JP3365385B2 - 固体高分子型燃料電池のセパレータ用ステンレス鋼材の製造方法 - Google Patents

固体高分子型燃料電池のセパレータ用ステンレス鋼材の製造方法

Info

Publication number
JP3365385B2
JP3365385B2 JP2000022978A JP2000022978A JP3365385B2 JP 3365385 B2 JP3365385 B2 JP 3365385B2 JP 2000022978 A JP2000022978 A JP 2000022978A JP 2000022978 A JP2000022978 A JP 2000022978A JP 3365385 B2 JP3365385 B2 JP 3365385B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
stainless steel
steel
fuel cell
type
separator
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2000022978A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2001214286A (ja
Inventor
芳男 樽谷
晋士 福田
教史 土井
彰 関
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP2000022978A priority Critical patent/JP3365385B2/ja
Publication of JP2001214286A publication Critical patent/JP2001214286A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3365385B2 publication Critical patent/JP3365385B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23GCLEANING OR DE-GREASING OF METALLIC MATERIAL BY CHEMICAL METHODS OTHER THAN ELECTROLYSIS
    • C23G1/00Cleaning or pickling metallic material with solutions or molten salts
    • C23G1/02Cleaning or pickling metallic material with solutions or molten salts with acid solutions
    • C23G1/08Iron or steel
    • C23G1/086Iron or steel solutions containing HF
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23GCLEANING OR DE-GREASING OF METALLIC MATERIAL BY CHEMICAL METHODS OTHER THAN ELECTROLYSIS
    • C23G1/00Cleaning or pickling metallic material with solutions or molten salts

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Fuel Cell (AREA)
  • ing And Chemical Polishing (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】この発明は、接触電気抵抗が小さい固体高
分子型燃料電池のセパレータ用ステンレス鋼材の製造方
法に関する。特に、本発明の方法により製造されたステ
ンレス鋼材の用途は、良好な耐食性と小さい接触電気抵
抗が要求され、しかも長時間にわたり性能劣化の少ない
ことが要求される固体高分子型燃料電池のセパレータで
ある。
【0002】
【従来の技術】ステンレス鋼は、その表面に不働態皮膜
が形成されているため耐食性に優れている。しかし、表
面の不働態皮膜は電気抵抗が大きいため、小さい接触電
気抵抗が要求される通電用として使用される電気部品に
は適していない。不働態皮膜の厚さが厚くなれば耐食性
はより優れたものとなるが、電気抵抗はより大きくなる
傾向にある。
【0003】ステンレス鋼の接触電気抵抗を小さくする
ことができれば、ステンレス鋼を耐食性が要求される通
電電気部品として使用することが可能となる。優れた耐
食性と小さい接触電気抵抗が要求される通電電気部品の
一つに固体高分子型燃料電池のセパレータ(バイポーラ
プレートと呼ぶこともある)がある。
【0004】燃料電池は、水素および酸素を利用して直
流電力を発電する電池であり、固体電解質型燃料電池、
溶融炭酸塩型燃料電池、リン酸型燃料電池および固体高
分子型燃料電池などがある。燃料電池の名称は、電池の
根幹をなす『電解質』部分の構成材料に由来している。
【0005】現在、商用段階に達している燃料電池に
は、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池がある。
燃料電池のおおよその運転温度は、固体電解質型燃料電
池で1000℃、溶融炭酸塩型燃料電池で650℃、リ
ン酸型燃料電池で200℃および固体高分子型燃料電池
で80℃である。
【0006】固体高分子型燃料電池は、運転温度が80
℃前後と低く起動−停止が容易であり、エネルギー効率
も40%程度が期待できることから、小規模事業所、電
話局などの非常用分散電源、都市ガスを燃料とする家庭
用小型分散電源、水素ガス、メタノールあるいはガソリ
ンを燃料とする低公害電気自動車搭載用電源として、世
界的に実用化が期待されている。
【0007】上記の各種の燃料電池は、『燃料電池』と
言う共通の呼称で呼ばれているものの、それぞれの電池
構成材料を考える場合には、全く別物として捉えること
が必要である。使用される電解質による構成材料の腐食
の有無、380℃付近から顕在化し始める高温酸化の有
無、電解質の昇華と再析出、凝結の有無等により求めら
れる性能、特に耐食性能が、それぞれの燃料電池で全く
異なるためである。実際、使用されている材料も様々で
あり、黒鉛系素材から、Niクラッド材、高合金、ステ
ンレス鋼と多様である。
【0008】商用化されているリン酸型燃料電池、溶融
炭酸塩型燃料電池に使用されている材料を、固体高分子
質型燃料電池の構成材料にそのまま適用することは全く
考えることができない。
【0009】図1は、固体高分子型燃料電池の構造を示
す図で、図1(a)は、燃料電池セル(単セル)の分解
図、図1(b)は燃料電池全体の斜視図である。同図に
示すように、燃料電池1は単セルの集合体である。単セ
ルは、図1(a)に示すように固体高分子電解質膜2の
1面に燃料電極膜(アノード)3を、他面には酸化剤電
極膜(カソード)4が積層されており、その両面にセパ
レータ5a、5bが重ねられた構造になっている。
【0010】代表的な固体高分子電解質膜2としては、
水素イオン(プロトン)交換基を有するフッ素系プロト
ン伝導膜がある。
【0011】燃料電極膜3および酸化剤電極膜4には、
粒子状の白金触媒と黒鉛粉、必要に応じて水素イオン
(プロトン)交換基を有するフッ素樹脂からなる触媒層
が設けられており、燃料ガスまたは酸化性ガスと接触す
るようになっている。
【0012】セパレータ5aに設けられている流路6a
から燃料ガス(水素または水素含有ガス)Aが流されて
燃料電極膜3に水素が供給される。また、セパレータ5
bに設けられている流路6bからは空気のような酸化性
ガスBが流され、酸素が供給される。これらガスの供給
により電気化学反応が生じて直流電力が発生する。
【0013】固体高分子型燃料電池セパレータに求めら
れる機能は、(1)燃料極側で、燃料ガスを面内均一に
供給する“流路”としての機能、(2)カソード側で、
酸化性ガスを面内均一に供給する“流路”としての機
能、(3)カソード側で生成した水を、燃料電池より反
応後の空気、酸素といったキャリアガスとともに効率的
に系外に排出させる“流路”としての機能、(4)長時
間にわたって電極として低電気抵抗、良電導性を維持す
る単セル間の電気的“コネクタ”としての機能、および
(5)隣り合うセルで一方のセルのアノード室と隣接す
るセルのカソード室との“隔壁”としての機能などであ
る。
【0014】これまで、固体高分子型燃料電池のセパレ
ータ材料としてカーボン板材の適用が鋭意検討されてき
ているが、カーボン板材には“割れやすい”という問題
があり、さらに表面を平坦にするための機械加工コスト
およびガス流路形成のための機械加工コストが非常に高
くなる問題がある。それぞれが宿命的な問題であり、燃
料電池の商用化そのものを難しくさせかねない状況があ
る。
【0015】カーボンの中でも、熱膨張性黒鉛加工品は
格段に安価であることから、固体高分子型燃料電池セパ
レータ用素材として最も注目されている。しかしなが
ら、ガス透過性を低減して前記隔壁としての機能を付与
するためには、“複数回”に及ぶ樹脂含浸と焼成を実施
しなければならない。また、平坦度確保および溝形成の
ための機械加工コスト等今後も解決すべき課題が多く、
実用化に至っていない。
【0016】こうした黒鉛系素材の適用の検討に対峙す
る動きとして、コスト削減を目的に、セパレータにステ
ンレス鋼を適用する試みが開始されている。
【0017】特開平10−228914号公報には、金
属製部材からなり、単位電池の電極との接触面に直接金
めっきを施した燃料電池用セパレータが開示されてい
る。金属製部材として、ステンレス鋼、アルミニウムお
よびNi−鉄合金が挙げられており、ステンレス鋼とし
ては、SUS304が用いられている。この発明では、
セパレータは金めっきが施されているので、セパレータ
と電極との接触抵抗が低下し、セパレータから電極への
電子の導通が良好となるため、燃料電池の出力電圧が大
きくなるとされている。特開平8−180883号公報
には、表面に形成される不働態膜が大気により容易に生
成される金属材料からなるセパレータが用いられている
固体高分子電解質型燃料電池が開示されている。金属材
料としてステンレス鋼とチタン合金が挙げられている。
この発明では、セパレータに用いられる金属の表面に
は、必ず不働態膜が存在しており、金属の表面が化学的
に侵され難くなって燃料電池セルで生成された水がイオ
ン化される度合いが低減され、燃料電池セルの電気化学
反応低下が抑制されるとされている。また、セパレータ
の電極膜等に接触する部分の不働体膜を除去し、貴金属
層を形成することにより、電気接触抵抗値が小さくなる
とされている。
【0018】しかしながら、上記の公開公報に開示され
ている表面に不働態膜を備えたステンレス鋼のような金
属材料をそのままセパレータに用いても、耐食性が十分
でなく金属の溶出が起こり、溶出金属イオンにより担持
触媒性能が劣化(以下、担持触媒の被毒と記す)する。
また、溶出後に生成するCr-OH、Fe-OHのような腐食生成
物により、セパレータの接触抵抗が増加するという問題
があるので、金属材料からなるセパレータには、コスト
を度外視した金めっき等の貴金属めっきが施されている
のが現状である。
【0019】また、特開平11−121018号公報に
は、耐酸性の良好なステンレス鋼基材にカーボン粉末を
分散圧着させることにより、導電性を改善した低温型燃
料電池セパレータ材料が開示されており、表面抵抗や接
触抵抗を下げることで接触部分で発生する多量のジュー
ル熱を下げることが記述されている。基材表面に縞状に
分散するカーボン粒子を形成させる方法としては、カー
ボンブラック、黒鉛粉末等のカーボン粒子を鋼板表面に
付着させた後で圧延法により圧着させることが示されて
いる。さらに、カーボン粉末を圧着させた後にステンレ
ス鋼基材を加熱処理することによりカーボン粒子は、ス
テンレス鋼基材との間に形成される拡散層を介して基材
表面により強固に接合されることが示されている。
【0020】また、特開平11−144744号公報に
おいては、ステンレス鋼を基材として、カーボン系粒子
分散塗膜を加熱処理することにより塗膜成分を分解、消
失させることにより、基材表面にカーボン系粒子の結合
層を形成させ、付着させた低温型燃料電池用セパレータ
が開示されている。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、固体
高分子型燃料電池のセパレータがおかれる環境で、良好
な耐食性を有すると共に接触電気抵抗が低く、しかも長
時間使用しても接触電気抵抗の増加が極めて小さい固体
高分子型燃料電池のセパレータ用ステンレス鋼材の製造
方法を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、以下の
通りである。
【0023】(1)ステンレス鋼を酸性水溶液中に浸漬
して、その表面に導電性を有するM23型、M
型、MC型、MC型炭化物系金属介在物およびM
型硼化物系金属介在物のうちの1種以上を露出させ、次
いでpHが7を超えるアルカリ性水溶液により中和処理
をおこない、その後さらに水洗、乾燥する固体高分子型
燃料電池のセパレータ用ステンレス鋼材の製造方法。
【0024】(2)酸性水溶液による平均腐食減量を5
〜60g/m とすることを特徴とする上記(1)に記
載の固体高分子型燃料電池のセパレータ用ステンレス鋼
材の製造方法。
【0025】(3)ステンレス鋼材が、質量%で、C:
0.15%以下、Si:0.01〜1.5%、Mn:
0.01〜1.5%、P:0.04%以下、S:0.0
1%以下、Cr:15〜36%、Al:0.001〜6
%、B:0〜3.5%、N:0.035%以下、Ni:
0〜5%、Mo:0〜7%、Cu:0〜1%、Ti:0
〜25×(C%+N%)、Nb:0〜25×(C%+N
%)を含有し、かつCr、MoおよびB含有量は下記式
を満足しており、残部Feおよび不純物からなるフェラ
イト系ステンレス鋼材である上記(1)または(2)に
記載のいずれかの固体高分子型燃料電池のセパレータ
ステンレス鋼材の製造方法。 17%≦Cr+3×Mo−2.5×B ただし、式中の各元素記号は含有量(質量%)を示す。
【0026】(4)ステンレス鋼材が、質量%で、C:
0.005〜0.2%、Si:0.01〜1.5%、M
n:0.01〜2.5%、P:0.040%以下、S:
0.01%以下、Cr:17〜30%、Ni:7〜50
%、B:0〜3.5%、N:0〜0.4%、Cu:0〜
2%、Al:0.001〜6%、Mo:0〜7%を含有
し、かつCr、MoおよびB含有量は下記式を満足して
おり、残部Feおよび不純物からなるオーステナイト系
ステンレス鋼材である(1)または(2)に記載の固体
高分子型燃料電池のセパレータ用ステンレス鋼材の製造
方法。 17%≦Cr+3×Mo−2.5×B ただし、式中の各元素記号は含有量(質量%)を示す。
【0027】ここで、M236型、M4C型、M2C型、
MC型炭化物系金属介在物あるいはM2B型硼化物系金
属介在物の“M”は金属元素を示すが、特定の金属元素
ではなく、CあるいはBとの化学的親和力の強い金属元
素を示す。一般に、Mは鋼中共存元素との関係より、C
r、Feを主体とし、Ni、Moを微量含有することが
多い。炭化物の場合、Bも“M”としての作用を有す
る。M236型としては、Cr236、(Cr、Fe)23
6、M2C型としてMo2C、MC型炭化物系金属介在
物としてWC、あるいはM2B型硼化物系金属介在物と
しては、Cr2B、(Cr、Fe)2B、(Cr、Fe、N
i)2B、(Cr、Fe、Mo)2B、(Cr、Fe、Ni、
Mo)2B、Cr1.2Fe0.76Ni0.04Bといったものが
ある。M4C型には、B4Cなどがある。上記のM236
型、M4C型、M2C型、MC型炭化物系金属介在物ある
いはM2B型硼化物系金属介在物いずれにおいても、C
の一部がBで置換されたM23(C、B)6型、M4(C、B)
型、M2(C、B)型、M(C、B)型炭化物系金属介在物
あるいはM2(C、B)型硼化物系金属介在物といった金
属介在物も析出することが多いが、上記の表記はこれら
も含んでいるものとする。基本的に、電気伝導性が良好
である金属系の分散物であれば類似の性能が期待できる
と推察される。
【0028】“M2B”型表記の添え字指数“2”は、
“硼化物中の金属元素であるCr、Fe、Mo、Ni、
X(ここで、XはCr、Fe、Mo、Ni以外の鋼中金
属元素)とB量との間において、“(Cr質量%/Cr
原子量+Fe質量%/Fe原子量+Mo質量%/Mo原子
量+Ni質量%/Ni原子量+X質量%/X原子量)/
(B質量%/B原子量)が約2”となる化学量論的関係
が成立していることを意味する。本表記法は、特殊なも
のではなく、極めて一般的な表記法である。
【0029】また、セパレータとは一般に前述した5つ
の機能を有するものである。すなわち、a)燃料極側
で、燃料ガスを面内均一に供給する"流路"としての機
能、b)カソード側で、酸化性ガスを面内均一に供給す
る"流路"としての機能、c)カソード側で生成した水
を、燃料電池より反応後の空気、酸素といったキャリア
ガスとともに効率的に系外に排出させる"流路"としての
機能、d)長時間にわたって電極として低い接触電気抵
抗で良電導性を維持する単セル間の電気的"コネクタ"と
しての機能、およびe)隣り合うセルで一方のセルのア
ノード室と隣接するセルのカソード室との"隔壁"として
の機能を有するものである。これらの機能を複数枚のプ
レートで機能分担させる構造にする場合もある。本発明
でいうセパレータとは、少なくとも上記d)の機能を有
するプレートをセパレータと言う。
【0030】本発明で鋼材とは、鋼塊を熱間加工や冷間
加工して製造した材料で、通電部品として使用できる鋼
板、線材、小径の棒鋼および鋼管等をいう。
【0031】本発明者らは、長時間にわたって固体高分
子型燃料電池のセパレータとして使用しても、電極用黒
鉛との接触電気抵抗が増加しないステンレス鋼材を開発
するため種々の試験をおこなった。その結果、以下の知
見を得るに至った。
【0032】a)ステンレス鋼表面に形成される不働態
皮膜の電気抵抗は、ステンレス鋼固有のものであり、固
体高分子型燃料電池のセパレータとして用いて電気抵抗
を電池性能を発揮するのに十分低い値に安定して維持さ
せることは容易でない。
【0033】b)接触電気抵抗は、単位面積当りの接触
面積に依存している。すなわち、単位面積当りの接触点
数、接触点総面積、個々の接触点の電気抵抗に依存して
いる。
【0034】c)そこで、ステンレス鋼表面に導電性を
有する炭化物や硼化物の金属介在物を不働態被膜を突き
破るようにして分散、露出させ、かつ表面粗度を所定の
範囲にすると接触電気抵抗を大きく下げることができ、
接触電気抵抗を継時的に低く維持することができる。こ
の炭化物や硼化物系金属介在物は、“電気の通り道”と
して機能する。
【0035】d)セパレータ環境で、ステンレス鋼は比
較的良好な耐食性を発揮するが、金属溶出、腐食が起こ
り、腐食生成物(大部分は、Feを主体とする水酸化
物)が生成し、接触電気抵抗の増大をもたらし、かつ、
担持触媒性能に著しい悪影響を及ぼす。その結果、起電
力に代表される電池性能が短時間で劣化し、水素イオン
(プロトン)交換基を有するフッ素系イオン交換樹脂膜
のプロトン伝導性が劣化する。
【0036】e)一方で、電池本体内環境におけるステ
ンレス鋼の耐食性を確保するためには、不働態皮膜は必
要不可欠であるが、不働態皮膜を強固にしても、皮膜厚
が厚くなると接触電気抵抗が増大し、電池効率が著しく
低下する。ジュール熱の発生が大きくなる。
【0037】f)不働態皮膜を強固にして、セパレータ
環境で金属の溶出を抑制するためには、CrとMoの含
有量は(Cr%+3×Mo%)、Bを含有する場合には
(Cr%+3×Mo%−2.5B%)が17%以上にな
るようにする必要がある。
【0038】g)積極的にMoを添加することで、耐食
性が確保される。Moは腐食により溶出したとしても、
アノードおよびカソード部に担持されている触媒の性能
に対する影響が比較的軽微である。このことは、溶出し
たMoが、陰イオンであるモリブデン酸イオンとして存
在するため、水素イオン(プロトン)交換基を有するフ
ッ素系イオン交換樹脂膜のプロトン伝導性を阻害する影
響が小さいためと考えられる。Wについてもタングステ
ン酸イオンとして存在し、同様の挙動が認められる。V
についても、同様の挙動が期待できる。
【0039】h)ステンレス鋼の表面に導電性金属介在
物を露出させるのは、酸性水溶液中で酸洗処理するのが
好適である。
【0040】i)酸洗後、水洗−乾燥して通電部品を製
造して大気中やセパレータ環境において使用した場合、
時間が経過すると共に接触電気抵抗が増大する傾向を示
す。
【0041】j)酸洗−水洗後、時間が経過するにつれ
て接触電気抵抗が増加する主な原因は、大気中の酸素に
よる表面酸化であり、酸洗面に形成された微小な隙間内
に残留した酸液の乾燥、濃縮、噴出しによる腐食による
ためである。酸洗直後のステンレス鋼表面は、不動態皮
膜も非常に薄くなっており、水和している水分子;ヒド
ロキシニウムイオンも多く結合している状態にあり、大
気に曝しておくと大気と平衡な状態まで水分子が外れ
て、乾燥してゆくこととなり、外れたところに酸素が結
合して腐食生成物が体積して接触電気抵抗を増大させる
ことになる。このようなことは、数時間単位で十分進行
するので、通電部品として使用するまでに接触電気抵抗
が高くなってしまう。
【0042】k)しかし、酸洗後アルカリ水溶液にて中
和処理を施すことにより、腐食環境、特にセパレータ環
境において長時間使用しても通電部品としての性能低
下、特に接触電気抵抗の増大を防止することができる。
【0043】l)電気的接触抵抗値を決定する導電性金
属介在物の露出量、突出高さは、平均腐食量(溶削量)
により工業的に制御可能であり、かつ、接触抵抗が最も
低くなる平均腐食減量適正範囲がある。このことは、接
触電気抵抗を支配する接触点数、粗さと関係がある。
【0044】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳しく説明する。なお、以下に示す%表示は質量%を
示す。
【0045】金属介在物:ステンレス鋼の表面に、導電
性を有するM236型、M4C型、M2C型、MC型炭化
物系金属介在物およびM2B型硼化物系金属介在物の1
種以上を分散、露出させる。露出とは、金属介在物がス
テンレス鋼表面に生成している不働態被膜で覆われるこ
となく少なくともその一部が外面に出ていることであ
り、突出していることである。金属介在物を分散、露
出、突出させるのは金属介在物を電気の通り道(迂回
路)として機能させて接触電気抵抗を下げるためであ
る。
【0046】一般に、ステンレス鋼におけるM236
炭化物系金属介在物は、耐食性低下の原因となるので、
有害視されることが多い。本発明では、これまで有害視
されてきたM236 型炭化物系金属介在物をも積極的に
析出させ、不働態皮膜形成により増大する接触電気抵抗
を減じさせる『電気の通り道』として活用する。
【0047】金属介在物を分散、露出させる方法には以
下のような方法がある。
【0048】(1)鋼中の炭素をクロム系炭化物などと
して析出させる (2)鋼中の硼素をクロム系硼化物として析出させる (3)B4C、WC、Mo2Cのような導電性を有する金
属微粉末の投射(以下、ショットと記す)、研磨および
研削などの機械加工時に“鋼表面にめり込ませて残留さ
せる” (4)蒸着、イオンインプランテーションなどの表面改
質と呼ばれる表面処理方法と析出処理のための熱処理を
組み合わせる このなかで、(4)は工業的な手法としては高価である
が、最表層部分を除いて、板厚方向の特性がほとんど変
化しない特徴があり、有効である。
【0049】ここで、M236型、M2C型、MC型炭化
物系金属介在物およびM2B型硼化物系金属介在物が、
クロム、モリブデン、タングステンの1種以上の金属元
素を主体として含有していることが望ましいとした理由
は、これらの炭化物、硼化物がいずれも金属介在物とし
て熱力学的に安定であり、導電性に優れるとともに、母
材並みに優れた耐食性を有するためである。また、いず
れも硬度が高く、ショット、研磨、および研削といった
機械加工を用いて“鋼表面にめり込ませて残留させ”て
機能を発揮させようとする本発明の目的に望ましいため
である。さらに、これらの金属介在物が万が一溶出した
としても、溶出金属イオンがいずれもステンレス鋼の不
働態化を促進する耐食性改善元素であり、また、モリブ
デン、タングステンなどは金属イオンでありながらモリ
ブデン酸イオン、タングステン酸イオンといった陰イオ
ンを形成し、電解質膜であるプロトン伝導性への影響が
小さい特徴を有しているためである。
【0050】鋼中に析出した金属介在物を、ステンレス
鋼表面に生成した不働態被膜の外面に露出させるには、
組み合わせも含めて、(1)ステンレス鋼を酸洗処理、
あるいは、(2)ロール表面を“ショット加工”あるい
は“エッチング加工”した微小凹凸を有する圧延ロール
(通称、“ダルロール”)で圧延、あるいは(3)ステ
ンレス鋼板を直接ショット加工することにより可能であ
る。特に酸洗処理は、大面積の表面ををマクロ的に均一
に、かつ表面をわずかに溶解させて、耐食的に優れる金
属介在物を残留させたまま突出させるのに極めて有効
で、量産に適した工業的手段である。
【0051】酸洗:酸洗は、ステンレス鋼の母相(Matr
ix)を溶解することができる酸性溶液中に浸漬、あるい
は酸性溶液中で電解して実施すればよい。
【0052】酸性溶液としては、望ましくは、母相を均
一、かつ導電性金属性介在物を残しながら母相のみを選
択的に腐食する溶液がよい。
【0053】酸性溶液の一例としては、ステンレス量産
ラインにおいて最も一般的に用いられている酸洗溶液で
ある硝ふっ酸系水溶液、硫酸系水溶液、塩酸系水溶液な
どがある。ステンレス鋼のエッチング加工などにも用い
られている市販の塩化第二鉄水溶液を主剤とするステン
レスエッチング加工用酸性水溶液を用いることもでき
る。必要に応じて、酸性溶液の劣化を軽減、あるいは腐
食面を平滑にする有機系、無機系の添加剤を添加するこ
とも可能である。
【0054】酸洗に必要な酸性水溶液濃度は、ステンレ
ス鋼種、処理温度により異なる。酸洗処理温度は、室温
から沸点以下の温度範囲でよく、腐食状況をみながら濃
度、温度を決めるのがよい。酸性水溶液中での平均腐食
減量が5〜60g/m2、表面粗度が中心線平均粗さRaで
0.06から5μmとなるように調整するのが好まし
い。なお、表面粗さ“中心線平均粗さRa”は、JIS
B 0601−1982において定義されている二次
元的な表面粗さの程度を表す値である。
【0055】好適な酸性水溶液は、硝ふっ酸系水溶液中
のふっ化水素酸濃度としては2〜20質量%、硝酸濃度
としては5〜20質量%であり、水溶液の温度は30〜
90℃である。ふっ酸、硝酸いずれも上記の濃度の下限
未満では酸洗能率が劣り、上限を超えるとステンレス鋼
の表面粗さが悪化し接触電気抵抗が増加する。硝ふっ酸
系水溶液を用いると、導電性金属介在物の露出処理と母
相表面の不動態皮膜の強化を同時におこなうことが可能
である。
【0056】硫酸系水溶液を用いた場合には、酸洗後に
腐食生成物が表面に付着するため、腐食生成物を溶解す
る塩酸水溶液などの酸溶液を用いて腐食生成物を除去す
るための処理をおこなうことが必要となる。具体的に
は、5〜25質量%硫酸水溶液がある。
【0057】塩酸を用いた場合には、硝酸のように母相
表面を不動態皮膜を強化することができないが、3〜1
5質量%塩酸水溶液がよい。液温は、いずれも室温以
上、85℃以下で制御することが望ましい。
【0058】酸洗溶液は、これらの混合溶液でもよく、
必要に応じて腐食速度を抑制する市販のインヒビターを
添加してもよい。
【0059】なお、酸洗は上記のようにステンレス鋼を
酸性水溶液に浸漬するのが効率がよく、酸性溶液を攪
拌、流動させると、効率がよい。また、ステンレス鋼表
面に酸性溶液をノズルによる噴射、シャワー、あるいは
噴霧する方法でもよい。
【0060】図2は、金属介在物を露出させたステンレ
ス鋼の表面と他の通電体面と接触させた場合の断面図を
示す。
【0061】この図は、ステンレス鋼10の表面には不
働態被膜12が存在しており、析出させた硼化物系金属
介在物13、炭化物系金属介在物15、および投射した
金属介在物14がそれぞれ表面から露出しており、カー
ボン板11と接している状態を示している。
【0062】表面粗さ:表面粗さは接触電気抵抗に影響
するため、中心線平均粗さRaが0.06μm未満では
表面が平滑過ぎて、導電性金属介在物が鋼表近傍に存在
しても改善効果が小さい。平滑過ぎるとかえって接触点
が少なくなる。一方、5μmを超えると単位面積当りの
接触点数が著しく減少し接触電気抵抗が低くなる傾向と
なる。したがって、Raは0.06〜5μmとするのが
望ましく。さらに好ましくは0.06〜2.5μmであ
る。
【0063】上記表面粗さ“中心線平均粗さRa”と
は、JIS B 0601−1982において定義され
ている二次元的な表面粗さの程度を表す値である。
【0064】中和処理: 本発明の製造方法において、酸洗処理後に中和処理を施
すことは重要なことである。十分な水洗を実施した酸洗
後の表面でも、表面の微小凹凸内部、金属介在物と母相
の隙間内部、粒界には酸成分が残留しているので、乾燥
に伴い、酸成分が濃化する場合が多い。酸成分の濃化、
噴き出しにより表面の腐食が進み、時間の経過と共に表
面の接触抵抗が高くなる問題が起こる。pHが7を超え
るアルカリ性水溶液中に浸漬、あるいはpHが7を超え
るアルカリ性水溶液を表面に噴霧する中和処理をおこな
うことで、特性劣化を顕著に改善することができる。こ
こでいう噴霧とは、アルカリ水溶液をノズルから噴射、
シャワーすることも含むものとする。
【0065】アルカリ性水溶液としては、水溶性であ
ること、処理後の水洗浄性に優れること、工業的に
廃液を処理しやすいこと、入手が容易であり、安価で
あることを満足するものがよい。好適例として、3〜1
0質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液がある。
【0066】ステンレス鋼の化学組成: C:Cは、本発明においてBと並んで重要な元素で、C
r系主体の炭化物として分散析出させることで、不働態
皮膜で覆われているステンレス鋼表面の接触電気抵抗を
下げる効果がある。このことは、Cr系炭化物が金属的
性質を有しており、不動態皮膜よりも良好な電気伝導性
を有していることにより説明できる。Bを含有させたス
テンレス鋼の場合、多量の硼化物が析出するので、硼化
物中にも取り込まれて析出する場合がある。
【0067】一般にステンレス鋼表面には、数十Å程度
の極めて薄い不働態皮膜が生成し優れた耐食性を示す
が、多かれ少なかれ不働態皮膜は母材に比べて電気伝導
性が劣り、接触電気抵抗を高める。不働態皮膜を薄くす
ることで、電気抵抗を小さくすることも可能ではある
が、特に固体高分子型燃料電池内部で用いられた場合、
安定して不動態皮膜を薄い状態で維持することは容易で
はない。電気伝導性に優れたCr系炭化物が不働態皮膜
に覆われることなく表面に直接露出することが、ステン
レス鋼表面の電気伝導性を長時間にわたって低く安定さ
せることにとって極めて有効である。すなわち、Cr系
炭化物は耐食的に安定で、かつ、表面に不働態皮膜を形
成しない。したがって、たとえ固体高分子型燃料電池内
部で表面の不働態皮膜が厚くなったとしても、鋼表面に
露出しているCr系炭化物を介して良電導性が確保され
ることとなり、鋼表面の接触電気抵抗が高くなるのを抑
制することができる。言いかえるならば、不働態皮膜に
覆われることなく露出している微細なクロム系炭化物が
『電気の通り道』として機能することで、接触電気抵抗
を低く維持できる。
【0068】一般に、Cを多量に含有させると、ステン
レス鋼は強度、硬度が高くなって延性が低下し、製造性
が低下する。固体高分子型燃料電池用セパレータ材とし
ての成形性を確保するためにも、鋼中のCを炭化物とし
て析出させて、固溶C量を下げるのが好ましい。炭化物
としてCを析出させることで、鋼の成形性が改善され
る。すなわち、成形性確保の点からも、鋼中のCを炭化
物として析出させることは有効である。さらに、炭化物
を熱処理で凝集粗大化させることも、加工性を一層改善
させるのに有効である。長時間保持することで、炭化物
は凝集し粗大化する。凝集粗大化熱処理前で、あらかじ
め冷間圧延、金属微粉末をショットしたり、研磨、研削
加工することにより残留歪を加えれば、炭化物の析出時
間、凝集時間を短くすることができる。また、炭化物析
出に伴い顕在化する鋭敏化に対しても、耐食性が母材並
みに回復するまでの時間が短くなる。
【0069】フェライト系ステンレス鋼では、0.15
%を超えて含有させると、固体高分子型燃料電池セパレ
ータ用としての成形性が確保できなくなるので、C含有
は0.15%以下にするのが好ましい。さらに、炭化物
析出により生じる鋭敏化を防止するためには(Cr含有
炭化物として析出しているC質量%)×100/[(鋼
中全C質量%)−0.0015%]値を80以上とする
ことが望ましい。
【0070】炭化物を析出させて固体高分子型燃料電池
のセパレータ用ステンレス鋼表面に分散、露出させるに
は、0.02%以上含有させるのが好ましく、さらに好
ましくは0.04%以上である。また、炭化物の析出を
促進するためには500〜950℃の温度域に保持する
熱処理を施すのがよい。950℃を超える温度域では、
Cr系炭化物は熱的に不安定となり再固溶する。一方、
500℃未満の温度では鋼中C、Crの拡散速度が遅く
なり量産での析出処理時間が長くなり工業的な観点より
好ましくない。Cr系炭化物を析出させるのに、より好
適な処理温度域は650〜920℃であり、最も望まし
い温度域は800〜900℃である。
【0071】固体高分子型燃料電池のセパレータ用オー
ステナイト系ステンレス鋼では、積極的に炭化物を析出
させるためには0.005〜0.2%の範囲でCを含有
させるのがよい。0.2%を超えて含有させることは、
固体高分子型燃料電池セパレータ用としての成形性を確
保することができなくなる。炭化物をより多く析出させ
てステンレス鋼表面に分散、露出させるには、0.06
%以上含有させるのが好ましい。また、炭化物析出によ
る鋭敏化を防止するためには、(Cr含有炭化物として
析出しているC質量%)×100/((鋼中全C質量
%)−0.012%)値を85以上とすることが望まし
い。
【0072】炭化物の析出を促進させるには500℃〜
950℃の温度域に保持する熱処理を施すのがよい。た
だし、950℃を超える温度域では、Cr系炭化物は熱
的に不安定となり再固溶する。一方、500℃未満では
鋼中C、Crの拡散速度が遅く、量産での析出処理時間
が長くなり工業的な観点より好ましくない。Cr系炭化
物析出により好適な処理温度域は600〜900℃であ
る。
【0073】Cr系炭化物は鋼中に微細に分散析出する
が、析出しやすい結晶粒界に優先的に析出する傾向があ
る。接触電気抵抗を低くする上で、クロム系炭化物が粒
界、粒内いずれに析出するかはさほどの影響はないが、
均一に分散させるとの観点より考えて、粒内にも分散析
出していることが望ましいと推察される。
【0074】粒内に分散させるためには、一旦Cr系炭
化物を析出させた状態で、Cr系炭化物の一部が固溶
し、完全には再固溶しない温度域、時間内に熱間圧延あ
るいは冷間圧延で加工歪を付与した後、再度500℃以
上、950℃以下のCr系炭化物析出温度域に保持すれ
ばよい。付与する冷間加工度は数%から効果を確認する
ことができるが、20〜30%程度以上が望ましい。表
層付近にのみ加工歪を付与し、表層付近にのみ炭化物を
析出させることも可能である。いずれにしても、再固溶
した鋼中Cが、粒界あるいは粒内に固溶せず残留してい
る炭化物を核として再度析出し、新粒界が形成されるこ
とで粒内にも炭化物が析出することとなる。
【0075】表層付近にのみ加工歪を付与し、析出処理
を施した場合、先に示したフェライト系では、(Cr含
有炭化物として析出しているC質量%)×100/
((鋼中全C質量%)−0.0015%)値で80以上
なる関係、オーステナイト系では(Cr含有炭化物とし
て析出しているC質量%)×100/((鋼中全C質量
%)−0.012%)値で85以上なる関係を成立させ
ることは困難となるが、定性的には露出している表面
で、これら関係式を満足させるのが望ましい。
【0076】周知のように、Cr系炭化物析出処理で
は、鋭敏化により母材耐食性を低下させる可能性があ
る。鋭敏化とは、Cr系炭化物が析出することでその周
囲にCr欠乏層が生成することで起こる耐食性の低下で
ある。鋭敏化は、500℃以上、950℃以下の温度域
に長時間保持し、緩冷却することで回避、あるいは改善
することができる。一般的に、冷却速度は遅いほど望ま
しい。
【0077】ただし、鋭敏化抑制の熱処理時間は、鋼中
のC量および材料の履歴により異なる現象であり、条件
を特定することは難しい。すなわち、鋭敏化抑制の熱処
理は、炭化物析出処理の熱処理前での炭化物の析出状
況、残留加工歪量、保持温度などにより異なるので一概
に規定することが困難である。
【0078】一例として、830℃×6時間炉冷を挙げ
ることができる。析出熱処理をおこなった直後に冷却を
おこなうことなく、鋭敏化抑制のための熱処理を継続し
て処理をおこなってもよい。また、一旦冷却した後、再
度500℃以上、950℃以下の温度域に加熱保持し、
緩冷却することで鋭敏化を回避、あるいは改善してもよ
い。一つの目安として、フェライト系では、(Cr含有
炭化物として析出しているC質量%)×100/((鋼
中全C質量%)−0.0015%)値で80以上なる関
係、オーステナイト系では(Cr含有炭化物として析出
しているC質量%)×100/((鋼中全C質量%)−
0.012%)値で85以上なる関係を満足させるのが
よい。鋭敏化することなく、耐食性が確保されているか
どうかは、JIS G−0575に規定されている『硫
酸−硫酸銅腐食試験』のような粒界腐食検出法により容
易に確認することができる。
【0079】(Cr含有炭化物として析出しているC質
量%)値の定量に際しては、試験材から8mm直径の丸
棒を加工し、AA液(10%アセチルアセトン−1%テ
トラメチルアンモニウムクロライド−残りメタノール)
を用いる非水溶媒溶液中での定電流電解をおこなうこと
により得られる“抽出残渣”中Cr定量分析結果より、
CrがすべてCr236であるとして等量計算にてC量
を定量評価できる。
【0080】すなわち、AA非水溶媒液中にて、20m
A/cm2の電流密度にて約3時間の定電流電解をおこな
うことで約0.4g相当を溶解し、電解後すみやかに電
解試験片を超音波洗浄したAA非水溶媒液と電解に用い
たAA非水溶媒溶液をフィルター径0.2μmのフィル
ター(例えば、Coster Scientific Corporation社製
“商品名Nuclepore”)で濾し取り、フィルター上の残
渣を硫りん酸(特級りん酸:特級硫酸:蒸留水=1:
1:1)中で溶解し、これを誘導結合プラズマ発光分光
分析装置(例えば、島津製作所商品名ICPV-1014)にて
金属成分を分析することによりCr濃度を求めることが
できる。
【0081】また、(鋼中全C質量%)の定量について
は、赤外線吸収法を用いて定量しすることができる。
なわち、試験片を酸素気流中で加熱、溶解して、鋼中の
炭素を十分に加熱して二酸化炭素とし、これを酸素と共
に赤外線吸収セルに送り、二酸化炭素による赤外線級終
了で定量分析した。現状では、最も一般的な鋼中C定量
法である。
【0082】Si:鋼中のSi量は、0.01〜1.5
%の範囲で含有させるのがよい。Siは、量産鋼におい
てはAlと同様に有効な脱酸元素である。0.01%未
満では脱酸が不十分となり、一方1.5%を超えると成
形性が低下する。
【0083】固体高分子型燃料電池のセパレータ用フェ
ライト系ステンレス鋼においては、0.01〜1.5%
の範囲内で含有させるのがよい。通常、Mnは鋼中のS
をMn系の硫化物として固定する作用があり、熱間加工
性を改善する効果がある。固体高分子型燃料電池のセパ
レータ用オーステナイト系ステンレス鋼では、Mnは
0.01〜2.5%で含有させる。Mnは、有効なオー
ステナイト相安定化元素である。ただし、2.5%を超
えて含有させる必要はない。
【0084】P:鋼中のP量は、0.04%以下とする
のが好ましい。本発明においては、PはSと並んで最も
有害な不純物である。低ければ低い程望ましい。
【0085】S:鋼中のS量は、0.01%以下とする
のが好ましい。本発明において、SはPと並んで最も有
害な不純物である。低ければ、低いほど望ましい。鋼中
共存元素および鋼中のS量に応じて、Mn系硫化物、C
r系硫化物、Fe系硫化物、あるいは、これらの複合硫
化物および酸化物との複合非金属介在物としてほとんど
が析出する。しかしながら、固体高分子型燃料電池のセ
パレータ環境においては、いずれの組成の非金属介在物
も、程度の差はあるものの腐食の起点として作用し、不
働態皮膜の維持、腐食溶出抑制に有害である。通常の量
産鋼の鋼中S量は、0.005%超え0.008%前後
であるが、上記の有害な影響を防止するためには0.0
04%以下に低減することが望ましい。より、望ましい
鋼中S量は0.002%以下であり、最も望ましい鋼中
S量レベルは、0.001%未満であり、低ければ低い
程よい。工業的量産レベルで0.001%未満とするこ
とは、現状の精錬技術をもってすれば製造コストの上昇
もわずかであり、全く問題ない。
【0086】Cr:Crは、母材の耐食性を確保する上
で極めて重要な基本合金元素である。含有量は高いほど
高耐食となる。フェライト系においてはCr量が36%
を超えると量産規模での生産が難しくなる。オーステナ
イト系では30%を超えるとオーステナイト相がその他
合金成分の調整によっても不安定性になる。フェライト
系では15%未満、オーステナイト系では17%未満の
Cr含有量では、その他の元素を変化させてもセパレー
タとして必要な耐食性の確保が困難になる。
【0087】硼化物、炭化物が析出することにより、耐
食性向上に寄与する鋼中Cr量が、溶鋼段階でのCr量
に比べて低下して母材耐食性が劣化する場合がある。固
体高分子型燃料電池内部での耐食性を確保するために
は、M2B型硼化物が析出している本発明鋼の場合は、
少なくとも(Cr%+3×Mo%−2.5×B%)≧1
7.0%なる関係式を満たす鋼中Cr量であることが望
ましい。また、M236型炭化物が析出した場合にも、
炭化物析出量に見合うだけの固溶Cr量が低下するた
め、(鋼中Cr%−M236型炭化物として析出したC
r%)+3×Mo%≧17%なる関係式を満たす鋼中C
r量であることが望ましい。
【0088】Al:Alは、脱酸元素として溶鋼段階で
添加する。本発明鋼でBを含有させる場合は、Bは溶鋼
中酸素との結合力が強い元素であるので、Al脱酸によ
り酸素濃度を下げておく必要がある。そのため、0.0
01〜6%の範囲で含有させるのがよい。
【0089】B:Bは、必要に応じて含有させるが、含
有させた場合には重要な作用を発揮する。含有させる場
合、3.5%以下とするのがよい。B含有鋼において
は、Cr、Feを主体とし、Ni、Moを微量含有する
(Cr,Fe)2B、(Cr,Fe,Ni)2Bといった
2B型硼化物として析出させることにより、不働態皮
膜で覆われるステンレス鋼表面の接触電気抵抗を下げる
効果がある。一方、B4Cといった微粒子粉末をショッ
トしたり、研磨、研削する際に“めり込ませて残留させ
る”ことで、接触電気抵抗を経時的に低く維持すること
ができる。
【0090】このことは、これらの硼化物は金属的性質
を有しており、不働態皮膜よりも良好な電気伝導性を有
していることにより説明できる。
【0091】電気伝導性に優れた硼化物を、不働態皮膜
に覆われることなく表面に直接露出させることにより、
ステンレス鋼表面の電気伝導性を長時間にわたって低く
安定させることに極めて有効である。
【0092】すなわち、硼化物は炭化物と同様に耐食的
に安定で、かつ、表面に不働態皮膜を形成しない。した
がって、たとえ固体高分子型燃料電池内部で表面の不働
態皮膜が厚くなったとしても、鋼表面に露出している硼
化物を介して良電導性が確保されることとなり、鋼表面
の接触電気抵抗が高くなるのを抑制することができる。
換言すれば、不働態皮膜に覆われることなく露出してい
る微細な金属性質を有する硼化物が『電気の通り道』と
して機能することで、接触電気抵抗を低く維持すること
ができる。
【0093】一般に、Bを多量に含有すると、ステンレ
ス鋼は強度、硬度が高くなって延性も低下し、製造性の
低下が大きくなる。固体高分子型燃料電池用セパレータ
材としての成形性を確保するためにも、鋼中のBを硼化
物として析出させて、固溶B量を下げるのが好ましい。
硼化物としてBを析出させることにより鋼の成形性が改
善される。
【0094】すなわち、成形性確保の点からも鋼中のB
を硼化物として析出させることが有効である。さらに、
1200℃近傍の温度で長時間保持することにより、硼
化物を凝集し粗大化させることができ、加工性を一層改
善させるのに有効である。ただし、保持温度が高いため
素材が変形しやすい難点がある。
【0095】また、製造過程において、熱間での鍛造比
(鍛錬比)を高めて強加工することにより、変形能が低
下する原因である硼化物を“砕き”微細に分散させるこ
とが可能である。微細に破砕することで靭性劣化を軽減
することができる。冷間での鍛造比(鍛錬比)を高めて
強加工することも、変形能が低下する原因である硼化物
を“砕き”微細に分散させることにとって有効である。
微細に破砕することで靭性劣化を軽減することができ
る。
【0096】Bは、3.5%を超えて含有させる場合
は、通常の溶解法での製造が困難となる。また、固体高
分子型燃料電池セパレータ用としての常温での成形性が
確保できなくなる。したがって、Bを含有させる場合は
3.5%以下とするのが好ましい。
【0097】周知のごとく、鋼中のBはそのほとんどが
硼化物として析出する。1125℃においても0.01
%以下程度固溶するのみである。低温側では、固溶量は
さらに低くなる。
【0098】硼化物析出温度は含有量にもよるが、ステ
ンレス鋼凝固温度近傍にあり、一旦析出すると、ほとん
ど再固溶しない挙動を示す。Bの含有量と共に液相線が
低下し、熱間での鍛造可能温度範囲も狭くなる問題もあ
る。硼化物そのものの変形能が極めて劣ることから、B
含有量が多く硼化物析出が顕著になるほど製造時、加工
時の割れ問題が大きくなり、量産性が悪くなる。ただ
し、B量が3.5%までは、相当の困難さを伴うものの
工業的規模での製造は可能である。
【0099】加工変形能をほとんど有しないM2B型硼
化物は、“圧延方向に砕ける”ような様相で分散しなが
ら圧延される。硼化物の分散状態が成形性を左右する。
鋼中における硼化物分散状態の制御は、鍛造条件、熱間
圧延条件を工夫することで、可能である。特に、熱間、
冷間での強圧下圧延が有効である。
【0100】B含有量が、数十ppm程度である場合に
は、硼化物は結晶粒界に析出する傾向が大きい。接触電
気抵抗を低くする上で、硼化物が粒界、粒内いずれに析
出するかはさほどの影響はないが、常温での加工性、割
れ問題回避の点より均一に分散させる方が好ましいこと
は言うまでもない。
【0101】硼化物析出により、母材耐食性が低下する
可能性がある。硼化物析出による母材の耐食性低下は、
硼化物が析出することで母材中のCr、Moが消費され
るために起こる。あらかじめ、硼化物形成により消費さ
れるCr量相当およびMo量相当を溶鋼の段階で含有さ
せておくことが耐食性低下軽減に対して極めて重要であ
る。冷却速度の影響は比較的小さい。
【0102】固体高分子型燃料電池本体内部での耐食性
を確保するために、Cr%+3×Mo%−2.5×B%
≧17%を満足させることが好まし。各元素のかかる係
数は、実験則で規定したものである。
【0103】鋼中B量の定量に際しては、試験材から8
mm直径の丸棒を加工し、AA液(10%アセチルアセ
トンー1%テトラメチルアンモニウムクロライド−残り
メタノール)を用いる非水溶媒溶液中での定電流電解を
おこなうことで得られる“抽出残渣”よりB定量分析す
ることで評価することができる。すなわち、AA非水溶
媒液中にて、20mA/cm2の電流密度にて約3時間の
定電流電解をおこなうことで約0.4g相当を溶解し、
電解後すみやかに電解試験片を超音波洗浄したAA非水
溶媒液と電解に用いたAA非水溶媒溶液をフィルター径
0.2μmのフィルター(例えば、Coster Scientific
Corporation社製“商品名Nuclepore)で濾し取り、フィ
ルター上の残渣を用いて定量をおこなうことができる。
鋼中の硼化物量が少なく残渣量が40μg以下と少ない
場合には、蒸留分離した後クルクミン吸光光度法によ
り、40μg以上の場合には硫りん酸(特級りん酸:特
級硫酸:蒸留水=1:1:1)中で溶解した後、これを
誘導結合プラズマ発光分光分析装置(例えば、島津製作
所商品名ICPV-1014)にて金属成分を分析し、硼化物と
して析出しているB量を定量することができる。
【0104】上記でのAA液中での定電流電解で得られ
る残渣は、M2Bの化合物としてフィルター上に補集さ
れる。硼化物としてBと結合している金属元素の定量
は、誘導結合プラズマ発光分光分析法を利用する上記要
領により可能である。M2B定性分析は、X線回折法に
より可能である。
【0105】N:フェライト系ステンレス鋼におけるN
は不純物である。Nは常温靭性を劣化させるので上限を
0.035%とするのがよい。低ければ低い程望まし
い。工業的には0.007%以下とすることが最も望ま
しい。オーステナイト系のステンレス鋼においては、N
はオ−ステナイト形成元素として、オーステナイト相バ
ランス調整に有効な元素である。しかし、加工性を劣化
させないために上限を0.4%とするのがよい。
【0106】オーステナイト系ステンレス鋼においては
Niは、オーステナイト相安定のために極めて重要な合
金元素である。フェライト系ステンレス鋼においても、
耐食性、靭性を改善する効果がある。オーステナイト系
ステンレス鋼においては、下限を7%とし、上限を50
%とするのが好ましい。7%未満では、オーステナイト
相の安定化が困難となり、一方、50%を超えて含有さ
せることは、製造が困難となるからである。フェライト
系ステンレス鋼においては、上限を%とするのが好ま
しい。を超えるとフェライト系組織とすることが困
難となり、その他元素の影響も受けるが、フェライト及
びオーステナイト二相組織となるからである。二相組織
では、薄板成形性に方向性があり、固体高分子型燃料電
池セパレータ用素材として十分な加工性を確保すること
ができなくなる。
【0107】Mo:MoはCrに比べ、少量で耐食性を
改善する効果がある。7%以下の量で必要により含有さ
せるのがよい。7%を超えて含有させると、シグマ相等
の金属間化合物の析出回避が困難であり、鋼の脆化の問
題から生産が困難となるので上限を7%とするのがよ
い。
【0108】また、Moの特徴として、固体高分子型燃
料電池内部で、たとえ腐食により鋼中Moの溶け出しが
起こったとしても、アノードおよびカソード部に担持さ
れている触媒の性能に対する影響は比較的軽微である特
徴がある。Moが、金属陽イオンとして存在せず、陰イ
オンであるモリブデン酸イオンとして存在するため、水
素イオン(プロトン)交換基を有するフッ素系イオン交
換樹脂膜の陽イオン伝導度に対する影響も小さいことで
説明できる。
【0109】Moは、耐食性を維持するために極めて重
要な添加元素であり、(Cr%+3×Mo%−2.5×
B%)≧17%なる関係式を満たす鋼中Mo量であるこ
とが望ましい。
【0110】鋼中あるいは、鋼表面にMo2C型炭化物
として、ショット加工、あるいは研磨、研削などの機械
加工後の残留物として、あるいは析出物として存在させ
ることができる。導電性金属としてステンレス鋼の表面
に分散、露出させることで、不働態皮膜で覆われるステ
ンレス鋼表面の接触電気抵抗を下げる効果がある。この
ことは、Mo系炭化物が金属的性質を有しており、不動
態皮膜よりも良好な電気伝導性を有していることにより
説明できる。電導性に優れたMo系炭化物を不働態皮膜
に覆われることなく表面に直接露出させることで、微細
なMo系炭化物が『電気の通り道』として機能すること
で、接触電気抵抗を低く維持すことができる。
【0111】また、工業的にはコスト高となるが、イオ
ン注入等でステンレス鋼表層部分のMo濃度を高め、そ
の後の熱処理により鋼中のCと反応させて、表層でMo
2Cを形成させることも可能である。
【0112】Cu:フェライト系ステンレス鋼では、C
uは1%以下で含有させるのがよい。1%を超えて含有
させると、熱間での加工性を減ずることとなり、量産性
の確保が難しくなるからである。オーステナイト系ステ
ンレス鋼では、2%以下の範囲で含有させるのがよい。
Cuは、有効なオーステナイト相安定化元素であり、不
働態保持に際して有効な働きをする。
【0113】Ti、Nb:TiおよびNbは、フェライ
ト系ステンレス鋼の靭性劣化を軽減する効果がある。必
要に応じて25×(C%+N%)以下で含有させる。T
i、Nbの複合で含有させても靭性改善の効果は得られ
る。
【0114】以下、具体的な実施例により本発明の効果
を詳細に説明する。
【0115】
【実施例1】表1に示した16種の化学組成のステンレ
ス鋼を高周波誘導加熱方式の150kg真空溶解炉で溶解
しインゴットに造塊した。溶解原料としては、市販の溶
解原料を使用し、鋼中の不純物量を調整した。B添加に
は市販のFe−B合金鉄を用いた。鋼記号aからi、お
よびpはフェライト系ステンレス鋼であり、jからoは
オーステナイト系ステンレス鋼である。
【0116】
【表1】 各インゴットから下記の工程により冷間圧延鋼板を製造
した。
【0117】インコ゛ット → 鍛造 → 切削加工 → 熱間圧延
→ 焼鈍 → 冷却→ ショットフ゛ラストで脱スケール → 酸洗 → 冷
間圧延(中間焼鈍)→ 焼鈍 → 酸洗。各製造工程にお
ける詳細は以下の通りであった。 インゴット: [鋼記号] [インゴット形状] a-f、p : 丸型 g-i : 角型扁平 j-m : 丸型 n、o : 角型扁平。 鍛造(フ゜レス方式、加熱は大気中): [鋼記号][加熱温度][加熱時間] [厚さ 幅 長さ(mm)] a-f、p : 1220℃ 3h 70 400 600 g-i : 1180℃ 3h 50 400 600 j-m : 1260℃ 3h 70 400 600 n、o : 1180℃ 3h 50 400 600。
【0118】切削加工:上記スラブを切削加工にて、表
面の酸化スケールおよび端面の割れを除去 [鋼記号] [切削後の仕上げ厚さ(mm)] a-f、p : 60 g-i : 42 j-m : 60 n、o : 42。 熱間圧延: [鋼記号] [スラフ゛加熱温度、大気中][仕上げ厚さ(mm)] a-f、p : 1220℃ 3.8 g-i : 1180℃ 2.6 j-m : 1260℃ 3.8 n、o : 1180℃ 2.6。
【0119】いずれも熱間圧延後、量産での熱延終了直
後の温度履歴を模擬して断熱材を巻き付けて徐冷した。
【0120】鋼記号gからi、およびn、oについて
は、0.6%以上のBを含有しているステンレス鋼であ
る。鋼中Bは、固相線以下、1200℃付近で析出す
る。M2B型硼化物は金属間化合物でありながら常温
域、高温域ともに変形能が極めて悪いので、おおよそ、
1000℃以上、1200℃以下の温度範囲で再加熱を
繰り返しながら鍛造、圧延をおこなった。また、コイル
端面の温度は低下しやすく、耳割れを発生しやすいの
で、コイル端面を保熱、必要に応じて加熱しながら熱間
圧延をおこなった。
【0121】熱間圧延後の焼鈍(大気中): [鋼記号] [焼鈍温度℃] [冷却] a、e、f、g、h、i、p : 840 空冷 b : 925 水冷 c、d : 1000 水冷 j、k、l、m、n、o : 1080 空冷。
【0122】保持時間は、いずれも20分 表面の高温酸化スケールは、ショットにて除去、酸洗 冷間圧延:全て0.3mmに仕上げた。
【0123】必要に応じて、冷間圧延途中で810℃で
軟化焼鈍と通常の量産ライン条件を模擬した7質量%硝
酸、4質量%ふっ酸水溶液、60℃中で酸洗を実施し
た。
【0124】冷延コイルは、上記熱延材と同じ温度で最
終焼鈍をおこない供試材とし、下記の方法によりステン
レス鋼板の表面に金属介在物を分散、露出させた。ステ
ンレス鋼板の表面に金属介在物を分散、露出させ中和処
理を施した。
【0125】冷延鋼板の表面の金属介在物の分散、露出
および表面粗さは、酸洗液条件(液組成、温度)、酸洗
時間を変えることによりおこなった。用いた酸洗液は下
記の4種類であった。
【0126】 硝酸:15%、ふっ酸:3%、水:残部 硝酸:10%、ふっ酸:8%、水:残部 硝酸:10%、ふっ酸:4%、水:残部 硝酸: 8%、ふっ酸:3%、水:残部。
【0127】なお、酸洗液の温度は室温から沸騰の間で
変化させて検討をおこない、60℃とした。
【0128】また、ステンレス鋼板表面に金属介在物を
分散、露出させる他の方法として、WC、Mo2C、B4Cの導
電性を有する硬質微粉末をショットする方法を用いた。
ショット条件は以下の通りであった。
【0129】ショットした微粉末は、いずれも工業的に
製造された粉末であり、平均粒径は約200μmであっ
た。WCで99%以上、Mo2Cで90%、B4Cで95
%以上の高純度品で、それぞれMC型、M2C型、M4
型炭化物に該当する。投射条件は以下の通りであった。
【0130】 投射圧力:5kg/cm 投射距離:200mm 投射量 :5kg/min 投射角度:80度 上記の方法で用意した試験片を用いて、下記の(1)〜
(4)の試験を実施した。 (1)冷延鋼板に導電性粉末を投射することにより金属
介在物を分散、露出させたステンレス鋼板の試験 表2に示した鋼記号の各冷延鋼板を、同表に示す酸洗条
件で酸洗し、水洗、乾燥後に、WC、MoC、B
の導電性を有する硬質微粉末をショットした後、液温が
25℃の6質量%の水酸化ナトリウム溶液中に3分間浸
漬、超音波洗浄し、さらに蒸留水中で15分間の超音波
洗浄をおこなった。比較例の一部については中和処理を
施さなかった。なお、この中和処理、洗浄は、ショット
処理前の酸洗後に実施してもよい。冷風ドライアーで乾
燥させた後、JIS B 0601−1982に規定の表
面粗さ(中心平均粗さRaおよび最大高さRmax)
と、中和直後の接触電気抵抗と500時間大気中で放置
した後の接触電気抵抗を測定した。
【0131】その結果を表2に示す。
【0132】
【表2】 表2に示したNo.1〜13は、ショットを施した場合
で、No.14〜19はショットを施さなかった例で、表
面に金属介在物が露出していない比較例である。
【0133】本発明例のNo.5〜7および比較例の16
〜19は、M236型導電性金属析出物の影響を避ける
ために炭素含有量が少ない鋼を用いた。
【0134】表2でM236、M2B型析出物の有無につ
いては、光学顕微鏡にて表面にマクロ的に均一分散して
いることが容易に目視確認できるものをもって析出あり
と表記した。同定については、透過電子顕微鏡の回折像
よりおこなった。
【0135】接触電気抵抗の測定は、0.3mm厚の上
記酸洗後の冷延鋼板と厚さ0.6mmの市販のグラッシ
ーカーボン板(昭和電工製、商品名“SG3”)を用
い、評価用ステンレス試験片接触面積を1cm2とし、
4端子法にて測定した。評価用試験片表面は、評価直前
に、表面を水洗浄後評価に供試した。酸洗処理をおこな
わない場合、ショットを施さない場合は、湿式600番
エメリー紙研磨面である。負荷荷重は11.2kg/c
2とした。負荷荷重により接触電気抵抗は変化する
が、10kg/cm2以上でほぼ一定値が得られるように
なることを確認している。
【0136】表2より明らかなように、導電性粉末をシ
ョット加工によってステンレス鋼板表面に“めり込ませ
て残留させた”場合、全て接触抵抗は8.45mΩ・cm2
以下となった。一方、ショットを施さない比較例では、
接触電気抵抗が107.9mΩ・cm2以上と高かった。こ
こで、No.14,15は鋼中に導電性金属介在物である
236が析出しているにもかかわらず接触抵抗が高
い。これは、No.14では中心線平均粗さが0.03μm
と極めて平滑であるために導電性介在物が表面から突出
しておらず、また、No.15では中心線平均粗さが4.
54μm、最大粗さが56.2μmと大きく表面が粗いた
めに接触点に導電性介在物が存在する割合が低く、導電
性介在物が“電気の通り道”として十分に機能しなかっ
たためと考えられる。ステンレス鋼材表面粗さは、中心
線平均粗さRaで0.06〜5μmであることが望まし
い。ショット加工は、表面に導電性粉末を“めり込ま
せて残留させる”こと、表面粗さを中心線平均粗さR
aで0.05〜5μmに調整することの双方を満足させ
る極めて有効な工業的手段のひとつであることが明かで
ある。なお、ショット加工により“めり込ませて残留さ
せた”導電性粒子の“電気の通り道”としての機能は時
間が経過しても低下しないと判断されるが、実際にショ
ットを施した鋼板表面の接触抵抗は、300hr経過後
もほぼ同じ接触抵抗値を示すことが確認できた。
【0137】M236、M2B型といった導電性金属析出
物が鋼中に析出している場合も、No.1〜4、8〜1
0、12、13に示すように良好な接触抵抗が得られ
た。両者の改善効果は、重畳の関係にあると判断してい
る。
【0138】また、比較例の15〜19から明らかなよ
うに、中和処理しなかった場合500時間経過後の接触
電気抵が大きくなっており、中和処理の効果が顕著であ
る。 (2)金属介在物を析出させて分散、露出させたステン
レス鋼板の試験 電気伝導性微粉末を投射しないで、析出した金属介在物
のみによる効果を確認するため、炭素含有量が比較的高
くM23型炭化物が析出しているステンレス鋼、お
よび、硼素含有量が高くMB型硼化物が析出している
ステンレス鋼を用いて、表3に示す種々の酸洗条件で酸
洗して金属介在物を分散、露出させた。
【0139】酸洗後、液温が25℃の6質量%の水酸化
ナトリウム溶液中に3分間浸漬、超音波洗浄し、さらに
蒸留水中で15分間の超音波洗浄し、流水中で15分間
水洗、蒸留水中で5分間超音波洗浄した。比較例の一部
については中和処理を施さなかった。また、比較例とし
て、炭素含有量が少なく、硼素含有量も低いか、含有し
ないステンレス鋼も同じ条件で酸洗した。これらの酸洗
した冷延鋼板の表面粗さと接触電気抵抗を上記と同じ方
法により測定した。また、接触電気抵抗は500時間大
気中で放置した後も測定した。測定結果を表3に示す。
【0140】
【表3】 表3より明らかなように、M236、M2B型析出物を分
散、露出させた本発明例の全てが接触電気抵抗は15.
6mΩ・cm2以下と小さいが、比較例の析出物が鋼板表面
に分散、露出していない場合は、表面粗さが本発明で規
定する範囲内であっても101.6mΩ・cm2以上と高い
ことが明かである。分散析出の効果が顕著である。M23
6型炭化物とM2B型硼化物の改善効果は、重畳の関係
にあると判断している。
【0141】(3)金属介在物を分散、露出させ、かつ
表面粗さを変化させたステンレス鋼板の試験 表4に示すように酸洗条件を種々変化させて酸洗するこ
とで、冷延鋼板の表面粗さを変化させた。
【0142】酸洗後、液温が25℃の6質量%の水酸化
ナトリウム溶液中に3分間浸漬、超音波洗浄し、さらに
蒸留水中で15分間の超音波洗浄し、流水中で15分間
水洗、蒸留水中で5分間超音波洗浄した。比較例の一部
については中和処理を施さなかった。各試験片は、中和
処理直後に表面粗さと接触電気抵抗とを測定した。ま
た、試験片を大気中に500時間放置した後も接触電気
抵抗の測定をおこなった。その結果を表4に示す。
【0143】
【表4】 表4から明らかなように、鋼中にM236、M2B型析出
物がステンレス鋼板表面に分散、露出していたとして
も、表面粗さにより接触電気抵抗が高くなる場合があ
る。接触が面では起こらず、表面が非常に平滑な面であ
ってもいくつかの点での接触しか起らなく、言いかえる
ならば、表面が非常に平滑である場合には、接触点数が
少ないことから、鋼板表面に露出している導電性金属介
在物を介した接触機会が十分に得られず、結果として接
触抵抗値が高くなると思われる。
【0144】図3および図4は、湿式600番エメリー
紙研磨した鋼記号n(表1)を、10%硝酸−3%ふっ
酸中で5分間酸洗した後の表面粗さ状態を示す。図3は
二次元での測定結果で、図4は三次元測定結果である。
Ra=0.2133、0.2147μmであった。これ
らの測定は、市販の粗さ計を用いた。
【0145】図5は、表1中の鋼記号nのミクロ写真
(1000倍)を示す。白い線で囲まれているのが分散
相のM2B型硼化物である。断面をSEM観察したもの
であり、上方には、表面にM2Bが“頭を出して”突
出、分散している状況が判別できる。
【0146】図6は、表1中の鋼記号Oの電子顕微鏡写
真(2000倍)を示す。M236型炭化物とM2B型硼
化物素が重なって析出していることが分かる。
【0147】(4)金属介在物を分散、露出させたステ
ンレス鋼からなるセパレータを固体高分子型燃料電池に
組み込んだ試験 本発明のステンレス鋼を固体高分子型燃料電池にセパレ
ータとして装填した場合の性能評価のために、表5に示
す各鋼記号の最終焼鈍した冷延鋼板からコルゲート形状
のセパレータ板を作製した。
【0148】セパレータ板は、図1に示す形状で両面
(アノード極側、カソード極側)に機械加工により溝幅
2mm、溝深さ1mmのガス流路を切削、放電加工し、
固体高分子型単セル電池内部にセパレータとして装填し
た状態で評価した。特性評価は、電池内に燃料ガスを流
してから1時間経過後に単セル電池の電圧を測定し、初
期の電圧と比較することにより電圧の低下率を調べて行
った。なお、低下率は、1−(1時間経過後の電圧V/
初期電圧v)により求めた。
【0149】評価に用いた固体高分子型燃料単セル電池
は、米国Electrochem社製市販電池セルFC50を改造して
用いた。
【0150】アノード極側燃料用ガスとしては99.9
999%水素ガスを用い、カソード極側ガスとしては空
気を用いた。電池本体は全体を78±2℃に保温すると
共に、電池内部の湿度制御を、セル出側の排ガス水分濃
度測定をもとに入り側で調整した。電池内部の圧力は、
1気圧である。水素ガス、空気の電池への導入ガス圧は
0.04〜0.20barで調整した。セル性能評価
は、単セル電圧で500±20mA/cm2−0.62±
0.04Vが確認できた状態より継時的に測定を行っ
た。
【0151】単セル性能測定用システムとしては、米国
スクリブナー社製890シリーズを基本とした燃料電池
計測システムを改造して用いた。電池運転状態により、
特性に変化があると予想されるが、同一条件での比較評
価である。その結果を表5に示す。
【0152】
【表5】 本発明で規定するステンレス鋼は、表5から明らかなよ
うに、固体高分子型燃料電池セルに装填した状態におい
ても、接触電気抵抗を小さく維持することができた。
【0153】
【発明の効果】本発明によれば、固体高分子型燃料電池
のセパレータがおかれる環境で、良好な耐食性を有する
と共に接触電気抵抗が低く、しかも長時間使用しても接
触電気抵抗の増加が極めて小さい固体高分子型燃料電池
のセパレータ用ステンレス鋼材の製造ができるので、安
価な固体高分子型燃料電池の製造に貢献するところ大で
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】固体高分子型燃料電池の構造を示す図である。
【図2】金属介在物が露出したステンレス鋼の表面と他
の通電体面と接触させた状態を示す図である。
【図3】酸洗後のステンレス鋼板の二次元の表面粗さ状
態を示す図である。
【図4】酸洗後のステンレス鋼板の三次元の表面粗さ状
態を示す図である。
【図5】分散したM2B型硼化物を示す図である。
【図6】分散したM236型炭化物およびM2B型硼化物
を示す図である。
【符号の説明】
1 燃料電池 2 固体分子電解質膜 3 燃料電極膜 4 酸化剤電極膜 5a、5b セパレータ
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22C 38/54 C22C 38/54 (72)発明者 関 彰 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 (56)参考文献 特開2001−32056(JP,A) 特開2000−328205(JP,A) 特開2000−328200(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 8/02 H01M 8/10 C23F 1/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ステンレス鋼材の表面を酸性水溶液により
    腐食させて、その表面に導電性を有するM23型、
    C型、MC型、MC型炭化物系金属介在物および
    B型硼化物系金属介在物のうちの1種以上を露出さ
    せ、次いでpHが7を超えるアルカリ性水溶液により中
    和処理をおこない、その後さらに水洗、乾燥することを
    特徴とする固体高分子型燃料電池のセパレータ用ステン
    レス鋼材の製造方法。
  2. 【請求項2】酸性水溶液による平均腐食減量を5〜60
    g/m とすることを特徴とする請求項1記載の固体高
    分子型燃料電池のセパレータ用ステンレス鋼材の製造方
    法。
  3. 【請求項3】ステンレス鋼材が、質量%で、C:0.1
    5%以下、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.01
    〜1.5%、P:0.04%以下、S:0.01%以
    下、Cr:15〜36%、Al:0.001〜6%、
    B:0〜3.5%、N:0.035%以下、Ni:0〜
    5%、Mo:0〜7%、Cu:0〜1%、Ti:0〜2
    5×(C%+N%)、Nb:0〜25×(C%+N%)
    を含有し、かつCr、MoおよびB含有量は下記式を満
    足しており、残部Feおよび不純物からなるフェライト
    系ステンレス鋼材であることを特徴とする請求項1また
    は2に記載の固体高分子型燃料電池のセパレータ用ステ
    ンレス鋼材の製造方法。 17%≦Cr+3×Mo−2.5×B ただし、式中の各元素記号は含有量(質量%)を示す
  4. 【請求項4】ステンレス鋼材が、質量%で、C:0.0
    05〜0.2%、Si:0.01〜1.5%、Mn:
    0.01〜2.5%、P:0.040%以下、S:0.
    01%以下、Cr:17〜30%、Ni:7〜50%、
    B:0〜3.5%、N:0〜0.4%、Cu:0〜2
    %、Al:0.001〜6%、Mo:0〜7%を含有
    し、かつCr、MoおよびB含有量は下記式を満足して
    おり、残部Feおよび不純物からなるオーステナイト系
    ステンレス鋼材であることを特徴とする請求項1または
    2に記載の固体高分子型燃料電池のセパレータ用ステン
    レス鋼材の製造方法。 17%≦Cr+3×Mo−2.5×B ただし、式中の各元素記号は含有量(質量%)を示す
JP2000022978A 2000-01-31 2000-01-31 固体高分子型燃料電池のセパレータ用ステンレス鋼材の製造方法 Expired - Fee Related JP3365385B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000022978A JP3365385B2 (ja) 2000-01-31 2000-01-31 固体高分子型燃料電池のセパレータ用ステンレス鋼材の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000022978A JP3365385B2 (ja) 2000-01-31 2000-01-31 固体高分子型燃料電池のセパレータ用ステンレス鋼材の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2001214286A JP2001214286A (ja) 2001-08-07
JP3365385B2 true JP3365385B2 (ja) 2003-01-08

Family

ID=18549205

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000022978A Expired - Fee Related JP3365385B2 (ja) 2000-01-31 2000-01-31 固体高分子型燃料電池のセパレータ用ステンレス鋼材の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3365385B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009157557A1 (ja) 2008-06-26 2009-12-30 住友金属工業株式会社 固体高分子形燃料電池のセパレータ用ステンレス鋼材およびそれを用いた固体高分子形燃料電池
WO2010041694A1 (ja) 2008-10-07 2010-04-15 住友金属工業株式会社 固体高分子型燃料電池のセパレータ用ステンレス鋼板およびそれを用いた固体高分子型燃料電池
KR20170106512A (ko) 2015-02-13 2017-09-20 신닛테츠스미킨 카부시키카이샤 페라이트계 스테인리스강재, 세퍼레이터, 고체 고분자형 연료 전지, 및 세퍼레이터의 제조 방법
EP3190211A4 (en) * 2014-09-02 2017-10-11 JFE Steel Corporation Cold-rolled steel sheet, method for producing cold-rolled steel sheet, automobile member, and equipment for producing cold-rolled steel sheet

Families Citing this family (33)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CA2417164C (en) 2000-09-12 2009-07-14 Nisshin Steel Co., Ltd. Separator for a low-temperature type fuel cell and production method therefor
US7507490B2 (en) 2001-12-07 2009-03-24 Honda Giken Kogyo Kabushiki Kaisha Metal separator for fuel cell and its production method
DE10297495B4 (de) * 2001-12-12 2008-06-26 Honda Giken Kogyo K.K. Herstellungsverfahren für einen Metallseparator einer Brennstoffzelle
JP4535660B2 (ja) * 2002-03-18 2010-09-01 本田技研工業株式会社 燃料電池用金属製セパレータの製造方法
JP3913053B2 (ja) * 2001-12-12 2007-05-09 本田技研工業株式会社 燃料電池用金属製セパレータの製造方法
CA2468510C (en) * 2001-12-18 2011-11-29 Honda Giken Kogyo Kabushiki Kaisha Method of producing fuel cell-use separator and device for producing it
JP4068344B2 (ja) * 2001-12-27 2008-03-26 本田技研工業株式会社 燃料電池およびその製造方法
JP4274737B2 (ja) * 2002-03-29 2009-06-10 本田技研工業株式会社 燃料電池用金属製セパレータおよびその製造方法
JP2003297380A (ja) 2002-04-03 2003-10-17 Nisshin Steel Co Ltd 燃料電池用ステンレス鋼製セパレータ
CN100580982C (zh) * 2003-02-18 2010-01-13 日本电气株式会社 燃料电池用的电极和使用它的燃料电池
JP4575007B2 (ja) * 2004-03-18 2010-11-04 本田技研工業株式会社 導電物含有ステンレス製セパレータの製造方法
JP2006253107A (ja) * 2004-07-02 2006-09-21 Nisshin Steel Co Ltd 固体高分子型燃料電池用ステンレス鋼製セパレータ
JP2006164959A (ja) * 2004-11-11 2006-06-22 Nisshin Steel Co Ltd 固体高分子型燃料電池
JP2006302731A (ja) * 2005-04-22 2006-11-02 Nisshin Steel Co Ltd 固体高分子型燃料電池用ステンレス鋼製セパレータ及び固体高分子型燃料電池
JP2006302730A (ja) * 2005-04-22 2006-11-02 Nisshin Steel Co Ltd 固体高分子型燃料電池用ステンレス鋼製セパレータ及び固体高分子型燃料電池
JP2006302729A (ja) * 2005-04-22 2006-11-02 Nisshin Steel Co Ltd 固体高分子型燃料電池用ステンレス鋼製セパレータ及び固体高分子型燃料電池
JP2007026694A (ja) * 2005-07-12 2007-02-01 Nisshin Steel Co Ltd 固体高分子型燃料電池用セパレータ及び固体高分子型燃料電池
JP4850459B2 (ja) * 2005-09-14 2012-01-11 新日鐵住金ステンレス株式会社 耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線とその製造方法
JP4545129B2 (ja) * 2006-09-19 2010-09-15 本田技研工業株式会社 燃料電池用セパレータの製造方法
JP2008091225A (ja) * 2006-10-03 2008-04-17 Nisshin Steel Co Ltd 固体高分子型燃料電池用セパレータ及びその製造方法
US9103041B2 (en) 2006-12-28 2015-08-11 Posco Method for improving surface properties of the stainless steels for bipolar plate of polymer electrolyte membrane fuel cell
KR100777123B1 (ko) * 2007-04-18 2007-11-19 현대하이스코 주식회사 연료전지용 스테인리스강 분리판 및 그 제조방법
JP2009019228A (ja) * 2007-07-10 2009-01-29 Daido Steel Co Ltd 固体高分子形燃料電池用金属セパレータ材料
JP2011038166A (ja) * 2009-08-13 2011-02-24 Nisshin Steel Co Ltd 燃料電池用通電部材およびその製造方法
KR20120101552A (ko) 2010-01-20 2012-09-13 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 접촉 전기 저항이 낮은 통전 부품용 스테인레스강 및 그 제조 방법
FR2955937B1 (fr) * 2010-02-01 2013-02-08 Messier Dowty Sa Procede de detection non destructif de brulures d'usinage d'un acier a tres haute resistance, procede et nuancier d'etalonnage de brulures d'usinage de cet acier
JP5973790B2 (ja) 2012-05-28 2016-08-23 株式会社中山アモルファス 耐食性、導電性、成形性に優れた薄板およびその製造方法
JP5980167B2 (ja) * 2013-05-23 2016-08-31 株式会社中山アモルファス 耐食性、導電性、成形性に優れた固体高分子型燃料電池用セパレータ材料およびその製造方法
EP3202940A4 (en) * 2014-10-01 2018-05-09 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation Ferritic stainless steel material, separator for solid polymer fuel cells which uses same, and solid polymer fuel cell
FI128294B (en) * 2015-01-27 2020-02-28 Outokumpu Oy A process for preparing a sheet material for an electrochemical process
US10622643B2 (en) 2015-09-25 2020-04-14 Nippon Steel Corporation Carbon separator for solid polymer fuel cell, solid polymer fuel cell, and solid polymer fuel cell stack
JP6584900B2 (ja) * 2015-10-05 2019-10-02 日鉄日新製鋼株式会社 耐食性に優れたステンレス鋼管及びその製造方法
CN114214680A (zh) * 2022-01-07 2022-03-22 深圳市虹喜科技发展有限公司 一种镀银工艺及由该工艺制备的保温容器

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009157557A1 (ja) 2008-06-26 2009-12-30 住友金属工業株式会社 固体高分子形燃料電池のセパレータ用ステンレス鋼材およびそれを用いた固体高分子形燃料電池
JP2010140886A (ja) * 2008-06-26 2010-06-24 Sumitomo Metal Ind Ltd 固体高分子形燃料電池のセパレータ用ステンレス鋼材およびそれを用いた固体高分子形燃料電池
US9312546B2 (en) 2008-06-26 2016-04-12 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation Stainless steel material for a separator of a solid polymer fuel cell and a solid polymer fuel cell using the separator
WO2010041694A1 (ja) 2008-10-07 2010-04-15 住友金属工業株式会社 固体高分子型燃料電池のセパレータ用ステンレス鋼板およびそれを用いた固体高分子型燃料電池
US9680162B2 (en) 2008-10-07 2017-06-13 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation Stainless steel sheet for a separator for a solid polymer fuel cell and a solid polymer fuel cell employing the separator
EP3190211A4 (en) * 2014-09-02 2017-10-11 JFE Steel Corporation Cold-rolled steel sheet, method for producing cold-rolled steel sheet, automobile member, and equipment for producing cold-rolled steel sheet
KR20170106512A (ko) 2015-02-13 2017-09-20 신닛테츠스미킨 카부시키카이샤 페라이트계 스테인리스강재, 세퍼레이터, 고체 고분자형 연료 전지, 및 세퍼레이터의 제조 방법

Also Published As

Publication number Publication date
JP2001214286A (ja) 2001-08-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3365385B2 (ja) 固体高分子型燃料電池のセパレータ用ステンレス鋼材の製造方法
JP4078966B2 (ja) 固体高分子型燃料電池のセパレータ用ステンレス鋼および固体高分子型燃料電池
KR100361548B1 (ko) 고체고분자형 연료전지용 스텐레스 강재
JP2001032056A (ja) 通電部品用ステンレス鋼および固体高分子型燃料電池
JP5971446B1 (ja) フェライト系ステンレス鋼材と、これを用いる固体高分子形燃料電池用セパレータおよび固体高分子形燃料電池
JP6315158B1 (ja) ステンレス鋼板及びその製造方法、固体高分子型燃料電池用セパレータ、固体高分子型燃料電池セル、並びに固体高分子型燃料電池
JP5979331B1 (ja) フェライト系ステンレス鋼材と、これを用いる固体高分子形燃料電池用セパレータおよび固体高分子形燃料電池
JP6057034B1 (ja) 固体高分子形燃料電池用セパレータおよびその製造方法
WO2016140128A1 (ja) 固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス薄鋼板
JP2000328200A (ja) 通電電気部品用オーステナイト系ステンレス鋼および燃料電池
EP2031687B1 (en) Pure titanium or titanium alloy separator for solid polymer fuel cell and method for producing the same
JP5152193B2 (ja) 固体高分子型燃料電池セパレータ用ステンレス鋼材および固体高分子型燃料電池
JP6278158B1 (ja) 固体高分子形燃料電池用セルおよび固体高分子形燃料電池スタック
JP6057033B1 (ja) フェライト系ステンレス鋼材、セパレータ、固体高分子形燃料電池、および、セパレータの製造方法
JP3397169B2 (ja) 固体高分子型燃料電池セパレータ用オーステナイト系ステンレス鋼および固体高分子型燃料電池
JP3397168B2 (ja) 固体高分子型燃料電池セパレータ用フェライト系ステンレス鋼および固体高分子型燃料電池
JP2000328205A (ja) 通電電気部品用フェライト系ステンレス鋼および燃料電池
JP7257793B2 (ja) ステンレス鋼板、燃料電池用セパレータ、燃料電池セル、及び燃料電池スタック
JP6278157B1 (ja) 固体高分子形燃料電池用セルおよび固体高分子形燃料電池スタック
JP2020024883A (ja) 燃料電池のセパレータ用鋼板の基材ステンレス鋼板およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081101

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091101

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091101

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101101

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111101

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121101

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131101

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131101

Year of fee payment: 11

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131101

Year of fee payment: 11

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees