JP3306558B2 - 熱可塑性樹脂組成物、及び帯電防止性樹脂複合フィルム - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物、及び帯電防止性樹脂複合フィルム

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱可塑性樹脂組成物、
及び帯電防止性樹脂複合フィルムに関し、詳しくは、帯
電防止性とその効果及びその持続性、外観性(色調性)
に優れた樹脂成形品を得るための熱可塑性樹脂組成物、
及び帯電防止性樹脂複合フィルムに関する。なお、ここ
でいう「フィルム」とは、フィルム状のものはもちろ
ん、シート状のもの、板状のもの、マット状のものも含
まれる。
【0002】
【従来の技術】ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、塩
化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂は、成形体、フィル
ム、袋体などとして包装材料や自動車部品などの材料に
従来から汎用されているが、これらの熱可塑性樹脂は一
般に電気抵抗が大きく、摩擦によって容易に帯電し、塵
などを吸引するという重大な欠点があった。
【0003】そこで近年、帯電防止剤を下記(イ)、
(ロ)のように使用して、熱可塑性樹脂からなる成形品
に帯電防止性の付与が試みられている。 (イ)帯電防止剤を樹脂表面に塗布したのち乾燥する (ロ)内部添加型帯電防止剤を樹脂中に練り込む。
【0004】前記(イ)の方法では、帯電防止剤として
界面活性剤溶液が用いられている。しかしながら、この
ような帯電防止剤は、洗浄により容易に除去されるた
め、恒久的な帯電防止性を付与することができないとい
う欠点がある。
【0005】前記(ロ)の方法では、内部添加型帯電防
止剤としてグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪
酸エステル、アルキルジエタノールアミド、アルキルベ
ンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルイミダゾールの
4級塩などが用いられている。これらの内部添加型帯電
防止剤を用いた場合には、表面の帯電防止剤が洗浄によ
り失なわれた場合であっても、その内部から新たな帯電
防止剤が順次ブリードするため、帯電防止性が比較的長
期間持続するという利点がある。
【0006】しかしながら、このような内部添加型帯電
防止剤を用いた場合には、洗浄後に帯電防止性が回復す
るまでに長時間を要し、また帯電防止剤が過度にブリー
ドした場合には、粘着性が生じ、かえって塵などが付着
しやすくなるという欠点があるほか、これらの帯電防止
剤は低分子量のものであるため、たとえば高温での成形
加工時の熱により揮散するので、実質的な必要量以上の
帯電防止剤を添加する必要があるという不利益があり、
その有効量を調整することが困難であった。
【0007】前記内部添加型帯電防止剤の上記欠点を解
消するものとして、近年、メトキシ基の20〜80モル
%がジエタノールアミン変性されたポリメチルメタクリ
レート(特開平1−170603号公報)、アルコキシ
ポリエチレングリコールメタクリレートのグラフト共重
合体(特公昭58−39860号公報)、スチレン−無
水マレイン酸共重合体をイミド変性したのち、4級化し
てカチオン化したポリマー(特公平1−29820号公
報)、末端がカルボキシル基のポリメチルメタクリレー
トをグリシジルメタクリレートで末端カルボキシル基を
メタクリロイル基に変換した高分子量単量体とアミノア
ルキルアクリル酸エステルまたはアクリルアミドとのく
し型共重合体およびその4級化カチオン変性品(特開昭
62−121717号公報)、ポリアルキレンオキサイ
ド鎖を含むポリエーテルエステルアミド(特公平4−5
691号公報)などの制電性官能基を有する高分子化合
物が提案されている。
【0008】しかしながら、前記高分子化合物は、いず
れも透明性、強伸度などの樹脂物性の低下を招き、しか
も帯電防止性およびその持続性が不充分であるなどの欠
点があった。
【0009】さらに、エチレン単位40〜90重量%と
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド60
〜10重量%の共重合体を成形したのち、無機酸塩に浸
漬して導電性樹脂成形体を得る試みもなされている(特
開昭64−54041号公報)。しかし、この方法は、
浸漬という付加的工程が必要であり、実用上問題があっ
た。
【0010】また、エチレン単位30〜80重量%とア
ミノアルキル(メタ)アクリレート70〜20重量%と
を共重合して得られる共重合体を水中でエピハロヒドリ
ンを用いて4級化し、カチオン性ポリマーの水分散液と
成し、紙、プラスチックへ塗布して導電性を発現させる
提案(特開昭63−75004号公報)もあるが、この
場合、帯電防止効果の点でまだまだ満足のいくものでは
なかった。
【0011】同様に、制電性官能基として、アミノアル
キルアクリレートの4級化物を用いた例が、特公平5−
17923号(特開昭60−229904号)に開示さ
れている。すなわち、エチレン−アクリル酸エチル−ジ
メチルアミノエチルアクリレートの三元共重合体をトリ
アルキルホスフェートで4級化してなるカチオン性共重
合体を、ポリオレフィン(樹脂)、ポリエステルエラス
トマー、ポリスチレン樹脂、ABS、ポリアミド樹脂な
どにブレンドして帯電防止性の樹脂組成物が得られるこ
とが示されている。
【0012】しかしながら、4級化反応に用いるトリア
ルキルホスフェートに関しては、これが高価であるため
経済的に不利であるというばかりでなく、後述する実施
例にて示すように、トリアルキルホスフェートでは4級
化反応が完全に進行せず、その結果として3級アミノ基
であるジメチルアミノエチルアクリレート単位が残存す
る。
【0013】かかるカチオン性共重合体を樹脂組成物の
一成分として用いた場合、帯電防止効果が劣る他、成形
体製造時、例えばフィルム製造時の裁断片(ぐず)を再
び原料樹脂として利用するときに、加熱加工時に、残存
アミノ基の変質に起因すると考えられる着色を呈した
り、また、熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂やポリエステ
ル樹脂のようにアミド結合やエステル結合を有する樹脂
の場合は、機械的強度の著しい低下をもたらすという問
題があった。
【0014】また、同特許(特公平5−17923号)
には、同カチオン性共重合体の水性分散液をポリエステ
ルフィルムまたは紙に塗布して帯電防止性のフィルムま
たは紙を得ることが示されているが、いずれにしても経
済的な不利、帯電防止性能の効果の点での不足及びフィ
ルム裁断片の再利用の場合の着色や機械的強度低下の不
利は免れない。
【0015】以上のような制電性官能基を有する高分子
化合物の欠点を解決すべく、本発明者らは、第4級アン
モニウム塩基含有アクリルアミド構造単位を有するポリ
エチレン共重合体を提案し(特開平4−198308号
公報)、またこの共重合体の水性組成物をポリエチレン
テレフタレートフィルムやポリエチレンシートに塗布乾
燥することにより摩擦耐久性のある帯電防止フィルムが
得られることを提案している。
【0016】この共重合体の水性組成物を塗布して用い
ると、確かに帯電防止効果とその耐久性に優れたものに
なり、上記した問題点におけるかなりの部分は解決され
るものの、該アクリルアミド系共重合体の製造過程のア
ミド化反応において、長時間高温に晒す必要があるため
着色、特に濃い黄色の着色が免れず、結果として、射出
成形等により成形品にした場合、外観的に支障をきた
し、すなわち成形品の色相が満足できず、成形加工品に
適用しようとする際の問題となった。
【0017】
【課題を解決するための手段と作用】この発明は、この
ような従来の問題点に着目してなされたものである。す
なわち、安価で優れた色調性と帯電防止性を有する本発
明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂100
重量部(以下、単に「部」という)と、(B)下記の構
造単位が線状に配列してなる重量平均分子量1,000
〜50,000の(メタ)アクリル酸エステル系共重合
体3〜30部とを含有してなるものである。
【0018】一般式:
【化7】 (式中、Rは水素原子またはメチル基)で表わされる
ポリオレフィン構造単位65〜99モル%、一般式:
【化8】 (式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数
1〜12のアルキル基を示す)で表わされる(メタ)ア
クリレート構造単位0〜15モル%、及び一般式:
【化9】 (式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数
2〜8のアルキレン基、RおよびRはそれぞれ炭素
数1〜4のアルキル基、Rは炭素数1〜12のアルキ
ル基、炭素数6〜12のアリールアルキル基または炭素
数6〜12の脂環アルキル基、Xはハロゲン原子、CH
OSO又はCOSOを示す)で表わされる
(メタ)アクリル酸エステル構造単位1〜35モル%。
【0019】なお、上記構造単位は、規則的に配列して
いてもよいし、不規則に配列していてもよい。
【0020】
【0021】成分(A) 本発明で用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフ
ィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、A
BS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカ
ーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル等が例示
できるが、これらのうち、ポリオレフィン樹脂、ポリス
チレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂を使用
することが、本発明をより効果的に実施できる、という
利点があり好ましい。なお、好ましい例示において、
(A)成分と(B)成分とよりなる組成物とする場合に
あっては、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂がそれぞ
れ上記に加わり、複合フィルム(積層体)とする場合に
あっては、ポリ塩化ビニル樹脂が加わる。
【0022】ここでポリオレフィン樹脂とは、ポリオレ
フィン類、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレ
ン−アクリルエステル共重合体などであり、これらの各
種ポリオレフィン及び共重合体のブレンドも含まれる。
なかでもポリオレフィン類を使用することが、本発明に
おいて樹脂組成物とする場合にあっては(B)成分との
相溶性が優れたものとなるという利点があり、複合フィ
ルム(積層体)とする場合には帯電防止層との接着性が
優れたものとなるという利点があり、好ましい。
【0023】より詳細には、上記ポリオレフィン類は、
高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリ
エチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メ
チルペンテン−1、エチレンとα−オレフィンの共重合
体などであり、このようなポリオレフィン樹脂のうち、
高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリ
エチレン、ポリプロピレンが好ましく、その数平均分子
量としては通常5,000〜500,000のものが用
いられるが、好ましくは10,000〜200,000
のものが適合する。
【0024】また、ABS樹脂については、種類は特に
限定されず、グラフト法やポリマーブレンド法によるも
のが使用できる。また、AS樹脂(アクリロニトリル−
スチレン樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリル−EP
DM−スチレン樹脂)等も使用可能であるが、好ましい
のは、ABS樹脂である。
【0025】ポリスチレン樹脂としては、ポリスチレ
ン、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体、
スチレン−αメチルスチレン共重合体で数平均分子量1
0,000〜200,000のものが好ましい。
【0026】ポリアミド樹脂についても特に限定され
ず、各種のものを使用することができ、脂肪族、芳香族
いずれのポリアミド樹脂であってもよい。分子量につい
ては特に制限はないが、得られる組成物の成形性や物性
を考慮すると数平均分子量としては、4,000〜5
0,000、好ましくは5,000〜30,000が適
合する。
【0027】このようなポリアミド樹脂は、様々な公知
の方法で製造することができる。例えば、三員環以上の
ラクタム、重合可能なω−アミノ酸、二塩基酸とジアミ
ン等の閉環(共)重合や(共)重縮合等によって製造す
ることができる。
【0028】上述のポリアミド樹脂としては、様々なも
のを充当することができるが、その具体例を挙げれば、
ナイロン6;ナイロン6−6;ナイロン6−10;ナイ
ロン11;ナイロン12;ナイロン6−12;ナイロン
4−6等の脂肪族ポリアミド、ナイロン6/6;ナイロ
ン6/6,10;ナイロン6/6,12等の脂肪族共重
合ポリアミド、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタル
アミド;ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミ
ド;キシレン基含有ポリアミド等の芳香族ポリアミドな
どがある。さらには、ポリエステルアミド、ポリエステ
ルエーテルアミドなどを挙げることができる。このうち
好ましいポリアミド樹脂はナイロン6;ナイロン6−6
である。
【0029】ポリ塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニル
の単独重合体、酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン共
重合体が挙げられ、これらにさらに可塑剤を配合した組
成物であってもよい。
【0030】上記ポリエステル樹脂とは、ポリエチレン
テレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレー
ト(PBT)等、結合単位がエステルである樹脂のこと
である。また、上記ポリカーボネート樹脂は、ビスフェ
ノールA等のビスフェノール類をホスゲン若しくは炭酸
エステル等で重縮合させて得られる樹脂である。
【0031】複合フィルムとする場合において、基材と
なる熱可塑性樹脂フィルム(またはシート)は、未延伸
のものでも、1軸または2軸延伸したものでもよい。ま
た、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体からなるあ
るいはこれを含有する帯電防止層との接着性を高めるた
めに、コロナ放電処理やプラズマ放電処理等の表面処理
が施されていてもよい。
【0032】成分(B) 本発明の成分(B)として用いる(メタ)アクリル酸エ
ステル系共重合体は、前記したように、3つの構成単位
(ポリオレフィン構造単位、(メタ)アクリレート構造
単位、(メタ)アクリル酸エステル構造単位)が線状に
配列した重量平均分子量1,000〜50,000の共
重合体である。
【0033】前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合
体中における一般式:
【化10】 で表わされるポリオレフィン構造単位の割合は65〜9
9モル%である。このポリオレフィン構造単位の割合が
65モル%未満である場合には、前記(メタ)アクリル
酸エステル系共重合体の軟化点が低くなり、熱可塑性樹
脂に配合したとき、あるいは熱可塑性樹脂よりなる基材
フィルム(またはシート)に積層したときタックやベタ
ツキに基づく粘着性が生じ、また99モル%を超える場
合には、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の
帯電防止性が小さくなりすぎる。なお、本発明において
は、前記ポリオレフィン構造単位の割合は、軟化点およ
び帯電防止性の釣り合いの点から、85〜97モル%で
あることが特に好ましい。
【0034】前記ポリオレフィン構造単位において、R
は水素原子またはメチル基であるが、Rが水素原子
のものとメチル基のものとが混在していても構わない。
【0035】前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合
体中における一般式:
【化11】 で表わされる(メタ)アクリレート構造単位の割合は0
〜15モル%である。前記構造単位の割合が15モル%
を超える場合には、前記(メタ)アクリル酸エステル系
共重合体の軟化点が低くなり、熱可塑性樹脂に配合した
とき、あるいは帯電防止層として積層したとき、タック
やベタツキに基づく粘着性が生じるようになる。本発明
において、前記構造単位が含まれている場合には、帯電
防止性が向上するので好ましい。なお、本発明において
は、前記構造単位の割合は、軟化点と帯電防止性との釣
り合いの点から、1〜15モル%、とりわけ3〜7モル
%であることが好ましい。
【0036】前記アクリレート構造単位、メタクリレー
ト構造単位において、Rは水素原子またはメチル基で
ある。Rは炭素数1〜12のアルキル基である。かか
るRの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プ
ロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル
基、n−オクチル基、n−ラウリル基が挙げられ、これ
らの基は1分子中に混在してもよい。なお、これらの基
の中では、メチル基およびエチル基は軟化点を維持する
上で特に好ましいものである。
【0037】前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合
体中における一般式:
【化12】 で表わされる(メタ)アクリル酸エステル構造単位の割
合は1〜35モル%である。前記構造単位の割合が1モ
ル%未満である場合には、帯電防止性が小さくなりす
ぎ、また35モル%を超える場合には、前記(メタ)ア
クリル酸エステル系共重合体を熱可塑性樹脂に配合した
とき、あるいは帯電防止層として積層したとき吸湿性が
生じるようになる。さらに、(A)成分と(B)成分よ
りなる組成物から得られた成形製品が着色を帯び、しか
も帯電防止性の耐久性が損なわれる。なお、本発明にお
いては、前記構造単位の割合は、帯電防止性、その耐久
性および吸湿性との釣り合いの点から、3〜15モル%
であることが特に好ましい。
【0038】前記(メタ)アクリル酸エステル構造単位
において、Rは水素原子またはメチル基である。R
は炭素数2〜8のアルキレン基である。かかるRの具
体例としては、たとえばエチレン基、プロピレン基、ヘ
キサメチレン基、ネオペンチレン基などが挙げられ、こ
れらの基は1分子中に混在していてもよい。なお、これ
らの基の中では、製造の容易性および経済性の面からエ
チレン基およびプロピレン基が好ましく、特にプロピレ
ン基が好ましい。
【0039】前記RおよびRはそれぞれ炭素数1〜
4のアルキル基である。かかるRおよびRの具体例
としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基
が挙げられ、これらの基は1分子中に混在していてもよ
い。なお、これらの基の中では、帯電防止性付与の点か
らメチル基およびエチル基が好ましい。
【0040】前記Rは炭素数1〜12のアルキル基、
炭素数6〜12のアリールアルキル基または炭素数6〜
12の脂環アルキル基である。かかるRの具体例とし
ては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i
−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−
オクチル基、n−ラウリル基などのアルキル基;ベンジ
ル基、4−メチルベンジル基などのアリールアルキル
基;シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基などの
脂環アルキル基が挙げられ、これらの基は1分子中に混
在していてもよい。なお、前記Rとしては、耐熱性の
点から、直鎖状アルキル基およびアリールアルキル基が
好ましく、また帯電防止性付与の点から低級アルキル基
が好ましい。特に好ましいRとしては、メチル基およ
びエチル基が挙げられる。
【0041】前記Xは、例えばCl、Br、Iなどのハ
ロゲン原子、CHOSOまたはCOSO
あり、これらは1分子中に混在していてもよい。なお、
これらの中では、帯電防止性の点からCl、CHOS
およびCOSOが好ましい。
【0042】前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合
体の重量平均分子量は、1,000〜50,000であ
る。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーシ
ョンクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の
重量平均分子量のことであり、超高温GPC(絹川、高
分子論文集、第44巻、2号、139〜141頁(19
87年))に準じて測定することができる。この分子量
が1,000未満である場合には、分子量が小さくなり
すぎて熱可塑性樹脂に配合し、加熱したとき揮散するお
それがあり、また50,000を超える場合には、溶融
した時の粘度が大きくなりすぎ、作業性が悪くなる。好
ましい重量平均分子量は3,000〜33,000であ
る。
【0043】本発明に用いられる(メタ)アクリル酸エ
ステル系共重合体は、特に限定はされないが、例えばエ
チレンまたはプロピレンと(メタ)アクリル酸エステル
を高圧重合法により共重合させて得られるポリオレフィ
ン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を、例えば特
開昭60−79008号公報に記載の方法により、加水
分解と同時に熱減成して所望の分子量とし、得られたポ
リオレフィン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)
アクリル酸共重合体をN,N−ジアルキルアミノアルカ
ノールでエステル化した後、4級化剤でカチオン変性す
ることにより得られる。なお、同じ(メタ)アクリル酸
エステル系共重合体は、オレフィンモノマーとN−Nジ
アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートを共重合
し、さらに4級化する方法でも得られるが、色相の点で
前記の高分子変性法によるものの方が好ましい。
【0044】上記(B)成分と(A)成分とを配合して
熱可塑性樹脂組成物を得る場合の、該(B)成分の配合
割合は、(A)成分100部に対し、3〜30部であ
る。成分(B)が3部未満であると帯電防止性が不充分
であり、30部を超えると、不経済的であり、かつ熱変
形温度を低下させる。成分(B)の特に好ましい範囲は
5〜20部である。
【0045】上記した(A)成分と(B)成分の配合方
法は以下の通りである。一軸、または二軸押出し機、ま
たは加圧ニーダー等を用いて成分(A)、(B)を加熱
溶融下で混練することにより組成物とする。あるいは、
予め成分(A)の少量と成分(B)の全量とを混合して
マスターバッチにした後、これに残りの(A)成分を混
合し、更に混練またはそのまま射出成形機、押出成形機
等の成形機にかける。
【0046】本発明の組成物の製品形態としては、フィ
ルム、シート、成形物等が挙げられる。なお、ここでの
「成形物」とは、容器本体、ケース本体、OA機器や生
活電器製品の構成部品またはケーシング、工業用機械器
具における構成部品またはケーシングなどを意味する。
【0047】さらに、本発明の前記(A)成分と(B)
成分からなる熱可塑性樹脂組成物は、(A)成分と同種
の、または異種の基材となる熱可塑性樹脂の表層に積層
して複合フィルムとして用いても充分な帯電防止の目的
を達することができる。
【0048】すなわち、共押し出し装置を使用し、本発
明の熱可塑性樹脂組成物を帯電防止層として、基材樹脂
にラミネートすることにより、帯電防止性に優れたフィ
ルムとすることができる。さらに必要であれば、これに
一軸または二軸に延伸処理してもよい。
【0049】基材となる熱可塑性樹脂は、前記(A)成
分として挙げた樹脂と同じものが挙げられ、その中で
も、ポリオレフィン樹脂が(B)成分との相溶性、混和
性が大きい、という理由で好ましい。
【0050】積層型の複合フィルムとする場合の積層す
る熱可塑性樹脂組成物のフィルムの厚さは、最終の複合
フィルムとしたときに0.1〜50μmであればよい。
かかる厚さが0.1μm未満である場合には、複合フィ
ルムの両フィルムの界面で凝集破壊を生じ、結果的に接
着性が悪化するようになり、また50μmを超える場合
には、組成物フィルム層の柔軟性が顕著となるのでブロ
ッキングを生じるようになる。
【0051】一方、基材となる熱可塑性樹脂のフィルム
層の厚さについては、特に限定はなく、得られる複合フ
ィルムの用途に応じて適宜選択すればよいが、通常は1
0〜500μmが好ましい。
【0052】前記組成物及び熱可塑性樹脂のフィルムの
各々の製造方法には、特に限定はなく、公知の各種成膜
方法を採用することができる。かかるフィルムの製造方
法の具体例としては、キャスト法、インフレーション
法、チューブラ法、テンター法などが挙げられる。
【0053】前記両フィルムを一体化する方法として
は、例えば、前記組成物を加熱溶融させた状態で、又は
エマルションの状態でリバースロールコート法、グラビ
アコート法やバーコート法などにより樹脂フィルム上に
コーティングする方法、熱可塑性樹脂組成物と基材とな
る熱可塑性樹脂を短管内複合法、口金内複合法や溶融押
出しラミネート法等により複合一体化する方法等が挙げ
られるが、本発明はこれによって限定されるものではな
い。
【0054】熱可塑性樹脂(A)の基材フィルムまたは
シートに、本発明における上記(メタ)アクリル酸エス
テル系共重合体(B)よりなる帯電防止層を積層するこ
ともできる。積層の方法については特に限定はなく、公
知の方法を利用できる。
【0055】すなわち、1つの方法として、(メタ)ア
クリル酸エステル系共重合体の水性組成物または有機溶
媒溶液を、リバースロールコーター、グラビアコータ
ー、バーコーター等のコーターにより、基材フィルムの
片面あるいは両面にコーティングし、加熱乾燥する方法
が挙げられる。なお、この際、水性組成物または有機溶
媒溶液に、本発明の目的が阻害されない範囲で、バイン
ダー(エマルション樹脂など)、充填剤(炭酸カルシウ
ム、タルク)、酸化防止剤、着色剤などを配合し塗布し
てもよい。
【0056】また、他の方法としては、基材フィルムと
なる熱可塑性樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系共重
合体を各々溶融下で押し出し、ラミネーションする方法
が挙げられるが、水性組成物を塗布、乾燥する方法が簡
便に実施できるので好ましい。
【0057】かくして得られる複合フィルムは、そのま
までも帯電防止性フィルムとして充分製品に供せられる
が、必要に応じて、1軸または2軸に延伸してもよい。
【0058】本発明の熱可塑性樹脂(A)よりなる樹脂
層と、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(B)よ
りなる帯電防止層とを積層してなる帯電防止性樹脂複合
フィルムにおける厚みについては、特に限定はないが、
通常10〜1,000μmであり、また前記帯電防止層
の厚みは、0.05μm〜50μmである。帯電防止層
の厚みが0.05μm未満の場合、帯電防止効果が不足
し、50μmを超える場合、不経済を招く。
【0059】前記アクリル酸エステル系共重合体を水性
組成物とする方法には特に限定はない。その一例を挙げ
れば、例えば、通常のポリエチレンエマルションを製造
する際に採用されている高圧乳化法などがあげられる。
すなわち、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、水
および必要であるなら界面活性剤を、例えばオートクレ
ーブ等の機械的撹拌装置を備えた高圧容器中に仕込み、
撹拌しながら加熱する方法などがあげられる。水性組成
物とは、水に乳化、分散または可溶化した状態のものを
いう。
【0060】前記界面活性剤としては、非イオン性およ
びカチオン性のものが好ましい。アニオン性のものは、
カチオン性を呈する(メタ)アクリル酸エステル系共重
合体とイオン的に錯体を形成し、水に対して不溶性を呈
するので好ましくない。なお、本発明に用いる(メタ)
アクリル酸エステル系共重合体は、それ自身が乳化力を
有するものであるので、界面活性剤は必ずしも必要では
ない。
【0061】前記界面活性剤を多量に使用した場合に
は、得られる水性組成物を用いたときに耐久性の低下を
招き、かつ粘着性を呈するようになるので、通常(メ
タ)アクリル酸エステル系共重合体100部に対して界
面活性剤の使用量が25部以下、好ましくは20部以下
とすることが望ましい。
【0062】前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合
体、水および界面活性剤を高圧容器中に仕込んだのち加
熱する温度は、通常(メタ)アクリル酸エステル系共重
合体が溶融する温度よりも5〜20℃高い温度、すなわ
ち60〜200℃で行なうことが好ましい。また加熱時
間は、加熱温度によって異なるが、10分〜1時間程度
で充分である。
【0063】加熱温度が低すぎる場合、及び加熱時間が
あまりにも短すぎる場合には、経時的に沈殿物を生じ安
定性の悪い組成物となり、また、加熱温度が高すぎる場
合、及び加熱時間が長すぎる場合には、経済的に不利と
なるばかりでなく、(メタ)アクリル酸エステル系共重
合体の加水分解が生じるようになる。
【0064】上記水性組成物に占める前記(メタ)アク
リル酸エステル系共重合体の割合は特に限定はなく、本
発明の水性組成物の目的および用途に応じて適宜調整す
ればよいが、通常経済性等を考慮して、水性組成物10
0部に対して5〜40部、好ましくは、10〜30部で
ある。
【0065】
【実施例】(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(B
成分)および比較例で使用した(メタ)アクリルアミド
系共重合体(B´成分)の具体的な製造例を以下に示す
(特開平4−198307号公報参照)。
【0066】製造例1 温度計、撹拌機、滴下ロートおよびディーン・スターク
分水器を備えた1リットルの4つ口フラスコに、トルエ
ン400ml、エチレン−アクリル酸エチル−アクリル
酸共重合体(エチレン/アクリル酸エチル/アクリル酸
=93/3/4、線状に不規則に配列)150gおよび
パラトルエンスルホン酸1.0gを仕込んだ。
【0067】次に、N,N−ジメチルアミノプロパノー
ル21.1gを仕込み、オイルバスを用いて110℃に
加熱し、生成した水をキシレンとの共沸により連続的に
除去し、さらに、110℃で5時間反応し、水が生成し
なくなり水の共沸が認められなくなるまでエステル化反
応を継続した。
【0068】得られた反応物460gを80℃まで冷却
し、その反応混合物に滴下ロートからヨウ化メチル2
8.7gを1時間かけて徐々に滴下した。この間、発熱
が認められたが、冷却することにより反応温度を90℃
に維持した。滴下終了後、100℃で4時間熟成反応を
行なった。このようにして得られた反応物を多量のメタ
ノール中へ投入し、生成した沈殿物を回収、乾燥してア
クリル酸エステル系共重合体(B成分)を得た。このア
クリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量を測定し
たところ、18,500であった。
【0069】製造例2〜9 製造例1と同様にして、[表1]に示す(メタ)アクリ
ル酸エステル系共重合体(B成分)を調製した。
【0070】製造例10(比較製造例) 温度計、撹拌機、滴下ロートおよびディーン・スターク
分水器を備えた1リットルの4つ口フラスコに、キシレ
ン400ml、エチレン−アクリル酸エチル−アクリル
酸共重合体(エチレン/アクリル酸エチル/アクリル酸
=93/3/4、線状に不規則に配列)150gおよび
パラトルエンスルホン酸1.0gを仕込んだ。
【0071】次に、N,N−ジメチルアミノプロピルア
ミン21.1gを仕込み、オイルバスを用いて140℃
に加熱し、生成した水をキシレンとの共沸により連続的
に除去し、さらに、140℃で17時間反応し、水が生
成しなくなり水の共沸が認められなくなるまでアミド化
反応を継続した。
【0072】得られた反応物458gを80℃まで冷却
し、その反応混合物に滴下ロートからヨウ化メチル2
8.7gを1時間かけて徐々に滴下した。この間、発熱
が認められたが、冷却することにより反応温度を90℃
に維持した。滴下終了後、100℃で4時間熟成反応を
行なった。このようにして得られた反応物を多量のメタ
ノール中へ投入し、生成した沈殿物を回収、乾燥して黄
褐色のアクリルアミド系共重合体を得た。このアクリル
アミド系共重合体の重量平均分子量を測定したところ、
19,400であった。
【0073】製造例11〜13(比較製造例) 製造例10と同様にして、[表2]に示す(メタ)アク
リルアミド系共重合体、(メタ)アクリル酸エステル系
共重合体を調製した。
【0074】製造例14(比較製造例) 特公平5−17923号公報記載の実施例にしたがって
エチレン−エチルアクリレート共重合体(エチレン/エ
チルアクリレート=92/8(モル%))と、ジメチル
アミノプロピルアルコールを無溶剤下ニーダー中でエス
テル変換反応させてエチレン−エチルアクリレート−ジ
メチルアミノプロピルアクリレート(92/3.5/
4.5(モル%))共重合体を得た。
【0075】次いで、この三元共重合体40gをニーダ
ー中でトリメチルホスフェート70gを用いて140
℃、30分間4級化反応を行なった。4級化反応率は約
89%であり、得られた共重合体は黄色で重量平均分子
量20,000であった。
【0076】[表1]および[表2]に、上記製造例1
〜9、13、14で得た(メタ)アクリル酸エステル系
共重合体(B成分)の各構造単位におけるR〜R
よびXならびに各構造単位の量をモル比で示すととも
に、上記製造例10〜12で得られた、下記の一般式
[化13]、[化14]および[化15]で表わされる
構造単位からなる(メタ)アクリルアミド系共重合体
(B´成分)の各構造単位におけるQ〜QおよびX
ならびに各構造単位の量をモル比で示す。一般式;
【化13】 で表わされるポリオレフィン構造単位、一般式;
【化14】 で表わされる(メタ)アクリレート構造単位、及び一般
式;
【化15】 で表わされる(メタ)アクリルアミド構造単位。
【0077】また、[表3]には上記各共重合体の重量
平均分子量および色調を示した。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】実施例1〜9および比較例1〜6 製造例1〜9、13、14で得られた(メタ)アクリル
酸エステル系共重合体、または製造例10〜12で得ら
れた(メタ)アクリルアミド系共重合体30部、及び下
記[表4]に成分(A)として記載した熱可塑性樹脂7
0部を二軸押出し機(KRCニーダー、栗本鉄工所製)
を用いて溶融、混練して成分(B)または成分(B´)
を30%含有するマスターバッチを得た。
【0082】次いで、前記した熱可塑性樹脂(成分
(A))と上記マスターバッチを所定量配合し、射出成
形機(Hipershot3000,新潟鉄工所製)を
用いて加工し、成形品を得た。
【0083】
【表4】
【0084】上記により得られた成形品を用いて、帯
電防止性、その持続性および製品の外観性を評価し
た。
【0085】帯電防止性の評価 帯電防止性の評価は、表面固有抵抗の測定により行っ
た。その表面固有抵抗の測定方法は、次の通りである。
すなわち、成形試験片を20℃、30%RH(相対湿
度)または20℃、60%RHの条件下に24時間放置
後、(株)川口電気製作所製、超絶縁系R−503型を
用いて表面固有抵抗値を測定した。結果を[表5]に記
載する。
【0086】帯電防止性の持続性の評価 帯電防止性の持続性の評価は以下の通りに行った。すな
わち、成形試験片を40℃のオーブン中で14日間エー
ジングした後に、その表面を洗剤としてママレモン(ラ
イオン(株)製)水溶液を用いて充分に洗浄後、イオン
交換水で充分にすすぎ、その後20℃、60%RHの雰
囲気中で24時間放置し、前記の方法で表面固有抵抗を
測定した。結果を[表5]に併記する。
【0087】外観性の評価 外観性の評価は、無添加樹脂よりなる成形品と比較し
て、製品の色調を目視で判断した。すなわち、着色の影
響をまったく受けず、製品の色が無添加樹脂よりなる成
形品と変わらな場合には○とし、若干黄色を帯び、製品
が淡黄色を呈していたが許容範囲である場合には△と
し、着色の影響を強く受け、製品が濃い黄色を呈してい
た場合には×とした。結果を[表5]に併記する。
【0088】
【表5】
【0089】[表5]から明らかなように、本発明の熱
可塑性樹脂組成物によって得られた成形品は優れた帯電
防止性を示し、この帯電防止性は洗浄によってもほとん
ど衰えない。また、比較例1と実施例1、比較例2と実
施例3、比較例3と実施例8の比較により、本発明の組
成物により得られた成形品は着色が免れてなり、その色
調性に関して優れていることが分かる。
【0090】実施例10 ポリアミド66(レオナNy66 1702、旭化成工
業(株)製)85部と製造例1で得られたカチオン性共
重合体15部とのブレンド物を240〜250℃に加熱
したTダイ式の成膜装置に導入し、厚さ50μm、幅5
00mmの未延伸フィルムとした。
【0091】得られたフィルムを10cm×10cmに
切り出し、試験用フィルムとした。次に、得られたフィ
ルムについて、表面固有抵抗、耐水性、耐ブロッキング
性、透明性及び強伸度を以下の方法に従って調べた。そ
の結果を[表6]に示す。
【0092】(イ)表面固有抵抗 表面固有抵抗 試験フィルムを20℃、30%RH(相対湿度)又は2
0℃、60%RHの条件下に24時間放置後、(株)川
口電気製作所製、超絶縁系R−503型を用いて表面固
有抵抗値を測定した。
【0093】持続性 試験フィルムを30日間室温で保存後、20℃、60%
RHの条件下で24時間放置後、前記と同様にして表
面固有抵抗値を測定した。
【0094】耐水性 試験フィルムを40℃のオープン中で14日間エージン
グした後に、その表面を洗剤としてママレモン(ライオ
ン(株)製)水溶液で十分に洗浄後、イオン交換水で十
分にすすぎ、その後20℃、60%RHの雰囲気中で2
4時間放置し、前記と同様に表面固有抵抗値を測定し
た。
【0095】(ロ)耐ブロッキング性 試験フィルム2枚を20cm×20cmのガラス板には
さみ、40℃のオーブンに入れ、14日間エージングし
た。14日後にフィルムをとりだし、手で引き剥がし、
ブロッキングの有無を測定した。 ○:ブロッキングなし ×:ブロッキングあ
り。
【0096】(ハ)透明性 試験フィルムの透明性を目視により判定した。 ○:透明性良好 ×:透明性に問題あ
り。
【0097】(ニ)強伸度 試験フィルムを幅10mm、長さ100mmに切り出
し、厚さ(Tmm)を測定した。このサンプルをチャッ
ク間50mmに設定したテンシロン型引張り試験装置に
かけ、300mm/minの速度で引張り、破断強さ
(S1)と破断伸び(S2)をはかり、次式により引張
り強度及び伸度を求めた。
【0098】引張り強度(kg/mm)=S1(k
g)/[10(mm)×T(mm)] 伸度(%)=[S2(mm)×100]/50(m
m)。
【0099】(ホ)外観性の評価 外観性の評価は、無添加樹脂よりなるフィルムと比較し
て、製品の色調を目視で判断した。すなわち、着色の影
響を全く受けず、製品の色が無添加樹脂よりなる成形品
と変らない場合には○とし、若干黄色を帯び製品が淡黄
色を呈していたが許容範囲である場合には△とし、着色
の影響を強く受け、製品が濃い黄色を呈していた場合に
は×とした。結果を[表6]に併記する。
【0100】実施例11 ポリアミド66に変えてポリプロピレン樹脂(徳山曹達
(株)製、UPポリプロME−230)85部を使用
し、製造例1のカチオン性共重合体に変えて製造例4の
カチオン性共重合体15部を使用する、という以外は、
実施例10と同様に行ない、厚さ500μm、幅500
mmの未延伸フィルムを得た。
【0101】次いで、このフィルムを150〜160℃
に加熱し、縦延伸倍率5倍、横延伸倍率4倍に逐次延伸
して2軸延伸フィルムを得た。
【0102】得られた2軸延伸フィルムについて実施例
10と同様の試験を行なった。結果を[表6]に示す。
【0103】実施例12 ポリアミド66に変えてポリスチレン(エスブライト5
00SD、昭和電工(株)製)95部を用い、カチオン
性共重合体として製造例5の共重合体を5部使用する、
という以外は実施例10と同様に行なった。結果を[表
6]に示す。
【0104】実施例13 ポリアミド66に変えて低密度ポリエチレン(UBEポ
リエチレン F022宇部興産(株)製)95部を用
い、カチオン性共重合体として製造例7の共重合体5部
を使用し、成膜加工温度を200〜210℃とする、と
いう以外は実施例10と同様に行なった。結果を[表
6]に示す。
【0105】実施例14 ポリアミド66に変えてポリエチレンテレフタレート
(ダイヤナイト KR461S、三菱化成(株)製)9
5部用い、カチオン性共重合体として実施例8の共重合
体を5部用い、成膜加工温度を245〜255℃とす
る、という以外は実施例10と同様に行なった。結果を
[表6]に示す。
【0106】比較例7、8 カチオン性共重合体として製造例10(比較例7に相
当)、製造例14(比較例8に相当)で得た共重合体を
使用するという以外は、実施例10と同様に行なった。
結果を[表6]に示す。
【0107】
【表6】
【0108】[表6]に示した結果から明らかなよう
に、本発明の熱可塑性樹脂組成物で作成したフィルム
は、優れた帯電防止能を有し、しかもフィルムの透明
性、外観および強伸度を低下させることがなく、また、
耐ブロッキング性に優れたものである。
【0109】実施例15 製造例2で得たアクリル酸エステル系共重合体10部
と、低密度ポリエチレン(宇部興産(株)製 UBEポ
リエチレン F022)90部をドライブレンドして2
00〜210℃で押出し成形機にかけ積層用熱可塑性樹
脂組成物とした。前記と同じ低密度ポリエチレンを主押
出し機に、また前記の積層用熱可塑性樹脂組成物を副押
出し機に200〜210℃で導入し、次いで短管内複合
装置を装備した共押し出しフィルム化装置に導入して2
00〜210℃で共押し出しし、25℃に冷却されたロ
ールを通して厚さ100μmのフィルム(帯電防止性樹
脂複合フィルム)を得た。
【0110】フィルムの厚さは、低密度ポリエチレン層
が75μm、帯電防止層が25μmであった。得られた
フィルムの積層面について、実施例10と同様の試験を
行なった。結果を[表7]に示す。
【0111】実施例16 低密度ポリエチレンに変えて、ポリプロピレン(UPポ
リプロME−230、徳山曹達(株)製)を使用すると
いう以外は、実施例15と同様にして行なった。結果を
[表7]に示す。
【0112】比較例9、10 製造例14で得たアクリル酸エステル系共重合体を使用
するという以外は、実施例15(比較例9に相当)、実
施例16(比較例10に相当)と同様に行なった。結果
を[表7]に示す。
【0113】
【表7】
【0114】実施例17〜26及び比較例11〜16 各種の熱可塑性樹脂をTダイ式成膜装置を備えた押し出
し成形機に導入して、厚さ100μmの未延伸の基材フ
ィルムを得た(使用した熱可塑性樹脂の種類は下記[表
8]、[表9]参照)。
【0115】次いで、この基材フィルムにバーコーター
を用いて、製造例1〜14で得られた共重合体の水性組
成物(いずれも固型分濃度20%)を、乾燥後の付着量
が、2.0g/m(厚さ2μm)となるように塗布
し、一夜室温で乾燥後、105℃で2分間通風乾燥し
て、複合フィルム(帯電防止性樹脂複合フィルム)を得
た。
【0116】得られた複合フィルムについて、下記の方
法にしたがって、表面固有抵抗、外観性(透明
性)、摩擦耐久性、密着性、耐ブロッキング性を
調べた。結果を[表8]、[表9]に併記する。
【0117】なお本実施例における水性組成物の調整方
法は以下の通りである。すなわち、製造例1〜14で得
られた共重合体200gと水800gとを、内容量2リ
ットルのガラス製オートクレーブに仕込み、120℃、
2.5kg/cmの加圧下で1時間加熱撹拌して、樹
脂固型分20%の半透明状の水性組成物を得た。
【0118】表面固有抵抗 得られた複合フィルム(試験フイルム)を20℃、30
%RH並びに20℃、60%RHの雰囲気中に48時間
放置した後、アドバンテスト(株)製極超絶縁計R83
40を用いて表面固有抵抗値を測定した。
【0119】外観性(透明性) 表面固有抵抗値の測定に使用した複合フィルムの透明性
を、目視により下記基準で判定した。 ○……着色の影響を全く受けず未塗布フィルムと全く変
らない △……若干黄色を帯び、実用上やや問題あり ×……着色の影響を受け黄色を呈し、実用上問題。
【0120】摩擦耐久性 高さ2cmのシャーレにタバコの新しい灰を入れる。表
面固有抵抗値の測定に使用した複合フィルム片の塗布面
を、脱脂綿で摩擦し、ただちにシャーレ上に置き、灰の
付着状態を観察した。灰が付着したときの摩擦回数で摩
擦耐久性を評価した。摩擦回数が多いものほど耐久性は
良好である。
【0121】密着性 基材フィルムと同じ熱可塑性樹脂で成形した成形板に、
水性組成物を乾燥後の重量が2g/mとなるように塗
布し、一夜放置した後、105℃、2分間通風乾燥して
得た試験片における10mm×10mmの部分に1mm
の等間隔で直交する方向に傷をつけて100個の1mm
角の矩形からなる碁盤目を形成した。
【0122】この碁盤目にセロハンテープを圧着した
後、強い力で引き剥がし、セロハンテープに付着せず試
験片から剥がれなかった矩形の数を数える。数字が大き
いほど密着性が大きいことを示している。
【0123】耐ブロッキング性 試験フィルム2枚を20cm×20cmのガラス板に挟
み、40℃のオープンに入れ、14日間エージングし
た。14日後にフィルムを取り出し、手で引き剥がし、
ブロッキングの有無を測定した。 ○……ブロッキングなし ×……ブロッキング
あり。
【0124】
【表8】
【0125】
【表9】
【0126】実施例17と比較例11との比較、実施例
20と比較例12との比較、実施例25と比較例14と
の比較、実施例18と比較例15との比較、実施例19
と比較例16との比較により、本発明のフィルムは、外
観に優れ、帯電防止性能、摩擦耐久性、密着性において
も優れている。
【0127】また、実施例17〜26と比較例14との
比較により、(メタ)アクリレート単位が多いと耐ブロ
ッキング性が低下することが分かる。
【0128】実施例27および比較例17 実施例18、比較例15で得たポリプロピレンを基材フ
ィルムとする積層体フィルムの裁断物を230℃で溶融
ペレダイズしたものを10部と、ポリプロピレン(UP
ポリプロ ME−230、徳山曹達(株)製)90部と
を混合して、230℃でTダイ法により、厚さ100μ
mのポリプロピレンフィルムを得、このフィルムに関し
て、実施例18、比較例15と同様の試験を行なうとと
もに下記の方法によって、強伸度についての試験も行な
った。結果を[表10]に記載する。
【0129】強伸度 試験フィルムを幅10mm、長さ100mmに切り出
し、厚さ(Tmm)を測定した。このサンプルをチャッ
ク間50mmに設定したテンシロン型引張り試験装置に
かけ、300mm/minの速度で引張り、破断強さ
(S1)と破断伸び(S2)をはかり、次の式により引
張り強度及び伸度を求めた。
【0130】引張り強度(kg/mm)=S1(k
g)/[10(mm)×T(mm)] 伸度(%)=[S2(mm)×100]/50(m
m)。
【0131】
【表10】
【0132】[表10]により、本発明の積層体は、加
熱サイクルにおいて、外観、強度に悪影響がないことが
分かる。
【0133】実施例28および比較例18 実施例19、比較例16で得たポリエチレンテレフタレ
ートを基材フィルムとする積層体フィルムの裁断物を2
55℃で溶融ペレタイズしたものを10部、ポリエチレ
ンテレフタレート(ダイヤナイト KR461S、三菱
化成(株)製)90部を混合して255℃でTダイ法に
より厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィ
ルムを得、実施例19、比較例16と同様の試験を行な
うとともに、強伸度の試験(実施例27参照)について
も同様に行なった。結果を[表11]に記載する。
【0134】
【表11】
【0135】[表11]により、本発明の積層体は、加
熱サイクルにおいて、外観、強度に悪影響がないことが
分かる。
【0136】
【発明の効果】本発明により、帯電防止効果とその持続
性および着色が免れ色調性に優れた樹脂成形品が得られ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−54466(JP,A) 特開 平5−295188(JP,A) 特開 平2−276869(JP,A) 特開 平1−92211(JP,A) 特開 昭54−95636(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 1/00 - 101/16 B32B 7/02 B32B 27/30

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)熱可塑性樹脂100重量部と (B)下記構造単位が線状に配列してなる重量平均分子
    量1,000〜50,000の(メタ)アクリル酸エス
    テル系共重合体3〜30重量部とを含有してなる熱可塑
    性樹脂組成物。 一般式: 【化1】 (式中、Rは水素原子またはメチル基)で表わされる
    ポリオレフィン構造単位65〜99モル%、 一般式: 【化2】 (式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数
    1〜12のアルキル基を示す)で表わされる(メタ)ア
    クリレート構造単位0〜15モル%、及び 一般式: 【化3】 (式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数
    2〜8のアルキレン基、RおよびRはそれぞれ炭素
    数1〜4のアルキル基、Rは炭素数1〜12のアルキ
    ル基、炭素数6〜12のアリールアルキル基または炭素
    数6〜12の脂環アルキル基、Xはハロゲン原子、CH
    OSO又はCOSOを示す)で表わされる
    (メタ)アクリル酸エステル構造単位1〜35モル%。
  2. 【請求項2】熱可塑性樹脂よりなる樹脂層と、請求項1
    記載の熱可塑性樹脂組成物よりなる帯電防止層とを積層
    してなる帯電防止性樹脂複合フィルム。
  3. 【請求項3】前記樹脂層が、ポリオレフィン樹脂よりな
    る請求項2記載の帯電防止性樹脂複合フィルム。
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