JP3319068B2 - 車両の安定度制御装置 - Google Patents

車両の安定度制御装置

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JP3319068B2
JP3319068B2 JP21634793A JP21634793A JP3319068B2 JP 3319068 B2 JP3319068 B2 JP 3319068B2 JP 21634793 A JP21634793 A JP 21634793A JP 21634793 A JP21634793 A JP 21634793A JP 3319068 B2 JP3319068 B2 JP 3319068B2
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  • Output Control And Ontrol Of Special Type Engine (AREA)
  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は車両の安定度制御装
置、特にエンジンの回転変動から車両の安定度を検出
し、これが許容レベルに収まるようにリーンバーンエン
ジンの空燃比や排気還流量をフィードバック制御するも
のに関する。
【0002】
【従来の技術】リーン空燃比では理論空燃比と同一のト
ルクを発生するのに空気量が大きくなってポンピングロ
スが減ること、およびリーン空燃比のほうが燃焼ガスの
比熱比が大きくなることのため、リーン空燃比で運転し
たほうが燃費が向上し、かつリーン空燃比ではNOxが
もともと少ないこともあって、一定の条件でリーン側の
空燃比を目標値として空燃比のフィードバック制御を行
うものがある(特開平2−27232号公報参照)。
【0003】これを説明すると、リーン条件では燃焼が
不安定に陥りやすく、この燃焼の不安定に伴ってサージ
が生じるので、サージトルクのレベルが安定限界レベル
に近くなるようにリーン条件での目標空燃比を設定しな
ければならない。しかしながら、燃料噴射弁やエアフロ
ーメータの特性のバラツキ、経時変化などにより、空燃
比がリーン側にずれるとサージトルクが安定限界を越
え、この逆にリッチ側にずれたときは燃費が改善され
ず、NOxも増える。
【0004】そこで、リーン空燃比域で回転数信号から
サージトルクのレベルを推定し、これが安定限界レベル
に近づくように空燃比をフィードバック制御すること
で、燃料噴射弁やエアフローメータにバラツキがあった
り、環境条件が変化したりしても、サージトルクのレベ
ルを安定限界レベルの近くに維持しつつ、燃費の向上と
NOxの低減とがはかれるのである。
【0005】また、加減速時には、上記のフィードバッ
ク制御を禁止することで、加減速時の回転変動に伴うト
ルク変動がサージトルクとして誤検出されることを防止
している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、燃焼の不安
定に起因して車両にサージが発生した後は、燃焼が安定
する方向への安定度制御が行われるが、一度発生した車
両のサージはすぐには収まらず、燃焼自体が安定した後
も車両のサージが続くことがある。このような場合、車
両のサージを抑えるまでは燃焼をより安定させる向きへ
と制御する必要がある。
【0007】しかしながら、エンジンと車両とが直結状
態にないきには、車両のサージと無関係にエンジンの
燃焼安定度のみによって制御が行われてしまうことにな
る。
【0008】たとえば、トルクコンバータにより常時流
体を仲介にして動力の伝達を行うトルクコンバータに
は、常にわずかであるがすべりを生じ、これがA/T車
(自動変速機付き車両のこと)の燃費の悪さにつながる
ので、トルクコンバータの入力軸と出力軸を直結状態と
する、いわゆるロックアップ機構が設けられ、高速走行
時などのロックアップ領域になると、ロックアップ機構
が働く。この場合に、車両からのエンジン回転変動への
影響(車両前後の加速度による)が大きく出るロックア
ップ時から非ロックアップ時になると、車両の安定度は
同じでありながら、検出されるエンジンの回転変動が小
さくなることから、車両の安定度が向上する側に変化し
たわけでもないのに空燃比がリーン側に誤判断されるの
である。
【0009】同様にして、M/T車(手動変速機付き車
両のこと)でも、空吹かしでエンジンの回転が安定した
ときにも、車両が安定する側に変化したと誤判断され
る。
【0010】そこでこの発明は、エンジンと車両の駆動
系とが非直結状態にあるかどうかを判定し、非直結状態
で安定度のフィードバック制御を禁止することにより、
A/T車での非ロックアップ時やM/T車におけるクラ
ッチの非接続時に誤判断が生じないようにすることを目
的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、図1に示
すように、車両からのエンジン回転変動への影響に応じ
た車両の安定度をエンジンの回転変動から検出する手段
31と、運転条件信号がリーン条件であるかどうかを判
定する手段32と、この判定結果よりリーン条件で理論
空燃比よりリーン側の値を目標空燃比とするとともに、
前記安定度の検出値が所定の安定度目標値と一致するよ
うに空燃比のフィードバック制御を行う手段33と、エ
ンジンと車両駆動系とが非直結状態であるかどうかを判
定する手段34と、この判定結果より非直結状態で前記
空燃比のフィードバック制御を禁止する手段35とを設
けた。
【0012】第2の発明は、図24に示すように、第1
の発明において、前記フィードバック制御手段33を、
リーン条件で理論空燃比よりリーン側の目標空燃比Md
mlを算出する手段41と、前記安定度の検出値が所定
の安定度目標値と一致するように空燃比補正量Lldm
lを算出する手段42と、この空燃比補正量Lldml
で前記リーン条件での目標空燃比Mdmlを修正する手
段43と、この修正された目標空燃比Tdmlにもとづ
いて燃料噴射量を算出する(たとえばほぼ理論空燃比の
得られる基本噴射量Tpをエンジンの負荷と回転数の検
出値に応じて算出するとともに、この基本噴射量Tpを
この修正された目標空燃比Tdmlで補正して燃料噴射
量を算出する)手段44と、この燃料噴射量を吸気管に
供給する手段45とから構成する。
【0013】第3の発明は、図25に示すように、車両
からのエンジン回転変動への影響に応じた車両の安定度
をエンジンの回転変動から検出する手段31と、運転条
件信号がEGR条件であるかどうかを判定する手段51
と、この判定結果よりEGR条件で運転条件信号に応じ
た値を目標EGR率とするとともに、前記安定度の検出
値が所定の安定度目標値と一致するようにEGR率のフ
ィードバック制御を行う手段52と、エンジンと車両の
駆動系とが非直結状態であるかどうかを判定する手段3
4と、この判定結果より非直結状態で前記EGR率のフ
ィードバック制御を禁止する手段53とを設けた。
【0014】第4の発明は、図26に示すように、第3
の発明において、前記フィードバック制御手段72を、
EGR条件で運転条件信号に応じた目標EGR率MEG
Rを算出する手段61と、前記安定度の検出値が所定の
安定度目標値と一致するようにEGR率補正量LlEG
Rを算出する手段62と、このEGR率補正量LlEG
Rで前記EGR条件での目標EGR率MEGRを修正す
る手段63と、この修正された目標EGR率TEGRに
もとづいてEGR通路の流量制御弁の開度を制御する手
段64とから構成する。
【0015】第5の発明は、第1の発明から第4の発明
のいずかにおいて、前記非結合状態判定手段34を、エ
ンジンの回転数を検出するセンサ71と、変速機のギヤ
位置を検出するセンサ72と、これらギヤ位置とエンジ
ン回転数の検出値から車速予測値VSPeを算出する手
段73と、実際の車速を検出するセンサ74と、この実
車速VSPと前記車速予測値VSPeとを比較して両者
の差の絶対値が所定値βを越えたとき非直結状態である
と判定する手段75とから構成する。
【0016】
【作用】リーン条件で理論空燃比よりリーン側の値を目
標空燃比として、車両の安定度の検出値が安定度目標値
と一致するように空燃比のフィードバック制御が行われ
ると、燃料噴射弁やエアフローメータのバラツキや環境
条件の変化(たとえば吸気温度、湿度の変化)にかかわ
らず、従来と同様に、車両の安定度の検出値を安定度目
標値に落ち着けつつ、燃費の向上とNOxの低減とがは
かれる。
【0017】一方、A/T車では、非ロックアップ時
(非直結状態)にロックアップ時(直結状態)より回転
変動が小さくなり、またM/T車ではクラッチの非接続
時(あるいは半クラッチ時)にクラッチの接続時(直結
状態)より回転変動が小さくなることがあり、これら非
ロックアップ時やクラッチの非接続時といった非直結状
態でも直結状態と同じにフィードバック制御が行われる
と、車両の安定度は変わらないのに空燃比がリーン側に
誤って制御され、直結状態に戻ったときに運転性が悪く
なるのであるが、第1の発明で非直結状態が判定された
ときフィードバック制御が禁止されることから、非直結
状態で空燃比をリーン側に誤って制御してしまうことが
避けられる。この結果、エンジンと車両駆動系とが直結
されないことに伴う回転変動の減少があっても、直結状
態に戻った直後の運転性が悪くなることがない。
【0018】第2の発明で、エンジンの安定度の検出値
が安定度目標値と一致するように算出された空燃比補正
量Lldmlでリーン条件での目標空燃比Mdmlが修
正され、この修正された目標空燃比にもとづいて燃料噴
射量が算出されると、理論空燃比を目標として空燃比を
フィードバック制御する従来の構成やこの制御に使われ
るマップ(たとえばリーン条件での目標空燃比のマッ
プ)の値などをそのまま用いることができ、マップ作成
のための工数が減る。
【0019】排気を吸気管に再循環するEGR装置を備
えたエンジンでは、燃焼を悪化させない範囲で新気に対
するEGRガスの比率(つまりEGR率)を大きくする
ことが燃費の向上とNOxの低減に有効となるが、第3
の発明でEGR条件での運転条件信号に応じた値を目標
EGR率として、車両の安定度の検出値が安定度目標値
と一致するようにEGR率のフィードバック制御が行わ
れると、EGRガス量を制御する流量制御弁の流量バラ
ツキや環境条件の変化にかかわらず、最適なEGR率と
することができるほか、エンジンと車両駆動系とが直結
されないことに伴う回転変動の減少があっても、直結状
態に戻った直後の運転性が悪くなることがなく、またE
GR率が誤制御されることがないので、NOxの増加を
防止できる。
【0020】第4の発明で、エンジンの安定度の検出値
が安定度目標値と一致するように算出されたEGR率補
正量LlEGRでEGR条件での運転条件信号に応じた
目標EGR率MEGRが修正され、この修正された目標
EGR率でEGR通路の流量制御弁の開度が制御される
と、あらかじめ運転条件信号に応じてマッチングされた
値を用いてEGR率のオープン制御を行う従来の構成や
この制御に使われるマップの値などをそのまま用いるこ
とができる。
【0021】第5の発明で実車速VSPと前記車速予測
値VSPeとを比較して両者の差の絶対値が所定値βを
越えたとき非直結状態であると判定されると、A/T車
での非直結状態(つまり非ロックアップ時)をロックア
ップ信号から判定する場合やM/T車でクラッチペダル
の踏み込み量などから非直結状態を判定する場合に比べ
て、経時劣化でクラッチに大きなすべりが生じている場
合にも非直結状態であると判断することができ、非直結
状態であるかどうかの判断の精度がよくなる。
【0022】
【実施例】図2において、エアクリーナ11から吸入さ
れた空気は、一定の容積を有するコレクタ部12aにい
ったん蓄えられ、ここから分岐管をへて各気筒に流入す
る。各気筒の吸気ポート12bには燃料噴射弁3が設け
られ、この噴射弁3からエンジン回転に同期して間欠的
に燃料が噴射される。
【0023】噴射弁3からの噴射時間が長くなれば噴射
量が多くなり、噴射時間が短くなれば噴射量が少なくな
る。混合気の濃さつまり空燃比は、一定量の吸入空気に
対する燃料噴射量が多くなればリッチ側にずれ、燃料噴
射量が少なくなればリーン側にずれる。したがって、コ
ントロールユニット2で吸入空気量との比が一定値とな
るように燃料の基本噴射量を決定してやれば運転条件が
違っても同じ空燃比が得られる。燃料の噴射がエンジン
の1回転について1回行われるときは、1回転で吸い込
んだ空気量に対して基本噴射パルス幅Tpをそのときの
吸入空気量とエンジン回転数とから求めるのである。通
常このTpにより決定される空燃比は理論空燃比付近に
なっている。
【0024】一定の条件が成立すると、コントロールユ
ニット2では、空燃比目標値を理論空燃比からリーン側
の空燃比に切換える。この切換時に補助空気流量を増量
補正(理論空燃比への切換時は減量補正)することによ
って、切換の前後でトルクが同一となるようにトルク制
御を行うわけで、そのため吸気絞り弁5をバイパスする
補助空気通路21に大流量の流量制御弁22が設けられ
ている。この制御弁22は比例ソレノイド式で、コント
ロールユニット2からのオンデューティ(一定周期のO
N時間割合)が大きくなるほど通路21を流れる補助空
気流量が増加する。
【0025】なお、リーン空燃比域での燃焼不安定によ
り増加するCO,HCを抑えるため、燃焼室内に流れ込
む吸気にスワールが与えられるよう、吸気ポート12b
の近くに、一部に切欠き(図示せず)を有するスワール
コントロールバルブ13を設けている。リーン空燃比域
でスワールコントロールバルブ13を全閉位置にして吸
気を絞ることにより吸気の流速を高め、燃焼室内にスワ
ールを生じさせるのである。理論空燃比域では排気管1
8に設けた三元触媒19によってNOxを浄化する。
【0026】コントロールユニット2ではまた、リーン
空燃比域において、エンジンの安定度を回転変動から検
出し、このエンジンの安定度の検出信号がスライスレベ
ル(安定度目標値)と一致するように空燃比補正量を更
新し、この補正量でリーン空燃比域での目標空燃比の基
本値(マップ値)を補正する。この安定度のフィードバ
ック制御により、エンジンが不安定にならない限界近く
のリーン空燃比でエンジンが運転されることになり、エ
ンジンを安定させつつ燃費をよくするのである。
【0027】しかしながら、エンジンと車両駆動系とが
直結状態になく、車両からのエンジン回転変動への影響
がないことに起因して、回転変動が小さくなったとき
も、車両の安定度がよくなったとして空燃比補正量を、
空燃比をリーン側にする向きに誤って更新したのでは、
直結状態に戻った直後に運転性が悪くなる。
【0028】これに対処するため、コントロールユニッ
ト2では、エンジン回転数とギア位置から車速予測値を
算出し、この車速予測値と実際の車速との両者の差の絶
対値と所定値を比較して両者の差が所定値を越えたらエ
ンジンと車両の駆動系とが非直結状態であると判断し、
安定度のフィードバック制御を禁止する。
【0029】このため、ギヤ位置を検出するインヒビタ
ースイッチ、車速センサからの信号が、安定度制御に必
要となるセンサからの信号(4はエアクリーナから吸入
される空気量Qaを検出する熱線式エアフローメータ、
6はスロットルセンサ、7は単位クランク角度ごとの信
号とクランク角度の基準位置ごとの信号とを出力するク
ランク角センサ、8は水温センサ)とともにマイコンか
らなるコントロールユニット2に入力されている。
【0030】なお、燃料制御は目標空燃比をめざして行
い、空気流量の検出値から最終的に供給燃料量を求めて
いることを考えると、(空気流量)×(燃空比)=(供
給燃料量)の関係が成立することから、燃空比のほうが
空燃比より扱いやすいため、以下では一部の数値に燃空
比を用いている。
【0031】[1]回転変動の算出 燃焼の不安定によって回転変動が生じるため、REF間
周期(クランク角度の基準信号REFの間の周期)を測
定し、このREF間周期のうち最新値と前回値の加算値
にもとづいて気筒別の回転数を算出し、この気筒別回転
数の変動から燃焼の安定度を推定する。
【0032】図4において、REF間周期Refからエ
ンジン1回転区間の周期Refrvを、 Refrv=Ref+Refn-1 …(1) ただし、Refn-1;前回のREF間周期 の式で求め(図4のステップ21)、これを Nerv=KN#/Refrv …(2) ただし、KN#;周期→回転数への変換定数 の式で気筒別回転数Nervに変換する(図4のステッ
プ23)。
【0033】なお、(1)式が導かれる理由は次の通り
である。4気筒エンジン(点火順序を#1−#3−#4
−#2とする)について各気筒の燃焼圧力と回転変動の
関係ならびに基準信号REF(180°CAごとに立ち
上がる)を図5に示す。各気筒の燃焼による回転変動は
180°CA(エンジン半回転のクランク角)ごとに点
火順序にしたがって生じるのに対し、基準信号REFが
圧縮上死点(図ではTDC)の前の所定のクランク角
(たとえば110°CA)で立ち上がると、1つの燃焼
区間とその燃焼の行われる気筒のREF間周期とが時間
的にずれている。
【0034】いま仮に#3気筒で代表させれば、#3気
筒の燃焼による回転変動(#3TDCから#4TDCま
で)は、#3REF間周期と#4REF間周期の2周期
にまたがるため、#3気筒の燃焼が寄与するクランク角
範囲は、#4REF間周期のうち110°CAの部分
(図でから#4TDCまで)と#3REF間周期のう
ち70°CAの部分(#3TDCからまで)とであ
る。この寄与割合をそれぞれk1,k2とすれば、 k1=110/180 …(1.1) k2=70/180 …(1.2) であり、#3気筒の半回転区間周期は #3気筒の半回転区間周期 =#4REF間周期×k1+#3REF間周期×k2 …(1.3) の式で表すことができる。
【0035】ここで、REF間周期は点火順に求まるた
め、(1.3)式において今回求まるREF間周期の最
新値Refを#4気筒に対応づければ、REF間周期の
前回値Refn-1が#3気筒に対応し、また#4気筒を
現気筒(現時点の気筒)として考えれば、#3気筒は前
気筒(現気筒より点火順序で1つ前の気筒)であるか
ら、(1.3)式は 前気筒の半回転区間周期=Ref×k1+Refn-1×k2 …(1.4) と書き直すことができる。
【0036】(1.4)式は#4気筒を現気筒として考
えた式であるが、#2,#1,#3気筒を現気筒として
も(1.4)式と同じ式になる。
【0037】上記の寄与割合k1,k2は、各気筒で燃焼
がTDC(圧縮上死点)から始まるとしたときのもので
あるが、実際の燃焼はTDC前から始まることを考慮す
ると、燃焼開始クランク角による補正が必要で、このと
きは上記の(1.1),(1.2)式に代えて、 k1=(110−燃焼開始クランク角)/180 …(1.5) k2=(70+燃焼開始クランク角)/180 …(1.6) の式を用いなければならない。たとえば、燃焼開始クラ
ンク角の平均値を圧縮上死点前20°CAとすれば、 k1=(110−20)/180=0.5 …(1.7) k2=(70+20)/180=0.5 …(1.8) であるから、(1.4)式は、 前気筒の半回転区間周期 =Ref×0.5+Refn-1×0.5 …(1.9) となる。
【0038】実際には着火のタイミングを知ることは困
難なため点火時期を上記の燃焼開始クランク角の相当値
として採用する。
【0039】(1.9)式の両辺を2倍にして、 前気筒の1回転区間周期=Ref+Refn-1 …(1.10) この(1.10)式が(1)式のことである。つまり、
(1)式のRefrvは前気筒の1回転区間周期を表す
ので、(1)式によりREF間周期の最新値(Ref)
と前回値(Refn-1)の加算値を(2)式により回転
数単位に変換することで、気筒別回転数を求めることが
できるのである。
【0040】なお、2つのREF間周期(REF間周期
の現在値と前回値)を測定区間として図6に示すと、同
図のように、測定区間が点火順序で隣接する2つの気筒
間で測定区間をオーバーラップさせながらずれていく。
このようにして気筒別回転数を求めると、気筒間バラツ
キによる回転変動を燃焼の不安定による回転変動である
と誤認することがない。
【0041】なお、(1.9)式によれば結果としてk
1とk2とが等しく(ともに0.5)なってしまったが、
これは、 〈イ〉直列4気筒エンジンであること 〈ロ〉REFが圧縮上死点前110°CAで立ち上がる
こと 〈ハ〉燃焼開始クランク角が圧縮上死点前20°CAで
あること の3つの条件をすべて満足するときに限るもので、これ
ら条件のうちの1つでも欠ければ、k1≠k2になる。
【0042】上記(2)式の気筒別回転数Nervから
は Dnerv=Nerv−Nervn-4 …(3) ただし、Nervn-4;4回前のNerv の式で気筒別の回転変化量Dnervを算出する(図4
のステップ25)。
【0043】(2)式の気筒別回転数Nervがたとえ
ば#1気筒(前気筒)のものであるときは、Nerv
n-1(1回前の値)は#2気筒の、Nervn-2(2回前
の値)は#4気筒の、Nervn-3(3回前の値)は#
3気筒のものであるため、#1気筒について回転変化量
を求めるには、(3)式で4回前の値(つまり1サイク
ル前の値)を用いなければならないのである。このよう
に、気筒別回転数のうちの最新値と1サイクル前の値と
の差を気筒別回転変化量Dnervとして求めること
で、気筒間のバラツキを燃焼の不安定による回転変動と
誤認しないようにするわけである。
【0044】なお、(2)式の計算の前に旧Nervの
シフトを行う(図4のステップ22)。これは1回転前
のデータを2回前のRAMに、2回転前のデータを3回
前に、3回転前のデータを4回前にと逐次移し替える操
作である。この旧Nervのシフトによって、気筒別回
転数が記憶されることから、後述するエンジン回転数N
eを、 Ne=(Nerv+Nervn-1+Nervn-2+Ner
n-3)/4 の式で全気筒のエンジン回転数の平均値として求めるこ
とができる。
【0045】旧Dnervのシフトも旧Nervのシフ
トと同様である(図4のステップ24)。
【0046】(3)式の気筒別回転変化量Dnervか
らは Llj=Dnerv−Dnervn-1 …(4) ただし、Dnervn-1;1回前のDnerv の式で気筒別回転変化量の変化量をトルク変動相当値L
ljとして求める(図4のステップ26)。
【0047】(3)式のDnervはある気筒について
前回の燃焼時の1回転周期と今回の燃焼時の1回転周期
の間に生じた回転変化量であるから、(4)式のLlj
は燃焼に伴う疑似的なトルク変動量に相当するわけであ
る。
【0048】トルク変動相当値Lljにはバンドパスフ
ィルター処理を行い、結果をデジタルフィルター処理出
力Lljdとしてストアする(図4のステップ27,2
8)。バンドパスフィルター処理は、ソフトウエアで行
うため、連続系から離散系に変換した式を用いる。周波
数としては車両のドライバーがサージとして感じやすい
周波数(3〜7Hz)とすればよい。
【0049】[2]安定度のフィードバック制御を行う
かどうかの判定 リーン条件では安定度信号であるデジタルフィルター処
理出力Lljdがスライスレベル(安定度目標値)と一
致するように空燃比をフィードバック制御するのである
が、過渡運転時などの燃焼不安定以外の要因で回転変動
が生じ、燃焼の不安定による回転変動と誤認されるよう
なときや、車両の安定度とエンジン回転変動とが無関係
となるようなときは、フィードバック制御を禁止する。
具体的には、図7に示したように以下の〈1〉〜〈5〉
の条件のいずれかでも成立するときはフィードバック制
御の禁止フラグを“1”にする(図7のステップ3
6)。なお、図ではフィードバックをF/Bで示してい
る。
【0050】〈1〉リーン条件でないこと(図7のステ
ップ31)。リーン条件は、たとえば冷却水温が80℃
以上あること、スロットルセンサ6からの絞り弁開度が
所定値以下であること、車速変化が所定値以下であるこ
とのすべての条件を満たしたときである。
【0051】〈2〉空燃比の切換中であること(図7の
ステップ32)。たとえば、後述するDml(目標燃空
比のダンパ値)とTdml(目標燃空比のマップ補正
値)とが同一でないとき切換中であると判断する。
【0052】〈3〉ギヤ位置<所定値LLGR#である
こと(図5のステップ33)。ギヤ位置として高速ギヤ
位置になるほど大きな値を割り付けており(たとえば1
速、2速、3速、4速に対応して1,2,3,4)、ギ
ヤ位置<LLGR#でフィードバック制御を禁止する。
これは、低速ギヤ走行ではエンジンの回転変化が速く安
定度への外乱となるため、フィードバック制御を禁止す
るようにしたものである(たとえば1速で禁止)。
【0053】〈4〉実際の車速VSP〔km/h〕と車
速予測値VSPe〔km/h〕の両者の差の絶対値が所
定値βを越えること(図7のステップ34)。車速予測
値VSPe〔km/h〕はギヤ位置とエンジン回転数N
e〔rpm〕から予測される車速のことで、 VSPe=Ne・2・π・R・3.6/(60・Nt) ただし、Nt;トータルギヤ比 R;タイヤ有効半径〔m〕 の式で計算することができる。なお、3.6は〔m/
s〕の単位で計算された車速を〔km/h〕の単位に変
換するための係数である。
【0054】非ロックアップ時には|VSP−VSPe
|>βとなる。非ロックアップ時はトルクコンバータの
入力軸と出力軸とが直結されるロックアップ時とくらべ
て、車両からのエンジン回転への影響が小さくなる(回
転変動が小さくなる)が、これは燃焼自体の安定による
ものでない。ロックアップ機構の作動から非作動への切
換で回転変動が減少するときにも燃焼の安定によって回
転変動が減少したと誤判断するのを避けるため、非ロッ
クアップ時にフィードバック制御を禁止するのである。
【0055】〈5〉 上記の〈1〉から〈4〉までがす
べて成立しない場合において、経過時間が所定値TML
LC#以内であること(図7のステップ35)。条件成
立でフィードバック制御にすぐに入る(あるいは再開す
る)のでなくTMLLC#の時間待ってフィードバック
制御に入るのであるから、これは遅延処理である。遅延
処理を行うのは、安定度信号としてのLljdがフィル
ター処理出力であるため、外乱の影響を受けたとしても
すぐには出力が安定しないこと、またギヤチェンジなど
で発生した回転変動は車両の振動系の影響で瞬時にはな
くならないこと、さらに非ロックアップ時からロックア
ップ時に切換えられてすぐには回転変動が安定しないこ
とにより、安定したフィードバック制御を行うには、遅
延処理を行ったほうがよいためである。
【0056】上記の〈1〉から〈5〉までの条件が成立
しない場合にフィードバック制御の禁止フラグを“0”
にしてフィードバック制御に入る(図7のステップ3
7)。
【0057】[3]安定化燃空比補正係数の計算 図8において、安定度信号(デジタルフィルター処理出
力Lljd)を180度ごとにサンプリングするととも
に、サンプル数をカウントする(図8のステップ4
1)。
【0058】このカウント値と比較するサンプル数(安
定化燃空比補正係数の更新周期相当値)Lを図9を内容
とするテーブルを参照して求める(図8のステップ4
2)。
【0059】L個のサンプル数がでそろうと更新のタイ
ミングになったと判断し、サンプルデータの合計をLで
除算した値からスライスレベルSLを差し引き、その差
し引いた値から図10を内容とするテーブルを参照して
更新量Dlldmlを求め、この値を用いて、 Lldml=Lldmln-1+Dlldml …(6) ただし、Lldmln-1;1回前のLldml の式で安定化燃空比補正係数Lldmlを更新する(図
8のステップ43,44,45,46)。
【0060】(6)式の更新量Dlldmlは、図10
に示したように、(サンプルデータ合計/L−SL)が
正の領域で(サンプルデータ合計/L−SL)に応じて
大きく、また(サンプルデータ合計/L−SL)が負の
領域で|サンプルデータ合計/L−SL|に応じて負の
値で大きくしている。
【0061】なお、安定化燃空比補正係数Lldmlに
より空燃比が変更されるので、図10において(サンプ
ルデータ合計/L−SL)が小さい範囲でも更新量Dl
ldmlを与えると、空燃比の変更によるトルク変動が
生じる。これを防止するため、図10においては不感帯
(サンプルデータ合計/L−SL)の値が0を中心とす
る所定の範囲にあるときDlldml=0とする領域)
を設けている。
【0062】最後に、安定化燃空比補正係数Lldml
が最小値の0以下になったときは、Lldml=0に、
またLldmlが最大値LLDMMX#以上になると、
Lldml=LLDMMX#とする。
【0063】[4]目標燃空比の算出 まず、目標燃空比のマップ値補正と目標燃空比のダンパ
値Dmlの計算とは、図3に示したようにクランク角度
で180度ごとに実行する(図3のステップ6〜1
1)。
【0064】[4−1]目標燃空比のマップ値補正 上記のようにして得た安定化燃空比補正係数Lldml
から目標燃空比のマップ補正値Tdmlを、 Tdml=Mdml×Lldml …(7) ただし、Mdml;目標燃空比のマップ値 の式で計算する(図3のステップ6)。
【0065】(7)式の目標燃空比のマップ値(目標空
燃比の基本値)Mdmlは、リーン条件とリーン条件で
ないときとで異なるため、図12に示したようにリーン
条件では図13を内容とするMDMLLマップ(リーン
マップのこと)を参照し、その参照した値を、またリー
ン条件でないときは図14を内容とするMDMLSマッ
プ(非リーンマップのこと)を参照し、その参照した値
をそれぞれ変数Mdmlに入れることになる(図12の
ステップ82,83、ステップ82,84)。図13,
図14において1.0のマップ値が理論空燃比相当で、
これより値が小さいとリーン側の空燃比に、この逆にこ
れより値が大きいとリッチ側の空燃比になるわけであ
る。
【0066】[4−2]目標燃空比のダンパ値Dml ダンパ値Dmlの波形は、図15に示したように、空燃
比の切換時にステップ変化するマップ補正値Tdmlに
対して、ランプ応答にしたものである。具体的には図3
のように、リーン方向への空燃比変化速度をDmll、
リッチ方向への空燃比変化速度をDmlrとすれば、ダ
ンパ値Dmlとマップ補正値Tdmlの比較によりいず
れの方向への変化であるかがわかるため、Dml<Td
mlであればリッチ方向への空燃比の切換であるとし
て、ダンパ値Dmlを Dml=Dmln-1+Dmlr ただし、Dmln-1;1回前のDml の式により更新し、DmlがTdmlを越えるときはD
ml=Tdmlとする(図3のステップ7,8,9)こ
とで、理論空燃比への切換時のダンパ値が得られる。ま
た、Dml≧Tdmlのときはリーン空燃比への切換時
であるからダンパ値Dmlを Dml=Dml−Dmll の式で更新し、Dml<TdmlでDml=Tdmlと
する(図3のステップ7,10,11)。
【0067】このように空燃比の切換時にダンパ処理を
行うのは、空燃比の緩やかな切換によりトルクの急激な
変化を防止して運転性能を適切にするためである。
【0068】[4−3]目標燃空比Tfbya これは、 Tfbya=Dml+Ktw+Kas …(8) ただし、Ktw;水温増量補正係数 Kas;始動後増量補正係数 の式により計算する(図11のステップ71)。
【0069】(8)式の始動後増量補正係数Kasは、
クランキング中はその値が冷却水温に応じて定まり、エ
ンジン始動直後より時間とともに徐々に減少する値、水
温増量補正係数Ktwは冷却水温からテーブルを参照し
て求める値で、いずれも公知である。(8)式より冷間
始動直後の暖機中は、ダンパ値Dmlが1.0(つまり
理論空燃比相当)にあり、暖機中の空燃比が暖機時増量
(KmrとKtw)によって理論空燃比よりもリッチ側
にシフトするわけである。
【0070】なお、広域空燃比センサ9が十分活性化し
たこと、始動後増量がなくても運転性に問題がでない程
度に始動後時間が経過したこと、水温Twが所定値以上
になったことのすべてを満たしたとき、空燃比センサ9
にもとづく空燃比のフィードバック制御を開始する。こ
の空燃比フィードバック制御条件ではTfbya=1.
0となり、三元触媒19が最大限に活用される。
【0071】また、リーン条件が成立し、燃焼の安定度
にもとづく空燃比のフィードバック制御が行われるとき
は、後述する空燃比フィードバック補正係数αが1.0
にクランプされ、目標燃空比Tfbyaを介して、安定
化燃空比補正係数Lldmlによる安定度制御が行われ
る。
【0072】[5]燃料噴射パルス幅の計算 これは、図11に示したように10msの周期で実行す
る。
【0073】各インジェクタ4に出力する燃料噴射パル
ス幅Tiは Ti=(Avtp+Kathos)×Tfbya×(α+αm)+Ts …(9) ただし、Avtp;シリンダ空気量相当パルス幅 Kathos;壁流補正量 α;空燃比フィードバック補正係数 αm;空燃比学習補正係数 Ts;無効パルス幅 の式で与える(図11のステップ75)。
【0074】ここで、(9)式のシリンダ空気量相当パ
ルス幅Avtpは、 Avtp=Tp×Fload+Avtpn-1×(1−Fload) …(10) ただし、Tp;基本噴射パルス幅 Avtpn-1;前回のAvtp Fload;加重平均係数 の式により基本噴射パルス幅Tpをなました値(図11
のステップ74)、またTpはエアフローメータ出力を
A/D変換した後リニアライズして求めた吸入空気流量
Qsから Tp=(Qs/Ne)×K#×Ktrm …(11) ただし、K#;基本空燃比を定める定数 Ktrm;インジェクタの流量特性より定まる定数 の式で計算した値である(図11のステップ72,7
3)。(9)、(10)、(11)式とも公知である。
【0075】(9)式の壁流補正量Kathosは、壁
流の低周波分(比較的ゆっくりと変化する壁流分のこ
と)の修正を目的とし、運転条件ごとに平衡付着量Mf
hを記憶しておき、過渡に伴う平衡付着量の変化を総補
正量として、燃料噴射ごとに所定の割合ずつシリンダ空
気量相当パルス幅Avtpに加算(減速時は減算)する
もので、これも公知である。たとえば、加速時は噴射量
を増量しなければならないが、どんなに霧化特性のよい
インジェクタといえども、燃料の一部は吸気マニホール
ド壁に付着し、吸気管壁を伝って液状のまま流れ(この
流れが壁流)、空気に乗せられた燃料より遅い速度でシ
リンダに流れる。つまり、壁流燃料によってシリンダに
吸入される混合気が一時的に薄くなるので、この一時的
な混合気の希薄化を防止するため、加速時は壁流補正量
Kathosだけ増量するのである。この逆に、マニホ
ールド圧が急激に高負圧になる減速時は、マニホールド
壁に付着していた燃料がいっせいに気化してくるため、
混合気が一時的に濃すぎになり、CO,HCが増加す
る。そこで、減速時はこの気化する壁流分を減量してや
るわけである。
【0076】なお、減速時や高回転時などの一定の燃料
カット条件になると(9)式のTiに代えて無効パルス
幅Tsをストアする(そうでなければTiを出力レジス
タにストアする(図11のステップ77,79、ステッ
プ77,78)ことで、噴射タイミングでの噴射に備え
る。
【0077】ここで、この例の作用をリーン条件が成立
している場合(このとき空燃比センサ9にもとづく空燃
比フィードバック制御は行われない)について説明す
る。
【0078】リーン条件では、安定度信号が安定度目標
値であるスライスレベルSLと一致するように、フィー
ドバック補正量(安定化燃空比補正係数Lldml)が
更新され、このフィードバック補正量で目標燃空比のマ
ップ値(Mdml)が補正される。たとえば、燃焼の安
定度が悪くなると、安定度信号であるデジタルフィルタ
ー処理出力Lljdが大きくなることから、安定化燃空
比補正係数Lldmlが大きくなる側に更新され、上記
の(7)式で目標燃空比のマップ補正値Tdmlも大き
くなる。これより空燃比がリッチ側にシフトされるた
め、燃焼の安定度がよくなり、デジタルフィルター処理
出力Lljdが今度は小さくなる側にずれる。こうした
安定度のフィードバック制御を繰り返すうちに、やがて
は安定度信号が安定度目標値に落ち着くわけである。
【0079】一方、非ロックアップ時にはトルクコンバ
ータの入力軸と出力軸とが直結されるロックアップ時よ
り安定度信号であるデジタルフィルター処理出力Llj
dが小さくなるので、この場合も、車両の安定度がよく
なったとして安定化燃空比補正係数Lldmlを小さく
なる側に更新したのでは、空燃比を誤ってリーン側に制
御することになる。非ロックアップ時は、ロックアップ
時より車両からのエンジン回転変動への影響が小さくな
った分に対応して安定度信号が小さくなっただけで、車
両の安定度そのものがよくなったわけでないからであ
る。
【0080】これに対してこの例で実際の車速と車速予
測値との両者の差の絶対値|VSP−VSPe|が所定
値βを越えることより非ロックアップ時であると判断さ
れると、安定度燃空比補正係数Lldmlの更新が禁止
される(つまり安定度信号にもとづくフィードバック制
御が禁止される)ことから、非ロックアップ時に安定度
燃空比補正係数Lldmlが誤って空燃比をリーンにす
る側に更新されることがない。
【0081】また、M/T車では空吹かしでエンジン回
転が安定したときにクラッチの接続時より安定度信号で
あるデジタルフィルター処理出力Lljdが小さくなる
ので、この場合も、車両の安定度がよくなったとして安
定化燃空比補正係数Lldmlを減少側(空燃比をリー
ン側にする向き)に更新したのでは、誤制御になるが、
|VSP−VSPe|>βより空吹かしが行われている
可能性があると判断し、安定度信号にもとづくフィード
バック制御を禁止することで、エンジンと車両駆動系と
が直結状態にないことに起因して生じる誤制御を防止す
ることができる。
【0082】なお、ロックアップ機構では、ロックアッ
プ信号(ロックアップソレノイドへのON,OFF信
号)によりトルクコンバータ内のロックアップピストン
を締結したり解除しているので、このロックアップ信号
から非ロックアップ時であるかどうかを判断することも
できる。しかしながら、経時変化でクラッチのすべり量
が大きくなると、非ロックアップ時と同じ状態になる
(つまりエンジンと車両の駆動系とが非直結状態にな
る)が、ロックアップ信号にもとづくときは、この場合
もロックアップ時と誤判断してしまう。これに対して|
VSP−VSPe|とβの比較により非ロックアップ時
であるかどうかを判断するときは、クラッチに大きなす
べりが生じている場合にも非直結状態であると判断され
ることになり、非直結状態であるかどうかの判断の精度
がよくなる。
【0083】M/T車では、クラッチの切断でONとな
るスイッチを設けておけば、このクラッチスイッチから
の信号でクラッチの非接続時(半クラッチ時について
も)であるかどうかを判断することもできる。
【0084】図16は、排気中の有害成分であるNOx
の発生を抑制するために吸気管に不活性の排出ガスを再
循環させる、いわゆるEGR装置で、この装置は、吸気
管101と排気管102を連通するEGR通路103、
この通路103のガス流量を調整するためのEGR弁1
04、EGR弁104への制御負圧を調整するための負
圧制御弁105から構成されている。
【0085】なお、負圧制御弁105は吸気絞り弁の下
流の吸気管負圧を通路105cを介し導いて一定圧の負
圧を作り出す定圧弁105aと、この一定圧の負圧に大
気を導入することによってEGR弁104への制御負圧
を作り出すソレノイド弁105bとからなっており、E
GR弁流量は、ソレノイド弁105bへのOFFデュー
ティ(一定周期の閉弁時間割合)にほぼ比例して定まる
(OFFデューティを大きくするほどEGR流量が多く
なる)ため、OFFデューティがソレノイド弁105b
への制御値として採用される。
【0086】このEGR装置では、EGR条件でEGR
弁を開いて一定量の排出ガス(EGRガス)を吸入空気
に混入させることにより燃焼時の最高温度を下げるので
あるが、EGR率(EGRガス量と新気量の比)の目標
値はエンジンの運転条件により異なるため、コントロー
ルユニット2では、運転条件に応じた目標EGR率とな
るように、ソレノイド弁105bへのOFFデューティ
を制御する。
【0087】この場合に、EGR弁104やソレノイド
弁105bなどの経時変化に伴い、実際のEGR率が目
標値からずれたり、環境条件(たとえば吸気温度や湿
度)が変化したりすると、燃焼の安定度が変化するが、
EGR率をフィードバック制御することで安定度制御を
行うことができる。コントロールユニット2において、
EGR条件になると、回転変動から検出した燃焼の安定
度の信号がスライスレベルSL以下に収まるようにEG
R率補正量を更新し、この補正量で目標EGR率の基本
値(マップ値)を補正することで、燃焼を安定させつつ
EGRを効率よく行うのである。
【0088】しかしながら、この例でも、非ロックアッ
プ時にはエンジンと車両駆動系とが直結状態にないこと
に起因して回転変動が小さくなることが考慮されてない
と、直結状態に戻った直後に運転性が悪化する可能性が
ある。また、EGR率が小さくなる側に誤って制御さ
れ、燃焼温度を十分に下げることができずにNOxが増
える。
【0089】そこでこの例でも、実車速VSPと車速予
測値VSPeとの両者の差の絶対値が所定値βを越える
ことより非ロックアップ時であると判断したとき、安定
度信号にもとづくフィードバック制御を禁止することで
(図18のステップ124,126)、先の実施例と同
様の作用効果が得られるのである。
【0090】図17〜図23にこの例の制御ルーチンと
このルーチンに使われるテーブルやマップの内容を現し
た特性図とを示すように、安定度制御の方法は先の実施
例と変わりない。
【0091】なお、これらを先の実施例と対応づける
と、図17が図3に、図18が図7に、図19が図8
に、図20が図10に、図21が図11に、図22が図
12に、図23が図13にそれぞれ対応し、図4、図1
3のルーチンと図5、図6、図9の特性図は、この例で
も共用することになる。
【0092】ただし、燃空比のときはこれを大きくする
ほど燃焼が安定するのに対し、EGR率のときは、燃空
比と逆になる(EGR率を大きくするほど燃焼が不安定
となる)ので、安定化EGR率補正係数の更新量Dll
EGRの特性(図20)は、安定化燃空比補正係数の更
新量Dlldmlの特性(図10)と逆にしている。な
お、図23のマップはEGR率〔%〕で示したが、EG
R弁開度でもかまわない。
【0093】
【発明の効果】第1の発明によれば、車両からのエンジ
ン回転変動への影響に応じた車両の安定度をエンジンの
回転変動から検出し、リーン条件で理論空燃比よりリー
ン側の値を目標空燃比とするとともに、前記安定度の検
出値が所定の安定度目標値と一致するように空燃比のフ
ィードバック制御を行う一方で、エンジンと車両駆動系
とが非直結状態になると前記空燃比のフィードバック制
御を禁止するように構成したため、空燃比をリーン側に
誤って制御してしまうことが避けられ、エンジンと車両
駆動系とが直結されないことに伴う回転変動の減少があ
っても、直結状態に戻った直後の運転性が悪くなること
がない。
【0094】第2の発明は、第1の発明において、前記
フィードバック制御手段を、リーン条件で理論空燃比よ
りリーン側の目標空燃比を算出する手段と、前記安定度
の検出値が所定の安定度目標値と一致するように空燃比
補正量を算出する手段と、この空燃比補正量で前記リー
ン条件での目標空燃比を修正する手段と、この修正され
た目標空燃比にもとづいて燃料噴射量を算出する手段
と、この燃料噴射量を吸気管に供給する手段とから構成
するため、第1の発明の効果に加えて、理論空燃比を目
標として空燃比をフィードバック制御する従来の構成や
この制御に使われるマップの値などをそのまま用いるこ
とができ、マップ作成のための工数を低減できる。
【0095】第3の発明は、車両からのエンジン回転変
動への影響に応じた車両の安定度をエンジンの回転変動
から検出し、EGR条件で運転条件信号に応じた値を目
標EGR率とするとともに、前記安定度の検出値が所定
の安定度目標値と一致するようにEGR率のフィードバ
ック制御を行う一方で、エンジンと車両駆動系とが非直
結状態になると前記EGR率のフィードバック制御を禁
止するように構成したため、エンジンと車両駆動系とが
直結されないことに伴う回転変動の減少があっても、直
結状態に戻った直後の運転性が悪くなることがなく、ま
たEGR率が誤制御されることがないので、NOxの増
加を防止することができる。
【0096】第4の発明は、第3の発明において、前記
フィードバック制御手段を、EGR条件で運転条件信号
に応じた目標EGR率を算出する手段と、前記安定度の
検出値が所定の安定度目標値と一致するようにEGR率
補正量を算出する手段と、このEGR率補正量で前記E
GR条件での目標EGR率を修正する手段と、この修正
された目標EGR率にもとづいてEGR通路の流量制御
弁の開度を制御する手段とから構成するため、第3の発
明の効果に加えて、EGR率をオープン制御する従来の
構成やこの制御に使われるマップの値などをそのまま用
いることができる。
【0097】第5の発明は、第1の発明から第4の発明
のいずかにおいて、前記非結合状態判定手段を、エンジ
ンの回転数を検出するセンサと、変速機のギヤ位置を検
出するセンサと、これらギヤ位置とエンジン回転数の検
出値から車速予測値を算出する手段と、実際の車速を検
出するセンサと、この実車速と前記車速予測値とを比較
して両者の差の絶対値が所定値を越えたとき非直結状態
であると判定する手段とから構成するため、第1の発明
から第4の発明のいずかの発明の効果に加えて、A/T
車での非直結状態をロックアップ信号から判定する場合
やM/T車でクラッチペダルの踏み込み量などから非直
結状態を判定する場合に比べて、経時劣化でクラッチに
大きなすべりが生じている場合にも非直結状態であると
判断することができ、非直結状態であるかどうかの判断
の精度がよくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明のクレーム対応図である。
【図2】一実施例のリーンバーンエンジンの制御システ
ム図である。
【図3】180度ジョブの流れ図である。
【図4】回転変動の算出を説明するための流れ図であ
る。
【図5】4気筒エンジンの場合の燃焼圧力、回転数、基
準信号の関係を示す波形図である。
【図6】測定区間を説明するための波形図である。
【図7】フィードバック制御条件の判定を説明するため
の流れ図である。
【図8】安定化燃空比補正係数Lldmlの算出を説明
するための流れ図である。
【図9】所定のサンプル数Lのテーブル内容を示す特性
図である。
【図10】安定化燃空比補正係数Lldmlの更新量D
lldmlのテーブル内容を示す特性図である。
【図11】10msecジョブの流れ図である。
【図12】バックグラウンドジョブの流れ図である。
【図13】リーンマップの内容を示す特性図である。
【図14】非リーンマップの内容を示す特性図である。
【図15】空燃比の切換時の波形図である。
【図16】他の実施例のEGR制御装置の制御システム
図である。
【図17】180度ジョブの流れ図である。
【図18】フィードバック制御条件の判定を説明するた
めの流れ図である。
【図19】安定化EGR率補正係数LlEGRの算出を
説明するための流れ図である。
【図20】安定化EGR率補正係数LlEGRの更新量
DllEGRのテーブル内容を示す特性図である。
【図21】10msecジョブの流れ図である。
【図22】バックグラウンドジョブの流れ図である。
【図23】目標EGR率のマップ値MEGRの内容を示
す特性図である。
【図24】第2の発明のクレーム対応図である。
【図25】第3の発明のクレーム対応図である。
【図26】第4の発明のクレーム対応図である。
【図27】第5の発明のクレーム対応図である。
【符号の説明】
2 コントロールユニット 3 燃料噴射弁(燃料供給手段) 4 エアフローメータ 6 スロットルセンサ 7 クランク角センサ 9 広域空燃比センサ 19 三元触媒 31 車両安定度検出手段 32 リーン条件判定手段 33 空燃比フィードバック制御手段 34 非直結状態判定手段 35 フィードバック制御禁止手段 41 目標空燃比算出手段 42 空燃比補正量算出手段 43 目標空燃比修正手段 44 燃料噴射量算出手段 45 燃料供給手段 51 EGR条件判定手段 52 EGR率フィードバック制御手段 53 フィードバック制御禁止手段 61 目標EGR率算出手段 62 EGR率補正量算出手段 63 目標EGR率修正手段 64 EGR弁開度制御手段 71 エンジン回転数センサ 72 ギア位置センサ 73 車速予測値算出手段 74 車速センサ 75 非直結状態判定手段 103 EGR通路 104 EGR弁 105b ソレノイド弁
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI F02D 45/00 301 F02D 45/00 301G 310 310M 362 362J F02M 25/07 550 F02M 25/07 550R (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F02D 41/00 - 41/40 F02D 43/00 - 45/00 F02D 29/00 - 29/06

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】車両からのエンジン回転変動への影響に応
    じた車両の安定度をエンジンの回転変動から検出する手
    段と、 運転条件信号がリーン条件であるかどうかを判定する手
    段と、 この判定結果よりリーン条件で理論空燃比よりリーン側
    の値を目標空燃比とするとともに、前記安定度の検出値
    が所定の安定度目標値と一致するように空燃比のフィー
    ドバック制御を行う手段と、 エンジンと車両駆動系とが非直結状態であるかどうかを
    判定する手段と、 この判定結果より非直結状態で前記空燃比のフィードバ
    ック制御を禁止する手段と を設けたことを特徴とする車両の安定度制御装置。
  2. 【請求項2】前記フィードバック制御手段を、リーン条
    件で理論空燃比よりリーン側の目標空燃比を算出する手
    段と、前記安定度の検出値が所定の安定度目標値と一致
    するように空燃比補正量を算出する手段と、この空燃比
    補正量で前記リーン条件での目標空燃比を修正する手段
    と、この修正された目標空燃比にもとづいて燃料噴射量
    を算出する手段と、この燃料噴射量を吸気管に供給する
    手段とから構成することを特徴とする請求項1に記載の
    車両の安定度制御装置。
  3. 【請求項3】車両からのエンジン回転変動への影響に応
    じた車両の安定度をエンジンの回転変動から検出する手
    段と、 運転条件信号がEGR条件であるかどうかを判定する手
    段と、 この判定結果よりEGR条件で運転条件信号に応じた値
    を目標EGR率とするとともに、前記安定度の検出値が
    所定の安定度目標値と一致するようにEGR率のフィー
    ドバック制御を行う手段と、 エンジンと車両の駆動系とが非直結状態であるかどうか
    を判定する手段と、 この判定結果より非直結状態で前記EGR率のフィード
    バック制御を禁止する手段と を設けたことを特徴とする車両の安定度制御装置。
  4. 【請求項4】前記フィードバック制御手段を、EGR条
    件で運転条件信号に応じた目標EGR率を算出する手段
    と、前記安定度の検出値が所定の安定度目標値と一致す
    るようにEGR率補正量を算出する手段と、このEGR
    率補正量で前記EGR条件での目標EGR率を修正する
    手段と、この修正された目標EGR率にもとづいてEG
    R通路の流量制御弁の開度を制御する手段とから構成す
    ることを特徴とする請求項3に記載の車両の安定度制御
    装置。
  5. 【請求項5】前記非結合状態判定手段を、エンジンの回
    転数を検出するセンサと、変速機のギヤ位置を検出する
    センサと、これらギヤ位置とエンジン回転数の検出値か
    ら車速予測値を算出する手段と、実際の車速を検出する
    センサと、この実車速と前記車速予測値とを比較して両
    者の差の絶対値が所定値を越えたとき非直結状態である
    と判定する手段とから構成することを特徴とする請求項
    1から4のいずれかに記載の車両の安定度制御装置。
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