った。したがって、存在する非金属介在
物の全てが、「JIS G0555」で分類されたB系
およびC系に制御されていることを好ましい態様とす
る。
【0020】長さ10μmを超える非金属介在物の10
0mmの断面に存在する個数が10個を超えている
と、加工時にエッチング孔の乱れが生じることが判っ
た。したがって、その個数が10個以下であることを好
ましい態様とし、5個以下であればより好ましいものと
する。
【0021】B系の非金属介在物の一連の最大長さが3
00μmを超えていると、加工時にエッチング孔の乱れ
が生じることが判った。したがって、B系の非金属介在
物の一連の最大長さが300μm以下であることを好ま
しい態様とし、150μm以下であればより好ましいも
のとする。
【0022】次に、本発明のFe−Ni合金の好ましい
精錬方法について説明する。上記の如く基本元素や清浄
度、さらには非金属介在物の組成、種類、大きさ等を規
定した本発明のFe−Ni合金冷延板を製造する場合に
おいては、特に精錬工程、とりわけ脱酸工程で、Siや
Alの含有量、スラグの塩基度および不純物成分に配慮
して精錬する必要がある。本発明者らが脱酸工程に関し
種々の実験を行って検討したところ、まず、Alを脱酸
剤として用いた場合には、スピネルやアルミナ系介在物
が生成されることが判った。そして、これらはクラスタ
ー化して表面欠陥を招いたりエッチング性を阻害したり
することが判明した。
【0023】この問題点を根本的に解決するには、脱酸
剤としてSiまたはSi合金鉄を用いることが有効であ
る。ただし、Si系の脱酸剤によって生成するスラグの
塩基度(CaO/SiOの濃度比)やMgO、Al
等の不純物成分によっては、Alによる脱酸時と同
様にアルミナやスピネル介在物が生成する。そのメカニ
ズムは、次の通りである。まず、以下の反応によってス
ラグ中のMgOおよびAlが還元される。
【0024】 Si+2(MgO)=(SiO)+2Mg …(1) (Siがスラグ中のMgOを還元する反応) 3Si+2(Al)=3(SiO)+4Al …(2) (Siがスラグ中のAlを還元する反応)
【0025】還元されたMgおよびAlは、その濃度の
バランスによって、MgO・Alスピネルを生成
したりAlアルミナ介在物を生成したりする。こ
の反応に強く関わる因子は、スラグ中の塩基度、MgO
濃度、Al濃度および溶鋼中のSi濃度である。
以下、これら因子について検証する。
【0026】まず、スラグ中のMgOの量が多いと、上
記(1)式が右に進み、スピネルが生成しやすくなる。
MgOは、例えば、AOD(Argon Oxygen Decarburiza
tion)炉、VOD(Vacuum Oxygen Decarburization)
炉あるいは取鍋等の内張り煉瓦として用いられるMgO
系ドロマイト(MgO−CaO)から、溶損によって混
入する。また、MgOは、場合によっては溶損防止の目
的で積極的に添加される。そこで、精錬温度が必要以上
に上がらないようにするために、MgO濃度を20wt
%以下に制御することが好ましかった。
【0027】次に、スラグ中のAlは、石灰石、
蛍石あるいは珪砂といったフラックスに微量含まれてい
ること、そして、脱酸剤として用いるSiもしくはSi
合金鉄にAlとして含まれるものが酸化して混入するこ
とが判った。そこで、スラグ中のAl濃度を15
wt%以下に制御すれば、Alの混入量を有効に下げる
ことができることが判った。なお、フラックスやSiも
しくはSi合金鉄を添加するにあたっては、コストを著
しく上げない範囲で高純度のものを選択することが好ま
しい。
【0028】次に、本発明者らは、スラグの塩基度とS
i濃度の相関関係を調べたところ、図1に示すa,b,
c,dで囲まれる範囲にスラグの塩基度とSi濃度を制
御すれば、非金属介在物の生成が抑えられるとともに清
浄度が向上した高品質のFe−Ni合金冷延板を得られ
ることを見い出した。まず、Siに関しては、前述した
ようにSi濃度が高いほど熱膨張率はそれにつれて大き
くなる。また、スラグの塩基度が高いとアルミナやスピ
ネル介在物の生成率が高くなる一方、塩基度が低いと清
浄度が低下する。ここで、Siは、前述したように熱膨
張率の観点から0.001〜0.30wt%が適切であ
る。また、塩基度が1.2未満の場合には、Si濃度に
関わらず、「JIS G0555」による清浄度を0.
05以下とすることができなかった。また、スラグの塩
基度が図1のa(Si濃度:0.001,塩基度5),
b(Si濃度:0.3,塩基度3)の2点を結ぶ直線よ
りも高い範囲ではスラグ中のSiOの活量が下がり、
上記(1)式および(2)式がともに右に進行してアル
ミナやスピネル介在物が生成することが判った。
【0029】以上の結果から、本発明のFe−Ni合金
を得るための精錬方法は、溶解した原料の酸化精錬後、
SiまたはSi合金鉄を添加する脱酸工程において、生
成するスラグの塩基度(C/S)とSi濃度を、図1の
a,b,c,dで囲まれる範囲に制御することを特徴と
している。そして、本方法においては、スラグ中のAl
濃度を15wt%以下、かつ、MgO濃度を20
wt%以下に制御することを好ましい態様とする。
【0030】上記精錬方法を実施するにあたって用いら
れる原料は、例えば、精錬時に発生するスクラップにN
i等の他の元素を適宜に添加したものが適用され、この
原料は、通常の電気炉等で溶解される。酸化精錬工程で
は、前述のAODとVODの両方か、またはいずれか一
方の工程により、脱炭、脱りん、脱クロム等が行われ
る。その後の脱酸工程では、SiまたはSi合金鉄を添
加する前に、フラックスとして石灰石、蛍石、珪砂等を
添加することが好ましい。
【0031】ここで、Fe−Ni合金冷延板を製造する
にあたって冷延板の素材となる鋼塊の製造工程を説明す
る。鋼塊の製造工程は、主に表1(a),(b),
(c)に示すように、AOD工程、VOD工程およびA
OD→VOD工程の3通りに分けられる。
【0032】
【表1】
【0033】表1(a)に示すAOD工程は、原料を電
気炉で溶解して成分調整を行い、次いで、AODで脱
炭、除滓した後、フラックス添加、仕上げ脱酸、成分調
整を行う。続いて、取鍋精錬装置で成分および温度の微
調整を行い、次いで、連続鋳造機(CC)または普通造
塊で溶鋼を鋳造し、鋼塊を得る。
【0034】表1(b)に示すVOD工程は、原料を電
気炉で溶解して成分調整を行い、次いで、VODで脱炭
後、フラックス添加、仕上げ脱酸、ガス成分除去を行
う。続いて、取鍋精錬装置で成分および温度の微調整を
行い、次いで、連続鋳造機(CC)または普通造塊で溶
鋼を鋳造し、鋼塊を得る。
【0035】表1(c)に示すAOD→VOD工程は、
原料を電気炉で溶解して成分調整を行い、次いで、AO
Dで脱炭、除滓した後、フラックス添加、仕上げ脱酸、
成分調整を行う。続いて、取鍋精錬装置で成分および温
度の微調整を行い、次いで、VODでガス成分除去を行
う。この後、連続鋳造機(CC)または普通造塊で溶鋼
を鋳造し、鋼塊を得る。
【0036】
【実施例】次に、実施例を提示して本発明の効果をより
明らかにする。(1)冷延板の製造 表2に示す金属組成を有する実施例1〜9(本発明例は
実施例1,5,9)のFe−Ni合金冷延板(実施例8
はFe−36wt%Ni−0.2wt%Nb合金、Fe
−32wt%Ni−5wt%Co合金)と、本発明から
逸脱する比較例1〜9のFe−Ni合金冷延板とを、以
下のようにして製造した。これら冷延板は、実施例9以
外はFe−36wt%を基本組成とし、残部は不可避的
不純物である。
【0037】
【表2】
【0038】精錬時に発生するスクラップやNi等から
なる原料60tを電気炉で溶解しながら、Fe−36w
t%の組成に調整し、次いでこの溶鋼を、上記3種類の
工程(AOD工程、VOD工程、AOD→VOD工程)
のうちのいずれかの工程により酸化精錬(脱炭、脱り
ん、脱クロム等)を行った。続いて、AODあるいはV
ODにおいて、酸化期のスラグを除去し、石灰石、蛍石
および珪砂のうちの1種または2種以上をフラックスと
して添加し所定の塩基度に調整した。次に、Si合金鉄
を添加して溶鋼を脱酸し、取鍋精錬装置で微量成分調整
および温度制御を行った後、普通造塊に鋳造するか、ま
たは連続鋳造機によって鋳造した。この後、普通造塊の
場合は鍛造工程をはさんでから、鋳塊に熱間圧延を経て
冷間圧延を施し、0.25mm厚のFe−Ni合金の薄
板(冷延板)を得た。なお、表2には、精錬工程の種別
を併記している。
【0039】(2)調査および評価 実施例1〜9および比較例1〜9の冷延板につき、以下
の調査および評価を行った。それらの結果を、表3に示
す。
【表3】
【0040】A.非金属介在物の組成 EDS(エネルギー分散型分光分析装置)により、10
箇所ずつ定量分析して非金属介在物の組成を調査した。
【0041】B.清浄度 「JIS G0555」にしたがい、光学顕微鏡によっ
て圧延方向に平行な断面を400倍/60視野の条件で
測定した。
【0042】C.非金属介在物の個数 光学顕微鏡によって、100mmの断面に長さ10μ
mを超える非金属介在物がいくつ存在するかを数えた。
光学顕微鏡の倍数は400倍、断面は圧延方向に平行な
断面とした。
【0043】D.非金属介在物の最大長さ 光学顕微鏡によって、一連のB系の非金属介在物の最大
長さを測定した。光学顕微鏡の倍数は400倍、断面は
圧延方向に平行な断面とした。
【0044】E.スラグの塩基度および組成 蛍光X線分析装置により、精錬時に生成したスラグの組
成を調べるとともに、そのスラグの塩基度を求めた。な
お、図1で○は各実施例を、また、×は各比較例を示し
ている。
【0045】F.表面欠陥数 表面の任意の20m部分に傷等の表面欠陥がいくつ存
在するかを目視で観察した。
【0046】G.エッチング性 エッチングを施した後の表面に形成されるエッチング孔
の乱れを、真円度により評価した。真円度に優れる場合
を○、真円度に劣る場合を×と評価した。
【0047】表3から明らかなように、スラグ中のMg
O濃度が20wt%以下、Al 濃度が15wt%
以下で、なおかつスラグ塩基度とSi濃度が図1のa,
b,c,dで囲まれる範囲にあり、さらにAl濃度が
0.0001〜0.02wt%の各実施例の場合、いず
れも非金属介在物はシリケート系に制御され、表面欠陥
がなくエッチング性に優れた冷延板であった。
【0048】これに対し、比較例では、塩基度が高い場
合(比較例2,3,9)にはSiによる脱酸でもアルミ
ナやスピネル介在物が生成して表面欠陥を生じ、エッチ
ング性も劣っていた。逆に塩基度が1.2未満と低い場
合(比較例4,6,7)には非金属介在物はシリケート
系であるものの、清浄度が0.05を超え、さらに非金
属介在物の個数が多くなる。比較例5,8はAlによる
脱酸の結果であるが、いずれもスピネル介在物が生成さ
れ、表面欠陥が顕著に生じた。比較例1はSi濃度が
0.3wt%を超える0.35wt%であり、非金属介
在物に関しては問題なかったものの、熱膨張率が品質要
求を満足する範囲を外れており、実用的でなかった。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のFe−N
i合金冷延板によれば、含有元素および非金属介在物の
組成が適宜に規定されることから、優れたエッチング性
および表面性状を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】 スラグの塩基度とSi濃度の相関関係を示す
図である。
フロントページの続き (72)発明者 田中 秀毅 神奈川県川崎市川崎区小島町4番2号 日本冶金工業株式会社 川崎製造所内 (56)参考文献 特開 平11−315354(JP,A) 特開 平6−41687(JP,A) 特開 昭62−161936(JP,A) 特開 昭59−59861(JP,A) 特開 平11−269609(JP,A) 特開 平7−207415(JP,A) 特開 平9−118963(JP,A) 特開 昭63−231844(JP,A) 特開 昭61−179849(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Si:0.01〜0.03wt%、M
    n:0.001〜0.60wt%、Ni:20〜50w
    t%、Al:0.0001〜0.020wt%、残部は
    FeおよびC、P、S、Cu等の不可避的不純物からな
    り、 非金属介在物の組成が基本的にMnO−SiO−Al
    系で、かつ、MnOが5〜50wt%、SiO
    が30〜60wt%、Alが5〜30wt%であ
    り、さらに、その他の不可避的不純物として含まれるC
    aOおよびMgOが合計で30wt%以下であり、しか
    も、厚さ0.3mm以下に圧延した薄板における圧延方
    向に平行な断面の「JIS G0555」による清浄度
    が0.05以下であることを特徴とするFe−Ni合金
    冷延板。
  2. 【請求項2】 Nb:0.001〜2.0wt%を含有
    することを特徴とする請求項1に記載のFe−Ni合金
    冷延板。
  3. 【請求項3】 Co:1〜8wt%を含有することを特
    徴とする請求項1または2に記載のFe−Ni合金冷延
    板。
  4. 【請求項4】 前記非金属介在物の全てが、「JIS
    G0555」で分類されたB系およびC系に制御されて
    いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の
    Fe−Ni合金冷延板。
  5. 【請求項5】 長さ10μmを超える前記非金属介在物
    の100mm の断面に存在する個数が10個以下であ
    ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の
    e−Ni合金冷延板。
  6. 【請求項6】 前記B系の非金属介在物の一連の最大長
    さが300μm以下であることを特徴とする請求項4ま
    たは5に記載のFe−Ni合金冷延板。
JP2000400659A 2000-04-21 2000-12-28 Fe−Ni合金冷延板 Expired - Lifetime JP3422772B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000400659A JP3422772B2 (ja) 2000-04-21 2000-12-28 Fe−Ni合金冷延板

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000-121470 2000-04-21
JP2000121470 2000-04-21
JP2000400659A JP3422772B2 (ja) 2000-04-21 2000-12-28 Fe−Ni合金冷延板

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003017708A Division JP3881626B2 (ja) 2000-04-21 2003-01-27 Fe−Ni合金の精錬方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2002004006A JP2002004006A (ja) 2002-01-09
JP3422772B2 true JP3422772B2 (ja) 2003-06-30

Family

ID=26590586

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000400659A Expired - Lifetime JP3422772B2 (ja) 2000-04-21 2000-12-28 Fe−Ni合金冷延板

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3422772B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3927494B2 (ja) * 2000-11-21 2007-06-06 日本冶金工業株式会社 エッチング加工性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni合金材料
CN113897531B (zh) * 2021-09-08 2022-12-13 三鑫重工机械有限公司 一种利用vod法真空冶炼耐蚀不锈钢的工艺

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5959861A (ja) * 1982-09-29 1984-04-05 Toshiba Corp 管内部品
JPS61179849A (ja) * 1984-07-27 1986-08-12 Daido Steel Co Ltd リ−ドフレ−ム材料の製造法
JP2510154B2 (ja) * 1986-01-10 1996-06-26 川崎製鉄株式会社 Fe−Ni系合金冷延板とその製造方法
JP2523603B2 (ja) * 1987-03-19 1996-08-14 日立金属株式会社 高精細度シヤドウマスク
JP3251653B2 (ja) * 1992-07-24 2002-01-28 日新製鋼株式会社 表面性状に優れたFe−Ni合金板及びその製造方法
JP3151100B2 (ja) * 1994-01-14 2001-04-03 日鉱金属株式会社 Fe−Ni系合金シャドウマスク用素材
JPH09118963A (ja) * 1996-09-09 1997-05-06 Dainippon Printing Co Ltd 微細エッチング加工用素材
JPH11269609A (ja) * 1998-03-20 1999-10-05 Nkk Corp 電子部品用Fe−Ni系合金薄板
JP3247338B2 (ja) * 1998-04-30 2002-01-15 大平洋金属株式会社 高Ni合金とその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2002004006A (ja) 2002-01-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7776162B2 (en) Steels with few alumina clusters
JP3852419B2 (ja) 無方向性電磁鋼板
JP3422772B2 (ja) Fe−Ni合金冷延板
JP3687644B2 (ja) 無方向性電磁鋼板の製造方法
JP3422773B2 (ja) Fe−Ni合金の精錬方法
JP3881626B2 (ja) Fe−Ni合金の精錬方法
JP2003027188A (ja) シャド−マスク用インバ−合金とその製造法
JP3499349B2 (ja) 表面性状に優れたFe−Ni合金冷延板及びその製造方法
JP4299511B2 (ja) 打ち抜き性に優れた熱延鋼板
JP3790690B2 (ja) 高清浄シャドウマスク用Fe−Ni合金板およびその製造方法
JP3554283B2 (ja) 表面性状に優れたFe−Ni系合金およびその製造方法
JP3825570B2 (ja) 加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼鋳片およびその製造方法
JP3069482B2 (ja) めっき性およびパンチング性に優れるFe−Ni系合金冷延板
JP3322806B2 (ja) 鋼中の酸化物の微細分散法
JP3362077B2 (ja) 鉄損の低い無方向性電磁鋼板用溶鋼の溶製方法
JP6684081B2 (ja) Fe−Ni合金板材およびその製造方法
JP4354026B2 (ja) ステンレス鋼の製造方法
JP7158618B1 (ja) 耐酸化性に優れたオーステナイト系Fe-Ni-Cr合金およびその製造方法
JP2004169150A (ja) 耐リジング性に優れたTi含有高加工性フェライト系クロム鋼板およびその製造方法
JP3501004B2 (ja) エッチング穿孔性に優れたFe−Ni系合金板及びシャドウマスク
JP3677994B2 (ja) 清浄性に優れた缶用鋼板用の鋳片および缶用鋼板
JP2000273525A (ja) 高清浄度鋼の製造方法
JPS619554A (ja) 冷間圧延用鍛鋼ロ−ル
JP3840096B2 (ja) 耐錆性に優れた低熱膨張性シャドウマスク用Fe−Ni系合金の製造方法
JPS626605B2 (ja)

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 3422772

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090425

Year of fee payment: 6

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090425

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100425

Year of fee payment: 7

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110425

Year of fee payment: 8

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120425

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130425

Year of fee payment: 10

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130425

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140425

Year of fee payment: 11

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term