JPH0734931A - エンジンの安定度制御装置 - Google Patents

エンジンの安定度制御装置

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JPH0734931A
JPH0734931A JP18407593A JP18407593A JPH0734931A JP H0734931 A JPH0734931 A JP H0734931A JP 18407593 A JP18407593 A JP 18407593A JP 18407593 A JP18407593 A JP 18407593A JP H0734931 A JPH0734931 A JP H0734931A
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JP
Japan
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fuel
value
fuel ratio
air
refueling
Prior art date
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Application number
JP18407593A
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English (en)
Inventor
Hiroshi Oba
大羽  拓
Hatsuo Nagaishi
初雄 永石
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Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Publication date
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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 給油直後のエンジンの始動性や始動後安定
性が悪くなることを防止する。 【構成】 更新手段34は、始動後増量補正中に限り燃
焼の安定度があらかじめ定めた上限値と下限値のあいだ
の許容レベルに収まるようにメモリ33に記憶されてい
る燃料性状学習値Gflを更新し、この学習値Gflと
目標空燃比マップ値と暖機時増量補正量とから算出手段
35が目標空燃比を算出する。バッテリバックアップ手
段38はメモリ33に記憶されている学習値をエンジン
の停止後もバッテリバックアップし、判定手段39が給
油直後の始動時であることを判定したときに限り補正手
段40が前記バッテリバックアップされた学習値を給油
補正係数で前記目標空燃比がリッチ側に向かう向きに補
正する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はエンジンの安定度制御
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】リーン空燃比では理論空燃比と同一のト
ルクを発生するのに空気量が大きくなってポンピングロ
スが減ること、およびリーン空燃比のほうが燃焼ガスの
比熱比が大きくなることのため、リーン空燃比で運転し
たほうが燃費が向上し、かつリーン空燃比ではNOxが
もともと少ないこともあって、一定の条件でリーン側の
空燃比を目標値として空燃比のフィードバック制御を行
うものがある(特開平2−27232号公報参照)。
【0003】これを説明すると、リーン条件では燃焼が
不安定に陥りやすく、この燃焼の不安定に伴ってサージ
が生じるので、サージトルクのレベルが安定限界レベル
に近くなるようにリーン条件での目標空燃比を設定しな
ければならない。しかしながら、燃料噴射弁やエアフロ
ーメータの特性のバラツキ、経時変化などにより、空燃
比がリーン側にずれるとサージトルクが安定限界を越
え、この逆にリッチ側にずれたときは燃費が改善され
ず、NOxも増える。
【0004】そこで、リーン空燃比域で回転数信号から
サージトルクのレベルを推定し、これが安定限界レベル
に近づくようにフィードバック補正量を求め、これで目
標空燃比を補正することで、燃料噴射弁やエアフローメ
ータにバラツキがあっても、サージトルクのレベルを安
定限界レベルの近くに維持しつつ、燃費の向上とNOx
の低減とがはかれるのである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、暖機時増量
補正量(水温増量補正係数Ktwと始動後増量補正係数
Kasのこと)は最も重質のガソリンに対してマッチン
グされるのが一般的で、この場合に揮発性のよいガソリ
ンが使用されると、燃料の供給過多となり燃費が悪くな
る。
【0006】これに対処するため、燃料性状の学習値G
flを導入し、回転変動から算出される燃焼の安定度が
許容レベルに収まるようにこの学習値Gflを始動後増
量補正中(Kas≠0のとき)に更新し、この学習値G
flで目標空燃比(マップ値)を補正すると、燃焼の安
定度と燃料の揮発性とが始動直後に限って強い相関をも
つことから、学習値Gflは最も重質のガソリンとの揮
発性の違いに精度良く対応する。
【0007】したがって、エンジンの停止後も学習値G
flをバッテリバックアップしておくことで、前回のエ
ンジンの停止から今回の始動時までの間に使用燃料が変
わらない限り、どのような揮発性のガソリンを使用して
も、燃料の供給過多を避けつつ始動後増量補正中の燃焼
の安定度を当初から許容レベルに収めることができる。
【0008】しかしながら、給油直後の始動時に燃料の
揮発性が悪くなる側に急変することによって、バッテリ
バックアップされている学習値Gflの表す燃料の揮発
性と給油された燃料の揮発性との間に大きなずれが生じ
るときは、学習値Gflをバッテリバックアップしてい
るためにかえって給油後の始動後増量補正中に燃焼が不
安定になる。
【0009】そこでこの発明は、給油直後の始動時に給
油前からバッテリバックアップされている学習値の値を
目標空燃比がリッチ側に向かう向きに補正することによ
り、給油直後のエンジンの始動性や始動後安定性が悪く
なることを防止することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、図1に示
すように、運転条件信号から基本噴射量Tpを算出する
手段31と、燃焼の安定度をエンジンの回転変動から算
出する手段32と、始動後増量補正中に限り前記燃焼の
安定度があらかじめ定めた上限値と下限値のあいだの許
容レベルに収まるようにメモリ33に記憶されている燃
料性状学習値Gflを更新する手段34と、この学習値
Gflと目標空燃比マップ値と暖機時増量補正量(たと
えばKtwとKas)とから目標空燃比を算出する手段
35と、この目標空燃比と前記基本噴射量Tpとから燃
料噴射量を算出する手段36と、この燃料を吸気管に供
給する装置37と、前記メモリ33に記憶されている学
習値をエンジンの停止後もバッテリバックアップする手
段38と、給油直後の始動時であるかどうかを判定する
手段39と、この判定結果より給油直後の始動時に限り
前記バッテリバックアップされた学習値を給油補正係数
で前記目標空燃比がリッチ側に向かう向きに補正する手
段40とを設けた。
【0011】第2の発明は、図18に示すように、運転
条件信号から基本噴射量Tpを算出する手段31と、運
転条件信号がリーン条件であるかどうかを判定する手段
51と、この判定結果よりリーン条件では理論空燃比よ
りもリーン側の空燃比を、また非リーン条件では理論空
燃比をマップ値として算出する手段52と、燃焼の安定
度をエンジンの回転変動から算出する手段32と、始動
後増量補正中に限り前記燃焼の安定度があらかじめ定め
た上限値と下限値のあいだの許容レベルに収まるように
メモリ33に記憶されている燃料性状学習値Gflを更
新する手段34と、前記リーン条件で前記燃焼の安定度
が前記許容レベルに収まるようにメモリ53に記憶され
ている安定度制御係数Kstbを更新する手段54と、
この安定度制御係数Kstb、前記学習値Gfl、前記
マップ値および暖機時増量補正量(たとえばKtwとK
as)から目標空燃比を算出する手段55と、この目標
空燃比と前記基本噴射量Tpとから燃料噴射量を算出す
る手段36と、この燃料を吸気管に供給する装置37
と、前記メモリ33に記憶されている学習値をエンジン
の停止後もバッテリバックアップする手段38と、給油
直後の始動時であるかどうかを判定する手段39と、こ
の判定結果より給油直後の始動時に限り前記バッテリバ
ックアップされた学習値を給油補正係数で前記目標空燃
比がリッチ側に向かう向きに補正する手段40とを設け
た。
【0012】第3の発明は、給油前の燃料量と給油後の
燃料量の比が小さくなるほど前記目標空燃比のリッチ側
へのシフト量が大きくなるように前記給油補正係数を設
定した。
【0013】
【作用】第1の発明で、バッテリバックアップされてい
る学習値が、給油直後の始動時に給油補正係数で目標空
燃比がリッチ側に向かう向きに補正されると、目標空燃
比が重質ガソリンに合わせた値となり、バッテリバック
アップされている学習値が最も軽質のガソリンに対応す
る値となっている場合に、最も重質のガソリンが給油さ
れた直後の始動後増量補正中であっても、燃焼がそれほ
ど不安定になることがない。
【0014】第2の発明は、一定のリーン条件で理論空
燃比よりもリーン側の値を目標空燃比マップ値とする、
いわゆるリーンバーンエンジンにおいて、回転変動から
算出される燃焼の安定度が許容レベルに収まるように安
定度制御係数を算出し、この制御係数で目標空燃比マッ
プ値を補正するようにした安定度制御装置を前提とし
て、このものに第1の発明を適用したもので、第1の発
明と同じ作用が得られる。
【0015】第3の発明で、給油前の燃料量と給油後の
燃料量の比が小さくなるほど前記目標空燃比のリッチ側
へのシフト量が大きくなるように前記給油補正係数が設
定されると、目標空燃比のリッチ側への補正精度が高め
られる。
【0016】
【実施例】図2において、エアクリーナ11から吸入さ
れた空気は、一定の容積を有するコレクタ部12aにい
ったん蓄えられ、ここから分岐管をへて各気筒に流入す
る。各気筒の吸気ポート12bには燃料噴射弁3が設け
られ、この噴射弁3からエンジン回転に同期して間欠的
に燃料が噴射される。
【0017】噴射弁3からの噴射時間が長くなれば噴射
量が多くなり、噴射時間が短くなれば噴射量が少なくな
る。混合気の濃さつまり空燃比は、一定量の吸入空気に
対する燃料噴射量が多くなればリッチ側にずれ、燃料噴
射量が少なくなればリーン側にずれる。したがって、コ
ントロールユニット2で吸入空気量との比が一定値とな
るように燃料の基本噴射量を決定してやれば運転条件が
違っても同じ空燃比が得られる。燃料の噴射がエンジン
の1回転について1回行われるときは、1回転で吸い込
んだ空気量に対して基本噴射パルス幅Tpをそのときの
吸入空気量とエンジン回転数とから求めるのである。通
常このTpにより決定される空燃比は理論空燃比付近に
なっている。
【0018】一定の条件が成立すると、コントロールユ
ニット2では、空燃比目標値を理論空燃比からリーン側
の空燃比に切換える。この切換時に補助空気流量を増量
補正(理論空燃比への切換時は減量補正)することによ
って、切換の前後でトルクが同一となるようにトルク制
御を行うわけで、そのため吸気絞り弁5をバイパスする
補助空気通路21に大流量の流量制御弁22が設けられ
ている。この制御弁22は比例ソレノイド式で、コント
ロールユニット2からのオンデューティ(一定周期のO
N時間割合)が大きくなるほど通路21を流れる補助空
気流量が増加する。
【0019】なお、リーン空燃比域での燃焼不安定によ
り増加するCO,HCを抑えるため、燃焼室内に流れ込
む吸気にスワールが与えられるよう、吸気ポート12b
の近くに、一部に切欠き(図示せず)を有するスワール
コントロールバルブ13を設けている。リーン空燃比域
でスワールコントロールバルブ13を全閉位置にして吸
気を絞ることにより吸気の流速を高め、燃焼室内にスワ
ールを生じさせるのである。理論空燃比域では排気管1
8に設けた三元触媒19によってNOxを浄化する。
【0020】コントロールユニット2ではまた、燃焼の
安定度を回転変動から算出し、この燃焼の安定度がリー
ン空燃比域で許容レベルに収まるようにフィードバック
補正量(後述する安定度制御係数Kstb)を更新し、
このフィードバック補正量でリーン空燃比域での目標空
燃比(マップ値)を補正する。これにより、燃焼が不安
定にならない限界近くのリーン空燃比でエンジンが運転
されることになり、燃費がよくなるのである。
【0021】ところで、暖機時増量補正量(水温増量補
正係数Ktwと始動後増量補正係数Kasのこと)は燃
焼の悪化を避けるため、最も重質のガソリンに対してマ
ッチングするのであるが、この場合にそれよりも揮発性
のよいガソリンが使用されると、燃料の揮発性がよくな
る分だけは燃料の供給過多となり燃費が悪くなる。
【0022】これに対処するため、燃料性状の学習値G
flを導入し、上記の燃焼の安定度が許容レベルに収ま
るようにこの学習値Gflを始動後増量補正中(つまり
Kas≠0のとき)に限って更新し、この学習値Gfl
で目標空燃比(マップ値)を補正すると、燃焼の安定度
と燃料の揮発性とが始動後増量補正中に限って強い相関
をもつことから、学習値Gflは最も重質のガソリンと
の揮発性の違いに精度良く対応する。
【0023】したがって、エンジンの停止後も学習値G
flを記憶するメモリの値が消失しないようにバッテリ
バックアップしておくと、前回のエンジンの停止から今
回の始動時までの間で使用燃料が変わらない限り、どの
ような揮発性のガソリンを使用しても、燃料の供給過多
を避けつつ始動後増量補正中の燃焼の安定度を当初から
許容レベルに収めることができる。
【0024】しかしながら、給油直後の始動時に燃料の
揮発性が悪くなる側に急変し、始動前からバッテリバッ
クアップされている学習値Gflの表す燃料の揮発性と
給油された燃料の揮発性との間に大きなずれが生じると
きは、学習値Gflをバッテリバックアップしているた
めにかえって給油直後の始動後増量補正中に燃焼が不安
定になる。
【0025】これに対処するため、コントロールユニッ
ト2では、給油直後の始動時に給油前からバッテリバッ
クアップされている学習値の値を、給油前の燃料量と給
油後の燃料量の比が小さくなるほど大きくなるように減
量補正する。
【0026】以下、具体的な制御を図3から図17を用
いて、 [1]回転変動の算出 [2]安定度制御を行うかどうかの判定 [3]安定度制御係数の算出 [4]燃料性状学習値の算出 [5]目標燃空比の算出 [6]燃料噴射パルス幅の計算 の順に項分け説明する。
【0027】なお、始動直後とリーン空燃比域での各安
定度制御に必要となるセンサからの信号(4はエアクリ
ーナから吸入される空気量Qaを検出するエアフローメ
ータ、6は絞り弁開度を検出するスロットルセンサ、7
は単位クランク角度ごとの信号とクランク角度の基準位
置ごとの信号とを出力するクランク角度センサ、11は
水温センサ)が、燃料計用の出力とともに、マイコンか
らなるコントロールユニット21に入力されている。9
はO2センサ、10は車速センサである。
【0028】燃料制御は目標空燃比をめざして行い、空
気流量の検出値から最終的に供給燃料量を求めているこ
とを考えると、(空気流量)×(燃空比)=(供給燃料
量)の関係が成立することから、燃空比のほうが空燃比
より扱いやすいため、以下では一部の数値に燃空比を用
いている。
【0029】[1]回転変動の算出 燃焼の不安定によって回転変動が生じるため、REF間
周期(基準信号REFの間の周期)を測定し、このRE
F間周期のうち最新値と前回値の加算値にもとづいて気
筒別の回転数を算出し、この気筒別回転数の変動から燃
焼の安定度を推定する。
【0030】図4において、REF間周期Refからエ
ンジン1回転区間の周期Refrvを、 Refrv=Ref+Refn-1 …(1) ただし、Refn-1;前回のREF間周期 の式で求め(図4のステップ11)、これを Nerv=KN#/Refrv …(2) ただし、KN#;周期→回転数への変換定数 の式で気筒別回転数Nervに変換する(図4のステッ
プ13)。
【0031】なお、(1)式が導かれる理由は次の通り
である。4気筒エンジン(点火順序を#1−#3−#4
−#2とする)について各気筒の燃焼圧力と回転変動の
関係ならびに基準信号REF(180°CAごとに立ち
上がる)を図5に示す。各気筒の燃焼による回転変動は
180°CA(エンジン半回転のクランク角)ごとに点
火順序にしたがって生じるのに対し、基準信号REFが
圧縮上死点(図ではTDC)の前の所定のクランク角
(たとえば110°CA)で立ち上がると、1つの燃焼
区間とその燃焼の行われる気筒のREF間周期とが時間
的にずれている。いま仮に#3気筒で代表させれば、#
3気筒の燃焼による回転変動(#3TDCから#4TD
Cまで)は、#3REF間周期と#4REF間周期の2
周期にまたがるため、#3気筒の燃焼が寄与するクラン
ク角範囲は、#4REF間周期のうち110°CAの部
分(図でから#4TDCまで)と#3REF間周期の
うち70°CAの部分(#3TDCからまで)とであ
る。この寄与割合をそれぞれk1,k2とすれば、 k1=110/180 …(1.1) k2=70/180 …(1.2) であり、#3気筒の半回転区間周期は #3気筒の半回転区間周期 =#4REF間周期×k1+#3REF間周期×k2 …(1.3) の式で表すことができる。
【0032】ここで、REF間周期は点火順に求まるた
め、(1.3)式において今回求まるREF間周期の最
新値Refを#4気筒に対応づければ、REF間周期の
前回値Refn-1が#3気筒に対応し、また#4気筒を
現気筒(現時点の気筒)として考えれば、#3気筒は前
気筒(現気筒より点火順序で1つ前の気筒)であるか
ら、(1.3)式は 前気筒の半回転区間周期=Ref×k1+Refn-1×k2 …(1.4) と書き直すことができる。
【0033】(1.4)式は#4気筒を現気筒として考
えた式であるが、#2,#1,#3気筒を現気筒として
も(1.4)式と同じ式になる。
【0034】上記の寄与割合k1,k2は、各気筒で燃焼
がTDC(圧縮上死点)から始まるとしたときのもので
あるが、実際の燃焼はTDC前から始まることを考慮す
ると、燃焼開始クランク角による補正が必要で、このと
きは上記の(1.1),(1.2)式に代えて、 k1=(110−燃焼開始クランク角)/180 …(1.5) k2=(70+燃焼開始クランク角)/180 …(1.6) の式を用いなければならない。たとえば、燃焼開始クラ
ンク角の平均値を圧縮上死点前20°CAとすれば、 k1=(110−20)/180=0.5 …(1.7) k2=(70+20)/180=0.5 …(1.8) であるから、(1.4)式は、 前気筒の半回転区間周期 =Ref×0.5+Refn-1×0.5 …(1.9) となる。
【0035】実際には着火のタイミングを知ることは困
難なため点火時期を上記の燃焼開始クランク角の相当値
として採用する。
【0036】(1.9)式の両辺を2倍にして、 前気筒の1回転区間周期=Ref+Refn-1 …(1.10) この(1.10)式が(1)式のことである。つまり、
(1)式のRefrvは前気筒の1回転区間周期を表す
ので、(1)式によりREF間周期の最新値(Ref)
と前回値(Refn-1)の加算値を(2)式により回転
数単位に変換することで、気筒別回転数を求めることが
できるのである。
【0037】なお、2つのREF間周期(REF間周期
の現在値と前回値)を測定区間として図6に示すと、同
図のように、測定区間が点火順序で隣接する2つの気筒
間で測定区間をオーバーラップさせながらずれていく。
このようにして気筒別回転数を求めると、気筒間バラツ
キによる回転変動を燃焼の不安定による回転変動である
と誤認することがない。
【0038】なお、(1.9)式によれば結果としてk
1とk2とが等しく(ともに0.5)なってしまったが、
これは、 〈イ〉直列4気筒エンジンであること 〈ロ〉REFが圧縮上死点前110°CAで立ち上がる
こと 〈ハ〉燃焼開始クランク角が圧縮上死点前20°CAで
あること の3つの条件をすべて満足するときに限るもので、これ
ら条件のうちの1つでも欠ければ、k1≠k2になる。
【0039】上記(2)式の気筒別回転数Nervから
は Dnerv=Nerv−Nervn-4 …(3) ただし、Nervn-4;4回前のNerv の式で気筒別の回転変化量Dnervを算出する(図4
のステップ15)。
【0040】(2)式の気筒別回転数Nervがたとえ
ば#1気筒(前気筒)のものであるときは、Nerv
n-1(1回前の値)は#2気筒の、Nervn-2(2回前
の値)は#4気筒の、Nervn-3(3回前の値)は#
3気筒のものであるため、#1気筒について回転変化量
を求めるには、(3)式で4回前の値(つまり1サイク
ル前の値)を用いなければならないのである。このよう
に、気筒別回転数のうちの最新値と1サイクル前の値と
の差を気筒別回転変化量Dnervとして求めること
で、気筒間のバラツキを燃焼の不安定による回転変動と
誤認しないようにするわけである。
【0041】なお、(2)式の計算の前に旧Nervの
シフトを行う(図4のステップ12)。これは1回転前
のデータを2回前のRAMに、2回転前のデータを3回
前に、3回転前のデータを4回前にと逐次移し替える操
作である。この旧Nervのシフトによって、気筒別回
転数が記憶されることから、後述するエンジン回転数N
eを、 Ne=(Nerv+Nervn-1+Nervn-2+Ner
n-3)/4 の式で全気筒のエンジン回転数の平均値として求めるこ
とができる。
【0042】旧Dnervのシフトも旧Nervのシフ
トと同様である(図4のステップ14)。
【0043】(3)式の気筒別回転変化量Dnervか
らは Llj=Dnerv−Dnervn-1 …(4) ただし、Dnervn-1;1回前のDnerv の式で気筒別回転変化量の変化量をトルク変動相当値L
ljとして求める(図4のステップ16)。
【0044】(3)式のDnervはある気筒について
前回の燃焼時の1回転周期と今回の燃焼時の1回転周期
の間に生じた回転変化量であるから、(4)式のLlj
は燃焼に伴う疑似的なトルク変動量に相当するわけであ
る。
【0045】トルク変動相当値Lljにはバンドパスフ
ィルター処理を行い、結果をデジタルフィルター処理出
力Lljdとしてストアする(図4のステップ17,1
8)。バンドパスフィルター処理は、ソフトウエアで行
うため、連続系から離散系に変換した式を用いる。周波
数としては車両のドライバーがサージとして感じやすい
周波数(3〜7Hz)とすればよい。
【0046】[2]安定度制御を行うかどうかの判定 図7に示したように次の〈1〉、〈2〉の条件のいずれ
かでも成立するときは安定度制御の禁止フラグを“1”
にして、安定度制御を禁止する(図7のステップ2
3)。
【0047】〈1〉運転条件が安定度制御域にないこと
(図7のステップ21)。全運転領域は、図8のように
回転数Neとシリンダ空気量相当パルス幅(エンジン負
荷相当量で後述する)Avtpとでいくつかの領域に区
分けされ、その中にフラグの値が入っており、NeとA
vtpから図8のマップを参照した値が“0”であれ
ば、安定度制御を禁止する。“0”の領域は図示したよ
うに高回転域や高負荷域であり、これらの領域では出力
を優先するからである。
【0048】〈2〉燃焼の不安定以外で回転変動の生じ
る領域であること(図7のステップ22)。たとえば、
ギヤ位置の変更時や過渡時(絞り弁開度Tvo、シリン
ダ空気量相当パルス幅Avtp、エンジン回転数Neの
所定時間当たりの各変化量が所定のレベルを越えたら過
渡であると判断する)に安定度制御を禁止する。
【0049】〈1〉、〈2〉の条件がすべて成立しない
場合に安定度制御の禁止フラグを“0”にして安定度制
御に入る(図7のステップ24)。
【0050】[3]安定度制御係数の算出 図9において、安定度信号(デジタルフィルター処理出
力Lljd)を180度ごとにサンプリングするととも
に、サンプル数をカウントする(図9のステップ3
1)。
【0051】サンプル数が所定値Sに達する(S個のサ
ンプル数がでそろう)と、サンプルデータの合計をSで
除算することで、平均値LljdAVを求める(図7の
ステップ33)。なお、Sの値は検出精度(多いほどよ
い)と制御精度(少ないほど速い)を考慮して決定す
る。たとえば、エンジン回転数Neから図10を内容と
するテーブルを参照して求める。
【0052】デジタルフィルター処理出力の平均値Ll
jdAVがあらかじめ定めた上限値SLmaxを越えて
いるかどうかみて、LljdAV>SLmaxであれ
ば、燃焼の安定度が許容レベルを越えたと判断し、フィ
ードバック補正量としての安定度制御係数Kstbを Kstb=Kstbn-1−DKstbr …(5) ただし、Kstbn-1;1回前のKstb DKstbr;リッチ方向への燃空比変化速度 の式で小さくなる側に更新する(図9のステップ34,
36)。
【0053】安定度制御係数Kstbは、(10)式
(後述する)のように目標燃空比マップ値Kmrから差
し引く形で与えており、Kstbの値が大きくなるほど
空燃比がリーン側に向かうことになるため、リッチ側に
向かわせるには(5)式で安定度制御係数Kstbが小
さくなる側に更新するのである。
【0054】一方、平均値LljdAVがあらかじめ定
めた下限値SLmin(SLmin<SLmax)以下
であるかどうかみて、LljdAV≦SLminであれ
ば、もっと空燃比をリーン側にできると判断し、安定度
制御係数Kstbを Kstb=Kstbn-1+DKstbl …(6) ただし、DKstbl;リーン方向への燃空比変化速度 の式で大きくなる側に更新する(図9のステップ43,
45)。
【0055】安定度制御係数Kstbにはまた、それぞ
れ最小値Kstbminと最大値Kstbmaxを設
け、(5)式左辺の値が最小値Kstbmin以下にな
ったときは最小値Kstbminに、また(6)式左辺
の値が最大値Kstbmax以上になったときは最大値
Kstbmaxにそれぞれ制限する(図9のステップ3
7,38、ステップ46,47)。
【0056】この場合、最小値Kstbminと上記の
リッチ方向燃空比変化速度DKstbrとは重質ガソリ
ンに、最大値Kstbmaxと上記のリーン方向燃空比
変化速度DKstblとは一般ガソリン(重質ガソリン
よりも揮発性はよい)にマッチングする。上記の上限値
SLmaxと下限値SLminの値については、燃料性
状とは関係なく、安定度の要求値から決定する。
【0057】ただし、LljdAV>SLmaxとな
り、LljdAV≦SLminとなる場合であっても、
リーン条件でないときは、安定度制御係数Kstbを更
新しない(図9のステップ35,ステップ44)。リー
ン条件は、たとえばスロットルセンサ6からの絞り弁開
度が所定値以下であること、車速変化が所定値以下であ
ること、O2センサからの信号にもとづいて空燃比が理
論空燃比付近にとどまるようにフィードバック制御する
領域でないことのすべてを満たしたときである。
【0058】[4]燃料性状学習値の算出 後述する(10)式で示すように、燃料性状学習値Gf
lについても、安定度制御係数Kstbと同様に目標燃
空比マップ値Kmrから差し引く形で与える。
【0059】ここで、学習値Gflを安定度制御係数K
stbと独立に導入したのは、次の理由からである。始
動直後の要求噴射量は燃料の揮発性の違いによって図1
7のように変化するため、給油直後の始動後まもなくで
燃料の揮発性の急変する場合に、この揮発性の違いに伴
う噴射量の差を安定度制御係数Kstbだけで補正しよ
うとすると、始動時の要求噴射量が給油燃料に合ったも
のとなるまでに時間がかかる。そこで、あらたに導入し
た学習値Gflを始動後増量中に更新することによっ
て、まず燃料の揮発性の違いに伴う噴射量の差の大部分
を補正し、その後に残るわずかの差は、リーン条件で安
定度制御係数Kstbにより細かく補正しようというの
である。
【0060】[4−1]学習値の更新 安定度制御係数Kstbと同様にして、LljdAV>
SLmaxであれば、燃料の揮発性が悪いと判断し、学
習値Gflを Gfl=Gfln-1−DGflr …(7) ただし、Gfln-1;1回前のGfl DGflr;リッチ方向への学習値変化速度 の式で小さくなる側に更新し(図9のステップ34,4
0)、LljdAV≦SLminであれば、 Gfl=Gfln-1+DGfll …(8) ただし、DGfl1;リーン方向への学習値変化速度 の式で大きくなる側に更新する(図9のステップ43,
49)。
【0061】このように学習値Gflの更新方向を定め
ると、その値が小さくなるほど燃料の揮発性が悪くなる
ことを表す。
【0062】学習値Gflについても、最小値Gflm
inと最大値Gflmaxを設け、これらの値に制限す
る(図9のステップ41,42、ステップ50,5
1)。
【0063】この場合、最小値Gflminは最も軽質
のガソリンに、最大値Gflmaxは最も重質のガソリ
ンにマッチングする。変化速度DGflr、DGfl1
については、上記の変化速度DKstbr、DKstb
lと同じである(リッチ方向学習値変化速度DGflr
は重質ガソリンに、リーン方向学習値変化速度DGfl
1は一般ガソリンにマッチングする)。
【0064】ただし、学習値Gflの更新は、始動後増
量補正中(つまりKas≠0のとき)に限って行う(図
9のステップ39,ステップ48)。これは、燃料の揮
発性の違いによる燃焼の安定度への影響は始動直後が大
きいと考えられる(燃焼の安定度と燃料の揮発性とが始
動直後に強い相関をもつということ)からである。
【0065】なお、Ktw≠0は学習値の更新条件とし
ていない。これは、定常(吸排気バルブなどは暖まって
いる)で水温増量補正係数Ktwのマッチングを行うた
め、冷間始動時にKtw=0となることがあり、この場
合でも冷間始動時は燃料性状の違いによる安定度への影
響が大きい場合が考えられ、学習値を更新する必要があ
るからである。
【0066】 [4−2]学習値のバッテリバックアップ 学習値Gflは、エンジン停止後も学習値を記憶するメ
モリの値が失われないようにバッテリバックアップす
る。なお、安定度制御係数Kstbについてはバッテリ
バックアップの必要はない。
【0067】[4−3]燃料性状学習値Gflの給油に
よる補正 これは、図11のようにバックグラウンドジョブで、始
動時に1回だけ実行する。
【0068】次の〈1〉、〈2〉のいずれかの条件が成
立するときは補正を禁止する。
【0069】〈1〉車速がゼロでないとき(図11のス
テップ61)。車速がゼロでないときは、車両の揺れに
よって燃料量を正確に算出することができないからであ
る。 〈2〉燃料量の最新値Fuelと前回値Fueln-1
差が所定のスライスレベルSLより小さいとき(図11
のステップ63)。
【0070】Fuelは今回の始動時の燃料量、Fue
n-1は前回のエンジン停止時よりバッテリバックアッ
プされていた値(つまり前回のエンジン停止時の燃料
量)であるから両者の差(Fuel−Fueln-1)は
前回のエンジン停止時から今回の始動時までのあいだの
燃料量の増え分を意味することになるが、この増え分か
らみて給油といえない場合があるからである。たとえ
ば、Fueln-1<Fuel<Fueln-1+SLとなる
ことがあり、この場合には車両の傾きなどによる増え分
であって給油による増え分でないと判断するのである。
燃料タンク内の燃料量を算出するには、たとえば燃料計
用の出力を使用する(図11のステップ62)。
【0071】〈1〉、〈2〉のいずれの条件も満足しな
いときは、給油が行われたと判断し、1より小さな値の
給油補正係数Gflhosを用いて燃料性状学習値を、 Gfl=Gfln-1×Gflhos …(9−1) ただし、Gflhos;給油補正係数 の式で減量補正し(図11のステップ65)、この減量
補正された学習値((9−1)式の左辺のGflのこ
と)を、引き続く始動後増量補正中の学習値の更新に際
して学習値の前回値Gfln-1として使う(図9ステッ
プ40,49)。
【0072】(9−1)式のGfln-1は、前回のエン
ジン停止時からバッテリバックアップされていた値で、
この値を給油後の最初の始動時に減量補正するのは、次
の理由による。給油が行われたことはわかっても、給油
された燃料の揮発性まではわからないので、バッテリバ
ックアップされている値から推定される燃料の揮発性
と、給油された燃料の揮発性との差が最も大きくかつ運
転性への影響が大きい事態(具体的には学習値が最も軽
質のガソリンに対応する値になっている状態で最も重質
のガソリンが給油された場合)を想定した場合に、この
事態に対処するには、目標空燃比が重質ガソリンに対応
できるように(つまり目標空燃比がリッチ側に向かうよ
うに)してやることであり、目標空燃比をリッチ側に向
かわせるには、バッテリバックアップされている学習値
Gflを減量補正する必要があるのである。
【0073】(9−1)式の給油補正係数Gflhos
は、 Gflhos=Fueln-1/Fuel …(9−2) の式で与える(図11のステップ64)。
【0074】給油が行われたと判断されたときは、(9
−2)式の右辺は給油前の燃料量と給油後の燃料量の比
を表すので、給油量が大きくなるほど、この比(この比
に等しいGflhosも)が小さくなる。つまり、給油
量が増えるほどバッテリバックアップされている学習値
の値を小さくする側に給油補正係数Gflhosを設定
しているわけである。Gflhosは図12の特性を内
容とするテーブルを参照して求めてもかまわない。
【0075】最後に、次回制御のため、燃料量の最新値
Fuelを前回値Fueln-1に移す(図11のステッ
プ66)。
【0076】[5]目標燃空比の算出 目標燃空比Tfbyaを Tfbya=Kmr+Ktw+Kas−Kstb−Gfl …(10) ただし、Kmr;目標燃空比のマップ値 Ktw;水温増量補正係数 Kas;始動後増量補正係数 Kstb;安定度制御係数 Gfl;燃料性状学習値 の式により計算する(図13のステップ71)。
【0077】(10)式の目標燃空比マップ値Kmr
は、リーン条件とリーン条件でないときとで異なるた
め、図14に示したようにリーン条件では図15を内容
とするMDMLLマップ(リーンマップのこと)を参照
し、その参照した値を、またリーン条件でないときは図
16を内容とするMDMLSマップ(非リーンマップの
こと)を参照し、その参照した値をそれぞれ変数Kmr
に入れることになる(図14のステップ82,83、ス
テップ82,84)。図15,図16において1.0の
マップ値が理論空燃比相当で、これより値が小さいとリ
ーン側の空燃比に、この逆にこれより値が大きいとリッ
チ側の空燃比になるわけである。
【0078】(10)式の始動後増量補正係数Kas
は、クランキング中はその値が冷却水温に応じて定ま
り、エンジン始動直後より時間とともに徐々に減少する
値、また水温増量補正係数Ktwは冷却水温からテーブ
ルを参照して求める値で、いずれも公知である。
【0079】冷間始動直後の暖機中は、目標燃空比マッ
プ値Kmrが1.0(つまり理論空燃比相当)になり、
暖機中の空燃比が暖機時増量補正量(Ktw+Kas)
によって理論空燃比よりもリッチ側にシフトするわけで
ある。
【0080】また、学習が進んだ段階では、Ktw+K
as−Gflの値が実質の暖機時増量補正量となるた
め、KtwとKasが最も重質のガソリンにマッチング
されている場合に、最も軽質のガソリンを使用燃料とし
ていても、燃料過多となることはない。
【0081】[6]燃料噴射パルス幅の計算 これは、図13に示したように10msの周期で実行す
る。
【0082】各燃料噴射弁3に出力する燃料噴射パルス
幅Tiは Ti=(Avtp+Kathos)×Tfbya×(α+αm)+Ts …(11) ただし、Avtp;シリンダ空気量相当パルス幅 Kathos;壁流補正量 α;空燃比フィードバック補正係数 αm;空燃比学習補正係数 Ts;無効パルス幅 の式で与える(図13のステップ75)。
【0083】ここで、(11)式のシリンダ空気量相当
パルス幅Avtpは、 Avtp=Tp×Fload+Avtpn-1×(1−Fload) …(12) ただし、Tp;基本噴射パルス幅 Avtpn-1;前回のAvtp Fload;加重平均係数 の式により基本噴射パルス幅Tpをなました値(図13
のステップ74)、またTpはエアフローメータ出力を
A/D変換した後リニアライズして求めた吸入空気流量
Qsから Tp=(Qs/Ne)×K#×Ktrm …(13) ただし、K#;基本空燃比を定める定数 Ktrm;インジェクタの噴射量誤差を補正する値 の式で計算した値である(図13のステップ72,7
3)。(11)、(12)、(13)式とも公知であ
る。
【0084】(11)式の壁流補正量Kathosは、
壁流の低周波分(比較的ゆっくりと変化する壁流分のこ
と)の修正を目的とし、運転条件ごとに平衡付着量Mf
hを記憶しておき、過渡に伴う平衡付着量の変化を総補
正量として、燃料噴射ごとに所定の割合ずつシリンダ空
気量相当パルス幅Avtpに加算(減速時は減算)する
もので、これも公知である。たとえば、加速時は噴射量
を増量しなければならないが、どんなに霧化特性のよい
インジェクタといえども、燃料の一部は吸気マニホール
ド壁に付着し、吸気管壁を伝って液状のまま流れ(この
流れが壁流)、空気に乗せられた燃料より遅い速度でシ
リンダに流れる。つまり、壁流燃料によってシリンダに
吸入される混合気が一時的に薄くなるので、この一時的
な混合気の希薄化を防止するため、加速時は壁流補正量
Kathosだけ増量するのである。この逆に、マニホ
ールド圧が急激に高負圧になる減速時は、マニホールド
壁に付着していた燃料がいっせいに気化してくるため、
混合気が一時的に濃すぎになり、CO,HCが増加す
る。そこで、減速時はこの気化する壁流分を減量してや
るわけである。
【0085】なお、減速時や高回転時などの一定の燃料
カット条件になると(11)式のTiに代えて無効パル
ス幅Tsをストアし、そうでなければTiを出力レジス
タにストアする(図13のステップ77,79、ステッ
プ77,78)ことで、噴射タイミングでの噴射に備え
る。
【0086】ここで、この例の作用を説明する。たとえ
ば、暖機時増量補正量(KtwとKas)を最も重質の
ガソリンにマッチングしている場合に、最も軽質のガソ
リンが使用されると、使用の当初は燃料の揮発性がよい
ので燃料が余計に供給されてしまうのであるが、この場
合には安定度信号(LljdAV)が下限値SLmin
を下回り、学習値Gflが大きくなる側に更新され、目
標空燃比がリーン側にシフトされることから、安定度信
号がやがて下限値SLminを上回ったところに落ち着
き、その後は最も軽質のガソリンに応じた適切な燃料が
供給される。こうして更新した学習値をバッテリバック
アップしておくことで、最も軽質のガソリンを使い続け
る限り、始動のたびに燃料を余計に供給することなく始
動後増量補正中の燃焼を安定させることができる。
【0087】しかしながら、その後に最も重質のガソリ
ンを給油した直後の始動時が今回の始動時に当たり、こ
の今回の始動時に前回のエンジン停止時よりバッテリバ
ックアップされている学習値の値(Gfln-1)がその
まま用いられると、その値の表す揮発性と給油された燃
料の揮発性との差が大きくなり、今回の始動後増量補正
中に燃焼が不安定になる。暖機時増量補正量(Ktw+
Kas)によれば、最も重質のガソリンに最適な値であ
っても、Ktw+Kas−Gflの値は最も軽質のガソ
リンに最適な値になってしまうため、今回の始動後の増
量補正中はバッテリバックアップされている学習値によ
りかえって空燃比がリーンになり、燃焼を不安定にして
しまうのである。
【0088】これに対して、この例で今回の始動時に給
油があったことが判定されると、バッテリバックアップ
されている学習値が給油補正係数Gflhosによって
減量補正され、この減量補正された学習値Gfl(=G
fln-1×Gflhos)によれば、Ktw+Kas−
Gflの値が重質ガソリンに合わせた値となるため、最
も重質のガソリンが給油された直後の始動後増量補正中
でも、燃焼がそれほど不安定になることがない。
【0089】バッテリバックアップされている学習値に
よりかえって燃焼が不安定になるのは、その学習値が最
も軽質のガソリンに対応する値となっている場合に、最
も重質のガソリンが給油された直後の始動後増量補正中
であるから、このような事態を想定して、バッテリバッ
クアップされている学習値を給油直後の始動時に減量補
正することにより、重質ガソリンに応じた始動後増量補
正量を給油直後から与えるのである。
【0090】これによって、学習値のバッテリバックア
ップでかえって燃焼を不安定にすることがあるという不
都合を無くすことができる。
【0091】また、バッテリバックアップされている学
習値を減量補正するための給油補正係数Gflhos
を、給油前の燃料量と給油後の燃料量の比(Fuel
n-1/Fuel)が小さくなるほど小さくしていること
から、給油量が多くなるほど目標空燃比のリッチ側への
シフト量が大きくなり、これによって、目標空燃比のリ
ッチ側への補正精度を高めることができる。
【0092】実施例では、目標燃空比を(10)式で与
えたが、この代わりに Tfbya=Kmr+Ktw+Kas+Kstb+Gf
l の式を用いることもできる。ただし、この場合には、図
9においてKstb、Gflの更新の方向と最大値、最
小値の設定の仕方を変える必要がある。
【0093】
【発明の効果】第1の発明によれば、運転条件信号から
基本噴射量を算出する手段と、燃焼の安定度をエンジン
の回転変動から算出する手段と、始動後増量補正中に限
り前記燃焼の安定度があらかじめ定めた上限値と下限値
のあいだの許容レベルに収まるようにメモリに記憶され
ている燃料性状学習値を更新する手段と、この学習値と
目標空燃比マップ値と暖機時増量補正量とから目標空燃
比を算出する手段と、この目標空燃比と前記基本噴射量
とから燃料噴射量を算出する手段と、この燃料を吸気管
に供給する装置と、前記メモリに記憶されている学習値
をエンジンの停止後もバッテリバックアップする手段
と、給油直後の始動時であるかどうかを判定する手段
と、この判定結果より給油直後の始動時に限り前記バッ
テリバックアップされた学習値を給油補正係数で前記目
標空燃比がリッチ側に向かう向きに補正する手段とを設
けたため、バッテリバックアップされている学習値が最
も軽質のガソリンに対応する値となっている場合に、最
も重質のガソリンが給油された直後の始動後増量補正中
であっても、燃焼がそれほど不安定になることがない。
【0094】第2の発明は、運転条件信号から基本噴射
量を算出する手段と、運転条件信号がリーン条件である
かどうかを判定する手段と、この判定結果よりリーン条
件では理論空燃比よりもリーン側の空燃比を、また非リ
ーン条件では理論空燃比をマップ値として算出する手段
と、燃焼の安定度をエンジンの回転変動から算出する手
段と、始動後増量補正中に限り前記燃焼の安定度があら
かじめ定めた上限値と下限値のあいだの許容レベルに収
まるようにメモリに記憶されている燃料性状学習値を更
新する手段と、前記リーン条件で前記燃焼の安定度が前
記許容レベルに収まるようにメモリに記憶されている安
定度制御係数を更新する手段と、この安定度制御係数、
前記学習値、前記マップ値および暖機時増量補正量から
目標空燃比を算出する手段と、この目標空燃比と前記基
本噴射量とから燃料噴射量を算出する手段と、この燃料
を吸気管に供給する装置と、前記メモリに記憶されてい
る学習値をエンジンの停止後もバッテリバックアップす
る手段と、給油直後の始動時であるかどうかを判定する
手段と、この判定結果より給油直後の始動時に限り前記
バッテリバックアップされた学習値を給油補正係数で前
記目標空燃比がリッチ側に向かう向きに補正する手段と
を設けたため、第1の発明と同じ効果が得られる。
【0095】第3の発明は、給油前の燃料量と給油後の
燃料量の比が小さくなるほど前記目標空燃比のリッチ側
へのシフト量が大きくなるように前記給油補正係数を設
定したため、目標空燃比のリッチ側への補正精度を高め
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明のクレーム対応図である。
【図2】一実施例の制御システム図である。
【図3】180度ジョブの流れ図である。
【図4】回転変動の算出を説明するための流れ図であ
る。
【図5】4気筒エンジンの場合の燃焼圧力、回転数、基
準信号の関係を示す波形図である。
【図6】測定区間を説明するための波形図である。
【図7】安定度制御を行うかどうかの判定を説明するた
めの流れ図である。
【図8】安定度制御域示す領域図である。
【図9】安定度制御係数Kstbと燃料性状学習値Gf
lの更新を説明するための流れ図である。
【図10】サンプル数Sのテーブル内容を示す特性図で
ある。
【図11】バックグラウンドジョブの流れ図である。
【図12】給油補正係数Gflhosのテーブル内容を
示す特性図である。
【図13】10msecジョブの流れ図である。
【図14】目標燃空比マップ値Kmrのマップ内容を示
す特性図である。
【図15】リーンマップの内容を示す特性図である。
【図16】非リーンマップの内容を示す特性図である。
【図17】始動後の要求噴射量の特性図である。
【図18】第2の発明のクレーム対応図である。
【符号の説明】
2 コントロールユニット 3 燃料噴射弁(燃料供給装置) 4 エアフローメータ 7 クランク角度センサ 8 水温センサ 9 O2センサ 31 基本噴射量算出手段 32 燃焼安定度算出手段 33 メモリ 34 燃料性状学習値更新手段 35 目標空燃比算出手段 36 燃料噴射量算出手段 37 燃料供給装置 38 バッテリバックアップ手段 39 給油直後始動時判定手段 40 学習値補正手段 51 リーン条件判定手段 52 マップ値算出手段 53 メモリ 54 安定度制御係数更新手段

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】運転条件信号から基本噴射量を算出する手
    段と、 燃焼の安定度をエンジンの回転変動から算出する手段
    と、 始動後増量補正中に限り前記燃焼の安定度があらかじめ
    定めた上限値と下限値のあいだの許容レベルに収まるよ
    うにメモリに記憶されている燃料性状学習値を更新する
    手段と、 この学習値と目標空燃比マップ値と暖機時増量補正量と
    から目標空燃比を算出する手段と、 この目標空燃比と前記基本噴射量とから燃料噴射量を算
    出する手段と、 この燃料を吸気管に供給する装置と、 前記メモリに記憶されている学習値をエンジンの停止後
    もバッテリバックアップする手段と、 給油直後の始動時であるかどうかを判定する手段と、 この判定結果より給油直後の始動時に限り前記バッテリ
    バックアップされた学習値を給油補正係数で前記目標空
    燃比がリッチ側に向かう向きに補正する手段とを設けた
    ことを特徴とするエンジンの安定度制御装置。
  2. 【請求項2】運転条件信号から基本噴射量を算出する手
    段と、 運転条件信号がリーン条件であるかどうかを判定する手
    段と、 この判定結果よりリーン条件では理論空燃比よりもリー
    ン側の空燃比を、また非リーン条件では理論空燃比をマ
    ップ値として算出する手段と、 燃焼の安定度をエンジンの回転変動から算出する手段
    と、 始動後増量補正中に限り前記燃焼の安定度があらかじめ
    定めた上限値と下限値のあいだの許容レベルに収まるよ
    うにメモリに記憶されている燃料性状学習値を更新する
    手段と、 前記リーン条件で前記燃焼の安定度が前記許容レベルに
    収まるようにメモリに記憶されている安定度制御係数を
    更新する手段と、 この安定度制御係数、前記学習値、前記マップ値および
    暖機時増量補正量から目標空燃比を算出する手段と、 この目標空燃比と前記基本噴射量とから燃料噴射量を算
    出する手段と、 この燃料を吸気管に供給する装置と、 前記メモリに記憶されている学習値をエンジンの停止後
    もバッテリバックアップする手段と、 給油直後の始動時であるかどうかを判定する手段と、 この判定結果より給油直後の始動時に限り前記バッテリ
    バックアップされた学習値を給油補正係数で前記目標空
    燃比がリッチ側に向かう向きに補正する手段とを設けた
    ことを特徴とするエンジンの安定度制御装置。
  3. 【請求項3】給油前の燃料量と給油後の燃料量の比が小
    さくなるほど前記目標空燃比のリッチ側へのシフト量が
    大きくなるように前記給油補正係数を設定したことを特
    徴とする請求項1または2に記載のエンジンの安定度制
    御装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010138720A (ja) * 2008-12-09 2010-06-24 Hitachi Automotive Systems Ltd エンジンの点火制御装置
US8032294B2 (en) * 2008-05-08 2011-10-04 Robert Bosch Gmbh Procedure and device for determining the composition of a fuel mixture
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