JP3418278B2 - 低芳香族アミノ酸含量のペプチド混合物の製造法 - Google Patents

低芳香族アミノ酸含量のペプチド混合物の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、芳香族アミノ酸の
摂取を制限する必要のある患者、例えばフェニルアラニ
ンの摂取制限を必要とするフェニルケトン尿症患者、並
びにチロシン及びフェニルアラニンの摂取制限を必要と
する肝疾患患者が、蛋白質源として日常的に摂取するこ
とが可能である、芳香族アミノ酸含量が少なく、かつア
ミノ酸バランスが良好な低芳香族アミノ酸含量のペプチ
ド混合物を、一定の品質で、原料蛋白質由来の芳香族ア
ミノ酸以外の必須アミノ酸を有効に回収することにより
効率的かつ経済的に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】蛋白質中の芳香族アミノ酸[チロシン
(以下Tyrと記載することがある)及びフェニルアラ
ニン(以下Pheと記載することがある)]は、食品蛋
白質中に普通に存在するアミノ酸であるが、特定の疾患
を有する患者においてはその摂取が制限されている。例
えば、フェニルケトン尿症(以下PKUと記載すること
がある)は、PheをTyrに変換するフェニルアラニ
ン水酸化酵素が先天的に欠如しているため、Pheが血
液中に蓄積され、神経系の障害、発育障害を惹起する先
天性代謝異常症である。従って、PKU患者は体内にP
heが蓄積しないよう医師の指導に基づいて、Pheの
摂取量を厳密に制御しなければならないのである。
【0003】また、肝疾患患者、例えば、肝硬変患者で
は、肝臓の機能、即ち肝臓での処理能力が低下し、血液
中の芳香族アミノ酸が増加するとともに、バリン、ロイ
シン及びイソロイシンの分岐鎖アミノ酸(以下BCAA
と記載することがある)が減少する。そのため、芳香族
アミノ酸が血液・脳関門において、BCAAの脳内輸送
を競合的に阻害し、芳香族アミノ酸が多く脳内に取り込
まれ、肝性昏睡を発生させる。そのため、肝疾患患者で
は、芳香族アミノ酸の摂取制限及びBCAAの補給が必
要であり、BCAA/芳香族アミノ酸比の高い蛋白質源
が求められている。
【0004】従来、これらの患者は、食品又は乳児用調
製乳の蛋白質成分の一部若しくはすべてを、Phe、又
はTyr及びPheを含まないアミノ酸混合物に置換し
て摂取する必要があった。しかしながら、このようなア
ミノ酸混合物は、アミノ酸特有の不快な風味を呈するた
め、そのことが、しばしば摂取を妨げる要因となり、そ
れによって治療効果が低下するばかりではなく、腸管で
の浸透圧が高いために下痢を惹起する等の欠点があり、
しかも、そのようなアミノ酸混合物は一般に高価である
ことから、患者、その家族又は医師から、安価で、風味
が良く、食事療法に好適な低芳香族アミノ酸含量の蛋白
質源が待望されていた。
【0005】その一つの解決方法として、蛋白源として
κ−カゼイングリコマクロペプチド(以下GMPと記載
することがある)を用いる方法が開示されている(特開
平4−126051号公報)。GMPは、その64個の
アミノ酸配列中にPheを全く含まず、また分子量が
8,000と高く浸透圧上昇の問題もほとんどないた
め、PKU用蛋白質源として有効である。しかしなが
ら、その原料であるκ−カゼインは、牛乳カゼインの1
3%(重量。以下特に断りのない限り同じ)程度含有さ
れているに過ぎず、更にGMPはその1%程度の収量で
あることから、GMPを単離するための操作が極めて繁
雑であり、高価にもなり工業的生産のためには不都合で
あった。しかも、最近の栄養学的知見によれば、GMP
のようなマクロペプチドよりもオリゴペプチドの方が消
化吸収性に優れていることが明らかになっている。
【0006】低芳香族アミノ酸含量のペプチドを得る方
法として、例えば、蛋白質を蛋白質分解酵素で分解し、
芳香族アミノ酸の少ない画分をゲル濾過により回収し、
低芳香族アミノ酸含量のペプチドを得る方法が知られて
いる[アグリカルチュラル・バイオロジカル・ケミスト
リー(Agricaltural Biological Chemistry )、第50
巻、第2929〜2931ページ、1986年及び特開
平2−138991号公報]。
【0007】更に、蛋白質を水系下で、エキソペプチダ
ーゼで処理するか、又はエンドペプチダーゼで処理後エ
キソペプチダーゼで処理し、芳香族アミノ酸をほとんど
含まないポリペプチドと遊離芳香族アミノ酸又は芳香族
アミノ酸を末端に有する低分子ペプチドを活性炭を用い
て吸着し、逆浸透膜又はイオン交換性電気透析膜を用い
て低分子物質を分離し、低芳香族アミノ酸含量のペプチ
ドを製造する方法も開示されている(特公平2−540
70号公報)。これらの方法により、低芳香族アミノ酸
含量のペプチドを工業的に製造することが可能となっ
た。
【0008】また、動植物蛋白質を水系下にエンドプロ
テアーゼ及びエキソプロテアーゼを用いて中性域で酵素
分解し、吸着剤で処理し、必要により濃縮し、乾燥する
ことを特徴とする分枝鎖アミノ酸/芳香族アミノ酸モル
比が7以上、芳香族アミノ酸含量が0.1〜2.5重量
%のオリゴペプチド混合物及びその製造法が開示されて
いる(特開平3−272694号公報)。
【0009】更に、アミノ酸スコアの高い蛋白質を変性
させ、酵素を用いて加水分解し、必要あれば固液分離を
行った後、吸着剤で処理することを特徴とする分枝鎖ア
ミノ酸/芳香族アミノ酸モル比が10以上と高く、芳香
族アミノ酸含量が0.1〜2.0重量%未満のペプチド
混合物及びその製造法が示されている(特開平5−27
6896号公報)。
【0010】一方、10〜70%の低い食塩阻止率(以
下10〜70%の低い食塩阻止率を単に、低食塩阻止率
と記載する)の逆浸透膜を用いる方法が知られている。
このような逆浸透膜は、ナノ・フィルトレーション膜又
はルーズ逆浸透(ルーズRO)膜とも呼ばれ、分子量が
数十から数百程度の分子を透過し、それより大きい分子
量の物質は透過しない特性を有しており、食品及び医薬
品の製造においては、塩類、糖、アミノ酸等の除去工程
に利用されている。例えば、低食塩阻止率の逆浸透膜処
理により、牛乳カゼインの酵素分解物中の遊離アミノ酸
を膜透過画分側に除去し、膜非透過画分中のペプチド混
合物の風味を改善することを目的にした研究が報告され
ている(日本食品工業会誌、第39巻、第9号、763
ページ、1992年)。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】前記従来技術に記載し
たとおり、従来、芳香族アミノ酸含量の少ないペプチド
混合物を製造する場合、酵素によって蛋白質を分解して
得たペプチド混合物から、芳香族アミノ酸含量の少ない
画分をゲル濾過により回収する方法、活性炭等の吸着剤
により芳香族アミノ酸を除去する方法が採用されてい
た。しかしながら、これらの従来の方法で除去されるア
ミノ酸は、遊離芳香族アミノ酸に限らず、芳香族アミノ
酸が末端に結合した低分子量のペプチド、他の疎水性ア
ミノ酸も一部同時に吸着、除去され、その結果、製造さ
れる低芳香族アミノ酸含量のペプチドの回収率が低下す
るばかりではなく、栄養学的にもアミノ酸バランスが喪
失する場合もあった。そのため、不足する必須アミノ酸
を添加して補充する必要があり、そのことが、風味の劣
化、コストの上昇をもたらすという欠点があった。
【0012】また、芳香族アミノ酸の除去に用いた活性
炭は、酸及びアルカリによる再生が通常は困難であり、
使用後は廃棄せざるをえず、その廃棄物が多量に発生す
ることになるため環境に対する配慮の点からも問題であ
った。更に、樹脂に吸着させる方法では、樹脂の再生は
容易であるが、吸着した芳香族アミノ酸以外のアミノ酸
及び芳香族アミノ酸を含まないペプチド混合物を回収す
る場合、樹脂の再生に用いた酸又はアルカリが多量に混
在しており、これらを除去するための操作が繁雑であ
り、かつアミノ酸の回収率も低いのが実状であった。以
上のように、従来の方法では、得られる低芳香族アミノ
酸含量のペプチド混合物の構成アミノ酸バランス、その
回収率等に問題があった。
【0013】このような状況の中で、本発明者らは、前
記従来技術に鑑みて、芳香族アミノ酸の含量が少なく、
かつアミノ酸バランスが良好なペプチド混合物を効率良
く製造する方法を開発することを目標として鋭意研究を
積み重ねた結果、特定の蛋白質加水分解液を使用し、食
塩阻止率10〜70%の逆浸透膜を用いて、一定の条件
下に原料蛋白由来の芳香族アミノ酸以外の必須アミノ酸
を有効に回収することにより所期の目的を達成し得るこ
とを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0014】本発明は、芳香族アミノ酸の摂取を制限す
る必要のある患者が、蛋白源として日常的に摂取するこ
とが可能な特定のペプチド混合物を製造する方法を提供
することを目的とするものである。また、本発明は、芳
香族アミノ酸の含量が少なく、かつアミノ酸バランスが
良好なペプチド混合物を、一定の品質で、原料蛋白質由
来の芳香族アミノ酸以外の必須アミノ酸を有効に回収す
ることにより効率良く製造する方法を提供することを目
的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】このような課題を解決す
るための本発明は、蛋白質を加水分解して、少なくとも
90%(重量)以上のチロシン及びフェニルアラニンを
遊離させた蛋白質の加水分解液を、その遊離芳香族アミ
ノ酸の含量を予め設定された一定のレベルに低下させる
ために、食塩阻止率10〜70%の逆浸透膜を用いて逆
浸透処理し、次いで、前記工程で得られた膜非透過画分
と前記工程で得られた膜透過画分から芳香族アミノ酸を
除去した膜透過画分とを混合して、低芳香族アミノ酸含
量のペプチド混合物を回収するか、又は前記工程で得ら
れた膜非透過画分と前記工程で得られた膜透過画分から
芳香族アミノ酸を除去した膜透過画分とから、それぞれ
別個に低芳香族アミノ酸含量のペプチド混合物を回収
し、それらを混合することを特徴とする低芳香族アミノ
酸含量のペプチド混合物の製造法、である。
【0016】また、本発明の他の態様は、食塩阻止率1
0〜70%の逆浸透膜による逆浸透処理が、経時的にか
つ短時間に膜非透過画分の遊離芳香族アミノ酸の濃度の
測定を継続しながら行われる前記の低芳香族アミノ酸含
量のペプチド混合物の製造法、である。更に、本発明の
他の態様は、膜非透過画分の遊離芳香族アミノ酸の濃度
の測定が、酵素膜センサーにより行われる前記の低芳香
族アミノ酸含量のペプチド混合物の製造法、である。
【0017】
【発明の実施の形態】次に本発明について詳述する。本
発明の出発原料として使用する蛋白質は、獣乳、卵、魚
肉、畜肉等に由来する動物性蛋白質、大豆、小麦等に由
来する植物性蛋白質、又はこれらの任意の混合物であ
り、特に限定されるものではない。また、これらの蛋白
質を、限外濾過、イオン交換樹脂処理等の処理により濃
縮した蛋白質濃縮物も使用することができる。本発明に
よって製造される低芳香族アミノ酸含量のペプチド混合
物が肝疾患患者、PKU患者に投与されることを考慮す
れば、Phe、Tyr以外の必須アミノ酸をバランス良
く含む蛋白質原料を使用するのが望ましい。また、前記
の蛋白質を予め軽度に加水分解した分解物であって、更
に蛋白質分解酵素により分解し得る大きい分子量のペプ
チド混合物を出発原料とすることもできる。
【0018】前記出発原料を、蛋白質換算で10%前後
の濃度で水に溶解し、殺菌のため及び蛋白質の酵素分解
を効率良く行うため、65〜90℃の温度範囲で5〜3
0分間加熱処理してもよい。次いで溶液のpHをアルカ
リ又は酸溶液を用いて使用する蛋白質分解酵素の至適p
H付近に調整し、出発原料水溶液を調整する。次いで、
前記出発原料水溶液に蛋白質分解酵素を添加するが、蛋
白質分解酵素の添加は一括添加、又は少量に分割して逐
次添加してもよい。使用する蛋白質分解酵素としては、
動物由来(例えば、パンクレアチン、ペプシン、トリプ
シン、キモトリプシン等)、植物由来(例えば、パパイ
ン、ブロメライン等)、微生物由来(例えば、酵母、カ
ビ、細菌、放線菌、乳酸菌等)のエンドプロテアーゼ及
びエキソプロテアーゼであるが、エンドプロテアーゼと
しては、Phe等の芳香族アミノ酸に対して親和性があ
るものが好ましく、例えば、ペプシン、キモトリプシン
又はキモトリプシンを含むパンクレアチン等が望まし
い。エキソプロテアーゼとしては、Phe等の芳香族ア
ミノ酸を末端に有するペプチドに対してペプチダーゼ活
性を示すものが好ましく、黒麹菌、放線菌、酵母等に由
来するエキソプロテアーゼを好適な例として示すことが
できる。
【0019】芳香族アミノ酸を十分に遊離させるために
は、前記エンドプロテアーゼとエキソプロテアーゼとを
組み合わせて用いることが望ましく、出発原料の蛋白質
溶液に一括添加して分解反応を行うか、又はエンドプロ
テアーゼを添加し、一定時間経過後にエキソプロテアー
ゼを添加し、段階的に分解反応を行うこともできる。所
定量の酵素を添加した出発原料水溶液を、通常、酵素の
至適温度に所定時間保持して蛋白質の分解を開始する
が、分解中に微生物の増殖が懸念される場合には、必要
に応じて酵素の至適温度より高温域又は低温域の温度に
所定時間保持して蛋白質の酵素による加水分解を行うこ
ともできる。しかしながら、酵素の至適温度よりも極端
に異なる温度範囲では、加水分解反応の効率が低下する
ので、通常40〜60℃の温度範囲が望ましい。
【0020】芳香族アミノ酸を蛋白質から効率良く除去
するためには、蛋白質の加水分解反応において、芳香族
アミノ酸を少なくとも90%以上遊離させることが必要
であり、そのためには、加水分解時間は酵素添加から少
なくとも6時間以上、より好ましくは10時間以上、行
うが、分解液の細菌増殖が懸念される場合には、前記の
とおり反応温度も適宜考慮し、10時間以上20時間以
下とするのが望ましい。 酵素反応の停止は、分解液中
の酵素の失活又は除去によって行われ、常法による加熱
処理、限外濾過(ウルトラフィルトレーション)膜等を
用いる分解液からの酵素の除去等により実施することが
できる。加熱処理の加熱温度と保持時間は、使用した酵
素の熱安定性を考慮し、十分に失活できる条件を適宜設
定することができるが、例えば、80〜130℃の温度
範囲で30分〜2秒間の保持温度で行うことができる。
【0021】分解液中の酵素の失活又は除去後、常法に
より分解液を冷却し、硅藻土(セライト)濾過、精密濾
過(マイクロフィルトレーション)、限外濾過、遠心分
離等の方法により分解液から沈殿を除去する。このと
き、Tyrの溶解度が低いことを利用して、分解液を濃
縮してTyrを析出させて濾過を行うことにより、後記
する芳香族アミノ酸の除去を効率よく行うこともでき
る。分解液からの芳香族アミノ酸の除去は、10〜70
%の低い食塩阻止率の逆浸透膜を用いることにより、遊
離芳香族アミノ酸を透過画分に移行させ、芳香族アミノ
酸を実質的に含まないペプチド混合物成分を非透過画分
に残留させる。
【0022】本発明の方法において使用する低食塩阻止
率の逆浸透膜は、公知のものを用いることができ、材質
はスルフォン化ポリエーテルスルフォン系、ポリアミド
系、酢酸セルロース系等であり、また膜形状は、スパイ
ラル型、チューブラー型、平膜等どのような形式であっ
ても使用できる。食塩阻止率は、10〜70%のものが
望ましく、食塩阻止率が70%を超える場合には芳香族
アミノ酸の透過性が低く、芳香族アミノ酸の除去が十分
になされず、また食塩阻止率が10%未満の場合には芳
香族アミノ酸以外の低分子量ペプチド等も透過するため
アミノ酸の回収率が低下する。
【0023】以上のような特性を有する低食塩阻止率の
逆浸透膜として、NTR−7410、NTR−743
0、NTR−7450、NTR−7250(いずれも日
東電工社製)、SU−610、SU−620、SC−2
20S(いずれも東レ社製)、CA865PP、NF4
5、NF70(いずれも三井東圧機工社製)等の膜モジ
ュールを例示することができる。尚、本発明における食
塩阻止率の測定は、0.2%塩化ナトリウム水溶液を用
いて25℃、10kg/cm2 の操作圧力で逆浸透処理
を行った場合に次式で表わされる値である。 食塩阻止率(%)=[1−(透過液の食塩濃度/原液の
食塩濃度)]×100 逆浸透膜による芳香族アミノ酸の分離操作は、加水分解
した出発原料液(以下分解液と記載することがある)の
固形分濃度5〜30%、操作圧力2〜50kg/c
2 、分解液温度5〜30℃の範囲で行うことができる
が、使用する膜モジュールの特性に応じて、10〜20
%、10〜30kg/cm2 、10〜15℃とすること
が最適である。
【0024】分解液の逆浸透膜処理により膜非透過画分
の固形分濃度が次第に上昇するが、最初の濃度の1.5
〜3倍程度に達した時点で、水を添加して膜非透過画分
の液量を一定に保持しながら膜分離操作を行う定容連続
透析濾過(ダイアフィルトレーション)を実施し、芳香
族アミノ酸を完全に膜透過画分に透過させる必要があ
る。逆浸透膜処理は、膜透過画分及び膜非透過画分の固
形分濃度、液量、処理時間等を考慮した上で終了しても
よいが、膜非透過画分の芳香族アミノ酸濃度は、低芳香
族アミノ酸含量のペプチドの品質を左右する重要な因子
なので、濾過操作の終了時点を決定するためには膜非透
過画分の芳香族アミノ酸濃度をより正確に測定すること
が望ましい。
【0025】即ち、濾過操作が不十分の場合、膜非透過
画分の芳香族アミノ酸の含量が十分に低下せず、低芳香
族アミノ酸含量のペプチド混合物としての本来の特性が
失われ、一方、濾過操作を過度に行なった場合、芳香族
アミノ酸以外のアミノ酸及び低分子量ペプチドが過剰に
透過し、低芳香族アミノ酸含量のペプチド混合物の回収
率が低下する。しかしながら、遊離芳香族アミノ酸の膜
透過画分への透過性は、膜処理の操作条件、例えば、循
環流量、操作圧力、温度等に左右され、また、膜の劣
化、汚染状態、洗浄程度等によっても影響を受ける。従
って、従来、遊離芳香族アミノ酸の分離操作を再現性よ
く実施するためには、これらの要因、条件を統一しなけ
ればならず、そのため工業的スケールでは作業性も劣
り、一定の品質の低芳香族アミノ酸含量のペプチド混合
物を得ることは事実上困難であった。
【0026】それに対して、本発明の望ましい態様にお
いては、逆浸透膜による分離操作の工程を、膜非透過画
分の遊離芳香族アミノ酸の濃度の減少の過程を経時的、
かつ短時間に測定しながら実施するので、膜非透過画分
の遊離芳香族アミノ酸の濃度を示す値が、予め設定され
た一定の値に達した時点で分離操作を終了することがで
きる。遊離芳香族アミノ酸の濃度を経時的かつ短時間に
測定する方法としては、例えば、高速液体クロマトグラ
フィー(HPLC)、酵素膜センサー[例えば、バイオ
テックアナライザー(旭化成工業社製)]等を用いるこ
とができ、特に望ましい態様としてオンラインにより測
定する方法を例示することができる。逆浸透膜によって
分離した芳香族アミノ酸は、膜透過画分に移行するが、
膜透過画分には芳香族アミノ酸のみならず、遊離した他
の必須アミノ酸、必須アミノ酸を含む低分子量ペプチド
等も存在する。本発明の方法では、膜透過画分から芳香
族アミノ酸を公知の方法により除去し、必須アミノ酸、
必須アミノ酸を含む低分子量ペプチド等を回収し、膜非
透過画分である低芳香族アミノ酸含量のペプチドに添加
して混合し、芳香族アミノ酸以外の遊離アミノ酸、低分
子量ペプチド等を回収する。
【0027】本発明の方法は、原料である蛋白質の分解
液から、直接、芳香族アミノ酸を除去する従来の方法と
比較して、大部分のペプチド混合物を逆浸透膜によって
分離し、その後、膜透過液を処理して所望の遊離アミノ
酸、低分子量ペプチド等を回収するので、芳香族アミノ
酸以外のアミノ酸、低分子量ペプチド等の損失を最小限
に止めることができるほか、ゲル濾過剤、活性炭、吸着
樹脂等に対するペプチドの処理量を増加させることがで
きるという大きな利点がある。
【0028】膜透過画分からの芳香族アミノ酸の除去
は、公知の方法が利用でき、例えば、ゲル・クロマトグ
ラフィーによる分離方法、活性炭若しくは樹脂による吸
着方法を単独、又はこれらを組み合わせて利用できる。
ゲル濾過剤としては、排除限界分子量5000以下、望
ましくは2000以下の濾過剤を使用し、芳香族アミノ
酸に吸着性を持つ疎水性側鎖、例えば、カルボキシル
基、ブチル基、フェニル基、疎水性部位をもつゲル担体
を特に好適な例として示すことができる。このようなゲ
ル濾過剤としては、セファデックスG−10(ファルマ
シア社製)、セルロファインGCL−25(生化学工業
社製)等、また、活性炭としては、例えば、白鷺(武田
薬品工業社製)等を例示することができる。そのほか吸
着樹脂としては、芳香族アミノ酸を吸着する特性のある
ものであればどのようなものでも使用でき、特に多孔性
合成吸着剤、例えば、KS−35(北越炭素工業社
製)、ダイヤイオンHP(三菱化学社製)、アンバーラ
イトXAD(ローム・アンド・ハース社製)等を例示す
ることができる。
【0029】ゲル濾過剤、活性炭、又は吸着樹脂をカラ
ムに充填し、このカラムに膜透過画分を通液し、水又は
芳香族アミノ酸の吸着性を高めるため2〜15%のエタ
ノール水溶液を溶出液として溶出することができる。芳
香族アミノ酸の除去操作は、膜透過画分にゲル濾過剤、
活性炭、又は吸着樹脂等を投入して所定時間静置し、芳
香族アミノ酸を吸着させるバッチ方式により行うことも
できる。
【0030】前記の各工程により芳香族アミノ酸を除去
した膜透過画分及び非透過画分を、それぞれ別個に公知
の方法により濃縮することもでき、また、この濃縮した
液を公知の方法により乾燥して粉末とすることもでき
る。また、膜透過画分及び膜非透過画分を、任意の割合
で混合し、濃縮し、乾燥することもでき、また、それぞ
れを別々に濃縮し、乾燥し、のち任意の割合で混合する
こともできる。このようにして得られた低芳香族アミノ
酸含量のペプチド混合物の溶液、その濃縮液又は粉末
は、通常の食品原料と同様にPKU患者、肝疾患患者の
食品原料として使用でき、更に各種PKU患者用、肝疾
患患者用の医薬品の製造に使用することもできる。
【0031】次に試験例を示して本発明を詳述するが、
以下の試験例においては、次の試験方法を採用した。 (1)アミノ酸組成の測定方法 トリプトファン、システイン及びメチオニン以外のアミ
ノ酸については、試料を6N塩酸で110℃、24時間
加水分解し、トリプトファンについては、水酸化バリウ
ムで110℃、22時間アルカリ分解し、システイン及
びメチオニンについては、過ギ酸処理後、6N塩酸で1
10℃、18時間加水分解し、それぞれアミノ酸自動分
析機(日立製作所製。835型)により分析し、アミノ
酸の質量を測定した。
【0032】(2)遊離アミノ酸組成の測定方法 スルホサリチル酸で試料を除蛋白し、アミノ酸自動分析
機(日立製作所製。835型)により分析し、遊離アミ
ノ酸の質量を測定した。 (3)遊離芳香族アミノ酸濃度の測定方法 遊離アミノ酸測定用酵素膜センサー(旭化成工業社製)
を装着したバイオテックアナライザー(旭化成工業社
製)により遊離芳香族アミノ酸量を測定し、この値とあ
らかじめ予備実験により(2)で求めた遊離芳香族アミ
ノ酸濃度との相関値から芳香族アミノ酸濃度を測定し
た。
【0033】(4)HPLC Inertosil PREP-ODSカラム(GLサイエンス社製。6.
5×250mm)をHPLC(島津製作所製)に装着
し、逆浸透膜の膜透過液0.1mlを供給し、溶離液A
(0.1%トリフルオロ酢酸溶液)に対する溶離液B
(0.1%トリフルオロ酢酸−アセトニトリル溶液)の
割合が100分間で50%となる濃度勾配で1.5ml
/分の流速で溶出を行った。 (5)蛋白質の分解率 ケルダール法により試料の全窒素を、ホルモール滴定法
により試料のホルモール態窒素を、それぞれ測定し、こ
れらの値から次式により算出した。 分解率(%)=[(ホルモール態窒素)/(全窒素)]
×100
【0034】試験例 この試験は、食塩阻止率の異なる逆浸透膜を使用して芳
香族アミノ酸の分離操作を行った場合における芳香族ア
ミノ酸含量の少ないペプチド混合物の回収率、及び芳香
族アミノ酸含有量を比較するために行った。 1)試験方法 逆浸透膜の食塩阻止率が5%(市販品。A社製)、10
%(市販品。B社製)、30%(市販品。C社製)、5
0%(市販品。D社製)、55%(市販品。E社製)、
70%(市販品。F社製)、80%(市販品。G社
製)、93%(市販品。H社製)をそれぞれ用いたこと
を除き、実施例1と同一の方法により芳香族アミノ酸を
分離し、膜非透過画分を凍結乾燥し、芳香族アミノ酸含
有率を前記試験方法により測定して試験した。尚、本試
験における回収率は、逆浸透膜処理前のペプチド混合物
の重量に対する膜非透過画分の重量の百分率として算出
した。
【0035】2)試験結果 この試験結果は表1に示すとおりである。表1から明ら
かなとおり、逆浸透膜の食塩阻止率の増加に伴い、ペプ
チド混合物中の芳香族アミノ酸含量は増加し、食塩阻止
率が70%を超える逆浸透膜を使用した場合には芳香族
アミノ酸含量が顕著に増加し、肝疾患患者及びPKU患
者の窒素源としては不適当であった。これに対して、食
塩阻止率の低下に伴い、ペプチド混合物の回収率は低下
し、食塩阻止率が10%未満の逆浸透膜を使用した場合
は、低芳香族アミノ酸含量のペプチド混合物がほとんど
回収されず、効率的ではなかった。以上の結果から、本
発明の方法に使用する逆浸透膜の食塩阻止率は、10%
以上70%以下が望ましいことが判明した。尚、蛋白質
の種類及び加水分解方法を変更して試験したが、ほぼ同
様の結果が得られた。
【0036】
【表1】
【0037】参考例1 市販の乳清蛋白質濃縮物(ラクプロダン80。デンマー
クプロテイン社製。蛋白質含量75%)5kgを10%
の濃度で脱イオン水に溶解し、70℃で1分間加熱殺菌
し、50℃に保持し、水酸化ナトリウムでpHを9.0
に調整し、パンクレアチンF(天野製薬社製)50g、
アクチナーゼAS(科研ファルマ社製)100gを添加
し、12時間加水分解し、のち90℃、10分間加熱
し、酵素を失活させ加水分解を停止し、冷却し、セイラ
ト濾過により沈殿物を除去し、常法により噴霧乾燥し、
粉末状のペプチド混合物約3.9kgを得た。得られた
ペプチド混合物について、前記試験方法により試験した
結果、チロシン及びフェニルアラニンの遊離率は、それ
ぞれ92%及び95%であった。
【0038】参考例2 市販の牛乳カゼイン(ALACID。ニュージーランド
デイリーボード製。蛋白質含量90%)20kgを脱イ
オン水に懸濁し、10%水酸化カリウムでpH8.0に
調整して溶解し、脱イオン水で13%の濃度に調整し、
90℃で5分間加熱殺菌し、45℃に保持し、パンクレ
アチンF(天野製薬社製)400g、PTN6.0S
(ノボ・ノルディスク社製)100g、プロテアーゼA
アマノ(天野製薬社製)250gを添加し、15時間加
水分解し、のち85℃、15分間加熱し、酵素を失活さ
せて加水分解を停止し、冷却し、公称分画分子量300
0の限外濾過膜によって沈殿物を除去し、常法により噴
霧乾燥し、粉末状ペプチド混合物約17.2kgを得
た。得られたペプチド混合物について、前記試験方法に
より試験した結果、チロシン及びフェニルアラニンの遊
離率は、それぞれ94%及び92%であった。
【0039】参考例3 市販の乳清蛋白質濃縮物(ラクプロダン80。デンマー
クプロテイン社製。蛋白質含量75%)5kg及び市販
の大豆蛋白粉末(SUPRO。不二製油社製。蛋白質含
量90%)5kgを10%の濃度で脱イオン水に溶解
し、70℃で5分間加熱殺菌し、55℃に保持し、水酸
化ナトリウムでpHを9.5に調整し、パンクレアチン
F(天野製薬社製)250g、パパインW−40(天野
製薬社製)100g、アクチナーゼAS(科研ファルマ
社製)150gを添加し、10時間加水分解し、のち9
0℃、10分間加熱し、酵素を失活させ加水分解を停止
し、冷却後、セイラト濾過により沈殿物を除去し、常法
により噴霧乾燥し、粉末状のペプチド混合物約8.1k
gを得た。得られたペプチド混合物について、前記試験
方法により試験した結果、チロシン及びフェニルアラニ
ンの遊離率は、それぞれ91%及び94%であった。
【0040】
【実施例】次に実施例を示して本発明を更に詳述する
が、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 実施例1 参考例1と同一の方法により得たペプチド混合物2kg
を、10%濃度で脱イオン水に溶解し、低阻止率逆浸透
膜NTR−7450(日東電工社製。食塩阻止率50
%)により、膜非透過画分の濃度を25%に濃縮し、膜
非透過画分に加水を行い、ダイアフィルトレーションを
実施し、膜透過画分の濃度が1%になった時点で低阻止
率逆浸透膜の処理操作を停止し、膜非透過画分を常法に
より凍結乾燥し、芳香族アミノ酸含量の少ないペプチド
混合物(A)約1.6kgを得た。
【0041】一方、膜透過画分をエバポレーターにより
固形分濃度20%に濃縮し、セファデックスG−10
(ファルマシア社製)を充填した直径37cm、高さ1
5cmのカラムに通液し、脱イオン水により溶出し、芳
香族アミノ酸の少ない画分を回収し、溶出液を凍結乾燥
し、ペプチド混合物(B)約410gを得た。次いで、
ペプチド混合物(A)40g及びペプチド混合物(B)
60gを同時に脱イオン水に溶解し、凍結乾燥し、低芳
香族アミノ酸含量のペプチド混合物約100gを得た。
得られた低芳香族アミノ酸含量のペプチド混合物につい
て、前記試験方法により試験した結果、芳香族アミノ酸
含量は8.2mg/gと低値であり、分岐鎖アミノ酸/
芳香族アミノ酸モル比は28.5であり、肝疾患患者の
窒素源として有用なものであった。また、Phe含量は
5.4mg/gと低値であり、PKU患者の窒素源とし
ても望ましいものであった。
【0042】実施例2 参考例1と同一の方法により得たペプチド混合物2kg
を、10%濃度で脱イオン水に溶解し、低阻止率逆浸透
膜NTR−7450(日東電工社製。食塩阻止率50
%)により、膜非透過画分の濃度を30%に濃縮し、膜
非透過画分に加水を行い、ダイアフィルトレーションを
実施し、アミノ酸センサーを搭載したバイオテックアナ
ライザー(旭化成工業社製)により膜非透過画分の遊離
芳香族アミノ酸濃度を経時的、かつ短時間に測定し、遊
離芳香族アミノ酸濃度0.1%の時点で低阻止率逆浸透
膜の処理操作を停止し、膜非透過画分を常法により凍結
乾燥し、芳香族アミノ酸含量の少ないペプチド混合物
(C)約1.4kgを得た。
【0043】一方、膜透過画分をエバポレーターにより
固形分濃度10%に濃縮し、セファデックスG−10
(ファルマシア社製)を充填した直径37cm、高さ1
5cmのカラムに通液し、脱イオン水により溶出し、芳
香族アミノ酸の少ない画分を回収し、溶出液を凍結乾燥
し、ペプチド混合物(D)約470gを得た。次いで、
ペプチド混合物(C)40g及びペプチド混合物(D)
60gを同時に脱イオン水に溶解し、凍結乾燥し、低芳
香族アミノ酸含量のペプチド混合物約100gを得た。
得られた低芳香族アミノ酸含量のペプチド混合物につい
て、前記試験方法により試験した結果、芳香族アミノ酸
含量は7.9mg/gと低値であり、分岐鎖アミノ酸/
芳香族アミノ酸モル比は33.8であり、肝疾患患者の
窒素源として有用なものであった。また、Phe含量は
4.4mg/gと低値であり、PKU患者の窒素源とし
ても望ましいものであった。
【0044】実施例3 参考例2で得られたペプチド混合物15kgを、10%
の濃度で脱イオン水に溶解し、低阻止率逆浸透膜SU−
610(東レ社製。食塩阻止率55%)により、膜非透
過画分濃度20%に逆浸透処理し、のちダイアフィルト
レーション処理し、HPLC(島津製作所製)により膜
非透過画分の遊離芳香族アミノ酸濃度を経時的、かつ短
時間に測定し、遊離芳香族アミノ酸濃度が0%となった
時点で低阻止率逆浸透膜の処理操作を停止し、芳香族ア
ミノ酸含量の少ないペプチド混合物溶液(E)約84k
gを得た。一方、前記逆浸透処理における膜透過画分を
エバポレーターにより濃縮し、20%の濃度に濃縮し、
粉末活性炭[白鷺(武田薬品工業社製)]2kgを投入
し、4℃で16時間静置し、のち濾過して活性炭を除去
し、吸着樹脂[KS−35(北越炭素工業社製)]10
リットルを充填したカラムに15l/時間の流速で通液
し、芳香族アミノ酸含量の少ないペプチド混合物溶液約
38kg(F)を得た。
【0045】次いで、ペプチド混合物溶液(E)14k
gとペプチド混合物溶液(F)6kgとを混合し、エバ
ポレーターにより濃縮し、凍結乾燥し、低芳香族アミノ
酸含量のペプチド混合物約2kgを得た。得られた低芳
香族アミノ酸含量のペプチド混合物について、前記試験
方法により試験した結果、芳香族アミノ酸含量は10.
8mg/gと低値であり、分岐鎖アミノ酸/芳香族アミ
ノ酸モル比は24.2となり肝疾患患者の窒素源として
有用なものであった。また、Phe含量は4.2mg/
gと低値であり、PKU患者の窒素源としても望ましい
ものであった。
【0046】実施例4 参考例3で得られたペプチド混合物5kgを、15%の
濃度で脱イオン水に溶解し、低阻止率逆浸透膜NTR−
7410(日東電工社製。食塩阻止率10%)により膜
非透過画分濃度20%に逆浸透処理し、のちダイアフィ
ルトレーション処理し、アミノ酸センサーを搭載したバ
イオテックアナライザー(旭化成工業社製)により膜非
透過画分の遊離芳香族アミノ酸濃度を経時的、かつ短時
間に測定し、遊離芳香族アミノ酸濃度が0.1%となっ
た時点で逆浸透処理を停止し、膜非透過画分をエバポレ
ーターにより濃縮し、凍結乾燥し、芳香族アミノ酸含量
の少ないペプチド混合物(G)約1.4kgを得た。
【0047】一方、前記逆浸透処理における膜透過画分
をエバポレーターにより濃縮して10%の濃度に濃縮
し、セルロファインGCL−25(生化学工業社製)を
充填した直径37cm、高さ15cmのカラムに通液
し、脱イオン水により溶出し、芳香族アミノ酸含量の少
ない画分を回収し、溶出液をエバポレーターにより濃縮
し、凍結乾燥し、ペプチド混合物(H)約3.2kgを
得た。次いで、前記ペプチド混合物(G)400gと前
記ペプチド混合物(H)600gとを混合し、低芳香族
アミノ酸含量のペプチド混合物約1kgを得た。得られ
た低芳香族アミノ酸含量のペプチド混合物について、前
記試験方法により試験した結果、芳香族アミノ酸含量は
4.9mg/gと低値であり、分岐鎖アミノ酸/芳香族
アミノ酸モル比は56.3となり肝疾患患者の窒素源と
して有用なものであった。また、Phe含量は2.1m
g/gと低値であり、PKU患者の窒素源としても望ま
しいものであった。
【0048】
【発明の効果】以上詳記したとおり、本発明は、低芳香
族アミノ酸含量のペプチド混合物の製造法であり、本発
明により奏せられる効果は次のとおりである。 1)芳香族アミノ酸含量が少なく、かつ構成アミノ酸バ
ランスに優れたペプチド混合物が得られる。 2)製造工程が簡易であり、アミノ酸及びペプチドの回
収率が高い。 3)原料蛋白質由来の必須アミノ酸を回収して有効に利
用することができる。 4)製造工程において使用する吸着剤等による廃棄物の
発生を少なくすることができる。 5)芳香族アミノ酸の摂取を制限する必要のある患者、
例えば、フェニルケトン尿症患者、肝疾患患者が、蛋白
質源として日常的に摂取することが可能な低芳香族アミ
ノ酸含量のペプチド混合物を、一定品質で、効率よく製
造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川口 靖 神奈川県座間市東原5丁目1番83号 森 永乳業株式会社栄養科学研究所内 (56)参考文献 特開 平3−204900(JP,A) 日本食品工業会誌,Vol.39,N o.9(1992),p.763−769 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23J 3/00 - 3/34 A23L 1/305 C07K 1/34 JICSTファイル(JOIS)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 芳香族アミノ酸含量が少なく、芳香族ア
    ミノ酸以外のアミノ酸及びペプチドの回収率が高く、構
    成アミノ酸バランスに優れたペプチド混合物を製造する
    方法であって、蛋白質を加水分解して、少なくとも90
    %(重量)以上のチロシン及びフェニルアラニンを遊離
    させた蛋白質の加水分解液を、その遊離芳香族アミノ酸
    の含量を予め設定された一定のレベルに低下させるため
    に、食塩阻止率10〜70%の逆浸透膜を用いて逆浸透
    処理し、次いで、前記工程で得られた膜非透過画分と前
    記工程で得られた膜透過画分から芳香族アミノ酸を除去
    した膜透過画分とを混合して、低芳香族アミノ酸含量の
    ペプチド混合物を回収するか、又は前記工程で得られた
    膜非透過画分と前記工程で得られた膜透過画分から芳香
    族アミノ酸を除去した膜透過画分とから、それぞれ別個
    に低芳香族アミノ酸含量のペプチド混合物を回収し、そ
    れらを混合することを特徴とする低芳香族アミノ酸含量
    のペプチド混合物の製造法。
  2. 【請求項2】 食塩阻止率10〜70%の逆浸透膜によ
    る逆浸透処理が、経時的にかつ短時間に膜非透過画分の
    遊離芳香族アミノ酸の濃度の測定を継続しながら行われ
    る請求項1に記載の低芳香族アミノ酸含量のペプチド混
    合物の製造法。
  3. 【請求項3】 膜非透過画分の遊離芳香族アミノ酸の濃
    度の測定が、酵素膜センサーにより行われる請求項2に
    記載の低芳香族アミノ酸含量のペプチド混合物の製造
    法。
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