JP2008114288A - ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】スラブ段階での所定の面積中に存在する最大非金属介在物の大きさを、迅速かつ簡便に特定することにより、非金属介在物に関する品質が保証されたステンレス鋼板を製造すること。
【解決手段】Cr:5〜30wt%、Ni:30wt%以下、Si:0.1〜3wt%、Mn:0.3〜3wt%、Al:0.0001〜0.01wt%、Ca:0.00001〜0.002wt%、Mg:0.00001〜0.002wt%、O:0.001〜0.007wt%を含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなる鋼スラブを、熱間圧延または、熱間および冷間圧延して、ステンレス鋼板を製造する方法において、
圧延後の鋼板の圧延方向に対して直角ないしほぼ直角に切断した断面の一部を検査基準面積とし、その検査基準面積内にあるMnO:1〜45wt%、CaO:1〜45wt%、SiO2:10〜60wt%、Al2O3:5〜50wt%、MgO:0.5〜30wt%、Cr2O3:0.2〜10wt%、FeO:0.2〜10wt%の成分組成を有する非金属介在物の幅方向長さを顕微鏡観察し、その観察により得られた該非金属介在物の最大幅方向長さから、この鋼板のスラブ段階における最大非金属介在物の大きさ√areamaxが300μm以下としてなる鋼スラブを、用いるステンレス鋼板の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ステンレス鋼板の表面品質の低下をもたらす非金属介在物のうち、スラブ段階での最大非金属介在物の大きさを圧延後の鋼板にしたあとで特定する方法によってスラブ段階における最大非金属介在物の大きさが特定されたステンレス鋼板の製造方法に関する。
近年、鋼板に対して表面品質や内部品質の高いものが求められている。例えば、注射針として用いられるステンレス鋼板は、0.3mm程度にまで冷間圧延されて製品となり、また、ハードディスク用のサスペンションや、ガンパーツ等の電子材料として用いられるステンレス鋼板は、打ち抜き加工やエッチング加工等を経て製品になる。しかし、これらの加工段階において、前記鋼板中にもし大きな非金属介在物など含まれていると、圧延の際に鋼板表面に疵が発生したり、また、加工の作業性を悪化させるという問題点があった。このため、従来、鋼スラブの成分組成を調整するなどして、非金属介在物の含有量そのものを少なくしたり、そのうちの大型のものの含有量を少なくするなどして、上記問題に対処してきた。
しかし、このような対処法では、ステンレス鋼板中の大型非金属介在物の生成を抑えることはできるものの、その含有量や大きさを具体的に特定し、これを評価することまではできない。通常、ステンレス鋼板中に大型の非金属介在物が含まれていたとしても、該鋼板を製品にまで仕上げたのちに表面品質の劣る製品、即ち、大型非金属介在物含有ステンレス鋼板であったということが、後で判明するにとどまり、製品不良の発生をどうしても阻止できないという問題があった。
そこで、従来、上述した圧延板中に存在する非金属介在物を評価する方法として、たとえば、JISによる清浄度の評価方法(JIS G 0555)があった。しかし、この評価方法は、非金属介在物含有の割合を表すものであって、その大きさまで評価するものではなかった。
その他、鋼スラブ等の金属材料から酸溶解により非金属介在物を抽出し、その粒径を顕微鏡で評価する方法や、EB法により鋼等の金属材料を溶解し、浮上した非金属介在物を顕微鏡により観察する方法も提案されている(特許文献1、特許文献2)。しかし、これらの方法は、介在物が酸で溶解したり、介在物自身が溶解、凝集したりするという問題を抱えており、また、酸溶解にも時間がかかるため、製品の量産工程に対応することが困難であるという問題があった。
さらに、非金属介在物の評価方法としては、例えば、特許文献3のEB法や、特許文献4の電気分解による抽出残渣の測定が知られている。特許文献3に記載の方法では、鋼スラブ等の金属材料から試験片を取り出し、その表面に非金属介在物を浮上させるために電子ビームを照射して試料片を溶解する必要があるとともに、大型の装置が必要になるという問題点があった。また、特許文献4に記載の方法では、鋼スラブ等の金属材料から試験片を取り出し、その試験片を電気分解し、残渣を水簸した後、磁気選別して非金属介在物を分離する必要があるため試験手順が複雑であるという問題点があった。
特開平9−125199号公報 特開平9−125200号公報 特開2003−65980号公報 特開2001−159627号公報
そこで、本発明の目的は、ステンレス鋼スラブ中に存在する最大非金属介在物の大きさを、最終製品とする前の圧延後の板を観察することにより迅速かつ簡便に特定することにより、非金属介在物に関しての製品品質が保証されたステンレス鋼板を有利に製造するための方法を提案することにある。
従来技術が抱えている上述した問題点に鑑み、それの克服を目標として鋭意研究を行った結果、発明者らは、Cr:5〜30wt%、Ni:30wt%以下、Si:0.1〜3wt%、Mn:0.3〜3wt%、Al:0.0001〜0.01wt%、Ca:0.00001〜0.002wt%、Mg:0.00001〜0.002wt%、O:0.001〜0.007wt%を含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなる鋼スラブを、熱間圧延または、熱間および冷間圧延して、ステンレス鋼板を製造する方法において、圧延後の鋼板の圧延方向に対して直角ないしほぼ直角に切断した断面の一部を検査基準面積とし、その検査基準面積内にあるMnO:1〜45wt%、CaO:1〜45wt%、SiO2:10〜60wt%、Al2O3:5〜50wt%、MgO:0.5〜30wt%、Cr2O3:0.2〜10wt%、FeO:0.2〜10wt%の成分組成を有する非金属介在物の幅方向長さを顕微鏡観察し、その観察によって得られる該非金属介在物の最大幅方向長さから、この鋼板のスラブ段階における最大非金属介在物の大きさ√areamaxが300μm以下としてなる鋼スラブを、用いて製造することを特徴とするステンレス鋼板の製造方法に想到した。
そして、本発明は、圧延後の鋼板を顕微鏡観察することによりスラブ段階における非金属介在物の大きさを推定するに当たり、圧延方向に対して直角ないしほぼ直角に切断された断面の任意の一検査基準面積S0内にある最大非金属介在物の幅方向長さ(L)を測定し、この幅方向長さ(L)が、該検査基準面積S0に対応するスラブ段階の面積S0 内に存在する最大非金属介在物の直径と等しいものとして、下記(1)式よりスラブ内に存在していた最大非金属介在物面積の√areaを算出するという手順を、上記切断面の複数箇所(n)において繰り返し、算出されたn個の√areaを昇順に並べ替え、下記(2)式よりj番目にあたる上記√areaに対応する第一基準化変数(昇順)yを求め、この第一基準化変数(昇順)yと該√areaとで極値統計による処理を行うことにより、下記(3)式に示す平均基準化変数yを求め、次いで、最大非金属介在物の粒径を推定する面積Sと前記検査基準面に対応するスラブ時の面積S0 とから、下記(4)式より再帰期間Tを算出し、次いで、この再帰期間Tと下記(5)式とから第二基準化変数(面積比)ymaxを算出し、この第二基準化変数(面積比)ymaxと下記(3)式とから鋼スラブ中の最大非金属介在物の断面積の平方根√areamaxを算出し、この√areamaxを鋼スラブ中にある最大非金属介在物の大きさとすることを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼板の製造方法をより好ましい解決手段とする。

√area=√π(L/2)2 (1)
=-ln[-ln{j/(n+1)}] (j=1〜n) (2)
y=a√area+b (3)
T=(S+S0 )/S0 (4)
max=-ln[-ln{(T-1)/T}] (5)
ただし、
n:検査個数
:第一基準化変数(昇順)
y:平均基準化変数
a:再帰係数
b:定数
S:最大非金属介在物の大きさを推定する面積
0 :検査基準面S0に対応する鋼スラブ時の面積
T:再帰期間
max:第二基準化変数(面積比)
本発明は、MgO・Al2O3介在物を非金属介在物全体の50体積%以下含むことが好ましい。
本発明によれば、ステンレス鋼圧延板の断面を観察することにより、かつ極値統計処理を行うことによって、圧延板からその板の上流工程に当るスラブ段階における最大非金属介在物の大きさを迅速かつ簡便に特定することができるとともに、その特定された最大非金属介在物の大きさに基づき、該ステンレス鋼板を製品用途に応じて適格に仕分けることができるようになる。また、本発明にかかるステンレス鋼板は、その品質履歴が明らかとなるため、高精度の加工性が要求される製品に使用しても不良品の発生をなくすことができる。
ステンレス鋼スラブ(以下、単に「鋼スラブ」と略記して言う)は、一般に100〜300mmの厚みを有するので、このスラブ中にある非金属介在物の状態を顕微鏡観察しようとすると、その観察面積はかなり大きなものとなる。そして、その観察に要する時間も多大なものとなる。そこで、本発明では、その観察面積を小さくすると同時に、観察時間を短縮するために、そのスラブを熱間圧延するか、または熱間および冷間圧延された鋼板とした後の圧延板の断面を顕微鏡観察することにした。なお、鋼板の圧下率は、90.00〜99.83%程度とすることが好ましい。その理由は、圧下率が90.00%よりも小さいと、板厚が厚くなり、厚み方向の全断面を観察するのに多大な時間を要してしまうからである。一方、圧下率が99.83%よりも大きいと、非金属介在物が圧延方向に対して広範囲に分散されてしまうため、観察する断面によっては非金属介在物が検出されないおそれがあるからである。
一般に、鋼スラブを熱間圧延、または熱間および冷間圧延によって圧延する過程においては、鋼板中の非金属介在物は、該スラブとともに延伸される。しかし、非金属介在物は、圧延方向に対しては延伸されるものの、圧延方向に対して直角の方向ないしはほぼ直角方向にはほとんど延伸されることはない。従って、該スラブ中の非金属介在物の粒径は、延伸された鋼板中の非金属介在物の圧延方向に対して直角ないしはほぼ直角方向の長さとほぼ一致し、圧延鋼板断面に現れる幅方向(圧延方向に直交する面)の非金属介在物の大きさ、とくに最大長さは、そのままスラブ中にある非金属介在物粒子の最大粒径と考えることができる。
なお、観察する断面の圧延方向に対する角度は、直角ないしはほぼ直角とするが、具体的には80〜90°、好ましくは85〜90°の角度である。その理由は、非金属介在物を顕微鏡観察する断面として、圧延方向に対して80°よりも小さな角度で切断された断面を採用すると、非金属介在物を斜め方向に切断することになってしまうため、測定されるその介在物の幅は、本来の値より大きな値となるからである。
本発明において、鋼スラグ中の非金属介在物の大きさを特定する方法は、鋼板中の最大非金属介在物の幅方向長さの顕微鏡観察(手順1)、極値統計処理による再帰直線y=a√area+bの導出(手順2)および鋼スラブ段階での最大非金属介在物の大きさの推定(手順3)という三段階を経る。
手順1においては、まず、鋼スラブを熱間圧延、または熱間および冷間圧延して得た鋼板の圧延方向に対して直角ないしはほぼ直角の断面に、図1(a)に示すような検査基準面積S0を定める。検査基準面積S0は、図1(a)に示すように、鋼板の幅方向の一部分に設けた長さaおよび板厚に相当する長さbにより囲まれる部分(面積)のことである。顕微鏡観察は、この検査基準面積S0を1つの単位として行う。また、検査基準面積S0の幅方向の長さaは、10〜40mmの範囲内とすることが好ましい。その理由は、40mmよりも大きいと、観察面積が大きくなり迅速な検査が困難となるからである。一方、10mmよりも小さいと、非金属介在物の検出感度が低下してしまうからである。なお、該鋼板の板厚bは、上記圧下率より算出される値0.17〜30mmであることが好ましい。より好ましくは、0.5〜10mmである。
そして、この検査基準面積S0内を顕微鏡観察し、非金属介在物のうちで最も大きな幅方向長さ(L)を有するものを探す。そして、得られた最大非金属介在物の幅方向長さ(L)を、該検査基準面積S0に対応する鋼スラブ時の面積S0 において球状にて存在する最大非金属介在物の直径とみなし、(1)式より該鋼スラブ中の最大非金属介在物の面積の平方根√areaを求める。
√area=√π(L/2)2 (1)
検査基準面S0に対応する鋼スラブ時の面積S0 *は、図1(b)に示すように、その幅方向の長さaは検査基準面積S0と等しく保ったまま、その厚み方向の長さが鋼スラブの厚さに相当するb’(>b)と等しくなったものである。
以上の作業を、図1(a)に示すように、該鋼板の厚み方向の断面中の異なるn部位に、その幅方向の長さaが全て等しくなるように設定された検査基準面S0において繰り返す。
検査個所数nは、10〜20個所が好ましい。その理由は、この範囲であれば、顕微鏡観察による測定作業の負担もそれほど大きなものとはならず迅速に測定を行うことができ、また統計的にも信頼できる推測資料を得ることができるからである。より好ましくは、15個所である。また、検査個所は、鋼板の圧延方向に対して直角方向の断面の中央付近から選ぶことが好ましい。その理由は、統計的にも信頼できる最大非金属介在物の大きさの推測試料を得るためである。
手順2においては、まず、手順1で得られたn個の√areaを昇順に並べ替える。そして、j番目にあたる√areaに対応する第一基準化変数(昇順)yを、(2)式より求める。
=-ln[-ln{j/(n+1)}] (j=1〜n) (2)
最後に、この第一基準化変数(昇順)yで極値統計による処理を行うことにより下記(3)式を導出する。
y=a√area+b (3)
手順3は、具体的には、√areamaxを求めることである。まず、検査基準面積S0に対応する鋼スラブ時の面積S0 *と最大非金属介在物の大きさを推定する面積Sと下記(4)式より再帰期間Tを算出する。
T=(S+S0 )/S0 (4)
なお、最大非金属介在物の大きさを推定する面積Sは、図1(b)において網がけを施した鋼スラブの厚み方向の断面全体の面積のことである。なお、最大非金属介在物の大きさを推定する面積Sは、S=325,000mm2程度とすることが望ましい。その理由は、この面積は、おおよそ1mm厚の薄板にて、約100mの表面にあたり、この領域であれば充分な評価となり得るからである。
次に、この再帰期間Tと下記(5)式より第二基準化変数(面積比)ymaxを算出する。
max=-ln[-ln{(T-1)/T}] (5)
最後に、この第二基準化変数(面積比)ymaxと上記(3)式より√areaを算出し、これを√areamaxする。そして、この√areamaxは、鋼板の表面品質を評価する指標となるものであって、鋼スラブ中にある最大非金属介在物の大きさを示す数値である。
本発明において、この鋼スラブ中の最大非金属介在物の断面積の平方根√areamaxは、とくに、最も品質要求の厳しい電子材料ステンレス鋼板や医療器具用ステンレス鋼板の場合などでは、300μm以下とすることが好ましい。その理由は、300μm超の鋼板では、熱間圧延、または熱間および冷間圧延によって圧延することにより、非金属介在物に起因する表面欠陥が多数発生してしまい、良好な表面品質を確保できなくなり、上掲の用途用鋼板として相応しくないからである。なお、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは150μm以下である。
以下、本発明にかかるステンレス鋼板の代表的な製造方法を説明するが、本発明は以下に例示の方法のみに限定されるものではない。
まず、電気炉において原料を溶解し、その後、AODおよび/またはVODにおいて、酸素を吹精し、脱炭する。その原料としては、鉄屑、ステンレス屑、FeCr、FeNi等を使用する。その後、スラグ中に移行したCrを、FeSiおよび/または金属Siにより還元し、さらに脱酸、脱硫を行う。このとき、石灰石、螢石のいずれかまたは一方を投入することにより、生成したシリカとともに、CaO-SiO2系のスラグとする。AODあるいはVODの耐火物には、マグネシア含有れんが(マグクロ、ドロマイト、マグネシアカーボン)を用いるため、スラグは、CaO-SiO2-MgO系のものとなる。耐火物保護の目的で、MgO含有耐火物屑を添加してもよい。以下に、本発明で用いる上記ステンレス鋼板の成分組成について説明する。
Cr:5〜30wt%
Crは、耐食性を保つため、かつ必要な不動態皮膜をステンレス鋼板の表面に形成するために必要不可欠な元素である。Crの存在により、耐酸性、耐孔食性、対隙間腐食性ならびに対応力腐食割れ性が改善される。したがって、母材の構成成分としては、最も重要な元素である。なお、Crの含有量が5wt%未満だと、耐食性が十分ではなくなる。一方、Crの含有量が30wt%超だと、シグマ相を生成しステンレス鋼板の脆化を招く。このような理由から、Cr含有量は、5〜30wt%が好適である。好ましくは、6〜28wt%であり、より好ましくは、6〜25wt%である。
Ni:30wt%以下
Niは、塩化物を含む溶液環境にて、耐孔食性、耐隙間腐食性、耐応力割れ性を改善するとともに、組織をオーステナイトにする効果を持つ。本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼ともに効果を発揮するため、Ni含有量は30%以下と規定した。なお、好ましくは28wt%以下、より好ましくは25wt%である。
Si:0.1〜3wt%
Siは、耐酸性ならびに耐孔食性に有効に作用するばかりか、脱酸にも有効な元素である。さらに、介在物組成を、MnO-CaO-SiO2-Al2O3-MgO-Cr2O3-FeO系非金属介在物に制御する働きがある。Siの含有量が0.1wt%未満だと、脱酸が不十分となり、非金属介在物量が多くなる。この非金属介在物が増えることで、大型介在物の発生頻度も高くなり、これら大型介在物が表面欠陥をもたらし、ステンレス鋼板に要求される品質を満足できなくなる。一方、Siの含有量が3wt%超だと、Fe、Cr、Moから構成されるシグマ相の生成を促し、ステンレス鋼板を脆化させてしまううえに、ステンレス鋼板の溶接性を低下させる。さらには、非金属介在物が、MgO・Al2O3スピネルあるいはMgO主体となり、クラスター化しやすくなり、表面欠陥を引き起こす。
そこで、本発明では、Siの含有量を0.1〜3wt%と定めた。この範囲内で好ましくは、0.2〜2.5wt%である。より好ましくは、0.3〜2.3wt%である。
また、Si源としては、金属Si合金および/またはFeSi合金を用いるのが好ましい。
Mn:0.3〜3wt%
Mnは、脱酸に有効な元素であるとともに、介在物組成をMnO-CaO-SiO2-Al2O3-MgO-Cr2O3-FeO系非金属介在物に制御する働きがある。しかし、Mnの過剰量(3wt%超)の添加は、シグマ相の生成を促進しステンレス鋼板を脆化させる。そこで、本発明では、Mnの含有量を0.3〜3wt%と定めた。この範囲内で好ましくは0.4〜2.8wt%である。Mn源としては、金属Mnおよび/またはSiMnが好ましい。
Al:0.0001〜0.01wt%
Alは、介在物組成をMnO-CaO-SiO2-Al2O3-MgO-Cr2O3-FeO系非金属介在物に制御する働きがある。しかし、Alの過剰量(0.01wt%超)の添加は、アルミナ介在物を生成し、生成したアルミナ介在物は、クラスター化しやすいため、表面疵の原因ともなる。そこで、本発明では、Alの含有量を0.0001〜0.01wt%と定めた。この範囲で好ましくは0.0005〜0.008wt%である。
Al含有量を上記範囲に制御するためには、金属Alを用いるか、あるいは、Alを0.1〜2wt%含むFeSi合金を用いることが好ましい。
Ca:0.00001〜0.002wt%
Caは、非金属介在物をMnO-CaO-SiO2-Al2O3-MgO-Cr2O3-FeO系非金属介在物に制御する働きがある。しかし、Caの含有量が0.002wt%超だと、介在物中のCaO濃度を上昇させ、耐食性あるいはエッチング加工性に悪影響を与える。このような観点から、Caの含有量は、0.00001〜0.002wt%と規定した。より好ましくは、0.00005〜0.0015wt%である。Caをこの濃度範囲に制御するために、Caを0.1〜2wt%含むFeSi合金を用いることが好ましい。
Mg:0.00001〜0.002wt%
Mgは、非金属介在物をMnO-CaO-SiO2-Al2O3-MgO-Cr2O3-FeO系非金属介在物に制御する働きがある。しかし、Mgの含有量は、0.002wt%超だと、非金属介在物が硬質のMgO・Al2O3スピネルあるいはMgO主体となるために、表面疵を引き起こしたり、エッチング時に孔形状不良を起こしたりする。このような観点から、Mgの含有量は、0.00001〜0.002wt%と規定した。この範囲で好ましくは、0.00005〜0.0015wt%である。Mg濃度を上記の範囲に制御すために、金属Mgの添加は好ましくない。そこで、下記の反応を用いることが最も好ましい。
2Al+3(MgO)=(Al2O3)+3Mg…Alがスラグ中MgOを還元する反応
( )…スラグ中の成分、 …溶鋼中の成分
すなわち、金属Alを用いるか、あるいは、Alを0.1〜2wt%含むFeSi合金を投入して、溶鋼中の溶存Alを、0.0001〜0.01wt%に制御する。このAlが、スラグ中のMgOを還元することで、適量のMgを溶鋼中に供給することができる。
O:0.001〜0.007wt%
ステンレス鋼板のOには、溶存酸素(固溶酸素)と非金属介在物として酸化物として含有される酸素とがある。この両者の和を全酸素濃度とし、ここでは全酸素濃度(以下、「O濃度」という。)を規定する。O濃度が0.001wt%よりも低いと、溶鋼中のMg濃度が0.002wt%を超えて高くなり、ステンレス鋼板中の非金属介在物は、硬質のMgO・Al2O3スピネルあるいはMgO主体となるため、表面疵を引き起こしたり、エッチング時に酸しみを引き起こしたりする。一方、O濃度が0.007wt%超だと、脱酸不足となり、非金属介在物量が多くなる。非金属介在物が増えることで大型介在物の発生頻度も高くなり、その大型介在物が表面欠陥をもたらし、ステンレス鋼板に要求される品質を満足できなくなる。そこで、本発明では、Oの含有量を0.001〜0.007wt%と定めた。より好ましくは、0.001〜0.005wt%である。
酸素濃度を上記の範囲に制御するためには、脱酸に寄与するSiならびにMn濃度を、上記に示した本発明で規定する範囲に制御することが必要である。好ましくは、スラグの塩基度(CaO/SiO2:スラグ中のCaOとSiO2の重量%比)を1.5〜4に制御する。
特に限定はしないが、用途に応じて、この他に、Mo、Cuのいずれか一方または両方を、10wt%以下含んでいても構わない。Moは、耐食性をさらに向上するために有効であり、Cuは、深絞り特性を向上させるのに有効である。また、耐食性が要求される用途には、Nが0.3wt%以下含まれていても構わない。
次に、本発明において、ステンレス鋼板に含有される非金属介在物は、基本的にその成分は、MnO:1〜45wt%、CaO:1〜45wt%、SiO2:10〜60wt%、Al2O3:5〜50wt%、MgO:0.5〜30wt%、Cr2O3:0.2〜10%、FeO:0.2〜10wt%を有するMnO-CaO-SiO2-Al2O3-MgO-Cr2O3-FeO系非金属介在物からなっている。その理由は、熱間圧延、及び冷間圧延時に延伸、分断により、微細化がなされるようにするためと、溶鋼中で大型化しないようにするためである。さらに、MgO・Al2O3介在物を、ステンレス鋼板に含まれる非金属介在物全体の50体積%以下含んでも構わない。
以下、上述した非金属介在物の組成を限定した根拠を説明する。
MnOは、非金属介在物中のその含有量が、1〜45wt%であることが好ましい。その理由は、非金属介在物中のその含有量が、1wt%未満あるいは45wt%超の場合には、非金属介在物の融点を上昇させてしまうために、その延伸性が低下してしまい、その結果として、圧延後のステンレス鋼板中に大型の介在物が残留するようになるからである。なお、ステンレス鋼板中に残留する大型の介在物は、ステンレス鋼板のエッチング性の低下を引き起こし、そのため、ステンレス鋼板に対して要求される品質を満足できなくなってしまう。
この範囲に制御するには、Mn濃度を本発明で規定した範囲に制御すればよい。
CaOは、非金属介在物中のその含有量が、1〜45wt%であることが好ましい。その理由は、1wt%未満あるいは45wt%超の場合には、非金属介在物の融点を上昇させてしまうために、その延伸性が低下してしまい、その結果として、圧延後のステンレス鋼板中に大型の介在物が残留するようになるからである。なお、ステンレス鋼板に残留する大型の介在物は、ステンレス鋼板のエッチング性の低下を引き起こし、そのため、ステンレス鋼板に対して要求される品質を満足できなくなってしまう。
この範囲に制御するには、Ca濃度を本発明で規定した範囲に制御すればよい。
SiO2は、非金属介在物中のその含有量が、10〜60wt%であることが好ましい。その理由は、10wt%未満あるいは60wt%超の場合には、非金属介在物の融点を上昇させてしまうために、その延伸性が低下してしまい、その結果として、圧延後のステンレス鋼板中に大型の介在物が残留するようになるからである。なお、ステンレス鋼板に残留する大型の介在物は、ステンレス鋼板のエッチング性の低下を引き起こし、そのため、ステンレス鋼板に対して要求される品質を満足できなくなってしまう。
この範囲に制御するには、Si濃度を本発明で規定した範囲に制御すればよい。
Al2O3は、非金属介在物中のその含有量が、5〜50wt%であることが好ましい。その理由は、Al2O3の含有量が5wt%未満では、非金属介在物の融点の上昇を招くために、延伸性が低下してしまい、その結果として、圧延後のステンレス鋼板中に大型の介在物が残留するようになるからである。なお、ステンレス鋼板に残留する大型の介在物は、ステンレス鋼板のエッチング性の低下を引き起こし、そのため、ステンレス鋼板に対して要求される品質を満足できなくなってしまう。一方、Al2O3の含有量が、50wt%超では、非金属介在物がクラスター化しやすくなってしまうからである。なお、この大型のアルミナ系クラスター状介在物が発生することで、ステンレス鋼板の表面欠陥となり、ステンレス鋼板に対して要求される品質を満足できなくなる。
この範囲に制御するには、Al濃度を本発明で規定した範囲に制御すればよい。
MgOは、非金属介在物中のその含有量が、0.5〜30wt%であることが好ましい。0.5wt%未満あるいは30wt%超の場合には、非金属介在物の融点を上昇させてしまうために、その延伸性が低下してしまい、その結果として、圧延後のステンレス鋼板中に大型の介在物が残留するようになるからである。なお、ステンレス鋼板に残留する大型の介在物は、ステンレス鋼板のエッチング性の低下を引き起こし、そのため、ステンレス鋼板に対して要求される品質を満足できなくなってしまう。また、MgOの含有量が、30wt%超の場合には、非金属介在物が水溶性となるために、ステンレス鋼板の耐食性およびエッチング性に、悪い影響を与える。
この範囲に制御するには、Mg濃度を本発明で規定した範囲に制御すればよい。
Cr2O3は、非金属介在物中のその含有量が、0.2〜10wt%であることが好ましい。その理由は、以下に述べるとおりである。Cr2O3の含有量が、0.2wt%未満の場合には、非金属介在物の融点を上昇させてしまうために、その延伸性が低下してしまい、その結果として、圧延後のステンレス鋼板中に大型の介在物が残留するようになり、また非金属介在物がクラスター化しやすくなってしまうからである。なお、このようなクラスター状の大型介在物が発生することで、ステンレス鋼板の表面欠陥となり、その要求される品質を満足できなくなる。一方、Cr2O3の含有量が、10wt%超だと、非金属介在物の絶対量が増加し、大型の介在物の発生頻度が高くなってしまい、ステンレス鋼板の表面欠陥を引き起こすからである。
この範囲に制御するには、O濃度を本発明で規定した範囲に制御すればよい。
FeOは、非金属介在物中のその含有量が、0.2〜10wt%であることが好ましい。その理由は、FeOの含有量が、0.2wt%未満の場合には、非金属介在物の融点を上昇させてしまうために、その延伸性が低下してしまい、その結果として、圧延後のステンレス鋼板中に大型の介在物が残留するようになり、また非金属介在物がクラスター化しやすくなってしまうからである。このようなクラスター状の大型介在物が発生することで、ステンレス鋼板の表面欠陥となり、その要求される品質を満足できなくなる。一方、FeOの含有量が、10wt%超の場合には、非金属介在物の絶対量が増加してしまうために、大型の介在物の発生頻度が上昇してしまい、ステンレス鋼板の表面欠陥を引き起こすからである。
この範囲に制御するには、O濃度を本発明で規定した範囲に制御すればよい。
MgO・Al2O3介在物は、非金属介在物に対して50体積%以下であることが好ましい。その理由は、上記した組成の非金属介在物の他に、MgO・Al2O3介在物を、ステンレス鋼板に含まれる非金属介在物全体の50体積%以下含んでいても、MgO・Al2O3介在物がクラスター化して大型化することがなく、そのため、ステンレス鋼板の表面欠陥を引き起こさないからである。より好ましくは、45体積%以下である。なお、MgO・Al2O3介在物には、MnOとCr2O3を合計量で15体積%以下含んでいても構わない。
以下に、実施例を示し、本発明の効果をより明確なものとする。
(ステンレス鋼板の製造)
表1に示す金属組成を有するステンレス鋼板を、以下のようにして製造した。
まず、鉄屑、ステンレス屑、FeCr、FeNi等などからなる原料60tonを、電気炉で溶解しながら、所定のFe-Cr-Ni系あるいはFe-Cr系ステンレス溶鋼の組成に調整した。その後、AOD処理、VOD処理、またはAOD→VOD処理の3通りのいずれかの処理より脱炭を行い、次いで、AODあるいはVODにおいて、FeSi合金等のSi合金鉄を添加して、スラグ中に移行したCrを溶鋼中に還元する処理を行った。このとき、石灰石および/または螢石をフラックスとして添加し、所定の塩基度(CaO/SiO2:スラグ中のCaOとSiO2の重量%比)に調整したが、一部のチャージでは、耐火物保護の目的で、MgO含有耐火物屑をフラックスとともに添加した。
次に、微量成分調整及び温度調整を行った後、普通造塊法により鋳造するか、または連続鋳造法により鋳造した。その後、連鋳スラブについては直接に、また普通造塊スラブについては、鍛造工程を経た後、熱間圧延を施して3.0〜10.0mm厚のステンレス鋼の熱延板を得た。これらの熱延板のうち、いくつかは、さらに冷間圧延を施すことにより0.5〜1.0mm厚まで圧延した。
(調査および評価)
発明例1〜7、及び比較例1〜6のステンレス鋼板につき、以下の調査を行った。
A.極値統計処理の実施
ここでは、発明例1を例にとって説明する。
ステンレス鋼板の圧延方向に対して80〜90°における断面において、板厚×30mm幅を一つの検査基準面積S0として15個所(n=15)選び、その断面内に存在する幅方向に最大の幅を有する非金属介在物の最大幅(L)を光学顕微鏡を用いて観察および測定し、ステンレス鋼スラブ中の最大非金属介在物の断面積の平方根(√area)を求めた。ここで、√areaの値は、√area=√π(L/2)2である。なお、非金属介在物の幅の測定には、光学顕微鏡を用いて200倍の視野で測定した。
以上より得られた15個の観察個所から得られたステンレス鋼スラブ中の最大非金属介在物の断面積の平方根(√area)の値を最小値から順に並べ、小さい順に(√area)1、(√area)2、・・・・・・(√area)15と定義した。そして、j番目にあたる非金属介在物の√areaの値((√area))に対応する第一基準化変数(昇順)yを、(3)式より求めた。
j、(√area)、yをまとめたものが表1である。
Figure 2008114288
さらに、表1の結果を、ステンレス鋼スラブ中の最大非金属介在物の断面積の平方根の値を横軸に、それに対応する基準化変数を縦軸として、ステンレス鋼スラブ中の最大非金属介在物の断面積の平方根の値が小さいものから順にプロットしたものが図1である。そして、プロットした点を一次再帰して、図1に示すような右上がりの直線を得た。この直線が、(1)式である。
次に、最大非金属介在物の大きさを推定する面積S(325,000mm2)の値と、検査基準面積S0のステンレス鋼スラブ状態に相当する面積S0 *と(2)’式とから再帰期間Tを求め、さらに、このTと(3)’式とから第二基準化変数(面積比)ymaxを求めた。そして、このymaxと(1)’式とから、ステンレス鋼スラブ中の推定最大非金属介在物の断面積の平方根√areamaxを求めた。
B.メタル組成の分析
蛍光X線分析により定量分析した。
C.非金属介在物組成の分析
EDS(エネルギー分散型分析装置)により、ステンレス鋼板の介在物を10箇所ずつ定量分析して、その平均値をそのステンレス鋼板の非金属介在物の組成とした。この値は、スピネル介在物も含めての平均値である。
D.スピネル介在物の割合の分析
10gのステンレス鋼板を臭素メタノール溶液中で溶解すると、金属部のみが溶解する。これを濾過すると、残渣には非金属介在物が得られる。この非金属介在物の残渣をSEMにより観察して、体積%を測定した。スピネル介在物は角張っているため、区別が可能である。
E.表面欠陥の分析
外観検査ラインにおいて、100m(幅は0.7〜1.5mの範囲)の長さを目視により観察し、欠陥有無を判定した。
(結果)
上記B〜Eの分析を行ったステンレス鋼スラブの成分組成(wt%)およびその合金の不可避不純物である非金属介在物の平均組成(wt%)を、表2にまとめた。そして、表2のステンレス鋼スラブについて行った上記分析結果を、表3にまとめた。
Figure 2008114288
Figure 2008114288
表3の発明例1〜7に示すように、√areamaxが300μm以下で、かつ非金属介在物が、MnO-SiO2-Al2O3-CaO-MgO-FeO系で、MnO:1〜45wt%、CaO:1〜45wt%、SiO2:10〜60wt%、Al2O3:5〜50wt%、MgO:0.5〜30wt%、Cr2O3:0.2〜10wt%、FeO:0.2〜10wt%の組成を有していて、かつスピネル介在物の割合が非金属介在物全体に対して50体積%以下のステンレス鋼板の場合には、製品厚(0.01〜0.5mm)まで圧延しても表面欠陥の発生は確認されなかった。
一方、比較例1〜6に示すように、√areamaxの値が300μmを超えるものでは製品厚(0.01〜0.5mm)まで圧延すると表面欠陥の発生が確認された。とくに、√areamaxの値が300μmを超えるステンレス鋼板では、スピネル介在物の割合を金属介在物全体に対して50体積%以下としても、製品厚(0.01〜0.5mm)まで圧延すると表面欠陥が確認された(比較例1、2、4)。
図2に、発明例2、4と、比較例2、3の極値統計処理の実施の結果を示す。
また、表4には、検査精度および検査時間に及ぼす圧下率の影響を示している。ここでは、いずれの例も、最終的に外観検査の段階で表面欠陥が認められた同一の試験片(表2の比較例3のステンレス鋼スラブ)を用いている。表4の発明例8、9に示すとおり、被検査材の圧下率が90.00〜99.83%の場合には、√areamaxが300μmを超えているため、表面欠陥が発生することを正当に評価できる。また、検査に要する時間も3時間以下であり、十分実用的であることがわかる。
比較例に示した圧下率が99.83%を超える場合(比較例7)には、最終的に表面欠陥が確認されたにも関わらず、測定結果は300μm以下であった。これは、介在物の分散度合いが高くなったためであり、精度良い測定が不可能であったためである。
一方、圧下率が90.00%未満の場合(比較例8、9)には、精度良く測定されていて、表面欠陥を推定することは可能であるが、検査に要する時間が3日あるいは7日と長く、実用的な検査として行うには不都合である。
Figure 2008114288
本発明の技術は、ステンレス鋼の製造分野、とりわけ0.01〜0.5mm程度に冷間圧延し、その後打ち抜き加工やエッチング加工等の高い精密性が要求される加工工程が必要となる分野、例えば、ハードディスク用サスペンション材料やガンパーツ等の電子材料を製造する分野でも利用される。
ステンレス鋼板およびステンレス鋼スラブの厚み方向の断面図。 極値統計による再帰直線。 極値統計による再帰直線。
符号の説明
1 検査基準面積(S0
2 最大非金属介在物の大きさを推定する面積(S)
3 検査基準面S0に対応する鋼スラブ時の面積(S0

Claims (3)

  1. Cr:5〜30wt%、Ni:30wt%以下、Si:0.1〜3wt%、Mn:0.3〜3wt%、Al:0.0001〜0.01wt%、Ca:0.00001〜0.002wt%、Mg:0.00001〜0.002wt%、O:0.001〜0.007wt%を含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなる鋼スラブを、熱間圧延または、熱間および冷間圧延して、ステンレス鋼板を製造する方法において、
    圧延後の鋼板の圧延方向に対して直角ないしほぼ直角に切断した断面の一部を検査基準面積とし、その検査基準面積内にあるMnO:1〜45wt%、CaO:1〜45wt%、SiO2:10〜60wt%、Al2O3:5〜50wt%、MgO:0.5〜30wt%、Cr2O3:0.2〜10wt%、FeO:0.2〜10wt%の成分組成を有する非金属介在物の幅方向長さを顕微鏡観察し、その観察によって得られる該非金属介在物の最大幅方向長さから、この鋼板のスラブ段階における最大非金属介在物の大きさ√areamaxが300μm以下としてなる鋼スラブを、用いて製造することを特徴とするステンレス鋼板の製造方法。
  2. 圧延後の鋼板を顕微鏡観察することによりスラブ段階における非金属介在物の大きさを推定するに当たり、圧延方向に対して直角ないしほぼ直角に切断された断面の任意の一検査基準面積S0内にある最大非金属介在物の幅方向長さ(L)を測定し、この幅方向長さ(L)が、該検査基準面積S0に対応するスラブ段階の面積S0 内に存在する最大非金属介在物の直径と等しいものとして、下記(1)式よりスラブ内に存在していた最大非金属介在物面積の√areaを算出するという手順を、上記切断面の複数箇所(n)において繰り返し、算出されたn個の√areaを昇順に並べ替え、下記(2)式よりj番目にあたる上記√areaに対応する第一基準化変数(昇順)yを求め、この第一基準化変数(昇順)yと該√areaとで極値統計による処理を行うことにより、下記(3)式に示す平均基準化変数yを求め、次いで、最大非金属介在物の粒径を推定する面積Sと前記検査基準面に対応するスラブ時の面積S0 とから、下記(4)式より再帰期間Tを算出し、次いで、この再帰期間Tと下記(5)式とから第二基準化変数(面積比)ymaxを算出し、この第二基準化変数(面積比)ymaxと下記(3)式とから鋼スラブ中の最大非金属介在物の断面積の平方根√areamaxを算出し、この√areamaxを鋼スラブ中にある最大非金属介在物の大きさとすることを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼板の製造方法。

    √area=√π(L/2)2 (1)
    =-ln[-ln{j/(n+1)}] (j=1〜n) (2)
    y=a√area+b (3)
    T=(S+S0 )/S0 (4)
    max=-ln[-ln{(T-1)/T}] (5)
    ただし、
    n:検査個数
    :第一基準化変数(昇順)
    y:平均基準化変数
    a:再帰係数
    b:定数
    S:最大非金属介在物の大きさを推定する面積
    0 :検査基準面S0に対応する鋼スラブ時の面積
    T:再帰期間
    max:第二基準化変数(面積比)
  3. MgO・Al2O3介在物を非金属介在物全体の50体積%以下含むことを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼板の製造方法。
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