JP3297078B2 - X線イメージ管およびその製造方法 - Google Patents

X線イメージ管およびその製造方法

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JP3297078B2
JP3297078B2 JP12077592A JP12077592A JP3297078B2 JP 3297078 B2 JP3297078 B2 JP 3297078B2 JP 12077592 A JP12077592 A JP 12077592A JP 12077592 A JP12077592 A JP 12077592A JP 3297078 B2 JP3297078 B2 JP 3297078B2
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    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J29/00Details of cathode-ray tubes or of electron-beam tubes of the types covered by group H01J31/00
    • H01J29/02Electrodes; Screens; Mounting, supporting, spacing or insulating thereof
    • H01J29/10Screens on or from which an image or pattern is formed, picked up, converted or stored
    • H01J29/36Photoelectric screens; Charge-storage screens
    • H01J29/38Photoelectric screens; Charge-storage screens not using charge storage, e.g. photo-emissive screen, extended cathode
    • H01J29/385Photocathodes comprising a layer which modified the wave length of impinging radiation

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  • Image-Pickup Tubes, Image-Amplification Tubes, And Storage Tubes (AREA)
  • Apparatus For Radiation Diagnosis (AREA)
  • Formation Of Various Coating Films On Cathode Ray Tubes And Lamps (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、分解能を向上させたX
線イメージ管およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、X線イメージ管は、一般に医療用
のX線撮像装置や工業用の非破壊検査用のX線工業テレ
ビなどに広く応用されている。
【0003】また、従来のX線イメージ管は、X線が入
力される入力窓を有する真空外囲器を備えている。そし
て、この真空外囲器の内部には、入力窓に対向して湾曲
基板が配置され、湾曲基板の入力窓と反対面には、入力
蛍光スクリーンおよび光電面が順次積層されている。さ
らに、真空外囲器の出力側には、陽極および蛍光スクリ
ーンが配設され、真空外囲器の内部の側壁に沿って集束
電極が配設されている。
【0004】そして、X線管から放射されたX線は、被
写体を通り、入力窓と湾曲基板とを通過して入力蛍光ス
クリーンによって光に変換される。この光は、光電面に
よって電子に変換され、集束電極と陽極とによって構成
される電子レンズによって、加速、収束され、出力蛍光
スクリーンによって可視像に変換される。
【0005】そうして、この可視像は、テレビカメラ、
シネカメラまたはスポットカメラなどによって現像さ
れ、医療診断などが行なわれる。
【0006】次に、上記X線イメージ管に用いる入力蛍
光スクリーンの一例を図1を参照して説明する。
【0007】この入力蛍光スクリーンは、アルミニウム
基板1上によう化セシウム(CsI)の蛍光体層として
の不連続層2を形成し、この不連続層2上によう化セシ
ウムの蛍光体層としての連続層3を積層させ、光電面4
を連続して形成している。
【0008】そうして、上述の入力蛍光スクリーンは、
まず、ライトガイド効果を有している。すなわち、よう
化セシウムは、波長420nm付近の発光に対する屈折
率が1.84であり、理論上、結晶中で生じた発光は、
図10に示すように、臨界角33°以上の鈍角で結晶と
真空との界面に達すると、全反射して結晶の外に出られ
なくなる。このため、発光の一部は光電面4に到達し、
光は強制的に結晶成長方向に伝送される。
【0009】また、結晶と真空の界面とでの光の減衰が
生ずる。したがって、臨界角33°以下の角度で結晶の
外に出た光は、再度隣接する別の不連続層2に到達す
る。このとき、ほとんどの光は、結晶内に取り込まれる
が、一部は図10に示すようにフレネル反射により元の
結晶に戻される。なお、結晶から真空に出るときも同様
である。このようにして、横方向へ広がる光は次第に減
衰し、結晶成長方向から外れた光ほど界面を通る回数が
多くなり、減衰の度合いが大きくなる。そこで、発光は
結晶成長方向に近いほど少ない減衰量で光電面4に到達
する。
【0010】上述のように、不連続層で発光した光は、
発光点からあまり離れていない光電面4上に到達するこ
とになり、入力蛍光スクリーン単体としての分解能が得
られる。
【0011】そして、近年のX線イメージ管は、被写体
を透過したX線信号をできるだけ多く拾うことを目的と
して、入力蛍光スクリーンの厚さを400μm以上に設
定してX線吸収効率の向上を図っている。
【0012】また、上記作用のうち、ライトガイド効果
は、入力蛍光スクリーンの厚さに依存しないが、真空と
界面とでの光の減衰については、入力蛍光スクリーンの
厚さが厚くなると界面による減衰の効果が弱くなり、入
力蛍光スクリーンの分解能が低下する。
【0013】この分解能を補強するために、不連続層2
の径を細くして面方向の光学的界面を密にすることが考
えられる。そして、このように光学的界面を密にするこ
とにより、横方向へ広がる光は、単位光路長当たり減衰
される割合が増加すると考えられる。
【0014】また、不連続層2の径は、スクリーン蒸着
工程における基板温度に依存するので、蒸着時に基板温
度を150℃に維持したまま、4.5Paの圧力下でよ
う化セシウム膜を形成させたところ、6μmの結晶柱の
不連続層2が形成され、基板温度を180℃に維持した
ところ、9μmの不連続層2が形成された。
【0015】これらの不連続層2が形成された入力蛍光
スクリーンの解像度を測定したところ、20lp/cm
で、CTF(Contrast Transfer Function)値はいずれ
も24%前後で略等しく、50lp/cmでも6μmの
入力蛍光スクリーンの方が1%上回ったにすぎなかっ
た。なお、この程度のCTFの差であると、入力蛍光ス
クリーンをX線イメージ管内部に装着した場合、撮像系
を経てテレビ画面上に現れる差は小さい。
【0016】特に、真空と界面とでの光の減衰を向上さ
せるものとして、たとえば特開昭62−43046号公
報に記載されているように、不連続層の結晶柱間に光吸
収層を介在させるもの、特開昭59−121733号公
報に記載されているように、不連続層の結晶柱間に光反
射物質の粉末を充填するものが知られている。
【0017】ところが、不連続層の結晶柱間は1μm程
度であり、これら結晶柱間の間隙を加工することは非常
に困難である。
【0018】さらに、銅を混入させた柱状蛍光体を酸化
性雰囲気でアニールすることにより、柱状蛍光体の光学
界面に酸化膜を形成する構成が特公昭54−4071号
公報に記載されている。
【0019】しかしながら、この特公昭54−4071
号公報記載の構成のものでは、柱状蛍光体内の光は、入
力蛍光面の酸化膜により反射されて蛍光体外に出力され
ない旨記載されている。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】上述の特開昭62−4
3046号公報または特開昭59−121733号公報
に記載のように、真空と界面とでの光の減衰を向上させ
るものとして、不連続層の結晶柱間に光吸収層を介在さ
せたり、あるいは光反射物質の粉末を充填することは、
不連続層の結晶柱間が1μm程度であり、これら結晶柱
間の間隙を加工することは非常に困難である問題を有し
ている。
【0021】また、特開昭62−43046号公報記載
のように、不連続層の結晶柱間に光吸収物質を介在さ
せ、不連続層の結晶柱間で蛍光体からの光を吸収するも
のの場合、分解能を十分に向上させることができない問
題を有している。
【0022】さらに、特公昭54−4071号公報記載
の構成では、柱状蛍光体内の光は、入力蛍光面の酸化膜
に反射されて出力できない問題を有している。
【0023】本発明は、上記問題点に鑑みなされたもの
で、簡単な構成で、分解能を向上させることができるX
線イメージ管およびその製造方法を提供することを目的
とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】請求項1記載のX線イメ
ージ管は、X線を光に変換する蛍光体と、この蛍光体か
らの発光を吸収する光吸収物質が含有され、光学的界面
により面方向に不連続な形状で、かつ、前記光学的界面
に光吸収物質が析出された不連続層を有する入力蛍光ス
クリーンとを具備したものである。
【0025】請求項2記載のX線イメージ管は、X線を
光に変換する蛍光体と、この蛍光体からの発光を吸収す
る光吸収物質が含有され、光学的界面により面方向に不
連続な形状で、かつ、前記光学的界面近傍ほど光吸収物
質の濃度が高い不連続層を有する入力蛍光スクリーンと
を具備したものである。
【0026】請求項3記載のX線イメージ管は、X線を
光に変換する蛍光体を有する蛍光体層を備えたX線イメ
ージ管において、前記蛍光体層は、前記蛍光体を主とし
て構成する元素イオンよりもある気体に対して活性であ
るとともに、前記蛍光体層の結晶中で金属イオンとして
存在する場合よりも結晶外で前記気体の化合物として存
在する場合の方が効果的に前記蛍光体の発光を吸収する
元素を含み、かつ、光学的界面により面方向に不連続な
構造であるものである。
【0027】請求項4記載のX線イメージ管は、請求項
3記載のX線イメージ管において、蛍光体層は、酸化
銅、酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガン、酸化ストロン
チウムおよび酸化水銀の少なくとも1種を含むものであ
【0028】求項記載のX線イメージ管の製造方法
は、X線を光に変換する蛍光体を有する蛍光体層を備え
たX線イメージ管の製造方法において、主として構成す
る元素イオンよりもある気体に対して活性であるととも
に、結晶中で金属イオンとして存在する場合よりも結晶
外で前記気体の化合物として存在する場合の方が効果的
に発光を吸収する元素を含有させ、この元素が含有され
た表面に前記気体を接触させ、表面側に近いほど光の発
光を吸収する前記蛍光体層を形成するものである。
【0029】
【作用】請求項1記載のX線イメージ管は、入力蛍光ス
クリーンが、光学的界面により面方向に不連続な形状
で、光学的界面に光吸収物質を析出させたことにより、
蛍光体からの発光が結晶成長方向からはずれると、入力
蛍光スクリーンの光路が長くなって減衰量が増加して
が減衰して分解能が向上する。
【0030】請求項2記載のX線イメージ管は、入力蛍
光スクリーンが、光学的界面により面方向に不連続な形
状で、不連続層は含有された光吸収物質が光学的界面近
傍ほど光吸収物質の濃度が高くなっているため、蛍光体
からの発光が、結晶成長方向からはずれたほど、入力蛍
光スクリーンの光路が長くなるので、減衰量が増加して
分解能が向上する。
【0031】請求項3記載のX線イメージ管は、蛍光体
層を光学的界面により面方向に不連続な構造とすること
により、蛍光体を主として構成する元素イオンよりもあ
る気体に対して活性であるとともに、蛍光体層の結晶中
で金属イオンとして存在する場合よりも結晶外で化合物
として存在する場合の方が効果的に蛍光体の発光を吸収
する元素を用いることにより、蛍光体層内部よりも、気
体の多い光学的界面で活性化して化合物となり効率的に
発光を吸収し、横方向に拡がる光を減衰させて光の拡散
を抑制し、分解能を向上させる。
【0032】請求項4記載のX線イメージ管は、請求項
3記載のX線イメージ管において、蛍光体層は、酸化
銅、酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガン、酸化ストロン
チウムおよび酸化水銀の少なくとも1種を含むため、有
効に蛍光体層内の発光を吸収できる
【0033】求項記載のX線イメージ管の製造方法
は、主として構成する元素イオンよりもある気体に対し
て活性であるとともに、結晶中で金属イオンとして存在
する場合よりも結晶外で気体の化合物として存在する場
合の方が効果的に発光を吸収する元素を含有させ、この
元素が含有された表面に気体を接触させるため、表面に
近いほど気体との接触が大きくなり、容易に表面側に近
いほど光の発光を吸収する蛍光体層を形成でき、効率的
に発光を吸収し、横方向に拡がる光を減衰させて光の拡
散を抑制し、分解能を向上させる。
【0034】
【実施例】以下、本発明のX線イメージ管の一実施例を
図面を参照して説明する。
【0035】本発明の一実施例のX線イメージ管も従来
例と同様にX線を光に変換する入力蛍光スクリーンを有
し、この入力蛍光スクリーンも図1に示すようになって
いる。すなわち、入力蛍光スクリーンは、アルミニウム
(Al)基板1上に面方向に蛍光体層としての不連続な
ファイバ柱状の多数の柱状結晶のファイバ体2aからなる
よう化セシウム(CsI)の不連続層2を形成し、この
不連続層2上によう化セシウムの連続層3を積層させ、
光電面4を連続して形成している。
【0036】そして、不連続層2には、平均濃度0.1
wt%以下、より好ましくは0.01〜0.1wt%の
よう化鉄(FeI2 )が混入され、透明度は低くなって
おり、不連続層2の結晶中の表面には、鉄(Fe)の酸
化物の層が形成されている。
【0037】また、不連続層2および連続層3には、タ
リウムイオン(Tl+ )、ナトリウムイオン(N
+ )、カリウムイオン(K+ )が発光効率向上のた
め、適当な濃度含有されている。
【0038】なお、隣接するファイバ体2aの間隔、即ち
光学的界面の間隔は、0.1〜40μmが好ましく、よ
り好ましくは0.1〜3μmであり、ファイバ体2aの径
は40μm以下が好ましく、より好ましくは5〜15μ
mである。
【0039】次に、上記X線イメージ管の製造装置を図
2を参照して説明する。
【0040】図2は、入力蛍光スクリーンの製造装置で
ある。11は真空槽で、この真空槽11の内部には、アルミ
ニウム基板1が載置されている。そして、アルミニウム
基板1の上部には加熱ヒータ12、下部にはボート13,14
がそれぞれ配設されている。また、一方のボート13に
は、0.1wt%のよう化鉄(FeI2 )が混入された
よう化セシウム(CsI)が、他方のボート14には、よ
う化セシウム(CsI)が入れられている。
【0041】そして、まず、加熱ヒータ12でアルミニウ
ム基板1を180℃に加熱し、真空槽11内の圧力を4.
5×10-1Paに保った状態で、一方のボート13を加熱
し、アルミニウム基板1に膜圧が380μmの柱状の不
連続層2を形成する。この状態で、引き続き、アルミニ
ウム基板1を180℃に加熱し、真空槽11の圧力を10
-3Pa以下の状態にして、他方のボート14を加熱し、不
連続層2上に約20μmの厚さの連続層3を形成する。
そうして、これら不連続層2および連続層3が形成され
たアルミニウム基板1を、空気中にさらし200℃で2
時間ベーキングする。
【0042】さらに、作用について説明する。
【0043】X線イメージ管の入力蛍光スクリーンを構
成する物質であるよう化セシウム(CsI)は、イオン
結晶であるから、格子中のセシウムイオン(Cs+ )も
しくはよう素イオン(I- )は、容易に他の化学種イオ
ンと置き変わることができる。たとえば、入力蛍光スク
リーンにおいては、発光効率を上げるために、化学式1
に示すように、タリウムイオン(Tl+ )、ナトリウム
イオン(Na+ )を微量添加している。
【0044】
【化1】 この性質を利用すると、結晶格子を保ったまま、不連続
層2に光吸収物質を混入することができる。これは、多
価イオンでも可能であり、添加量が少ない場合は不連続
層2の蛍光体本来の物性を損ねることは少ない。また、
たとえば2価の鉄イオン(Fe++)の場合は、化学式2
に示すようになる。
【0045】
【化2】 このようにして、ある種の化学種のイオンが混入した結
晶には、純よう化セシウム(CsI)もしくはナトリウ
ムイオン(Na+ )が加えられたよう化セシウム(Cs
I)にはなかった光吸収特性があり、もともとは、発光
に対してほぼ透明であった入力蛍光スクリーンも光透過
率が小さくなる。
【0046】したがって、発光が不連続層2の結晶方向
から外れた方向に向かう光ほど光電面4に到達する距離
が長くなり、入力蛍光スクリーンの投下率が小さいほ
ど、光電面4上で発光点から離れたところに到達する減
衰は大きくなり、入力蛍光スクリーンの分解能は向上す
る。
【0047】また、結晶中に注入する物質を選択するこ
とにより、混入物質の分布を変化させることができる。
たとえば均一に鉄イオン(Fe++)が混入されたよう化
鉄(FeI2 )の結晶を酸素雰囲気中で加熱すると、化
学式3のように不連続層2の結晶の表面付近、すなわち
光学的界面には、鉄(Fe)の酸化物が析出する。
【0048】
【化3】 なお、このときセシウムイオン(Cs+ )は、鉄イオン
(Fe++)よりも酸素(O2 )に対して不活性なのでセ
シウム(Cs)の酸化物はできにくく、不連続層2の蛍
光膜の劣化は少ない。
【0049】さらに、不連続層2の表面付近の酸化反応
が進むにつれて鉄イオン(Fe++)が欠乏するものの、
加熱によりバルク中の鉄イオン(Fe++)が拡散して補
充されるから、反応はさらに進み、不連続層2の結晶表
面、すなわち光学的界面に近いほど高濃度の酸化鉄(F
2 3 )の層が形成される。
【0050】このような反応により精製された入力蛍光
スクリーンは、結晶バルク中の光吸収物質である光吸収
イオンの濃度が低くなり、不連続層の蛍光体の発光効率
の低下を最小限に抑えることができ、さらに、光吸収物
質である鉄のような酸化物を選択すると、光減衰性の機
能も同等に保つことができる。
【0051】上述のように製造された入力蛍光スクリー
ンを入力視野9インチ、出力径直径25mmのX線イメ
ージ管に装着したら、図3に示す効果が得られた。すな
わち、上記入力蛍光スクリーンを用いたX線イメージ管
の視野サイズ9インチのときのCTF値Aは、従来のX
線イメージ管の視野サイズを4.5インチに拡大したC
TF値Bとほぼ同様であり、従来のX線イメージ管の視
野サイズを同じ9インチにしたときのCTF値Cに比べ
て、大きく向上した。
【0052】また、他の実施例として、酸化鉄に代えて
酸化銅を用いた構成について説明する。
【0053】そして、図1に示す実施例の不連続層2
に、鉄に代えて平均濃度0.1wt%以下、より好まし
くは0.01〜0.1wt%の銅(Cu)を混入し、不
連続層2の各ファイバ体2aの結晶中の表面に、銅の酸化
物である酸化銅(CuO)からなる黒色膜5を被覆した
ものである。
【0054】なお、銅という元素は、蛍光体を主として
構成するたとえばナトリウム付活よう化セシウム(Cs
I:Na)などの元素イオンよりも、酸素に対して活性
であるとともに、連続層3の結晶中で金属イオンとして
存在する場合よりも、結晶外で酸化物として存在する場
合の方が、効果的に蛍光体の発光を吸収するものであ
る。
【0055】なお、同様に、隣接するファイバ体2aの間
隔、即ち光学的界面の間隔は、0.1〜40μmが好ま
しく、より好ましくは0.1〜3μmであり、ファイバ
体2aの径は40μm以下が好ましく、より好ましくは5
〜15μmである。
【0056】このように、銅を用いる場合にも図2に示
す入力蛍光スクリーンの製造装置を使用する。
【0057】このように銅を用いる場合、一方のボート
13には、0.02wt%のよう化銅(CuI)が混入さ
れたよう化セシウム(CsI)および微量のよう化ナト
リウム(NaI)が、他方のボート14には、よう化セシ
ウム(CsI)および微量のよう化ナトリウム(Na
I)が入れられている。そして、よう化鉄を含んだ不連
続層2および連続層3と同様の動作を行ない、最後に、
アルミニウム基板1を空気中にさらし280℃で5時間
ベーキングして形成する。
【0058】さらに、上記入力蛍光スクリーンの構造が
得られる理由について説明する。
【0059】X線イメージ管の入力蛍光スクリーンを構
成する物質であるよう化セシウム(CsI)は、イオン
結晶であるから、格子中のセシウムイオン(Cs+ )も
しくはよう素イオン(I- )は、容易に他の化学種イオ
ンと置き変わることができる。たとえば、入力蛍光スク
リーンにおいては、発光効率を上げるために、化学式4
に示すように、タリウムイオン(Tl+ )、ナトリウム
イオン(Na+ )を微量添加している。
【0060】
【化4】 この性質を利用すると、結晶格子を保ったまま、不連続
層2に光吸収物質を混入することができる。これは、多
価イオンでも可能であり、添加量が少ない場合は不連続
層2の蛍光体本来の物性を損ねることは少ない。また、
たとえば1価の銅イオン(Cu+ )の場合は、化学式5
に示すようになる。
【0061】
【化5】 なお、このような構造の結晶は、よう化セシウムによう
化銅の粉末同士を混ぜ合わせたものを真空蒸着すること
により得られる。
【0062】また、図5に示すように、銅イオン(Cu
+ )は、蛍光体を構成するセシウムイオン(Cs+ )お
よびよう素イオン(I- )に比べて酸素(O2 )に対し
て活性であるから、空気中にさらすことにより酸化させ
ることができる。
【0063】このとき
【化6】
【化7】 の反応式となる。そして、酸素は、不連続層2の内部よ
り、光学的界面に多く供給されるため、光学的界面を中
心に反応が生ずる。
【0064】さらに、不連続層2の表面付近の酸化反応
が進むにつれて銅イオン(Cu+ )が欠乏するものの、
加熱によりバルク中の銅イオン(Cu+ )が拡散して補
充されるから、反応はさらに進み、不連続層2の結晶表
面、すなわち光学的界面に近いほど高濃度の酸化銅(C
u0)の黒色膜5が形成される。
【0065】この黒色膜5が形成される反応が行なわれ
る場合の、十分な反応速度を得るための温度は、よう化
銅が酸化され酸化銅が形成される際のよう素ガス
(I2 )の量をモニターすることにより求めることがで
きる。
【0066】すなわち、図6に示すように、横軸に時
間、縦軸によう素ガスの発生総量を採り、測定値をプロ
ットしていくと、温度を280℃にまで上昇させたとき
に、急激によう素ガスの量が多くなるので、280℃の
温度が化学式6、化学式7の反応を起こすのに十分な温
度といえる。
【0067】そして、上述のような結晶中の不純物を酸
素中で加熱することにより析出させることについては、
Journal of Crystal Growth 7 (1970)の259頁〜26
0頁の「GROWTH OF Mn2 3 THIN FILMS BY IMPURITY D
IFFUSION FROM VOLUME TO SURFACE IN IMPURE NaCl CRY
STALS 」などに記載されている。
【0068】したがって、上記実施例では、よう化セシ
ウム(CsI)粉末によう化銅粉末を混合したものを真
空蒸着してファイバ体2aからなる不連続層2を形成し、
次に、よう化セシウム(CsI)粉末を蒸着して連続層
3を形成し、その後、空気中で280℃で5時間加熱す
ることにより、ファイバ体2aの光学的界面に高濃度の酸
化銅(CuO)の黒色膜5を容易に形成することが可能
である。この場合、連続層3と接するファイバ体2aの表
面は空気と接していないので、高濃度の酸化銅(Cu
O)の黒色膜5は形成されていない。
【0069】一方、加熱条件及び結晶の寸法と、結晶表
面への不純物の析出状態との関係は、Revista Mexican
de Fisica 30 (4) (1984) 685頁〜692頁に記載さ
れている。この記載によると、加熱時間をt、結晶寸法
をlとすると、t/l2 が析出の進行状況を示すパラメ
ーターとなっている。言い換えると、結晶寸法をn倍に
すると、結晶表面に不純物が析出するに必要な加熱時間
はn2 にしなければならないことを示しており、結晶の
中の不純物が表面に到達する距離が長くなることが原因
である。
【0070】このようなことから、不連続層2を構成す
るファイバ体2aの径が大きい場合には、極端に長い加熱
時間が必要である。加熱時間が長くなると、量産性に劣
るだけでなく、熱により結晶がくずれた構造となる。実
際に様々な径のファイバ体2aを製作したところ、ファイ
バ体2aの径が50μmを越えると、24時間の加熱でC
uOの黒色膜5の量は極端に少なくなることが判明し
た。
【0071】以上を考慮すると、空気中での加熱温度は
60〜350℃が好ましく、より好ましくは260〜3
00℃であり、加熱時間は24時間以下が好ましく、よ
り好ましくは3〜5時間である。
【0072】また、隣接するファイバ体2aの光学的界面
間の間隔は、加熱工程において酸素供給源となってい
る。したがって、この間隔が狭すぎると、加熱の途中で
酸素量が不足し、反応速度で遅くなる。実際に作成した
膜では、幅はすべて0.3μm以上であり、問題はなか
ったが、0.1μmより狭くなると、数10オングスト
ロームの酸化膜でも形成が困難となる。
【0073】次に、上記実施例の効果について、次に示
す3種類の実施例を用いた場合について説明する。
【0074】 サンプルD:従来の蛍光スクリーンを260℃で真空加
温したもの サンプルE:0.002wt%のよう化銅を混入した蛍
光スクリーンを実施例に示す方法で作成したもの サンプルF:0.002wt%のよう化銅を混入した蛍
光スクリーンを実施例に示す方法で作成し、さらに、2
60℃で真空加温したもの なお、サンプルDの260℃での真空加温は、蛍光体の
活性のための工程である。
【0075】また、サンプルEは空気中での加温の工程
を省略したもので、サンプルFは空気中で加温すること
により、酸化銅が形成され灰色に変色している。
【0076】そして、サンプルFは、図8に示すよう
に、CTF曲線はサンプルDに比べて大幅に向上してい
る。また、サンプルFは、外観が灰色であるにもかかわ
らず、発光量は図示しないがサンプルDの36%に達し
ている。この外観が灰色であるにもかかわらず発光量の
低下が少ないことについては、バルクの結晶中の銅イオ
ンが含まれず、図9に示すように、透明であることに起
因していると考えられる。
【0077】逆に、サンプルEは、CTF曲線はサンプ
ルDに比べて差異がない。しかも、サンプルEは、透明
にもかかわらず、バルクの結晶中に銅イオンが多く含ま
れているため、蛍光体CsI/Na+ の発光を妨げ、発
光量は図示しないがサンプルDの29%にまで低下し
た。
【0078】上述のように製造された入力蛍光スクリー
ンを入力視野9インチ、出力径直径25mmのX線イメ
ージ管に装着したら、図9に示すようにCTF曲線が向
上する効果が得られた。このとき、スクリーン単体の実
験のときと同様に、サンプルFはサンプルDに比べ、輝
度((cd/m2 )/mRisec )の低下が認められる
が、輝度の低下を防止するためには、光吸収材の濃度を
低下させるか、光吸収材を含む部分を入力蛍光スクリー
ンの厚さ方向の一部に限定すればよく、X線イメージ管
の各用途に必要な輝度に応じて濃度、構造を検討すれば
よい。
【0079】なお、上記実施例のように、0.02wt
%のよう化銅の混入では、十分な透明度が得られてお
り、光電面4からはなれた部分の発光にも寄与してお
り、X線イメージ管の重要な性能ファクターであり、入
射X線信号をできるだけ多く有効な信号として取り出す
能力の劣化は少ない。
【0080】上述のように、一旦、結晶中に光吸収材の
元となるイオンを混入させ、後の酸化処理により光吸収
材の元になるものを結晶界面に析出させる一連の工程
は、高分解性能が要求されるX線イメージ管のファイバ
構造を持った入力蛍光スクリーンの形成工程に組み合わ
せることにより、絶大な効果を発揮し、なおかつ、非常
に簡単な所望の構造が得られるので、工業的生産手段と
しても有用である。
【0081】また、よう化セシウム(CsI)に含有す
る光吸収物質としては、鉄イオン(Fe++)または銅イ
オン(Cu+ )以外の物質として、クロム(Cr)、マ
ンガン(Mg)、ストロンチウム(Sr)、水銀(H
g)のように鉄(Fe)に近い化学的性質を示し、よう
化セシウム(CsI)の結晶格子中に取り込まれる光吸
収物質なら、1個もしくは複数個の元素などを用いても
同様の効果が得られる。なお、蒸着プロセスにおいて、
よう化セシウム(CsI)に近い蒸気圧で、同時に蒸発
するものである必要はある。
【0082】さらに、酸素(O2 )以外のたとえば窒素
ガス(N2 )、アンモニアガスなどの気体雰囲気中で着
色する物質でも有効である。なお、窒素を含む雰囲気中
で熱処理を行なう場合には、クロム、鉄などを使用可能
である。
【0083】またさらに、連続層3は光電面4に近いた
め、光電面4の変質を避けるため、鉄(Fe)のような
光吸収物質を含まないものがよい場合もある。
【0084】以上説明したX線イメージ管は、X線管お
よび撮像装置と組み合わせて、X線撮影システムとして
使用することが可能で、たとえば図3は、透視系および
間接撮影系X線撮影システムの一例を示す図である。
【0085】図3に示すように、X線管21に対して、X
線イメージ管22を配置し、このX線イメージ管22のX線
グリッド23に対向して被写体24を配置する。一方、X線
イメージ管22の出力側には、ハーフミラー25を配置し、
このハーフミラー25によりテレビジョンレンズ26を介し
てテレビジョンカメラ27に送られテレビジョンモニタ28
に映像できるようにするとともに、シネカメラ29および
スポットカメラ30に映像されるようになっている。
【0086】そして、X線管21からX線が被写体24に照
射され、被写体24を透過してX線透視像が形成される。
このX線透視像は、X線グリッド23を通り、散乱X線が
除去れて、X線イメージ管22に入射する。X線透視像は
ここで明るい可視光像に変換され、透視系の場合にはテ
レビジョンレンズ26を透過してテレビジョンカメラ27に
より撮像され、テレビジョンモニタ28上にX線透視像が
出力される。間接撮影系の場合にはハーフミラー25によ
り、光量の90%をシネカメラ29に送り込み、残りの1
0%をテレビジョンカメラ27に送ってテレビジョンモニ
タ28上にX線透視像が出力される。また、必要に応じ
て、ハーフミラー25が反転して90%の光がスポットカ
メラ30の側に送り込まれ、ロールフィルムまたはカット
フィルム上にX線透視像を印画する。
【0087】このように、上記実施例のX線イメージ管
によれば、高感度撮像素子を組み合わせることによりS
/N比は従来と同等で、かつ高分解性能を有することが
できる。
【0088】上記実施例のX線イメージ管によれば、入
力蛍光スクリーンを構成する蛍光体柱状結晶の相互に隣
接する側面には、内部より光吸収元素の濃度が高い、こ
の元素の化合物を含む光吸収層が形成されているため、
横方向の光の拡散が抑制され、それによって分解能の向
上が可能である。また、ファイバ体2aと連続層3との界
面には光吸収層が存在しないため、発光効率および輝度
の低下が少ない。
【0089】
【発明の効果】請求項1記載のX線イメージ管によれ
ば、入力蛍光スクリーンが、光学的界面により面方向に
不連続な形状で、光学的界面に光吸収物質を析出させた
ことにより、蛍光体からの発光が結晶成長方向からはず
れると、入力蛍光スクリーンの光路が長くなって減衰量
が増加して光が減衰して分解能を向上できる。
【0090】請求項2記載のX線イメージ管によれば、
入力蛍光スクリーンが、光学的界面により面方向に不連
続な形状で、不連続層は含有された光吸収物質が光学的
界面近傍ほど光吸収物質の濃度が高くなっているため、
蛍光体からの発光が、結晶成長方向からはずれたほど、
入力蛍光スクリーンの光路が長くなるので、減衰量が増
加して分解能を向上できる。
【0091】請求項3記載のX線イメージ管によれば、
蛍光体層を光学的界面により面方向に不連続な構造とす
ることにより、蛍光体を主として構成する元素イオンよ
りもある気体に対して活性であるとともに、蛍光体層の
結晶中で金属イオンとして存在する場合よりも結晶外で
化合物として存在する場合の方が効果的に蛍光体の発光
を吸収する元素を用いることにより、蛍光体層内部より
も、気体の多い光学的界面で活性化して化合物となり効
率的に発光を吸収し、横方向に拡がる光を減衰させて光
の拡散を抑制し、分解能を向上させることができる。
【0092】請求項4記載のX線イメージ管によれば、
請求項3記載のX線イメージ管に加え、蛍光体層は、酸
化銅、酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガン、酸化ストロ
ンチウムおよび酸化水銀の少なくとも1種を含むため、
有効に蛍光体層内の発光を吸収できる
【0093】求項記載のX線イメージ管の製造方法
によれば、主として構成する元素イオンよりもある気体
に対して活性であるとともに、結晶中で金属イオンとし
て存在する場合よりも結晶外で気体の化合物として存在
する場合の方が効果的に発光を吸収する元素を含有さ
せ、この元素が含有された表面に気体を接触させるた
め、表面に近いほど気体との接触が大きくなり、容易に
表面側に近いほど光の発光を吸収する蛍光体層を形成で
き、効率的に発光を吸収し、横方向に拡がる光を減衰さ
せて光の拡散を抑制し、分解能を向上させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のX線イメージ管の入力蛍光スクリーン
の一実施例を示す断面図である。
【図2】同上X線イメージ管の入力蛍光スクリーンの製
造装置を示す説明図である。
【図3】同上X線イメージ管を用いたシステムを示す説
明図である。
【図4】同上X線イメージ管の入力蛍光スクリーンと従
来例の入力蛍光スクリーンとのCTF値を示すグラフで
ある。
【図5】同上X線イメージ管の入力蛍光スクリーンの他
の実施例を示す断面図である。
【図6】同上入力面のアニール工程中のよう素ガス発生
総量の時間との関係を示すグラフである。
【図7】同上入力面の分光透過光量を示すグラフであ
る。
【図8】同上X線イメージ管の入力蛍光スクリーンと従
来例の入力蛍光スクリーンとのCTF値を示すグラフで
ある。
【図9】同上X線イメージ管と従来例のX線イメージ管
のCTF値を示すグラフである。
【図10】入射角と反射との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
2 蛍光体層としての不連続層 2a ファイバ体

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 X線を光に変換する蛍光体と、 この蛍光体からの発光を吸収する光吸収物質が含有さ
    、光学的界面により面方向に不連続な形状で、かつ、
    前記光学的界面に光吸収物質が析出された不連続層を有
    する入力蛍光スクリーンと を具備したことを特徴とするX線イメージ管。
  2. 【請求項2】 X線を光に変換する蛍光体と、 この蛍光体からの発光を吸収する光吸収物質が含有さ
    れ、 光学的界面により面方向に不連続な形状で、かつ、
    前記光学的界面近傍ほど光吸収物質の濃度が高い不連続
    を有する入力蛍光スクリーンと を具備したことを特徴とするX線イメージ管。
  3. 【請求項3】 X線を光に変換する蛍光体を有する蛍光
    体層を備えたX線イメージ管において、 前記蛍光体層は、 前記蛍光体を主として構成する元素イオンよりもある気
    体に対して活性であるとともに、前記蛍光体層の結晶中
    で金属イオンとして存在する場合よりも結晶外で前記気
    体の化合物として存在する場合の方が効果的に前記蛍光
    体の発光を吸収する元素を含み、 かつ、 光学的界面により面方向に不連続な構造である ことを特徴としたX線イメージ管。
  4. 【請求項4】 蛍光体層は、酸化銅、酸化鉄、酸化クロ
    ム、酸化マンガン、酸化ストロンチウムおよび酸化水銀
    の少なくとも1種を含む ことを特徴とした請求項3記載のX線イメージ管。
  5. 【請求項5】 X線を光に変換する蛍光体を有する蛍光
    体層を備えたX線イメージ管の製造方法において、 主として構成する元素イオンよりもある気体に対して活
    性であるとともに、結晶中で金属イオンとして存在する
    場合よりも結晶外で前記気体の化合物として存在する場
    合の方が効果的に発光を吸収する元素を含有させ、 この元素が含有された表面に前記気体を接触させ、 表面側に近いほど光の発光を吸収する前記蛍光体層を形
    成する ことを特徴としたX線イメージ管の製造方法。
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