JP2003027188A - シャド−マスク用インバ−合金とその製造法 - Google Patents

シャド−マスク用インバ−合金とその製造法

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JP2003027188A JP2001218983A JP2001218983A JP2003027188A JP 2003027188 A JP2003027188 A JP 2003027188A JP 2001218983 A JP2001218983 A JP 2001218983A JP 2001218983 A JP2001218983 A JP 2001218983A JP 2003027188 A JP2003027188 A JP 2003027188A
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Shinji Tsuge
信二 柘植
Isato Kita
勇人 喜多
Takayuki Nishi
隆之 西
Hironao Okayama
浩直 岡山
Masahiro Fukumoto
雅浩 福元
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Toyo Kohan Co Ltd
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Sumitomo Metal Industries Ltd
Toyo Kohan Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ブラウン管のシャド−マスクとして用いられ
る、低熱膨張で熱間加工性にも優れた安価な高強度イン
バ−合金及びその製造手段を提供する。 【解決手段】 合金を、C及びNbの強化元素の1種以
上,Ni,Co,Al,Ca並びに必要によりBを含むと共に、
Si,Mn,P,S,Mg,Cu,Cr,V,Mo,Ti,N及びO含
有量が特定値以下に規制され、更に介在物Mg量が特定値
以下に規制されかつCa/Oが 0.1〜 2.0であるか、ある
いは酸化物系介在物中のMg,Al,Caの割合を特定比率に
調整して酸化物系介在物に付随してCa硫化物が析出する
ようにし、残部が実質的にFeである組成とする。合金の
製造に際しては、二次精錬で使用するスラグ中のCaOと
Al23 の比を 1.4〜 2.2とし、かつスラグ中のSiO2
量とMgO量を調整してスラグ精錬を行い、その後鋳造開
始までにCa合金を添加する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、カラ−テレビジ
ョン用ブラウン管やコンピュ−タ−モニタ用ブラウン管
のシャド−マスクとして用いられる、低熱膨張で熱間加
工性にも優れた安価な高強度インバ−合金及びその製造
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、情報産業の著しい進展に伴ってコ
ンピュ−タ−モニタや家庭用テレビジョンの生産が顕著
な増加傾向を見せており、同時にそれらのブラウン管に
使用されるシャド−マスク材の品質やコストに対する要
求も厳しさの度合いが一段と増してきている。例えば、
品質面に関しては、コンピュ−タ−モニタの高精細化や
テレビジョンのフラット化,大型化の指向が“熱膨張が
更に小さいシャド−マスク”や“強度を増加して更に薄
肉化されたシャド−マスク”を必要とする大きな要因と
なっており、これらの要求に応えることが素材メ−カ−
の急務となっていた。
【0003】シャド−マスク用の材料としては、熱膨張
係数の小さい合金として知られている“インバ−合金”
が従来から広く用いられており、この用途では、特に室
温から100℃程度までの温度域での熱膨張係数を下げ
るための成分調整がなされて使用に供されてきた。
【0004】ただ、上記成分調整はNi以外の合金元素を
極力低減する方向でなされるのが一般的であり、この場
合には熱膨張係数は低下するものの強度が低くなるとい
う問題を生じた。また、インバ−合金は、36%(以降、
成分量を示す%は重量%とする)ものNiを含むことか
ら、原料コストが高価であることに加え、素材の熱間加
工性が乏しくて製造コスト面での不利も否めないとの問
題も有していた。このため、ブラウン管シャド−マスク
用素材として、より低い熱膨張を示すと共に強度が高
く、かつ廉価なインバ−合金の登場が待たれていた。
【0005】ところで、シャド−マスク用インバ−合金
は、板厚が 0.3mm以下の薄板形態で鋼板メ−カ−より出
荷され、電子ビ−ム透過用の微細な孔を化学エッチング
により開けた後に、プレス成形,黒化処理,フレ−ムへ
の装着・組立,ブラウン管内への封入がなされる。
【0006】なお、前記エッチング工程では 0.3mm以下
のピッチで微細な孔を開けることが行われており、その
孔の位置ずれはおよそ0.03mm以下に制御する必要があ
る。このような精度の高い加工を行うため、シャド−マ
スク用インバ−合金には非金属介在物の量を極力少なく
することが要求される。また、不可避的に残留する少量
の微細な介在物についても、冷圧後の薄板中に存在する
介在物の大きさ,分布形態,組成を考慮した厳密な制御
が求められる。
【0007】シャド−マスク用インバ−合金のこれら介
在物に対する要求は、製造コストを無視するならば、二
重溶解法{例えばESR(エレクトロスラグ再溶解
法)}の採用により解決することが比較的容易である。
しかしながら、現今のようにコストが重視される場合に
は、特殊鋼の汎用精錬設備であるVOD(真空酸素脱炭
設備)やAOD(アルゴン酸素脱炭設備)等を適用する
仕上げ精錬方法での介在物制御が特に重要となる。
【0008】また、前述したように、シャド−マスク用
インバ−合金に対しては高強度化も切実な要求事項とな
っているが、例えばCo,Nb,C,Cr等といった合金元素
の添加によってインバ−合金の高強度化が可能であるこ
とは知られている(特開昭55-54548号公報,特開昭55-9
7453号公報,特開昭58-11767号公報,特開昭58-11768号
公報,特開平2-70040 号公報,特開平5-171357号公報等
を参照)。ただ、高強度化した成分系では熱間加工性の
問題が更に顕著化するので、この問題に対処すべく、M
n,Ti,Mg等の元素を添加して熱間加工性の改善を図っ
た高強度インバ−合金に関する提案も幾つかなされてい
る(特開平5-171357号公報,特開平10-17997号公報等を
参照)。
【0009】しかし、先にも述べたように、熱膨張係数
が極力低いインバ−合金を得るためには殆どの合金元素
を低い含有量に抑制する必要があり、特にMnの低減は重
要であるが、Mnはインバ−合金の熱間加工性を改善する
主要元素であり、Mn量を一定値未満に低減した上で高強
度化のための合金元素を添加することは熱間加工性の面
から採用できない手立てであると考えられた。このよう
に、熱膨張係数が従来のインバ−合金よりも小さく、し
かも強度が高く、かつ廉価なシャド−マスク用高強度イ
ンバ−合金は現在まで知られてはいなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】このようなことから、
本発明が目的としたのは、熱膨張係数が従来のインバ−
合金よりも小さく、熱間加工性や強度の面でも満足でき
る上に、介在物の問題も生じることがない、高精細ブラ
ウン管用として好適な低コストのインバ−合金を提供す
ることである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的
を達成すべく鋭意研究を行い、次のような知見を得るこ
とができた。即ち、熱膨張係数を低下させる目的でMn量
を 0.2%未満に制限し、高強度化のためにNb,Cを添加
したインバ−合金は熱間加工性の改善が困難であること
は先に説明した通りであるが、一方で、インバ−合金の
熱間加工性の改善には“O,S含有量の低減”が有効で
あるとの情報もある。ただ、基本的な脱酸元素であると
されているSi,Mnの含有量を低減しなければならないイ
ンバ−合金では、有効な脱酸元素としては“Al”しか見
当たらなかった。
【0012】ところが、Al添加により脱酸,脱硫を行っ
た場合には、スラグや耐火物からMgが溶出して高融点の
スピネル酸化物を生じることが避けられなかった。そし
て、Ca含有量が2ppm 未満の合金では、介在物Mgは主に
高融点のスピネル酸化物の形態で存在して、鋳造過程で
凝集・合体し、これが凝固シェルに捕捉される結果とな
る。このスピネル酸化物は、熱間圧延,冷間圧延工程を
経ても分断されることなく粗大な介在物としてそのまま
残留し、シャド−マスク製品をエッチングにより製造す
る工程においてエッチング欠陥を誘発するという“問題
の介在物”である。
【0013】そこで、本発明者等は、インバ−合金製造
時におけるAlの挙動をより的確に把握すべく、合金のAl
量,スラグ組成,るつぼ材質を種々変化させてスラグ精
錬実験を行い、精錬終了後の合金溶湯より採取し凝固さ
せた直径20mm×高さ50mmの円柱状凝固後サンプルの
断面において、介在物の組成調査及び分布形態観察を行
った。また、この精錬実験により得られた合金に熱間鍛
造,熱間圧延,冷間圧延を施して薄板とし、この薄板に
ついて“酸溶解法による化学組成分析”及び“Brメタノ
−ル抽出分析法による介在物分析”を実施し、更にエッ
チング性の評価も行った。
【0014】まず、上記スラグ精錬実験の結果、Caを含
有しない合金ではスピネル酸化物が単体で見出されるの
に対して、Caを適量含有させた場合にはAl−Ca−Mgの複
合酸化物が形成されており、その組成分析値からして、
Caを適量含有させた場合には溶鋼中で一部液相を含む介
在物形態となることが分かった。そして、この観察結果
と、熱間加工性及びエッチング性の評価結果とを解析し
たところ、「Al,Ca含有量が適切に制御され、 かつ介在
物Mg量が特定の範囲に収まり、 更にMg含有量が一定値以
下に制御された場合に、 熱間加工性及び介在物の問題が
解決される」ということが見出された。
【0015】つまり、脱酸・脱硫のためにAlを適量含有
させ、強度確保のためにNb,Cを含有させたインバ−合
金において、“適切な組成のスラグによる精錬”と“C
a,Mg元素の含有量を制御すること”により、高融点の
スピネル酸化物(Al23-MgO)を低融点の複合酸化物
(m Al23 −nCaO)で包み込む形に形態制御して無
害化することが可能であり、これによって前述した介在
物,熱間加工性,強度の3つの問題を同時に解決できる
ことが明らかとなった。
【0016】本発明は上記知見事項等を基に完成された
ものであり、次の〜項で示すシャド−マスク用高強
度インバ−合金及びその製造方法を提供するものであ
る。 C: 0.003〜0.05%及びNb:0.01〜0.50%のうちの
1種または2種,Ni:34.5〜37.0%,Co: 0.5%以下,
Al: 0.003〜0.05%,Ca:0.0002〜 0.004%,B:0〜
0.0015%を含有すると共に、Si:0.10%以下,Mn:0.20
%未満,P: 0.015%以下,S:O.0010%以下,Mg:0.
0005%以下,Cu:0.2 %以下,Cr: 0.1%以下,V:0.
05%以下,Mo:0.1 %以下,Ti:0.02%以下,N: 0.0
05%以下,O:0.0010〜 0.005%,介在物Mg:0.0001〜
0.0010%に規制され、かつ Ca/O: 0.1〜 2.0であり、
残部がFe及び不可避的不純物よりなることを特徴とす
る、熱間加工性に優れたシャド−マスク用高強度インバ
−合金。 C: 0.003〜0.05%及びNb:0.01〜0.50%のうちの
1種または2種,Ni:34.5〜37.0%,Co: 0.5%以下,
Al: 0.003〜0.05%,Ca:0.0002〜 0.004%,B:0〜
0.0015%を含有すると共に、Si:0.10%以下,Mn:0.20
%未満,P: 0.015%以下,S:O.0010%以下,Mg:0.
0005%以下,Cu:0.2 %以下,Cr: 0.1%以下,V:0.
05%以下,Mo:0.1 %以下,Ti:0.02%以下,N: 0.0
05%以下,O:0.0010〜 0.005%,酸化物系介在物中の
Mg,Al,Ca元素の組成の和を100%としたときのそれ
ぞれの元素の含有量がMg:3〜30%,Al:5〜65%,C
a:8〜80%の範囲に規制され、かつ Ca/Alの比率が0.3
〜10の範囲にあって、酸化物系介在物に付随してCa硫化
物が析出しており、残部がFe及び不可避的不純物よりな
ることを特徴とする、熱間加工性に優れたシャド−マス
ク用高強度インバ−合金。 Si含有量を0.03%以下に、またMn含有量を0.10%以
下に規制して熱膨張係数を低減した、前記項又は項
に記載の熱間加工性に優れたシャド−マスク用高強度イ
ンバ−合金の製造方法。 成分調整した合金溶湯を二次精錬するに際し、使用
するスラグ中のCaOとAl23 の重量比(C/A)を 1.
4〜 2.2の範囲とし、かつスラグ中のSiO2含有量を10重
量%以下に、そしてスラグ中のMgO含有量を10重量%以
下に調整してスラグ精錬を行い、その後鋳造開始までに
Ca合金を添加することによって合金の化学組成を前記
項乃至項の何れかに記載のものに制御することを特徴
とする、熱間加工性に優れたシャド−マスク用高強度イ
ンバ−合金の製造方法。
【0017】上述のように、本発明は、「Mn添加による
ことなくインバ−合金の熱間加工性を改善するためには
Alの作用を借りた合金の極低硫化が必須であるが、 極低
硫化のみを目的としたスラグ精錬を行うと溶存Mg濃度が
上がって逆に熱間加工性の悪化を招き、 一方で介在物が
有害なスピネル酸化物の形態になってしまう」との究明
事項や、「この問題の解決には、 適切な組成のスラグに
よる精錬とCaの活用により、 介在物をスピネルのないCa
Oを含む形態にすると共に、 不可避的に残留する介在物
を起点としてCaSを析出させることで固溶するSを更に
低減し、 かつ介在物に有害にならない程度の量でMgOを
含ませることにより溶存Mgの増加を抑制するという手立
てが極めて効果的である」との究明事項を基本にして案
出されたものであるが、以下本発明において合金の化学
組成や製造条件を前記の如くに限定した理由を説明す
る。
【0018】
【発明の実施の形態】[A] 合金成分の含有量範囲 a) C,Nb C又はNbは、シャド−マスク用インバ−合金の高強度化
のために必要な成分であり、所望する合金強度を確保す
るためには 0.003%以上のC,0.01%以上のNbの何れか
あるいは双方の含有が必要である。しかし、C含有量が
多くなると合金の熱膨張係数が増加するので、熱膨張係
数を低値に抑えるためには0.05%を超えるCの添加は控
えなければならない。これらの観点からして、C含有量
は0.01〜0.04%の範囲に調整するのがより望ましいと言
える。また、Nb含有量が多くなると合金の熱間加工性が
悪化し、かつ熱膨張係数も増加するので、Nb含有量は0.
50%以下に制限する必要がある。なお、合金により高い
強度が必要な場合には、Cと共にNbを複合添加するのが
有効である。
【0019】b) Ni Niは合金の熱膨張係数を低値に制御するための主要成分
であり、そのためにはNi含有量を34.5〜37.0%の範囲に
調整することが必要である。
【0020】c) Co Coは、Ni量との関連でその添加量を増していくと合金の
熱膨張係数を一段と低下させることができる稀な成分で
ある。しかし、非常に価格の高い元素であるため、本発
明ではCo含有量の上限を 0.5%と定めた。
【0021】d) Al Alは脱酸剤として有効な元素であるが、本発明では合金
の脱酸,脱硫のための重要な成分として位置付けられ、
Al量の制御によって酸化物系介在物の組成を好ましいも
のとすることが可能となる。種々の実験によって 0.003
〜0.05%のAl含有量範囲が本発明の目的達成のために必
要であると確認されたことから、Al含有量を 0.003〜0.
05%と定めた。
【0022】e) Ca Caは、合金の“酸化物系介在物の形態制御”及び“硫化
物生成を通じての熱間加工性の改善”に重要な役割を果
たす成分であり、そのため0.0002%以上の含有量を確保
する必要がある。一方、0.004 %を超えてCaを含有させ
ると、酸化物は融点が高くて耐食性の低いものとなり、
合金のエッチング性に悪影響を及ぼすようになる。更
に、本発明合金においては、酸化物系介在物の形態を制
御した後の残余のCaが合金中でCa硫化物を形成し、熱間
加工性を改善する。このため、Ca含有量を0.0002〜 0.0
04%と定めた。
【0023】f) B Bは合金の熱間加工性を高める作用を有しており、その
ため必要に応じて含有せしめられる成分であるが、添加
しなくても本発明が目的とするシャド−マスク用高強度
インバ−合金の実現は可能である。ただ、Bは合金の熱
膨張係数を著しく高める元素であるため、0.0015%を超
える含有量とすることは好ましくない。従って、B含有
量は0(無添加)〜0.0015%と定めた。
【0024】g) Si Siは合金の熱膨張係数を増加させるので低減することが
望ましい元素であり、本発明では所望の熱膨張係数を得
るべくSi含有量を0.10%以下に規制したが、Mn含有量の
低値化と共にSi含有量を0.03%以下にまで低減すること
によって合金の熱膨張係数はより一層顕著に小さくする
ことができる。 h) Mn Mnも合金の熱膨張係数を増加させるので低減することが
望ましい元素であり、本発明では所望の熱膨張係数を得
るべくMn含有量を0.20%未満に規制したが、Siの低値化
と共にMn含有量を0.10%以下にまで低減することによっ
て合金の熱膨張係数はより一層顕著に小さくすることが
できる。
【0025】i) P Pは合金の溶接性を損なう元素であるので、その悪影響
が顕著化しない 0.015%以下の範囲にP含有量を規制し
た。 j) S Sは合金の熱間加工性を低下させる元素であるので、そ
の悪影響が顕著化しない0.0010%以下の範囲にS含有量
を規制した。 k) Mg Mgも過剰な含有により合金の熱間加工性を阻害する元素
であるので、所望するシャド−マスク用インバ−合金を
得るためにはその含有量を0.0005%以下に低減すること
が必要である。
【0026】l) Cu Cuは合金の熱膨張係数を増加させるので低減することが
望ましい元素であり、本発明では所望の熱膨張係数を得
るべくCu含有量を0.20%以下に規制した。 m) Cr Crも合金の熱膨張係数を増加させるので低減することが
望ましい元素であり、本発明では所望の熱膨張係数を得
るべくCr含有量を 0.1%以下に規制した。 n) V Vも合金の熱膨張係数を増加させるので低減することが
望ましい元素であり、本発明では所望の熱膨張係数を得
るべくV含有量を0.05%以下に規制した。 o) Mo Moも合金の熱膨張係数を増加させるので低減することが
望ましい元素であり、本発明では所望の熱膨張係数を得
るべくMo含有量を 0.1%以下に規制した。 p) Ti Tiも合金の熱膨張係数を増加させるので低減することが
望ましい元素であり、本発明では所望の熱膨張係数を得
るべくTi含有量を0.02%以下に規制した。
【0027】q) N Nは合金の溶接性,熱間加工性を低下させる元素であ
り、やはり低減することが望ましく、そのためN含有量
を 0.005%以下と規制した。 r) O(酸素) 合金中のO含有量は酸化物系介在物の総量に対応した数
値であり、従って低減することが必要である。本発明で
は、所望するシャド−マスク用インバ−合金を得るため
にO含有量を 0.005%以下に規制した。一方、強力な脱
酸を行ってO含有量を0.0010%未満にまで低減すると、
スラグや耐火物から有害なMgが多量に溶出してくるよう
になるため、O含有量は0.0010%以上に調整することが
必要である。
【0028】s) 介在物Mg 本発明でいう「介在物Mg」とは「Brメタノ−ル法で抽出
される酸化物系介在物に含まれているMg」のことであ
り、その含有量を0.0010%以下に低減することが必要で
ある。合金中に介在物Mgが0.0010%を超えて含有される
と、本発明に係る介在物の形態制御を実施してもエッチ
ング時の欠陥を誘発する。一方、MgOを含有する耐火物
やスラグを用いた溶解・精錬において介在物Mgが全く生
成しないような場合は、脱硫,脱酸が不足し、得られる
合金の熱間加工性が低下した。そして、所望するシャド
−マスク用インバ−合金を得るためには合金中の介在物
Mgが0.0001%以上となるような精錬が必要であることを
知った。従って、介在物Mgの含有量を0.0001〜0.0010%
と定めた。
【0029】t) Ca/O 「Ca/O」は合金中のCa含有量とO含有量の重量比であ
って、酸化物系介在物の形態を所望の形状に制御するた
めに有効な指標であり、低融点の酸化物を生成させるた
めにはCa/Oの値を 0.1以上にすることが必要である。
一方、Ca/Oの比率が 2.0を超えると、融点が高くて耐
食性の低い酸化物となり、エッチング性に悪影響を及ぼ
すようになる。従って、Ca/Oの値を 0.1〜 2.0と定め
た。
【0030】t) 酸化物系介在物の組成 本発明に係るインバ−合金は、C又はNb,Ni,Co,Al,
Ca,B,Si,Mn,P,S,Mg,Cu,Cr,V,Mo,Ti,N
及びOの含有量が前記の如き範囲内に調整されると共
に、介在物Mg並びに Ca/Oの比率も前記規定値を満たす
ことによって所望する熱膨張係数,強度,熱間加工性等
を具備することとなるが、介在物Mgや Ca/Oの比率によ
らずとも、酸化物系介在物中のMg,Al,Ca元素の含有量
と Ca/Alの比率が所定の範囲内に調整されておれば、同
様に優れた熱膨張係数,強度,熱間加工性等を具備する
ものとなる。
【0031】即ち、C又はNb,Ni,Co,Al,Ca,B,S
i,Mn,P,S,Mg,Cu,Cr,V,Mo,Ti,N及びOの
含有量が適正範囲である合金内に不可避的に残留する酸
化物系介在物が、それに含まれるMg,Al,Ca元素の組成
の和を100%としたとき、それぞれの元素の含有量が
Mg:3〜30%,Al:5〜65%,Ca:8〜80%の範囲に規
制され、かつ Ca/Alの比率が 0.3〜10の範囲にあれば、
インバ−合金として十分に満足できる熱膨張係数,強
度,熱間加工性等が具備される。なお、このとき、当該
酸化物系介在物に付随してCa硫化物が析出しているのを
確認することができ、CaによるSの弊害除去効果も発揮
されることが分かる。
【0032】[B] 製造条件ア ) スラグの塩基度(C/A) スラグの塩基度(C/A)はスラグの脱酸・脱硫能を決
める重要な指標であって、スラグ中のCaO及び Al23
重量比として求められる。二次精錬時に用いられるスラ
グのC/Aが 1.4未満であると、酸素及びSがそれぞれ
0.005%,0.0010%を超えてしまうことが多く、かつ介
在物中にSiO2 濃度が高くなり、所望の介在物形態制御
が困難となる。一方、C/Aが 2.2を超えると耐火物や
スラグのMgOが還元され、合金中にMg元素が溶け出すと
共に、合金中にスピネル介在物やMgOを生成するように
なる。従って、使用するスラグのC/Aを 1.4〜 2.2の
範囲とすることに定めたが、より望ましい範囲は 1.6〜
2.1である。
【0033】イ) スラグ中のSiO2 含有量 スラグ中のSiO2 は合金の酸化剤として作用する。5%
までの含有量では酸化力は小さいが、5%を超えてSiO
2 が含有されると合金溶湯中のAlを酸化するようにな
る。そして、SiO2 含有量が10%を超えると合金の脱酸
が不十分となると共に脱硫も困難となるため、スラグ中
のSiO2 含有量は10%以下と定めたが、より望ましくは
5%以下に規制するのが良い。
【0034】ウ) スラグ中のMgO含有量 スラグ中のMgOは合金中のAlにより還元される。その結
果、Mgが合金中に溶出しスピネル酸化物を形成する原因
となるので、MgO濃度は低く制限する。特に、スラグ中
のMgO含有量が10%を超えると合金のエッチング性,熱
間加工性を阻害するようになることからその含有量を10
%以下と定めたが、より望ましくは5%以下に規制する
のが良い。
【0035】x) Caの添加 本発明法では、上述のスラグを用いて合金の精錬を行
い、その後鋳造開始までにCaを添加するが、Caは非常に
活性な金属であるので、その歩留りの安定化,介在物形
態制御能を十分に発揮させるため、脱酸・脱硫精錬を終
わってから取鍋あるいはタンディッシュ等においてCa合
金の形態で溶湯に添加する。Ca合金としては、一般的な
Ca−Si合金,Ca−Ni合金等を用いれば良い。
【0036】本発明法によると、スピネル酸化物はCa処
理によりAl−Ca−Mg複合酸化物に変化して一部が低融点
化した介在物となり、溶湯中に液滴状態で分散するの
で、凝集・合体が起こりづらく、従って介在物欠陥にな
りにくいものと考えられる。このような過程で生成させ
た複合酸化物は、全体が低融点化しているのではなく、
比較的Mg濃度の高い個体も見られた。勿論、MgOを含有
しない耐火物及びスラグを使用することが可能なESR
(エレクトロスラグ再溶解法)等の特殊な溶製・精錬法
によれば、非金属介在物にMgを一切含まない合金を得る
ことは可能である。しかしながら、VOD,AODの設
備に使用される耐火物やタンディッシュの耐火物は“マ
グドロ”あるいは“マグクロ”と呼ばれるMgOを含有す
るものが一般的であり、本発明ではこのような汎用の溶
製方法によっても適正な合金を得ることができる。
【0037】なお、抽出分析法により測定される“介在
物Mg量”、及びJISに規定された化学分析法で測定さ
れる“酸可溶性Mg量",“酸可溶性Ca量",“酸可溶性Ca量
と酸素含有量の比(Ca/O)”を一定値に制限すること
は、仕上げ精錬におけるスラグ組成の制御とCa合金添加
の組み合わせにより達成される。
【0038】続いて、本発明を実施例により更に具体的
に説明する。
【実施例】ほぼ目的とするインバ−合金組成に調整され
た合金を、MgOるつぼを装着した真空高周波誘導加熱炉
で溶解すると共にスラグを用いた精錬を行い、Alを種々
の添加量で添加して脱酸してから、Ca−Si合金又はCa−
Ni合金を添加し、17kgの円柱状の鋳塊に鋳造すること
によって、表1に示す化学組成のインバ−合金を得た。
【0039】
【表1】
【0040】合金の化学組成は、後述する0.65mm厚仕上
げ焼鈍後の試料を用い、JISに規定された酸溶解法に
よる湿式分析を実施して測定した。また、介在物Mg量
は、Brメタノ−ル溶解法で5gの合金薄板試料を溶解
し、その残渣をアルカリ溶融(硼酸ナトリウムと混合し
て200〜300℃で溶融)して、酸処理,ICP分析
にて定量した。介在物Mg量の分析は、その測定精度を十
分とするために、このように試料のはかり取り量の大き
な分析が必要であった。
【0041】なお、前記精錬で使用したスラグの組成を
表2に示したが、表2には得られたインバ−合金中の介
在物組成(介在物中のMg,Al及びCaの含有量)の測定結
果も併記している。
【0042】
【表2】
【0043】ここで、介在物組成の分析は、鋳造直前に
“直径20mm×高さ50mmの溶湯分析用試料”を石英管
にて採取し、凝固したこの試料の鋳込みボトム側より1
5mm高さの断面を、Ca系介在物の溶解を防止するため非
水でダイアモンド砥石にて鏡面研磨し、介在物観察を行
うことにより実施した。介在物観察は、凝固表面より約
5mmの部位の検鏡面にて、約1mm平方以内の視野の中か
ら無作為に10個の介在物を選び、走査型電子顕微鏡内
でEDX分析した。観察された介在物はおよそ 0.5〜3
μmの大きさであり、化学組成の同定には介在物の中央
を15keVの加速電圧で1次電子を照射し、観測される
特性X線のうちの金属元素の組成を重量%で定量した。
この中には、Si,Mn等の酸化物やNbの炭窒化物も認めら
れるものも存在したが、組成の評価はAl,Mg,Caの3元
素に着目してその重量%とCa/Al比の平均値を求めた。
【0044】さて、鋳造して得た前記各インバ−合金の
鋳塊は、熱間鍛造,均質化熱処理,熱間圧延,焼き鈍し
焼鈍,冷間圧延を施すことによって“厚さ0.65mm×幅1
70mmの冷延板”とした。そして、この冷延板から“厚
さ0.65mm×幅50mm×長さ170mmの熱処理試験片”を
切り出し、赤外線加熱方式の熱処理炉により900℃に
1分間均熱してから5℃/sの冷却速度で冷却するという
仕上げ焼鈍処理を施した。
【0045】次いで、この焼鈍板から“厚さ0.65mm×幅
5mm×長さ15mmの熱膨張試験片”と、“厚さ0.65mm×
幅20mm×長さ170mmの JIS13B引張試験片”を切
り出し、30〜100℃の平均熱膨張係数の測定、弾性
係数の測定、 0.2%耐力(降伏強度)の測定、並びに引
張強度の測定を行った。
【0046】熱膨張係数の測定には、“0.65mm×幅5mm
×長さ15mmの試験片”を一旦0℃に冷却した後、5℃
/分の速度で昇温しながら伸びを測定し、30℃から1
00℃までの平均熱膨張係数を求めた。
【0047】また、高温延性(800℃での絞り)も評
価したが、高温延性の評価については、別途厚さ12mm
の熱延鋼板を作成し、結晶粒度調整のための1200℃
×1hの熱処理を施した後、“平行部が直径6mm×長さ
20mmの丸棒試験片”を機械加工により切り出し、高温
引張試験に供して実施した。高温引張試験は、Arガス雰
囲気中でまず1200℃に5分加熱し、800℃まで約
1分で降温し、1分間保持した後、1.25mm/分のクロス
ヘッド速度で破断まで引っ張った。この時の歪み速度
は、約1×10-3/sである。なお、高温延性は、断面絞り
を測定して評価した。
【0048】そして、各合金材について、エッチング特
性の評価も実施した。エッチング性は、厚さ0.65mmの薄
板を“#600研磨したワ−クロ−ルを備えた4段圧延
機”により0.25mm厚まで冷間圧延し、これを塩化第二鉄
溶液によりエッチングして評価した。エッチングの手法
としては、まず“幅50mm×長さ100mmの薄板試料”
の片面をシ−ルした後、0.20mmの板厚までハ−フエッチ
ングを施し、エッチング面を100〜500倍で光学顕
微鏡観察した。この観察面には介在物の脱落によるエッ
チング欠陥が現れるが、その最大寸法を評価した。
【0049】これらの調査結果を表2に併せて示す。な
お、エッチング特性の評価結果については、介在物の脱
落によるエッチング欠陥の最大寸法が20μmを超える
ものを「×」、10μm以上20μm未満のものを
「△」、10μm未満のものを「○」(合格)として表
示した。
【0050】前記表2に示される結果から次のことが分
かる。本発明合金では、酸化物系介在物の組成の指標で
あるCa/Al値が 0.3〜6.7 、Mg/Al値が 1.3以下であ
り、Mgを含有してはいるが適切な比率のCaを含有してい
る。なお、本発明合金では介在物の形状も球形のものが
主体であることが観察された。
【0051】また、本発明合金は、高温引張試験におけ
る800℃での絞りは50%以上を示し、熱間加工が良
好であることを確認できる。熱膨張係数は、本発明合金
では 1.0×10-6/K未満であり、一般的なインバ−合金
の熱膨張係数よりも3割程度小さな膨張係数を示した。
更に、本発明合金は 0.2%耐力(降伏強度)が300M
Pa以上の高強度を有しており、かつエッチング性が良好
であることを確認できる。
【0052】一方、比較合金の多くでは、酸化物系介在
物がCaを殆ど含まず、角張ったスピネル酸化物(MgO・
Al2 3 )あるいはMgO〜MgO・Al2 3 組成のものが
主体であった。このため、エッチング性が良好でなく、
かつ800℃での絞りが50%以下と熱間加工性も悪い
合金となっている。
【0053】Caを過剰に含有した比較合金Uでは、耐食
性の低い介在物となったためにエッチング時に多数の孔
食を生成し不良であった。比較合金Vは、Mnを 0.2%以
上含み、かつ強化元素であるC,Nbの含有量が非常に少
ないため、熱膨張係数が大きく、 0.2%耐力(降伏強
度)も300MPaを下回るものとなっている。また、比
較合金Vは弾性係数も小さめであった。
【0054】
【発明の効果】以上に説明した如く、この発明によれ
ば、従来のインバ−合金よりも低い熱膨張係数,高い強
度を有し、かつコスト的にも非常に有利なシャド−マス
ク用インバ−合金を提供することが可能となり、カラ−
テレビジョン用ブラウン管やコンピュ−タモニタ用ブラ
ウン管のシャド−マスク材の性能向上や低価格化に大き
く寄与し得るなど、産業上有用な効果がもたらされる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C21C 7/076 C21C 7/076 A C22C 38/54 C22C 38/54 H01J 29/07 H01J 29/07 Z (72)発明者 喜多 勇人 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 (72)発明者 西 隆之 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 (72)発明者 岡山 浩直 山口県下松市東豊井1296番地の1 東洋鋼 鈑株式会社技術研究所内 (72)発明者 福元 雅浩 山口県下松市東豊井1302番地 東洋鋼鈑株 式会社下松工場内 Fターム(参考) 4K013 AA01 AA07 BA05 BA14 CD04 DA10 EA03 EA05 EA25 5C031 EE05 EH04 EH06

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%にて、C: 0.003〜0.05%及びN
    b:0.01〜0.50%のうちの1種または2種,Ni:34.5〜3
    7.0%,Co: 0.5%以下,Al: 0.003〜0.05%,Ca:0.0
    002〜 0.004%,B:0〜0.0015%を含有すると共に、S
    i:0.10%以下,Mn:0.20%未満,P: 0.015%以下,
    S:O.0010%以下,Mg:0.0005%以下,Cu:0.2 %以
    下,Cr: 0.1%以下,V:0.05%以下,Mo:0.1 %以
    下,Ti:0.02%以下,N: 0.005%以下,O:0.0010〜
    0.005%,介在物Mg:0.0001〜0.0010%に規制され、か
    つ Ca/O: 0.1〜 2.0であり、残部がFe及び不可避的不
    純物よりなることを特徴とする、熱間加工性に優れたシ
    ャド−マスク用高強度インバ−合金。
  2. 【請求項2】 重量%にて、C: 0.003〜0.05%及びN
    b:0.01〜0.50%のうちの1種または2種,Ni:34.5〜3
    7.0%,Co: 0.5%以下,Al: 0.003〜0.05%,Ca:0.0
    002〜 0.004%,B:0〜0.0015%を含有すると共に、S
    i:0.10%以下,Mn:0.20%未満,P: 0.015%以下,
    S:O.0010%以下,Mg:0.0005%以下,Cu:0.2 %以
    下,Cr: 0.1%以下,V:0.05%以下,Mo:0.1 %以
    下,Ti:0.02%以下,N: 0.005%以下,O:0.0010〜
    0.005%,酸化物系介在物中のMg,Al,Ca元素の組成の
    和を100%としたときのそれぞれの元素の含有量がM
    g:3〜30%,Al:5〜65%,Ca:8〜80%の範囲に規
    制され、かつ Ca/Alの比率が 0.3〜10の範囲にあって、
    酸化物系介在物に付随してCa硫化物が析出しており、残
    部がFe及び不可避的不純物よりなることを特徴とする、
    熱間加工性に優れたシャド−マスク用高強度インバ−合
    金。
  3. 【請求項3】 重量%にて、Si含有量を0.03%以下に、
    またMn含有量を0.10%以下に規制して熱膨張係数を低減
    した、請求項1又は2に記載の熱間加工性に優れたシャ
    ド−マスク用高強度インバ−合金の製造方法。
  4. 【請求項4】 成分調整した合金溶湯を二次精錬するに
    際し、使用するスラグ中のCaOと Al23 の重量比(C
    /A)を 1.4〜 2.2の範囲とし、かつスラグ中のSiO2
    含有量を10重量%以下に、そしてスラグ中のMgO含有量
    を10重量%以下に調整してスラグ精錬を行い、その後鋳
    造開始までにCa合金を添加することによって合金の化学
    組成を請求項1乃至3の何れかに記載のものに制御する
    ことを特徴とする、熱間加工性に優れたシャド−マスク
    用高強度インバ−合金の製造方法。
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