JP3379005B2 - 停止装置付スライドファスナー用スライダー - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、停止機構を備え
たスライダーであって、停止爪を設けた引手とスライダ
ー胴体とを一体成形手段によって同時に成形するととも
に、引手をスライダー胴体に組付けた形態に成形した停
止装置付スライドファスナー用スライダーに関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】従来の停止装置付スライドファスナー用
スライダーは、図１０に示すようにスライダー胴体上面
の中央に、後口側に開口する引手収納凹溝を設け、この
凹溝の対向側壁に後口側から中間部にかけて引手保持溝
を設け、この保持溝に引手の両側に設けた支持杆を終端
部まで嵌入した後、保持溝の縁片を終端部を残して、下
方に折曲して支持杆を封鎖し、引手を収納凹溝内に収納
可能に形成し、引手と胴体上面が同一面になるように形
成した停止装置付スライドファスナー用スライダーが実
公昭５１−４８０９号公報に開示されている。

【０００３】また、図１１、１２に示すように、スライ
ダー胴体と停止爪を突設した引手とを一体成形手段によ
って同時に成形し、かつ胴体と引手とを組付けた停止装
置付スライドファスナー用スライダーがアメリカ特許第
２４９５５３９号明細書に開示されている。

【０００４】この明細書に開示されたスライダーの形態
は、胴体の上翼板における片側の中程側面から中央に突
設された引手取付隆起部にかけて、上翼板を完全に切欠
いた凹孔部を形成し、この凹孔部に引手に突設された停
止爪が挿入される。引手取付隆起部は両側に引手の取付
環部を嵌挿するための突起が突設され、引手の基部片側
には停止爪が突設されたスライダーである。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】前項で挙げた公知の停
止装置付スライドファスナー用スライダーの第一例は、
スライダー胴体と引手とを一体成形手段によって成形と
同時に胴体と引手とを組付け、一挙にスライダーを完成
させるものではなく、胴体と引手とを別体に成形し、そ
の後において組付け加工をしてスライダーを完成するも
のであり、必然的に組付加工工程が必要であり、スライ
ダーの生産性の向上は望めない。またスライダーは引手
を反転させたとき、引手および停止爪が胴体上に突出し
衣服などにひっかかり、衣服を損傷するなどの問題点が
ある。

【０００６】公知のスライダーの第二例は、引手の片側
に形成された停止爪を嵌挿するための凹孔部を胴体の上
翼板に成形するには、成形時に上翼板と同一厚さのサイ
ドコアを挿入し、上翼板に切欠状の凹孔部を形成する。
したがって凹孔部のフランジ側にはファスナーエレメン
トを誘導し保護するための部分、すなわちファスナーエ
レメントの隅角部を保持するための保護部分がなく、し
かも凹孔部の前後端は上翼板が鋭角状に切り立っている
ため、スライダーの摺動によってファスナーエレメント
の上面、特にブレードまたは縫糸に損傷をあたえる原因
にもなる。

【０００７】また上翼板に設けた凹孔部は一端部が停止
爪の幅よりも広く形成され、たとえば胴体の肩口側の端
部は後口側の端部よりも、上翼板の形状にしたがって幅
広く形成されているため、ファスナーエレメントを円滑
に誘導することができず、また引手は上翼板の中央に突
設された引手取付隆起部に嵌挿されているため、引手の
固定が不安定であるなど問題があり、さらに上翼板に設
けた凹孔部周辺は、完全に上翼板が切欠かれて側面のフ
ランジのみで連結されているので、スライダーの強度面
からも問題点がある。

【０００８】この発明は、上述の問題点を考慮し発明さ
れたものであり、請求項１記載の発明は、胴体と引手と
を組付けた形で一体成形によって成形して、スライダー
を一挙に完成させ、かつスライダーは嵩張らず薄形で頑
強で体裁のよい、しかも衣服などに損傷をあたえない停
止装置付スライドファスナー用スライダーを提供するこ
とが主たる目的である。

【０００９】請求項２記載の発明は、請求項１記載の発
明の目的に加え、スライダーの形態を特定し、成形上有
利な形態で、しかも停止機能が十分に発揮できる形態の
停止装置付スライドファスナー用スライダーを提供する
ことが目的である。

【００１０】請求項３記載の発明は、請求項１または２
記載の発明の目的に加え、スライダーは薄形であって、
しかも体裁のよい形態の停止装置付スライドファスナー
用スライダーを提供することが目的である。

【００１１】請求項４記載の発明は、請求項１、２また
は３記載の発明の目的に加え、胴体に対し引手が自由に
滑動でき、かつ引手の収納が有効にできる形態の停止装
置付スライドファスナー用スライダーを提供することが
目的である。

【００１２】請求項５記載の発明は、請求項１、２、３
または４記載の発明の目的に加え、引手が胴体に密着せ
ず操作性のよい形態の停止装置付スライドファスナー用
スライダーを提供することが目的である。

【００１３】請求項６記載の発明は、請求項１、２、
３、４または５記載の発明の目的に加え、スライダーの
薄形形態を助勢し薄形スライダーをより有利に完成でき
る形態の停止装置付スライドファスナー用スライダーを
提供することが目的である。

【００１４】

【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
め、この発明のうち請求項１記載の発明は、スライダー
胴体１の上翼板３における側部に停止爪２３の挿入のた
めの爪孔１５を縦方向に設け、上翼板３の一部からフラ
ンジ６の上側に引手２の幅に相当する間隔をもって側壁
１１を立設し、この側壁１１に爪孔１５と連通する横溝
孔１３を横方向に設け、この横溝孔１３の上側に引手２
の枢軸２２が嵌入できるための軸孔１４を連通状態に設
け、すなわち連設し、引手２の基部に爪孔１５に対応す
る停止爪２３を突設したスライダーを胴体１と引手２と
を組付けた形で一体成形によって成形した停止装置付ス
ライドファスナー用スライダーを主な構成とするもので
ある。

【００１５】請求項２記載の発明は、請求項１記載の発
明の構成に加え、上翼板３のフランジ６と爪孔１５との
間にファスナーエレメントガイドのための保持部１６お
よび爪孔１５間に保持板１７を成形するとともに、停止
爪２３は引手２の基部の左右に齟齬状に突出するように
成形した停止装置付スライドファスナー用スライダーで
ある。

【００１６】請求項３記載の発明は、請求項１または２
記載の発明の構成に加え、上翼板３の上面を、軸孔１４
の略後口１０側の外側を境界として肩口９側を低く成形
し、後口１０側を高く段差状に成形した停止装置付スラ
イドファスナー用スライダーである。

【００１７】請求項４記載の発明は、請求項１、２また
は３記載の発明の構成に加え、上翼板３の側壁１１に設
ける横溝孔１３の上側に連設する軸孔１４は、軸孔１４
と同一の孔径をもって横溝孔１３の上方へ直立状に成形
した停止装置付スライドファスナー用スライダーであ
る。

【００１８】請求項５記載の発明は、請求項１、２、３
または４記載の発明の構成に加え、引手２の基部におけ
る停止爪２３の配設面の中央に、上翼板３と対向し当接
できる小突起２４を突出状に成形した停止装置付スライ
ドファスナー用スライダーである。

【００１９】請求項６記載の発明は、請求項１、２、
３、４または５記載の発明の構成に加え、引手２の両側
に突設される枢軸２２は、停止爪２３の配設面と反対面
側に片寄って成形した停止装置付スライドファスナー用
スライダーである。

【００２０】

【発明の実施の形態】以下、この発明の停止装置付スラ
イドファスナー用スライダーの実施の形態について、図
面を参照しながら具体的に説明する。

【００２１】この発明の停止装置付スライドファスナー
用スライダーは、図５、６に示すように、ファスナーテ
ープＴの一側縁の両面にジグザグタイプのモノフィラメ
ントから形成されたファスナーエレメントＥをブレード
Ｂおよび縫糸Ｓによって装着した形態のファスナーチェ
ン、あるいは単一タイプのファスナーエレメントを装着
したファスナーチェンに装備されるスライダーについ
て、ここでは説明する。

【００２２】勿論ファスナーテープの一側面上にファス
ナーエレメント、たとえばコイルタイプのファスナーエ
レメントまたジグザグタイプのファスナーエレメントを
装着したファスナーチェンに使用されるスライダーであ
ってもよく、いずれの形態のファスナーチェンに使用す
るスライダーにも適用できる停止装置付スライドファス
ナー用スライダーである。

【００２３】この発明の停止装置付スライドファスナー
用スライダーは、図１から図４に示すように、スライダ
ーは胴体１と引手２とから形成され、胴体１は上翼板３
と下翼板４とを一端で案内柱５によって連結し、この上
翼板３と下翼板４との両側縁には、ファスナーエレメン
トＥがガイドするためのフランジ６、７がそれぞれ内方
へ屈設され、Ｙ字状のガイド溝８が形成され、案内柱５
側に肩口９、その反対側に後口１０が形成されている。

【００２４】上翼板３の上面両側に起立する側壁１１を
フランジ６に連設することによって中央に平行縁部を備
えた縦長状の凹部１２を形成する。そして側壁１１の中
央から後口１０側にかけて細幅状の横溝孔１３を貫通状
に設け、この横溝孔１３は上翼板３の上面を凹状に刻む
形態で設けられている。さらに横溝孔１３の前端側すな
わち肩口９側に片寄った位置の上方に引手２を取付ける
ための軸孔１４が連設され、その際軸孔１４は同等の孔
径をもって横溝孔１３の上側に連設し、または連通部分
が縊れた形で連設されてもよい。

【００２５】上翼板３の側壁１１間における凹部１２に
おいて、横溝孔１３に相当する個所の両側には停止爪挿
入用の爪孔１５が長手方向に並設され、爪孔１５の両外
側に平坦状の保持部１６および中央に橋板状の保持板１
７が設けられ、ファスナーエレメントＥを保持する形態
に形成されている。この保持板１７の中央長手方向と下
翼板４の中央長手方向に、それぞれ弧状を呈する突条１
８、１９が対向的に設けられ、ファスナーエレメントＥ
を装着しているブレードＢをガイドする。

【００２６】また、上翼板３の凹部１２は、軸孔１４の
後口１０側端のやや外側を境界として案内柱５すなわち
肩口９側が低い翼面２０、後口１０側が高い翼面２１に
段差状に形成されている。

【００２７】引手２は、短冊形でやや先端が幅広状に形
成され、基部の両外側には前記軸孔１４に嵌入できる枢
軸２２が停止爪２３の配設面側へやや片寄った位置に突
設されている。また基部の一面には前記爪孔１５に挿入
できる三角状の停止爪２３が両側に並列され、その先端
は齟齬状を呈し、この停止爪２３の近傍で前記翼面２１
と対接する個所に円弧状の小突起２４が突設されてい
る。

【００２８】引手２の枢軸２２は、図７に示すように停
止爪２３の配設面と反対側に片寄った位置に突設するこ
ともでき、また引手２の側面中央に突設してもよい。そ
して引手２は軸孔１４内で回動できることは勿論である
が、引手２の枢軸２２が軸孔１４と横溝孔１３間を遊動
できるように装着することも可能であり、この場合横溝
孔１３の孔径よりも軸孔１４の孔径を大きく設定する必
要がある。

【００２９】スライダーの摺動動作においては、図６に
示すように前後に配置したファスナーエレメントＥを被
覆しているブレードＢおよび縫糸Ｓは、胴体１の上翼板
３に設けた爪孔１５には影響されず、保持板１７および
保持部１６とフランジ６とによって保護誘導される。

【００３０】スライダーをファスナーチェンの任意の個
所で停止させ固定する場合は、図５に示すように引手２
を倒伏させて小突起２４を翼面２１に当接させ、停止爪
２３をファスナーエレメントＥ間に圧入させれば、スラ
イダーは停止し摺動はできない。またスライダーを摺動
させる場合は、引手２を起立させ肩口９側に倒して引張
ればスライダーは自由に摺動させることができる。この
操作の際引手２は上翼板３の凹部１２における低い翼面
２０に当接させることによって引手２を水平に保持する
ことできる。

【００３１】以上説明したような形態のスライダーを作
製するには、図８、９に示すようにスライダーの胴体１
および引手２を成形するためのコアを前後、上下から可
動させて組合わせ、かつ左右から胴体１の軸孔１４およ
び引手２の枢軸２２、さらには横溝孔１３を成形するサ
イドコア２５を組合せるが、その際胴体１の後口１０側
から胴体１内に挿入されるコア２６の上面に接触するサ
イドコア２５を胴体１の上翼板３と側壁１１にかけて左
右に可動挿入し、かつコア２６の上面には爪孔１５を成
形するための突出部２７が設けられ、この突出部２７と
左右から可動挿入されるサイドコア２５とが面接触する
ことによって、胴体１に設けられる爪孔１５と横溝孔１
３および軸孔１４とが連通する形態に成形される。この
ように各種のコアを用いて成形金型を組立て、金型に材
料を注入射出してスライダーを一体成形し、胴体１と引
手２とが組付けられたスライダーを一挙に作製するもの
である。

【００３２】

【発明の効果】この発明の停止装置付スライドファスナ
ー用スライダーは、以上説明したとおりの構成であり、
この構成によって下記の効果を奏するものである。

【００３３】この発明のうち請求項１記載の発明は、上
翼板に設けた爪孔と側壁に設けた横溝孔を連通させ、か
つ横溝孔の上側に軸孔を連設し、引手の停止爪は爪孔に
対応させ、枢軸は軸孔に嵌入させた形態のスライダーを
胴体と引手とを組付けた形で一体成形したことによっ
て、薄形で体裁のよい、しかも機能的にも優れたスライ
ダーを一挙に成形手段によって作製できるから、生産性
の向上が図れ、安価な製品が得られる効果がある。

【００３４】請求項２記載の発明は、請求項１記載の発
明の効果に加え、上翼板のフランジと爪孔との間に保持
部および爪孔間に保持板を設け、停止爪は齟齬状に成形
したことによって、スライダーの成形上有利な形態であ
って、しかもファスナーエレメントを的確に保護誘導
し、停止機能も十分に果せる効果がある。

【００３５】請求項３記載の発明は、請求項１または２
記載の発明の効果に加え、上翼板の上面を軸孔を基準と
して肩口側を低く、後口側を高く成形することによっ
て、薄形のスライダーに仕上げることができ、しかも停
止爪を短尺化でき損傷をあたえない効果がある。

【００３６】請求項４記載の発明は、請求項１、２また
は３記載の発明の効果に加え、横溝孔に連設する軸孔
を、軸孔と同一の孔径をもって成形したことによって、
引手が自由に滑動でき、引手の反転時に枢軸が沈下状態
になるので停止爪の突出が少なく、引手も水平状態を維
持し他物を損傷させることがない効果がある。

【００３７】請求項５記載の発明は、請求項１、２、３
または４記載の発明の効果に加え、停止爪の配設面の中
央に、上翼板と対向する小突起を設けることによって、
引手が胴体に密着しないので、引手の操作がきわめて容
易である効果がある。

【００３８】請求項６記載の発明は、請求項１、２、
３、４または５記載の発明の効果に加え、引手に突設す
る枢軸を停止爪の配設面と反対側に片寄らせることによ
って、引手を胴体に対し低い位置に収納することができ
るので、スライダーをより薄形に成形でき、体裁のよい
スライダーに仕上げることができる効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】両側に停止機構を備えたスライダーの平面図で
ある。

【図２】同上スライダーの側面図である。

【図３】同上スライダーの斜視図である。

【図４】図２におけるIV−IV線断面図である。

【図５】同上スライダーの停止状態を示した縦断面図で
ある。

【図６】同上スライダーのガイド状態を示した一部横断
面図である。

【図７】他の変形例を示す図４に相当する断面図であ
る。

【図８】スライダーの成形時におけるコアの一部を示し
た斜視図である。

【図９】スライダーの成形時におけるコアの一部を可動
させた状態を示した横断面図である。

【図１０】公知のスライダーの分解斜視図である。

【図１１】他の公知のスライダーの側面図である。

【図１２】同上のスライダーのXI−XI線断面図である。

【符号の説明】

１ 胴体 ２ 引手 ３ 上翼板 ４ 下翼板 ５ 案内柱 ６、７ フランジ ９ 肩口 １０ 後口 １１ 側壁 １３ 横溝孔 １４ 軸孔 １５ 爪孔 １６ 保持部 １７ 保持板 ２２ 枢軸 ２３ 停止爪 ２４ 小突起 Ｔ ファスナーテープ Ｅ ファスナーエレメント Ｂ ブレード Ｓ 縫糸

Claims (6)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 胴体１の上翼板３における側部に停止爪
   ２３挿入用の爪孔１５を縦設し、上翼板３の一部からフ
   ランジ６の上側に引手２の幅をもって側壁１１を立設
   し、該側壁１１に爪孔１５と連通する横溝孔１３を横設
   するとともに、該横溝孔１３上側に引手２の枢軸２２嵌
   入用の軸孔１４を連設し、引手２の基部に爪孔１５に対
   応する停止爪２３が突設されたスライダーを胴体１と引
   手２とを組付けた形で一体成形したことを特徴とする停
   止装置付スライドファスナー用スライダー。
2. 【請求項２】 上翼板３のフランジ６と爪孔１５との間
   にファスナーエレメントガイド用の保持部１６および爪
   孔１５間に保持板１７を成形するとともに、停止爪２３
   は引手２の基部左右に齟齬状に突出成形してなる請求項
   １記載の停止装置付スライドファスナー用スライダー。
3. 【請求項３】 上翼板３の上面は、軸孔１４の略後口１
   ０側外側を境界として肩口９側を低く、後口１０側を高
   く成形してなる請求項１または２記載の停止装置付スラ
   イドファスナー用スライダー。
4. 【請求項４】 横溝孔１３上側に連設する軸孔１４は、
   軸孔１４と同一の孔径をもって横溝孔１３に直立状に成
   形してなる請求項１または２記載の停止装置付スライド
   ファスナー用スライダー。
5. 【請求項５】 引手２の基部における停止爪２３の配設
   面の中央に、上翼板３と対向する小突起２４を突出成形
   してなる請求項１、２または３記載の停止装置付スライ
   ドファスナー用スライダー。
6. 【請求項６】 引手２の両側に突設される枢軸２２は、
   停止爪２３の配設面と反対面側に偏位して成形してなる
   請求項１、２、３または４記載の停止装置付スライドフ
   ァスナー用スライダー。