JP2003073779A - 高清浄シャドウマスク用Fe−Ni合金板およびその製造方法 - Google Patents
高清浄シャドウマスク用Fe−Ni合金板およびその製造方法Info
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Abstract
延伸性に乏しい大型の非金属介在物の含有量が少ないFe
−Ni合金の熱延板およびその製造方法を提案する。 【解決手段】 Fe−Ni合金の熱延板中に存在する非金属
介在物を、MnO:5〜45mass%、SiO2:10〜60mass%、Al
2O3:50mass%以下、さらに、CaO、MgO、Cr2O3、FeO,T
iO2の合計量が1〜50mass%の組成を有するMnO−SiO2−A
l2O3−CaO−MgO−Cr2O3−FeO−TiO2系とし、かつ、その
形態をA系介在物および/またはB系介在物とし、とく
に板厚方向の大きさが5μm以上である大型非金属介在物
は圧延方向に沿う板厚方向断面において50個/100mm2以
下とする。
Description
用いられるFe−Ni合金板に係り、特に高清浄シャドウマ
スク用のFe−Ni合金板(熱延板)及びその製造方法に関
するものである。
ドウマスク、リードフレーム、磁性材料などとして用い
られている。なかでも、Niを36mass%含有するFe−Ni合
金は、その熱膨張率の低さからシャドウマスクやバイメ
タルとして使用されている。これらのFe−Ni合金は、2
〜6mmの熱延板に熱間圧延された後、0.1〜1mmに冷間圧
延され、エッチングが施されて、製品化される。
Fe−Ni合金の製造においては、微量のAlの添加によって
生成するMgO・Al2O3スピネル系介在物やAl2O3系介在物が
問題となっていた。すなわち、これらの非金属介在物
は、大型で延伸性に欠けるため、Fe−Ni合金の熱延板中
に多量に存在すると、後で冷間圧延をされたときに表面
欠陥となるからである。さらに、大型の非金属介在物が
冷延板中に残存すると、エッチングの際に、エッチング
孔の形状不良や、表面欠陥を引き起こす等の問題もあっ
た。このため高清浄シャドウマスクに用いられるFe−Ni
合金の熱延板においては、大型非金属介在物対策が大き
な課題となっている。
素材として好適な、延伸性に乏しい大型非金属介在物の
含有量が少ない、Fe−Ni合金板およびその製造方法を提
案することにある。
スクに発生する欠陥は、延伸性に欠ける大型非金属介在
物による影響が大きいことをつきとめ、その大型非金属
介在物の生成を阻止するべく検討を行った。その結果、
Fe−Ni合金の熱延板中にJIS G 0555において定義された
A系介在物(加工によって粘性変形したもの)、B系
(加工方向に集団をなして不連続的に粒状の介在物が並
んだもの)の非金属介在物を生成させると、これらの非
金属介在物は、その後の冷間圧延で、分断・微細化さ
れ、エッチング処理には無害となることを知見した。
らは、Fe−Ni合金の熱延板中に存在する非金属介在物の
形態をA系介在物、B系介在物とするためには、介在物
の成分組成をも制御する必要があること、そして、該熱
延板を製造するためには、Fe−Ni合金溶製時のスラグの
成分組成を規制することが重要であることがわかった。
めには、熱延板中に存在する厚さ方向の寸法が5μm以上
の大きさである大型非金属介在物の個数およびそれらの
成分組成を規制することもまた重要であることがわかっ
た。
は、基本的に、Ni:30〜45mass%、残部がFe及び不可避
的不純物からなるFe−Ni合金板であって、熱延板の圧延
方向に沿う厚み方向断面に現れる非金属介在物が、JIS
G 0555に規定されるA系介在物および/またはB系介在
物を主体とするものからなり、かつその量が70%程度以
上であることを特徴とする高清浄シャドウマスク用Fe−
Ni合金板である。
0.001〜0.2mass%、Mn:0.01〜0.6mass%、Al:0.005ma
ss%以下、Ca:0.001mass%以下、Mg:0.001mass%以
下、Cr:0.1mass%以下を含み、必要に応じ、さらにN
b:0.01〜1.0mass%および/またはCo:1〜8mass%を含
み、残部はFe及び不可避的不純物からなるFe−Ni合金板
であって、熱延板の圧延方向に沿う厚み方向断面に現れ
る非金属介在物が、JIS G0555に規定されるA系介在物
および/またはB系介在物を主体とするものからなり、
かつその量が70%程度以上であることを特徴とする高清
浄シャドウマスク用Fe−Ni合金板である。
法が5μm以上の大きさである非金属介在物が、熱延板の
圧延方向に沿う厚み方向断面中に、50個/100mm2程度以
下の割合で含むことが好ましい。また、本発明は、上記
非金属介在物が、MnO:5〜45mass%、SiO2:10〜60mass
%、Al2O3:50mass%以下、および、CaO、MgO、Cr2O3、
FeOおよびTiO2の合計量が1〜50mass%の組成を有するこ
とが好ましい。さらに、本発明は、熱延板厚み方向の寸
法が5μm以上の大きさである非金属介在物が、MgO系介
在物、MgO・Al2O3系介在物、Al2O3系介在物、および、
(Mn、Mg)O・SiO2系介在物の1種または2種以上であ
ることが好ましい。
するFe−Ni合金溶湯を、Si及びMnで脱酸すると共に、Ca
O/SiO2:1〜6、Al2O3:10mass%以下、MgO:20mass%
以下のCaO−SiO2−MgO−Al2O3−F系スラグを用いて調
整することにより、上記成分を有する合金を溶製し、そ
の後、鋳造してスラブとし、次いでこのスラブを加熱炉
中で1150〜1300℃に加熱・均熱後、熱間圧延することを
特徴とする高清浄シャドウマスク用Fe−Ni合金板の製造
方法を提案する。
て説明するが、まず、Fe−Ni合金の成分組成を限定した
理由について説明する。 Ni:30〜45mass% Niは、熱膨張率に大きく影響を及ぼす元素であり、200
℃では36mass%付近で、500℃では42mass%付近で熱膨
張率が極小となることが知られている。しかし、このNi
含有量が30mass%未満になるか、または45mass%を超え
ると熱膨張率が大きくなり、要求特性に応えられなくな
る。したがって、Niの含有量は30〜45mass%とする。
成を、MnO−SiO2−Al2O3−CaO−MgO−Cr2O3−FeO−TiO2
系非金属介在物に制御するために有効な元素である。こ
のSiが0.001mass%未満では、介在物をMnO−SiO2−Al2O
3−CaO−MgO−Cr2O3−FeO−TiO2系非金属介在物に制御
できなくなり、熱延板内部の介在物の形態を、A系、B
系に制御することが難しくなる。一方、0.2mass%を超
えると、熱膨張率が大きくなり、本来の要求特性に応え
られなくなる。そこで、本発明では、Siの含有量を0.00
1〜0.2mass%とする。この範囲内で好ましくは、0.01〜
0.19mass%とすることが望ましい。
2O3−FeO−TiO2系非金属介在物に制御するために有用な
元素である。しかしながら、このMnは、熱膨張率を上げ
る元素でもあるから、この観点からは、低濃度であるこ
とが望まれる。すなわち、Mn含有量が、0.01mass%未満
では介在物組成を、MnO−SiO2−Al2O3−CaO−MgO−Cr2O
3−FeO−TiO2系非金属介在物に制御できず、逆に、0.6m
ass%を超えると熱膨張率が大きくなり、要求特性が満
足できなくなる。そこで、本発明では、Mnの含有量を0.
01〜0.6mass%とする。好ましくは、0.01〜0.4mass%の
範囲とする。
2O3−FeO−TiO2系非金属介在物に制御するために有用な
元素である。しかしながら、必要以上に添加するとアル
ミナ系介在物を生成して、クラスターをつくりやすいた
め、表面庇の原因となる。この疵は、Alが0.005mass%
を超えると急激に発生し始める。また、微量のAlを的確
に制御することは、精錬技術の面から非常に難しい。そ
こで、本発明ではAlの含有量を0.005mass%以下とす
る。より好ましくは、0.003mass%以下である。
Cr2O3−FeO−TiO2系非金属介在物に制御するために有用
な元素である。しかし、このCaは、0.001mass%を超え
ると、介在物中のCaO濃度を上昇させ、耐食性、エッチ
ング加工性に悪影響を与える。したがって、Caの添加は
極力低減することが望ましい。このような観点から、Ca
の含有量は0.001mass%以下と規定する。好ましくは、
0.0009mass%以下である。
Cr2O3−FeO−TiO2系非金属介在物に制御するために有用
な元素である。しかし、このMgは0.001mass%を超える
と、介在物が硬質のMgO・Al2O3スピネルあるいはMgO主
体となるため、厚さ5μm以上の大型介在物として熱延板
に残留する。そのため、エッチング時に孔形状不良を起
こし、要求品質を満足できなくなる。このような観点か
ら、Mgの含有量は0.001mass%以下とする。好ましく
は、0.0009mass%以下である。
Cr2O3−FeO−TiO2系非金属介在物に制御するために有用
な元素である。しかし、このCrは熱膨張率を上げる元素
であり、この観点からは、できるだけ低濃度であること
が望まれる。このため、Crの含有量は0.1mass%以下と
規定する。好ましくは、0.09mass%以下である。
分の他に、必要に応じてさらに下記の成分を添加するの
が好ましい。 Nb:0.01〜1.0mass% Nbは、微量であれば熱膨張係数を下げる効果があり、ま
た、0.01〜1.0mass%の範囲であればFe-Ni合金板の強度
向上のためにも有効な元素である。しかし、1.0mass%
を超えると逆に熱膨張係数が増大する。そのため、Nbを
添加するときは、0.01〜1.0mass%とする。好ましく
は、0.02〜0.5mass%の範囲とする。
るが、熱膨張係数に影響を及ぼす元素でもある。とく
に、このCoが1〜8mass%の範囲内で添加することが望ま
しく、もしこの範囲を外れると、熱膨張率が大きくな
り、シャドウマスク用として適さなくなる。従って、Co
の含有量は1〜8mass%と定める。
金属介在物を制御することが重要である。本発明に係る
Fe−Ni合金の熱延板中に存在する非金属介在物は、少な
くとも冷間圧延時には分断され、微細化される必要があ
る。そのためには、上記非金属介在物は、基本的に、Mn
O:5〜45mass%、SiO2:10〜60mass%、Al2O3:50mass
%以下の組成からなり、さらに、CaO、MgO、Cr2O3、FeO
およびTiO2を合計量で1〜50mass%含有する組成としたM
nO−SiO2−Al2O3−CaO−MgO−Cr2O3−FeO−TiO2系非金
属介在物にすることが必要である。またその形態は、JI
S G 0555に規定されるA系介在物および/またはB系介
在物からなるものにて構成されたものであり、さらに、
これらの一方もしくは両方のうち、板厚方向の寸法が5
μm以上である大きさの非金属介在物については、圧延
方向に沿う厚み方向断面において、50個/100mm2程度以
下とすることが必要である。以下、その理由について詳
述する。
G 0555に規定されるA系介在物および/またはB系介在
物であれば、冷延板に圧延される際に分断され、非常に
微細化される。写真1に、A系に制御された介在物を、
写真2に、B系に制御された介在物をそれぞれ示す。非
金属介在物が微細化されることで、エッチング時の孔形
状を良好なものとすることができ、高清浄シャドウマス
クの製造が可能となる。写真3に示すようなC系の大型
介在物が熱延板中に残留した場合、このC系介在物は、
その後の冷間圧延でも延伸されず、エッチング時に孔形
状不良を引き起こす原因となるものである。従って、非
金属介在物の形態は、JISG 0555に規定されるA系介在
物、B系介在物のいずれか一方または両方が大半を占め
るように制御する必要がある。
%以上、残部がC系介在物となるようにすることが望ま
しく、もしC系介在物の量が30%を超えると、延伸性の
乏しい介在物の量が相対的に多くなり、エッチング時の
孔形状不良が発生するので、A系・B系介在物の量は70
%以上、好ましくは75%以上、さらに好ましくは85%以上
とする。
金属介在物は、その中に、板厚方向の寸法で5μm以上の
大きさのものを含む非金属介在物があまり多く残留する
と、その後の冷間圧延において、5μm以下のものは微細
化されるが、5μm以上のものは大型介在物としてそのま
ま冷延板中に残留する。C系非金属介在物においても、
同様に板厚方向の寸法で5μm以上の大きさのものは、大
型介在物としてそのまま冷延板中に残留する。このよう
な残留大型介在物は、シャドウマスクを製造する際に行
われるエッチング時に、孔形状不良を引き起こす。そし
て、このような大きさの非金属介在物が50個/100mm2を
超える場合は、形状不良の孔が著しく多くなり、要求品
質を満足することができなくなる。したがって、本発明
においては、熱延板中に存在するA系・B系・C系非金
属介在物のうち、厚み方向の寸法が5μm以上の大きさを
もつ介在物の個数を50個/100mm2程度以下になるように
規制することが好ましい。より好ましくは、30個/100m
m2程度以下にすることが望ましい。
合、非金属介在物を高融点・硬質化させて、延伸性が乏
しくなり、望ましいA系および/またはB系の非金属介
在物に制御することができなくなり、さらに、熱延板厚
み方向の寸法が5μm以上である大きさの大型介在物が50
個/100mm2を超えて発生するようになる。従って、MnO
の含有量は5〜45mass%とする。
場合、非金属介在物を高融点・硬質化させて、延伸性が
乏しくなり、望ましいA系および/またはB系の非金属
介在物に制御することができなくなり、さらに、熱延板
厚み方向における寸法が、5μm以上の大きさである大型
介在物が50個/100mm2を超えて発生するようになる。従
って、SiO2の含有量は10〜60mass%とする。
を高融点・硬質化させて、延伸性が乏しくなり、熱延板
中において望ましい形態のA系および/またはB系介在
物に制御することができなくなり、さらに、厚み方向の
寸法が5μm以上の大きさをもつ大型介在物が50個/100m
m2を超えて発生するようになる。従って、Al2O3は50ma
ss%以下と定める。
が1〜50mass% CaO、MgO、Cr2O3、FeOおよびTiO2の合計量が1mass%未
満の場合、非金属介在物を高融点・硬質化させて、延伸
性が乏しくなり、熱延板において望ましい形態のA系介
在物および/またはB系介在物に制御することができな
くなり、さらに、厚み方向の寸法が5μm以上の大きさを
もつ大型介在物が50個/100mm2を超えて発生するように
なる。一方、CaO、MgOが50mass%を超える場合は、これ
らの介在物が酸可溶性となり、エッチング特性を悪化さ
せる。Cr2O3、TiO2が50mass%を超える場合は、非金属
介在物を高融点・硬質化させて、延伸性が乏しくなり、
厚み方向の大きさが5μm以上の大型介在物が50個/100m
m2を超えて発生するようになる。FeOが50mass%を超え
ると、介在物が著しく多くなり、最終製品における清浄
度劣化を引き起こす。従って、CaO、MgO、Cr2O3、FeOお
よびTiO2の含有量の合計量を1〜50mass%と定めた。
えるような大型非金属介在物は、熱延板断面の詳細な調
査から、MgOを主成分とするマグネシア系介在物、Al2O3
を主成分とするアルミナ系介在物、MgO:5〜45mass%、
Al2O3:55〜95mass%の組成を有するMgO・Al2O3スピネル
系介在物、もしくはMnO:5〜30mass%、MgO:10〜40mas
s%、SiO2:40〜60mass%の組成を有する(Mn、Mg)O・
SiO2系介在物のうち1種または2種以上からなるもので
あることが判明している。これらの非金属介在物は、延
伸性に欠ける硬質なものであることから、熱延板に多く
含まれると、その後の冷間圧延で板厚が薄くなったとき
に欠陥の原因となる。ただし、本発明において、これら
の大型介在物の組成は、上記のものだけに限定されるも
のではない。
の熱延板を製造する方法について説明する。 Fe−Ni合金の溶製〜スラブ製造 Fe−Ni合金の溶製は、溶解には電気炉を用い、その後、
AOD炉、VOD炉において、Niを30〜45mass%含有す
る合金溶湯を、Si及びMnを用いて脱酸処理を行う。この
時に用いるスラグは、CaO/SiO2:1〜6、Al2O3:10mass
%以下、MgO:20mass%以下のCaO−SiO2−MgO−Al2O3−
F系スラグが適しており、該スラグを用いて所定の溶湯
成分となるように調整を行う。その後、該合金溶湯を普
通造塊に鋳造後、鍛造を行い、または溶湯を連続鋳造機
により鋳造し、厚み100〜200mmのスラブを製造する。
属介在物の成分を制御するのに有用である。このCaO/S
iO2比が、1未満もしくは6を超えると、溶鋼成分を本発
明で定める範囲に制御することができなくなる。また、
非金属介在物の成分も、CaO/SiO2比が1〜6を外れる
と、熱延板中の介在物の形態をA系介在物および/また
はB系介在物に制御することができなくなり、厚み方向
での大きさが5μm以上である大型介在物が50個/100mm2
を超えて発生する。従って、スラグ成分はCaO/SiO2比
を1〜6と定める。
3−CaO−MgO−Cr2O3−FeO−TiO2系非金属介在物に制御
するために有用なスラグ成分である。しかし、Al2O3濃
度が10mass%を超えると多量のアルミナ系介在物を生成
する。このアルミナ系介在物は、クラスター化しやすい
ため、表面庇の原因ともなる。従って、スラグ中のAl2O
3濃度は10mass%以下と定める。
−CaO−MgO−Cr2O3−FeO−TiO2系非金属介在物に制御す
るために有用な成分である。しかし、MgO濃度が20mass
%を超えると、MgO・Al2O3スピネル介在物やマグネシア
介在物を生成する。これらの非金属介在物は、高融点・
硬質であるため、表面庇の原因ともなる。従って、スラ
グ中のMgO濃度は20mass%以下と定める。
〜1300℃に加熱・均熱後、熱間圧延される。均熱温度が
1150℃未満では、非金属介在物の延伸性が乏しくなるた
め、A系介在物またはB系介在物のいずれか一方または
両方に制御することができなくなる。また、1300℃を超
えると、スラブが熱で変形して圧延を行うことができな
くなる。従って、均熱温度は1150〜1300℃とする。
説明する。 (1)熱延板の製造 表1に示した成分組成をもつFe−Ni合金の熱延板を、以
下の条件で製造した。スクラップやNiなどからなる原料
60tonを電気炉で溶解しながら、Fe−36mass%Ni、Fe−4
2mass%NiもしくはFe−32mass%Ni−5mass%Coの組成に
調整し、次いでAOD処理、VOD処理、及びAOD−
VOD処理のいずれかの処理により、酸化精錬(脱炭、
脱燐、脱クロム等)を行った。続いて、AODあるいは
VODにおいて、酸化期のスラグを除去し、石灰石、螢
石、及び珪砂のうち1種、または2種以上をフラックス
として添加し、所定の塩基度に調整した。次に、Si合金
鉄を添加して溶鋼を脱酸し、取鍋精錬装置で微量成分調
整と温度調整を行った。その後、普通造塊に鋳造し鍛造
するか、または連続鋳造機により鋳造してスラブとし
た。その後、加熱炉にて所定の温度に加熱・均熱し、熱
間圧延を施し、5.5mm厚のFe−Ni合金熱延板を得た。表
1には、用いたスラグ成分および熱延前のスラブ加熱温
度も併記した。
について以下の調査を行った。 A.メタル組成の分析:蛍光X線分析により定量分析し
た。 B.スラグ組成の分析:蛍光X線分析により定量分析し
た。 C.板厚方向の大きさが5μm以上である非金属介在物個
数の測定:Fe−Ni合金熱延板の圧延方向と平行な断面10
0mm2に渡って、板厚方向の寸法が5μmを超える非金属介
在物の個数を光学顕微鏡により、200倍の視野で測定し
た。 D.非金属介在物の組成:EDS(エネルギー分散型分
析装置)により、熱延板中の介在物を10箇所ずつ定量分
析して非金属介在物の組成を特定した。
延板中に観察された非金属介在物は、MnO−SiO2−Al2O3
−CaO−MgO−Cr2O3−FeO−TiO2系で、かつその成分組成
は、MnO:5〜45mass%、SiO2:10〜60mass%、Al2O3:5
0mass%以下およびCaO、MgO、Cr2O3、FeOおよびTiO2の
合計量が1〜50mass%であり、また、板厚方向の寸法が5
μmを超える非金属介在物の個数は、100mm2当たりで50
個以下となっている。そして、この熱延板をさらに0.12
mmに冷問圧延し、シャドウマスクの素材に供したが、エ
ッチングにおける孔形状不良や表面庇のない高清浄シャ
ドウマスクの製造が可能であることがわかった。一方、
比較例1〜6の熱延板中に観察された非金属介在物は、
本発明の成分組成の範囲を逸脱し、かつ、MgO、Al2O3、
MgO・Al2O3、(Mg、Mn)O・SiO2からなる、板厚方向の寸
法が5μmを超える大型非金属介在物の個数が100mm2当た
り50個を超えていた。この熱延板を0.12mmに冷間圧延し
たところ、表面庇が多発した。さらに、その後のエッチ
ング工程においても孔形状不良が発生し、品質の良い高
清浄シャドウマスクを製造することはできなかった。
Ni合金の熱延板によれば、鋼板中に存在する介在物の形
状およびその組成を制限したので、表面品質、内部品質
ともに良好な高清浄シャドウマスクを安定して製造する
ことができる。また、本発明方法によれば、優れた表面
特性を有する高清浄シャドウマスク用Fe−Ni合金板を、
工業規模で安価に製造することができる。
Claims (8)
- 【請求項1】Ni:30〜45mass%、残部がFe及び不可避的
不純物からなるFe−Ni合金板であって、熱延板の圧延方
向に沿う厚み方向断面に現れる非金属介在物が、JIS G
0555に規定されるA系介在物および/またはB系介在物
を主体とするものからなり、かつその量が70%程度以上
であることを特徴とする高清浄シャドウマスク用Fe−Ni
合金板。 - 【請求項2】Ni:30〜45mass%、Si:0.001〜0.2mass
%、Mn:0.01〜0.6mass%、Al:0.005mass%以下、Ca:
0.001mass%以下、Mg:0.001mass%以下、Cr:0.1mass
%以下を含み、残部はFe及び不可避的不純物からなるFe
−Ni合金板であって、熱延板の圧延方向に沿う厚み方向
断面に現れる非金属介在物が、JIS G 0555に規定される
A系介在物および/またはB系介在物を主体とするもの
からなり、かつその量が70%程度以上であることを特徴
とする高清浄シャドウマスク用Fe−Ni合金板。 - 【請求項3】さらに、Nb:0.01〜1.0mass%を含むこと
を特徴とする請求項1または2に記載の高清浄シャドウ
マスク用Fe−Ni合金板。 - 【請求項4】さらに、Co:1〜8mass%を含むことを特徴
とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高清浄シャ
ドウマスク用Fe−Ni合金板。 - 【請求項5】熱延板の厚み方向の寸法が5μm以上の大き
さである非金属介在物が、熱延板の圧延方向に沿う厚み
方向断面中に、50個/100mm2程度以下の割合であること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高清
浄シャドウマスク用Fe−Ni合金板。 - 【請求項6】上記非金属介在物は、MnO:5〜45mass%、
SiO2:10〜60mass%、Al2O3:50mass%以下、および、C
aO、MgO、Cr2O3,FeOおよびTiO2の合計量が1〜50mass%
の組成を有するものであることを特徴とする請求項1〜
5のいずれか1項に記載の高清浄シャドウマスク用Fe−
Ni合金板。 - 【請求項7】熱延板厚み方向の寸法が5μm以上の大きさ
である非金属介在物は、MgO系介在物、MgO・Al2O3系介
在物、Al2O3系介在物、および(Mn、Mg)O・SiO2系介在
物の1種または2種以上であることを特徴とする請求項
1〜6のいずれか1項に記載の高清浄シャドウマスク用
Fe−Ni合金板。 - 【請求項8】Niを30〜45mass%含有するFe−Ni合金溶湯
を、Si及びMnで脱酸すると共に、CaO/SiO2:1〜6、Al2
O3:10mass%以下、MgO:20mass%以下のCaO−SiO2−Mg
O−Al2O3−F系スラグを用いて調整することにより、請
求項1〜4のいずれか1つに記載の成分を有する合金を
溶製し、その後、鋳造してスラブとし、次いで、このス
ラブを加熱炉中で1150〜1300℃に加熱・均熱後、熱間圧
延することを特徴とする高清浄シャドウマスク用Fe−Ni
合金板の製造方法。
Priority Applications (1)
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