JP3366826B2 - アルミニウム合金用リン酸亜鉛処理剤 - Google Patents

アルミニウム合金用リン酸亜鉛処理剤

Info

Publication number
JP3366826B2
JP3366826B2 JP11231497A JP11231497A JP3366826B2 JP 3366826 B2 JP3366826 B2 JP 3366826B2 JP 11231497 A JP11231497 A JP 11231497A JP 11231497 A JP11231497 A JP 11231497A JP 3366826 B2 JP3366826 B2 JP 3366826B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
aluminum alloy
zinc phosphate
zinc
iron
agent
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP11231497A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH10306382A (ja
Inventor
俊哉 西野
浩一郎 和泉
建二 柘植
智志 宮本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Honda Motor Co Ltd
Nippon Paint Co Ltd
Nippon Paint Holdings Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
Nippon Paint Co Ltd
Nippon Paint Holdings Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Honda Motor Co Ltd, Nippon Paint Co Ltd, Nippon Paint Holdings Co Ltd filed Critical Honda Motor Co Ltd
Priority to JP11231497A priority Critical patent/JP3366826B2/ja
Publication of JPH10306382A publication Critical patent/JPH10306382A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3366826B2 publication Critical patent/JP3366826B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する分野】本発明はアルミニウム合金用リン
酸亜鉛処理剤、特に6000番系アルミニウム合金表
面、またはその研削加工表面に対して、カチオン型電着
塗装に適し、耐糸錆性に優れた均一で緻密なリン酸亜鉛
皮膜を形成させる自動車ボディ用リン酸亜鉛処理剤に関
する。
【0002】
【従来の技術】自動車ボディ、その他の自動車部品、建
材、家具など各分野で金属素材が利用されている。金属
は、空気中の酸素や硫黄酸化物、雨水、海水などによる
腐食を防ぐため、塗装前処理として、リン酸亜鉛処理が
施される。これにより形成されたリン酸亜鉛皮膜は、下
地である金属表面部の密着性に優れているとともに、そ
の上に形成される塗膜との密着性(二次密着性)に優れ
ている必要があり、腐食環境下でも充分な防錆力を持つ
ことが要求される。特に、自動車ボディが、外板部の傷
から塩水、乾湿気象条件変化を繰り返し受けるため、カ
サブタ状の錆(スキャブコロージョン)の防止性(耐ス
キャブ性)、より高度の耐温塩水性などが強く望まれて
いる。
【0003】近年、二種類以上の金属表面を有する金属
素材に対してリン酸亜鉛処理を施す場合が増えてきてい
る。例えば、自動車ボディには、塗装後の耐食性を更に
向上させるために、鋼材の片面だけに亜鉛または合金亜
鉛メッキした素材が用いられる。かかる場合、鉄系表面
と亜鉛系表面とを同時に有する金属表面に対して、リン
酸亜鉛処理を施していた。
【0004】更に、アルミニウム材と、鉄又は亜鉛材と
を組み合わせた素材も、自動車や建材などの各分野で実
用されている。このような素材に従来の鉄あるいは亜鉛
材用の酸性リン酸亜鉛処理液で処理を施すと、処理液中
に溶出したアルミニウムイオンが蓄積され、その量があ
る程度高くなると、アルミニウム材、鉄材の順に化成不
良を起こすという問題があった。従来、アルミニウム材
は、鉄材や亜鉛材に比べ良好な耐食性を有するため、そ
の上に形成されるリン酸亜鉛皮膜量を特に規定するとい
うことはなかった。しかし、近年の防錆への要求の高ま
りにより、その表面にもある程度皮膜量を確保する必要
が生じてきた。
【0005】そこで、アルミニウム/鉄/亜鉛を同時に
有する金属表面に対して同時に化成処理を施し、下地金
属の種類に拘らず、カチオン電着塗装下地に適したリン
酸亜鉛皮膜を形成する方法が、特開平3−191071
号公報の「金属表面のリン酸亜鉛処理方法」に提案され
ている。すなわち、リン酸亜鉛皮膜処理液が単純フッ化
物をHF濃度に換算して200〜500mg/lの範囲
で含み、かつ、フッ化物を下記数1に示す範囲で含むよ
うに濃度調整されるとともに、活性フッ素濃度がケイ素
電極メータの指示値で15〜130μA/cmとなるよ
うに調整されるようになっており、このリン酸亜鉛皮膜
処理液に金属表面を接触させて金属表面にリン酸亜鉛皮
膜を形成する方法が開示されている。
【0006】
【数1】 また、特開平3−267378号公報の「金属表面のリ
ン酸塩処理方法および処理液」には、2.0≦Naイオ
ン+Kイオン≦15.0(g/l)、1.0≦Mnイオ
ン+Niイオン≦5.0(g/l)、1.6−0.02
T≦Znイオン≦2.5−0.02T(g/l)、8.
0T-1≦フリーFイオン≦20.0T-1(g/l)、但
しT(処理液温度(℃))は20≦T≦60の条件を満
足するリン酸塩水溶液を金属表面に接触させて皮膜化成
させる金属表面のリン酸塩処理方法及び処理液が開示さ
れている。
【0007】また、特開平4−341574号公報の
「金属表面のリン酸亜鉛処理方法」には、金属表面をリ
ン酸亜鉛処理液に接触させて該金属表面にリン酸亜鉛皮
膜を形成させる金属表面のリン酸亜鉛処理方法であっ
て、前記処理液に含まれる錯フッ化物のヘキサフルオロ
ケイ酸の酸基(SiF6 2-)および/またはテトラフル
オロホウ酸の酸基(BF4 )に換算した濃度(単位:g
/l)が、前記処理液に含まれるアルミニウムイオン濃
度(単位:g/l)に対して、下記数2を満足するよう
に錯フッ化物を添加する事が開示されている。
【0008】
【数2】
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、600
0番系合金アルミニウム表面又は6000番系合金アル
ミニウムの研削加工表面に対し、上記金属表面のリン酸
塩処理液で化成処理を行うと、5000番系合金アルミ
ニウムの場合に比べ、皮膜量が少なく、皮膜の被覆性に
劣るという問題がある。特に、研削表面は、研削溝の部
位まで充分に被覆されない。その結果、耐糸錆性が低下
する問題があった。
【0010】耐糸錆性を向上させるためには、アルミニ
ウム材料そのものの改善と、化成皮膜の皮膜量、被覆性
の増加といった二方向の解決策がある。アルミニウム材
料としては、特に6000番系合金においては、Cu量
が0.1%を超えると糸錆性が著しく低下するため、C
u量を0.1%以下に抑えた合金が使用される。ところ
がCu量を低く抑えた6000番系合金アルミニウムの
場合、リン酸亜鉛処理時に処理液中に、例えばアルミニ
ウムイオンが約50ppm蓄積すると、アルミニウム表
面の化成性が著しく低下し、皮膜量の低下および皮膜の
スケ(皮膜が付かない)やムラ(皮膜の付き方の多い少
ない)が生じる。この皮膜のスケやムラを防止するため
に、化成促進剤として最も効果ある遊離フッ素の浴中濃
度を高くすると、皮膜量は増加し、また浴中溶出アルミ
ニウムイオンの影響を押さえられるが、耐糸錆性、耐水
二次密着性が低下するという問題が生じる。
【0011】なお、Al表面では、リン酸亜鉛が析出す
る際、Al、F、Naを主成分とする副生成物が共析す
る。これは、Al表面のエッチング反応により溶出した
Al3+イオンと浴中のF- イオン、Na- イオンによる
ものである。
【0012】遊離フッ素濃度が高いと、F- イオンの増
加、及びそれにともなうAlのエッチング増加により、
副生成物の生成が促進され、これが耐糸錆性、耐水二次
密着性に悪影響を及ぼす。
【0013】本発明は上記従来の課題に鑑みたものであ
り、その目的は、アルミニウム合金、そのなかでも合金
中Cu量0.1%以下の6000番系アルミニウム合金
表面、またはその研削加工表面に対して、カチオン型電
着塗装に適し、耐糸錆性に優れた均一で緻密なリン酸亜
鉛皮膜を形成させるアルミニウム合金用リン酸亜鉛処理
剤を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】前述した目的を達成する
ために、本発明に係るアルミニウム合金用リン酸亜鉛処
理剤は、一部又は全部が6000番系アルミニウム合金
で構成される自動車用ボディの塗装前処理剤であって、
亜鉛イオンを0.1〜2.0g/lと、ニッケルイオン
を0.1〜4.0g/lと、マンガンイオンを0.1〜
3.0g/lと、リン酸イオンを5〜40g/lと、硝
酸イオンを0.1〜15g/lと、亜硝酸イオンを0.
01〜0.5g/lと、フッ化物として、錯フッ化物を
F換算で0.5〜1.0g/lと、単純フッ化物をF換
算で0.3〜0.5g/lと、を主成分とした水溶液で
あり、更に、鉄イオンとキレート結合可能なキレート
をFe換算で0.0250.45g/lを含有する。
【0015】ここで、6000番系アルミニウム合金
は、合金成分のCu量が0.1重量%以下である。
【0016】リン酸亜鉛処理において、処理液に鉄イオ
ン(2価、3価)を含有させることで、鉄系表面または
亜鉛系表面上に、緻密で均一なリン酸亜鉛皮膜を形成さ
せる効果があることが知られているが、本系のようにp
Hが3〜4でかつ、亜硝酸イオン等の酸化剤を含む場合
は、浴中に一定量の鉄イオンを長期間安定に保持するこ
とができない。
【0017】本発明では,鉄のキレート化合物を配合す
る、あるいはキレート剤で被処理物からの溶出鉄イオン
をキレート化することで、上記条件下でも、浴中に一定
量の鉄イオンを安定に保持することができ、上記のよう
な鉄イオンの効果をアルミニウム合金、特に、6000
番系合金アルミニウム表面上のリン酸亜鉛皮膜形成にお
いて発現させることができた。
【0018】その結果、6000番系合金アルミニウム
表面上に緻密で均一かつ被覆性の高いリン酸亜鉛皮膜を
得ることができた。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明に係るアルミニウム合金用
リン酸亜鉛処理剤は、一部又は全部が6000番系アル
ミニウム合金で構成される自動車用ボディの塗装前処理
剤であって、亜鉛イオンを0.1〜2.0g/lと、ニ
ッケルイオンを0.1〜4.0g/lと、マンガンイオ
ンを0.1〜3.0g/lと、リン酸イオンを5〜40
g/lと、硝酸イオンを0.1〜15g/lと、亜硝酸
イオンを0.01〜0.5g/lと、フッ化物として、
錯フッ化物をF換算で0.5〜1.0g/lと、単純フ
ッ化物をF換算で0.3〜0.5g/lと、を主成分と
した水溶液であり、更に、鉄イオンとキレート結合可能
キレートをFe換算で0.025〜0.45g/l
を含有する。
【0020】亜鉛イオン濃度は、より好ましくは0.3
〜1.5g/lであり、上記亜鉛イオン濃度が0.1g
/l未満の場合には、金属表面に均一なリン酸亜鉛皮膜
が形成されず、スケが多く、一部ブルーカラー状の皮膜
が形成されることがある。一方、亜鉛イオン濃度が2.
0g/lを超える場合には、均一なリン酸亜鉛皮膜が形
成されるが、アルカリに溶解しやすい皮膜になりやす
く、特にカチオン電着時に晒されるアルカリ雰囲気によ
って皮膜が溶解しやすくなることがある。その結果、一
般に耐温塩水性が低下し、特に鉄系表面の場合、耐スキ
ャブ性(すなわち、カサブタ状の錆(スキャブコロージ
ョン)の防止性)が劣化するなど、所望の性能が得られ
ないので、電着塗装、特にカチオン電着塗装下地には不
適当である。 また、リン酸イオン濃度は、より好まし
くは10〜30g/lであり、リン酸イオン濃度が5g
/l未満の場合には、不均一皮膜を形成しやすく、また
40g/lを超えても、効果の向上は期待できず、薬品
の使用量が多くなって経済的に不利である。
【0021】また、マンガンイオン濃度は、より好まし
くは0.6〜3g/lである。マンガンイオン濃度が
0.1g/l未満の場合には、亜鉛系表面と塗膜との密
着性及び耐温塩水性向上効果が不十分となる。一方、3
g/lを超えると、量の増加に見合った効果が期待でき
ず、経済的に不利である。
【0022】また、ニッケルイオン濃度は、より好まし
くは0.1〜2g/lであり、濃度が0.1g/l未満
の場合には、耐食性の向上効果が不十分となり、4.0
g/lを超えても耐食性の向上がそれ以上に期待できな
い。
【0023】また、皮膜促進剤の一種である硝酸イオン
と亜硝酸イオンの濃度は、より好ましくは2〜10g/
lと0.01〜0.4g/lである。そして、この範囲
の下限未満の場合には、皮膜のスケやムラが生じる。一
方上記範囲の上限を超える場合には、鉄系表面にブルー
カラー状の不均一な皮膜を形成し易くなるという不都合
がある。
【0024】また、フッ化物のうち錯フッ化物の濃度が
F換算で0.5g/l未満の場合には、アルミニウム系
金属表面に均一なリン酸亜鉛皮膜が形成されず、塗装後
の耐食性が劣化する、一方1.0g/lを超えると、錯
フッ化物が多すぎるため鉄系表面がエッチングされ過ぎ
て、化成皮膜量が減少し、塗装後の耐食性が劣化する。
また、フッ化物のうち単純フッ化物の濃度がF換算で
0.3g/l未満の場合には、アルミニウム合金表面へ
のリン酸塩皮膜の形成が不十分になり、耐糸錆性が低下
する。また、0.5g/lを超える場合には、Alのエ
ッチング増加により、Al表面でAl、F、Naを主成
分とする副生成物の生成が促進され、耐水二次密着性及
び耐糸錆性が低下する。
【0025】上記亜鉛イオンの供給源は、例えば酸化亜
鉛、炭酸亜鉛、硝酸亜鉛等である。また、ニッケルイオ
ンの供給源は、例えば炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩
化ニッケル、リン酸ニッケル、水酸化ニッケル等であ
る。また、マンガンイオンの供給源は、例えば炭酸マン
ガン、硝酸マンガン、塩化マンガン、リン酸マンガン等
である。リン酸イオンの供給源は、例えばリン酸、リン
酸亜鉛、リン酸マンガン等である。硝酸イオンの供給源
は、例えば硝酸、硝酸ソーダ、硝酸アンモニウム、硝酸
亜鉛、硝酸マンガン、硝酸ニッケル等である。
【0026】また、フッ化物の1つである錯フッ化物と
しては、例えばSiF6 、BF4 等が挙げられ、SiF
6 の供給源は、例えば珪フッ化水素酸、珪フッ化水素酸
ニッケル、珪フッ化水素酸亜鉛、珪フッ化水素酸マンガ
ン、珪フッ化水素酸鉄、珪フッ化水素酸マグネシウム、
珪フッ化水素酸カルシウム等である。BF4 の供給源
は、例えば硼フッ化水素酸、硼フッ化水素酸ニッケル、
硼フッ化水素酸亜鉛、硼フッ化水素酸マンガン、硼フッ
化水素酸鉄、硼フッ化水素酸マグネシウム、硼フッ化水
素酸カルシウム等である。
【0027】また、フッ化物の1つでありフリーフッ素
イオンを供給する単純フッ化物としては、例えばフッ化
水素酸、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化ア
ンモニウム及び酸性フッ化カリウム、酸性フッ化ナトリ
ウム、フッ化アンモニウム及び酸性フッ化アンモニウム
等が挙げられる。化成処理中にアルミニウム合金から溶
出したアルミニウムイオンは、処理液中のフリーFイオ
ンと結び付き錯イオンを形成し、化成皮膜形成を促進さ
せる。
【0028】動車用ボディの塗装前処理剤に、鉄のキ
レート化合物をFe換算で0.005〜0.075g/
l、より好ましくは0.01〜0.015g/lを含有
る。鉄のキレート化合物としては、鉄イオンとキレー
ト結合可能なキレート剤と鉄イオンの化合物及びその塩
である。
【0029】上記キレート化合物、その塩としては、例
えばクエン酸鉄(III)アンモニウム、クエン酸鉄(II
I)カリウム、クエン酸鉄(III)n水和物、クエン酸鉄
(II)アンモニウム、クエン酸鉄(II)カリウム、クエ
ン酸鉄(II)n水和物、酒石酸鉄(III)アンモニウ
ム、酒石酸鉄(III)カリウム、酒石酸鉄(III)n水和
物、酒石酸鉄(II)アンモニウム、酒石酸鉄(II)カリ
ウム、酒石酸鉄(II)n水和物、グルコン酸鉄(II)n
水和物、コハク酸鉄(III)n水和物、リンゴ酸鉄(II
I)n水和物が挙げられ、nは0以上の整数である。上
記処理剤に対して鉄のキレート化合物の含有量が、Fe
換算で0.005g/l未満の場合には、6000番系
合金のアルミニウム表面に対する皮膜被覆性能が低下
し、鉄イオンの効果(すなわち、金属表面上に、緻密で
均一な被覆性の高いリン酸亜鉛皮膜を形成させること)
ができない。一方、上記処理剤に対して鉄のキレート化
合物の含有量が、Fe換算で0.075g/lを超える
場合には、皮膜量は減少し糸錆性が低下する。
【0030】鉄イオンが鋼板等の表面からの鉄溶出によ
り供給される場合には、鉄イオンとキレート結合可能な
キレート剤を処理液中に添加することにより、被処理物
からの溶出鉄を処理液中に保持でき、金属に、緻密で均
一な被覆性の高いリン酸亜鉛皮膜を形成させることがで
きる。
【0031】上記キレート剤は、リン酸亜鉛処理剤に対
して0.025〜0.45g/lである。キレート剤と
しては、例えば、クエン酸、酒石酸、EDTA、グルコ
ン酸、コハク酸、タンニン酸及びリンゴ酸と、これらの
化合物や誘導体が挙げられる。
【0032】処理剤に対してキレート剤の含有量が、
0.025g/l未満の場合には、6000番系合金の
アルミニウム表面に対する皮膜被覆性能が低下し、鉄イ
オンの効果(すなわち、金属表面上に、緻密で均一な被
覆性の高いリン酸亜鉛皮膜を形成させること)ができな
い。一方、上記処理剤に対してキレート剤の含有量が、
0.45g/lを超える場合には、皮膜量は減少し糸錆
性が低下する。
【0033】処理条件と処理方法 本発明に係るアルミニウム合金用リン酸亜鉛処理剤を用
いた金属表面処理方法は、上記リン酸亜鉛処理剤を金属
表面に接触させ、水洗・乾燥させる。また、上記金属表
面処理剤のpHは、約2.0〜5.0であり、好ましく
は3.0〜4.0である。この時、pHの調整は、Na
OH、アンモニア水溶液、硝酸等により行う。本発明の
リン酸亜鉛処理剤と金属材料との接触温度は、40〜6
0℃が好ましく、より好ましくは42〜48℃である。
【0034】金属材料に対してスプレー処理の場合に
は、約1分間〜10分間、好ましくは1.5〜3分間で
ある。浸漬法を用いる場合も同様である。その他、フロ
ーコート法、ロールコート法で接触させても良い。
【0035】上記のように、化成処理を施された金属材
料は、水洗され、乾燥工程に入るが、乾燥温度は80〜
120℃である。
【0036】更に、本発明の好ましい他の実施態様を以
下に示す。
【0037】1.その一部又は全部が6000番系アル
ミニウム合金で構成される自動車用ボディの塗装前処理
剤であって、亜鉛イオンを0.3〜1.5g/lと、ニ
ッケルイオンを0.1〜2.0g/lと、マンガンイオ
ンを0.6〜3.0g/lと、リン酸イオンを10〜3
0g/lと、硝酸イオンを2〜10g/lと、亜硝酸イ
オンを0.01〜0.45g/lと、フッ化物として、
錯フッ化物をF換算で0.5〜1.0g/lと、単純フ
ッ化物をF換算で0.3〜0.5g/lと、を主成分と
した水溶液であり、更に、鉄のキレート化合物をFe換
算で0.01〜0.075g/lを含有することを特徴
とする自動車ボディ用リン酸亜鉛処理剤。
【0038】2.上記「1.」における自動車ボディ用
リン酸亜鉛処理剤は、鉄イオンが鋼板等の表面から供給
される場合は、鉄のキレート化合物の代わりに鉄イオン
とキレート結合可能なキレート剤を含有してもよい。
【0039】3.上記「2.」における上記キレート剤
は、リン酸亜鉛処理剤に対して0.025〜0.45g
/l含有されてよい。
【0040】4.上記「1.」における上記鉄のキレー
ト化合物は、少なくともクエン酸鉄(III)アンモニウ
ム、クエン酸鉄(III)n水和物その他有機酸と鉄イオン
の化合物のいずれか一種である。
【0041】5.上記「2.」における上記キレート剤
は、少なくともクエン酸、酒石酸とこれらの化合物や誘
導体のいずれか一種である。
【0042】
【実施例】次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を
具体的に説明する。
【0043】実施例1〜7及び比較例1〜4 (1)処理対象金属: 6000番系アルミニウム合金板:0.8Mg−0.
95Si−0.01Cuの6000番系アルミニウム合
金 の研削加工板:研磨紙#180で削った板 及びはアルミニウム系表面のものである。
【0044】(2)処理工程: (a)脱脂→ (b)水洗→ (c)表面調整→ (d)化成処理(デ
ィップ処理)→ (e)化成後乾き→ (f)水洗→ (g)純水洗
→ (h)水切り乾燥→ (i)塗装の順に処理を行った。
【0045】[各処理条件] (a)脱脂: アルカリ脱脂処理剤(日本ペイント(株)社製、商品名
「サーフクリーナーSD250」)のA剤:1.5wt
%、B剤:0.9wt%水溶液を用い、43℃で2分
間、処理対象金属を浸漬処理した。
【0046】(b)水洗:処理対象金属に室温で水道水を
15秒間スプレーした。
【0047】(c)表面調整: 表面調整剤(日本ペイント(株)社製、商品名「サーフ
ファイン5N−10」建浴用)の0.1wt%水溶液を
用い、室温で30秒間、処理対象金属を浸漬処理した。
【0048】(d)化成処理:リン酸亜鉛処理剤を処理浴
として処理対象金属を浸漬して化成処理を行った。
【0049】処理浴は、亜鉛イオンを1.0g/l、ニ
ッケルイオンを1.0g/l、マンガンイオンを0.8
g/l、リン酸イオンを15.0g/l、硝酸イオンを
6.0g/l、亜硝酸イオンを0.12g/lを固定組
成として、更に表1に示す組成割合の処理浴を用い、表
1に示す、浴温度、及び処理時間にて、処理対象金属の
全部を同じ処理浴に浸漬処理した。尚、T.O(トーナ
ー)値が2.5pt、T.A(全酸)値が22pt、
F.A(遊離酸)値が0.3〜0.5ptになるよう
に、管理した。
【0050】(e)化成後の乾燥: 化成後乾き:室温で30秒放置。
【0051】(f)水洗:処理対象金属に室温で水道水を
15秒間スプレーした。
【0052】(g)純水洗:処理対象金属に室温でイオン
交換水を15秒間スプレーした。
【0053】(h)乾燥:80℃で5分間、処理対象金属
を乾燥させた。
【0054】(i)塗装: 処理対象金属にカチオン電着塗料(日本ペイント(株)
社製、商品名「パワートップV50グレー」)をカチオ
ン電着塗装により塗装し、温度170℃で25分間焼き
付けした。焼付乾燥膜厚は30μmであった。更に電着
塗装上に中塗り塗料(日本ペイント(株)社製、商品名
「オルガP−5A N−2.0」)をスプレー塗装によ
り塗装し、温度140℃で20分間焼き付けした。形成
された中塗り塗膜は焼付乾燥膜厚は35μmであった。
次いで中塗り塗膜の上に上塗り塗料(日本ペイント
(株)社製、商品名「スーパーラックM−95HB Y
R−511P」)をスプレー塗装により塗装し、温度1
40℃で20分間焼き付けした。形成された上塗り塗膜
は焼付乾燥膜厚は15μmであった。更に上塗り塗膜の
クリヤー塗料(日本ペイント(株)社製、商品名「スー
パーラックO−100−Z クリヤー」)をスプレー塗
装により塗装し、温度140℃で20分間焼き付けし
た。形成された上塗り塗膜は焼付乾燥膜厚は35μmで
あった。
【0055】得られた塗装板について、皮膜外観、皮膜
重量、最大糸錆長さを調べ、結果を表1に示した。
【0056】(3)皮膜評価方法: a)皮膜外観: 皮膜外観は化成処理後にリン酸亜鉛皮膜の外観をSEM
で観察して調べた。 b)皮膜重量: 皮膜重量は、化成処理後にHNO3 30%水溶液にて常
温1分間浸漬しリン酸亜鉛皮膜を溶解させ、その溶解前
後の重量を測定して計算した。
【0057】尚、アルミニウム系表面では、皮膜重量が
1.5〜3.5g/cm2 であることが好ましい(より
好ましくは2.0〜3.5g/cm2 )。
【0058】c)最大糸錆長さ: 4コート板の塗膜に鋭利なカッターを用いてクロスカッ
ト(カット長さ20cm)を入れ、JIS−Z2371
に準じた塩水噴霧を24時間実施した後、温度40℃、
相対湿度70〜75%の湿潤雰囲気下に、240時間放
置することを1サイクルとし、4サイクル後のカット部
からの最大腐食幅(カット部の片側)を測定した。3m
m以内が良好である。
【0059】
【表1】 これらの結果から、本発明のアルミニウム合金用リン酸
亜鉛処理剤によれば、外見が均一緻密で良好なリン酸塩
皮膜は形成され耐糸錆性を向上させている。
【0060】
【発明の効果】以上のように、本発明に係るアルミニウ
ム合金用リン酸亜鉛処理剤によれば、6000番系アル
ミニウム合金表面に緻密なリン酸亜鉛皮膜を均一に形成
し、皮膜被覆性を向上でき、研削加工部も十分に被覆す
ることができる。このため、耐糸錆性を向上させること
ができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 柘植 建二 東京都品川区南品川4丁目1番地15号 日本ペイント株式会社 東京事業所内 (72)発明者 宮本 智志 東京都品川区南品川4丁目1番地15号 日本ペイント株式会社 東京事業所内 (56)参考文献 特開 平6−220647(JP,A) 特開 平2−190478(JP,A) 特開 平7−216519(JP,A) 特開 平6−25866(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 22/00 - 22/86

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム合金に対する塗装前処理剤
    であって、 亜鉛イオンを0.1〜2.0g/lと、 ニッケルイオンを0.1〜4.0g/lと、 マンガンイオンを0.1〜3.0g/lと、 リン酸イオンを5〜40g/lと、 硝酸イオンを0.1〜15g/lと、 亜硝酸イオンを0.01〜0.5g/lと、 フッ化物として、錯フッ化物をF換算で0.5〜1.0
    g/lと、単純フッ化物をF換算で0.3〜0.5g/
    lと、を主成分とした水溶液であり、 更に、鉄イオンとキレート結合可能なキレートをFe
    換算で0.0250.45g/l含有することを特徴
    とするアルミニウム合金用リン酸亜鉛処理剤。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のアルミニウム合金用リ
    ン酸亜鉛処理剤において、 処理される前記アルミニウム合金は、その一部又は全部
    が6000番系アルミニウム合金であることを特徴する
    アルミニウム合金用リン酸亜鉛処理剤。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載のアルミニウム合金用リ
    ン酸亜鉛処理剤において、 処理される前記アルミニウム合金は、更に銅の含有量が
    0.1重量%以下であることを特徴するアルミニウム合
    金用リン酸亜鉛処理剤。
  4. 【請求項4】 請求項1から請求項3に記載のいずれか
    のアルミニウム合金用リン酸亜鉛処理剤は、その一部又
    は全部が6000番系アルミニウム合金で構成される自
    動車ボディ用の塗装前処理剤であることを特徴するアル
    ミニウム合金用リン酸亜鉛処理剤。
JP11231497A 1997-04-30 1997-04-30 アルミニウム合金用リン酸亜鉛処理剤 Expired - Lifetime JP3366826B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP11231497A JP3366826B2 (ja) 1997-04-30 1997-04-30 アルミニウム合金用リン酸亜鉛処理剤

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP11231497A JP3366826B2 (ja) 1997-04-30 1997-04-30 アルミニウム合金用リン酸亜鉛処理剤

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH10306382A JPH10306382A (ja) 1998-11-17
JP3366826B2 true JP3366826B2 (ja) 2003-01-14

Family

ID=14583577

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP11231497A Expired - Lifetime JP3366826B2 (ja) 1997-04-30 1997-04-30 アルミニウム合金用リン酸亜鉛処理剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3366826B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4829412B2 (ja) * 2001-02-23 2011-12-07 株式会社神戸製鋼所 耐糸錆性に優れたアルミニウム合金材
JP5118275B2 (ja) * 2001-08-22 2013-01-16 日本ペイント株式会社 リン酸亜鉛処理剤
GB2420565A (en) * 2004-11-30 2006-05-31 Honda Motor Co Ltd Surface conditioner and zinc phosphate treatment agent for aluminium alloys
JP4065289B2 (ja) * 2004-11-30 2008-03-19 本田技研工業株式会社 アルミニウム合金の表面処理方法
JP6566798B2 (ja) * 2015-09-04 2019-08-28 日本パーカライジング株式会社 表面処理剤、表面処理方法及び表面処理金属材料

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE58902702D1 (de) * 1988-11-25 1992-12-17 Metallgesellschaft Ag Verfahren zum aufbringen von phosphatueberzuegen.
JP3107915B2 (ja) * 1992-07-03 2000-11-13 スカイアルミニウム株式会社 燐酸塩処理自動車用アルミニウム合金圧延板
JPH06220647A (ja) * 1993-01-22 1994-08-09 Nippon Paint Co Ltd 燐酸亜鉛被膜で被覆された電着塗装用アルミニウム系素材及び該アルミニウム系素材の燐酸亜鉛被膜形成方法
JPH07216519A (ja) * 1994-01-28 1995-08-15 Nippon Steel Corp 化成処理皮膜外観の優れたアルミニウム合金板の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH10306382A (ja) 1998-11-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3063920B2 (ja) リン酸塩で金属表面を処理する方法
CN100570001C (zh) 包含碱土金属氟化物配合物的转化型涂料
KR100347405B1 (ko) 무세척 인산염처리법
JP5462467B2 (ja) 金属材料用化成処理液および処理方法
US4486241A (en) Composition and process for treating steel
JPH07100870B2 (ja) 金属表面のリン酸亜鉛皮膜処理方法
US20060134327A1 (en) Pretreatment method for coating surface of metal for vehicle chassis and method of applying powder coating composition
CN1826429B (zh) 使用含过氧化氢的磷酸盐化溶液涂覆金属表面的方法和溶液、制备的金属物品及所述物品的用途
KR20040058038A (ko) 화성 처리제 및 표면 처리 금속
KR20040058040A (ko) 화성 처리제 및 표면 처리 금속
JPH05287549A (ja) カチオン型電着塗装のための金属表面のリン酸亜鉛処理方法
US5328526A (en) Method for zinc-phosphating metal surface
JP3088623B2 (ja) 金属表面のリン酸亜鉛皮膜形成方法
JP3366826B2 (ja) アルミニウム合金用リン酸亜鉛処理剤
KR940010457B1 (ko) 금속표면의 인산아연처리방법
US5536336A (en) Method of phosphating metal surfaces and treatment solution
JPH0819531B2 (ja) 金属表面のリン酸亜鉛処理方法
EP0675972A4 (ja)
JP5118275B2 (ja) リン酸亜鉛処理剤
JP3286583B2 (ja) マグネシウム含有金属用化成処理液組成物、同表面処理方法及び同表面処理物
JPH05331658A (ja) 金属表面のリン酸亜鉛処理方法
JPH03240972A (ja) 金属表面のリン酸亜鉛処理方法
JPH03191071A (ja) 金属表面のリン酸亜鉛処理方法
JP2826242B2 (ja) 金属表面のりん酸塩処理方法
JPH0380877B2 (ja)

Legal Events

Date Code Title Description
R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20071101

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081101

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091101

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091101

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101101

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111101

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121101

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121101

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131101

Year of fee payment: 11

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313115

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term