JP3321597B2 - 多酸・低アミノ酸酒類製造用酵母の育種 - Google Patents

多酸・低アミノ酸酒類製造用酵母の育種

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治幸 家藤
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独立行政法人 酒類総合研究所
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酵母の育種に関
し、更に詳細には、酸の量は多いがアミノ酸は少ない酒
類、つまり多酸・低アミノ酸酒類を製造することのでき
る酵母の育種に関するものである。また本発明は、この
ような酵母の育種のほか、それによって分離した酵母及
び該酵母を使用する風味に特徴を有する新規酒類の製造
にも関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、多酸・低アミノ酸酒類を製造する
ことのできる酵母の分離を目的とした育種例の報告は全
く認められない。また、ブラスチシジンS(Blasticidi
n S)がイネいもち病防除剤として使用されることは知
られているが(「微生物学辞典」技報堂(1989年8
月23日)第357〜358頁)、この物質が多酸・低
アミノ酸酒類製造用酵母の選択培地に使用されたことは
従来全く知られていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】酒類、特に清酒の消費
量が伸び悩んでいる実情に鑑み、その消費量を増大させ
るため、当業界においては新製品の開発が望まれてい
る。一方、消費者サイドにおいても、特徴ある品質を有
する新しいタイプの酒類の開発が待望されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記したよう
に新製品の開発という目的を達成するためになされたも
のである。しかして、酒類においての酸及びアミノ酸
は、酒類の品質を決定する重要な要素である。酒類の新
規需要開発にあたっては特徴ある品質の開発が望まれて
おり、味を構成する酸、アミノ酸に特徴のある製品もそ
の一つである。以上のことから、多酸・低アミノ酸酒類
を製造できる酵母の育種は、酒類の製造分野において新
製品の開発への寄与が期待されるものである。
【0005】そこで本発明者らは、多酸・低アミノ酸酒
類製造を目的とし、その前提として、多酸・低アミノ酸
酒類製造用酵母の育種という新規な技術課題を設定し
た。すなわち、本発明者らは、新たに醸造酵母から多酸
・低アミノ酸となる酵母の分離育種をめざしたものであ
り、実験の結果、選択培地を利用する、従来の酵母に比
べ酸が多くなり、アミノ酸が少なくなる酵母の分離方法
を開発し、この方法によりサッカロマイセス(Saccharo
myces)属セレビシエ(cerevisiae)を育種するのに成
功したものである。
【0006】すなわち本発明は、選択培地を用いて、サ
ッカロマイセス・セレビシエに属する酵母の中から多酸
・低アミノ酸酒類を製造できる酵母を分離、育種する点
を基本的技術思想とするものである。選択培地として
は、多酸・低アミノ酸酒類製造用酵母を分離、育種でき
る培地であればすべての培地が使用可能であるが、例え
ばブラスチシジンS含有培地は好適な選択培地のひとつ
である。以下、本発明を具体的に説明する。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明を実施するには、サッカロ
マイセス・セレビシエに属する酵母を用い、ブラスチシ
ジンS含有培地等の選択培地を用いてブラスチシジンS
耐性酵母を分離する。親株としては、サッカロマイセス
・セレビシエに属する酵母であればすべての酵母が使用
可能であるが、本発明は特徴ある品質の酒類の製造もそ
の目的のひとつであるので、親株としては、協会9号、
協会7号、協会10号等の各清酒酵母といった市販され
ている実用酵母も有利に使用することができる。
【0008】本育種法では、親株として用いる酵母は、
変異処理をせずに使用しても目的の酵母は分離可能であ
るが、通常の変異処理をした後に分離を行ってもなんら
支障はない。本発明において変異酵母を得るには、変異
方法としては、いかなる方法でもよい。変異の物理的方
法としては、紫外線照射、放射線照射などがあり、化学
的方法としては、変異剤、例えば、エチルメタンサルホ
ネート、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニ
ジン、亜硝酸、アクリジン系色素などの溶液に懸濁させ
る変異方法があり、これらの方法が適宜利用可能であ
る。
【0009】本発明においては、これらの変異方法が適
宜使用できるが、変異酵母の選別に特色を有するもので
ある。すなわち変異株の生育培地にブラスチシジンSを
含有させるものである。ブラスチシジンSは、イネいも
ち病防除剤としては知られているが、多酸・低アミノ酸
酒類製造用酵母の選択培地に利用されたという報告はな
い。本発明においては、目的とする変異酵母は、ブラス
チシジンS含有培地で生育するコロニーから分離すれば
よいので(ポジティブセレクション)、分離作業が容易
且つシンプルであり、この点においても本発明の育種法
はすぐれている。
【0010】このようにして分離したブラスチシジンS
耐性酵母を用い発酵試験を行い、発酵液中の酸が多く、
アミノ酸が少ないものを目的の酵母として分離する。さ
らに分離酵母より酒類の製造を行い、発酵力など親株と
変わりない酵母を選択する。酒類の製造は常法にしたが
って行えばよく、清酒等の醸造酒及び焼酎等の蒸留酒が
適宜製造可能である。
【0011】本発明は、また、酒類製造に関するもので
あって、通常の酵母を使用する場合よりも、酸の量が多
く、アミノ酸の少ないモロミを製造し、醸造酒において
は酸味のあるすっきりとした酒類が製造され、蒸留酒に
おいては、酸の生成により腐造を予防することができ
る。以下、本発明の実施例について述べる。
【0012】
【実施例1:変異酵母の分離法】サッカロマイセス(Sa
ccharomyces)属セレビシエ(cerevisiae)に属する協
会9号清酒酵母(以下K−9と略す)を、YPD培地
(イーストエキス1% ペプトン2% グルコース2
%)に接種し、増殖させた後、無菌的に集菌洗浄し、そ
の0.1mlをブラスチシジンS(0.005mg/ml)を
含むYPD寒天培地に塗布し、30℃で培養し、生育し
たコロニーをブラスチシジンS(0.005mg/ml)を
含むYPD寒天培地に更に植え次いだ。
【0013】
【実施例2:ブラスチシジンS耐性酵母からの多酸・低
アミノ酸性酵母の分離】実施例1で分離したブラスチシ
ジンS耐性酵母33株について、麹抽出液30mlを用い
て30度、静置で発酵試験を行った。発酵液中のエタノ
ールは、アルコメイト(ウッドソン(株))を用いて測
定し、酸度は0.1N NaOHで、アミノ酸度は0.
1N NaOH、ホルマリン溶液(50%水溶液)を用
いて国税庁所定分析法にのっとり分析を行った。
【0014】一例としてK−9を示したが、他の協会7
号清酒酵母、協会10号清酒酵母等からも同様の方法で
ブラスチシジンS耐性酵母を分離できる。また、ブドウ
酒酵母も同様に処理することができ、例えばSaccharomy
ces cerevisiae IFO 1662等からもブラスチシジンS耐
性酵母を分離することができる。選択培地におけるブラ
スチシジンSの濃度としては、0.001〜0.02mg
/mlの範囲が一応の目安となるが、毒性等の悪影響が出
ないのであれば上記範囲よりも高濃度としてもよいし、
有効性が認められるのであれば上記範囲よりも低濃度と
してもよい。
【0015】下記表1で示したように親株の協会9号に
対し、ブラスチシジンS耐性酵母の約50%が酸度が高
くなり、且つアミノ酸度が低下した。以上のようにブラ
スチシジンS耐性酵母を分離することにより、そのなか
から高頻度で多酸・低アミノ酸となる酵母が得られた。
【0016】
【表1】
【0017】
【実施例3:変異酵母を用いた清酒の製造例】実施例1
により分離したブラスチシジンS耐性酵母(以下K−9
−BSDと略す)、及び親株であるK−9酵母を用い、
70%精米の白米を使用して、下記の表2に示す仕込配
合で三段仕込を行った。酵母には酵母懸濁液を用い(仕
込水1ml当たり5×106個)、添は15度、仲は12
度、留は9度で行い、翌日より15度になるまで1度/
日で品温を上げ、その後は15度一定で発酵させた。そ
の発酵経過は、図1に示すとおり親株とほとんど変わら
なかった。
【0018】
【表2】
【0019】ここで得られた清酒の成分を表3に示す。
表3に示したように、味に影響を与える酸度が上昇し、
アミノ酸度は低下した清酒が得られた。
【0020】
【表3】
【0021】
【発明の効果】実用酵母からその優れた醸造特性を損な
うことなく新しい性質を獲得した変異株を分離すること
は、一般に多くの労力を要する因難な作業である。本発
明は、ブラスチシジンS耐性酵母を分離するポジティブ
セレクションを基本としており、目的とする変異株のみ
効率的に分離できる。本分離法の活用は、実用酵母の育
種において極めて有効である。そして、このようにして
分離、育種して得た酵母を使用することにより、多酸・
低アミノ酸の酒類という従来未知の新規にして特徴ある
品質の酒類を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】親株(K−9)とブラスチシジンS耐性酵母
(K−9−BSD)の発酵経過を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 木崎 康造 広島県東広島市鏡山三丁目7番1号 国 税庁醸造研究所内 (72)発明者 高橋 康次郎 広島県東広島市鏡山三丁目7番1号 国 税庁醸造研究所内 (56)参考文献 特開 昭60−153787(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 1/00 - 1/38 C12G 3/00 - 3/14 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 サッカロマイセス・セレビシエ(Saccha
    romyces cerevisiae)に属する酵母より多酸・低アミノ
    酸の酒類を製造することのできる酵母を、選択培地とし
    てブラスチシジンS含有培地で生育した菌株から親株よ
    り多酸・低アミノ酸の酒類を製造することのできる酵母
    分離取得すること、を特徴とする多酸・低アミノ酸酒
    類製造用酵母の育種方法。
JP22611296A 1996-08-09 1996-08-09 多酸・低アミノ酸酒類製造用酵母の育種 Expired - Lifetime JP3321597B2 (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006238852A (ja) * 2005-03-07 2006-09-14 National Research Inst Of Brewing ペプチド輸送酵素遺伝子による酵母の形質転換法と当該遺伝子のプロモーター領域を用いたタンパク質の発現法

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JP2006238852A (ja) * 2005-03-07 2006-09-14 National Research Inst Of Brewing ペプチド輸送酵素遺伝子による酵母の形質転換法と当該遺伝子のプロモーター領域を用いたタンパク質の発現法

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