JP2017172045A - 低熱膨張合金 - Google Patents

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Abstract

【課題】低い熱膨張係数、高いヤング率及び優れた熱間加工性を有する合金を提供する。【解決手段】本実施形態による低熱膨張合金は、質量%で、C:0.6〜1.8%、Mn:0.05〜2.0%、V:2.4〜10.0%、B:0.0020%以上かつ式(1)で定義されるF1%以下、Ni:30.0〜40.0%、Si:0.5%以下及びAl:0.1%以下からなる群から選択される1種以上、Co:0〜10.0%及びCr:0〜3.0%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(2)を満たす化学組成を有し、バナジウム炭化物の体積分率、C含有量、V含有量及びCr含有量が式(3)を満たす、低熱膨張合金。F1=(4−(V−50.94/12.01×C+Cr))×0.004375 (1)30.0≦Ni+Co≦40.0 (2)8.5≦バナジウム炭化物の体積分率(%)+1.8×(V−50.94/12.01×C+Cr) (3)【選択図】図1

Description

本発明は、合金に関し、さらに詳しくは、低熱膨張合金に関する。
低熱膨張合金として、インバー(商標)合金が知られている。インバー合金は、自発体積磁歪(インバー効果)により、室温〜300℃の範囲において、低い熱膨張係数を有する。そのため、熱の影響を受けても寸法が変化しにくい。インバー合金は、工作機械や精密測定機器等、高い寸法精度が求められる装置の部材に利用される。
しかしながら、インバー合金は熱膨張係数が小さい反面、ヤング率が低く、熱間加工性が低い。たとえば、インバー合金のヤング率は140GPa程度であり、一般的な鋼の2/3程度と低い。したがって、剛性が求められる部材にインバー合金を使用しにくい。加えて、インバー合金の熱間加工性の改善が求められている。
特開2015−178672号公報(特許文献1)は、インバー合金のヤング率を高める技術を提案する。特開2002−256395号公報(特許文献2)は、インバー合金の捻回特性を高める技術を提案する。特開平05−171357号公報(特許文献3)はインバー合金の熱間加工性を高める技術を提案する。
特許文献1に記載された低熱膨張合金は、質量%で、C:0.2〜2.0%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.05〜2.0%、Al:0.01〜0.14%、V:0.8〜10.0%、Ni:30.0〜40.0%、Co:0〜10.0%、及び、Nb及びTiの少なくとも1種:0〜4.0%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、30.0≦Ni+Co≦40.0を満たす化学組成を有する。低熱膨張合金は、V、Nb及びTiのいずれかを含む特定炭化物を、体積分率で2.5〜12.5%含有する。これにより、低い熱膨張係数及び高いヤング率を有する合金が得られる、と特許文献1には記載されている。
特許文献2に記載された低熱膨張合金は、質量%で、C:0.1〜0.4%、V:0.5超〜3.0%、及び、Ni:25〜50%を含有し、2≦V/C≦9を満たし、残部はFe及び不純物からなる。これにより、高い引張強さ、優れた捻回特性及び低い熱膨張特性を有する低熱膨張合金が得られる、と特許文献2には記載されている。
特許文献3に記載された低熱膨張合金は、C:0.003〜0.02wt%、Si:0.01〜2.0wt%、N:0.01wt%以下、Mn:0.01〜3.0wt%、Ni:30〜50wt%、Cr:0.01〜1.0wt%、Nb:1.0〜3.0wt%、B:0.0005〜0.010wt%及びS:0.01wt%以下を含有する。低熱膨張合金はさらに、B<15×10-3(1−0.32Nb)の関係を満足してB及びNbを含有し、残部がFe及び不純物からなる。これにより、鍛造割れや熱間圧延時の耳割れ現象を抑制し、かつ、低い熱膨張係数及び高い硬度を有する合金が得られる、と特許文献3には記載されている。
特開2015−178672号公報 特開2002−256395号公報 特開平05−171357号公報
E. A. Owen, E. L. Yates, and A. H. Sully: Proc. Phys. Soc. 49, 323(1937) Eremenko V.N., Kharkova A.M., Velikanova T.Y.: Isothermal section of the vanadium-rhenium-carbon system at 1950 °C. Dopovidi Akademii Nauk Ukrains'koi RSR, Seriya A: Fiziko-Matematichni ta Tekhnichni Nauki 5 (1984) 83-85 (in Ukrainian)
しかしながら、特許文献1〜特許文献3に記載された技術を用いても、インバー合金の低い熱膨張係数、高いヤング率及び優れた熱間加工性が得られない場合がある。
本発明の目的は、低い熱膨張係数、高いヤング率及び優れた熱間加工性を有する低熱膨張合金を提供することである。
本実施形態による低熱膨張合金は、質量%で、C:0.6〜1.8%、Mn:0.05〜2.0%、V:2.4〜10.0%、B:0.0020%以上かつ式(1)で定義されるF1%以下、Ni:30.0〜40.0%、Si:0.5%以下及びAl:0.1%以下からなる群から選択される1種以上、Co:0〜10.0%、及びCr:0〜3.0%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(2)を満たす化学組成を有する。低熱膨張合金のバナジウム炭化物の体積分率、炭素含有量、バナジウム含有量及びクロム含有量は式(3)を満たす。
F1=(4−(V−50.94/12.01×C+Cr))×0.004375 (1)
30.0≦Ni+Co≦40.0 (2)
8.5≦バナジウム炭化物の体積分率(%)+1.8×(V−50.94/12.01×C+Cr) (3)
ここで、式(1)〜式(3)の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態による低熱膨張合金は、低い熱膨張係数、高いヤング率及び優れた熱間加工性を有する。
図1は、実施例により得られた、ボロン含有量、固溶バナジウム量及びクロム含有量と、熱間加工性との関係を示す図である。
本発明者らは、低熱膨張合金の熱膨張係数、ヤング率及び熱間加工性について調査及び検討を行った。その結果、本発明者らは、次の知見を得た。
Niは、合金の自発体積磁歪を高め、その結果、合金の熱膨張係数を下げる。Ni含有量が30〜40質量%であれば、合金の熱膨張係数が低くなる。CoはNiを代替可能である。したがって、化学組成が式(2)を満たせば、合金の熱膨張係数が低くなる。
30.0≦Ni+Co≦40.0 (2)
式(2)の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
合金のヤング率を高めるためには、周期表4〜6族の元素(以下、特定元素と称する)を利用することが有効である。特定元素を析出物と複合化させることで合金のヤング率を高めることができる。しかしながら、この場合、析出物が熱膨張することにより、合金の熱膨張係数が増大する。
したがって、熱膨張係数が低く、かつ、ヤング率の高い化合物を分散させる方法により合金のヤング率を高める。
バナジウム炭化物は、熱膨張係数が低く、かつ、ヤング率が高い。さらに、バナジウム炭化物は、溶解した合金が凝固する過程で容易に晶出する。バナジウム炭化物はさらに、他の特定元素の炭化物と比較して、低温で晶出する。そのため、バナジウム炭化物は、合金中に分散しやすく、合金の熱間加工性及び機械的特性の低下を招きにくい。したがって、合金のヤング率を高める化合物として、バナジウム炭化物を利用する。
さらに、バナジウム及びクロムが合金中に固溶することによっても、合金のヤング率が高まる。したがって、合金中にバナジウム炭化物を分散させ、さらに、合金中にバナジウム及びクロムを固溶させる。これにより、合金のヤング率をさらに高める。具体的には、バナジウム炭化物の体積分率、炭素含有量、バナジウム含有量及びクロム含有量が式(3)を満たせば、合金のヤング率が高まる。
8.5≦バナジウム炭化物の体積分率(%)+1.8×(V−50.94/12.01×C+Cr) (3)
式(3)の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態ではさらに、ボロン(B)を固溶させることにより合金の熱間加工性を向上させる。しかしながら、ボロンは、バナジウムやクロムと親和性が高く、ホウ化物を形成しやすい。ボロンがバナジウムやクロムとホウ化物を形成すれば、合金の熱間加工性が低下する。
そこで、ボロン含有量、固溶バナジウム量及びクロム含有量の関係を調整して、ホウ化物の形成を抑制する。具体的には、ボロン含有量の上限が式(1)で定義されるF1%以下であれば、ホウ化物の形成が抑制される。この場合、合金の熱間加工性が向上する。
F1=(4−(V−50.94/12.01×C+Cr))×0.004375 (1)
ここで、式(1)の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
図1は、後述する実施例の試験結果をプロットした図である。図1の横軸は合金のボロン含有量であり、縦軸は(V−50.94/12.01×C+Cr)である。図1中、「○」印は、絞り値が50%以上であったことを示す。図1中、「●」印は、絞り値が50%未満であったことを示す。図1中、傾斜した破線は式:F1=(4−(V−50.94/12.01×C+Cr))×0.004375を表す。ここで、上記式の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
図1を参照して、合金のボロン含有量及び(V−50.94/12.01×C+Cr)が適切に調整されることにより、合金の熱間加工性が向上する。具体的には、ボロン含有量が0.0020%以上であり、かつ、F1%以下である場合(図1中の破線領域内である場合)、合金の熱間加工性が向上する。
以上の知見に基づいて完成した本実施形態による低熱膨張合金は、質量%で、C:0.6〜1.8%、Mn:0.05〜2.0%、V:2.4〜10.0%、B:0.0020%以上かつ式(1)で定義されるF1%以下、Ni:30.0〜40.0%、Si:0.5%以下及びAl:0.1%以下からなる群から選択される1種以上、Co:0〜10.0%、及び、Cr:0〜3.0%、を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(2)を満たす化学組成を有する。低熱膨張合金のバナジウム炭化物の体積分率、炭素含有量、バナジウム含有量及びクロム含有量は式(3)を満たす。
F1=(4−(V−50.94/12.01×C+Cr))×0.004375 (1)
30.0≦Ni+Co≦40.0 (2)
8.5≦バナジウム炭化物の体積分率(%)+1.8×(V−50.94/12.01×C+Cr) (3)
ここで、式(1)〜式(3)の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
上記低熱膨張合金の化学組成は、Co:0.1〜10.0%を含有してもよい。
上記低熱膨張合金の化学組成は、Cr:1.0〜3.0%を含有してもよい。
以下、本実施形態の低熱膨張合金について詳しく説明する。
[化学組成]
本実施形態の低熱膨張合金は、次の化学組成を有する。化学組成について「%」は、特に断りが無い限り質量%を意味する。
C:0.6〜1.8%
炭素(C)は、バナジウム(V)と結合してバナジウム炭化物を形成する。バナジウム炭化物のヤング率は高い。さらに、バナジウム炭化物の熱膨張係数は低く、オーステナイトの半分程度である。したがって、バナジウム炭化物は、合金の熱膨張率の上昇を抑えつつ、ヤング率を高める。C含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、C含有量が高すぎれば、Cが母相であるオーステナイト相中に固溶する。Cが母相に固溶すれば、熱膨張係数が増大する。したがって、C含有量は0.6〜1.8%である。C含有量の下限は、好ましくは0.7%であり、より好ましくは0.75%であり、さらに好ましくは0.8%である。C含有量の上限は、好ましくは1.5%であり、より好ましくは1.4%であり、さらに好ましくは1.3%である。
Mn:0.05〜2.0%
マンガン(Mn)は不純物である硫黄(S)と結合し、合金の熱間加工性を改善する。Mn含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、合金の自発体積磁歪が減少する。その結果、合金の熱膨張係数が高まる。したがって、Mn含有量は0.05〜2.0%である。Mn含有量の下限は、好ましくは0.05%よりも高く、より好ましくは0.08%であり、さらに好ましくは0.15%である。Mn含有量の上限は、好ましくは2.0%未満であり、より好ましくは1.0%である。
V:2.4〜10.0%
バナジウム(V)は炭素(C)と結合してバナジウム炭化物として合金中に晶出する。これにより、合金の熱膨張係数の増加を抑えつつ、合金のヤング率を高めることができる。また、Vが合金中に固溶することによっても、合金のヤング率が高まる。V含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、V含有量が高すぎれば、Vが母相に過剰に固溶して、合金の熱膨張係数が増大する。V含有量が高すぎればさらに、バナジウム炭化物が粗大化し、合金の熱間加工性が低下する。したがって、V含有量は2.4〜10.0%である。V含有量の下限は、好ましくは2.8%であり、より好ましくは3.0%であり、さらに好ましくは3.2%である。V含有量の上限は、好ましくは10.0%未満であり、より好ましくは8.0%であり、さらに好ましくは6.0%である。
B:0.0020%以上かつ式(1)で定義されるF1%以下
F1=(4−(V−50.94/12.01×C+Cr))×0.004375 (1)
式(1)の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
ボロン(B)は合金中に固溶して合金の熱間加工性を向上する。B含有量が低すぎれば、この効果が得られない。B含有量が0.0020%以上であれば、上記効果が得られる。
上述のとおり、Bは合金中に固溶して合金の熱間加工性を向上する。しかしながら、BはV及びCrとの親和性が高いため、B含有量が高すぎれば、BがV及びCrと結合してホウ化物を形成する。BがV及びCrとホウ化物を形成すれば、合金の熱間加工性が低下する。そこで、B含有量、固溶V量及びCr含有量の関係を調整することで、ホウ化物の形成を抑制する。これにより、合金の熱間加工性を向上させる。
F1は固溶V量とCr含有量の和の指標である。バナジウム炭化物は主にV及びCで形成されるため、(V−50.94/12.01×C+Cr)は固溶V量とCr含有量の質量%の和を表す。F1中の50.94はVの原子量、12.01はCの原子量である。B含有量がF1%以下であれば、B含有量、固溶V量及びCr含有量が適切に調整され、ホウ化物の形成が抑制されるため、合金の熱間加工性が向上する。したがって、B含有量は0.0020%以上かつF1%以下である。B含有量の下限は、好ましくは0.0030%であり、より好ましくは0.0040%であり、さらに好ましくは0.0050%である。
Ni:30.0〜40.0%
ニッケル(Ni)は、合金の自発体積磁歪を高め、その結果、合金の熱膨張係数を下げる。Ni含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Ni含有量が高すぎれば、合金の熱膨張係数がかえって増大する。したがって、Ni含有量は30.0〜40.0%である。Ni含有量の下限は、好ましくは30.0%よりも高く、より好ましくは32.0%であり、さらに好ましくは33.0%である。Ni含有量の上限は、好ましくは40.0%未満であり、より好ましくは38.0%であり、さらに好ましくは35.0%である。
低熱膨張合金はさらに、Si及びAlからなる群から選択される1種以上を含有する。
Si:0.5%以下
シリコン(Si)は合金を脱酸する。しかしながら、Si含有量が高すぎれば、合金の自発体積磁歪が減少し、合金の熱膨張係数が高まる。したがって、Si含有量は0.5%以下である。Si含有量の好ましい下限は0.01%である。Si含有量の好ましい上限は0.3%であり、より好ましくは0.2%である。
Al:0.1%以下
アルミニウム(Al)は合金を脱酸する。しかしながら、Al含有量が高すぎれば、合金の自発体積磁歪が減少する。その結果、合金の熱膨張係数が高まる。したがって、Al含有量は0.1%以下である。Al含有量の下限は、好ましくは0.01%であり、より好ましくは0.02%であり、さらに好ましくは0.03%である。Al含有量の上限は、好ましくは0.1%未満であり、より好ましくは0.05%である。本実施形態において、Al含有量とは、全Alの含有量である。
本実施形態の低熱膨張合金の残部はFe及び不純物である。ここで、不純物とは、合金を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入されるものであって、本実施形態の低熱膨張合金に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。不純物はたとえば、燐(P)、硫黄(S)、窒素(N)、酸素(O)等である。
本実施形態の低熱膨張合金はさらに、Feの一部に代えて、Coを含有してもよい。
Co:0〜10.0%
コバルト(Co)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有された場合、Coは合金の熱膨張係数を低下する。しかしながら、Co含有量が高すぎれば、熱膨張係数がかえって増大する。したがって、Co含有量は0〜10.0%である。Co含有量の下限は、好ましくは0.1%であり、より好ましくは2.0%であり、さらに好ましくは4.0%である。Co含有量の上限は、好ましくは10.0%未満であり、より好ましくは8.0%であり、さらに好ましくは6.0%である。
本実施形態の低熱膨張合金はさらに、Feの一部に代えて、Crを含有してもよい。
Cr:0〜3.0%
クロム(Cr)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有された場合、Crは合金中に固溶して、合金のヤング率を高める。しかしながら、Crの含有量が高すぎれば、過剰に多く固溶したCrにより熱膨張係数が増大する。したがって、Cr含有量は0〜3.0%である。Cr含有量の下限は、好ましくは1.0%であり、より好ましくは1.5%である。Cr含有量の上限は、好ましくは2.5%であり、より好ましくは2.0%である。
[式(2)について]
上記化学組成はさらに、式(2)を満たす。
30.0≦Ni+Co≦40.0 (2)
式(2)の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
F2=Ni+Coと定義する。F2は、合金中のNi及びCoの合計含有量である。上述のとおり、合金のNi含有量が30.0〜40.0%であれば、合金の熱膨張係数が低くなる。CoはNiと同様の作用を有する。したがって、F2が式(2)を満たせば、合金の熱膨張係数が低下する。F2が低すぎれば、又は、F2が高すぎれば、熱膨張係数が高くなる。したがって、F2は30.0〜40.0である。F2の下限は、好ましくは32.0であり、さらに好ましくは33.0である。F2の上限は、好ましくは38.0である。
[式(3)について]
上記化学組成及びバナジウム炭化物の体積分率は、式(3)を満たす。
8.5≦バナジウム炭化物の体積分率(%)+1.8×(V−50.94/12.01×C+Cr) (3)
ここで、式(3)の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態では、合金中にバナジウム炭化物を分散させることで、合金のヤング率を高める。本実施形態ではさらに、合金中に固溶したバナジウム及びクロムにより、合金のヤング率をさらに高める。式(3)中、「V−50.94/12.01×C+Cr」は固溶バナジウム量及びクロム含有量の和を表す。バナジウム炭化物の体積分率、固溶バナジウム量及びクロム含有量が式(3)を満たせば、合金のヤング率が高まる。
バナジウム炭化物の体積分率は次の方法で測定する。10%AA系電解液(10%アセチルアセトン‐1%テトラメチルアンモニウムクロライド‐メタノール電解液)を用いて試験材を電解する。電解時の電流は20mA/cm2とする。電解液を200nmのフィルターでろ過して残渣の質量を測定する。電解前の試験材の質量と電解後の試験材の質量から電解量を求める。残渣が全てバナジウム炭化物であると仮定し、電解量と残渣の質量とから、バナジウム炭化物のモル分率を算出する。次に、求めたモル分率を用い、マトリクスの格子定数と、バナジウム炭化物の格子定数に基づいて、バナジウム炭化物の体積分率(体積%)を算出する。マトリクスの格子定数は、非特許文献1のインバー合金の3.59Åを、特定炭化物の格子定数は、非特許文献2のVCの4.17Åを用いる。上記方法では、長径が200nm未満のバナジウム炭化物は残渣には含まれない。しかしながら、長径が200nm未満のバナジウム炭化物は顕著に少ないため、無視できる。
[製造方法]
上述の低熱膨張合金の製造方法の一例は次のとおりである。上記化学組成を有する溶鋼を製造する。溶鋼を用いて造塊法によりインゴットを製造する。製造されたインゴットに対して、熱間加工を実施して合金を製造する。熱間加工はたとえば、熱間鍛造である。熱間鍛造温度はたとえば、850〜1150℃である。溶解された合金を鋳造してそのまま合金材としてもよい。熱間鍛造後又は鋳造後の合金に対して、溶体化処理等の熱処理を実施してもよい。熱処理を施しても、バナジウム炭化物の体積分率はほとんど変化しない。本実施形態の低熱膨張合金では、炭素(C)は炭化物として晶出する。
以上の工程により、本実施形態の低熱膨張合金を製造できる。
表1に示す化学組成の供試材を準備した。
Figure 2017172045
各供試材を真空中で誘導溶解し、30kg、直径100mmのインゴットを製造した。製造されたインゴットを1200℃に加熱した後、850〜1150℃で熱間鍛造し、厚さ16mmの板材とした。
[バナジウム炭化物の体積分率の測定試験]
上記板材から長さ50mm、幅10mm、厚さ10mmの試験片を作製した。上述の方法により、バナジウム炭化物の体積分率(%)を測定した。結果を表2に示す。
[熱膨張係数測定試験]
上記板材から直径3mm、長さ15mmの試験片を作製した。試験片を用いて、熱膨張係数を求めた。具体的には、水平示差検出方式の測定装置を用いて、5℃/minの速度で昇温し、30〜100℃の平均熱膨張係数を求めた。結果を表2に示す。
[ヤング率測定試験]
上記板材から長さ60mm、幅10mm、厚さ1.5mmの試験片を作製した。試験片を用いてヤング率を求めた。具体的には、横共振法の測定装置を用いて、ヤング率を求めた。結果を表2に示す。
[熱間引張試験]
インゴットから試験片を切り出し、試験片に対して、グリーブル試験機による定ひずみ速度熱間引張試験を実施した。具体的には、上記インゴットから、インゴットの柱状晶成長方向に対し、試験片の軸が垂直になるよう、平行部の直径が6mm、平行部の長さが65mmの引張試験片を採取した。真空下で、試験片を1100℃で3分間保持した後、1分間で1000℃まで冷却し、その温度で10/sのひずみ速度で引張って破断し、絞り値を求めた。結果を表2に示す。
Figure 2017172045
[試験結果]
表1及び表2を参照して、試験番号1〜試験番号8、試験番号24及び試験番号27〜試験番号30の合金の化学組成は適切であり、式(2)及び式(3)を満たした。そのため、これらの試験番号の合金の熱膨張係数は4×10-6/℃以下であり、ヤング率は160GPa以上であり、絞り値は50%以上であった。
一方、試験番号9及び試験番号10の合金は式(3)を満たさなかった。そのため、試験番号9及び試験番号10の合金のヤング率は160GPa未満であった。
試験番号11の合金では、B含有量がF1を超え、かつ、式(3)を満たさなかった。そのため、試験番号11の合金のヤング率は160GPa未満であり、絞り値は50%未満であった。
試験番号12〜試験番号15の合金では、B含有量がF1を超えた。そのため、試験番号12〜試験番号15の合金の絞り値は50%未満であった。
試験番号16〜試験番号20の合金は、B含有量が0.0020%未満であった。そのため、試験番号16〜試験番号20の合金の絞り値は50%未満であった。
試験番号21の合金では、B含有量がF1を超えた。そのため、試験番号21の合金では、絞り値が50%未満であった。
試験番号22の合金では、C含有量が1.90%と高く、V含有量が10.50%と高かった。そのため、試験番号22の合金では、熱膨張係数が4.0×10-6/℃を超え、絞り値が50%未満であった。
試験番号23の合金では、C含有量が0.20%と低く、V含有量が0.90%と低かった。そのため、試験番号23の合金では、ヤング率が160GPa未満であった。
試験番号25の合金では、Ni含有量が低く、式(2)を満たさなかった。そのため、試験番号25の合金では、熱膨張係数が4.0×10-6/℃を超えた。
試験番号26の合金では、Ni含有量が高く、式(2)を満たさなかった。そのため、試験番号26の合金では、熱膨張係数が4.0×10-6/℃を超えた。
試験番号31の合金では、Cr含有量が高く、B含有量がF1を超えた。そのため、熱膨張係数が4.0×10-6/℃を超え、絞り値が50%未満であった。
試験番号32の合金では、Cr含有量は適切であったが、B含有量がF1を超えた。そのため、絞り値が50%未満であった。
試験番号33の合金では、Ni含有量及びCo含有量は適切であったが、式(2)を満たさなかった。そのため、試験番号33の合金では、熱膨張係数が4.0×10-6/℃を超えた。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.6〜1.8%、
    Mn:0.05〜2.0%、
    V:2.4〜10.0%、
    B:0.0020%以上かつ式(1)で定義されるF1%以下、
    Ni:30.0〜40.0%、
    Si:0.5%以下及びAl:0.1%以下からなる群から選択される1種以上、
    Co:0〜10.0%、及び、
    Cr:0〜3.0%、
    を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(2)を満たす化学組成を有し、
    バナジウム炭化物の体積分率、炭素含有量、バナジウム含有量及びクロム含有量が式(3)を満たす、低熱膨張合金。
    F1=(4−(V−50.94/12.01×C+Cr))×0.004375 (1)
    30.0≦Ni+Co≦40.0 (2)
    8.5≦バナジウム炭化物の体積分率(%)+1.8×(V−50.94/12.01×C+Cr) (3)
    ここで、式(1)〜式(3)の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
  2. 請求項1に記載の低熱膨張合金であって、
    前記化学組成は、Co:0.1〜10.0%を含有する、低熱膨張合金。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の低熱膨張合金であって、
    前記化学組成は、Cr:1.0〜3.0%を含有する、低熱膨張合金。
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