JP3392469B2 - 高分子量ポリエステルの製造方法 - Google Patents

高分子量ポリエステルの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、高分子量ポリエステル
の製造方法に関する。詳しくは、無水コハク酸を主成分
とする環状酸無水物と酸化エチレンを主成分とする環状
エーテルをモノマー原料として開環共重合し、得られた
ポリエステルと一分子中にイソシアナート基を二個以上
有するイソシアナート化合物とを反応させて得られる高
分子量ポリエステルの製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】脂肪族ポリエステルは一般に生分解性が
認められており、単独あるいは種々の添加剤を配合して
シートやフィルム状に成形され包装材料等に使用され
る。このようなポリエステルを製造する方法としては、
ジカルボン酸とグリコールとを直接エステル化させる
か、又はジカルボン酸のアルキルエステルとグリコール
とをエステル交換させてグリコールエステル及び/又は
その低重合体を得、次いでこれを高真空下で長時間加熱
撹拌して重縮合させる方法が一般に実施されている。 【0003】また、このようにして得られたポリエステ
ルをさらに高分子量化するためにポリエステル末端のヒ
ドロキシル基とジイソシアナートを反応して高分子量ポ
リエステルを製造する方法(たとえば特開平4−189
822)も開示されている。 【0004】しかしながら、高真空下に長時間加熱撹拌
して重縮合するという方法は、高真空を保つための真空
装置と高い動力が必要であり、工業的に効率のよいもの
でなかった。また、長時間加熱攪拌して得られたポリエ
ステルと、イソシアナートを反応させて得られるポリマ
ーの着色は避けられなかった。 【0005】一方、環状酸無水物と環状エーテルの開環
共重合によりポリエステルを製造することも既知であ
る。たとえば、特公昭42−26708には、アルキレ
ンオキシドと環状酸無水物とを周期律表第I族から第II
I 族の金属の有機化合物を一成分とする触媒系により共
重合することが提案されている。 【0006】しかしながら、この方法では重合時間が5
日〜10日かかったり、得られる重合体の収率が低いな
どの問題があった。 【0007】そこで、反応時間を短縮するために無水コ
ハク酸と酸化エチレンを一括で仕込み反応温度を上げる
方法もあるが、この方法ではポリエーテル連鎖が生成し
てポリエステルの融点が低下するという欠点が生じるの
で好ましくなかった。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術の問題点を解決するものである。したがって、本発明
の目的は、無水コハク酸と酸化エチレンとを原料モノマ
ーとし得られたポリエステルとイソシアナート化合物を
反応させて高融点で、生分解性を有する高分子量ポリエ
ステルを短い反応時間で工業的に効率よく製造する方法
を提供することである。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、無水コハ
ク酸と酸化エチレンとを開環重合し得られたポリエステ
ルとイソシアナート化合物を反応させることにより上記
目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。す
なわち、本発明は、溶融あるいは溶媒中に溶解させた無
水コハク酸を主成分とする環状酸無水物(A)を仕込ん
だ反応容器に、重合触媒の存在下で反応容器内の圧力を
0 kgf/cm2〜50kgf/cm2 に維持しながら、環状酸無水
物(A)100重量部に対し1時間あたり3〜90重量
部の割合で酸化エチレンを主成分とする環状エーテル
(B)を逐次的に添加して開環共重合し、得られたポリ
エステルと一分子中にイソシアナート基を二個以上有す
るイソシアナート化合物(C)とを反応させることを特
徴とする高分子量ポリエステルの製造方法に関する。 【0010】 【作用】本発明に用いる環状酸無水物(A)としては、
主成分として無水コハク酸を用いるが、必要により無水
コハク酸の一部を、例えば無水マレイン酸、無水イタコ
ン酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シトラコ
ン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸などの他の環
状酸無水物で置換することは可能である。環状酸無水物
(A)中の無水コハク酸の割合は、50モル%以上とす
るのが好ましい。本発明で用いる環状エーテル(B)は
酸化エチレンを主成分として含有するものであるが、酸
化エチレンの一部を他の環状エーテルで置換したもので
もよい。酸化エチレンと置換可能なものとしては、例え
ばプロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチ
レンオキシド、エピクロロヒドリン、アリルグリシジル
エーテル、フェニルグリシジルエーテル、テトラヒドロ
フラン、オキセパン、1,3−ジオキソランなどが挙げ
られる。 【0011】本発明で用いるイソシアナート化合物
(C)は一分子中にイソシアナート基を二個以上有する
ものであり、例えば、トリレンジイソシアナート(「T
DI」とも言う)、4,4′−ジフェニルメタンジイソ
シアナート(「MDI」とも言う)、ヘキサメチレンジ
イソシアナート、キシリレンジイソシアナート、メタキ
シリレンジイソシアナート、1,5−ナフタレンジイソ
シアナート、水素化ジフェニルメタンジイソシアナー
ト、水素化トリレンジイソシアナート、水素化キシリレ
ンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート等の
イソシアナート化合物;スミジュールN(住友バイエル
ウレタン社製)の如きビュレットポリイソシアナート化
合物;デスモジュールIL、HL(バイエルA.G.社
製)、コロネートEH(日本ポリウレタン工業(株)
製)の如きイソシアヌレート環を有するポリイソシアナ
ート化合物;スミジュールL(住友バイエルウレタン
(株)社製)の如きアダクトポリイソシアナート化合
物、コロネートHL(日本ポリウレタン社製)の如きア
ダクトポリイソシアナート化合物等を挙げることができ
る。これらは、単独で使用し得るほか、2種以上を併用
することもできる。また、ブロックイソシアナートを使
用しても構わない。 【0012】本発明で用いられる無水コハク酸等の環状
酸無水物は、これまで単独重合しないことが知られてい
た。このような単独重合しない環状酸無水物に対し、重
合触媒の存在下に環状エーテルを逐次的に添加して重合
させることによって、実質的に酸成分とアルコール成分
が交互共重合したポリエステルが短時間で生成し、さら
にイソシアナート化合物を反応させることにより高分子
量ポリエステルが得られる点に、本発明の意味がある。 【0013】重合は溶媒中での重合や塊状重合等の方法
により行うことができる。溶媒中での重合では環状酸無
水物(A)は溶媒に溶解させて用い、塊状重合では環状
酸無水物(A)を溶融させてから本発明に用いる。 【0014】溶媒中での重合は、回分式でも連続式でも
行うことができ、その際使用される溶媒としては、例え
ばベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n
−ヘキサン、ジオキサン、クロロホルム、ジクロロエタ
ンなどの不活性溶媒をあげることができる。 【0015】重合触媒としては、例えばアルミニウムイ
ソプロポキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、モ
ノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、
アルミニウムエトキサイドなどのトリアルコキシアルミ
ニウム化合物;五塩化アンチモン、塩化亜鉛、臭化リチ
ウム、塩化すず(IV)、塩化カドミウム、三フッ化ホ
ウ素ジエチルエーテルなどのハロゲン化物;トリメチル
アルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジエチルアル
ミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライ
ド、トリ−iso−ブチルアルミニウムなどのアルキル
アルミニウム;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジイソプ
ロピル亜鉛などのアルキル亜鉛;トリアリルアミン、ト
リエチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、ベンジル
ジメチルアミンなどの三級アミン;リンタングステン
酸、リンモリブデン酸、ケイタングステン酸などのヘテ
ロポリ酸およびそのアルカリ金属塩等が挙げられ、中で
もトリアルコキシアルミニウム化合物、ハロゲン化物、
三級アミンが特に好ましい。重合触媒の使用量には特に
制限はないが、通常環状酸無水物(A)および環状エー
テル(B)の合計量に対して0.001〜10重量%で
ある。重合触媒の添加方法は環状酸無水物(A)に添加
しておいてもよく、環状エーテル(B)のように逐次添
加してもよい。 【0016】重合温度は環状酸無水物(A)と環状エー
テル(B)が反応する温度であれば特に制限はないが、
10〜250℃、好ましくは50〜150℃、さらに好
ましくは100〜150℃である。反応に際して、反応
容器内の圧力は反応温度および溶媒の有無や溶媒の種類
によって異なるが、環状エーテル(B)の逐次的な添加
による圧力の上昇に伴う未反応環状エーテルの増加は、
反応生成物中のポリエーテル成分を増やすことになり好
ましくない。したがって、反応容器内の圧力は常圧〜5
0kgf/cm2 、好ましくは常圧〜15kgf/cm2 となるよう
に環状エーテル(B)を添加する。 【0017】本発明において環状エーテル(B)の逐次
添加は、環状酸無水物(A)100重量部に対し1時間
あたり環状エーテル(B)を3〜90重量部、好ましく
は14〜50重量部の割合で行なう。 【0018】環状エーテル(B)の添加速度が下限の3
重量部より遅い場合には、反応が長時間となり生産性が
低下するなど工業的に好ましくない。また、上限の90
重量部より速い場合及び環状エーテル(B)を重合開始
時に反応容器に全量投入する場合には、反応生成物中の
ポリエーテル成分が増加して融点の低いポリエステルし
か得られなくなる。 【0019】なお、環状エーテル(B)の逐次添加と
は、環状エーテル(B)を一括して添加しないことであ
り、連続的に滴下する方法や多段階に分割して断続的に
添加する方法のいずれでもよい。好ましくは添加量が経
時的に大きく変動しないように連続的に添加するのがよ
い。 【0020】本発明における環状酸無水物(A)および
環状エーテル(B)の反応比率は、これらのモル比で40
/60〜60/40の比率となるようにするのが好ましく、イ
ソシアナートとの反応を考慮すると40/60〜49/51の比
率となるようにするのがさらに好ましい。この比率の範
囲をはずれると、未反応モノマーが増大して収率が低下
することがある。本発明で前記モル比を考慮して決定し
た所定量の環状エーテル(B)を逐次添加し終わった
後、前記反応温度で重合を継続して熟成するのが好まし
い。熟成反応後に重合系から生成したポリエステルを分
離すればよく、得られたポリエステルはさらにイソシア
ナート化合物(C)と反応させる。 【0021】ポリエステルとイソシアナート化合物
(C)との反応比率は特に限定されないが、例えば、イ
ソシアナート化合物(C)が有するイソシアナート基と
ポリエステルが有する水酸基との比率(NCO/OH
(モル比))が0.5〜3.0であることが好ましく、
0.8〜1.5であることがより好ましい。 【0022】なお、ポリエステルとイソシアネート化合
物(C)とのウレタン化反応を促進するために、必要に
応じて、有機スズ化合物や第3級アミン等の公知の触媒
を用いることは自由である。 【0023】このようにして得られた高分子量ポリエス
テルは成形加工して各種用途に有効に適用できる。 【0024】 【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明はこれらにより限定されるものでは
ない。なお、例中の部は重量部を表わす。 【0025】(実施例1)オートクレーブに無水コハク
酸386.2部およびアルミニウムイソプロポキシド
2.09部を加え、窒素置換を行った。次いで撹拌下に
オートクレーブを徐々に130℃まで昇温して無水コハ
ク酸を溶融し、同温度でオートクレーブ内の圧力を0〜
7.0kgf/cm2 に維持しながら、酸化エチレン187.
0部を1時間あたり75部の添加速度で2.5時間にわ
たって連続的に導入した。酸化エチレン導入後130℃
で2.0時間熟成反応を行ってから系を常温にもどすこ
とにより、重合生成物を得た。得られた重合生成物をク
ロロホルムに溶解させてテトラヒドロフラン中で沈澱精
製する操作を3回繰り返してポリエステル(1)を得
た。このポリエステル(1)の収率を求めたところ9
8.2%であった。また、GPC測定による数平均分子
量は20500、DSCによる融点は97.5℃であっ
た。 【0026】得られた重合生成物100.0部とクロロ
ホルム400部を窒素気流中で加熱攪拌し、60℃でヘ
キサメチレンジイソシアネートを1.80部とジブチル
チンジラウレート1.0部を加え1時間反応させ、高分
子量ポリエステル(1)を得た。GPC測定による数平
均分子量は45000、DSCによる融点は97.8℃
であった。 【0027】(実施例2)オートクレーブに無水コハク
酸386.2部およびアルミニウムイソプロポキシド
2.09部を加え、窒素置換を行った。次いで撹拌下に
オートクレーブを徐々に130℃まで昇温して無水コハ
ク酸を溶融し、同温度でオートクレーブ内の圧力を0〜
11.5kgf/cm2 に維持しながら、酸化エチレン22
1.0部を1時間あたり74部の添加速度で3.0時間
にわたって連続的に導入した。酸化エチレン導入後13
0℃で1.0時間熟成反応を行ってから系を常温にもど
すことにより、重合生成物を得た。得られた重合生成物
を実施例1と同様にして精製してポリエステル(2)を
得た。このポリエステル(2)の収率を求めたところ9
7.9%であった。また、GPC測定による数平均分子
量は21500、DSCによる融点は98.1℃であっ
た。 【0028】得られた重合生成物100.0部とクロロ
ホルム400部を窒素気流中で加熱攪拌し、60℃でヘ
キサメチレンジイソシアネートを2.00部とジブチル
チンジラウレート1.0部を加え1時間反応させ、高分
子量ポリエステル(2)を得た。GPC測定による数平
均分子量は52000、DSCによる融点は96.2℃
であった。 【0029】(実施例3)オートクレーブに無水コハク
酸386.2部およびアルミニウムイソプロポキシド
2.09部を加え、窒素置換を行った。次いで撹拌下に
オートクレーブを徐々に130℃まで昇温して無水コハ
ク酸を溶融し、同温度でオートクレーブ内の圧力を0〜
12.1kgf/cm2 に維持しながら、酸化エチレン22
1.0部を1時間にわたって連続的に導入した。酸化エ
チレン導入後130℃で1.0時間熟成反応を行ってか
ら系を常温にもどすことにより、重合生成物を得た。得
られた重合生成物を実施例1と同様にして精製してポリ
エステル(3)を得た。このポリエステル(3)の収率
を求めたところ99.1%であった。また、GPC測定
による数平均分子量は22500、DSCによる融点は
95.1℃であった。 【0030】得られた重合生成物100.0部とクロロ
ホルム400部を窒素気流中で加熱攪拌し、60℃でヘ
キサメチレンジイソシアネートを2.00部とジブチル
チンジラウレート1.0部を加え1時間反応させ、高分
子量ポリエステル(3)を得た。GPC測定による数平
均分子量は58000、DSCによる融点は95.8℃
であった。 【0031】(比較例1)オートクレーブに無水コハク
酸250.0部、酸化エチレン110.0部およびトル
エン200.0部を加え、撹拌下に無水コハク酸を溶解
し、十分窒素置換を行った。次いでオートクレーブを8
0℃まで徐々に昇温した後、アルミニウムイソプロポキ
シド4.2部をトルエン50部に溶解してオートクレー
ブに加え、80℃に4時間維持して重合を行った。重合
終了後に系を常温にもどし、トルエンを留去して重合生
成物を得た。得られた重合生成物を実施例1と同様にし
て精製して比較ポリエステル(1)を得た。この比較ポ
リエステル(1)の収率を求めたところ78.5%であ
った。また、GPC測定による数平均分子量は1100
0、DSCによる融点は63.5℃であった。 【0032】得られた重合生成物100.0部とクロロ
ホルム400部を窒素気流中で加熱攪拌し、60℃でヘ
キサメチレンジイソシアネートを2.00部とジブチル
チンジラウレート1.0部を加え1時間反応させ、比較
高分子量ポリエステル(1)を得た。GPC測定による
数平均分子量は25000、DSCによる融点は64.
5℃であった。 【0033】 【発明の効果】本発明によれば、生分解性を有する高分
子量ポリエステルを短い反応時間で合成することができ
る。本発明で得られる高分子量ポリエステルは、構造中
にポリエーテル成分をほとんど有しない高融点のもので
あるため、フィルムやシート等への成形加工が容易とな
り、成形品としての耐久性にもすぐれている。したがっ
て、本発明で得られる高分子量ポリエステルは、使い捨
ての包装材料や日用雑貨品等に有効に使用できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小林 博也 大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会 社日本触媒 中央研究所内 (56)参考文献 特開 平4−189822(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 63/00 - 63/91

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 溶融あるいは溶媒中に溶解させた無水コ
    ハク酸を主成分とする環状酸無水物(A)を仕込んだ反
    応容器に、重合触媒の存在下で反応容器内の圧力を0 k
    gf/cm2〜50kgf/cm2 に維持しながら、環状酸無水物
    (A)100重量部に対し1時間あたり3〜90重量部
    の割合で酸化エチレンを主成分とする環状エーテル
    (B)を逐次的に添加して開環共重合し、得られたポリ
    エステルと一分子中にイソシアナート基を二個以上有す
    るイソシアナート化合物(C)とを反応させることを特
    徴とする高分子量ポリエステルの製造方法。
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