JP3048313B2 - 高分子量脂肪族ポリエステルの製造方法 - Google Patents

高分子量脂肪族ポリエステルの製造方法

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JP3048313B2
JP3048313B2 JP7071559A JP7155995A JP3048313B2 JP 3048313 B2 JP3048313 B2 JP 3048313B2 JP 7071559 A JP7071559 A JP 7071559A JP 7155995 A JP7155995 A JP 7155995A JP 3048313 B2 JP3048313 B2 JP 3048313B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリエステルの製造方
法に関する。詳しくは、数平均分子量10000〜10
0000の高分子量脂肪族ポリエステルを製造するに際
し、製造中の生成揮発分量が高分子量脂肪族ポリエステ
ルの原料に対して25重量%以下であることを特徴とす
る高分子量脂肪族ポリエステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】脂肪族ポリエステルは一般に生分解性が
認められており、単独あるいは種々の添加剤を配合して
繊維、成型品、シートやフィルムに使用することが期待
されている。このようなポリエステルを製造する方法と
しては、ジカルボン酸とグリコールとを直接エステル化
させるか、又はジカルボン酸のアルキルエステルとグリ
コールとをエステル交換させてグリコールエステル及び
/又はその低重合体を得、次いでこれを高真空下で長時
間加熱撹拌して重縮合させる方法が一般に実施されてい
る。たとえば、特開平5−310898号公報には、グ
リコール成分とジカルボン酸成分から触媒の存在下、1
80〜230℃、0.05〜0.1mmHgの条件下で脱グ
リコール反応を行って、高分子量脂肪族ポリエステルを
製造することが提案されている。さらに特開平6−32
2081号公報には、グリコール成分とジカルボン酸成
分から触媒の存在下、240℃、1mmHg以下の条件を含
む反応条件下で、高分子量脂肪族ポリエステルを製造す
ることが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、高真空
下に長時間重縮合するというこれらの方法では、エステ
ル化反応で生成する水やエステル交換反応で生成するグ
リコールはもとより、長い時間にわたって高真空に保つ
ため、副生物および解重合による低分子化合物が多量に
生成する。これら揮発分はほとんど利用されることがな
いため、経済的に大きな問題であった。さらに、これら
揮発分による減圧度の低下、真空ポンプの性能低下など
により、反応時間が著しく長くなったり、所定の分子量
まで到達しなかったりするなどの問題もあった。
【0004】本発明は、上記従来技術の問題点を解決す
るものである。したがって、本発明の目的は、生成揮発
分量を低く抑え、生分解性を有する高分子量脂肪族ポリ
エステルを工業的に効率よく、かつ経済的に製造する方
法を提供するものである。
【0005】本発明で言う生成揮発分量とは、過剰に存
在する原料、エステル化反応で生成する水、エステル交
換反応で生成するグリコールおよび副生物、並びに解重
合によって生成する低分子化合物の合計量のことであ
る。
【0006】すなわち本発明は、数平均分子量250
00〜80000の高分子量脂肪族ポリエステルを製造
する方法であって、減圧度0.3〜2.0mmHgの条
件下でエステル交換反応を行う工程を含み、製造中に生
成する揮発分の量が、高分子量脂肪族ポリエステルの原
料に対して25重量%以下であることを特徴とする
分子量脂肪族ポリエステルの製造方法である。
【0007】本発明では、前記高分子量脂肪族ポリエス
テルが、炭素数2〜6の脂肪族ジカルボン酸成分と、炭
素数2〜4の脂肪族グリコール成分とから得られたもの
であると好ましい。炭素数2〜6の脂肪族ジカルボン酸
成分としては、無水コハク酸を主成分とする環状酸無水
物が好ましく、また、炭素数2〜4の脂肪族グリコール
成分としては、酸化エチレンを主成分とする環状エーテ
ルが好ましい。
【0008】本発明で用いる重合触媒としては、ジルコ
ニウム化合物が好ましい。
【0009】
【作用】本発明は、数平均分子量250008000
の高分子量脂肪族ポリエステルを製造する際に用いら
れるものであって、その具体的製造方法には特に限定さ
れないが、通常高分子量脂肪族ポリエステルを得る方法
としては、 (i)多塩基酸(あるいはそのエステル)とグリコール
を重縮合する方法 (ii)環状酸無水物と環状エーテルを開環重合する方
法等が挙げられる。
【0010】したがって本発明で言う高分子量脂肪族ポ
リエステル原料とは、例えば(i)の方法の場合、多塩
基酸(あるいはそのエステル)とグリコールと触媒を示
し、(ii)の方法の場合、環状酸無水物と環状エーテ
ルと触媒を示す。
【0011】(i)の方法で用いられる多塩基酸として
は、例えばコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシ
ン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、オクタデカ
ンジカルボン酸、ダイマー酸あるいはそれらのエステル
等が挙げられ、グリコールとしては、例えばエチレング
リコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジ
オール、1,4ーブタンジオール、ネオペンチルグリコ
ール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジ
オール、デカメチレングリコール等が挙げられる。ま
た、グリコール成分の一部としてポリオキシアルキレン
グリコールを使用することも可能であり、例えばポリオ
キシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコ
ール、ポリオキシテトラメチレングリコールおよびこれ
らの共重合体が例示される。これらのうちで、得られる
ポリエステルの融点、生分解性、経済性を考慮するとコ
ハク酸とエチレングリコール及び/またはコハク酸と
1,4ーブタンジオールの組合せが好ましい。高分子量
脂肪族ポリエステルの製造に際しては多塩基酸(あるい
はそのエステル)成分およびグリコール成分の全量を初
期混合し反応させてもよく、または反応の進行にともな
って分割して添加してもさしつかえない。重縮合反応と
しては通常のエステル交換法またはエステル化法さらに
は両方の併用によっても可能であり、また必要により反
応容器内を加圧または減圧にすることにより重合度を上
げることができる。エステル交換反応には通常、少量の
触媒を用いる必要がある。触媒としては、通常用いられ
ているものであれば特に制限はないが、Ti、Ge、Z
n、Fe、Mn、Co、Zr、Hf、V、Ir、La、
Ce、Li、Ca、Mg、Sn、Ba、Ni等の有機金
属化合物、有機酸塩、金属アルコキシド、金属酸化物、
金属水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩
化物が挙げられる。触媒の使用量は、通常得られる高分
子量脂肪族ポリエステル100重量部に対して、0.0
01〜5重量部であり、このましくは0.01から0.
5重量部である。
【0012】(ii)の方法で用いられる環状酸無水物
としては、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水
イタコン酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シ
トラコン酸、等が挙げられる。環状エーテルとしては、
例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロ
ヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒド
リン、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジル
エーテル、テトラヒドロフラン、オキセパン、1,3−
ジオキソランなどが挙げられる。これらのうちで、得ら
れるポリエステルの融点、生分解性、経済性を考慮する
と無水コハク酸とエチレンオキシドの組合せが好まし
い。開環重合は公知の開環重合触媒を用い、溶媒中での
重合や塊状重合等の方法により行うことができる。
【0013】このような高分子量脂肪族ポリエステルを
得る方法のなかで比較的短い時間で工業的に効率よく製
造できる方法として(ii)の環状酸無水物と環状エー
テルを開環重合する方法が好ましい。以下、環状酸無水
物と環状エーテルの開環重合についてさらに詳しく説明
する。
【0014】本発明で用いられる無水コハク酸等の環状
酸無水物は、これまで単独重合しないことが知られてい
た。このような単独重合しない環状酸無水物に対し、重
合触媒の存在下に環状エーテルを逐次的に添加して重合
させることによって、実質的に酸成分とアルコール成分
が交互共重合したポリエステルが短時間で生成させ得
る。
【0015】重合は溶媒中での重合や塊状重合等の方法
により行うことができる。溶媒中での重合では環状酸無
水物は溶媒に溶解させて用い、塊状重合では環状酸無水
物を溶融させてから本発明に用いる。
【0016】溶媒中での重合は、回分式でも連続式でも
行うことができ、その際使用される溶媒としては、例え
ばベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n
−ヘキサン、ジオキサン、クロロホルム、ジクロロエタ
ンなどの不活性溶媒をあげることができる。
【0017】重合触媒としては、特に限定はなく、通常
ポリエステルを開環重合する際に使用するものを用い
る。例えばテトラメトキシジルコニウム、テトラエトキ
シジルコニウム、テトラ−iso−プロポキシジルコニ
ウム、テトラ−iso−ブトキシジルコニウム、テトラ
−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−t−ブトキシジ
ルコニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プ
ロポキシアルミニウム、トリ−iso−プロポキシアル
ミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−i
so−ブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシ
アルミニウム、モノ−sec−ブトキシ−ジ−iso−
プロポキシアルミニウム、エチルアセトアセテートアル
ミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エ
チルアセトアセテート)、テトラエトキシチタン、テト
ラ−iso−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキ
シチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−se
c−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、ト
リ−iso−プロポキシガリウム、トリ−iso−プロ
ポキシアンチモン、トリ−iso−ブトキシアンチモ
ン、トリメトキシボロン、トリエトキシボロン、トリ−
iso−プロポキシボロン、トリ−n−プロポキシボロ
ン、トリ−iso−ブトキシボロン、トリ−n−ブトキ
シボロン、トリ−sec−ブトキシボロン、トリ−t−
ブトキシボロン、トリ−iso−プロポキシガリウム、
テトラメトキシゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニ
ウム、テトラ−iso−プロポキシゲルマニウム、テト
ラ−n−プロポキシゲルマニウム、テトラ−iso−ブ
トキシゲルマニウム、テトラ−n−ブトキシゲルマニウ
ム、テトラ−sec−ブトキシゲルマニウム、テトラ−
t−ブトキシゲルマニウムなどの金属アルコキド;五塩
化アンチモン、塩化亜鉛、臭化リチウム、塩化すず(I
V)、塩化カドミウム、三フッ化ホウ素ジエチルエーテ
ルなどのハロゲン化物;トリメチルアルミニウム、トリ
エチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライ
ド、エチルアルミニウムジクロライド、トリ−iso−
ブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム;ジメ
チル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛などのア
ルキル亜鉛;トリアリルアミン、トリエチルアミン、ト
リ−n−オクチルアミン、ベンジルジメチルアミンなど
の三級アミン;リンタングステン酸、リンモリブデン
酸、ケイタングステン酸などのヘテロポリ酸およびその
アルカリ金属塩;酸塩化ジルコニウム、オクチル酸ジル
コニール、ステアリン酸ジルコニール、硝酸ジルコニー
ルなどのジルコニウム化合物等が挙げられ、中でもオク
チル酸ジルコニール、テトラアルコキシジルコニウム、
トリアルコキシアルミニウム化合物が特に好ましい。重
合触媒の使用量には特に制限はないが、通常環状酸無水
物および環状エーテルの合計量に対して0.001〜1
0重量%である。重合触媒の添加方法は環状酸無水物に
添加しておいてもよく、環状エーテルのように逐次添加
してもよい。
【0018】重合温度は環状酸無水物と環状エーテルが
反応する温度であれば特に制限はないが、10〜250
℃、好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは10
0〜150℃である。反応に際して、反応容器内の圧力
は反応温度および溶媒の有無や溶媒の種類によって異な
るが、環状エーテルの逐次的な添加による圧力の上昇に
伴う未反応環状エーテルの増加は、反応生成物中のポリ
エーテル成分を増やすことになり好ましくない。したが
って、反応容器内の圧力は常圧〜50kgf/cm2が好まし
く、より好ましくは常圧〜15kgf/cm2 となるように環
状エーテルを添加する。
【0019】環状エーテルの逐次添加は、環状酸無水物
100重量部に対し1時間あたり環状エーテルを3〜9
0重量部が好ましく、より好ましくは5〜50重量部の
割合で行なう。
【0020】環状エーテルの添加速度が下限の3重量部
より遅い場合には、反応が長時間となり生産性が低下す
るなど工業的に好ましくない。また、上限の90重量部
より速い場合には、反応生成物中のポリエーテル成分が
増加して融点の低いポリエステルしか得られなくなる。
【0021】なお、環状エーテルの逐次添加とは、環状
エーテルを一括して添加しないことであり、連続的に滴
下する方法や多段階に分割して断続的に添加する方法の
いずれでもよい。好ましくは添加量が経時的に大きく変
動しないように連続的に添加するのがよい。
【0022】本発明における環状酸無水物および環状エ
ーテルの反応比率は、これらのモル比で40/60〜6
0/40の比率となるようにするのが好ましく、残存環
状酸無水物およびポリエステルの末端カルボキシル基が
ポリエステルの物性を低下させることを考慮すると環状
エーテルを過剰に添加するために40/60〜49/5
1の比率となるようにするのがさらに好ましい。このよ
うにすることにより、ポリエステルの末端カルボキシル
基の50%未満がカルボキシル基となり、耐熱性が向上
する。
【0023】この比率の範囲をはずれると、未反応モノ
マーが増大して収率が低下することがある。本発明で前
記モル比を考慮して決定した所定量の環状エーテルを逐
次添加し終わった後、前記反応温度で重合を継続して熟
成するのが好ましい。熟成反応後に重合系から生成した
ポリエステルを分離すればよい。
【0024】(ii)の方法によって得られたポリエス
テルの数平均分子量は25000よりも低いので、さら
にエステル交換反応で高分子量化する。
【0025】本願発明者らは高分子量脂肪族ポリエステ
ルの製造についてかねてより鋭意研究を行ったところ、
従来の方法では長い時間にわたって高真空に保つため、
反応中に生成する揮発分が著しく多く、このことが反応
系内の減圧度の低下、真空ポンプの性能低下などをひき
おこし、反応時間が著しく長くなったり、所定の分子量
まで到達しなかったりするなどの問題があることが判明
した。さらに、これら揮発分は利用されることがないた
め、経済的に大きな問題であることもわかった。
【0026】そこで本願発明者らは、高分子量脂肪族ポ
リエステルの製造中の生成揮発分量が高分子量脂肪族ポ
リエステルの原料に対して25重量%以下、好ましくは
20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下にす
ることにより、前記問題点が解消され工業的にも経済的
にも極めて有用な製造方法を完成するに至った。前記範
囲より多いと、反応中に反応容器とトラップの間に大量
の揮発分が詰まり、たびたび反応を中断することになっ
たり、あるいはトラップでは揮発分を取りきれずに真空
ポンプに揮発分が多量に侵入し、減圧度の低下を引き起
こしたり、ポンプそのものの性能低下さらには故障して
反応継続が不可能になったりする等の問題がある。
【0027】高分子量脂肪族ポリエステルの製造中の生
成揮発分量が高分子量脂肪族ポリエステル原料に対して
前記の範囲であ加えて、例えば(i)の方法でのエ
ステル交換反応の条件としては、反応温度180〜28
0℃、好ましくは230〜270℃、減圧度0.3〜
2.0mmHg、好ましくは0.5〜1.5mmHg、
さらに好ましくは1.0〜1.5mmHgでの反応条件
を選ぶ。反応温度がこの範囲より低い場合は、反応時間
が著しく長くなり、この範囲より高い場合は、著しく着
色したり、揮発分が多くなったりして、工業的に不利で
ある。減圧度は本願発明の揮発分量と最も関係のある条
件であるが、減圧度が0.3mmHgよりも高い場合、
すなわち高真空になると副生物および解重合による低分
子化合物が多量に生成する。これら揮発分発生による減
圧度の低下、真空ポンプの性能低下などにより、反応時
間が著しく長くなったり、所定の分子量まで到達しなか
ったりする。さらに、揮発分の発生により収率は著しく
低下し、これら揮発分は例え回収されても利用されるこ
とがないため、経済的に大きな問題となる。減圧度が
2.0mmHgよりも低い場合は、反応時間が著しく長
くなり、工業的に不利である。また(ii)の方法によ
って得られたポリエステルをさらにエステル交換反応で
高分子量化する場合には、反応温度180〜280℃、
好ましくは230〜270℃、減圧度0.3〜2.0m
mHg、好ましくは0.5〜1.5mmHg、さらに好
ましくは1.0〜1.5mmHgである。反応温度がこ
の範囲より低い場合は、反応時間が著しく長くなり、こ
の範囲より高い場合は、著しく着色したり、揮発分が多
くなったりして、工業的に不利である。減圧度は本願発
明の揮発分量と最も関係のある条件であるが、減圧度が
0.3mmHgよりも高い場合、すなわち高真空になる
と副生物および解重合による低分子化合物が多量に生成
する。これら揮発分発生による減圧度の低下、真空ポン
プの性能低下などにより、反応時間が著しく長くなった
り、所定の分子量まで到達しなかったりする。さらに、
揮発分の発生により収率は著しく低下し、これら揮発分
は例え回収されても利用されることがないため、経済的
に大きな問題となる。減圧度が2.0mmHgよりも低
い場合は、反応時間が著しく長くなり、工業的に不利で
ある。
【0028】さらに、高分子量脂肪族ポリエステルの製
造の全工程にわたって、生成揮発分をより少量に抑える
には、水などの生成がない開環重合による工程を含むこ
とがより好ましい。
【0029】このようにして得られた高分子量脂肪族ポ
リエステルは、さらに種々の鎖延長剤と反応させて高分
子量化しても良い。
【0030】高分子量脂肪族ポリエステルの分子量は数
平均で10000〜100000であるが、好ましくは
25000〜80000、更に好ましくは40000〜
70000である。脂肪族ポリエステルをフィルム、シ
ート、その他成型物として利用するには数平均分子量の
下限は少なくとも10000以上必要である。これより
も低くなると脆かったり、延伸できないなど工業的に問
題があり、鎖延長剤と反応させて高分子量化することも
可能であるが、工程が多段階になったり、使用した鎖延
長剤がフィルムのフィッシュアイの原因になったりして
工業的に不利である。熱的な劣化や強度などを考慮する
と、高分子量脂肪族ポリエステルの数平均分子量は25
000以上が好ましく、40000以上が更に好まし
い。また、脂肪族ポリエステル数平均分子量を1000
00より大きくするには反応に長時間要し、工業的に不
利である。長時間反応することにより生成揮発分が多く
なるので、数平均分子量の上限は100000以下であ
り、80000以下が好ましく、70000以下が更に
好ましい。
【0031】鎖延長剤としては、イソシアナート、エポ
キシ、アジリジン、オキサゾリン、多価金属化合物、多
官能酸無水物、リン酸エステル、亜リン酸エステル等が
挙げられ、一種、または二種以上を組み合わせてもよ
い。
【0032】イソシアナート化合物としては特に制限は
ないが、一分子中にイソシアナート基を二個以上有する
ものであり、例えば、トリレンジイソシアナート(「T
DI」とも言う)、4,4′−ジフェニルメタンジイソ
シアナート(「MDI」とも言う)、ヘキサメチレンジ
イソシアナート、キシリレンジイソシアナート、メタキ
シリレンジイソシアナート、1,5−ナフタレンジイソ
シアナート、水素化ジフェニルメタンジイソシアナー
ト、水素化トリレンジイソシアナート、水素化キシリレ
ンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート等の
イソシアナート化合物;スミジュールN(住友バイエル
ウレタン社製)の如きビュレットポリイソシアナート化
合物;デスモジュールIL、HL(バイエルA.G.社
製)、コロネートEH(日本ポリウレタン工業(株)
製)の如きイソシアヌレート環を有するポリイソシアナ
ート化合物;スミジュールL(住友バイエルウレタン
(株)社製)の如きアダクトポリイソシアナート化合
物、コロネートHL(日本ポリウレタン社製)の如きア
ダクトポリイソシアナート化合物等を挙げることができ
る。これらは、単独で使用し得るほか、2種以上を併用
することもできる。また、ブロックイソシアナートを使
用しても構わない。
【0033】ポリエステルとイソシアナート化合物との
反応比率は特に限定されないが、例えば、イソシアナー
ト化合物が有するイソシアナート基とポリエステルが有
する水酸基との比率(NCO/OH(モル比))が、
0.5〜3.0であることが好ましく、0.8〜1.5
であることがより好ましい。
【0034】なお、ポリエステルとイソシアネート化合
物とのウレタン化反応を促進するために、必要に応じ
て、有機スズ化合物や第3級アミン等の公知の触媒を用
いることは自由である。
【0035】エポキシ化合物としては特に制限はない
が、分子中に少なくとも二個エポキシ基を有するもので
あり、例えば、(ポリ)エチレングリコールジグリシジ
ルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジ
ルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジ
ルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ネオペ
ンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキ
サンジオールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリ
シジルエステル、ο−フタル酸ジグリシジルエステル、
テレフタル酸ジグリシジルエステル、ハイドロキノンジ
グリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエ
ーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ソルビト
ールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジ
ルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテ
ル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジ
グリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジル
トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グ
リセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプ
ロパンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0036】エポキシ化合物との反応は、まず環状酸無
水物と環状エーテルを開環重合させ、得られたポリエス
テルとエポキシ化合物を反応させる方法あるいは環状酸
無水物と環状エーテルとエポキシ化合物を同時に開環反
応させる方法あるいは環状酸無水物と環状エーテルとエ
ポキシ化合物を同時に開環反応させ、さらにエポキシ化
合物を反応させる方法がある。
【0037】なお、ポリエステルとエポキシ化合物との
反応を促進するために、必要に応じて、3級アミン、4
級アンモニウム塩、イミダゾール化合物等の公知の触媒
を用いることは自由である。
【0038】アジリジン化合物としては特に制限はない
が、例えば2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノール
−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネー
ト]、エチレングリコール−ビス[3−(1−アジリジ
ニル)プロピオネート]、ポリエチレングリコール−ビ
ス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、プロ
ピレングリコール−ビス[3−(1−アジリジニル)プ
ロピオネート]、ポリプロピレングリコール−ビス[3
−(1−アジリジニル)プロピオネート]、テトラメチ
レングリコール−ビス[3−(1−アジリジニル)プロ
ピオネート]、ポリテトラメチレングリコール−ビス
[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、、N,
N’−テトラメチレンビスエチレン尿素、N,N’−ペ
ンタメチレンビスエチレン尿素、N,N’−ヘキサメチ
レンビスエチレン尿素、N,N’−ヘプタメチレンビス
エチレン尿素、N,N’−オクタメチレンビスエチレン
尿素、N,N’−フェニレンビスエチレン尿素、N,
N’−トルイレンビスエチレン尿素、N,N’−ジフェ
ニル−4,4’−ビスエチレン尿素、3,3’−ジメチ
ルジフェニル4,4’−ビスエチレン尿素、3,3’−
ジメトキシジフェニル4,4’−ビスエチレン尿素、ジ
フェニルメタンP,P−ビスエチレン尿素等が挙げられ
る。これらの一種または二種以上を用いることができ
る。
【0039】アジリジン化合物の使用量はポリエステル
に対して0.001〜10重量%であり、より好ましく
は0.01〜5重量%である。
【0040】オキサゾリン化合物としては特に制限はな
いが、例えば、2−オキサゾリン、2−メチル−2−オ
キサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−イソ
プロピル−2−オキサゾリン、2−ブチル−2−オキサ
ゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2,2’−
ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビ
ス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス
−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビ
ス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン
−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチ
レン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタ
メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エ
チレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリ
ン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサ
ゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オ
キサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−
(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−
(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビ
ス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等
が挙げられる。これらの中から一種または二種以上を用
いることができる。さらに好ましくは2,2’−m−フ
ェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、ビス−(2−
オキサゾリニルノルボルナン)スルフィドである。
【0041】ポリエステルとオキサゾリン化合物との反
応比率は特に限定されないが、例えば、オキサゾリン化
合物が有する2−オキサゾリン基(Ox)とポリエステ
ルが有するカルボキシル基(COOH)との比率(Ox
/COOH(モル比))が0.5〜10.0であること
が好ましく、0.8〜5.0であることがより好まし
い。
【0042】なお、ポリエステルとオキサゾリン化合物
との反応を促進するために、必要に応じて、酸性化合物
のアミン塩等の公知の触媒を用いることは自由である。
【0043】多価金属化合物としては特に制限はない
が、2価以上の有機金属化合物、金属塩および/または
金属アルコキシドなどが挙げられる。
【0044】2価以上の有機金属化合物および/または
金属塩の好ましい金属としては、亜鉛、カルシウム、
銅、鉄、マグネシウム、コバルト、バリウムなどが挙げ
られる。さらに好ましくは中和後、反応系中から多価金
属化合物の対アニオンを揮発分として分離・回収できる
亜鉛(II)アセチルアセトネート、酢酸亜鉛、蟻酸亜
鉛、プロピオン酸亜鉛、炭酸亜鉛などが挙げられる。
【0045】金属アルコキシドとしてはアルミニウムイ
ソプロポキシド、モノ−sec−ブトキシアルミニウム
ジイソプロピレート、アルミニウムエチレート、テトラ
イソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、
テトラ(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラス
テアリルオキシチタンなどが挙げられる。
【0046】ポリエステルと多価金属化合物との反応比
率は特に限定されないが、ポリエステル末端のカルボキ
シル基と2価以上の有機金属化合物および/または金属
塩との中和反応の場合、例えば、金属化合物とポリエス
テルが有するカルボキシル基との比率(金属化合物/C
OOH(モル比))が0.1〜2.0であることが好ま
しく、0.2〜1.2であることがより好ましい。
【0047】ポリエステル末端の水酸基と金属アルコキ
シドとの反応の場合、例えば、金属化合物とポリエステ
ルが有する水酸基との比率(金属化合物/OH(モル
比))が0.1〜2.0であることが好ましく、0.2
〜1.2であることがより好ましい。
【0048】多官能酸無水物としては特に制限はない
が、例えば、二無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテ
トラカルボン酸二無水物、ブタン−1,2,3,4−テ
トラカルボン酸二無水物、無水マレイン酸単独重合体、
無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸
−エチレン共重合体、無水マレイン酸−イソブチレン共
重合体、無水マレイン酸−イソブチルビニルエーテル共
重合体、無水マレイン酸−アクリロニトリル共重合体、
無水マレイン酸−スチレン共重合体などが挙げられる。
【0049】多官能酸無水物との反応は、まず環状酸無
水物と環状エーテルを開環重合させ、得られたポリエス
テルと多官能酸無水物を反応させる方法あるいは環状酸
無水物と環状エーテルと多官能酸無水物を同時に開環反
応させる方法あるいは環状酸無水物と環状エーテルと多
官能酸無水物を同時に開環反応させ、さらに多官能酸無
水物を反応させる方法がある。
【0050】多官能酸無水物の使用量はポリエステルに
対して0.001〜10重量%であり、より好ましくは
0.01〜5重量%である。
【0051】リン酸エステルまたは亜リン酸エステルと
しては特に制限はないが、ジエステル、トリエステルい
ずれでもよくエステル基としては例えば、メチル、エチ
ル、プロピル、ブチル、フェニル、2−エチルヘキシル
などが挙げられるが反応性、経済性を考慮するとメチ
ル、エチル、フェニルが好ましい。
【0052】リン酸エステルまたは亜リン酸エステルの
使用量はポリエステルに対して0.001〜10重量%
であり、より好ましくは0.01〜5重量%である。
【0053】鎖延長剤とポリエステルの反応温度は20
〜250℃が好ましく、より好ましくは100〜200
℃である。
【0054】鎖延長剤とポリエステルとの反応方法は特
に制限はないが、ポリエステルを適当な溶媒に溶かして
鎖延長剤と反応させる方法、ポリエステルを加熱溶融さ
せて鎖延長剤と反応させる方法などが挙げられる。
【0055】本発明の高分子量脂肪族ポリエステルを製
造するに際し、反応装置は公知のものを用いることがで
きるが、高粘度用反応装置を使用することも可能であ
る。
【0056】本発明で用いる高粘度用反応装置としては
バッチ式あるいは連続式でも良い。バッチ式としては例
えば、逆円錐リボン翼式リアクタ(三菱重工業(株)
製)、ねじり格子翼式リアクタ((株)日立製作所製)
を挙げることができる。連続式では例えば日立メガネ翼
重合機((株)日立製作所製)、日立格子翼重合機
((株)日立製作所製)、セルフクリーニング式リアク
タ(三菱重工業(株)製)、横型二軸式リアクタ(三菱
重工業(株)製)、KRCニーダー((株)栗本鉄工所
製)、TEX−K((株)日本製鋼所製)やプラスチッ
クの押出成形あるいは脱揮等に広く用いられている一軸
又は二軸の押出機等を挙げることができる。
【0057】本発明の高分子量脂肪族ポリエステルに
は、必要に応じて他の成分、例えば結晶核剤、顔料、染
料、耐熱剤、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、帯電防止剤、
安定剤、充填剤、強化材、難燃剤、可塑剤、他の重合体
を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができ
る。
【0058】このようにして得られた高分子量脂肪族ポ
リエステルは、押し出し成形、射出成形、中空成形、真
空成形等の通常の成型方法に適用することができ、各種
部品、容器、資材、器具、フィルム、シート、繊維等の
成型品とすることができる。
【0059】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明はこれらにより限定されるものでは
ない。なお、例中の部は重量部を表わす。
【0060】実施例で実施した評価方法は以下の通りで
ある。結果をまとめて表1および表2に示した。
【0061】(分子量)ゲルパーミエーションクロマト
グラフを用いてポリスチレン換算の数平均分子量を測定
した。
【0062】(融点)DSCにて測定した。
【0063】(生分解性試験)130℃、150kg/c
m2、2分間の条件で圧縮成形機により厚さ200ミクロ
ンのフィルムを作成し、得られたフィルムを土壌を仕込
んだプランター中に埋設して、一日一回散水し23℃、
相対湿度65%の恒温恒湿室中に保存し、100日後の
外観変化を観察した。
【0064】なお、土壌は箕面市小野原および吹田市西
御旅町で採取したもの、腐葉土を3:1:3の割合で混
合したものを使用した。
【0065】結果は下記の通りに記載した。
【0066】(+):外観変化が認められた。
【0067】(−):外観変化が認められなかった。
【0068】(実施例1)オートクレーブに蒸留精製し
た無水コハク酸500.0部およびオクチル酸ジルコニ
ール3.68部を加え、窒素置換を行った。次いで撹拌
下にオートクレーブを徐々に130℃まで昇温して無水
コハク酸を溶融し、同温度でオートクレーブ内の圧力を
4.0〜6.5kgf/cm2 に維持しながら、酸化エチレン
231.1部を1時間あたり58部の添加速度で4.0
時間にわたって連続的に導入した。酸化エチレン導入後
130℃で1.0時間熟成反応を行ってから系を常温に
もどすことにより、重合生成物を得た。GPC測定によ
る数平均分子量は36000、DSCによる融点は10
3.4℃であった。
【0069】得られた重合生成物12.0部を温度計、
攪拌装置、窒素導入管を付した50ミリリットルのセパ
ラブルフラスコに加え、窒素置換を3回おこなった後、
窒素気流中、ドライアイス−メタノールに浸したトラッ
プを備えた真空ポンプで0.9〜1.1mmHgの減圧下、
温度240℃の条件で1.5時間反応させ、高分子量脂
肪族ポリエステル(1)を得た。GPC測定による数平
均分子量は68000、DSC測定による融点は、10
3.2℃であった。また、トラップ、セパラブルフラス
コの上部に付着した揮発分は0.48部であった。
【0070】反応中、真空ラインの詰まり、真空ポンプ
の性能低下は見られなかった。
【0071】(実施例2)オクチル酸ジルコニール3.
68部をテトラ−t−ブトキシジルコニウム3.70部
に代えた他は実施例1と同様にして、高分子量脂肪族ポ
リエステル(2)を得た。GPC測定による数平均分子
量は65000、DSCによる融点は103.5℃であ
った。また、トラップ、セパラブルフラスコの上部に付
着した揮発分は0.60部であった。
【0072】反応中、真空ラインの詰まり、真空ポンプ
の性能低下は見られなかった。
【0073】(実施例3)オートクレーブに市販の無水
コハク酸500.0部およびオクチル酸ジルコニール
3.68部を加え、窒素置換を行った。次いで撹拌下に
オートクレーブを徐々に130℃まで昇温して無水コハ
ク酸を溶融し、同温度でオートクレーブ内の圧力を4.
0〜8.5kgf/cm2 に維持しながら、酸化エチレン23
1.1部を1時間あたり58部の添加速度で4.0時間
にわたって連続的に導入した。酸化エチレン導入後13
0℃で1.0時間熟成反応を行ってから系を常温にもど
すことにより、重合生成物を得た。GPC測定による数
平均分子量は13000、DSCによる融点は104.
4℃であった。
【0074】得られた重合生成物12.0部を温度計、
攪拌装置、窒素導入管を付した50ミリリットルのセパ
ラブルフラスコに加え、窒素置換を3回おこなった後、
窒素気流中、ドライアイス−メタノールに浸したトラッ
プを備えた真空ポンプで0.5〜0.6mmHgの減圧下、
温度240℃の条件で3.0時間反応させ、高分子量脂
肪族ポリエステル(3)を得た。GPC測定による数平
均分子量は62000、DSC測定による融点は、10
1.9℃であった。また、トラップ、セパラブルフラス
コの上部に付着した揮発分は1.92部であった。
【0075】反応中、真空ラインの詰まり、真空ポンプ
の性能低下は見られなかった。
【0076】(実施例4)実施例3で得られた重合生成
物12.0部を温度計、攪拌装置、窒素導入管を付した
50ミリリットルのセパラブルフラスコに加え、窒素置
換を3回おこなった後、窒素気流中、ドライアイス−メ
タノールに浸したトラップを備えた真空ポンプで0.3
〜0.4mmHgの減圧下、温度240℃の条件で3.0時
間反応させ、高分子量脂肪族ポリエステル(4)を得
た。GPC測定による数平均分子量は65000、DS
C測定による融点は、102.8℃であった。また、ト
ラップ、セパラブルフラスコの上部に付着した揮発分は
2.61部であった。
【0077】反応中、真空ラインの詰まり、真空ポンプ
の性能低下は見られなかった。
【0078】(比較例1)攪拌機、出口にドライアイス
−メタノールに浸したトラップを備えたウィグリュー分
留管及びガス導入管を付した三つ口フラスコに、コハク
酸47.2部、テトラメチレングリコール46.9部、
及び酢酸マグネシウム・4水和物0.026部を入れ、
オイルバス中に浸した。このオイルバスを200℃に昇
温し、窒素をゆっくり融解液中に流し、200℃の温度
で3時間要して生成する水と過剰のテトラメチレングリ
コールを留去し、オリゴマーを得た。次いで、テトラ−
n−ブチルチタネート0.14部を加え、温度を220
℃に上げ、窒素下、ドライアイス−メタノールに浸した
トラップを備えた真空ポンプで2mmHgの減圧下で2時
間、さらに温度を240℃に上げ、0.1〜0.2mmHg
の減圧下で1時間加熱して、比較ポリエステル(1)を
得た。比較ポリエステル(1)のηsp/cは0.95
(濃度0.5g/デシリットル、30℃、クロロホルム
中)であり、GPC測定による数平均分子量は4800
0、DSC測定による融点は、115℃であった。ま
た、トラップ、三つ口フラスコの上部に付着した揮発分
は26.4部であった。
【0079】反応中、真空ラインの詰まりが見られ、系
内の減圧度を維持するため反応を中断して、トラップ及
び真空ラインの詰まりを除去する必要があった。
【0080】(比較例2)70リットルの反応器を窒素
置換してから、1,4−ブタンジオール18.3kgとコ
ハク酸22.4kgを仕込んだ。窒素気流下に温度を上
昇した後、温度192〜220℃にて3.5時間、更に
窒素を停止してドライアイス−メタノールに浸したトラ
ップを備えた真空ポンプで20〜2mmHgの減圧下に3.
5時間にわたり、脱水縮合によるエステル化反応を行っ
た。引き続いて、常圧の窒素気流下に触媒のチタニウム
・テトライソプロポキサイド3.4gを添加した。温度
を215〜220℃にし、ドライアイス−メタノールに
浸したトラップを備えた真空ポンプで15〜0.2mmHg
の真空下に4.5時間、第一次の脱グリコール反応を行
った。更に、反応系を上記の温度で0.2mmHgの真空度
にしてから、高性能真空ポンプに切り替えて0.02mm
Hgの高真空下に4時間、第二次の脱グリコール反応を行
い、比較ポリエステル(2)を得た。GPC測定による
数平均分子量は35000、DSC測定による融点は、
110℃であった。また、トラップ、反応器の上部に付
着した揮発分は10.8kgであった。
【0081】反応中、真空ラインの詰まりが見られ、系
内の減圧度を維持するため反応を中断して、トラップ及
び真空ラインの詰まりを除去する必要があった。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【発明の効果】本発明によれば、製造中の生成揮発分量
を低く抑えられるため、製造中の生成揮発分による減圧
度の低下、真空ポンプの性能低下などにより、反応時間
が著しく長くなったり、所定の分子量まで到達しなかっ
たりするなどの問題が生ずることがなく、生分解性を有
する高分子量脂肪族ポリエステルを、短い反応時間で高
収率で合成することができ、よって工業的に効率よくか
つ経済的に製造できる。
【0085】本発明で得られる高分子量脂肪族ポリエス
テルは、比較的高分子量で構造中にポリエーテル成分を
ほとんど有しない高融点のものであるため、フィルムや
シート等への成形加工が容易となり、成形品としての耐
久性にもすぐれている。したがって、本発明で得られる
高分子量脂肪族ポリエステルは、使い捨ての包装材料や
日用雑貨品等に有効に使用できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小林 博也 大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会 社日本触媒 機能開発研究所内 (56)参考文献 特開 平7−53696(JP,A) 特開 平7−53691(JP,A) 特開 平7−33862(JP,A) 特開 平6−306154(JP,A) 特開 平8−127649(JP,A) 特開 平8−127648(JP,A) 特開 平7−324124(JP,A) 特開 平7−102054(JP,A) 特開 平7−90072(JP,A) 特開 平7−90071(JP,A) 特開 昭63−120718(JP,A) 特開 昭63−117027(JP,A) 特開 昭62−190219(JP,A) 特許2571672(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 63/00 - 63/91

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】数平均分子量25000〜80000の高
    分子量脂肪族ポリエステルを製造する方法であって、減
    圧度0.3〜2.0mmHgの条件下でエステル交換反
    応を行う工程を含み、製造中に生成する揮発分の量が、
    高分子量脂肪族ポリエステルの原料に対して25重量%
    以下であることを特徴とする高分子量脂肪族ポリエス
    テルの製造方法。
  2. 【請求項2】前記高分子量脂肪族ポリエステルが、炭素
    数2〜6の脂肪族ジカルボン酸成分と、炭素数2〜4の
    脂肪族グリコール成分とから得られたものである請求
    項1に記載の高分子量脂肪族ポリエステルの製造方法。
  3. 【請求項3】炭素数2〜6の脂肪族ジカルボン酸成分
    が、無水コハク酸を主成分とする環状酸無水物であり、
    炭素数2〜4の脂肪族グリコール成分が酸化エチレンを
    主成分とする環状エーテルである請求項に記載の高
    分子量脂肪族ポリエステルの製造方法。
  4. 【請求項4】重合触媒としてジルコニウム化合物を用い
    請求項1から3までのいずれかに記載の高分子量脂
    肪族ポリエステルの製造方法。
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