JP3305273B2 - カレンダー加工用非結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物 - Google Patents

カレンダー加工用非結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物

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安基 児玉
秀一 築田
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はカレンダー加工性に
優れた非結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物
に係る。
【0002】
【従来の技術】一般にポリエチレンテレフタレートシー
トは食品などの包装材、建築、家電、自動車などの積層
用シートとして使用されている。これらの分野に使用さ
れているポリエチレンテレフタレートシートは、従来か
ら押出成形法および射出成形法により製造されている。
これらの方法は、特定の厚さになるようにダイスを調整
した後、溶融樹脂を排出して樹脂の軟化温度より急激に
冷却しながら引き取る加工方法であり、引き取りロール
や金型などからの引き剥がしが容易である反面、ダイス
を調整しても局部的に厚さの著しく異なる部分がしばし
ば発生することがあり、このようなシートは、印刷、各
種ラミネート、コーティングなどの加工に不適切である
ばかりか、ブリスターパックやトレー、キャリアテープ
などへの二次成形に際して、シートの穴あきなどの原因
となっていた。
【0003】これらの成形方法に比べてカレンダー加工
法は、量産性に優れているほか、溶融樹脂を加熱された
金属ロールで圧延して所望の厚さのシートにする方法の
ため、ダイス付近で起こる各種のトラブルがなく、局部
的に厚さの異なる部分の発生も少ないなど、品質的にも
優れ、同じ規格の商品を多量に生産するのに適し、ポリ
塩化ビニルなどの汎用樹脂製シートの成形加工に広く用
いられてきた。
【0004】しかし、同じカレンダー加工法であって
も、非結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いる
場合には、金属ロールからの剥離性が悪く加工が困難で
あったため、樹脂に各種の添加剤を加えることで改善が
試みられたが、少量では十分な剥離効果が得られず、多
量に添加すると得られたシートの透明性を悪化させるな
どの問題があって、剥離性と透明性を両立させたカレン
ダー加工用の非結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂
組成物を得ることができなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、カレンダー加工に際し、高温度に温度調整され
た金属ロールからの剥離がよく、透明性および表面平滑
性に優れ、フローマークなどが発生しないシート状成形
物を極めて経済的に生産することができる、カレンダー
加工用非結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物
(以下、単に非結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂
組成物とする)を得ようとすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の結晶性ポリエ
チレンテレフタレート樹脂組成物は、非結晶ポリエチ
レンテレフタレート樹脂 100重量部に対し、有機リン酸
エステル類、または有機リン酸エステル類と脂肪酸エス
テル類を 0.1〜5重量部配合してなるものであって、好
ましくは有機リン酸エステル類が、一般式:R1O(CH2CH2
O)nPO[O(CH2CH2O)mR2]2-Y (OH)Y …(式中、R1、R2はそ
れぞれ同一または異なる炭素数4〜24のアルキルまたは
アルカリール基、Yは1または2の整数、n、mはそれ
ぞれ1〜100の整数を表す)で示される化合物、特には
前記一般式におけるn、mとして、それぞれ5〜55の異
なるポリオキシエチレン基を有するノニルフェニルポリ
オキシエチレンリン酸エステルまたはそれぞれ4〜10の
異なるポリオキシエチレン基を有するトリデシルポリオ
キシエチレンリン酸エステルのいずれかであり、脂肪酸
エステル類が、炭素数12〜28の脂肪族飽和カルボン酸と
炭素数2〜30の脂肪族飽和アルコールとのエステルから
なる合成ワックス、または天然ワックスのいずれか、特
にはモンタン酸グリコールエステル、モンタン酸グリセ
リドまたはモンタンワックスが用いられる。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の非結晶性ポリエチレンテ
レフタレート樹脂組成物で用いる非結晶性ポリエチレン
テレフタレート樹脂は透明なものがよく、これには例え
ば、主成分として、テレフタル酸: 100モル%、エチレ
ングリコール:30〜90モル%及び1,4−シクロヘキサ
ンジメタノール:10〜70モル%、特には、テレフタル酸
100モル%、エチレングリコール:65〜80モル%及び
1,4−シクロヘキサンジメタノール:20〜35モル%か
らなるものがカレンダー加工性の点で好ましい。
【0008】有機リン酸エステル類は一般式:RO(CH
CHO)PO[O(CHCHO)R] −Y (OH) (式
中、R、Rはそれぞれ同一または異なる炭素数4〜24
のアルキルまたはアルカリール基、Yは1または2の整
数、n、mはそれぞれ1〜 100の整数を表す)で示され
る化合物で、これには例えば、オクチルポリオキシエチ
レン(n、m=5〜25:それぞれのn、mが5〜25の異
なるポリオキシエチレン基を有する混合エステルの意、
以下同じ)リン酸エステル、デシルポリオキシエチレン
(n、m=5〜25)リン酸エステル、ドデシルポリオキ
シエチレン(n、m=4〜10)リン酸エステル、トリデ
シルポリオキシエチレン(n、m=4〜10)リン酸エス
テル、オクチルフェニルポリオキシエチレン(n、m=
5〜55)リン酸エステル、ノニルフェニルポリオキシエ
チレン(n、m=5〜55)リン酸エステル、ドデシルフ
ェニルポリオキシエチレン(n、m=5〜55)リン酸エ
ステルなどが挙げられる。これらの内ではトリデシルポ
リオキシエチレン(n、m=4〜10)リン酸エステルま
たはノニルフェニルポリオキシエチレン(n、m=5〜
55)リン酸エステルが好ましい。
【0009】脂肪酸エステル類は、炭素数12〜28の脂肪
族飽和カルボン酸と炭素数2〜30の脂肪族飽和アルコー
ルとのエステルからなる合成ワックス、または天然ワッ
クスが挙げられる。前者の合成ワックスを構成する炭素
数12〜28の脂肪族飽和カルボン酸には、例えば、ラウリ
ン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノ
セリン酸、セロチン酸、モンタン酸などが挙げられ、炭
素数2〜30の脂肪族飽和アルコールには、例えば、エチ
ル、オクチル、ラウリル、ミリスチル、ステアリル、ベ
ヘニル、ペンタコシル、セリル、オクタコシル及びメリ
シルの各アルコール、並びにエチレングリコール、グリ
セリンなどの多価アルコールなどが挙げられる。
【0010】上記合成ワックスには、例えば、ラウリン
酸ステアリル、ミリスチン酸ステアリル、ステアリン酸
ステアリル、ベヘン酸オクチル、ベヘン酸ラウリル、ベ
ヘン酸ミリスチル、ベヘン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘ
ニル、ベヘン酸ペンタコシル、リグノセリン酸セリル、
リグノセリン酸オクタコシル、リグノセリン酸メリシ
ル、セロチン酸ステアリル、セロチン酸ベヘニル、セロ
チン酸セリル、セロチン酸メリシル、モンタン酸エチ
ル、モンタン酸セリル、モンタン酸グリコールエステル
などが挙げられる。また天然ワックスには、モンタンワ
ックス、カルナウバワックス、ビーズワックス、カンデ
リラワックス、ヌカロウ、イボタロウなどが挙げられ
る。これらの内では、モンタン酸グリコールエステル、
モンタン酸グリセリド、モンタンワックスが好ましい。
【0011】本発明の非結晶性ポリエチレンテレフタレ
ートシート樹脂組成物は、非結晶ポリエチレンテレフタ
レート樹脂 100重量部に、有機リン酸エステル類、また
は有機リン酸エステル類と脂肪酸エステル類を 0.1〜5
重量部、好ましくは 0.2〜3重量部添加配合してなるも
のであるが、この添加量が0.1 重量部未満では、カレン
ダー用金属ロールからの剥離効果がないほかバンクの回
転が悪く、5重量部を超えると、シートの透明性が損な
われ表面平滑性も損なわれるので好ましくない。
【0012】なお、上記非結晶性ポリエチレンテレフタ
レート樹脂組成物には、上記各成分に加えて、さらに必
要に応じて、安定剤、界面活性剤、酸化防止剤、帯電防
止剤、充填剤、紫外線吸収剤、着色料などを、カレンダ
ー加工適性と透明性を阻害しない範囲で添加することが
できる。
【0013】本発明の非結晶性ポリエチレンテレフタレ
ート樹脂組成物は、上記各成分をミキサーなどで混合し
た後、押出機などで混練し、カレンダー加工機を用いて
シート状物とすればよい。その際、上記シート状物のロ
ール剥離性はきわめて良好で、透明性を損なわず、表面
平滑性に優れており、フローマークや肌荒れ、エアーマ
ークを生じず、優れた外観のシート状物として高い生産
性で加工することができる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の具体的態様を実施例および比
較例を挙げて説明する。 (実施例1〜5、比較例1〜6)非結晶性ポリエチレン
テレフタレート樹脂 100重量部に下記材料を表1に示す
量(重量部)添加してヘンシェルミキサーで均一に混合
し、押出機により樹脂温度 200℃まで混練して本発明の
非結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を調製
した。これを、一番ロールと二番ロールの表面温度がそ
れぞれ 210℃、三番ロールが 200℃、最終ロールが 195
℃にそれぞれ温度調整された逆L形4本ロールのカレン
ダー加工機を用いて、厚さ 0.3mm、幅 1,000mmのシート
状物に加工した。このときのヘーズ(曇価)、金属ロー
ル剥離性、得られたシートの表面平滑性を下記基準によ
り評価し、その結果を表1に併記した。
【0015】(使用材料) ・非結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂:PETG コ
ポリエステル 6763(イーストマンケミカル社製、商品
名) ・有機リン酸エステルA:No.1737 [昭島化学工業社
製、商品名、トリデシルポリオキシエチレン(n、m=
4〜10)リン酸エステル] ・有機リン酸エステルB:ノニルフェニルポリオキシエ
チレン(n、m=5〜55)リン酸エステル ・脂肪酸エステル :ホスタルブ WE4(クラリアントジ
ャパン社製、商品名、モンタン酸エチレングリコールエ
ステル) ・アクリル酸系樹脂:L-1000(三菱レイヨン社製、商品
名)
【0016】(評価基準) 「ヘーズ(曇価)」 ・JIS K 7105による厚さ 0.3mmのシートヘーズ(曇価)
が 40未満である…………◎ 40以上60未満である…○ 60以上である…………×
【0017】「金属ロール剥離性」 ・カレンダー金属ロールから溶融軟化したシートの剥離
が良好である…○ ・カレンダー金属ロールから溶融軟化したシートの剥離
が悪い…………×
【0018】「シート表面平滑性」 ・シートの表面がなめらかで平滑である…○ ・シートの表面が荒れて平滑でない………×
【0019】
【表1】
【0020】
【発明の効果】本発明の非結晶性ポリエチレンテレフタ
レート樹脂組成物は、カレンダー加工に際し、高温度に
温度調整された金属ロールからの剥離がよく、透明性、
シート表面平滑性に優れたシート状物を極めて経済的に
生産することができる。
フロントページの続き (72)発明者 児玉 安基 埼玉県大宮市吉野町1丁目406番地1 信越ポリマー株式会社 東京工場内 (72)発明者 築田 秀一 東京都福生市志茂231番地1号コスモハ イツ福生202号室 (72)発明者 ギィマー ファブリス 東京都昭島市朝日町4丁目22番18号SR ビル302号室 (72)発明者 板倉 正明 埼玉県所沢市和ヶ原1丁目126番地の61 (56)参考文献 特開 平11−343353(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 5/18 C08L 67/00 - 67/03

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非結晶性ポリエチレンテレフタレート樹
    脂100重量部に対し、有機リン酸エステル類、または
    有機リン酸エステル類と脂肪族エステル類を0.1〜5
    重量部配合してなることを特徴とするカレンダー加工用
    非結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
  2. 【請求項2】有機リン酸エステル類が、一般式:RO(C
    HCHO)PO[O(CHCH O)R]2−Y (OH)
    (式中、R、Rはそれぞれ同一または異なる炭素数4
    〜24のアルキルまたはアルカリール基、Yは1または2
    の整数、n、mはそれぞれ1〜 100の整数を表す)で示
    される化合物である請求項1記載のカレンダー加工用非
    結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
  3. 【請求項3】有機リン酸エステル類が、前記一般式にお
    けるn、mとして、それぞれ5〜55の異なるポリオキシ
    エチレン基を有するノニルフェニルポリオキシエチレン
    リン酸エステルまたはそれぞれ4〜10の異なるポリオキ
    シエチレン基を有するトリデシルポリオキシエチレンリ
    ン酸エステルのいずれかである請求項2記載のカレンダ
    ー加工用非結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂組成
    物。
  4. 【請求項4】脂肪酸エステル類が、炭素数12〜28の脂肪
    族飽和カルボン酸と炭素数2〜30の脂肪族飽和アルコー
    ルとのエステルからなる合成ワックス、または天然ワッ
    クスのいずれかである請求項1記載のカレンダー加工用
    非結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
  5. 【請求項5】脂肪酸エステル類が、モンタン酸グリコー
    ルエステル、モンタン酸グリセリドまたはモンタンワッ
    クスである請求項4記載のカレンダー加工用非結晶性ポ
    リエチレンテレフタレート樹脂組成物。
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