JP3336366B2 - 抗菌性成分、それを混入した材料及び溶液 - Google Patents

抗菌性成分、それを混入した材料及び溶液

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JP3336366B2 JP06367596A JP6367596A JP3336366B2 JP 3336366 B2 JP3336366 B2 JP 3336366B2 JP 06367596 A JP06367596 A JP 06367596A JP 6367596 A JP6367596 A JP 6367596A JP 3336366 B2 JP3336366 B2 JP 3336366B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カビなどの繁殖を
抑制する作用をもつ、桜の葉から得られる抗菌性成分に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来、食品等の防カビ剤や防腐剤として
は、安息香酸、ソルビン酸等の有機酸及びこれらの塩類
や、エタノール等のアルコール類などの化学薬品が用い
られている。また、これらの化学薬品は食品保存用途の
他に、ウエットテッシュペーパー、抗菌スプレー、ペー
パー状拭き掃除材等、掃除用品としての用途も広がりつ
つある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来用いら
れてきたような化学薬品は、人体に対する安全性が十分
でなく、多量に使用する場合や長期間にわたって使用す
る場合には、その安全性に問題があった。また、近年に
なって自然食品等の天然物指向の風潮が高まり、各種植
物の薬効成分を抽出して利用することも盛んに行われて
いる。そこで、化学薬品に代わる天然物を利用した抗菌
剤が望まれていた。ところで、天然物であればどのよう
なものでも食品添加物等に使用できるものではなく、成
分が複雑なだけに解明されていない成分も多く化学薬品
に比べて危険性が高いものもある。本発明は、従来から
食習慣があり、したがって人体に安全な桜の葉を対象と
したものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を解決するため
本発明に係る抗菌性成分は、八重桜の葉を水蒸気蒸留す
ることによって得ることができる抗菌性成分であって、
アセトンとn−ヘキサンの混合溶媒(以下、混合溶媒
「A」と記す)であってアセトンに対するn−ヘキサン
の容量比率が4の混合溶媒Aを展開溶媒としてシリカゲ
ル薄層クロマトグラフィー処理を経たとき、Rf値が
0.15及び0.28に現れるスポットで示されるもの
である。
【0005】また、本発明に係る抗菌性成分は、八重桜
の葉を溶媒(以下、「溶媒B」又は「混合溶媒B」と記
す)で抽出し、その抽出物から溶媒B又は混合溶媒Bを留
去することによって得ることができる抗菌性成分であっ
て、アセトンとn−ヘキサンの混合溶媒であってアセト
ンに対するn−ヘキサンの容量比率が4の混合溶媒Aを
展開溶媒としてシリカゲル薄層クロマトグラフィー処理
を経たとき、Rf値が0.15及び0.28に現れるス
ポットで示されるものである。
【0006】の本発明は、このようにして八重桜から
得られる抗菌性成分を、ウエットテッシュペーパー、食
品の下敷材や包装材などの食品容器包装材、各種繊維、
紡績された衣類、紡績されたタオル、シャンプー、リン
ス、芳香剤に混入して抗菌性をもたせたものである。
らに他の本発明は、上記抗菌性成分を混入した各種繊維
を紡績した衣類やタオル、ならびに、上記抗菌性成分を
収容する風呂場のカビ除去用スプレーとしたものであ
る。さらに他の本発明は、上記抗菌性成分を500pp
mの濃度でn−ヘキサンの溶媒中に含有する抗菌性溶液
である。
【0007】
【実施の形態】本発明の抗菌性成分の原料は、八重桜、
染井吉野、山桜等の桜の葉であり、特に八重桜の葉は抗
菌効果が著しく好ましい。これらの桜の葉から抗菌性成
分を分離するには、水蒸気蒸留して留出液中に水溶液と
して得る方法(以下、「蒸留法」と記す)と溶媒Bで抽
出した抽出物から溶媒Bを留去して残留物として得る方
法(以下、「抽出法」と記す)とがある。
【0008】まず蒸留法について説明する。桜の葉はい
ずれの時期のものを使用してもよいが、抗菌性成分の活
性が高い夏期のものが好適に用いられる。桜の葉をその
まま用いてもよいが、蒸留効率を高めるために細かく裁
断して用いるのがよい。
【0009】水蒸気蒸留は通常の方法に基づいて行われ
る。すなわち、桜の葉を水とともに容器に入れ、これを
蒸留して留出液中に抗菌成分を得るものである。なお、
抗菌性成分の留出速度を増加するために、水に有機溶媒
を加えてもよい。このような有機溶媒としては、アセト
ン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロ
パノールなど、水との相溶性があるとともに沸点が低い
溶媒であれば特に制限されるものではない。
【0010】このようにして、抗菌性成分を水又は水と
有機溶媒との混合溶媒中に迅速に得ることができる。し
たがって、この抗菌性成分を例えばウエットテッシュペ
ーパーなどの適当な材料に混入させる場合には、この抗
菌性成分を留出液などに含浸させるだけで目的が達成さ
れるため好都合である。なお、このように水又は水と有
機溶媒との混合溶媒中に溶解した状態の抗菌性成分を、
適当な溶媒に転溶した後に用いた転溶溶媒を留去すれば
粉末状態として得ることも可能である。
【0011】このような蒸留によって留出液中に得られ
る桜の葉の成分は、現在のところ十分に明らかになって
いないが、以下のような薄層クロマトグラフィー処理に
より定性的な同定は可能である。まず、得られた留出液
の成分をジクロルメタンなどの溶媒に転 溶した後、こ
の転溶溶媒を留去して蒸留した成分を粉末状態として得
る。このようにして得られた粉末成分を溶媒に溶かし
て、薄層クロマトグラフィー処理にかけることによって
スポットとして各成分を分画することができるものであ
る。そして、このようにして分画した成分が抗菌性を示
すかどうかは、各スポットをそれぞれ分取してそれぞれ
について抗菌性を調べればよい。
【0012】本発明においては、シリカゲル薄層クロマ
トグラフィーを用いて種々の展開溶液について蒸留して
得られる成分の分画を試みたところ、展開溶液としてア
セトンとn−ヘキサンの混合溶媒Aを用いることにより
分画が可能となることを見出した。明確に分離したスポ
ットを得るには、アセトンに対するn−ヘキサンの容量
比率が1〜4のものを用いるのが好ましく、容量比率を
4とするのが特に好ましい。このように、展開溶液とし
てアセトンとn−ヘキサンの混合溶媒Aを用いることに
よって、Rf値が0.10〜0.70の範囲に明確に分
離したスポットが現れることがわかった。なお、本発明
のクロマトグラフィー処理によって現れるスポットのR
f値としてはスポット上下のRf値の平均値を採用した
が、再現性を確認するために同一試料についてクロマト
グラフィー処理を何度か繰り返したところ最大で±0.
1程度の測定誤差を含んでいた。したがって、本発明に
おけるRf値の範囲はこのような誤差範囲を考慮したも
のである。
【0013】そして、上記のようにアセトンとn−ヘキ
サンの混合溶媒Aによって分画した成分を分取してそれ
ぞれの抗菌性を調べたところ、Rf値が0.10〜0.
70の範囲の分画成分が抗菌性を示し、特にRf値が
0.10〜0.30の範囲の分画成分の抗菌効果が著し
いことが判明した。なお、抗菌性を示す成分がこれらの
スポットのいずれであるかは現在のところ明らかではな
い。
【0014】また、蒸留法によって得られる抗菌性成分
を含有する留出分を、ヘキサンなどの溶媒相に通じるこ
とによって、クマリン配糖体の分解によって生じる香気
性成分を除去することができる。この香気性成分はヘキ
サンなどの溶媒に多く溶解するからである。このような
場合は、蒸留工程の後にこの香気性成分を除去する工程
を付加すればよく、香気性成分を取り除いた状態で抗菌
作用を利用したいときに有効である。
【0015】次に抽出法について説明する。用いる桜の
葉は蒸留法と同様にいずれの時期のものを使用してもよ
いが、抗菌性成分の活性が高い夏期のものが好適に用い
られる。桜の葉をそのまま用いてもよいが、抽出効率を
高めるために細かく裁断して用いるのがよい。
【0016】抽出に用いることができる溶媒Bとして
は、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ア
セトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノー
ル、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の
アルコール類、エチルエーテル、ジエチルエーテル等の
エーテル類、酢酸エチル等のエステル類、ジクロルメタ
ン等の塩素系溶媒、及び水などが挙げられる。これらの
溶媒Aのうち、アセトン、ヘキサン、エタノール、メタ
ノールが好ましく用いられる。なお、抽出効率を高く維
持しつつ、これらの溶媒Bの使用量を極力低減するに
は、これらの溶媒と水との混合溶媒Aを用いるのが好ま
しい。
【0017】なお、抽出効率が高く、かつ、抽出後の溶
媒留去が容易なことから、水と沸点の低いアセトンとの
混合溶媒Bを用いるのが特に好ましい。このアセトンと
水との混合溶媒Bにおいては、これら二液の容量比は特
に限定されるものではないが、アセトンに対する水の容
量比率を1〜5とするのが好ましい。この容量比が5を
超えると抗菌性成分を高効率に抽出できず、一方、この
容量比率が1未満では、アセトン使用量の低減に十分な
効果が得られないからである。
【0018】また、抽出効率を高めるために、容器を振
盪しながら抽出するのが好ましい。処理時間は用いる桜
や溶媒Aの種類及び処理量によっても異なるが、通常、
振盪しながら30分程度行えば十分である。このように
して得られる抽出液には、裁断された桜の葉や異物が含
まれているため、フィルター濾過によって残渣を濾別し
濾液を得る。そして、この濾液中の溶媒Aを減圧下等に
おいて留去して粘性物質中に抗菌性成分を得るものであ
る。通常、ロータリーエバポレーターを用いて、例えば
40〜60℃の温度の下で溶媒を留去する。このように
して、抗菌性成分を粘性物質中に得ることができる。
【0019】このようにして得られる粘性物質について
も、上記蒸留によって得られた粉末と同様にしてアセト
ンとn−ヘキサンの混合溶媒Aを展開溶媒として薄層ク
ロマトグラフィー処理を行ったところ、Rf値が0.1
0〜0.70の範囲にある分画成分が抗菌性を示し、特
にRf値が0.10〜0.30の範囲の分画成分の抗菌
効果が著しいことが明らかになった。ただし、現れるス
ポットのどれが抗菌性成分であるかは、上記粉末同様に
現在のところ明らかではない。このように、Rf値と抗
菌性との関係は蒸留によって得られた粉末と同様であっ
た。
【0020】また、上記蒸留法又は抽出法によって得ら
れる抗菌性成分をウエットテッシュペーパーに混入して
公衆トイレの便座の簡易消毒用などに用いたり、食品の
下敷材や包装材に混入して抗菌性をもたせた食品容器包
装材としたり、食品の日持ち向上剤として用いると有用
である。さらに、この抗菌性成分をスプレー容器に収容
して風呂場のカビ除去用スプレーとしたり、各種繊維に
混入して衣類、タオル等として紡績したものや、紡績さ
れた衣類、タオル等に混入したり、抗菌性の芳香剤とし
てトイレやげた箱に設置したり、シャンプーやリンスな
どに混入して利用することも有用である。
【0021】
【実施例】以下に、本発明の抗菌性成分の調製方法、防
カビ試験結果、及びこの抗菌性成分を混入した抗菌性材
について詳述する。
【0022】(実施例1) 蒸留法による抗菌性成分の
調製と同定 (1)調製 夏期に収穫し冷凍保存しておいた八重桜の葉500gを
短冊状に裁断し、これに水1500mL を加えたものを
原液として水蒸気蒸留装置にかけた。原液を約100℃
に加熱して約1時間蒸留し留出液1000mL を得た。
この留出液に転溶溶媒としてジクロルメタンを同容量加
えて、抗菌性成分をジクロルメタン相に転溶した。次い
で、デカンテーションによって水相をとジクロルメタン
相に分離して水相を排出し、転溶溶媒であるジクロルメ
タン相をロータリーエバポレーターにかけて、60℃で
加熱減圧しながらジクロルメタンを蒸発させ、白色の粉
末20mgを得た。
【0023】(2)同定 このようにして得られた抗菌性成分を含む結晶を、n−
ヘキサン10mL にメスアップして同定用試料(試料
1)とした。アセトンに対するn−ヘキサンの容量比率
が4の混合溶媒Aを展開溶媒として、シリカゲルを塗布
した薄層板に上記試料1の20μL を展開した。図1に
示す結果を得た。図1から明らかなように、Rf値が
0.10〜0.70の範囲に6個のスポットが現れてい
る。これらのスポットのRf値は、0.15、0.2
8、0.36、0.42、0.53、0.60であっ
た。
【0024】(実施例2) 抽出法による抗菌性成分の
調製と同定 (1)調製 夏期に収穫し冷凍保存しておいた八重桜の葉500gを
短冊状に裁断し、これにアセトン:水の容量比が1:4
のアセトン/水の混合溶媒500mL を加えて30分間
振盪し、八重桜の葉の抗菌成分を抽出した。得られた懸
濁状の抽出液を濾紙を用いて減圧濾過して茶褐色の抽出
液460mL を得た。さらに、この抽出液をロータリー
エバポレーターにかけて、60℃で加熱減圧しながら溶
媒を蒸発させて、茶褐色の粘性物質2.5gを得た。
【0025】(2)薄層クロマトグラフィーによる同定 上述のようにして得られた抗菌性成分を含む物質を、n
−ヘキサン10mL にメスアップして同定用試料とした
(試料2)。試料2を実施例1と同様にしてシリカゲル
薄層板に展開した。結果を図2に示す。図2から明らか
なように、Rf値が0.10、0.15、0.28、
0.36、0.42、0.53、0.60、0.73、
0.92にスポットが現れている。そして、0.10〜
0.70の範囲では、図1と同様のRf値にスポットが
現れている。なお、この場合0.10のスポットは桜の
葉の色素成分であることが判明した。
【0026】防カビ性試験 上記試料1、2をn−ヘキサンで更に希釈して粘性物質
又は結晶濃度を500ppmとした。一方、安息香酸ナ
トリウムを500ppmの濃度となるように水に溶解し
て試料3とした。これらの試料1〜3をそれぞれ含浸し
た濾紙を別々の3つのシャーレの底に敷き、その上に市
販の餅(各20g)をそれぞれ乗せてシャーレの蓋をし
た。なお、何も含浸していない濾紙をシャーレの底に敷
き同様の餅を乗せたものをコントロール(試料4)とし
て用いた。このようにして調製した4つの試験試料を、
室温に放置して餅に発生するカビを観察した。試験開始
からカビが発生するまでの期間を表1に示す。
【0027】表1 試料No. 期間 試料1(実施例1) 約半年 試料2(実施例2) 約半年 試料3(安息香酸Na) 9日 試料4(コントロール) 4日
【0028】表1から明らかなように、本抗菌性成分は
優れた抗菌作用を有し、食品の防カビ剤などとして有用
である。なお、表1の試料1及び2の期間を半年とした
が、これは以下のような意味である。試験開始から半年
後に餅の水分が消失してしまい、これ以後は抗菌性成分
が存在しなくてもカビが発生しなくなるため、すくなく
とも半年間は防カビ効果が発揮された、ということであ
る。実際には、1年以上もカビの発生は観察されなかっ
た。
【0029】(実施例3) 分画成分の調製と防カビ性
試験 実施例1において試料1を展開したシリカゲル薄層板の
シリカ ゲル層の、Rf値が0.1〜0.30の範囲の
部分(以下、「分画成分a」と記す)、同じく0.30
〜0.70の範囲の部分(以下、「分画成分b」と記
す)及び0.70〜1.0の範囲の部分(以下、「分画
成分c」と記す)を、それぞれ削り取ってアセトンで抽
出した。そして、この抽出液を上記防カビ性試験と同様
に濾紙に含浸させて上記試験と同様の餅を用いた防カビ
性試験を行った。試験開始からカビが発生するまでの期
間を表2に示す。試料dは、上記防カビ性試験と同じく
コントロールである。
【0030】表2 試料 期間 試料a 約半年 試料b 9日 試料c 3日 試料d 3日
【0031】表2から明らかなように、分画成分a及び
bが抗菌性を有し、特に分画成分aの抗菌効果が著しい
ことがわかった。したがって、図1に示すスポットのう
ち、Rf値が0.15と0.28の少なくともいずれ
か、そして同じく0.36、0.42、0.53、0.
60のうちの少なくともいずれかで表わされる分画成分
が抗菌性を示すことがわかった。なお、試料aについて
の期間は表1と同様に少なくとも半年間は防カビ性を示
したということである。また、実施例2の試料2につい
ても展開したシリカゲル層のスポットを分取して抗菌性
を試験したところ、分画成分のRf値と抗菌性との関係
について表2と同様の結果が得られた。
【0032】(実施例4) 抗菌性ウエットペーパーの
調製と防カビ性試験 夏期に収穫し冷凍保存しておいた八重桜の葉50gを短
冊状に裁断し、これに水1000mL を加えたものを原
液として水蒸気蒸留装置にかけた。原液を約100℃に
加熱して蒸留し、留出液を50mL ずつフラクションと
して分取した。なお、最初のフラクションを試料5と
し、次いで順次試料5から試料10まで6つの試料を分
取した。
【0033】5cm角に切ったフィルターペーパー(東
洋社製、81G)を7枚用意し、このうち6枚には上記
各試料2mL をそれぞれ添加して染み込ませ、またコン
トロール(試料11)として残りの1枚に水2mL を添
加し、それぞれのフィルターペーパーを別々のシャーレ
の底に敷き蓋をした。実際にはフィルターペーパーでは
なくウエットティシュペーパーによって試験すべきとこ
ろであるが、ウエットティシュペーパーには抗菌性を有
する化学薬品も添加されているため、本発明の抗菌性成
分の抗菌効果のみを観察できない。したがって、主成分
としてのセルロースが同じであるフィルターペーパーで
試験した。以上のようにして調製した試料を室温に放置
して、湿潤状態でフィルターペーパーに発生するカビを
観察した。カビが発生するまでの期間を表3に示す。
【0034】 表3 試料No. 試料5 試料6 試料7 試料8 試料9 試料10 試料11 期間(日) 17 17 17 11 11 11 4
【0035】表3から明らかなように、本抗菌性成分は
優れた抗菌作用を有していることがわかる。なお、試験
期間の17日目に試料に添加した水分が消失しこれ以後
は抗菌性成分がなくともカビが発生しないため、観察を
17日で打ち切った。したがって、試料5〜7において
は、17日以降もカビが発生していなかった可能性が大
きい。
【0036】(実施例5) 抗菌性食品下敷材の調製と
防カビ性試験 実施例4において採取した試料5の1mL を和紙に含浸
させた後にこれを風乾した。この工程を2回繰り返して
行った。このようにして調製した和紙(試料12)と何
も含浸していない和紙(試料13)をそれぞれ別個のシ
ャーレの底に敷き、それらの上に市販の餅(各20g)
をそれぞれ乗せてシャーレの蓋をした。このようにして
調製した2つの試験試料を、室温に放置して餅に発生す
るカビ観察した。カビが発生するまでの期間を表4に示
す。
【0037】表4 試料No. 期間 試料12(実施例5) 約半年 試料13(コントロール) 3日
【0038】表4から明らかなように、本食品下敷材は
優れた抗菌作用を有し、食品の防カビ剤として有用であ
る。なお、試料12の期間については、上記防カビ性試
験の試料1及び2と同様であって少なくとも半年間は防
カビ性が発揮されたという意味である。
【0039】(実施例6) 抗菌性食品包装材の調製と
防カビ性試験 実施例4において採取した抗菌性成分を含有する試料5
の1mL を和紙に含浸させた後これを風乾した。この工
程を2回繰り返して行った。このようにして調製した包
装紙(試料14)と何も処理していない包装紙(試料1
5)でノーワックスの柑橘類をそれぞれ包装し、これら
を別個の容器に入れて室温に放置し柑橘類に発生するカ
ビを観察した。カビが発生するまでの期間を表5に示
す。
【0040】表5 試料No. 期間 試料14(実施例6) 約半年 試料15(コントロール) 20日
【0041】表5から明らかなように、本食品包装材も
優れた抗菌作用を示している。なお、試料14の期間に
ついては、上記防カビ性試験の試料1及び2と同様であ
って少なくとも半年間は防カビ性が発揮されたという意
味である。
【0042】(実施例7) 抗菌性タオルの調製と防カ
ビ性試験 夏期に収穫し冷凍保存しておいた八重桜の葉500gを
短冊状に裁断してミキサーに入れ、これに約40℃の湯
1500mL を加えて3分間撹拌した。次いで、これを
濾過して桜の葉を除いて濾液1300mL を採取した。
さらに、この濾液を鍋などの蓋付容器に入れ、30分間
沸騰させた。そして、蓋をしたまま一昼夜室温で放置し
た。容器の底には、上記濾過では除去しきれなかった細
かな葉片などが沈殿しており、これらを除去するためデ
カンテーションによって上澄液を採取した。
【0043】このようにして得られた上澄液を容器に入
れて40℃まで加熱し、この温度に保持しつつシルクタ
オルを20〜30分間浸漬してタオルを染めた。この
間、容器からシルクタオルを取り出して水を切り風乾す
る工程を3〜4回繰り返た。
【0044】このようにして調製したシルクタオルを適
当な大きさに切り取ったもの(試料16)と、これと何
も処理していないシルクタオル(試料17)をそれぞれ
別個の蓋付き容器の底に敷き、それらの上に市販の餅
(各20g)をそれぞれ乗せて蓋をした。この容器を室
温に放置して餅に発生するカビを観察した。カビが発生
するまでの期間を表6に示す。
【0045】表6 試料No. 期間 試料16(実施例7) 約半年 試料17(コントロール) 4日
【0046】表6から明らかなように、本シルクタオル
は優れた抗菌作用を有する。また、シルクのプロテイン
により美肌効果にも優れている。なお、試料16の期間
については、上記防カビ性試験の試料1及び2と同様で
あって少なくとも半年間は防カビ性が発揮されたという
意味である。
【0047】
【発明の効果】本発明の抗菌性成分は、優れた抗菌作用
を有し、食品の防カビ剤等として極めて有用である。ま
た、本発明の抗菌性成分は桜の葉を原料としているた
め、最近の天然物指向にも合致し人体に対して安全であ
る。さらに、桜の葉を抽出することによって簡単に調製
することが可能である。また、水蒸気蒸留法によって水
又は水と有機溶媒との混合溶媒中に溶解した状態で得る
ことができるため、この抗菌性成分を適当な材料に簡単
に混入させることができる。また、この抗菌性成分を混
入したウエットテッシュペーパー、食品の下敷材、食品
の包装材などの抗菌性材は、食品のカビ発生を防止する
のに有用であり、また、タオルに混入することによって
抗菌効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】蒸留法により得られる抗菌性成分の薄層クロマ
トグラムである。
【図2】抽出法により得られる抗菌性成分の薄層クロマ
トグラムである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI A61K 7/08 A61K 7/08 7/50 7/50 A61L 2/16 A61L 2/16 Z A61P 31/00 A61P 31/00 D03D 15/00 D03D 15/00 D06M 13/00 D06M 13/00 // A61K 7/00 A61K 7/00 K (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 35/78 A01N 65/00 A23L 3/00 101 A23L 3/3472 A47K 10/02 A61L 2/16 D03D 15/00 D06M 11/00 A61K 7/00 BEILSTEIN(STN) CA(STN) MEDLINE(STN)

Claims (19)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 八重桜の葉を水蒸気蒸留することによっ
    て得ることができる抗菌性成分であって、アセトンとn
    −ヘキサンの混合溶媒であってアセトンに対するn−ヘ
    キサンの容量比率が4の混合溶媒Aを展開溶媒としてシ
    リカゲル薄層クロマトグラフィー処理を経たとき、Rf
    が0.15及び0.28に現れるスポットで示されるこ
    とを特徴とする抗菌性成分
  2. 【請求項2】 前記抗菌性成分が、ヘキサン溶媒相を通
    されてクマリン配糖体の分解によって生じる香気性成分
    を除去した成分である、請求項1に記載の抗菌性成分。
  3. 【請求項3】 溶媒Bで八重桜の葉を溶媒抽出し、その
    抽出物から溶媒Bを留去することによって得ることがで
    きる抗菌性成分であって、アセトンとn−ヘキサンの混
    合溶媒であってアセトンに対するn−ヘキサンの容量比
    率が4の混合溶媒Aを展開溶媒としてシリカゲル薄層ク
    ロマトグラフィー処理を経たとき、Rfが0.15及び
    0.28に現れるスポットで示されることを特徴とする
    抗菌性成分
  4. 【請求項4】 前記溶媒Bが水と有機溶媒との混合溶媒
    である、請求項3に記載の抗菌性成分
  5. 【請求項5】 前記有機溶媒がアセトンである、請求項
    4に記載の抗菌性成分
  6. 【請求項6】 前記アセトンに対する水の容量比率が1
    〜5である、請求項5に記載の抗菌性成分
  7. 【請求項7】 前記アセトンに対する水の容量比率が4
    である、請求項6に記載の抗菌性成分
  8. 【請求項8】 請求項1〜請求項7のいずれか一項記載
    の抗菌性成分を混入せしめたことを特徴とする、抗菌性
    食品容器包装材
  9. 【請求項9】 請求項1〜請求項7のいずれか一項記載
    の抗菌性成分を混入せしめたことを特徴とする抗菌性ウ
    エットテッシュペーパー
  10. 【請求項10】 請求項1〜請求項7のいずれか一項記
    載の抗菌性成分を収容する風呂場のカビ除去用スプレ
  11. 【請求項11】 請求項1〜請求項7のいずれか一項記
    載の抗菌性成分を混入せしめたことを特徴とする抗菌性
    繊維
  12. 【請求項12】 請求項11記載の抗菌性繊維を紡績し
    た衣類。
  13. 【請求項13】 請求項11記載の抗菌性繊維を紡績し
    たタオル。
  14. 【請求項14】 請求項1〜請求項7のいずれか一項記
    載の抗菌性成分を紡績された衣類に混入せしめたことを
    特徴とする抗菌性衣類。
  15. 【請求項15】 請求項1〜請求項7のいずれか一項記
    載の抗菌性成分を紡績されたタオルに混入せしめたこと
    を特徴とする抗菌性タオル。
  16. 【請求項16】 請求項1〜請求項7のいずれか一項記
    載の抗菌性成分を含むことを特徴とする抗菌性芳香剤。
  17. 【請求項17】 請求項1〜請求項7のいずれか一項記
    載の抗菌性成分を混入せしめたことを特徴とする抗菌性
    シャンプー。
  18. 【請求項18】 請求項1〜請求項7のいずれか一項記
    載の抗菌性成分を混入せしめたことを特徴とする抗菌性
    リンス。
  19. 【請求項19】 請求項1〜請求項7のいずれか一項記
    載の抗菌性成分を500ppmの濃度でn−ヘキサンの
    溶媒中に含有する抗菌性溶液。
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