JP3790690B2 - 高清浄シャドウマスク用Fe−Ni合金板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シャドウマスクに用いられるFe−Ni合金板に係り、特に高清浄シャドウマスク用のFe−Ni合金板(熱延板)及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、Fe−Ni合金は、その特性からシャドウマスク、リードフレーム、磁性材料などとして用いられている。なかでも、Niを36mass%含有するFe−Ni合金は、その熱膨張率の低さからシャドウマスクやバイメタルとして使用されている。これらのFe−Ni合金は、2〜6mmの熱延板に熱間圧延された後、0.1〜1mmに冷間圧延され、エッチングが施されて、製品化される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このようなFe−Ni合金の製造においては、微量のAlの添加によって生成するMgO・Al2O3スピネル系介在物やAl2O3系介在物が問題となっていた。すなわち、これらの非金属介在物は、大型で延伸性に欠けるため、Fe−Ni合金の熱延板中に多量に存在すると、後で冷間圧延をされたときに表面欠陥となるからである。さらに、大型の非金属介在物が冷延板中に残存すると、エッチングの際に、エッチング孔の形状不良や、表面欠陥を引き起こす等の問題もあった。このため高清浄シャドウマスクに用いられるFe−Ni合金の熱延板においては、大型非金属介在物対策が大きな課題となっている。
【0004】
本発明の目的は、高清浄シャドウマスク用素材として好適な、延伸性に乏しい大型非金属介在物の含有量が少ない、Fe−Ni合金板およびその製造方法を提案することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、シャドウマスクに発生する欠陥は、延伸性に欠ける大型非金属介在物による影響が大きいことをつきとめ、その大型非金属介在物の生成を阻止するべく検討を行った。その結果、Fe−Ni合金の熱延板中にJIS G 0555において定義されたA系介在物(加工によって粘性変形したもの)、B系(加工方向に集団をなして不連続的に粒状の介在物が並んだもの)の非金属介在物を生成させると、これらの非金属介在物は、その後の冷間圧延で、分断・微細化され、エッチング処理には無害となることを知見した。
【0006】
そして、さらに検討を重ねた結果、発明者らは、Fe−Ni合金の熱延板中に存在する非金属介在物の形態をA系介在物、B系介在物とするためには、介在物の成分組成をも制御する必要があること、そして、該熱延板を製造するためには、Fe−Ni合金溶製時のスラグの成分組成を規制することが重要であることがわかった。
【0007】
さらに、高清浄のシャドウマスクを得るためには、熱延板中に存在する厚さ方向の寸法が5μm以上の大きさである大型非金属介在物の個数およびそれらの成分組成を規制することもまた重要であることがわかった。
【0008】
このような知見に基づいて開発した本発明の基本的な考え方は、
Ni:30〜45mass%、残部がFe及び不可避的不純物からなるFe−Ni合金板であって、熱延板の圧延方向に沿う厚み方向断面に現れる非金属介在物が、JIS G 0555に規定されるA系介在物および/またはB系介在物を主体とするものからなり、かつその量が70% 以上であることを特徴とする高清浄シャドウマスク用Fe−Ni合金板を提案することである。
【0009】
また、本発明は、Ni:30〜45mass%、Si:0.001〜0.045mass%、Mn:0.01〜0.6mass%、Al:0.005mass%以下、Ca:0.001mass%以下、Mg:0.001mass%以下、Cr:0.1mass%以下を含み、残部はFe及び不可避的不純物からなるFe−Ni合金板、または、さらに Nb : 0.01 〜 1.0mass %および/または Co : 1 〜 8mass %を含む Fe − Ni 合金板であって、熱延板の圧延方向に沿う厚み方向断面に現れる非金属介在物は、 MnO : 5 〜 45mass %、 SiO 2 : 10 〜 60mass %、 Al 2 O 3 : 50mass %以下、および、 CaO 、 MgO 、 Cr 2 O 3 , FeO および TiO 2 の合計量が 1 〜 50mass %の組成を有し、その形態が、JIS G 0555に規定されるA系介在物および/またはB系介在物を 70% 以上、残部 C 系介在物からなり、かつ熱延板厚み方向の寸法が 5 μ m 以上の大きさのものを、該熱延板の圧延方向に沿う厚み方向断面中に、 50 個/ 100mm 2 以下含むことを特徴とする高清浄シャドウマスク用Fe−Ni合金板である。
【0011】
本発明は、さらに、Niを30〜45mass%含有するFe−Ni合金溶湯を、AOD処理、VOD処理もしくはAOD−VOD処理のいずれかの方法で酸化精錬し、次いで、Si及びMnで脱酸すると共に、CaO/SiO2:1〜6、Al2O3:10mass%以下、MgO:20mass%以下のCaO−SiO2−MgO−Al2O3−F系スラグを用いて調整することにより、Ni:30〜45mass%、Si:0.001〜0.045mass%、Mn:0.01〜0.6mass%、Al:0.005mass%以下、Ca:0.001mass%以下、Mg:0.001mass%以下、Cr:0.1mass%以下を含み、残部はFe及び不可避的不純物からなるFe−Ni合金板、または、さらに Nb : 0.01 〜 1.0mass %および/または Co : 1 〜 8mass %を含む Fe − Ni合金を溶製し、その後、鋳造してスラブとし、次いで、このスラブを加熱炉中で1150〜1300℃に加熱・均熱後、熱間圧延することを特徴とする高清浄シャドウマスク用Fe−Ni合金板の製造方法を提案する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成の詳細について説明するが、まず、Fe−Ni合金の成分組成を限定した理由について説明する。
Ni:30〜45mass%
Niは、熱膨張率に大きく影響を及ぼす元素であり、200℃では36mass%付近で、500℃では42mass%付近で熱膨張率が極小となることが知られている。しかし、このNi含有量が30mass%未満になるか、または45mass%を超えると熱膨張率が大きくなり、要求特性に応えられなくなる。したがって、Niの含有量は30〜45mass%とする。
【0013】
Si:0.001〜0.045mass%
Siは、溶鋼の脱酸に必要な元素であると共に、介在物組成を、MnO−SiO2−Al2O3−CaO−MgO−Cr2O3−FeO−TiO2系非金属介在物に制御するために有効な元素である。このSiが0.001mass%未満では、介在物をMnO−SiO2−Al2O3−CaO−MgO−Cr2O3−FeO−TiO2系非金属介在物に制御できなくなり、熱延板内部の介在物の形態を、A系、B系に制御することが難しくなる。一方、0.045mass%を超えると、熱膨張率が大きくなり、本来の要求特性に応えられなくなる。そこで、本発明では、Siの含有量を0.001〜0.045mass%とする。
【0014】
Mn:0.01〜0.6mass%
Mnは、介在物組成を、MnO−SiO2−Al2O3−CaO−MgO−Cr2O3−FeO−TiO2系非金属介在物に制御するために有用な元素である。しかしながら、このMnは、熱膨張率を上げる元素でもあるから、この観点からは、低濃度であることが望まれる。すなわち、Mn含有量が、0.01mass%未満では介在物組成を、MnO−SiO2−Al2O3−CaO−MgO−Cr2O3−FeO−TiO2系非金属介在物に制御できず、逆に、0.6mass%を超えると熱膨張率が大きくなり、要求特性が満足できなくなる。そこで、本発明では、Mnの含有量を0.01〜0.6mass%とする。好ましくは、0.01〜0.4mass%の範囲とする。
【0015】
Al:0.005mass%以下
Alは、介在物組成を、MnO−SiO2−Al2O3−CaO−MgO−Cr2O3−FeO−TiO2系非金属介在物に制御するために有用な元素である。しかしながら、必要以上に添加するとアルミナ系介在物を生成して、クラスターをつくりやすいため、表面庇の原因となる。この疵は、Alが0.005mass%を超えると急激に発生し始める。また、微量のAlを的確に制御することは、精錬技術の面から非常に難しい。そこで、本発明ではAlの含有量を0.005mass%以下とする。より好ましくは、0.003mass%以下である。
【0016】
Ca:0.001mass%以下
Ca、は非金属介在物を、MnO−SiO2−Al2O3−CaO−MgO−Cr2O3−FeO−TiO2系非金属介在物に制御するために有用な元素である。しかし、このCaは、0.001mass%を超えると、介在物中のCaO濃度を上昇させ、耐食性、エッチング加工性に悪影響を与える。したがって、Caの添加は極力低減することが望ましい。このような観点から、Caの含有量は0.001mass%以下と規定する。好ましくは、0.0009mass%以下である。
【0017】
Mg:0.001mass%以下
Mgは、非金属介在物を、MnO−SiO2−Al2O3−CaO−MgO−Cr2O3−FeO−TiO2系非金属介在物に制御するために有用な元素である。しかし、このMgは0.001mass%を超えると、介在物が硬質のMgO・Al2O3スピネルあるいはMgO主体となるため、厚さ5μm以上の大型介在物として熱延板に残留する。そのため、エッチング時に孔形状不良を起こし、要求品質を満足できなくなる。このような観点から、Mgの含有量は0.001mass%以下とする。好ましくは、0.0009mass%以下である。
【0018】
Cr:0.1mass%以下
Crは、非金属介在物を、MnO−SiO2−Al2O3−CaO−MgO−Cr2O3−FeO−TiO2系非金属介在物に制御するために有用な元素である。しかし、このCrは熱膨張率を上げる元素であり、この観点からは、できるだけ低濃度であることが望まれる。このため、Crの含有量は0.1mass%以下と規定する。好ましくは、0.09mass%以下である。
【0019】
本発明のFe−Ni合金熱延板には、上記各成分の他に、必要に応じてさらに下記の成分を添加するのが好ましい。
Nb:0.01〜1.0mass%
Nbは、微量であれば熱膨張係数を下げる効果があり、また、0.01〜1.0mass%の範囲であればFe-Ni合金板の強度向上のためにも有効な元素である。しかし、1.0mass%を超えると逆に熱膨張係数が増大する。そのため、Nbを添加するときは、0.01〜1.0mass%とする。好ましくは、0.02〜0.5mass%の範囲とする。
【0020】
Co:1〜8mass%
Coは、Fe-Ni合金板の強度向上のために有用な元素であるが、熱膨張係数に影響を及ぼす元素でもある。とくに、このCoが1〜8mass%の範囲内で添加することが望ましく、もしこの範囲を外れると、熱膨張率が大きくなり、シャドウマスク用として適さなくなる。従って、Coの含有量は1〜8mass%と定める。
【0021】
次いで、本発明においては、熱延板中の非金属介在物を制御することが重要である。
本発明に係るFe−Ni合金の熱延板中に存在する非金属介在物は、少なくとも冷間圧延時には分断され、微細化される必要がある。そのためには、上記非金属介在物は、基本的に、MnO:5〜45mass%、SiO2:10〜60mass%、Al2O3:50mass%以下の組成からなり、さらに、CaO、MgO、Cr2O3、FeOおよびTiO2を合計量で1〜50mass%含有する組成としたMnO−SiO2−Al2O3−CaO−MgO−Cr2O3−FeO−TiO2系非金属介在物にすることが必要である。またその形態は、JIS G 0555に規定されるA系介在物および/またはB系介在物からなるものにて構成されたものであり、さらに、これらの一方もしくは両方のうち、板厚方向の寸法が5μm以上である大きさの非金属介在物については、圧延方向に沿う厚み方向断面において、50個/100mm2程度以下とすることが必要である。以下、その理由について詳述する。
【0022】
形態
Fe−Ni合金の熱延板中に存在する非金属介在物は、JIS G 0555に規定されるA系介在物および/またはB系介在物であれば、冷延板に圧延される際に分断され、非常に微細化される。写真1に、A系に制御された介在物を、写真2に、B系に制御された介在物をそれぞれ示す。非金属介在物が微細化されることで、エッチング時の孔形状を良好なものとすることができ、高清浄シャドウマスクの製造が可能となる。写真3に示すようなC系の大型介在物が熱延板中に残留した場合、このC系介在物は、その後の冷間圧延でも延伸されず、エッチング時に孔形状不良を引き起こす原因となるものである。従って、非金属介在物の形態は、JIS G 0555に規定されるA系介在物、B系介在物のいずれか一方または両方が大半を占めるように制御する必要がある。
【0023】
そのA系介在物およびB系介在物の量が70%以上、残部がC系介在物となるようにすることが望ましく、もしC系介在物の量が30%を超えると、延伸性の乏しい介在物の量が相対的に多くなり、エッチング時の孔形状不良が発生するので、A系・B系介在物の量は70%以上、好ましくは75%以上、さらに好ましくは85%以上とする。
【0024】
サイズ、個数
Fe−Ni合金の熱延板中に分散している前記A系・B系非金属介在物は、その中に、板厚方向の寸法で5μm以上の大きさのものを含む非金属介在物があまり多く残留すると、その後の冷間圧延において、5μm以下のものは微細化されるが、5μm以上のものは大型介在物としてそのまま冷延板中に残留する。C系非金属介在物においても、同様に板厚方向の寸法で5μm以上の大きさのものは、大型介在物としてそのまま冷延板中に残留する。このような残留大型介在物は、シャドウマスクを製造する際に行われるエッチング時に、孔形状不良を引き起こす。そして、このような大きさの非金属介在物が50個/100mm2を超える場合は、形状不良の孔が著しく多くなり、要求品質を満足することができなくなる。したがって、本発明においては、熱延板中に存在するA系・B系・C系非金属介在物のうち、厚み方向の寸法が5μm以上の大きさをもつ介在物の個数を50個/100mm2程度以下になるように規制することが好ましい。より好ましくは、30個/100mm2程度以下にすることが望ましい。
【0025】
組成
MnO:5〜45mass%
MnOは、5mass%未満あるいは45mass%を超えるような場合、非金属介在物を高融点・硬質化させて、延伸性が乏しくなり、望ましいA系および/またはB系の非金属介在物に制御することができなくなり、さらに、熱延板厚み方向の寸法が5μm以上である大きさの大型介在物が50個/100mm2を超えて発生するようになる。従って、MnOの含有量は5〜45mass%とする。
【0026】
SiO2:10〜60mass%
SiO2は、10mass%未満あるいは60mass%を超えるような場合、非金属介在物を高融点・硬質化させて、延伸性が乏しくなり、望ましいA系および/またはB系の非金属介在物に制御することができなくなり、さらに、熱延板厚み方向における寸法が、5μm以上の大きさである大型介在物が50個/100mm2を超えて発生するようになる。従って、SiO2の含有量は10〜60mass%とする。
【0027】
Al2O3:50mass%以下
Al2O3は、50mass%を超えるような場合、非金属介在物を高融点・硬質化させて、延伸性が乏しくなり、熱延板中において望ましい形態のA系および/またはB系介在物に制御することができなくなり、さらに、厚み方向の寸法が5μm以上の大きさをもつ大型介在物が50個/100mm2を超えて発生するようになる。従って、Al2O3は50mass%以下と定める。
【0028】
CaO,MgO,Cr2O3,FeOおよびTiO2の合計量が1〜50mass%
CaO、MgO、Cr2O3、FeOおよびTiO2の合計量が1mass%未満の場合、非金属介在物を高融点・硬質化させて、延伸性が乏しくなり、熱延板において望ましい形態のA系介在物および/またはB系介在物に制御することができなくなり、さらに、厚み方向の寸法が5μm以上の大きさをもつ大型介在物が50個/100mm2を超えて発生するようになる。一方、CaO、MgOが50mass%を超える場合は、これらの介在物が酸可溶性となり、エッチング特性を悪化させる。Cr2O3、TiO2が50mass%を超える場合は、非金属介在物を高融点・硬質化させて、延伸性が乏しくなり、厚み方向の大きさが5μm以上の大型介在物が50個/100mm2を超えて発生するようになる。FeOが50mass%を超えると、介在物が著しく多くなり、最終製品における清浄度劣化を引き起こす。従って、CaO、MgO、Cr2O3、FeOおよびTiO2の含有量の合計量を1〜50mass%と定めた。
【0029】
なお、厚み方向における大きさが5μmを超えるような大型非金属介在物は、熱延板断面の詳細な調査から、MgOを主成分とするマグネシア系介在物、Al2O3を主成分とするアルミナ系介在物、MgO:5〜45mass%、Al2O3:55〜95mass%の組成を有するMgO・Al2O3スピネル系介在物、もしくはMnO:5〜30mass%、MgO:10〜40mass%、SiO2:40〜60mass%の組成を有する(Mn、Mg)O・SiO2系介在物のうち1種または2種以上からなるものであることが判明している。これらの非金属介在物は、延伸性に欠ける硬質なものであることから、熱延板に多く含まれると、その後の冷間圧延で板厚が薄くなったときに欠陥の原因となる。ただし、本発明において、これらの大型介在物の組成は、上記のものだけに限定されるものではない。
【0030】
次に、高清浄シャドウマスク用Fe−Ni合金の熱延板を製造する方法について説明する。
Fe−Ni合金の溶製〜スラブ製造
Fe−Ni合金の溶製は、溶解には電気炉を用い、その後、AOD炉、VOD炉において、Niを30〜45mass%含有する合金溶湯を、Si及びMnを用いて脱酸処理を行う。この時に用いるスラグは、CaO/SiO2:1〜6、Al2O3:10mass%以下、MgO:20mass%以下のCaO−SiO2−MgO−Al2O3−F系スラグが適しており、該スラグを用いて所定の溶湯成分となるように調整を行う。その後、該合金溶湯を普通造塊に鋳造後、鍛造を行い、または溶湯を連続鋳造機により鋳造し、厚み100〜200mmのスラブを製造する。
【0031】
スラグのCaO/SiO2:1〜6
スラグにおけるCaO/SiO2比は、溶鋼成分ならびに非金属介在物の成分を制御するのに有用である。このCaO/SiO2比が、1未満もしくは6を超えると、溶鋼成分を本発明で定める範囲に制御することができなくなる。また、非金属介在物の成分も、CaO/SiO2比が1〜6を外れると、熱延板中の介在物の形態をA系介在物および/またはB系介在物に制御することができなくなり、厚み方向での大きさが5μm以上である大型介在物が50個/100mm2を超えて発生する。従って、スラグ成分はCaO/SiO2比を1〜6と定める。
【0032】
スラグのAl2O3:10mass%以下
スラグ中のAl2O3は、非金属介在物を、MnO−SiO2−Al2O3−CaO−MgO−Cr2O3−FeO−TiO2系非金属介在物に制御するために有用なスラグ成分である。しかし、Al2O3濃度が10mass%を超えると多量のアルミナ系介在物を生成する。このアルミナ系介在物は、クラスター化しやすいため、表面庇の原因ともなる。従って、スラグ中のAl2O3濃度は10mass%以下と定める。
【0033】
スラグのMgO:20mass%以下
スラグ中のMgOは、非金属介在物を、MnO−SiO2−Al2O3−CaO−MgO−Cr2O3−FeO−TiO2系非金属介在物に制御するために有用な成分である。しかし、MgO濃度が20mass%を超えると、MgO・Al2O3スピネル介在物やマグネシア介在物を生成する。これらの非金属介在物は、高融点・硬質であるため、表面庇の原因ともなる。従って、スラグ中のMgO濃度は20mass%以下と定める。
【0034】
熱延時の均熱温度:1150〜1300℃
製造されたFe−Ni合金スラブは、加熱炉において、1150〜1300℃に加熱・均熱後、熱間圧延される。均熱温度が1150℃未満では、非金属介在物の延伸性が乏しくなるため、A系介在物またはB系介在物のいずれか一方または両方に制御することができなくなる。また、1300℃を超えると、スラブが熱で変形して圧延を行うことができなくなる。従って、均熱温度は1150〜1300℃とする。
【0035】
【実施例】
以下に、実施例に基づき、本発明を具体的に説明する。
(1)熱延板の製造
表1に示した成分組成をもつFe−Ni合金の熱延板を、以下の条件で製造した。スクラップやNiなどからなる原料60tonを電気炉で溶解しながら、Fe−36mass%Ni、Fe−42mass%NiもしくはFe−32mass%Ni−5mass%Coの組成に調整し、次いでAOD処理、VOD処理、及びAOD−VOD処理のいずれかの処理により、酸化精錬(脱炭、脱燐、脱クロム等)を行った。続いて、AODあるいはVODにおいて、酸化期のスラグを除去し、石灰石、螢石、及び珪砂のうち1種、または2種以上をフラックスとして添加し、所定の塩基度に調整した。次に、Si合金鉄を添加して溶鋼を脱酸し、取鍋精錬装置で微量成分調整と温度調整を行った。その後、普通造塊に鋳造し鍛造するか、または連続鋳造機により鋳造してスラブとした。その後、加熱炉にて所定の温度に加熱・均熱し、熱間圧延を施し、5.5mm厚のFe−Ni合金熱延板を得た。表1には、用いたスラグ成分および熱延前のスラブ加熱温度も併記した。
【0036】
【表1】
【0037】
(2)調査及び評価
表1に示した発明例1〜8、及び比較例1〜6の熱延板について以下の調査を行った。
A.メタル組成の分析:蛍光X線分析により定量分析した。
B.スラグ組成の分析:蛍光X線分析により定量分析した。
C.板厚方向の大きさが5μm以上である非金属介在物個数の測定:Fe−Ni合金熱延板の圧延方向と平行な断面100mm2に渡って、板厚方向の寸法が5μmを超える非金属介在物の個数を光学顕微鏡により、200倍の視野で測定した。
D.非金属介在物の組成:EDS(エネルギー分散型分析装置)により、熱延板中の介在物を10箇所ずつ定量分析して非金属介在物の組成を特定した。
【0038】
(3)結果
表2に調査及び評価の結果を示した。
発明例1〜8の熱延板中に観察された非金属介在物は、MnO−SiO2−Al2O3−CaO−MgO−Cr2O3−FeO−TiO2系で、かつその成分組成は、MnO:5〜45mass%、SiO2:10〜60mass%、Al2O3:50mass%以下およびCaO、MgO、Cr2O3、FeOおよびTiO2の合計量が1〜50mass%であり、また、板厚方向の寸法が5μmを超える非金属介在物の個数は、100mm2当たりで50個以下となっている。そして、この熱延板をさらに0.12mmに冷問圧延し、シャドウマスクの素材に供したが、エッチングにおける孔形状不良や表面庇のない高清浄シャドウマスクの製造が可能であることがわかった。
一方、比較例1〜6の熱延板中に観察された非金属介在物は、本発明の成分組成の範囲を逸脱し、かつ、MgO、Al2O3、MgO・Al2O3、(Mg、Mn)O・SiO2からなる、板厚方向の寸法が5μmを超える大型非金属介在物の個数が100mm2当たり50個を超えていた。この熱延板を0.12mmに冷間圧延したところ、表面庇が多発した。さらに、その後のエッチング工程においても孔形状不良が発生し、品質の良い高清浄シャドウマスクを製造することはできなかった。
【0039】
【表2】
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るFe−Ni合金の熱延板によれば、鋼板中に存在する介在物の形状およびその組成を制限したので、表面品質、内部品質ともに良好な高清浄シャドウマスクを安定して製造することができる。また、本発明方法によれば、優れた表面特性を有する高清浄シャドウマスク用Fe−Ni合金板を、工業規模で安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 A系の非金属介在物の顕微鏡写真である。
【図2】 B系の非金属介在物の顕微鏡写真である。
【図3】 C系の非金属介在物の顕微鏡写真である。
Claims (4)
- Ni:30〜45mass%、Si:0.001〜0.045mass%、Mn:0.01〜0.6mass%、Al:0.005mass%以下、Ca:0.001mass%以下、Mg:0.001mass%以下、Cr:0.1mass%以下を含み、残部はFe及び不可避的不純物からなるFe−Ni合金板であって、熱延板の圧延方向に沿う厚み方向断面に現れる非金属介在物は、 MnO : 5 〜 45mass %、 SiO 2 : 10 〜 60mass %、 Al 2 O 3 : 50mass %以下、および、 CaO 、 MgO 、 Cr 2 O 3 , FeO および TiO 2 の合計量が 1 〜 50mass %の組成を有し、その形態が、JIS G 0555に規定されるA系介在物および/またはB系介在物を 70% 以上、残部 C 系介在物からなり、かつ熱延板厚み方向の寸法が 5 μ m 以上の大きさのものを、該熱延板の圧延方向に沿う厚み方向断面中に、 50 個/ 100mm 2 以下含むことを特徴とする高清浄シャドウマスク用Fe−Ni合金板。
- さらに、Nb:0.01〜1.0mass%を含むことを特徴とする請求項1に記載の高清浄シャドウマスク用Fe−Ni合金板。
- さらに、Co:1〜8mass%を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の高清浄シャドウマスク用Fe−Ni合金板。
- Niを30〜45mass%含有するFe−Ni合金溶湯を、AOD処理、VOD処理もしくはAOD−VOD処理のいずれかの方法で酸化精錬し、次いで、Si及びMnで脱酸すると共に、CaO/SiO2:1〜6、Al2O3:10mass%以下、MgO:20mass%以下のCaO−SiO2−MgO−Al2O3−F系スラグを用いて調整することにより、Ni : 30 〜 45mass %、 Si : 0.001 〜 0.045mass %、 Mn : 0.01 〜 0.6mass %、 Al : 0.005mass %以下、 Ca : 0.001mass %以下、 Mg : 0.001mass %以下、 Cr : 0.1mass %以下を含み、残部は Fe 及び不可避的不純物からなる Fe − Ni 合金板、または、さらに Nb : 0.01 〜 1.0mass %および/または Co : 1 〜 8mass %を含む Fe − Ni合金を溶製し、その後、鋳造してスラブとし、次いで、このスラブを加熱炉中で1150〜1300℃に加熱・均熱後、熱間圧延することを特徴とする高清浄シャドウマスク用Fe−Ni合金板の製造方法。
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