JP6442988B2 - X線耐久性劣化機能を有するシンチレータ、および該シンチレータを有する放射線検出器、並びにこれらの製造方法 - Google Patents
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Description
本発明に係るシンチレータの製造方法は、無機結晶の母材の原料としてのアルカリ金属のヨウ化物と、一価の陽イオンになり得る原子を含む化合物と、賦活剤を含む化合物と、を用いて、基材に対して垂直に規則的な柱状構造の無機結晶を形成させる工程を含み、前記無機結晶に、前記ヨウ化物1モルに対して一価の陽イオンになり得る原子が0.01モル%以上〜0.3モル%以下の量で含まれ、前記賦活剤の原子と1価の陽イオンとなりうる原子とのモル比が1:0.05〜1:1となるように前記無機結晶を製造することを特徴としている。
図1に本発明に係る放射線検出器を示す。図2に、図1のA−A線に沿った放射線検出器の断面を示す。
本発明に係るシンチレータは、アルカリ金属のヨウ化物を母材とし、賦活剤を含有する無機結晶から形成されている。
シンチレータ3を構成する無機結晶の蛍光体は、鮮鋭性の高い発光画像が得られるとの観点から、複数の柱状構造を有する結晶(柱状結晶)であることが好ましい。各柱状結晶の柱径は2.0〜20.0μmの範囲内が好ましく、3.0〜15.0μmの範囲内がより好ましい。
シンチレータ3を形成する成分の母材としては、アルカリ金属のヨウ化物が好適に用いられ、アルカリ金属のヨウ化物として、ヨウ化セシウム〔CsI〕、ヨウ化ナトリウム〔NaI〕、ヨウ化カリウム〔KI〕等が挙げられる。2種以上のヨウ化物を混合して母材として用いてもよい。上記ヨウ化物のうち、セシウムハライド系であるヨウ化セシウム(CsI)が特に好ましい。ヨウ化セシウム(CsI)は、X線から可視光への変換率が比較的高く、また、蒸着によって容易にシンチレータ3を構成する複数の結晶のそれぞれを柱状結晶構造に形成できるため、光ガイド効果により結晶内での発光光の散乱が抑えられ、シンチレータ(蛍光体)の厚さを厚くすることが可能であるからである。
蛍光体層は、発光効率をさらに向上させることを目的として各種の賦活剤を含有している。この賦活剤としては、タリウム〔Tl〕、ユウロピウム〔Eu〕、インジウム〔In〕、リチウム〔Li〕、カリウム〔K〕、ルビジウム〔Rb〕、ナトリウム〔Na〕などのイオンを例示することができる。400〜750nmまでの広い発光波長を有する蛍光体が得られ、受光素子が蛍光体の発光を最も検出しやすいという観点から、母材がヨウ化セシウム〔CsI〕である場合、賦活剤はタリウムのイオンであることが好ましい。
シンチレータ中の賦活剤の濃度については、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometer:ICP−AES)にて測定することができる。この方法は金属元素等をプラズマ中で励起させたときに発生する光を分光し、各元素特有の波長から定性分析、発光強度から定量分析を行う手法であり、結晶中に含まれる微量無機元素の定量、及び定性ができる。例えば、蒸着によって得られたシンチレータについて柱状結晶の厚さ方向に対し、1層目と2層目の部分で結晶を分割し、分割された各々について少なくとも賦活剤の濃度を測定する。
本発明に係るシンチレータには、一価の陽イオンになり得る原子が所定量含有されている。これらの原子としては、少なくともリチウム〔Li〕、ナトリウム〔Na〕、カリウム〔K〕、ルビジウム〔Rb〕の原子のいずれか1種以上であることが好ましい。一価の陽イオンになり得る原子は以下に説明するように、陰イオン空孔の無効化に寄与する。
トラップ準位の浅い陰イオン空孔を無効化するためには、以下の式(I)に示すように、炭酸イオンを介在させた状態で、一価の陽イオンになり得る原子A(例;ナトリウム原子)を前記陰イオン空孔と会合体を形成させて無帯電化することで無効化することができる。
保護層19は、シンチレータ3を物理的または化学的に保護するものである。母材の化合物がヨウ化セシウム(CsI)である場合、吸湿性が高く空気中に露出したままにしておくと空気中の水蒸気を吸収して潮解してしまうため、これを防止する役割を果たす。保護層19は、水分を透過しない樹脂等で形成することが望ましく、このような樹脂例としてはポリパラキシリレンなどを挙げることができる。
保護層19の表面には、光学補償層13を形成することができる。通常、この光学補償層13は樹脂で形成されており、ここで使用することができる樹脂の例としては熱硬化性の樹脂が挙げられる。熱硬化性の樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂およびシリコーン樹脂を挙げることができる。
基板15の上には光電変換素層14が配置されており、上述のように放射線照射方向(図2において上側)から照射されたX線がシンチレータ3で可視光線に変換され、この可視光線を前記光電変換素層14が検出して電気信号に変換する。
シンチレータパネル(図2の例では、支持体(基材)16〜保護層19)と、光電変換素子層14とをカプリングする光学結合層(不図示)を設けることができる。この光学結合層は、シンチレータパネルと光電変換素子アレイを光学的に連続にする機能を有する。光学的に連続するとは、各層の間を光が進む際に損失なく伝搬することであり、シンチレータパネルと光電変換素子アレイの界面の屈折率差を小さくでき、透明性が高い材料を選択することが好ましい。光学結合層に用いられる材料としては、シリコン系のゲルまたはオイルが好ましい。
支持体16とシンチレータ3の接着性向上のため、支持体16とシンチレータ3との間に下引層17を設けることが好ましい。さらに、反射層18を設ける場合は、下引層17と支持体16の間に反射層18を設けることが好ましい。また、1つの層で、前記下引層17と反射層18を兼ねさせてもよい。
支持体16の少なくともシンチレータ3が蒸着される面に反射層18を有することが好ましい。反射層を設けることによって、シンチレータの発光を非常に効率よく取り出すことが出来、輝度が飛躍的に向上する。反射層の例としては、アルミニウム等の金属材料を含む膜や、SiO2やTiO2等の金属酸化物からなる増反射膜、白色顔料等の光散乱粒子と易接着性のポリマー物質との混合物による塗布膜、更にこれらを組み合わせた膜などが挙げられる。
基板15の裏面側には鉛の薄板20を介して基台6が配置されている。また、基台6には、センサパネル等に衝撃が加わって筐体2の内部に衝突するのを防止するために、筐体2の内部の側壁との間に緩衝部材9,9等が適宜取り付けられる。この基台6には、シグナルインターフェイス基板、ゲートインターフェイス基板、コントロール基板および電源基板等の電子部品7,・・・が配設されたPCB基板8,8並びに放射線検出器1の各機能部に電力を供給するバッテリ5等が配設されている。
まず、本発明に係る放射線検出器の製造方法に使用可能な蒸着装置について、図3を参照しながら説明する。なお、図3は抵抗加熱法によって蒸着物質を蒸発させる物理蒸着(PVD)を行う装置であるが、実際の蒸着は、電子線照射装置や高周波誘導加熱手段によって蒸発させる物理蒸着、高電圧印加によりイオン化した気体元素を蒸着物質に衝突させて製膜するスパッタリング、成膜時の基板表面にて化学反応を生ぜしめる気相化学成長(CVD)等の手法を用いて成膜してもよい。
蒸着装置25の真空容器21の内部の底面付近には、支持体16に垂直な中心線を中心とした円の対峙する位置に蒸着源22〜24が配置されている。この場合において、支持体16と蒸着源22〜24との間隔は、例えば100〜1,500mmとするのが好ましく、より好ましくは200〜1,000mmである。また、支持体16に垂直な中心線と蒸着源22〜24との間隔は100〜1,500mmとするのが好ましく、より好ましくは200〜1,000mmである。
本発明に係るシンチレータは、少なくとも以下の蒸着工程により製造できるが、シンチレータの一般的なシンチレータの製造等を考慮すると、通常、例えば、以下の(i)予備加熱工程、(ii)減圧工程、(iii)蒸着工程、(iv)反射層形成工程、(v)下引層形成工程、(vi)冷却工程、および(vii)後処理工程により行われる。以下、図3の蒸着装置を用いて上記工程(i)〜(vii)を行う場合を例にして、本発明に係るシンチレータの製造方法の実施形態について説明する。
本発明に係るシンチレータの製造に使用可能なシンチレータの母材原料の化合物(以下、母材化合物という)として、少なくともアルカリ金属やアルカリ土類金属のヨウ化物が用いられる。このアルカリ金属のヨウ化物の例としては、ヨウ化セシウム〔CsI〕、ヨウ化ナトリウム〔NaI〕、ヨウ化カリウム〔KI〕等が挙げられる。このアルカリ土類金属のヨウ化物の例としては、ヨウ化銅〔CuI〕、ヨウ化カルシウム〔CaI〕等が挙げられる。これらの母材化合物は、例えば、蒸着用として通常市販されているものを使用することができる。
一価の陽イオンになり得る原子を含む化合物(以下、陽イオン生成化合物という)は、一価の陽イオンとなりうるアルカリ金属原子を含む化合物であり、例えば、該アルカリ金属のヨウ化物を挙げることができる。陽イオン生成化合物は、好適には、上記母材化合物に含まれる母材形成用のアルカリ金属原子より原子番号の小さいアルカリ金属原子を含むものである。
上述した一価の陽イオンを含む化合物は、特級試薬に準ずる純度を有するものを入手してシンチレータの製造に用いることができる。
上述した賦活剤を含む化合物(以下、賦活剤化合物という)として、ヨウ化タリウム〔Tl〕、ユウロピウム〔Eu〕を含む化合物、セリウム〔Ce〕を含む化合物、サマリウム〔Sm〕を含む化合物、ビスマス〔Bi〕を含む化合物、銅〔Cu〕を含む化合物、テルビウム〔Tb〕を含む化合物などの賦活剤の原子を含むヨウ化物を例示することができる。なお、これらの化合物としては、EuS、EuF3、Eu2O3や、EuCl3等のハロゲン化物のような酸化物(例:Eu2O3)、硫化物(例:EuS)、複酸化物(例:Eu2O3−Y2O3)、硝酸塩(例:Eu(NO3)3)、硫酸塩(例:EuSO4)、炭酸塩(例:EuCO3)等の塩を例示することができる。なお、賦活剤化合物が有する原子は、柱状結晶を組成する母材化合物が有する原子とは異なる原子であることは勿論である。
図3の蒸着装置の支持体ホルダー26に上述した支持体16を取付け、真空容器21の底面付近において、支持体16に垂直な中心線を中心とした円の円周上に蒸着源22〜24を配置する。ここで、蒸着源22〜24はガス流を均一に混合して蒸着させる観点から、図3に示すように等間隔に配置することが好ましい。次に、図3の蒸着装置の蒸着器22〜24に、(A)母材化合物(例:CsI)と、(B)賦活剤化合物(例:TlI)と、(C)陽イオン形成化合物(例;NaI)とをそれぞれ充填する。ここで、蒸着源である坩堝やボートは1個以上であれば数は限定されない。すなわち、上記(A)〜(C)の3成分のうち、2成分以上を一つの蒸着源から蒸発させて蒸着に供しても構わない。例えば、上記3成分(A)〜(C)を混合したものを1つ蒸着器の中に格納して蒸着に供してもよい。
ここで、上述した支持体16の下面(図3において下側)の適した位置に反射層18を形成する工程(反射層形成工程)を行ってもよい。例えば、支持体16の表面に酸化金属や金属(銀等)をスパッタ法等にてコーティングすることで、反射層(例;0.10μm)を形成することができる。反射層18の厚さは、シンチレータ3やそれを構成する結晶径にもよるが、金属薄膜を用いる場合は0.005〜0.3μm、より好ましくは0.01〜0.2μmであることが、発光光取り出し効率の観点から好ましい。また、白色顔料等の光散乱粒子と易接着性のポリマー物質との混合物による塗布膜を用いる場合は10〜500μmであることが好ましい。反射層の膜厚が10μm以上で充分な輝度が得られ、また500μm以下で、反射層表面の平滑性が向上する。
さらに、支持体16とシンチレータ3の接着性向上のために、必要に応じて、支持体16(又は反射層18)の下面に蒸着して下引層17を形成する工程(下引層形成工程)を行ってもよい。例えば、高分子ポリマー(例;高分子ポリエステル樹脂等)を所定の溶媒(例;メチルエチルケトン、トルエン,シクロヘキサノン)に溶解または分散させ、十数時間(例;15時間)撹拌したのち下引塗設用の塗布液を調製し、この塗布液を上記支持体16の反射層18の側(図2において下側)に乾燥層厚が1.0μmになるようにスピンコーターで塗布したのち所定温度(例;100℃)で数時間(例;8時間程度)乾燥することで下引層を作製することができる。
後述する減圧工程の前に、充填した(A)母材化合物、(B)賦活剤化合物、および(C)陽イオン生成化合物の3成分に含まれている不純物を蒸着する前に除去するために予備加熱工程を行ってもよい。この予備加熱工程は、使用する上記(A)〜(C)の各化合物の融点以下であることが望ましい。
個々の柱状結晶が独立しているシンチレータを形成する観点で、蒸着装置25内の気体を一旦排出し、例えば、Arガスを導入して、蒸着装置25内の気圧を、0.001〜10Pa、好ましくは0.01〜1Paにした後、支持体16を回転させる減圧工程を設けても良い。この回転は、好ましくは2〜15rpmであり、より好ましくは4〜10rpmである。
蒸着工程は、無機結晶の母材の原料としてのアルカリ金属のヨウ化物(母材化合物)と、一価の陽イオンになり得る原子を含む化合物と、賦活剤を含む化合物(賦活剤化合物)と、を用いて、支持体16に対して垂直に規則的構造を有する無機結晶を形成させる工程である。なお、形成された無機結晶の層がシンチレータ3である。
蒸着の際に加熱を行っていた高温の支持体16を取り出すために冷却する必要がある。ここで、シンチレータ3を平均冷却速度0.5℃〜10℃/分の範囲で80℃まで冷却することで、支持体16等にダメージを与えることなく冷却することができる。この効果は、例えば、厚さ50μm以上500μm以下の高分子フィルム等の比較的薄い基板を支持体16に用いた場合に特に有効である。この冷却工程は、真空度1×10-5Pa〜0.1Paの雰囲気下で行われることが特に好ましい。また、冷却工程時に、蒸着装置25の真空容器21内にArやHe等の不活性ガスを導入してもよい。なお、ここでいう平均冷却速度とは、冷却開始(蒸着終了時)から80℃まで冷却する間の時間と温度を連続的に測定し、この間の1分間あたりの冷却速度を求めたものである。
蒸着終了後、シンチレータ3を加熱処理してもよい。また、蒸着法においては必要に応じてO2、H2などのガスを導入して蒸着する反応性蒸着を行ってもよい。
(柱状結晶の形成確認)
同一条件で製造したシンチレータ3を支持体16と平行に切除し、切除した断面の走査型電子顕微鏡写真を、画像処理ソフトを使用して柱状結晶の部分とそれらの間の空隙部とを調べることができる。
支持体16がガラス製やシリコーン製の場合は、蒸着後のシンチレータ3をレーザダイシング装置で断裁することができる。また、支持体16が樹脂フィルムである場合、レーザ断裁装置を使用することが好ましい。レーザ処理により断裁したシンチレータ3は、支持体16のほぼ全域に柱状結晶が形成されており、断裁した後に支持体16上にシンチレータ3を形成する場合に比較し、画像有効領域が広く好ましいが、その反面、保護層19の形成をはじめとするその後の各プロセスにおけるハンドリングが難しくなる。そこで断裁終了後のシンチレータ3にハンドリング用の保持部材を使用することが好ましい。この保持部材は、真空吸引、静電吸引といった半導体を持ち運ぶために一般的に使用される機器でもよく、また、粘着もしくは接着により固定され、各工程終了後、梱包前に熱、UV、冷却、超音波等の処理により簡単に剥離できるようなシートを用いてもよい。また、剛直で大面積の平板にこのようなシートをシンチレータ3の断裁形状に両面テープで貼り付けておけば、小サイズで数量の多い品種でも断裁後のピックアップや保護層形成といったその後の工程をまとめて行うことができ、生産プロセスの時間短縮につながり、有用である。
本発明に係る放射線検出器の製造方法は、少なくとも上述した本発明に係るシンチレータの製造方法を工程として含み、さらに、任意に以下の保護層形成工程、光学補償層形成工程、光電変換素子層形成工程、光学結合層形成工程等を経るものである。
保護層は、蛍光体層を物理的または化学的に保護することを主眼とするものである。すなわち、ヨウ化セシウム〔CsI〕等の母材は、吸湿性が高く露出したままにしておくと空気中の水蒸気を吸湿して潮解してしまうため、これを防止することを目的とする。上記蒸着工程終了後、必要に応じて前記シンチレータ3の支持体16側とは反対の側に保護層を設けることが好ましい。
光学補償層13は、シンチレータ3と光電変換素子層14との間に介在させる層で、両者の境界面での屈折率の差を小さくして、境界面で反射される光の量をより低減するためのものである。光学補償層13は、熱硬化性の樹脂等の樹脂で形成するが、この熱硬化性の樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、またはシリコーン樹脂等が好ましく用いられる。シンチレータ3に熱硬化性の樹脂を塗布した後、シンチレータの周囲の温度に塗布した樹脂の硬化温度まで加熱して、熱硬化性の樹脂を硬化させることにより、シンチレータ3の柱状結晶の先端部分と光電変換層14との間に光学補償層13が形成される。
光電変換素子層14は、少なくとも、透明電極と、該透明電極を透過して入光した電磁波により励起されて電荷を発生する電荷発生層と、前記透明電極に対しての対極となる対電極とから構成されており、図2の上側からこの順に配置される(不図示)。
下引層17、反射層18、支持体16、シンチレータ3、保護層19及び光学補償層13で構成されたシンチレータパネルと、光電変換素子層14の受光素子(不図示)を接着剤で張り合わせる場合、接着にあたっては接着剤が固化するまで10〜500fg/cm2(0.98〜49kPa)の圧力で加圧する。加圧により接着剤層から気泡が除去される。保護層19としてホットメルト樹脂を使用した場合は10〜500fg/cm2(0.98〜49kPa)の圧力で加圧しながら、ホットメルト樹脂の溶融開始温度より10℃程度高い温度まで加熱し1〜2時間静置後、徐々に冷却する。急冷するとホットメルト樹脂の収縮応力により受光素子の画素にダメージかあるので、好ましくは20℃/h以下の速度で50℃以下まで冷却する。接着剤としては、例えば、アクリル系、エポキシ系、シリコン系等の常温硬化型の接着剤が使用できる。特に弾力性を有する接着樹脂としてはポリブチレン等のゴム系の接着剤が使用できる。
また、鉛の薄板20を設けて、放射線検出器1を透過した放射線や、放射線検出器1の構成素材が放射線吸収により発生する2次放射線の装置外への漏洩を防止する。また、基台6、バッテリ5、PCB基板8,緩衝剤9,9,筐体2等を設けて、放射線検出器1が製造される。
シンチレータのX線耐久性能の評価は、所定強度(例;30000R)のX線にシンチレータを曝露する等、促進条件下にシンチレータを置いて曝露前後におけるシンチレータに所定量のX線を当てて発光したときに得られる蛍光輝度を対比し、このときの輝度変化量により評価することができる。
輝度変化量(%)=(曝露前のシンチレータからの可視光量−曝露後のシンチレータからの可視光量)/曝露前のシンチレータからの可視光量×100(%)
シンチレータの総合評価は、シンチレータのX線耐久性能と、輝度測定値の信頼性を含めて総合的に判断することにより行われ、上記X線耐久性能が「○」と評価されたもののみ、シンチレータとして好ましいと判断される。
≪シンチレータの製造≫
(反射層および下引層の作成)
Al−0.35%Crのターゲットを準備し、13.25MHzのRF電力10W/cm2、Ar雰囲気中0.5Pa、支持体16の温度100℃、ベース圧力0.001Paの条件でスパッタ法を行った。Ar+イオンによりターゲットのAl−0.35%Cr合金が打ち出され、対向電極上に置かれた厚さ125μmのポリイミドフィルム(支持体16)(宇部興産(株)製、ユーピレックス)の上にAl−0.35%Cr合金の膜(反射層18)を形成した。
図3の蒸着装置を参照して説明する。まず、蛍光体母体化合物としてヨウ化セシウム〔CsI〕、賦活剤〔TlI〕およびヨウ化ナトリウム〔NaI〕を3つの抵抗加熱るつぼ22,23,24にそれぞれ充填し、これを蒸発源とし、支持体ホルダーの金属製の枠(図示せず)に下引層17を有する支持体を設置し、下引層17と上記蒸発源22〜24との間隔を400mmとなるよう調整した。
断裁条件をYAG−UV(イットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶:波長266nm)、周波数5000Hzでビーム径20μmのパルスレーザ光、出力300mWに設定したレーザ断裁装置を用いて、得られたシンチレータを所定サイズに断裁した。なお、製造したシンチレータ3中のセシウム、タリウム、ナトリウムの組成比率は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometer:ICP−AES)にて測定した。
上記製造したシンチレータを用いて、以下の各工程を経て放射線検出器を製造した。
(保護層形成工程)
断裁したシンチレータプレートを、図3のCVD装置にセットして、シンチレータ3の蛍光体層の表面にポリパラキシリレンからなる保護層19を形成した(図2参照)。保護層の厚さは3μmであった。
上記形成した蛍光体保護層19の上(図2において蛍光体保護層19の下側)にさらに光学補償層13を形成した。光学補償層13は、熱硬化型のエポキシ樹脂透明接着をディスペンサー塗布方式で厚さ15μmとなるように保護層上に塗布し、その後加熱して硬化させて形成した。
保護層19と光学補償層13とをさらに形成したシンチレータプレートのシンチレータ3の蛍光体層側(図2において下側)の面に、10cm×10cmの大きさのCMOSフラットパネル(テレダイン ラドアイコン社製のX線CMOSカメラシステム「Shad−o−Box 4KEV」)等をセットして図2に示す放射線検出器を製造した。
シンチレータのX線耐久性能の評価は、以下のように行った。
まず、シンチレータに対して30000R(300シーベルト)の強度に至るまでX線(照射中の最大電圧80kVp)を照射する促進処理を行った。次に、上記促進前後の各シンチレータに対して、1mRの強度のX線を当てて発光したときに得られる可視光の蛍光輝度を対比し、このときの輝度変化量(下記式参照)によりX線耐久性能を評価した。表1に示すように、上記輝度変化量(%)が0.1%以上のものをX線耐久性能に劣るものとして「×」と表示し、0.1%未満のものをX線耐久性能に優れるものとして「○」と表示した。また、Naを含まない(またはほとんど含まない)系であるもの(比較例1及び比較例5参照)よりも輝度が低く、輝度測定値の信頼性に支障を来たす程度まで低下しているものは「―」とした。
実施例1の蒸着工程において、加熱条件を適宜調節することで、表1の各実施例2〜5および比較例1〜8に記載された組成になるようにしたこと以外は、実施例1と同様の蒸着工程等を行ってシンチレータを製造した(表1参照)。
実施例で製造したシンチレータおよび放射線検出器によれば、アルカリ金属のヨウ化物であるCsIを母材とする無機結晶からなるシンチレータについて、該CsIの無機結晶中に、母材(CsI)1モルに対して、一価の陽イオンとなりうる原子であるヨウ化ナトリウム〔NaI〕を母材(CsI)1モルに対して0.01モル%以上〜0.3モル%以下含有させ、且つ、賦活剤の原子(Tl):一価の陽イオンとなりうる原子とのモル比が1:0.05〜1:1である範囲とすることにより、X線(30000R)により促進処理をしたとしても輝度変化量が0.1%未満であり非常に低く抑えられ、X線劣化防止効果が得られた(実施例1〜3)。
2 筐体
3 シンチレータ
5 バッテリ
6 基台
7 電子部品
8 PCB基板
9 緩衝部材
10 電源スイッチ
11 コネクタ
12 インジケータ
13 光学補償層
14 光電変換素子層
15 基板
16 支持体(基材)
17 下引層
18 反射層
19 保護層
20 薄板
21 真空容器
22,23,24 蒸着源
25 蒸着装置
26 支持体ホルダー
27 支持体回転機構
28 支持体回転軸
29 真空ポンプ
30〜32 シャッター
Claims (5)
- タリウムイオンからなる賦活剤を含有し、ヨウ化セシウムを母材とする無機結晶からなるシンチレータであって、
前記無機結晶が柱状構造を有し、
該無機結晶中に、
ナトリウム原子を前記ヨウ化セシウム1モルに対して0.01モル%以上0.3モル%以下含み、
前記賦活剤とナトリウム原子とのモル比が1:0.05〜1:1であることを特徴とする、シンチレータ。 - 請求項1に記載のシンチレータと、光電変換素子とを備えたことを特徴とする放射線検出器。
- 無機結晶の母材の原料としてのヨウ化セシウムと、ナトリウム原子を含む化合物と、タリウムイオンからなる賦活剤を含む化合物と、を用いて、基材に対して垂直に規則的な柱状構造の無機結晶を形成させる工程を含み、
前記無機結晶に、前記ヨウ化セシウム1モルに対してナトリウム原子が0.01モル%以上〜0.3モル%以下の量で含まれ、前記賦活剤のタリウム原子とナトリウム原子とのモル比が1:0.05〜1:1となるように前記無機結晶を製造することを特徴とするシンチレータの製造方法。 - 前記柱状結晶を蒸着法により形成させることを特徴とする、請求項3に記載のシンチレータの製造方法。
- 請求項3または4に記載のシンチレータの製造方法を含むことを特徴とする放射線検出器の製造方法。
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